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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1289158
審判番号 不服2013-8709  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-13 
確定日 2014-06-25 
事件の表示 特願2008- 59784「カルコゲン薄膜トランジスタアレイを備えた電子医療映像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月16日出願公開、特開2008-252090〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年3月10日(パリ条約に基づく優先権主張 2007年3月9日,大韓民国)の出願であって,平成23年9月15日に手続補正がされ,平成24年2月29日付けで拒絶理由(最後)が通知され,同年6月4日に手続補正がされたが,同年12月28日付けで同年6月4日付けの手続補正が却下されるとともに,同日付で拒絶査定がされ,それに対して平成25年5月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正がされ,その後同年8月27日付けで審尋がされ,それに対する回答はなされなかったものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年5月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成25年5月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1?15を,補正後の特許請求の範囲の請求項1?13と補正するものであって,補正前後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される信号生成部と,
前記電子-正孔対を分離し,その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように,前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源と,
前記信号生成部に接触し,前記分離された電荷のうち一種を流入して保存する信号保存部と,
該信号保存部に接触し,該信号保存部に制御信号を印加して該信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部とを備え,
前記信号保存部は,
前記信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層と,
該遮蔽層と電気的に接触された第2電極と,
該第2電極と電気的に接触され,前記遮蔽層を通じて流入された一種の電荷を保存するキャパシタ及び前記キャパシタと連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層と,
前記遮蔽層と,前記第2電極と,前記素子層が形成された基板とを備え,
前記素子層の前記トランジスタは,In2Se3とCu2Se3とを利用して形成したアクティブ層を備えたことを特徴とする電子医療映像装置。
【請求項2】
前記信号生成部と,信号保存部と,信号変換部は,順次に形成された層状構造であることを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項3】
前記信号生成部は,
前記電源の電気信号を前記信号生成部に印加されるように,前記電源と電気的に連結された第1電極と,
該第1電極の下面に形成されて,前記電源から流入される電荷を遮断する絶縁層と,
該絶縁層の下面に形成され,前記外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が生成され,前記電源から印加された電気信号により電子-正孔対が互いに分離されて互いに反対側に密集される吸収層と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項4】
前記吸収層は,カルコゲンを含むことを特徴とする請求項3に記載の電子医療映像装置。
【請求項5】
前記吸収層は,非晶質の純粋なセレンを含むことを特徴とする請求項4に記載の電子医療映像装置。
【請求項6】
前記吸収層は,CdTe又はCdZnTeを含むことを特徴とする請求項4に記載の電子医療映像装置。
【請求項7】
前記基板は,ガラス又は石英を含むことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項8】
前記単位セルは,一つ又はそれ以上の電気的な単位素子をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項9】
前記素子層は,前記単位セルを横及び縦方向にそれぞれ複数個配列された2次元アレイを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項10】
前記素子層に備えられた前記トランジスタは,
前記基板上に前記アクティブ層と,
該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と,
前記アクティブ層上に形成されたゲート絶縁膜と,
該ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項11】
前記素子層に備えられた前記トランジスタは,
前記基板の一部領域上に形成されたゲート電極と,
前記基板と前記ゲート電極とを覆う絶縁膜と,
前記ゲート電極が形成された領域上を覆うように前記絶縁膜上に形成された前記アクティブ層と,
該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。
【請求項12】
前記アクティブ層の導電型は,In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比によって決定されることを特徴とする請求項11に記載の電子医療映像装置。
【請求項13】
前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.1乃至0.5の範囲である場合には,前記CIS膜は,p型の導電型を有することを特徴とする請求項12に記載の電子医療映像装置。
【請求項14】
前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.6乃至0.9の範囲である場合には,前記CIS膜は,n型の導電型を有することを特徴とする請求項12に記載の電子医療映像装置。
【請求項15】
前記信号変換部は,
前記信号保存部のトランジスタに制御信号を印加する信号印加回路部と,
前記制御信号により前記トランジスタを通じて伝達される電気信号を増幅する信号増幅素子と,
該信号増幅素子で増幅された信号をマルチプレキシングするマルチプレクサと,
該マルチプレクサによりマルチプレキシングされた信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子医療映像装置。」

(補正後)
「【請求項1】
外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される信号生成部と,
前記電子-正孔対を分離し,その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように,前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源と,
前記信号生成部に接触し,前記分離された電荷のうち一種を流入して保存する信号保存部と,
該信号保存部に接触し,該信号保存部に制御信号を印加して該信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部とを備え,
前記信号生成部と,前記信号保存部と,前記信号変換部は,順次に形成された層状構造であり,
前記信号保存部は,
前記信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層と,
該遮蔽層と電気的に接触された第2電極と,
該第2電極と電気的に接触され,前記遮蔽層を通じて流入された一種の電荷を保存するキャパシタ及び前記キャパシタと連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層と,
前記遮蔽層と,前記第2電極と,前記素子層が形成された基板とを備え,
前記素子層に備えられた前記トランジスタは,
前記基板上にIn2Se3とCu2Se3とを利用して形成したアクティブ層と,
該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と,
前記アクティブ層上に形成されたゲート絶縁膜と,
該ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と
を備えたことを特徴とする電子医療映像装置。
【請求項2】
外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される信号生成部と,
前記電子-正孔対を分離し,その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように,前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源と,
前記信号生成部に接触し,前記分離された電荷のうち一種を流入して保存する信号保存部と,
該信号保存部に接触し,該信号保存部に制御信号を印加して該信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部とを備え,
前記信号生成部と,前記信号保存部と,前記信号変換部は,順次に形成された層状構造であり,
前記信号保存部は,
前記信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層と,
該遮蔽層と電気的に接触された第2電極と,
該第2電極と電気的に接触され,前記遮蔽層を通じて流入された一種の電荷を保存するキャパシタ及び前記キャパシタと連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層と,
前記遮蔽層と,前記第2電極と,前記素子層が形成された基板とを備え,
前記素子層に備えられた前記トランジスタは,
前記基板の一部領域上に形成されたゲート電極と,
前記基板と前記ゲート電極とを覆う絶縁膜と,
前記ゲート電極が形成された領域上を覆うように前記絶縁膜上に形成され,In2Se3とCu2Se3とを利用して形成したアクティブ層と,
該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と
を備えたことを特徴とする電子医療映像装置。
【請求項3】
前記アクティブ層の導電型は,In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比によって決定されることを特徴とする請求項2に記載の電子医療映像装置。
【請求項4】
前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.1乃至0.5の範囲である場合には,前記CIS膜は,p型の導電型を有することを特徴とする請求項3に記載の電子医療映像装置。
【請求項5】
前記In2Se3とCu2Se3との相対的なモル比が0.6乃至0.9の範囲である場合には,前記CIS膜は,n型の導電型を有することを特徴とする請求項3に記載の電子医療映像装置。
【請求項6】
前記信号生成部は,
前記電源の電気信号を前記信号生成部に印加されるように,前記電源と電気的に連結された第1電極と,
該第1電極の下面に形成されて,前記電源から流入される電荷を遮断する絶縁層と,
該絶縁層の下面に形成され,前記外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が生成され,前記電源から印加された電気信号により電子-正孔対が互いに分離されて互いに反対側に密集される吸収層と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の電子医療映像装置。
【請求項7】
前記吸収層は,カルコゲンを含むことを特徴とする請求項6に記載の電子医療映像装置。
【請求項8】
前記吸収層は,非晶質の純粋なセレンを含むことを特徴とする請求項7に記載の電子医療映像装置。
【請求項9】
前記吸収層は,CdTe又はCdZnTeを含むことを特徴とする請求項7に記載の電子医療映像装置。
【請求項10】
前記基板は,ガラス又は石英を含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の電子医療映像装置。
【請求項11】
前記単位セルは,一つ又はそれ以上の電気的な単位素子をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の電子医療映像装置。
【請求項12】
前記素子層は,前記単位セルを横及び縦方向にそれぞれ複数個配列された2次元アレイを備えたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の電子医療映像装置。
【請求項13】
前記信号変換部は,
前記信号保存部のトランジスタに制御信号を印加する信号印加回路部と,
前記制御信号により前記トランジスタを通じて伝達される電気信号を増幅する信号増幅素子と,
該信号増幅素子で増幅された信号をマルチプレキシングするマルチプレクサと,
該マルチプレクサによりマルチプレキシングされた信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換部と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の電子医療映像装置。」

2 補正事項の整理
本件補正のうち,特許請求の範囲についての補正事項を整理すると,以下のとおりである。

(補正事項1)
補正前の請求項1に補正前の請求項2,10の内容を繰り入れて,補正後の請求項1と補正すること。

(補正事項2)
補正前の請求項1に補正前の請求項2,11の内容を繰り入れて,補正後の請求項2と補正すること。

(補正事項3)
補正前の請求項1を引用する補正前の請求項11を引用する補正前の請求項12を,補正後の請求項2を引用する補正後の請求項3と補正し,それにともなって,補正前の請求項13?14をそれぞれ引用する請求項の項番を整理して,補正後の請求項4?5と補正すること。

(補正事項4)
補正前の請求項1を引用する補正前の請求項3を,補正後の請求項1または2を引用する補正後の請求項6と補正し,それにともなって,補正前の請求項4?9をそれぞれ引用する請求項の項番を整理して,補正後の請求項7?12と補正すること。

(補正事項5)
補正前の請求項1を引用する補正前の請求項15を,補正後の請求項1または2を引用する補正後の請求項13と補正すること。

3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無について
(1)補正の目的の適否について
ア 補正事項1について
この補正は,補正前の請求項1を,補正前の請求項2,10の内容で,その構成を技術的に限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項2について
この補正は,補正前の請求項1を,補正前の請求項2,11の内容で,その構成を技術的に限定を加えるものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

ウ 補正事項3?5について
この補正は,補正事項1,2にともない引用する請求項の項番を整理したものであるから,特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の追加の有無について
補正事項1,2は,請求項2及び10又は11の内容を繰り入れるものであり,また,補正事項3?5は,請求項の引用関係を整理するものであるから,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであるから,本件補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3)小括
以上検討したとおりであるから,本件補正のうち特許請求の範囲についての補正は特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものである。
したがって,本件補正は適法になされたものである。
そして,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する補正を含むものであるから,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,本件補正がいわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かにつき,以下において更に検討する。

4 独立特許要件について

(1)補正発明
本件補正による補正後の請求項1?13に係る発明は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?13に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定されるものであり,再掲すると以下のとおりのものである。

「外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される信号生成部と,
前記電子-正孔対を分離し,その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように,前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源と,
前記信号生成部に接触し,前記分離された電荷のうち一種を流入して保存する信号保存部と,
該信号保存部に接触し,該信号保存部に制御信号を印加して該信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部とを備え,
前記信号生成部と,前記信号保存部と,前記信号変換部は,順次に形成された層状構造であり,
前記信号保存部は,
前記信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層と,
該遮蔽層と電気的に接触された第2電極と,
該第2電極と電気的に接触され,前記遮蔽層を通じて流入された一種の電荷を保存するキャパシタ及び前記キャパシタと連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層と,
前記遮蔽層と,前記第2電極と,前記素子層が形成された基板とを備え,
前記素子層に備えられた前記トランジスタは,
前記基板上にIn2Se3とCu2Se3とを利用して形成したアクティブ層と,
該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と,
前記アクティブ層上に形成されたゲート絶縁膜と,
該ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と
を備えたことを特徴とする電子医療映像装置。」

(2)引用例1?3の記載および引用例1に記載された発明
(2-1)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開2006-87566号公報(以下「引用例1」という。)には,「放射線画像取得方法及び放射線画像取得装置」(発明の名称)に関して,図3,4とともに以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,放射線を被写体に照射しその被写体を透過した放射線の線量に応じて得られた放射線情報に基づいて放射線画像データを取得する放射線画像取得方法及び放射線画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,X線やγ線等の放射線源から放射線を医療検査等のために人体等の被写体に照射し,この放射線照射に連動して,被写体の透過線量に応じて蛍光板などの波長変換体で受光部の感光波長域に波長変換し,これを受光素子により電気信号に変換して,電気情報として画像情報を得るようにした撮像装置が公知である(例えば,下記特許文献1参照)。かかる撮像装置は,放射線画像撮影用カセッテと同様のフラットパネル状に構成される場合には,FPD(フラットパネルディテクタ)とも称される。」

イ 「【0043】
図3のように,撮像パネル21は,照射された放射線の強度に応じて蓄積された電気エネルギーを読み出す走査駆動回路25と,蓄積された電気エネルギーを画像信号として出力する信号選択回路27と,を有する。
【0044】
筐体40は,外部からの衝撃に耐えかつ重量ができるだけ軽い素材であるアルミニウムやアルミニウム合金から外形を構成することが好ましく,筐体40の放射線入射面側は,放射線を透過し易い非金属例えばカーボン繊維などを用いて構成する。また,放射線入射面とは逆である背面側においては,放射線が放射線画像検出器5を透過してしまうことを防ぐ目的や放射線画像検出器5を構成する素材が放射線を吸収することで生ずる2次放射線からの影響を防ぐために,放射線を効果的に吸収する材料例えば鉛板などを用いる。また,筐体40の内部では,走査駆動回路25,信号選択回路27,制御回路30,メモリ部31等は,放射線遮蔽部材(図示省略)で覆われており,筐体40の内部で放射線の散乱を生じたり,各回路に放射線が照射されることが防止される。
【0045】
図3のように,撮像パネル21には照射された放射線の強度に応じて蓄積された電気エネルギーを読み出すための収集電極220が2次元状に配置されており,この収集電極220がコンデンサ221の一方の電極とされて,電気エネルギーがコンデンサ221に蓄えられる。1つの収集電極220は放射線画像の1画素に対応する。
【0046】
画素間には走査線223-1?223-mと信号線224-1?224-nが例えば直交するように配設される。コンデンサ221-(1,1)には,シリコン積層構造あるいは有機半導体で構成されたトランジスタ222-(1,1)が接続されている。このトランジスタ222-(1,1)は,例えば電界効果トランジスタであり,ドレイン電極あるいはソース電極が収集電極220-(1,1)に接続されるとともに,ゲート電極は走査線223-1と接続される。ドレイン電極が収集電極220-(1,1)に接続されるときにはソース電極が信号線224-1と接続され,ソース電極が収集電極220-(1,1)に接続されるときにはドレイン電極が信号線224-1と接続される。また,他の画素の収集電極220やコンデンサ221及びトランジスタ222も同様に走査線223や信号線224が接続される。
【0047】
図4の撮像パネル21の一部断面図に示すように,放射線の照射面側には,入射された放射線の強度に応じて発光を行うシンチレータ層である第1層211が設けられている。ここで,第1層211には例えば波長が1Å(1×10-10m)程度である人体等を透過する電磁波であるX線(放射線)が図1の放射線源101から照射される。
【0048】
第1層211は,蛍光体を主たる成分とするものであり,入射した放射線に基づいて,波長が300nmから800nmの電磁波,すなわち,可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力する。第1層211で用いられる蛍光体は,タングステン酸塩系蛍光体,テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体,テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体,テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体,ヨウ化セシウム等から構成できるが,これらに限定されるものではなく,放射線の照射によって可視または紫外または赤外領域などの,受光素子が感度を持つ領域の電磁波を出力する蛍光体であればよい。
【0049】
次に,第1層211の放射線照射面側とは逆の面側に,第1層から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換する第2層212が形成される。第2層212は,第1層211側から,隔膜212a,透明電極膜212b,正孔伝導層212c,電荷発生層212d,電子伝導層212e,導電層212fが設けられている。ここで,電荷発生層212dは,光電変換可能な即ち電磁波(光)によって電子や正孔を発生し得る有機化合物を含有し,光電変換を円滑に行うために,いくつかの機能分離された層を有することが好ましく,例えば図4に示すように第2層が構成される。
【0050】
隔膜212aは,第1層211と他の層を分離するためのものであり,例えばOxi-nitrideなどが用いられる。透明電極膜212bは,例えばインジウムチンオキシド(ITO),SnO_(2),ZnOなどの導電性透明材料を用いて形成される。透明電極膜212bの形成では,蒸着やスパッタリング等の方法を用いて薄膜を形成できる。また,フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく,あるいは高いパターン精度を必要としない場合(100μm以上程度)は,上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
【0051】
電荷発生層212dでは,第1層211から出力された電磁波(光)によって電子と正孔を発生される。ここで発生した正孔は正孔伝導層212cに集められ,電子は電子伝導層212eに集められる。なお,本構造において,正孔伝導層212cと電子伝導層212eは必ずしも必須なものではない。
【0052】
導電層212fは,例えばクロムなどで生成されている。また,一般の金属電極若しくは前記透明電極の中から選択可能であるが,良好な特性を得るためには仕事関数の小さい(4.5eV以下)金属,合金,電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましい。このような電極物質の具体例としては,ナトリウム,ナトリウム-カリウム合金,マグネシウム,リチウム,アルミニウム等が挙げられるが,これらに限定されない。導電層212fは,これらの電極物質を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて生成できる。
【0053】
次に,電荷発生層212dは,シアニン色素の会合体やJ凝集体を形成する有機化合物を用いて構成する。シアニン色素はハロゲン化銀写真の分光増感剤として広く使用されている。J凝集体は可視光を吸収して色素分子を構成する電子が励起状態となって,その励
起電子がハロゲン化銀粒子に移動することで,ハロゲン化銀粒子が感光する。このシアニン色素は一般にハロゲン化銀粒子上では色素分子会合体を形成しているといわれる。色素分子が会合体を形成することにより,色素分子自体が安定化する。
【0054】
次に,第2層212の放射線照射面側とは逆の面側には,第2層212で得られた電気エネルギーの蓄積および蓄積された電気エネルギーに基づく信号の出力を行う第3層213が形成されている。第3層213は,第2層212で生成された電気エネルギーを画素毎に蓄えるコンデンサ221と,蓄えられた電気エネルギーを信号として出力するためのスイッチング素子であるトランジスタ222を用いて構成されている。なお第3層は,スイッチング素子を用いるものに限られるものではなく,例えば蓄えられた電気エネルギーのエネルギーレベルに応じた信号を生成して出力する構成とすることもできる。
【0055】
トランジスタ222は,例えばTFT(薄膜トランジスタ)を用いる。このTFTは,液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のものでも,有機半導体を用いたものでも良く,好ましくはプラスチックフィルム上に形成されたTFTである。プラスチックフィルム上に形成されたTFTとしては,アモルファスシリコン系のものが知られている。
【0056】
スイッチング素子であるトランジスタ222には,図3及び図4に示すように,第2層212で生成された電気エネルギーを蓄積するとともに,コンデンサ221の一方の電極となる収集電極220が接続されている。このコンデンサ221には第2層212で生成された電気エネルギーが蓄積されるとともに,この蓄積された電気エネルギーはトランジスタ222を駆動することで読み出される。即ち,スイッチング素子を駆動することで放射線画像を画素毎の信号を生成することができる。なお,図4において,トランジスタ222は,ゲート電極222a,ソース電極(ドレイン電極)222b,ドレイン電極(ソース電極)222c,有機半導体層222d,絶縁層222eで構成されている。」

ウ 「【0060】
撮像パネル21の走査線223-1?223-mとリセット線231は,図3に示すように,走査駆動回路25と接続されている。走査駆動回路25から走査線223-1?223-mのうちの1つ走査線223-p(pは1?mのいずれかの値)に読出信号RSが供給されると,この走査線223-pに接続されたトランジスタ222-(p,1)?222-(p,n)がオン状態とされて,コンデンサ221-(p,1)?221-(p,n)に蓄積された電気エネルギーが信号線224-1?224-nにそれぞれ読み出される。信号線224-1?224-nは,信号選択回路27の信号変換器271-1?271-nに接続されており,信号変換器271-1?271-nでは信号線224-1?224-n上に読み出された電気エネルギー量に比例する電圧信号SV-1?SV-nを生成する。この信号変換器271-1?271-nから出力された電圧信号SV-1?SV-nはレジスタ272に供給される。
【0061】
レジスタ272では,供給された電圧信号が順次選択されて,A/D変換器273で(例えば,12ビットないし14ビットの)1つの走査線に対するディジタルの画像信号とされ,制御回路30は,走査線223-1?223-mの各々に,走査駆動回路25を介して読出信号RSを供給して画像走査を行い,走査線毎のディジタル画像信号を取り込んで,放射線画像の画像信号の生成を行う。この画像信号は制御回路30に供給される。」

エ 図4には,基板としての第4層214上に,電荷発生層212dを含むを含む電磁波(光)を電気エネルギーに変換する第2層212(光電変換層)の下層として第3層213が設けられていることが見てとれ,これと「第2層212で得られた電気エネルギーの蓄積および蓄積された電気エネルギーに基づく信号の出力を行う第3層213が形成されている。」(段落【0054】)の記載を参照すると,電荷発生層212dと電気エネルギーの蓄積および蓄積された電気エネルギーに基づく信号の出力を行う第3層213が基板としての第4層214上に,層状に積層されていることが分かる。

引用発明の認定
以上を総合すると,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「第1層211から出力された電磁波(光)によって電子と正孔を発生する電荷発生層212dを含むを含む電磁波(光)を電気エネルギーに変換する第2層212と,
電荷発生層212dと電気エネルギーの蓄積および蓄積された電気エネルギーに基づく信号の出力を行う第3層213が基板としての第4層214上に,層状に層状に積層されており,
導電層212fと,
第3層213は,第2層212で生成された電気エネルギーを画素毎に蓄えるコンデンサ221と,蓄えられた電気エネルギーを信号として出力するためのスイッチング素子であるトランジスタ222を用いて構成され,
トランジスタ222は無機半導体系のものであり,
走査駆動回路25から走査線223-1?223-mのうちの1つ走査線223-p(pは1?mのいずれかの値)に読出信号RSが供給し,コンデンサ221-(p,1)?221-(p,n)に蓄積された電気エネルギーが信号線224-1?224-nに読み出し,信号変換器271-1?271-nで電気エネルギー量に比例する電圧信号SV-1?SV-nを生成し,レジスタ272で供給された電圧信号が順次選択されて,A/D変換器273で画像信号の生成を行う信号選択回路27を,有する放射線画像取得装置」

(2-2)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特表2004-533122号公報(以下「引用例2」という。)には,「広動的範囲デジタルイメージングシステム及び方法」(発明の名称)に関して,図1,2とともに以下の記載がある。

ア 「【0012】
図1は本発明の例示的なTFTを基礎とした検知システム10の断面である。検知システム10は,上部電極12と,誘電体層14と,アモルファスシリコンTFT読取マトリクス18へ結合したセンサー16とを有するイメージングアレイを有している。該イメージングアレイ(要素12-18)は,典型的に,機械的安定性のためにガラス基板20の上に装着される。センサー16は,好適には,これらに制限されるものではないが,例えば,アモルファスのセレン(Se),ヨウ化鉛(PbI2),臭化タリウム(TlBr),ヨウ化インジウム(InI),テルル化カドミウム(CdTe),及びその他の感光性物質等のX線半導体層を有しており,ピクセルマトリクス内の複数個のピクセル24(電荷回収電極)を収容している。以下において本発明をセレン層について説明するが,その他の適宜の化合物のいずれかを置換させることが可能であることを理解すべきである。各ピクセル24はその上に電子阻止層26を有することが可能である。TFT読取マトリクス18は複数個のTFT30及び単一格納コンデンサ32を有している。例えば非破壊的テスティング適用例において使用する例示的な検知器10は,ピクセルマトリクスが3072×2560個のピクセルを包含し,各ピクセルが139μm×139μmの寸法である14インチ×17インチの寸法のアクティブなイメージング区域を有することが可能である。
【0013】
ピクセル24は二次元アレイに配列されており,図2に示したように,ゲート制御線41の行40及びイメージ出力線43の列42を有している。電荷増幅器44及び関連する電荷積分器回路45が各画像出力線へ取付けられており且つ当該技術において公知の如く相関型二重サンプリング回路46へ接続している。各ピクセル要素は,図1における要素60により模式的に示されているような3コンデンサ直列回路と電気的に類似している。動作について説明すると,最大でミクロン当たり約10ボルトのバイアス電界を,TFTアレイ18の底部を接地し且つ電源70(図1に示してある)を使用して上部電極12へ高電圧を印加することによりセレン層を横断して形成させる。次いで,図1に示したように,該検知器をX線に露光させる。その結果発生する強度が変調されたX線フラックスが吸収されるX線エネルギの量に比例して該セレン内に電子・正孔対を発生する。
【0014】
バイアス用電界は,電荷対を分離し,次いで,それらは表面に対してほぼ直交する電界線に沿って移動する。フラットパネルX線検知器において使用するためのマサチューセッツ州ピーボディのアナロジックの子会社であるANRADにより製造される合金のようなセレン合金を適切な移動度及び長いディープトラッピング(deep-trapping)寿命を与えるような構成とすることが可能であり,従って殆どの電荷は再結合なしで半導体の厚さを介して移動する。電子50は真っ直ぐ上方へ移動し且つセレン・誘電体界面15に蓄積する。正孔52はTFTアレイ構成体上側の最も近いピクセル電極,典型的には初期的発生位置のすぐ下側の電極へ向かって下方へ牽引される。全ての移動された正孔はどれかのピクセルによって回収され,且つ精密なピクセル製造ホトリソグラフィが一様な電荷の回収を確保する。直接変換検知器は1つの画像形成変換プロセスのみが関与するので,ピクセル利得変動を導入する付加的なプロセスは存在しない。」

イ 「【0023】
上述したように,電源70を使用してセンサー層16を横断してバイアス電圧を印加する。センサー層16内の感光体と相互作用を行うX線が電子・正孔対を発生し,該対は印加電界によって分離される。回収される電荷の数は印加電界の関数である。電界が増加されると,より高い信号が回収され,それに対応して,より高いノイズが一定の信号対雑音比を維持する。信号対雑音比における損失がないことを確保するために最小の電界(E_(C))が必要であるが,電界がこの最小値を超えて増加されると,信号対雑音比は一定に止まる。従って,印加電界がE_(C)を超えて増加されると,デジタル電子飽和点が減少し,動的範囲を減少させる。従って,プログラム可能な印加電界を有する本発明の単一イメージングシステムは多くの適用例を満足させることが可能である。従って,本発明のイメージングシステム10はプログラム可能な印加電界を与えることが可能なプログラム可能な高電圧電源70を有している。」

(2-3)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開平4-324680号公報(以下「引用例3」という。)には,「カルコパライト型化合物多結晶半導体の製造方法」(発明の名称)に関して,図5,6とともに以下の記載がある。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,太陽電池,光センサ及び薄膜トランジスタ等に用いられるカルコパイライト型化合物多結晶半導体の製造方法に関する。」

イ 「【0004】従来,化学量論組成比にあるCuInX_(2)薄膜の形成法としては,例えばスパッタ法や蒸着法等で直接CuInX_(2)薄膜を形成する方法や,あるいはその構成材料である三元素やCu_(2)Se-In_(2)Se_(3),CuIn-Se等の擬二元の組成原料をスパッタ法,蒸着法,スプレー法等により多層に形成して成る膜を熱アニールにより成長させる方法,さらには,この擬二元組成原料を同時に蒸着法やスパッタ法等により形成して成る混合膜を熱アニールにより反応し成長させる方法などがある。」

ウ 「【0042】次に,本発明製造方法による多結晶半導体をチャネル層とした薄膜トランジスタの製造方法を説明する。
【0043】図5及び図6は,その薄膜トランジスタの製造工程を説明するための素子構造断面図で,図5は工程の前半を示し,図6はその後半を示している。
【0044】図5(イ)に示される第1工程では,セラミックスや石英などからなる絶縁性の基板(51)上にCuInSe_(2)半導体からなる出発材料(52)を形成した後,島状にパターニングを行う。
【0045】同図(ロ)に示される第2工程では,耐熱性薄膜(53)となるSiO_(2)をこの島状の出発材料(52)を被うように形成した後,熱処理を施し多結晶半導体(52a)とする。
【0046】次に,同図(ハ)に示される第3工程では,ゲート金属膜(54)となるクロム膜を,その島状の多結晶半導体(52a)のチャネル部となるべき部分の直上に形成しパターニングする。そして,同図(ニ)に示される第4工程では,ドレイン,ソース領域に相当する部分について,耐熱性薄膜(53)をエッチングし,開口部(55)を設ける。
【0047】図6(イ)に示される第5工程では,パッシベーション膜(56)となるSiO_(2)膜を形成する。
【0048】同図(ロ)に示される第6工程では,ソース,ドレイン領域に相当する部分について,パッシベーション膜(56)をパターニングする。
【0049】次に,同図(ハ)に示される第7工程では,インジュウム又は銅からなるソース電極(57)とドレイン電極(58)を形成する。この場合,これら電極材料としては,この薄膜トランジスタがnチャネルとして動作させる場合には,インジュウムを,pチャネルとして動作する場合は,銅を採用する。これは,次工程のアニール処理によって,斯る金属の拡散を利用して,この多結晶半導体(52a)にオーミックコンタクト用半導体部を形成するためである。
【0050】最後に同図(ニ)に示される第8工程では,それら電極材料のこの多結晶半導体(52a)への拡散のためのアニール処理を施し,素子は完成する。」

エ 上記ウを参酌しつつ,図6(ニ)を見ると,CuInSe_(2)半導体をチャネルとしたトップゲート型の薄膜トランジスタであることが分かる。

(3)対比
以下に,補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「第1層211から出力された電磁波(光)によって電子と正孔を発生する電荷発生層212dを含む電磁波(光)を電気エネルギーに変換する第2層212」と,補正発明の「外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される信号生成部」とは,どちらも光エネルギーによって,電子-正孔対を形成していることから,両者は,「光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される信号生成部」を有している点で共通する。

イ 引用発明の「第3層213」は,「第2層212で得られた電気エネルギーの蓄積」を行っており,引用例1の第4図から「第2層212」が「第3層213」と接していることは明らかであるから,引用発明と,補正発明とは,「信号生成部に接触し,」「電荷」を「保存する信号保存部」を有している点で共通する。

ウ 引用発明の「走査駆動回路25から走査線223-1?223-mのうちの1つ走査線223-p(pは1?mのいずれかの値)に読出信号RSが供給し,コンデンサ221-(p,1)?221-(p,n)に蓄積された電気エネルギーが信号線224-1?224-nに読み出し,信号変換器271-1?271-nで電気エネルギー量に比例する電圧信号SV-1?SV-nを生成し,レジスタ272で供給された電圧信号が順次選択されて,A/D変換器273で画像信号の生成を行う信号選択回路27」は,補正発明の「信号保存部に制御信号を印加して該信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部」に相当する。

エ 引用発明の「導電層212f」は,補正発明の「第2電極」に相当し,引用発明の「第2層212で生成された電気エネルギーを画素毎に蓄えるコンデンサ221と,蓄えられた電気エネルギーを信号として出力するためのスイッチング素子であるトランジスタ222を用いて構成され」た「第3層213」は,補正発明の「電荷を保存するキャパシタ及び」「キャパシタと連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層」に相当する。

オ 引用発明の「放射線画像取得装置」は,補正発明の「電子医療映像装置」に相当する。

(一致点)
したがって,補正発明と引用発明とは,
「光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される信号生成部と,
前記信号生成部に接触し,電荷を流入して保存する信号保存部と,
該信号保存部に接触し,該信号保存部に制御信号を印加して該信号保存部に保存された電荷による電気信号を伝達されて映像信号に変換する信号変換部とを備え,
前記信号生成部と,前記信号保存部は,順次に形成された層状構造であり,
前記信号保存部は,
第2電極と,
該第2電極と電気的に接触され,電荷を保存するキャパシタ及び前記キャパシタと連結されたトランジスタで構成された単位セルを複数個備える素子層と,
前記第2電極と,前記素子層が形成された基板と,
を備えたことを特徴とする電子医療映像装置」
である点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
補正発明の信号生成部は,「外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成される」のに対し,引用発明の電荷発生層212dは,その上層である「1層211から出力された電磁波(光)によって電子と正孔を発生」されている点。

(相違点2)
補正発明は,「電子-正孔対を分離し,その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように,前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源」を有しているのに対し,引用発明は,この点が特定されていない点。

(相違点3)
補正発明は,「信号生成部と,」「信号保存部と,」「信号変換部は,順次に形成された層状構造」を有しているのに対し,引用発明は,補正発明の「信号生成部」に相当する部分を含む「第2層212」と,補正発明の「信号保存部」に相当する部分を含む「第3層213」が順次に積層されているものの,補正発明の「信号変換部」に相当する「信号選択回路27」が形成されている箇所については特定されていない点。

(相違点4)
補正発明は,「信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層」を有しているのに対して,引用発明は,この点が特定されていない。

(相違点5)
補正発明は,「素子層に備えられた」「トランジスタ」が「基板上にIn2Se3とCu2Se3とを利用して形成したアクティブ層」を有しているのに対して,引用発明のトランジスタの活性層は,「無機半導体」としか特定されていない点。

(相違点6)
補正発明は,「該アクティブ層の両側に形成されたソース電極及びドレイン電極と,前記アクティブ層上に形成されたゲート絶縁膜と,該ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備えた」薄膜トランジスタ,すなわち正スタッガード型であるのに対して,引用発明はこの点が特定されていない点。

(4)判断

ア 相違点1,2について
引用例2には,イメージング装置において,「センサー層16」に「X線エネルギの量に比例してセレン内に電子・正孔対を発生」させること,及び,「電源70を使用してセンサー層16を横断してバイアス電圧を印加」し,「センサー層16内」に発生した「電子・正孔対」を「印加電界によって分離」することが記載されいる。
引用発明と,引用例2に記載の発明は,X線の照射による画像取得装置という技術分野が共通し、放射線の量に比例して電子・正孔対が発生するという機能も共通するから,引用発明において,引用例2に記載の技術を適用して,「外部から照射される光エネルギーを吸収して電子-正孔対が形成」するようにし,「電子-正孔対を分離し,その極性によって前記信号生成部内の互いに反対側に密集されるように,前記信号生成部の一面に接触して電気信号を印加する電源」を設けることは,当業者が容易になし得たことといえる。

イ 相違点3について
半導体集積回路の技術分野において,半導体集積回路の集積度を上げることは,不断の課題であり,その解決手法の1つとして,集積回路を層状に積み重ねて,3次元集積回路とすることは,周知技術である。
そうすると,引用発明において,上記周知の3次元集積回路の技術を採用し,「信号選択回路27」を集積度向上のため,「第2層212」「第3層213」の下層に形成することは,当業者が容易になし得たことといえる。

ウ 相違点4について
引用例2には,センサー内で発生し,分離された電荷を回収する「ピクセル24(電荷回収電極)」の「上に電子阻止層26を」設けることが記載されている。
引用発明と,引用例2に記載の発明は,X線の照射による画像取得装置という技術分野が共通するから,引用発明において,引用例2に記載の「電子阻止層」を適用して,「信号生成部内で分離された電荷のうち一種の電荷のみの流入を許容する遮蔽層」を設けることは,当業者が容易になし得たことといえる。

エ 相違点5
引用例3には,薄膜トランジスタの「半導体」として,「Cu_(2)Se-In_(2)Se_(3)」の「擬二元の組成原料を」使用して形成した「CuInSe_(2)」を用いることが記載されている。
引用発明と,引用例3に記載の発明は,「薄膜トランジスタ」という技術分野が共通するから,引用発明において,引用例3に記載のCu_(2)Se-In_(2)Se_(3)の擬二元の組成原料を使用して形成する技術を適用して,「In2Se3とCu2Se3とを利用して形成したアクティブ層」(相違点5)を設けることは,当業者が容易になし得たことといえる。

オ 相違点6
正スタッガード型の薄膜トランジスタは,例えば引用例3にも記載されているように周知の構造である。
したがって,引用発明の薄膜トランジスタを,引用例3に記載の周知のトップゲート型の薄膜トランジスタとすることは,当業者が適宜なし得た設計的事項である。

カ 以上のとおり,相違点1?6に係る構成は,当業者が容易になえした範囲に含まれるものであり,また当該構成を採用したことによる格別の効果もない。

キ 判断についてのまとめ
以上検討したとおり,補正発明は,当業者における周知技術を勘案することにより,引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正は,補正後の特許請求の範囲により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。

5 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?15係る発明は,平成23年9月15日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲1?15に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものである。

第4 引用例に記載された発明
引用例1?3には,上記第2,4(2)(2-1)?(2-3)のとおりの記載があり,また,引用例1には,第2,4(2)(2-1)のとおりの引用発明が記載されている。

第5 判断
本願発明は,補正発明から,上記第2,2に記載した補正事項1についての補正によりなされた技術的限定を省いたものである。
そうすると,第2,4において検討したとおり,補正発明は,周知技術を勘案することにより,引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,補正発明から技術的限定を省いた本願発明についても,当然に,周知・慣用技術を勘案することにより,引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-23 
結審通知日 2014-01-28 
審決日 2014-02-13 
出願番号 特願2008-59784(P2008-59784)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴山 将隆  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 西脇 博志
近藤 幸浩
発明の名称 カルコゲン薄膜トランジスタアレイを備えた電子医療映像装置  
復代理人 西村 和晃  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  
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