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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1289218
審判番号 不服2013-14597  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-30 
確定日 2014-06-26 
事件の表示 特願2010-543244「半導体発光装置とこれを用いた光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日国際公開、WO2009/148176、平成23年 6月30日国内公表、特表2011-519149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年(2009年)6月2日(優先権主張2008年6月2日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成25年2月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月19日に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたが、同年5月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたものである(以下、この平成25年7月30日になされた補正を「本件補正」という。)。

2 本件補正についての却下の決定
(1)結論
本件補正を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
(ア)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前の
「430nm以上475nm未満の青の波長領域に発光ピークを持つ一次光を放つ固体発光素子と、当該固体発光素子が放つ一次光をより長波長の光に変換する波長変換体とを備え、
前記波長変換体は、ガーネット結晶構造を有するY_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を含んだ透光性の波長変換層を備える、無機成形体であり、
前記Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を、(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式で表した時に、当該xの数値を原子%で示したCe^(3+)置換量が0.5原子%を超え1原子%以下、かつ、当該aの数値を原子%で示したGd^(3+)置換量が0原子%以上30原子%以下である
ことを特徴とする半導体発光装置。」

「430nm以上475nm未満の青の波長領域に発光ピークを持つ一次光を放つ固体発光素子と、当該固体発光素子が放つ一次光をより長波長の光に変換する波長変換体とを備え、
前記波長変換体は、ガーネット結晶構造を有するY_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を含んだ透光性の波長変換層を備える、無機成形体であり、
前記Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を、(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式で表した時に、当該xの数値を原子%で示したCe^(3+)置換量が0.5原子%を超え1原子%以下、かつ、当該aの数値を原子%で示したGd^(3+)置換量が0原子%以上30原子%以下であり、
相関色温度が4500?8000Kの範囲の白色系光を放つ
ことを特徴とする半導体発光装置。」
に補正する内容を含むものである。

(イ)上記(ア)の補正の内容は、「半導体発光装置」の発明特定事項として、「相関色温度が4500?8000Kの範囲の白色系光を放つ」を追加するものである。

イ 補正の適否についての判断
本件補正前の請求項1の「半導体発光装置」においては、「相関色温度」に関する特定事項は見当たらず、「相関色温度が4500?8000Kの範囲の白色系光を放つ」との限定の対象となる発明特定事項を認めることができない。
したがって、上記の「相関色温度が4500?8000Kの範囲の白色系光を放つ」を追加する補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものとは認められない。
よって、上記ア(ア)の補正内容は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。また、同補正内容が、同条第5項第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものともいえない。
なお、補正前の請求項3には、「相関色温度」に関する特定事項が記載されているが、同請求項においては、「相関色温度が2800?6700Kの範囲の白色系光を放つ」とされており、本件補正が、これを減縮するものとも認められない。

ウ 小括
したがって、上記ア(ア)の補正内容を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)付言
なお、以下に検討するとおり、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、特許を受けることができないものであるから、本件補正を認める余地はない。

ア 引用文献の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2007/107917号(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(訳文を付した。)。

(ア)「The invention relates to an efficient electroluminescent device having a radiation pattern similar to a cosinusoidal radiation pattern, comprising a conversion element for converting light, and to a method of manufacturing the conversion element.
Phosphor-converted electroluminescent devices (pcLEDs) with an electroluminescent light source (LED) and a light-converting phosphor layer, typically a phosphor powder layer or a polycrystalline phosphor layer, are known. With such pcLEDs, the LED emits a primary radiation of which at least one portion is absorbed by a phosphor layer (conversion element) arranged on the LED and is re-emitted as longer- wave secondary radiation. This process is also referred to as color or light conversion. Depending upon the application, the primary radiation is completely converted into secondary radiation or, in the case of a partial conversion, differently colored light, for example white light, may be produced by mixing of the primary and the secondary radiation.」(1頁3行?14行)
訳文:「本発明は、光を変換するための変換素子を含む、コサイン状の放射パターンに類似する放射パターンを有する効率的なエレクトロルミネセントデバイス、及び変換素子を製造する方法に関する。
エレクトロルミネセント光源(LED)及び光変換蛍光体層(一般に蛍光粉体層又は多結晶蛍光体層)を有する蛍光体変換エレクトロルミネセントデバイス(pcLED)は公知である。かかるpcLEDでは、このLEDは、一次放射線を発生し、この一次放射線の少なくとも一部分は、LED上の蛍光体層(変換素子)によって吸収され、波長のより長い二次放射線として再放出される。このプロセスは、色又は光変換とも称される。応用例によっては、一次放射線は二次放射線に完全に変換されるか、又は部分変換の場合、一次放射線と二次放射線とを混合することによって、異なる色の光(例えば白色光)を発生できる。」

(イ)「Fig. 2 schematically shows an embodiment of a light-emitting device according to the invention, with a substrate 1 and an electroluminescent light source 2 applied on the substrate 1 for emitting a primary radiation 52, as well as a conversion element 3 arranged on the electroluminescent light source 2 for the at least partial absorption of the primary radiation 52 and the emission of a secondary radiation 53. The electroluminescent light source 2 comprises an electroluminescent layer structure applied on a substrate 1 with at least one organic or inorganic electroluminescent layer, which is arranged between two electrodes. Here, the primary radiation is emitted through a transparent electrode on the side turned away from the substrate (top emitter), while the electrode turned towards the substrate 1 and/or the substrate 1 (for example of aluminum) is reflecting. Herein, the light-emitting device may also comprise several electroluminescent light sources for emitting the same and/or different primary radiation, for example a planar arrangement of LEDs and/or OLEDs. The electroluminescent light source 2 used in other embodiments may alternatively be formed by one or several laser diodes coupled to the conversion element via the light circuit elements and/or the light distribution elements.」(9頁1行?15行)
訳文:「図2は、本発明に係わる発光デバイスの一実施例を略図で示しており、この発光デバイスは、基板1と、基板1の上に形成され、一次放射線52を発生するためのエレクトロルミネセント光源2と、このエレクトロルミネセント光源2の上に配置されており、一次放射線52の少なくとも一部を吸収すると共に、二次放射線53を発生するための変換素子3とを有する。エレクトロルミネセント光源2は、2つの電極の間に配置された少なくとも1つの有機又は無機エレクトロルミネセント層を有する基板1に形成されたエレクトロルミネセント層構造体を備える。ここで、一次放射線は、基板と反対に向いた側に設けられた透明電極を介して発生され(トップエミッタ)、一方、基板1に向いた電極及び/又は(例えばアルミ製の)基板1が一次放射線を反射する。本例では、発光デバイスは、同じ及び/又は異なる一次放射線を発生するための数個のエレクトロルミネセント光源、例えばLED及び/又はOLEDの平面配置を含んでもよい。これとは異なり、他の実施例で使用されるエレクトロルミネセント光源2は、光回路素子及び/又は光分散素子を介し、変換素子に結合された1つ又は数個のレーザーダイオードによって形成してもよい。」

(ウ)「The conversion element 3 comprises a ceramic material with a multiplicity of pores. The scattering characteristics of the conversion element 3 are determined by the pores in the ceramic material. Given a sufficiently strong scattering effect of the conversion element 3, a Lambertian radiation pattern is obtained for the mixed light 5 which is produced by superposing of the primary and the secondary radiation. The mixed light 5 has a color that is dependent on the primary and the secondary radiation. The choice of the material of the conversion element 3 determines the spectrum of the secondary radiation 53. Variously colored mixed light 5 may be produced from suitable primary and secondary radiations, for example white mixed light 5 from blue primary radiation 52 and yellow secondary radiation 53 with a color temperature that is dependent on the ratio of primary to secondary radiation.」(10頁7行?16行)
訳文:「変換素子3は、多数の孔を有するセラミック材料を含む。この変換素子3の散乱特性はセラミック材料内の孔によって決定される。変換素子3の散乱効果が十分強力であると仮定した場合、一次放射線と二次放射線とを重ねることによって発生される混合された光5に対し、ランベルト放射パターンが得られる。この混合光5は、一次放射線及び二次放射線に応じて決まる色を有する。変換素子3の材料の選択は、二次放射線53のスペクトルを決定する。適当な一次放射線及び二次放射線から、種々の色の混合光5を発生できる。例えば二次放射線に対する一次放射線の比に応じて決まる色温度を有する白色混合光5を、青色一次放射線52と黄色二次放射線53とから発生できる。」

(エ)「Fig. 3 shows by way of example a microscopic photo of a cutting plane of a conversion element 3 according to the invention, of an Y_(2,685)Gd_(o,3)Ce_(o,o15)Al_( 5) O_(12) material (Gd- YAG:Ce) with a density of 98.73% of the theoretical solid-state density of the ceramic material 31. 」(11頁30行?33行)
訳文:「図3は、本発明に係わる変換素子3の切断面の顕微鏡写真を一例として示し、この変換素子3は、セラミック材料31の理論的固体状態の密度の98.73%の密度を有するY_(2.685)Gd_(0.3)Ce_(0.015)Al_(5)O_(12)材料(Gd-YAG:Ce)から構成されている。」

(オ)「For an at least partial transformation of primary radiation with 420 nm to 480 m wavelength into longer- wave secondary radiation, the following materials may also be manufactured by the appropriate method in other embodiments as an alternative to a ceramic Gd-YAG:Ce material:
Lu _(3 - x -y)Y _(x) Al _(5) 0 _(12) :Ce _(y) with 0≦ x≦ 1, 0.001 ≦ y ≦ 0.1 and 515 - 540 nm secondary radiation,
Y _(3 -x- y) Tb _(x) Al _(5) O _(12) :Ce _(y) with 0 ≦ x ≦ l, 0.001 ≦ y ≦ 0.1 and 550 - 590 nm secondary radiation
or Lu _(3 - x -y-z)Y _(x) Al _(5 - a) Si_(a)0_(12-a)N _(a) :Ce _(y) Pr _(z) with 0 ≦ x ≦ 1, 0.001 ≦ y ≦ 0.1, 0.0005 ≦ z ≦ 0.01, 0.01 ≦ a ≦ 0.8 and 540 - 630 nm secondary radiation.」(12頁20行?27行)
訳文:「より長い波長の二次放射線となるように、420nm?480nmの波長を有する一次放射線を少なくとも部分的に変換するために、セラミックGd-YAG:Ce材料に対する代替物として、他の実施例における適当な方法により、次の材料を製造することもできる。すなわち、
Lu_(3-x-y)Y_(x)Al_(5)O_(12):Ce_(y)(この場合、0≦x≦1、0.001≦y≦0.1、515?540nmの二次放射線)、
Y_(3-x-y)Tb_(x)Al_(5)O_(12):Ce_(y)(この場合、0≦x≦1、0.001≦y≦0.1、550?590nmの二次放射線)、又は、
Lu_(3-x-z)Y_(x)Al_(5-a)Si_(a)O_(12-a)N_(a):Ce_(y)Pr_(z)(この場合、0≦x≦1、0.001≦y≦0.1、0.0005≦z≦0.01、0.01≦a≦0.8、540?630nmの二次放射線)を製造することができる。」

イ 引用発明
上記ア(イ)、(エ)によれば、引用文献には、次の発明が記載されているものと認められる。

「基板1と、基板1の上に形成され、一次放射線52を発生するためのエレクトロルミネセント光源2と、このエレクトロルミネセント光源2の上に配置されており、一次放射線52の少なくとも一部を吸収すると共に、二次放射線53を発生するための変換素子3とを有する発光デバイスであって、
エレクトロルミネセント光源2は、例えばLED及び/又はOLEDであり、
変換素子3は、セラミック材料31の理論的固体状態の密度の98.73%の密度を有するY_(2.685)Gd_(0.3)Ce_(0.015)Al_(5)O_(12)材料(Gd-YAG:Ce)から構成されている
発光デバイス。」(以下「引用発明」という。)

ウ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明において、二次放射線53の波長が一次放射線52より長いことは、当業者に明らかであり(必要ならば、上記ア(ア)の引用文献の記載を参照。)、また、引用発明の「エレクトロルミネセント光源2」は、「例えばLED及び/又はOLED」であるから、引用発明の「エレクトロルミネセント光源2」及び「変換素子3」は、それぞれ、本願補正発明の「一次光を放つ固体発光素子」及び「当該固体発光素子が放つ一次光をより長波長の光に変換する波長変換体」に相当する。

(イ)引用発明の「変換素子3」は、「セラミック材料31の理論的固体状態の密度の98.73%の密度を有するY_(2.685)Gd_(0.3)Ce_(0.015)Al_(5)O_(12)材料(Gd-YAG:Ce)から構成されている」から、本願補正発明と同様に「ガーネット結晶構造を有するY_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を含んだ透光性の波長変換層を備える、無機成形体」であるといえる。

(ウ)引用発明の「Y_(2.685)Gd_(0.3)Ce_(0.015)Al_(5)O_(12)」は、(Y_(0.895)Gd_(0.1)Ce_(0.005))_(3)Al_(5)O_(12)と表すことができ、Gd^(3+)置換量は、0.1、すなわち、10原子%であるから、本願補正発明と、「前記Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を、(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式で表した時に、当該aの数値を原子%で示したGd^(3+)置換量が0原子%以上30原子%以下」である点で一致する。

(エ)引用発明の「発光デバイス」は、「半導体発光装置」といえる。

(オ)以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「一次光を放つ固体発光素子と、当該固体発光素子が放つ一次光をより長波長の光に変換する波長変換体とを備え、
前記波長変換体は、ガーネット結晶構造を有するY_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を含んだ透光性の波長変換層を備える、無機成形体であり、
前記Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)系蛍光体を、(Y_(1-a-x)Gd_(a)Ce_(x))_(3)Al_(5)O_(12)の化学式で表した時に、当該aの数値を原子%で示したGd^(3+)置換量が0原子%以上30原子%以下である半導体発光装置。」
である点で一致し、以下のaないしcの点で相違するものと認められる。

a 本願補正発明は、「固体発光素子」が「430nm以上475nm未満の青の波長領域に発光ピークを持つ一次光を放つ」ものであるのに対し、引用発明の「エレクトロルミネセント光源2」がこのようなものか不明である点(以下「相違点1」という。)。
b 本願補正発明のCe^(3+)置換量は、「0.5原子%を超え1原子%以下」であるのに対し、引用発明のCe^(3+)置換量は、上記(ウ)に示したように0.005、すなわち、「0.5原子%」である点(以下「相違点2」という。)。
c 本願補正発明は、「相関色温度が4500?8000Kの範囲の白色系光を放つ」ものであるのに対し、引用発明がこのようなものか不明である点(以下「相違点3」という。)。

エ 判断
(ア)相違点1について
上記ア(オ)のとおり、引用文献に「420nm?480nmの波長を有する一次放射線」と記載されていることに照らせば、引用発明の「エレクトロルミネセント光源2」として、「430nm以上475nm未満の青の波長領域に発光ピークを持つ一次光を放つ」ものを採用することに困難性は認められない。

(イ)相違点2について
a 上記ア(オ)のとおり、引用文献には、セラミックGd-YAG:Ce材料の代替材料が示されており、その代替材料のCeの量yは「0.001≦y≦0.1」と記載されている。
かかる記載によれば、Ceの量はある程度の範囲内において可変とされるものであることが理解されるところであり、引用発明において、そのCe^(3+)置換量が「0.5原子%」でなければならないとする格別の理由は認められない。
してみると、引用発明のCe^(3+)置換量として、「0.5原子%」を少々超えるものを採用して「0.5原子%を超え1原子%以下」とすることに格別の困難性は認められない。

b Ce^(3+)置換量を「0.5原子%を超え1原子%以下」としたことによる格別の作用効果も認められない。
すなわち、本願明細書には、【0181】に「Ce^(3+)の置換量は、0.01原子%以上1原子%以下、より好ましくは0.01原子%以上0.5原子%以下」、また、【0254】に「好ましいCe^(3+)置換量は、前記0.01原子%以上3原子%未満の中の、0.01原子%以上1原子%以下、特に好ましくは0.01原子%以上0.5原子%以下である。」と記載されるところであり、「0.5原子%を超え1原子%以下」とすることが好ましいとする旨の記載は認められない。
また、Ce^(3+)置換量を「0.5原子%を超え1原子%以下」とすることの根拠として、平成25年3月19日提出の意見書において主張される国際出願時の[0313]、すなわち、本願明細書の【0231】には、「 図18と図19から、黒体輻射に近い、相関色温度が4500K以上8000K以下、好ましくは5000K以上7000K以下の点光源(ハロゲンランプや車載用ヘッドランプなどとして適する相関色温度は4000K以上6700K以下である。)を得るために好ましい前記tは、Ce^(3+)置換量が0.05原子%の場合では0.2mm以上0.6mm以下程度であり、0.5?1原子%の場合では0.1mm未満の厚みであり、2?3原子%の場合では0.02mm未満の厚みであることが判る。」と、好ましい厚さtとの関係について記載されるにとどまるし、同意見書において作用効果として説明される国際出願時の[0401]、すなわち、本願明細書の【0295】には、Ce^(3+)置換量が0.5原子%の場合に4500K以上8000K以下の色温度領域において150℃で70%以上の発光強度が得られる旨記載されるにとどまり、「0.5原子%を超え1原子%以下」とすることにより格別の作用効果が得られる旨の説明がなされているものではない。

(ウ)相違点3について
上記ア(ウ)のとおり、引用文献に、一次放射線と二次放射線とを重ねることによって発生される混合光5は、一次放射線及び二次放射線に応じて決まる色を有し、二次放射線に対する一次放射線の比に応じて決まる色温度を有する白色混合光5を、青色一次放射線52と黄色二次放射線53とから発生できる旨記載されていることからすれば、本願補正発明のごとく、「相関色温度が4500?8000Kの範囲の白色系光を放つ」ものとすることに格別の困難性は認められない。

オ 小括
以上の検討によれば、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成25年3月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項15に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記2(2)ア(ア)に補正前のものとして示したとおりのものである。

(2)判断
本願発明は、本願補正発明から「相関色温度が4500?8000Kの範囲の白色系光を放つ」との特定事項を除いたものであるから、前記2(3)において本願補正発明について検討したのと同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであることは明らかである。

4 むすび
上記のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-22 
結審通知日 2014-04-30 
審決日 2014-05-13 
出願番号 特願2010-543244(P2010-543244)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金高 敏康  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 鈴木 肇
服部 秀男
発明の名称 半導体発光装置とこれを用いた光源装置  
代理人 土田 幸雄  
代理人 小林 義周  
代理人 木村 公一  
代理人 中島 安洋  
代理人 小林 国人  
代理人 中島 司朗  
代理人 川畑 孝二  

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