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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B |
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管理番号 | 1289209 |
審判番号 | 不服2012-18657 |
総通号数 | 176 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-25 |
確定日 | 2014-06-26 |
事件の表示 | 特願2007-327554「処理中の視覚的欠陥に対して材料のウェブを光学的に点検するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月15日出願公開、特開2008-110814〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成9年3月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年3月29日、米国)に出願した平成9年特許願第94492号の一部を平成19年12月19日に新たな特許出願としたものであって、平成24年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年9月25日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、平成25年5月30日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月31日付けで手続補正がなされたものである。 第2.本願発明 平成25年7月31日付けで補正された、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から見て、本願の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された下記のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。) 《本願発明》 処理中の視覚的欠陥に対して材料のウェブを光学的に点検するための装置において、 特定の障害条件の検出に専用化された一つ以上のビデオカメラを有する、製造の様々な段階において製品を点検するための第1及び第2点検ステーションと、 点検されるウェブの選択領域に向けられ、そのリアルタイム画像を発生する各ビデオカメラと、 該ビデオカメラに連結され、点検される欠陥フリー領域を表す記憶パラメータを含む処理手段であって、該リアルタイム画像を表現するデータを該記憶パラメータと比較し、該リアルタイム画像データと該記憶パラメータが、欠陥が検出されたことを指示する所定の程度異なる時は常に、障害信号を発生するための、上記処理手段と、 欠陥を含むウェブの部分を拒絶するように機械を制御するために、該障害信号に応答する制御手段とを具備する、上記装置。 第3.審判で通知した拒絶理由 審判において、平成25年5月30日付けで通知した拒絶の理由の[理由2]は、大要次のとおりである。 [理由2] 本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記《引用文献等一覧》の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 《引用文献等一覧》 引用例1.特開平5-305926号公報 引用例2.特開平8-40422号公報 第4.引用例の記載事項 平成25年5月30日付けの拒絶理由通知に引用された、本願の分割の基礎出願である上記平成9年特許願第94492号の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用例1(特開平5-305926号公報)には、次の記載がある。 a「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、包装材料のシールずれ又は製造年月日等の印字の有無の検出及び検出により不良品とされた包装袋の選別を人手によらず自動的に行うことができるピロー包装機に関する。 【0002】【従来の技術】特開昭59-134113号は、充填チューブに包装フィルムを巻き付けて筒状袋を形成して垂下させ、該充填チューブを通して筒状袋内に内容物を充填した後、筒状袋の上端部を溶断接着するピロー包装機について開示している。 【0003】しかしながら、こうしたピロー包装機においては、シールずれ、すなわち得られる包装袋の縦シール又は横シールの位置がずれることが生じることが避けられない。こうしたシールずれが生じた包装袋の検出及びその排除は従来人手により行っていた。また、包装袋の裏面に付される製造年月日等の印字の有無の検出及び印字のなされていない包装袋の検出・排除についても同様であった。」 b「【0004】【発明が解決しようとする課題】本発明は、シールずれ又は製造年月日等の印字有無の検出及び検出により不良品とされた包装袋の選別を人手によらず自動的に行うことができるピロー包装機の提供を目的とする。 【0005】【課題を解決するための手段】本発明は、充填チューブを有するピロー包装機において、(a)充填チューブの下流に設けられ、包装袋の良否を選別する選別手段、(b)充填チューブにより形成される筒状の包装材料に対向して設けられた撮像手段、(c)撮像手段によって撮像された映像を画像データに変換する回路、(d)得られた画像データを記憶する手段、(e)記憶された画像データに基づいてフレームの所定位置のウインド中における特定の種類の画像データの占める割合が所定範囲にあるか否かを判定する判定手段、及び(f)上記判定手段により得られた判定結果に基づいて上記選別手段を制御する制御手段を有することを特徴とするピロー包装機である。」 c「【0006】【作用および効果】充填チューブの周囲において、包装材料は筒状袋に形成される。続いて、得られた筒状袋に、該充填チューブを通して内容物が充填される。同時に、筒状袋の外面が撮像される。得られた映像は、画像データに変換する回路に送られ、画像データに変換された後、上記画像データを記憶する手段に格納される。 【0007】次に、画像データを記憶する手段に格納された画像データから、フレームの所定位置のウインド中における特定の種類の画像データの占める割合を求め、これが所定範囲にあるか否かを判定し、所定範囲にない場合にはシールずれ等の不良品と認定される。不良品と認定されると、充填チューブの下流に設けられた選別手段、例えば包装袋を振り分ける手段を切り替え、不良品を不良品用搬送路に送り排除する。これにより、シールずれ又は製造年月日等の印字の有無の検出及び検出により不良品とされた包装袋の排除を人手によらず自動的に行うことができる。」 d「【0008】【実施例】以下に本発明の実施例であって、スナック菓子のような内容物を包装して箱詰めするための自動包装装置を図に基づいて説明する。自動包装装置1は、図1に示すように、包装フィルムFを袋状に成形すると共に得られた包装袋に内容物を充填密封するピロー包装装置2と、該ピロー包装装置2の下流に配置されて包装袋の密封不良を検出する密封不良品検出装置3と、包装箱を成形する製函装置4と、上記密封不良品検出装置3の下流に配置されて上記製函装置4から送られた包装箱に包装袋を詰める箱詰め装置5とを有している。 【0009】ピロー包装装置2は、図2に示すように、内容物を定量的に供給するホッパー20を有している。また、該ホッパー20の下方には充填チューブ21が連続して設けられている。該充填チューブ21には、その周囲に縦シール機23が配設されており、図3に示すように、包装フイルム供給部19から供給されて上記充填チューブ21に巻き付けられた包装フイルムFを筒袋状に成形する。該充填チューブ21の両側には、図2に示すように、それぞれベルトコンベア22が配置されており、包装フイルムFに当接して該包装フイルムFを包装袋1個分の長さずつ間欠的に下方に送るようになっている。 【0010】また、上記充填チューブ21の下方には、横シール機24が配設されている。該横シール機24は、中央部に横カッター25が設けられており、それを挟んで上下にヒートシール機26a、26bが配設されている。上記充填チューブ21により成形された筒状の包装フィルムに対向して、図3に示すように、充填前の包装フイルムを撮像するためのテレビカメラ55が設けられている。上記充填チューブ21の下方には、さらに、包装袋を良品用搬送路27又は不良品用搬送路28に選択的に排出する揺動シュート29が配置されている。」 e「【0011】テレビカメラ55は、図3に示すように、テレビカメラ55から得られた映像を画像データに変換するRGBデコーダ61、得られた画像データを記憶するカラー画像メモリー62、記憶された画像データを基にフレームの所定位置のウインド中における特定の種類の画像データの占める割合が所定範囲にあるか否かを判定する判定回路63、及び得られた判定結果を基上記揺動機構を有する揺動シュート29を制御する制御部64に順次接続されている。 【0012】次に、ピロー包装装置2の作用について説明する。包装フイルム供給部(図示せず)から供給された包装フイルムFは、上記充填チューブ21に巻き付けられ、上記縦シール機23により筒袋状に形成される。この時、テレビカメラ55により筒袋状の包装フィルムの外面が撮像される。テレビカメラ55により得られた映像は、RGBデコーダ61に送られ、Y、R-Y、B-Yの色差信号(画像データ)に変換され、カラー画像メモリー62に格納される。尚、カラー画像メモリーの構成は、特に制限されないが、例えばY、R-Y、BYそれぞれについてフレーム(画面)当たり512(H)×480(V)×8(bits)程度で充分である。 【0013】判定回路63は、上記カラー画像メモリー62に格納された画像データから、フレームの所定位置のウインド中における特定の種類の画像データの占める割合を求め、これが所定範囲にあるか否かを判定する。すなわち、図4に示すように、包装袋の裏面の中央部分70が白色であり、その周りに所定の幅のレモン色の縁取り71があるように設計された包装袋の場合について説明すると、フレーム(画面)の所定位置のウインドW-1、W-2のレモン色の面積比率を上記カラー画像メモリー62のY、R-Y、B-Yの値を基に算出し、これが所定範囲にあるか否かを判定する。同様に上記カラー画像メモリーのフレーム(画面)の所定位置のウインドW-3、W-4のレモン色の面積比率を求め、これが所定範囲にあるか否かを判定する。 【0014】製造年月日等の印字の有無の検出は、Y、R-Y、B-Yの値を基に印字がなされる所定位置のウインドW-5の黒色の面積比率を求め、これが所定値以上であるか否かを判定するこれらの判定において、所定範囲内にない場合には、得られた包装袋の縦シール及び横シール、包装袋の印刷の位置や向きに商品価値を損ねる程度のズレが生じている、あるいは製造年月日等の印字がなされておらず、該包装袋は不良品であると判断する。」 f「【0015】なお、テレビカメラ55により得られた映像は、必ずしも色差信号に変換する必要はなく、対象となる包装袋が黒色と白色等といった判別の容易な配色を用いている場合には、単に2値化処理を行っても良い。次に、筒状の包装フィルムFは上記ベルトコンベア22により間欠的に下方に送られ所定の部分が横シール機24によりヒートシールされて底部が形成される。続いて、得られた包装袋に、上記ホッパー20から内容物が充填チューブ21を通して定量的に充填される。 【0016】次に、充填された包装袋は、該充填チューブ21の両側に設けられたベルトコンベア22により、包装袋1個分の長さだけ下降させられる。続いて、上記横シール機24の下ヒートシール機26bにより包装袋の上端横シールがなされ、同時に上述した上シール機26aによる包装袋の下端横シールがなされ、さらに、横カッター25により密封された包装袋が包装フイルムFから切り離される。すなわち、内容物と空気とが入った包装袋が密封されて切断されると同時に、次の包装袋の下端横シールが形成されたことになる。 【0017】制御部64は、該当包装袋がテレビカメラ55によって撮像されてから揺動シュート29に到達するまでの遅延時間をもって揺動シュート29を制御する。揺動シュート29は、内容物と空気が入って密封されて切断された包装袋を、制御信号に基づいて良品搬送路27又は不良品用搬送路28に排出する。揺動シュートに代えて、空気ノズル排除装置を設けてもよい。すなわち、テレビカメラ55によって撮像された包装袋をベルトコンベヤで連続的に搬送し、不良包装袋が空気ノズルの前方に到来すると、制御部64は空気ノズルから空気を噴射して、該包装袋をベルトコンベヤから排除するように空気ノズルを制御する。」 g 段落0010の「上記充填チューブ21により成形された筒状の包装フィルムに対向して、図3に示すように、充填前の包装フイルムを撮像するためのテレビカメラ55が設けられている。」との記載から、充填チューブ21により成形された筒状の包装フィルムに対向する位置に、テレビカメラ55が設けられていることが了知できる。 h 段落0011?0014並びに図3、図4の記載から見て、引用例1に記載の実施例では、ウインドW-1、W-2のレモン色の面積比率が所定範囲にあるか否かによって縦シールのシールずれを判断し、ウインドW-3、W-4のレモン色の面積比率が所定範囲にあるか否かによって横シールのシールずれを判断し、ウインドW-5の黒色の面積比率が所定値以上であるか否かによって製造年月日等の印字の有無の判断を行っている、すなわち、引用例1に記載の実施例では、包装袋の縦シールのシールずれ、包装袋の横シールのシールずれ、及び製造年月日等の印字が無い、の3種類の不良を検出していることが了知できる。 i 段落0011?0014並びに図3、図4の記載から、上記3種類の不良を検出するために、まず、テレビカメラ55から得られた映像を、Y、R-Y、B-Yの色差信号(画像データ)に変換したデータから、フレームの所定位置のウインドW-1?W-5中における特定の種類の画像データ、具体的にはウインドW-1?W-4のレモン色の画像データ、及びウインドW-5黒色の画像データ、の占める割合を求め、次いで、これら割合と、判定手段に記憶している上記所定範囲又は所定値とを比較して相違を検出し、レモン色の面積比率が所定範囲内にない場合には、縦シール又は横シールにシールずれの不良が生じていると判断し、黒色の面積比率が所定値以上でない場合には、製造年月日等の印字がなされていない不良が生じていると判断していることが了知できる。また、段落0014の記載から、面積比率の相違の検出結果が、「縦シール又は横シールのシールずれの不良」あるいは「製造年月日等の印字が無い不良」と同じ場合であっても、シールずれや製造年月日等の印字が無い不良ではなく、「包装袋の印刷の位置や向きに商品価値を損ねる程度のズレが生じている」不良である場合もあることが了知できる。 第5.引用発明 引用例の上記記載事項を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、引用例1には、次の発明が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。) 《引用発明》 充填チューブを有するピロー包装機により包装袋を形成中の、充填前の筒袋状の包装フィルムに対して、テレビカメラによって撮像された映像の画像データを用いて、包装袋のシールずれ及び製造年月日等の印字の有無を検出するための装置において、 包装袋のシールずれ及び製造年月日等の印字の有無を検出するために、充填前の包装フィルムを撮像するためのテレビカメラを設けた位置と、 充填前の筒袋状の包装フィルムの外面の、白色である包装袋の裏面の中央部分とその周りの所定の幅のレモン色の縁取り、及び製造年月日等の印字がなされる所定位置を含む領域に向けられ、その撮像された映像を発生する該テレビカメラと、 該テレビカメラに連結され、フレームの所定位置のウインドW-1、W-2のレモン色の面積比率が所定範囲にあるか否か、ウインドW-3、W-4のレモン色の面積比率が所定範囲にあるか否か、及びウインドW-5の黒色の面積比率が所定値以上であるか否かを判定する判定手段であって、撮像された映像を変換した画像データから、フレームの所定位置のウインドW-1、W-2のレモン色の面積比率、ウインドW-3、W-4のレモン色の面積比率、及びウインドW-5の黒色の面積比率を求め、これら面積比率と対応する、該判定手段に記憶している所定範囲又は所定値とを比較して相違を検出し、レモン色の面積比率が所定範囲にないこと、又は黒色の面積比率が所定値以上でないことを検出したときは、縦シールのシールずれがある、横シールのシールずれがある、又は製造年月日等の印字が無い、不良品であると判断するための、上記判定手段と、 不良品(不良包装袋)を排除するように揺動シュートを制御するために、該判定手段に応答する制御部とを具備する、上記装置。 第6.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「充填チューブを有するピロー包装機により包装袋を形成中」は、本願発明の「処理中」に相当し、同様に、 「包装袋」は「製品」に、 「充填前の筒袋状の包装フィルム」は「材料のウェブ」に、 「テレビカメラ」は「一つ以上のビデオカメラ」に、 「テレビカメラによって撮像された映像の画像データを用いて、充填前の筒袋状の包装袋のシールずれ及び製造年月日等の印字の有無を検出する」は「光学的に点検する」に、 それぞれ相当する。 引用発明の「横シールのシールずれがある」、「縦シールのシールずれがある」及び「製造年月日等の印字が無い」は、視覚的に判定できる「レモン色の面積比率」及び「黒色の面積比率」に基づいて判断される欠陥であるから、本願発明の「視覚的欠陥」に相当する。 引用発明の「縦シールのシールずれがある」、「横シールのシールずれがある」及び「製造年月日等の印字が無い」のそれぞれは、本願発明の「特定の障害条件」に相当する。 引用発明の「充填前の包装フィルムを撮像するためにテレビカメラを設けた位置」は、本願発明の「点検ステーション」に相当し、同様に、 「テレビカメラを設けた」は「一つ以上のビデオカメラを有する」に、 「充填前の筒袋状の包装フィルムの外面の、白色である包装袋の裏面の中央部分とその周りの所定の幅のレモン色の縁取り、及び製造年月日等の印字がなされる所定位置を含む領域」は「点検されるウェブの選択領域」に、 それぞれ相当する。 引用例1の段落0012の記載などから見て、引用発明の「テレビカメラによって撮像された映像」は、ピロー包装機により包装袋を形成中、リアルタイムで撮像している画像であると認められるから、本願発明の「リアルタイム画像」に相当し、引用発明の「撮像された映像を変換した画像データ」は、本願発明の「リアルタイム画像を表現するデータ」に相当する。 引用発明の「これら面積比率と対応する、判定手段に記憶している所定範囲又は所定値」、具体的には、「ウインドW-1、W-2のレモン色の面積比率」と比較される「所定範囲」、「ウインドW-3、W-4のレモン色の面積比率」と比較される「所定範囲」、及び「ウインドW-5の黒色の面積比率」と比較される「所定値」は、点検される領域であるウインドW-1?W-5に欠陥がないことを示す参照値ないしは設定値、すなわち、パラメータであって、判定手段に記憶されているから、本願発明の「点検される欠陥フリー領域を表す記憶パラメータ」に相当する。 引用発明の「フレームの所定位置のウインドW-1、W-2のレモン色の面積比率が所定範囲にあるか否か、ウインドW-3、W-4のレモン色の面積比率が所定範囲にあるか否か、及びウインドW-5の黒色の面積比率が所定値以上であるか否かを判定する判定手段」は、上記のとおり本願発明の「点検される欠陥フリー領域を表す記憶パラメータ」に相当する「所定範囲又は所定値」を記憶しているから、本願発明の「点検される欠陥フリー領域を表す記憶パラメータを含む処理手段」に相当する。 引用発明の「撮像された映像を変換した画像データから、フレームの所定位置のウインドW-1、W-2のレモン色の面積比率、ウインドW-3、W-4のレモン色の面積比率、及びウインドW-5の黒色の面積比率を求め、これら面積比率と対応する、該判定手段に記憶している所定範囲又は所定値とを比較し」は、本願発明の「該リアルタイム画像を表現するデータを該記憶パラメータと比較し」に相当する。そして、引用発明が前記「比較」によって「相違を検出し、レモン色の面積比率が所定範囲にないこと、又は黒色の面積比率が所定値以上でないことを検出したとき」は、「シールずれ」又は「製造年月日等の印字の無い」不良を検出したときであるから、本願発明の「欠陥が検出されたことを指示する所定の程度異なる時」との要件を満たす。 引用発明の「不良品であると判断する」は、本願発明の「障害信号を発生する」に相当する。そして、引用発明においても、「レモン色の面積比率が所定範囲にないこと、又は黒色の面積比率が所定値以上でないことを検出したとき」は、常に、「不良品であると判断する」と認められるから、引用発明の「不良品であると判断する」は、本願発明の「常に、障害信号を発生する」との要件を満たす。 引用発明の「不良品(不良包装袋)」は、本願発明の「欠陥を含むウェブの部分」に相当し、同様に、 「排除する」は「拒絶する」に、 「揺動シュートを制御」は「機械を制御」に、 「判定手段に応答する制御部」は「障害信号に応答する制御手段」に、 それぞれ相当する。 そうすると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。 《一致点》 処理中の視覚的欠陥に対して材料のウェブを光学的に点検するための装置において、 特定の障害条件を検出する一つ以上のビデオカメラを有する点検ステーションと、 点検されるウェブの選択領域に向けられ、そのリアルタイム画像を発生するビデオカメラと、 該ビデオカメラに連結され、点検される欠陥フリー領域を表す記憶パラメータを含む処理手段であって、該リアルタイム画像を表現するデータを該記憶パラメータと比較し、該リアルタイム画像データと該記憶パラメータが、欠陥が検出されたことを指示する所定の程度異なる時は常に、障害信号を発生するための、上記処理手段と、 欠陥を含むウェブの部分を拒絶するように機械を制御するために、該障害信号に応答する制御手段とを具備する、上記装置。 《相違点1》 本願発明は、「特定の障害条件の検出に専用化された一つ以上のビデオカメラを有する」のに対し、引用発明では、「縦シールのシールずれがある」、「横シールのシールずれがある」及び「製造年月日等の印字が無い」を同一のテレビカメラによって検出している点。 《相違点2》 本願発明は、「製造の様々な段階において製品を点検するための第1及び第2点検ステーション」を有するのに対し、引用発明では、「包装袋のシールずれ及び製造年月日等の印字の有無を検出するために、充填前の包装フィルムを撮像するためのテレビカメラを設けた位置」が1つである、換言すれば、ビデオカメラを有する点検ステーションが1つである点。 第7.相違点の検討 1.相違点1について (1)本願明細書段落0048?0055には、次の記載がある。 j「【0048】点検は、パケットが空洞に置かれた後、上面フォイル装填の前、ウェブが前進している間、進行中のシステムの第1ステーション410において行われる。ステーション410において、視覚検査システムは、(1)トレイGの存在、(2)トレイG上の紙蓋の存在、(3)二次シール領域における異物の存在、(4)主要シール領域における異物の存在、を検出する。 【0049】図12において最良に見られた如く、システムの第1ステーション410は、垂直上に搭載され、前進しているウェブ11(概略的に示される)を見下ろす一対のビデオカメラ430及び431を含む(カメラ430のみが図12において可視である)。ビデオカメラは、一方のカメラが近いレーンにおける前進する空洞を結像し、もう一方のカメラが、遠いレーンの前進する空洞を結像する如く、機械の中心線の対向側に位置付けられる。……カメラ430と431からの像は、後述の如く、光学プロセッサ440によって処理され、上記の欠陥のうちのいずれが検出されたか判定する。二次又は主要シール領域におけるトレイ、紙蓋、針、縫合糸又は他の物質が検出されるならば、障害信号が、PLC140へ送信される。そのような異物が検出されるならば、障害が検出された特定のレーン(近位側、遠位側)を示すシール縫合障害信号が発生される。同様に、パケットトレイが検出されないか、もしくは適正に配置された紙蓋が、検出されないならば、トレイ不在障害信号、または、紙カバー紛失障害信号が、それぞれ、欠陥が発生した特定のレーンに対して発生される。……」 k「【0050】視覚システムの第2ステーション450は、主要シール形成後の製品又は製造プロセスにおける様々な欠陥についてチェックするために使用される6台のカメラ432?437(3台の下向きカメラと3台の上向きカメラ)を有する。3台の上向きカメラ432?434は、(1)密封後の主要シール周辺のシール領域における縫合製品の存在、(2)位置決め穴登録、(3)密封及び成形ステーションの間の不適当な登録によって引き起こされた空洞つぶれのチェックを行う。…… 【0055】……3つの下向きビデオカメラ435?437(カメラ437のみが可視)は、上面フォイル点検、曲がった隅部の点検、及びウェブ整列点検を行うために設けられる。」 (2)本願発明の「特定の障害条件の検出に専用化された」「ビデオカメラ」は、先入観なしにその文言のみを見れば、ビデオカメラが唯1種類の障害条件を検出するように専用化されているものと解される。しかし、上記jの記載によれば、第1ステーション410は、2台のビデオカメラ430及び431によって、(a)トレイGの存在、(b)トレイG上の紙蓋の存在、(c)二次シール領域における異物の存在、(d)主要シール領域における異物の存在、という4種類の検出を行う。また、上記kの記載によれば、第2ステーション450は、6台のカメラ432?437を有し、3台の上向きカメラ432?434によって、(e)密封後の主要シール周辺のシール領域における縫合製品の存在、(f)位置決め穴登録、(g)密封及び成形ステーションの間の不適当な登録によって引き起こされた空洞つぶれのチェックという3種類の検出を行い、3台の下向きビデオカメラ435?437によって、(h)上面フォイル点検、(j)曲がった隅部の点検、(k)ウェブ整列という3種類の点検を行う。上記jの記載によれば、2台のビデオカメラによって4種類の検出を行っているから、本願発明の「特定の障害条件の検出に専用化された一つ以上のビデオカメラ」とは、必ずしも、各ビデオカメラが唯1種類の検出を行うように専用化されていることを意味するのではないことが了知できる。すると、本願発明の「特定の障害条件の検出に専用化された」「ビデオカメラ」とは、1台のビデオカメラで唯一の障害条件を検出することのみを意味するのではなく、比較的少数の障害条件を検出するように専用化されていることをも意味すると解される。 (3)制御技術や検査技術の分野においては、複数又は多数の条件を検出することが望まれる場合に、1つの検出器(例えばビデオカメラ)によって、複数又は多くの条件を検出するようにすると、その検出器として複数又は多くの情報を検出できるもの(例えば白黒カメラではなくカラーカメラ)を採用する必要があり、また、その検出器の検出データを解析するための処理が複雑になって、検出器1台当たりのコスト(検出器自体のコスト並びにデータ処理に必要なハードウェア及びソフトウェアのコスト)が増大し、さらに、データ解析のための処理時間も長期化する一方、検出器の台数が少なくて済み、逆に、1つの検出器によって、唯一又は少数の条件を検出するようにすると、検出器1台当たりのコスト及びデータ解析のための処理時間が少なくて済むが、検出器の台数を多くする必要があることが、周知の技術的事項である。すると、複数又は多数の障害条件を検出するに際し、「特定の障害条件の検出に専用化された一つ以上のビデオカメラ」を用いるか、あるいは、複数又は多数の障害条件の検出に対応するビデオカメラを用いるかは、全体的なコスト、データ解析時間、保守点検の容易性等を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項といえるから、引用発明において、「縦シールのシールずれがある」、「横シールのシールずれがある」及び「製造年月日等の印字が無い」を同一のテレビカメラによって検出することに代えて、それぞれの検出に専用化された一つ以上のビデオカメラを用いるようにすることは、全体的なコスト、データ解析時間、保守点検の容易性等を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項であり、当業者が容易に推考し得たことである。また、引用発明では、「縦シールのシールずれ及び横シールのシールずれがある」は、レモン色の画像データを利用して検出しており、「製造年月日等の印字が無い」は、黒色の画像データを利用して検出していることから、「縦シール及び横シールのシールずれがある」に専用化された一つ以上のビデオカメラと、「製造年月日等の印字が無い」に専用化された一つ以上のビデオカメラとを用いるようにすることも、全体的なコスト、データ解析時間、保守点検の容易性等を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項であり、当業者が容易に推考し得たことである。 2.相違点2について (1)一般的に、製品の製造は、様々な段階(工程)を有するものであり、それら様々な段階のどこで、どの程度の回数、どのような検査を行うかは、その製品の各工程において不良品が発生する頻度、当該不良品の発生に気付かないまま製造を継続した場合に生じると予想される損失、各工程で不良品発生の検査を行うために必要なコスト等を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項である。 例えば、引用例1の段落0008、0018?0023には、テレビカメラによって撮像された映像の画像データを用いて、包装袋のシールずれ及び製造年月日等の印字の有無を検出した段階の後で、密封不良品検出装置3を用いて製品(包装袋)が密封不良であるか否かを検査する段階を設けることが記載されている。 また、本願発明の実施形態として例示されている「密封無菌パッケージ」は、いわゆるブリスタータイプの包装を行った製品であるが、ブリスタータイプの包装を行う際の特定の段階、具体的には、ブリスター部分(本願明細書段落0012では「空洞D」と称している。)に被包装物(本願明細書段落0012では「外科用縫合パケットC」が例示されている。)を挿入(本願明細書段落0012では「落下」と称している。)した後、ブリスター部分を密封する前に光学的な検査を行うことが、例えば、特公平7-37949号公報、特開昭63-162448号公報、特開平7-113750号公報に記載されており周知の技術的事項であり、それとは異なる特定の段階、具体的には、ブリスター部分を密封した後で光学的な検査を行うことが、例えば、特公平6-5214号公報、特公平7-40001号公報、特開平4-128124号公報に記載されており周知の技術的事項である。 (2)そうすると、引用発明において、「包装袋のシールずれ」及び「製造年月日等の印字の有無」の双方の検出(点検)を1つの位置において行っている(ビデオカメラを有する点検ステーションが1つである)ことに代えて、それぞれの検出を製造工程(段階)の異なる段階で行うようにし、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、各工程において不良品が発生する頻度、当該不良品の発生に気付かないまま製造を継続した場合に生じると予想される損失、各工程で不良品発生の検査(点検)を行うために必要なコスト等を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項であり、当業者が容易に推考し得たことである。 請求人は、平成25年7月31日付け意見書の【意見の内容】[2](3)において、『点検ステーションを「2つ」設けることが、密封ステーション70における密封(上面フォイル装填、主要シール形成)の前後における欠陥を同時に点検できるという技術的意義を有することが明らかである』と主張している。しかし、「2つの点検ステーションを密封ステーションの前後に設ける」ことは、本願請求項1に特定されておらず、本願発明1の構成ではないから、「密封ステーション70における密封……の前後における欠陥を同時に点検できる」作用効果及び技術的意義は、本願発明1の作用効果でも技術的意義でもない。請求人の上記主張は、請求項に記載された事項に基づく主張ではないから、失当であり採用できない。 なお、点検ステーションを、ある製造工程の前後に設ければ、その前後における欠陥を同時に点検できることは、当業者に自明な作用効果であり、当業者は、点検ステーションを幾つ、どの箇所に設けるかを検討する際に、当然このような自明な作用効果をも考慮するものである。したがって、2つの点検ステーションを密封ステーションの前後に設けることも、上記した種々の事項を考慮して、当業者が適宜決定すべき単なる設計的事項にすぎない。 3.本願発明の効果について 本願発明が奏する効果も、引用発明及び周知の技術的事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第8.本願発明の実施形態の容易想到性 本願発明の実施形態として明細書に説明されているものは、上記第7.2.(1)で指摘したように、いわゆるブリスタータイプの包装を行った製品について点検するものであり、「製造の様々な段階において製品を点検するための第1及び第2点検ステーション」は、実施形態では、「空洞D」に「外科用縫合パケットC」を「落下」させた後、「空洞D」を密封する前に第1ステーションで点検を行い、その後、「空洞D」を密封した後に第2ステーションで点検を行っている。 しかしながら、上記第7.2.(1)で指摘したように、いわゆるブリスタータイプの包装を行った製品について、ブリスター部分に被包装物を挿入した後、ブリスター部分を密封する前に光学的な検査を行うことも、ブリスター部分を密封した後で光学的な検査を行うことも、共に周知の技術的事項である。したがって、本願発明の実施形態の構成は、これら周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に推考し得たものであるから、仮に、本願発明を実施形態の構成に限定したとしても、その発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第9.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-01-17 |
結審通知日 | 2014-01-28 |
審決日 | 2014-02-10 |
出願番号 | 特願2007-327554(P2007-327554) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B65B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 正章、武内 大志 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
栗林 敏彦 二ッ谷 裕子 |
発明の名称 | 処理中の視覚的欠陥に対して材料のウェブを光学的に点検するための装置 |
代理人 | 特許業務法人小田島特許事務所 |