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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B25J
管理番号 1289224
審判番号 不服2013-19670  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-09 
確定日 2014-06-26 
事件の表示 特願2010-502748「ロボットシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月17日国際公開、WO2009/113364〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年2月17日(優先権主張2008年3月12日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成24年11月13日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年1月8日付け手続補正書が提出され、同年7月3日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。これに対し、同年10月9日付けで上記査定を不服として本件審判が請求され、同日付け手続補正書が提出され特許請求の範囲及び明細書が補正され、同年11月25日付けの当審の審尋に対し、同年12月26日付け回答書が提出されている。

第2 平成25年10月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の結論]

平成25年10月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1. 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1) 補正前
「【請求項1】
作業対象物と、前記作業対象物に対して作業するロボットと、前記作業対象物を位置決めするとともに、枠体上に前記ロボットを備えたポジショナと
を備え、
前記ロボットは、
前記作業対象物が搬送される方向に対して直交するように対向して配置された第1のロボットと第2のロボットとであり、
前記ポジショナは、
前記作業対象物が搬送される方向に対して直交するように対向して配置され、前記作業対象物を位置決めするように動作し、その作業中心が対向するように同軸上に配置された第1のポジショナと第2のポジショナであり、
しかも、前記ポジショナの前記枠体は、それぞれ、前記ロボットのロボット基台を兼用しており、前記ロボットの旋回台が、垂直方向に向いた回転軸心の周りに回転可能に設けられる
ことを特徴とするロボットシステム」

(2) 補正後
「【請求項1】
作業対象物と、前記作業対象物に対して作業するロボットと、前記作業対象物を位置決めするとともに、枠体上に前記ロボットを備えたポジショナと
を備え、
前記ロボットは、
それぞれ7軸の自由度を有し、前記作業対象物が搬送される方向に対して直交するように対向して配置された第1のロボットと第2のロボットとであり、
各前記ロボットは、
L字状の部材を上下に反転させた反L型に構成され、前記旋回台上に設けられた第1の上腕と、
前記第1の上腕と対称のL型に構成され、前記第1の上腕の上端部に連結された第2の上腕と、
前記第1の上腕の上端部と前記第2の上腕の底面にそれぞれ固着されて旋回可能に支承された減速機の入力軸に出力軸が接続され、外部に露出した状態で取付けられた、前記第2の上腕の旋回用の駆動モータと
を備え、
前記ポジショナは、
前記作業対象物が搬送される方向に対して直交するように対向して配置され、前記作業対象物を位置決めするように動作し、その作業中心が対向するように同軸上に配置された第1のポジショナと第2のポジショナであり、
しかも、前記ポジショナの前記枠体は、それぞれ、前記ロボットのロボット基台を兼用しており、前記ロボットの旋回台が、垂直方向に向いた回転軸心の周りに回転可能に設けられる
ことを特徴とするロボットシステム。」

2. 補正の適否
請求項1に対する上記補正は、補正前の特定事項である「ロボット」に対し、以下の2点、技術的に限定するものである。
・「第1のロボット」と「第2のロボット」が「それぞれ7軸の自由度を有」する点。
・各「ロボット」が、
「L字状の部材を上下に反転させた反L型に構成され、前記旋回台上に設けられた第1の上腕と、
前記第1の上腕と対称のL型に構成され、前記第1の上腕の上端部に連結された第2の上腕と、
前記第1の上腕の上端部と前記第2の上腕の底面にそれぞれ固着されて旋回可能に支承された減速機の入力軸に出力軸が接続され、外部に露出した状態で取付けられた、前記第2の上腕の旋回用の駆動モータと
を備え」る点。
したがって、請求項1に対する上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(1) 補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、上記1.(2)の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2) 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である、独国特許出願公開第19757249号明細書(以下、「引用文献1」という。)及び特開平2-298482号公報(以下、「引用文献2」という。)には、それぞれ図面とともに以下の記載がある。

(2-1) 引用文献1
(ドイツ語原文のa、o、uのウムラウトはそれぞれae、oe、ueで代替表記した。また、βに似たエスチェットは、ssで代替表記した。日本語訳は当審で付した。また、記載箇所を示す行数は、空白行を含む。)

ア. 引用文献1の記載

(ア) 1欄33ないし35行
「Aufgabe der Erfindung ist es, eine bessere Ausnutzung des Arbeitsbereiches eines Industrieroboters bzw. Industrierobotersystems der eingangsgenannten Art zu erreichen.」
(この発明の目的は産業用ロボット、あるいは既に述べたタイプの産業用ロボットシステムの作業領域のより有効な利用を実現することである。)

(イ) 2欄34ないし37行
Gemaess einer weiteren Ausfuehrungsform der Erfindung kann der Roboter mit seiner Basis oberhalb der Werkstueckachse angeordnet sein und die Werkstueckachse verlaeuft dann durch die vertikale Mittelachse des Industrieroboters.」
(本発明の更なる実施例によれば、ロボットは、ワークピースの軸上に配置されるベース上に置かれ、そしてその際、ワークピースの軸は、産業用ロボットの垂直な中心軸を通過する。)

(ウ) 2欄57ないし61行
「Fig. 1 eine Seitenansicht auf ein Industrierobotersystem mit zwei Industrierobotern,
Fig. 2 eine Seitenansicht eines Industrieroboters zur Darstellung des Arbeitsbereiches und Werkstueckbereiches,
Fig. 3 eine Aufsicht auf die Anordnung der Fig. 2,」
(第1図は、二台の産業用ロボットを有する産業用ロボットシステムの側面図
第2図は、作業領域とワークピース領域を説明するための産業用ロボットの側面図
第3図は、第2図の配置の平面図)

(エ) 2欄67行ないし3欄25行
「Auf einer Basisplatte 10, die auf dem Boden aufliegt, sind sich gegenueberliegend zwei Rahmengestelle 11, 12 angeordnet, an denen eine erste Werkstueck-Drehachse 13, die horizontal verlaeuft, gelagert ist, wobei ueber Halteplatten 14, 15 und einen Halterahmen 16, der eine U-Form besitzt ein Werkstueck 17 mit Drehachsen 18 und 19 um die Achse 13 drehbar gelagert ist. Die Gestelle 11 und 12 enthalten demgemaess Antriebe fuer den Rahmen 16 und damit fuer das Werkstueck 17. Auf jedem Gestell 11, 12 befindet sich ein Industrieroboter 20, 21 mit einer Basisplatte 22, 23, an der ein erster Arm 24, 25 sowie ein gelenkig damit verbundener zweiter Arm 26, 27 aufgelagert ist; am freien Ende der Arme 26, 27 befinden sich Bearbeitungswerkzeuge 28, 29, beispielsweise Schweisselektroden oder andere Bearbeitungswerkzeuge.
Die Fig. 2 zeigt nun den linken Industrieroboter mit dem Basisgestell 11 und dem Arm 26 mit dem Werkzeug 28. Das Werkzeug 28 kann auf Grund der Anordnung des Industrieroboters in einem strichliert gezeichneten Arbeitsbereich 30 bewegt werden. Strichpunktiert mit der Linie 31 gezeichnet ist der Raum, in dem sich das Werkstueck befindet bzw. in dem sich die bearbeitenden Stellen des Werkstueckes 17 befinden. Aus der Fig. 3 ist ersichtlich, dass die Mittelachse M des Industrieroboters mit der Mittelachse M_(1) des Werkstueckpositionierers das Kreissegment 30' bzw. der Grundriss des Arbeitsraumes 30 des Roboters den Grundriss des Werkstueckbereiches 31' ueberdeckt.」
(床面に据え付けられたベースプレート10の上に、第1のワークピースの水平な回転軸13が載るように対向する二台の枠組構造11、12が配置され、ワークピース17は、回転軸13のまわりに回転できるように、回転軸18、19を用いて把持板14、15とU字状の支持枠16に取り付けられている。それを可能にするために、支持枠16とワークピース17のための駆動源を、枠組構造11、12が備えている。枠組構造11、12のそれぞれの上に、ベースプレート22、23を有する産業用ロボット20、21がそれぞれ置かれていて、各産業用ロボット20、21は、それぞれが第1アーム24、25を有し、第1アーム24、25のそれぞれと屈曲できるように連結される第2アーム26、27が取り付けられている。第2アーム26、27の先端には加工用工具、たとえば溶接電極もしくは他の加工工具28、29が取り付けられている。
第2図には、工具28を有する第2アーム26を有する左側に位置する産業用ロボットが支持枠11とともに記載されている。工具28は、鎖線で示された作業領域30内を移動できるように産業用ロボットに配置されている。一点鎖線31は、ワークピース17が位置し加工される領域を示す。第3図から、産業用ロボットの中心軸Mが、ワークピースを位置決めするための構成の中心軸M_(1)とともに作るロボットの作業領域30の輪郭である円30’が、ワークピース31’の輪郭を覆っていることがみてとれる。)

(オ) 旋回手段
Fig.3には、中心軸Mを中心として、「産業用ロボット」の「アーム」が旋回する点看取できるから、引用文献1記載の「産業用ロボット」は、「旋回手段」を有し、「アーム」が「旋回手段」に設けられたものであるといえる。

(カ) 基台
上記摘記事項(エ)から、「枠組構造11、12のそれぞれの上に、ベースプレート22、23をそれぞれ有する産業用ロボット20及び21が置かれて」いるから、「枠組構造11、12」は、「産業用ロボット」の基台を兼用するものであるといえる。

イ. 引用文献1記載発明
上記摘記事項(ア)ないし(エ)、認定事項(オ)及び(カ)並びにFig.1ないし3の記載から、引用文献1の記載事項を技術常識を考慮しつつ、補正発明に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献1記載発明」という。)が記載されている。

「ワークピース17と、前記ワークピースに対して作業する産業用ロボット20、21と、前記ワークピース17を位置決めするとともに、枠組構造11、12上に前記ロボット20、21を備えた把持板14、15と枠組構造11、12との組合せと
を備え、
前記産業用ロボット20、21は、
対向して配置された産業用ロボット20と産業用ロボット21とであり、
旋回手段に設けられたアームと
を備え、
前記把持板14、15と枠組構造11、12との組合せは、
対向して配置され、前記ワークピース17を位置決めするように動作し、その作業中心が対向するように同軸上に配置された把持板14と枠組構造11の組合せと把持板15と枠組構造12の組合せであり、
しかも、前記把持板14、15と枠組構造11、12の組合せの枠組構造11、12は、それぞれ、前記産業用ロボット20、21の基台を兼用しており、前記ロボット20、21の旋回手段が、垂直方向に向いた中心軸Mの周りに回転可能である
産業用ロボットシステム。」

(2-2) 引用文献2

ア. 引用文献2の記載

(ア) 2ページ左下欄3ないし14行
「上記従来の多関節ロボツトは、手首組立体に3つの直交した回転自由度を有し、主軸部は、従来の多関節ロボツトの構成、すなわち旋回の自由度、上腕の回動自由度、前腕の回動自由度の3自由度に、上腕の中間部から回動する新しい自由度・・・を追加した7自由度の多関節形ロボツトである。
この多関節形ロボツトの構成によると、人間の腕のように、作業に応じて肘の位置を変化させて、狭隘部に入り込んだり、作業対象物に合理的な力を加えることができるため、その作業性は著しく向上するなどの特徴がある。」

(イ) 3ページ右下欄5行ないし4ページ左上欄11行
「第1図は、本発明の一実施例に係る垂直多関節ロボツトの縦断面正面図、第2図は、第1図の垂直多関節形ロボツトの外形構造を示す斜視図である。 まず、第2図を参照して全体構成について説明する。
床面等に設置される基台8上に、旋回台1が第1の回転軸心Iの周りに旋回可能に取り付けられている。この旋回台1の上端開口部には、第1の回転軸心Iと直交する面内で第2の回転軸心IIの周りに第1の上腕2が回動可能に取り付けられている。さらに、第1の上腕2の先端側には第2の上腕3が第2の回転軸心IIと直交する第3の回転軸心IIIの周りに旋回可能に取り付けられている。さらに、第2の上腕3の先端開口部には前腕4が第3の回転軸心IIIと直交する面内の第4の回転軸心IVの周りに回動可能に取り付けられている。また、前腕4の先端側には手首組立体5が取り付けられている。手首組立体5には、中ケーシング6と、手先ケーシング7を具備しており、手首組立体5全体は第5の回転軸心Vの周りに、中ケーシング6は第6の回転軸心VIの周りに、手先ケーシング7は第7の回転軸心VIIの周りにそれぞれ回動する。
さらに、手先ケーシング7の先端には、図示しない作業具等が取り付けられ、図示しない制御装置により所望の動作、さらには作業が行なわれる。」

(ウ) 4ページ右上欄1行ないし4ページ左下欄16行
「次に、第1図を参照して上述の垂直多関節形ロボツトの具体的な内部構造を説明する。
第1図に示すように、前記の旋回台1には、軸受16を介して基台8に
旋回可能に支承されている。この旋回台1には、旋回用の駆動モータ10がモータベース18に取り付けられており、旋回用の駆動モータ10の出力軸11は、1対のかさ歯車12,13を介して減速機15の人力軸14へ接続されている。この旋回用の減速機15は、基体15-1が前記の基台8に、出力体15-2が旋回台1に固着されている。
旋回台1の上方に位置する前記第1の上腕2は、旋回台1の上方開口部に軸受26,24を介して回動可能に支承されている。
この第1の上腕2の下端部には、第1の上腕用の駆動モータ20が上述の旋回台1の開口部の空間を、第2の回転軸心IIの周りに回動できるように取り付けられている。
さらに、第1の上腕2用の駆動モータ20の出力軸21は、1対のかさ歯車22,23を介して第1の上腕2用の減速機25の入力軸24へ接続されている。この第1の上腕用の減速機25は、基体25-1が前記旋回台1の開口部の一端に、出力体25-2が第1の上腕2の側面にそれぞれ固着されている。また、第1の上腕2の上端部分は2重の円筒構造となつており、内側の円筒軸38は軸受36,37を介して第1の上腕2に旋回可能に支承されている。さらにこの円筒軸38の上端は前記第2の上腕3に固着され、下端は第2の上腕用の減速機35の出力体35-2に固着されている。第2の上腕3用の減速機35の基体35-1は、第1の上腕2の中ほどに設けられた仕切板28に固着されており、この仕切板28の下端に取り付けられた第2の上腕用の駆動モータ30の出力軸31は、第2の上腕用の減速機35の入力軸(図示せず)に嵌着している。」

(エ) 第1図
第1図には、第2の上腕3が第1の上腕2の上端部に連結されている点、看取できる。

(オ) 7軸の自由度
上記摘記事項(イ)には、引用文献2記載の「垂直多関節形ロボツト」が隣接する部材同士が回動可能に取り付けられており、その回転中心となる「回転軸心I」ないし「回転軸心VII」が設けられている点、記載されている。引用文献2記載の「垂直多関節形ロボツト」は「7軸の自由度」を有するものである、ということができる。

イ. 引用文献2記載発明

上記摘記事項(ア)ないし(ウ)、認定事項(エ)及び(オ)から、引用文献2の記載の事項を技術常識を考慮しつつ、本願発明に照らして整理すると、引用文献2には以下の発明(以下、「引用文献2記載発明」という。)が記載されていると認める。

「7軸の自由度を有する垂直多関節形ロボツトであり、
前記垂直多関節形ロボツトは、
旋回台1上に設けられた第1の上腕2と、
前記第1の上腕2の上端部に連結された第2の上腕3と、
前記第1の上腕2と前記第2の上腕3に固着された円筒軸38の下端にそれぞれ固着されて旋回可能に支承された減速機35の入力軸に出力軸31が嵌着された、前記第2の上腕3の旋回用の駆動モータ30と
を備えた垂直多関節形ロボツト。」

(3) 対比
補正発明と引用文献1記載発明とを対比する。
引用文献1記載発明の「ワークピース17」、「産業用ロボット20」、「産業用ロボット21」、「枠組構造11」、「枠組構造12」、「基台」、「アーム」、「中心軸M」、「産業用ロボットシステム」は、それぞれ補正発明の「作業対象物」、「第1のロボット」、「第2のロボット」、(第1のロボットが上に備えられた)「枠体」、(第2のロボットが上に備えられた)「枠体」、「ロボット基台」、「腕」、「回転軸心」、「ロボットシステム」にそれぞれ相当する。
引用文献1記載発明の「把持板14と枠組構造11との組合せ」及び「把持板15と枠組構造12との組合せ」は、両者とも補正発明の「第1のポジショナ及び第2のポジショナ」に相当する。
引用文献1記載発明の「旋回手段」は、ロボットのアームを旋回手段である点で、補正発明の「旋回台」と共通する。

そうすると、補正発明と引用文献1記載発明は以下の点で一致し、かつ相違する。

ア. 一致点
「作業対象物と、前記作業対象物に対して作業するロボットと、前記作業対象物を位置決めするとともに、枠体上に前記ロボットを備えたポジショナと
を備え、
前記ロボットは、
対向して配置された第1のロボットと第2のロボットとであり、
各前記ロボットは、
旋回手段に設けられた腕と、
を備え、
前記ポジショナは、
対向して配置され、前記作業対象物を位置決めするように動作し、その作業中心が対向するように同軸上に配置された第1のポジショナと第2のポジショナであり、
しかも、前記ポジショナの前記枠体は、それぞれ、前記ロボットのロボット基台を兼用しており、前記ロボットの旋回手段が、垂直方向に向いた回転軸心の周りに回転可能に設けられるロボットシステム。」

イ. 相違点

(ア) 相違点1
補正発明の「対向して配置された第1のロボットと第2のロボット」及び「第1のポジショナと第2のポジショナ」の対向する方向は、「前記作業対象物が搬送される方向に対して直交する」のに対し、引用文献1記載発明の「対向して配置された産業用ロボット20と産業用ロボット21」及び「把持板14と把持板15と枠組構造11、12との組合せ」の対向する方向と、「ワークピース17」が搬送される方向との関係が不明である点。

(イ) 相違点2
補正発明の各「ロボット」は、「7軸の自由度」を有し、
「L字状の部材を上下に反転させた反L型に構成され、前記旋回台上に設けられた第1の上腕と、
前記第1の上腕と対称のL型に構成され、前記第1の上腕の上端部に連結された第2の上腕と、
前記第1の上腕の上端部と前記第2の上腕の底面にそれぞれ固着されて旋回可能に支承された減速機の入力軸に出力軸が接続され、外部に露出した状態で取付けられた、前記第2の上腕の旋回用の駆動モータと
を備え」るものであるのに対し、引用文献1記載発明の「産業用ロボット」は、「アーム]の形状、そして減速機や駆動モータの有無が不明である点。

(4) 判断

ア. 相違点1について
作業対象物を対向して配置された二台の保持手段の間で加工位置に保持するものにおいて、当該対向する方向と作業対象物の搬送方向を、直交させることは、原審拒絶の理由で引用された刊行物である特開平6-142985号公報及び実願平3-47643号(実開平5-347号)のCD-ROMにそれぞれ記載されているとおり、従来周知の事項である。そうすると、引用文献1記載発明において、作業対象物である「ワークピース17」を保持する手段である「把持板14、15と枠組構造11、12との組合せ」を対向して配置するものにおいて、「把持板14、15と枠組構造11、12との組合せ」が対向する方向、ひいては、「枠組構造11、12」の上に備えられた「産業用ロボット20、21」が対向する方向を、「ワークピース17」の搬送される方向と直交するに配置することは、上記従来周知の配置方法を、引用文献1記載発明に適用することで、当業者が容易になし得たものである。

イ. 相違点2について
ロボットの二つの部分を相互に減速機を介して旋回可能とした連結部を、一方の部分をL字状の部材を上下に反転させた反L型に構成し、他方の部分を上記一方の部分と対称のL側に構成し、上記一方の部分の上端部と上記他方の部分の底面に連結し、旋回用のモータを外部に露出した状態で取り付けることは、例えば以下の文献にも記載されているとおり、従来周知の事項である。
・実願平1-114780号(実開平3-55182号)のマイクロフィルム(特に、第9図とその関連箇所である明細書7ページ12行ないし8ページ9行を参照されたい。第9図記載の「20」、「23」が付された部材について、明細書の上記箇所では、「L字型の支持部材20」、「L字型の支持部材23」と記載されている。)
・特開2005-14097号公報(特に【図2】と段落【0009】を参照されたい。「第2の軸ユニット4のブラケット41は断面がL字形状」との記載があり、【図2】には、「ベース部材31」が、L字形状である点、看取できる。)
ここで、引用文献1記載発明において、「枠組構造11、12」の上に「産業用ロボット20、21」を備えた配置をとると、「ワークピース17」、「把持板14、15と枠組構造11、12との組合せ」、そして「産業用ロボット20、21」が相互に接近し干渉することで、作業性が低下する可能性が高まることは、当業者にとって自明である。一方、上記(2-2)ア.(ア)に記載したように、引用文献2記載発明の「第1の上腕2」と「第2の上腕3」のように、「上腕の中間部から回動する新しい自由度」が追加された「7自由度の多関節形ロボツト」は、「作業性は著しく向上する」のであるから、上記引用文献1記載発明の「産業用ロボット20、21」を、作業性を向上させるために、上記従来周知のロボットの二つの部分の連結部の構成を「第1の上腕2」と「第2の上腕3」の連結部に採用した、上腕の中間部から回動する7軸の自由度を有するものとすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 小結
以上のとおりであるから、補正発明は、引用文献記載発明1及び2ならびに従来周知の事項に基づいて当業者が容易になし得たものであり、作用及び効果の点で格別なものを奏するとは認められない。
したがって、補正発明は特許法第29条第2項の規定により、本願出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3. 補正却下の決定におけるむすび
上記2.で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明

1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4は、平成25年1月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4の各々に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2、1.(1)の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2. 対比及び判断
本願発明は、補正発明の発明特定事項から、上記第2、2.で述べたところの、技術的限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する補正発明が、上記第2、2.(4)で検討したとおり、引用文献1記載発明及び引用文献2記載発明並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3. むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用文献1記載発明及び引用文献
2記載発明並びに従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受ける
ことができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-23 
結審通知日 2014-04-30 
審決日 2014-05-13 
出願番号 特願2010-502748(P2010-502748)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B25J)
P 1 8・ 121- Z (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 陽  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 久保 克彦
刈間 宏信
発明の名称 ロボットシステム  
代理人 酒井 宏明  

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