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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1289217
審判番号 不服2013-12967  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-05 
確定日 2014-06-26 
事件の表示 特願2008-112538「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日出願公開、特開2009-265237〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成20年4月23日の出願であって、平成24年9月10日付け、及び平成25年1月30日付けで手続補正がなされ、同年4月1日付けで拒絶の査定がなされ、同年7月5日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がなされ、これらに対し、同年9月9日付けで審尋がなされたものである。なお、審判請求人から、回答書の提出はなかった。

2.平成25年7月5日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「画素電極と前記画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板とを備え、前記TFT基板にフレキシブルケーブルが接続する端子部が形成された液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルの背後に設置されたバックライトと、前記液晶表示パネルと前記バックライトとを収容するモールドを有する液晶表示装置であって、
前記モールドは、前記液晶表示パネルを内側に収容する壁部と、前記液晶表示パネルを載置する段部を有し、
前記液晶表示パネルは前記モールドの前記段部において、遮光テープによって前記モールドに直接接着して固定されており、
前記段部の内側には、バックライトを構成する光学部品が設置され、
前記段部は切り欠きを有し、前記段部の切り欠きには前記光学部品に形成された突起が嵌合し、
前記モールドの前記壁部において、前記段部の切り欠きに対応する部分は、前記壁部が薄くなっており、前記壁部が薄くなっている部分において、前記遮光テープは外側へ張り出した突起を有しており、
前記遮光テープの前記外側に張り出した突起を有する部分の幅は、前記遮光テープの他の部分の幅よりも大きくなっていることを特徴とする液晶表示装置。」
と補正された。(下線は審決で付した。以下同じ。)
上記補正は、上記補正前の請求項4を請求項1とし、さらにその請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「遮光テープ」に関し、「遮光テープの外側に張り出した突起を有する部分の幅は、前記遮光テープの他の部分の幅よりも大きくなっている」と限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、前記に記載された事項により特定されるところ、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
ア.引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された「特開2005-292729号公報 」(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「図1は、本発明の実施の一形態の保持装置であるホルダ1を示す斜視図であり、図2はホルダ1の正面図であり、図3はホルダ1の背面図である。ホルダ1は、バックライトを有する液晶表示装置に用いられ、略矩形板形状の液晶表示素子2を保持するとともに、導光板3,光学シート体4および反射シート体5を一体的に保持する。光学シート体4は、複数のシート体を含む。図2に示す正面図において、紙面に垂直な方向手前が、保持する液晶表示素子2が所定の内容を表示する表示面側となり、また図2に示す正面図において、紙面に垂直な方向奥側が、導光板3が保持される背後側となる。」(段落【0025】)
・「ホルダ1は、枠体6、第1?第4係合片7?10、第1?第3位置決め突部11?13、および位置決め枠体20を有する。」(段落【0026】)
・「枠体6は、長辺側第1枠体部分14、長辺側第2枠体部分15、短辺側第1枠体部分16および短辺側第2枠体部分17を有し、これらが四角形状に枠組みされて形成される。長辺側第1枠体部分14、長辺側第2枠体部分15、短辺側第1枠体部分16および短辺側第2枠体部分17は、大略的に、それぞれ外周壁部18A,8B(審決注:「18B」の誤記。),18C,18Dと、各外周壁部18A,8B(審決注:「18B」の誤記。),18C,18Dから内周面側に突出する内側突出部19A,19B,19C,19Dとを有する。」(段落【0027】)
・「前述した前記第2?第4内側壁面32?34、第1テープ貼り付け面27、第1位置決め底面35、第1?第7位置決め側面41?47によって、第1位置決め凹所21が規定される。また第1位置決め底面35、第1?第7位置決め側面41?47によって、光学シート体4の一部が嵌合される第1嵌合凹所36が規定される。第1嵌合凹所36のうち、第1位置決め底面35、第1,第2および第5位置決め側面41,42,45によって規定される領域では、第2方向他方Y2に向かうに連れて、深さが大きくなる。」(段落【0045】)
・「図16は、導光板3、光学シート体4、液晶表示素子2および反射シート体5を、ホルダ1に取り付けた状態を示す正面図であり、図17は図16の切断面線XVII-XVIIから見た切断端面図であり、図18は図16の切断面線XVIII-XVIIIから見た切断端面図である。また図19は、図17において第1位置決め凹所21付近を拡大して示す拡大切断端面図である。また図20は、図18において第1位置決め凹所21付近を拡大して示す拡大切断端面図である。図21は、テープ体55の貼り付け領域を示す正面図である。なお図16において、斜線部は、液晶表示素子2の表示領域134を示している。液晶表示素子2には、この液晶表示素子2の画素電極に信号を与えるための配線が形成されるフレキシブルプリント配線基板100が接続されている。フレキシブルプリント配線基板100は、短辺側第2枠体部分17の外周壁部18Dに形成される切欠き201からホルダ1の外方に延びる。」(段落【0106】)
・「次に、液晶表示素子2をホルダ1の第3方向一方Z1側から、第1?第4支持面26,57(審決注:「58」の誤記。),93,102積層される光学シート体4に積層する。液晶表示素子2の第3方向他方Z2の表面2Bの周縁部28は、テープ体55を介して第1?第4支持面26,57(審決注:「58」の誤記。),93,102に支持されて、固定される。液晶表示素子2は、前述した第1?第4支持面26,57,93,102に垂直な方向への移動が規制され、導光板3および光学シート体4との相対的な位置関係が維持される。」(段落【0116】)
また、「図2に示す正面図において、紙面に垂直な方向手前が、保持する液晶表示素子2が所定の内容を表示する表示面側となり、また図2に示す正面図において、紙面に垂直な方向奥側が、導光板3が保持される背後側となる。」(段落【0025】)、及び図2、17、18の記載から、以下の事項が示されている。
・「導光板3、光学シート体4、及び反射シート体5は、液晶表示素子2の背後に設置されている。」
また、「第1位置決め側面41に、光学シート体4の一部が当接することによって、光学シート体4の第2方向一方Y1への移動が規制される。」(段落【0037】)、「また第1位置決め底面35、第1?第7位置決め側面41?47によって、光学シート体4の一部が嵌合される第1嵌合凹所36が規定される。」(段落【0045】)、「光学シート体4の周縁部129には、略矩形板状の第1シート体突部124および第2シート体突部125が形成される。」(段落【0099】)、及び図4、5、15、19の記載から、以下の事項が示されている。
・「光学シート体4に形成された第1シート体突部124は、第1嵌合凹所36に嵌合している。」
また、「枠体6は、長辺側第1枠体部分14、長辺側第2枠体部分15、短辺側第1枠体部分16および短辺側第2枠体部分17を有し、・・・それぞれ外周壁部18A,8B(審決注:「18B」の誤記。),18C,18Dと、各外周壁部18A,8B(審決注:「18B」の誤記。),18C,18Dから内周面側に突出する内側突出部19A,19B,19C,19Dとを有する。」(段落【0027】)、「長辺側第1枠体部分14は、第1突出壁面25と、第1支持面26と、第1テープ貼り付け面27と、第1?第4内側壁面31?34と、第1位置決め底面35と、第1?第7位置決め側面41?47とを有する。」(段落【0030】)、及び図4の記載から、以下の事項が示されている。
・「外周壁部18Aは、長辺側第1枠体部分14の第1?第4内側壁面31?34を有し、内側突出部19Aは、長辺側第1枠体部分14の第1突出壁面25と、第1支持面26と、第1テープ貼り付け面27と、第1位置決め底面35と、第1?第7位置決め側面41?47とを有している。」
また、「長辺側第1枠体部分14は、・・・第1?第4内側壁面31?34と、第1位置決め底面35と・・・とを有する。」(段落【0030】)、「第2内側壁面32は、第1内側壁面31よりも第2方向一方Y1に退避する。」(段落【0033】)、「テープ体55は、その内周部136が、図21に示すように光学シート体本体126の周縁部141の所定の領域を覆うように接着され、その外周部137は、第1?第4支持面26,57(審決注:「58」の誤記。),93,102および第1および第2テープ体張り付け面27,59に接着される。」(段落【0108】)、及び図4、19?21の記載から、以下の事項が示されている。
・「長辺側第1枠体部分14において、第1シート体突部124に対応する部分は、長辺側第1枠体部分14が薄くなっている。」
・「長辺側第1枠体部分14が薄くなっている部分において、テープ体55は外側に貼り出した突起を有しており、前記テープ体55の前記外側に張り出した突起を有する部分の幅は、前記テープ体55の他の部分の幅よりも大きくなっている。」
これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「液晶表示素子2には、この液晶表示素子2の画素電極に信号を与えるための配線が形成されるフレキシブルプリント配線基板100が接続されており、
ホルダ1は、バックライトを有する液晶表示装置に用いられ、液晶表示素子2を保持するとともに、導光板3、光学シート体4および反射シート体5を一体的に保持し、
導光板3、光学シート体4、及び反射シート体5は、液晶表示素子2の背後に設置されており、
ホルダ1は、枠体6を有し、
枠体6は、長辺側第1枠体部分14、長辺側第2枠体部分15、短辺側第1枠体部分16および短辺側第2枠体部分17を有し、それぞれ外周壁部18A、18B、18C、18Dと、各外周壁部18A、18B、18C、18Dから内周面側に突出する内側突出部19A、19B、19C、19Dとを有し、
外周壁部18Aは、長辺側第1枠体部分14の第1?第4内側壁面31?34を有し、内側突出部19Aは、長辺側第1枠体部分14の第1突出壁面25と、第1支持面26と、第1テープ貼り付け面27と、第1位置決め底面35と、第1?第7位置決め側面41?47とを有し、
第1位置決め底面35、第1?第7位置決め側面41?47によって、第1嵌合凹所36が規定され、
光学シート体4に形成された第1シート体突部124は、第1嵌合凹所36に嵌合しており、
液晶表示素子2は、テープ体55を介して第1?第4支持面26、58、93、102に支持されて、固定され、
長辺側第1枠体部分14において、第1シート体突部124に対応する部分は、長辺側第1枠体部分14が薄くなっており、
長辺側第1枠体部分14が薄くなっている部分において、テープ体55は外側に貼り出した突起を有しており、前記テープ体55の前記外側に張り出した突起を有する部分の幅は、前記テープ体55の他の部分の幅よりも大きくなっている液晶表示装置。」

イ.引用例2
同様に引用され、本願の出願日前に頒布された「特開2007-219428号公報」(以下「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「本実施例の液晶表示装置の構成を図1に模式的に示す。図示するように、この液晶表示装置は、液晶セルの上面と下面に偏光板等のフィルムが配置された液晶表示パネル1と、バックライト装置を備えている。バックライト装置は、LEDからの光を液晶表示素子に照射するための導光体4を備えており、導光体4の上面には光学フィルム類3が、下面には反射シート7が配置されていて、フレーム2内に格納されている。ここで、フレーム2は、フィラーを添加したポリカーボネート等の白色樹脂を射出成型することで作製され、導光板等を保持できるように段差形状等を施した構造になっている。導光板4は、アクリルやポリカーボネート等の透明樹脂を射出成型して作製され、その表面には微細な凹凸が形成されている。導光体4の上にはLCDの正面輝度を上昇させる目的で拡散シートやプリズムシート等の光学フィルム類3が配置され、導光体4の下には、導光体内に効率よく光を伝播する目的で、銀等の反射率の高い材料が表面にコーティングされた反射板7が配置されている。フレーム2と液晶表示パネル1の下面周縁部とはロの字形状をした両面固定テープ5で接着固定されている。同時に、この両面固定テープ5は導光体4と光学フィルム類3とを固定し、さらに、フレーム2と導光体4も固定している。液晶表示パネル1とフレーム2とは熱収縮性を有する固定部材6で双方にまたがるように固定されている。固定部材6は例えば、ポリオレフィンやフッ素樹脂等からなる加熱により硬化収縮する特性を有した樹脂をシート状に加工した部材である。」(段落【0009】)
上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「フレーム2と液晶表示パネル1の下面周縁部とは両面固定テープ5で接着固定されている液晶表示装置。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「フレキシブルプリント配線基板100」は、その機能、作用等からみて、前者における「フレキシブルケーブル」に相当し、以下同様に、「液晶表示素子2」は「液晶表示パネル」に、「ホルダ1」は「モールド」に、「外周壁部18A、18B、18C、18D」は「壁部」に、「内側突出部19A、19B、19C、19D」は「段部」に、「テープ体55」は「遮光テープ」に、「『導光板3』、『光学シート体4』、『反射シート体5』」は「(バックライトを構成する)光学部品」に、「第1嵌合凹所36」は「切り欠き」に、「第1シート体突部124」は「突起」に、それぞれ相当する。
また、後者における「ホルダ1」は、「バックライトを有する液晶表示装置に用いられ、液晶表示素子2を保持するとともに、導光板3、光学シート体4および反射シート体5を一体的に保持している」から、「液晶表示素子2と導光板3,光学シート体4および反射シート体5、すなわちバックライトとを収容する」といえる。
また、後者は、「ホルダ1の枠体6は、長辺側第1枠体部分14、長辺側第2枠体部分15、短辺側第1枠体部分16および短辺側第2枠体部分17を有し、それぞれ外周壁部18A、18B、18C、18Dと、各外周壁部18A、18B、18C、18Dから内周面側に突出する内側突出部19A、19B、19C、19Dとを有し」、「内側突出部19Aは、長辺側第1枠体部分14の第1突出壁面25と、第1支持面26と、第1テープ貼り付け面27と、第1位置決め底面35と、第1?第7位置決め側面41?47とを有し」、「液晶表示素子2は、テープ体55を介して第1?第4支持面26、58、93、102に支持されて、固定され」ているから、「ホルダ1は、液晶表示素子2を内側に収容する外周壁部18A、18B、18C、18Dと、前記液晶表示素子2を載置する内側突出部19A、19B、19C、19Dを有している」といえ、また「液晶表示素子2はホルダ1の内側突出部19A、19B、19C、19Dにおいて、テープ体55によって前記ホルダ1に固定されている」といえる。
また、後者は、「内側突出部19Aは、長辺側第1枠体部分14の第1突出壁面25と、第1支持面26と、第1テープ貼り付け面27と、第1位置決め底面35と、第1?第7位置決め側面41?47とを有し、第1位置決め底面35、第1?第7位置決め側面41?47によって、第1嵌合凹所36が規定され」、「光学シート体4に形成された第1シート体突部124が、第1嵌合凹所36に嵌合して」いるから、「内側突出部19Aの内側には、バックライトを構成する光学シート体4が設置され、前記内側突出部19Aは第1嵌合凹所36を有し、前記内側突出部19Aの第1嵌合凹所36には前記光学シート体4に形成された第1シート体突部124が嵌合している」といえる。
したがって、両者は、
「画素電極とフレキシブルケーブルが接続する液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルの背後に設置されたバックライトと、前記液晶表示パネルと前記バックライトとを収容するモールドを有する液晶表示装置であって、
前記モールドは、前記液晶表示パネルを内側に収容する壁部と、前記液晶表示パネルを載置する段部を有し、
前記液晶表示パネルは前記モールドの前記段部において、遮光テープによって前記モールドに固定されており、
前記段部の内側には、バックライトを構成する光学部品が設置され、
前記段部は切り欠きを有し、前記段部の切り欠きには前記光学部品に形成された突起が嵌合し、
前記モールドの前記壁部において、前記段部の切り欠きに対応する部分は、前記壁部が薄くなっており、前記壁部が薄くなっている部分において、前記遮光テープは外側へ張り出した突起を有しており、
前記遮光テープの前記外側に張り出した突起を有する部分の幅は、前記遮光テープの他の部分の幅よりも大きくなっている液晶表示装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
液晶表示パネルが、本願補正発明は、「画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板とを備え、前記TFT基板にフレキシブルケーブルが接続する端子部が形成された」ものであるのに対し、引用発明1は、フレキシブルプリント配線基板100が接続されたものではあるが、上記のようにTFT基板に形成された端子部に接続されたものであるのか否か明らかでない点。
[相違点2]
本願補正発明は、液晶表示パネルがモールドの段部において、遮光テープによって前記モールドに「直接接着して」固定されているのに対し、引用発明1は、液晶表示素子2が、テープ体55を介して第1?第4支持面26,58,93,102に支持されて、固定されている点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
ア.相違点1について
一般に液晶表示パネルにおいて、画素電極と前記画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板とを備えたものやTFT基板にフレキシブルケーブルを接続するための端子部を形成したものは、周知の技術事項である。
また、引用発明1の液晶表示素子2は、画素電極2を備え、フレキシブルプリント配線基板100が接続されたものである。
してみると、引用発明1において、上記周知の技術事項に照らして、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ.相違点2について
引用発明2は、上記「(2)イ.」のとおりであって、引用発明2における「液晶表示パネル1」は、その構造、機能、作用等からみて、本願補正発明における「液晶表示パネル」に相当し、以下同様に、「フレーム2」は「モールド」に、「両面固定テープ5」は「遮光テープ」に、それぞれ相当する。
してみると、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を備えている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、液晶表示装置という共通の技術分野に属し、遮光テープは、液晶表示パネルとモールドとを、固定するという共通の機能、作用を有するものであるから、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1、2及び上記周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、2及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年1月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「画素電極と前記画素電極への信号を制御するTFTがマトリクス状に配置されたTFT基板と、前記画素電極に対応するカラーフィルタが形成されたカラーフィルタ基板とを備え、前記TFT基板にフレキシブルケーブルが接続する端子部が形成された液晶表示パネルと、前記液晶表示パネルの背後に設置されたバックライトと、前記液晶表示パネルと前記バックライトとを収容するモールドを有する液晶表示装置であって、
前記モールドは、前記液晶表示パネルを内側に収容する壁部と、前記液晶表示パネルを載置する段部を有し、
前記液晶表示パネルは前記モールドの前記段部において、遮光テープによって前記モールドに直接接着して固定されており、
前記段部の内側には、バックライトを構成する光学部品が設置され、
前記段部は切り欠きを有し、前記段部の切り欠きには前記光学部品に形成された突起が嵌合し、
前記モールドの前記壁部において、前記段部の切り欠きに対応する部分は、前記壁部が薄くなっており、前記壁部が薄くなっている部分において、前記遮光テープは外側へ張り出した突起を有していることを特徴とする液晶表示装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は、上記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、実質的に上記「2.(1)補正後の本願の発明」で検討した本願補正発明の「遮光テープ」に関し、「遮光テープの外側に張り出した突起を有する部分の幅は、前記遮光テープの他の部分の幅よりも大きくなっている」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(3)対比」及び「2.(4)判断」に記載したとおり、引用発明1、2及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、2及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、2及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-22 
結審通知日 2014-04-30 
審決日 2014-05-13 
出願番号 特願2008-112538(P2008-112538)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高松 大小濱 健太  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 藤本 義仁
黒瀬 雅一
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 ポレール特許業務法人  
代理人 ポレール特許業務法人  

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