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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1289071
審判番号 不服2013-9889  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-29 
確定日 2014-06-18 
事件の表示 特願2009-507624号「香味放出材料および様々な食品におけるその使用」拒絶査定不服審判事件〔2007年11月1日国際公開、WO2007/123466、平成21年9月24日国内公表、特表2009-534050号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、2007年4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年4月24日、スウェーデン王国)を国際出願日とする出願であって、その請求項20に係る発明は、特許請求の範囲の請求項20に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液が、天然または人工のキャビティーを備えた植物性繊維材料と混合され、前記溶液は前記植物性繊維材料のキャビティーに適用される方法。」

2.引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特表平10-508185号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「1.下記成分を含むチューインガム組成物:
(i) ガムベース:及び
(ii)強臭フレーバー油成分及び中鎖トリグリセリドを含有する混合物が、上に吸着された又はその中に吸収されている、非脂肪の固形支持体を含む、粒子状風味送達システム。
・・・(中略)・・・
9.前記非脂肪の固形支持体が、ムコ-接着剤である、請求項1記載のチューインガム組成物。
10.前記ムコ-接着剤が、セルロース、シリカ、微晶質ワックス、水膨潤性ガム、水膨潤性粘質物、アルギン酸塩、カラゲーニン、トラガント、デンプン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ゼイン及びそれらの混合物からなる群から選択された、請求項9記載のチューインガム組成物。
・・・(中略)・・・
39.下記の工程で形成された食料品組成物:
(i) 吸収された強臭フレーバー油成分及び中鎖トリグリセリドの混合物が、その中に吸収されている又はその表面を被覆している、非脂肪固形支持体の混合物を提供する工程;
(ii)前記混合物を、該支持体にフラッシュフローを引き起こすのに充分な温度及び力の条件に晒し、これによりこの強臭フレーバー油成分を捕捉している固形マトリックスを形成する工程である。」(特許請求の範囲)
イ.「本発明は、高揮発性フレーバー油又は香味成分及び中鎖トリグリセリドの、安定化された実質的に不揮発性の混合物を含む、高揮発性のフレーバー油用の固形の送達システムに関する。この混合物は、実質的に低下した蒸気圧を示し、これにより、高揮発性成分が存在するにもかかわらず、非常に僅かな臭気又は揮発性を示す。これらの油を含有する混合物への特定の中鎖トリグリセリドの混合が、この混合物の安定化された実質的に不揮発性の特性の原因であると考えられる。この安定化された混合物は、高揮発性物質の取扱いを容易にし、かつこれらの物質の固形の送達システムへの混合を促進する。」(第9頁第25行?第10頁第4行)
ウ.「このような製品の別の実施態様において、この安定化された実質的に不揮発性の混合物は、非脂肪支持体に吸収/吸着され、かつ得られた物質は、糖質をベースにしたマトリックスに添加され、かつ直接チューインガム組成物に混合されるか、もしくは好ましい実施態様においては、チューインガム製品への混合の前に、フラッシュフロー加工を受ける。」(第11頁第11?16行)
エ.「本発明は、高揮発性の油を含有している食料品の、取扱い、製造及び維持における困難さを解決する。この目的を達成するために、本発明は、安定化した混合物を形成するために、高揮発性油を中鎖トリグリセリドと結合することによって、これらの油の蒸気圧を低下する。この混合物は、実質的に安定であり、ほとんど又は全く芳香又は臭気が無く、これは、フレーバー油及び/又はフレーバー油成分の揮発性、すなわち蒸気圧が、実質的に低下したことを示している。」(第17頁第4?8行)
オ.「代表的な非脂肪固形支持体は、吸収剤に加え吸着剤のような物質であるが、これらに限定されるものではない。例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースのような、セルロース物質を意図している。・・・(中略)・・・
様々なシリカ及び微晶質物質も、この固形の非脂肪支持体として有用である。例えば、シリカは、液体を吸収さもなければ捕捉する能力が周知であり、かつ特定のシリカは、非常に多孔性である。例えば、合成非晶質シリカは、均一性、化学的不活性、大きい表面積、及び吸着性を非常に高める多孔性の独特な組合せのために、特に有用である。」(第24頁第7行?第25頁第1行)
カ.「前記新規送達システムを混合しているチューインガム組成物は、風味の知覚が持続性であるという際立った利点がある。この送達システムの物理的構造のために、この香味物質は、加工時に保護され、加工に続きバルク保存形態で保護される。一旦この送達システムがチューインガム組成物に混合されると、これはチューインガムにおいて、他の成分から香料を保護し、更にガム表面のガムベースからの香料の移動を防止するようにする。」(第27頁第18?23行)
上記ア.?カ.の記載事項を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「粒子状風味送達システムの製造方法であって、
強臭フレーバー油成分及び中鎖トリグリセリドを含有する、安定化された実質的に不揮発性の混合物が、その中に吸収されている、非脂肪の固形支持体としてのセルロースの混合物を提供する工程を有する製造方法。」

(2)引用刊行物2
同じく、特開昭59-198941号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「1)甘味料、微孔性チヤンネルを有する球形粒子および芳香剤をその中に包含せしめておりそしてその芳香剤を球形粒子の微孔性チヤンネルに収着せしめたチユーインガムベースを包含する、砂糖含有チユーインガム組成物。
・・・(中略)・・・
5)球形粒子がデキストリン、澱粉、ペクチン、アルギン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、カルボキシメチルアミノペクチン、デキストロース、果糖、マルトース、乳糖、デキストラン、天然ゴムおよびそれらの混合物よりなる群から選ばれる前記特許請求の範囲第1項記載のチユーイングガム組成物。」(特許請求の範囲)
イ.「同一の問題はガム製品を製造および消費の間において長期間保存させた場合に観察される。芳香剤は限定された保存安定性を有するようでありそしてある場合には保存1ケ月以内に許容できない低水準まで減少することが観察されている。
近年、長時間にわたる芳香および/または甘味剤放出性を有するチユーインガムおよび風船ガムの開発が望ましいものとなつた。」(第3頁左上欄第14行?右上欄第5行)
ウ.「代表的芳香剤液体としてはスペアミント油、シナモン油、冬緑油(メチルサリシレート)、およびペパミント油があげられる。」(第5頁右下欄第10?12行)
エ.「球形粒子内での最大の吸着の達成のためには、芳香剤は好ましくはその液体油の形態で使用される。芳香液体と微孔性チヤンネル構造を有する球形粒子を混合させると、芳香剤液体はその構造物の間隙中に捕集されそしてそれによつて芳香剤放出の遅延化に寄与すると理論づけされている。」(第6頁左上欄第8?14行)

(3)引用刊行物3
同じく、特開昭61-58541号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア.「1)(a)ガムベースおよび
(b)(i)少なくとも1種のエラストマー
(ii)少なくとも1種のワツクス系
(iii)少なくとも1種の可塑剤および
(iv)炭水化物、多価アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択された賦形剤および
(v)場合によつては微孔性のチヤンネルを有する球状粒子
からなる母体中に封入された香料および(または)甘味剤からなる香料および甘味剤供給系からなる持続された香料および甘味剤放出を示すチユーインガム組成物。
・・・(中略)・・・
7)香料がスペアーミント油、シンナモン油、ウインターグリーン油(サリチル酸メチル)、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、グレープ油、ライム油、グレープフルーツ油、リンゴエツセンス、イチゴエツセンス、サクラエツセンス、パイナツプルエツセンスおよびそれらの混合物からなる群から選択されたものである前記特許請求の範囲第6項記載のチユーインガム組成物。
・・・(中略)・・・
21)球状粒子がデキストリン、澱粉、ペクチン、アルギン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、カルボキシメチルアミロペクチン、デキストロース、フラクトース、マルトース、ラクトース、デキストラン、天然ゴムおよびこれらの混合物からなる群から選択されたものである前記特許請求の範囲第1項記載のチユーインガム組成物。
・・・(中略)・・・
24)(a)(i)約77?88℃の温度でエラストマーをエラストマー溶剤およびワツクス系と混合して均質な混合物を得、
(ii)この混合物に賦形剤および甘味剤からなる他の混合物を加えそして
(iii)吸収された香料を有する球状粒子を混合することによつて香料および甘味剤供給系を製造し、
(b)得られた供給系をガムベースおよび残りのチユーインガム成分の均質な混合物に加えそして
(c)得られた混合物を適当なチユーインガム形状に形成させることからなる持続された香料および甘味剤放出を示すチユーインガム組成物の製法。」(特許請求の範囲)
イ.「チユーインガムにおける普通の著しい欠点は、噛んでいる間の香気および甘味感覚の比較的急速な消耗である。この喪失はしばしば噛んでいる最初の3?5分の間におこる。
ガム製品を製造と消費との間の期間貯蔵する場合にも同じ問題が観察される。香料は限定された保存性を有しているように思われそしてある場合においては、貯蔵後1ケ月以内に許容できない低い程度に減少することが観察される。
最近、延長された香料および(または)甘味剤放出を示すチユーインガムおよび風船ガムを開発することが望まれている。」(第4頁右上欄第9行?左下欄第3行)
ウ.「球状粒子を使用する場合は、球状粒子を封入母体に加える前にすでに香料および甘味剤を球状粒子に吸収させることができる。」(第10頁左上欄第6?8行)
エ.「球状粒子を供給系に使用する場合においては、香料は好適には球状粒子内の最大の吸収を達成するために液状の油形態で使用される。」(第12頁右上欄第12?14行)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「粒子状風味送達システムの製造方法」は、その機能・構成からみて、前者の「香味放出材料を製造する方法」に相当し、以下同様に、後者の「強臭フレーバー油成分」は前者の「親油性香料」に、後者の「中鎖トリグリセリド」は前者の「親油性成分」に、後者の「非脂肪の固形支持体としてのセルロース」は前者の「植物性繊維材料」にそれぞれ相当する。
また、後者の「強臭フレーバー油成分及び中鎖トリグリセリドを含有する、安定化された実質的に不揮発性の混合物」と、前者の「少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する溶液」とは、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する混合物である点で共通する。
さらに、後者の「安定化された実質的に不揮発性の混合物」は、「非脂肪の固形支持体としてのセルロース」「の中に吸収されて」、「非脂肪の固形支持体としてのセルロースの混合物を提供する」から、後者の「安定化された実質的に不揮発性の混合物が、その中に吸収されている、非脂肪の固形支持体としてのセルロースの混合物を提供する工程を有する製造方法」と前者の「溶液が、天然または人工のキャビティーを備えた植物性繊維材料と混合され、前記溶液は前記植物性繊維材料のキャビティーに適用される方法」とは、混合物が植物性繊維材料に適用される方法である点で共通する。
そうすると、両者は、「香味放出材料を製造する方法であって、少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する混合物が、前記植物性繊維材料に適用される方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点A:少なくとも一つの親油性香料および少なくとも一つの親油性成分を含有する混合物に関し、本願発明が「溶液」であるのに対して、引用発明はその形態が明確でない点。
相違点B:植物性繊維材料に関して、本願発明が「天然または人工のキャビティーを備え」おり、「溶液」が混合されて、「溶液は植物性繊維材料のキャビティーに適用される」のに対して、引用発明は混合されることで溶液が植物性繊維材料キャビティーに適用されるものか否か明確でない点。

そこで、上記相違点A及びBについて検討する。
引用発明は「強臭フレーバー油成分及び中鎖トリグリセリドを含有する」ことで「安定化された実質的に不揮発性の混合物」とすることに加えて、「非脂肪の固形支持体としてのセルロース」の中に「安定化された実質的に不揮発性の混合物」を吸収するものであって、その作用・効果は、風味の知覚が持続性であり、物理的構造のために香味物質は加工時に保護され、加工に続きバルク保存形態で保護されるものである(2.(1)カ.参照)。
そして、引用刊行物1には、2.(1)オ.で摘示するように、シリカの例ではあるものの、非脂肪の固形支持体を多孔性とすることで吸着性を向上することも示唆している。
一方、引用刊行物2及び3には、芳香剤を長期間安定に保存できるように、微孔性チャンネルを有するメチルセルロース等の植物性繊維からなる球形粒子を、溶液である液体油の形態の芳香剤と混合して、微孔性チャンネルに芳香剤液体を捕集させることが記載されている。
したがって、引用発明の「強臭フレーバー油成分及び中鎖トリグリセリドを含有する安定化された実質的に不揮発性の混合物」を「非脂肪の固形支持体としてのセルロース」の中に吸収させるにあたり、よりよく「非脂肪の固形支持体としてのセルロース」に吸収・保持するように、引用刊行物2および3に示される事項を適用して、「安定化された実質的に不揮発性の混合物」を溶液とし、微孔性チャンネルを有するメチルセルロース等の植物性繊維と混合して、溶液をメチルセルロース等の植物性繊維の微孔性チャンネルに適用するようになすことは、当業者が容易になし得たことといわざるを得ない。
メチルセルロース等の植物性繊維に備えられる微孔性チャンネルが、天然又は人工のどちらかのものであることは当業者にとって明らかである。
そうすると、相違点A及びBに係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことであり、そのことによる格別の効果もない。

なお、請求項1に係る発明についてみても、当業者が容易に発明をすることができたものである。
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された欧州特許出願公開第1609374号公報(以下「引用刊行物4」という。)には、パンの生地に混練され焼成される、或いは肉と混合されて調理される、食品の貯蔵寿命を延長するフレーバー組成物(段落[0002][0027][0028])であって、内面と外面を有する大豆子葉繊維材料の内部表面と外部表面に液体フレーバー成分をコーテイングする(段落[0006][0007]等参照)ことが記載されている。また、吸着油やアルコールをベースにした液体フレーバー成分を用いること(段落[0025]やEXAMPLE3参照)も示されている。
そうすると、引用刊行物4に記載された、加熱調理される食品のためのフレーバー組成物は、キャビティーを備えた植物繊維材料の内面であるキャビティーに、親油性香料と親油性成分の混合物の液体を適用させたものであるといえる。
そして、液体フレーバー成分はキャビティー内に親油成分とともにあって安定保持され制御放出されるものである。なお、食品内での香料の減少を抑制することは、引用刊行物1?4に限らず、特開平7-102279号公報等にも示されるように、当該技術分野においては通常考慮する事項にすぎない。
一方、引用刊行物4のフレーバー組成物は加熱調理する食品へ用いるものであるから、通常の油の使用における温度である160?200℃程度を考慮しつつ、使用条件に応じて、使用可能な温度を、食品が195℃に加熱されるときと設定することは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。更にいえば、特開平9-206022号公報の段落【0029】には精油分の粒子を水溶性ヘミセルロースの長大繊維に包含させて安定にすることで、熱のストレスに対して安定となることが記載されており、上記食品が195℃に加熱されるときにも対応し得ると当業者が期待できたことである。
よって、請求項1に係る発明は、引用刊行物4に記載された発明、引用刊行物1?3に記載された事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
なお、引用刊行物4の段落[0024]の記載は、噴霧乾燥における温度が比較的低い方が好ましいというにすぎず、食品を195℃に加熱することに対応できないというものではない。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用発明並びに引用刊行物2及び3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-15 
結審通知日 2014-01-21 
審決日 2014-02-03 
出願番号 特願2009-507624(P2009-507624)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 平上 悦司
山崎 勝司
発明の名称 香味放出材料および様々な食品におけるその使用  
代理人 福原 淑弘  
代理人 竹内 将訓  
代理人 白根 俊郎  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 岡田 貴志  
代理人 野河 信久  
代理人 砂川 克  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 堀内 美保子  
代理人 河野 直樹  
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