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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 2号主要部同一 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 1号課題同一 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1289374
審判番号 不服2012-19712  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-05 
確定日 2014-07-02 
事件の表示 特願2001-561092「変性顔料を含むポリマーおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 2日国際公開、WO01/55245、平成15年 8月 5日国内公表、特表2003-523470〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、国際出願日である平成13年1月24日(優先権主張2000年1月25日 (US)アメリカ合衆国)を出願日とする特許出願であって、同年10月4日に手続補正書が提出され、平成23年2月15日付けで拒絶理由が通知され、同年8月22日に意見書と手続補正書が提出されたが、平成24年5月31日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年10月19日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年12月20日付けで前置報告がなされ、平成25年5月17日付けで当審より審尋がなされ、同年11月21日に回答書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定
[結論]
平成24年10月5日提出の手続補正書による手続補正を却下する。
[理由]
1.手続補正の内容
平成24年10月5日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許請求の範囲についてその補正前に、

「 【請求項1】 少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の変性顔料を含む少なくとも1つのスラリーを、水性ポリマー溶液に導入して混合物を形成し、ここで該水性ポリマー溶液は脱水されていないこと、ならびに、
該混合物を脱水してポリマー組成物を形成すること
を含む、ポリマー組成物の製造方法。
【請求項2】 該水性ポリマー溶液が、エマルジョンポリマー溶液である請求項1記載の方法。
【請求項3】 該水性ポリマー溶液が、懸濁ポリマー溶液である請求項1記載の方法。
【請求項4】 該水性ポリマー溶液が、フリーラジカルポリマー溶液である請求項1記載の方法。
【請求項5】 水性媒体中で、少なくとも1つの有機基を顔料に結合して少なくとも1種の変性顔料を形成することを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】 少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の変性顔料を含む少なくとも1つのスラリーを、クエンチされたポリマー溶液および重合溶媒に導入して混合物を形成すること;ならびに
前記混合物を洗浄してポリマー組成物を形成すること
を含む、ポリマー組成物の製造方法。
【請求項7】 少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
クエンチされた未洗浄の溶液ポリマーおよび重合溶媒の存在下で、2相混合物中にて、
少なくとも1つの有機基を顔料に結合すること;ならびに
前記混合物を洗浄してポリマー組成物を形成すること
を含む、ポリマー組成物の製造方法。
【請求項8】 請求項1記載の方法によって製造された、少なくとも1種の変性顔料を含むスラリーならびにポリマー溶液を含むポリマー組成物。
【請求項9】 前記スラリーが、変性顔料を水中でミクロ粉砕することによって製造される請求項1記載の方法。
【請求項10】 前記スラリーが、変性顔料を溶媒中でミクロ粉砕することによって製造される請求項1記載の方法。
【請求項11】 前記スラリーが、変性顔料を乾式プロセスでミクロ粉砕した後、別のミキサー中で、粉砕した顔料を液体に添加することによって製造される請求項1記載の方法。
【請求項12】 前記スラリーが、変性顔料を水中でミクロ粉砕することによって製造される請求項6記載の方法。
【請求項13】 前記スラリーが、変性顔料を溶媒中でミクロ粉砕することによって製造される請求項6記載の方法。
【請求項14】 前記スラリーが、変性顔料を乾式プロセスでミクロ粉砕した後、別のミキサー中で、粉砕した顔料を液体に添加することによって製造される請求項6記載の方法。
【請求項15】 前記変性顔料が、変性カーボンブラック、変性炭素繊維、変性活性炭、変性グラファイト、変性活性化グラファイト、変性カーボンクロス、変性ガラス質炭素またはそれらの組合せである請求項1記載の方法。
【請求項16】 前記変性顔料が変性カーボンブラックである請求項1記載の方法。
【請求項17】 前記変性顔料が変性炭素生成物である請求項1記載の方法。
【請求項18】 前記変性炭素生成物が、炭素相およびケイ素-含有種相を含む凝集
体である請求項17記載の方法。
【請求項19】 前記変性炭素生成物が、炭素相および金属含有種相を含む凝集体または、シリカで被覆されたカーボンブラックである請求項17記載の方法。
【請求項20】 前記変性炭素生成物が、芳香族スルフィド基を結合した炭素生成物である請求項17記載の方法。
【請求項21】 前記変性顔料が、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラックである請求項1記載の方法。
【請求項22】 前記有機基が、芳香族基もしくはC_(1)?C_(100)アルキル基またはその両方を含む請求項21記載の方法。
【請求項23】 前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレンまたはそれらのブレンドである請求項1記載の方法。
【請求項24】 前記混合物の脱水が、前記混合物をデカンテーションまたはろ過することを含む、請求項1記載の方法。」

とあったものを

「【請求項1】 少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の変性顔料を含む少なくとも1つのスラリーを、水性ポリマー溶液に導入して混合物を形成し、ここで該水性ポリマー溶液は脱水されていないこと、ならびに、
該混合物を脱水してポリマー組成物を形成すること
を含み、
前記変性顔料が、変性カーボンブラック、変性炭素繊維、変性活性炭、変性グラファイト、変性活性化グラファイト、変性カーボンクロス、変性ガラス質炭素、炭素相およびケイ素-含有種相を含む凝集体、炭素相および金属含有種相を含む凝集体、シリカで被覆されたカーボンブラック、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラック、またはそれらの組合せであり、
前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、ポリスルホン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、ABS、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、シリコーンポリマー、アルキッド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素-、メラミン-、若しくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、またはそれらのブレンドである、
ポリマー組成物の製造方法。
【請求項2】 該水性ポリマー溶液が、エマルジョンポリマー溶液である請求項1記載の方法。
【請求項3】 該水性ポリマー溶液が、懸濁ポリマー溶液である請求項1記載の方法。
【請求項4】 該水性ポリマー溶液が、フリーラジカルポリマー溶液である請求項1記載の方法。
【請求項5】 水性媒体中で、少なくとも1つの有機基を顔料に結合して少なくとも1種の変性顔料を形成することを含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】 少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の変性顔料を含む少なくとも1つのスラリーを、クエンチされたポリマー溶液および重合溶媒に導入して混合物を形成すること;ならびに
前記混合物を洗浄してポリマー組成物を形成すること
を含み、
前記変性顔料が、変性カーボンブラック、変性炭素繊維、変性活性炭、変性グラファイト、変性活性化グラファイト、変性カーボンクロス、変性ガラス質炭素、炭素相およびケイ素-含有種相を含む凝集体、炭素相および金属含有種相を含む凝集体、シリカで被覆されたカーボンブラック、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラック、またはそれらの組合せであり、
前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、ポリスルホン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、ABS、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、シリコーンポリマー、アルキッド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素-、メラミン-、若しくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、またはそれらのブレンドである、
ポリマー組成物の製造方法。
【請求項7】 少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
クエンチされた未洗浄の溶液ポリマーおよび重合溶媒の存在下で、2相混合物中にて、
少なくとも1つの有機基を顔料に結合すること;ならびに
前記混合物を洗浄してポリマー組成物を形成すること
を含み、
前記変性顔料が、変性カーボンブラック、変性炭素繊維、変性活性炭、変性グラファイト、変性活性化グラファイト、変性カーボンクロス、変性ガラス質炭素、炭素相およびケイ素-含有種相を含む凝集体、炭素相および金属含有種相を含む凝集体、シリカで被覆されたカーボンブラック、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラック、またはそれらの組合せであり、
前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、ポリスルホン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、ABS、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、シリコーンポリマー、アルキッド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素-、メラミン-、若しくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、またはそれらのブレンドである、
ポリマー組成物の製造方法。
【請求項8】 請求項1記載の方法によって製造された、少なくとも1種の変性顔料を含むスラリーならびにポリマー溶液を含むポリマー組成物。
【請求項9】 前記スラリーが、変性顔料を水中でミクロ粉砕することによって製造される請求項1記載の方法。
【請求項10】 前記スラリーが、変性顔料を溶媒中でミクロ粉砕することによって製造される請求項1記載の方法。
【請求項11】 前記スラリーが、変性顔料を乾式プロセスでミクロ粉砕した後、別のミキサー中で、粉砕した顔料を液体に添加することによって製造される請求項1記載の方法。
【請求項12】 前記スラリーが、変性顔料を水中でミクロ粉砕することによって製造される請求項6記載の方法。
【請求項13】 前記スラリーが、変性顔料を溶媒中でミクロ粉砕することによって製造される請求項6記載の方法。
【請求項14】 前記スラリーが、変性顔料を乾式プロセスでミクロ粉砕した後、別のミキサー中で、粉砕した顔料を液体に添加することによって製造される請求項6記載の方法。
【請求項15】 前記変性顔料が変性炭素生成物であり、前記変性炭素生成物が芳香族スルフィド基を結合した炭素生成物である請求項1記載の方法。
【請求項16】 前記変性顔料が、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラックであり、前記有機基が、芳香族基もしくはC_(1)?C_(100)アルキル基またはその両方を含む請求項1記載の方法。
【請求項17】 前記混合物の脱水が、前記混合物をデカンテーションまたはろ過することを含む、請求項1記載の方法。」

と補正するものである。

2.本件手続補正の適否について
(1)本件手続補正は、次の補正事項を含むものである。

補正事項1
補正前の請求項1、6、7の「を含む、ポリマー組成物の製造方法」を「を含み、前記変性顔料が、変性カーボンブラック、変性炭素繊維、変性活性炭、変性グラファイト、変性活性化グラファイト、変性カーボンクロス、変性ガラス質炭素、炭素相およびケイ素-含有種相を含む凝集体、炭素相および金属含有種相を含む凝集体、シリカで被覆されたカーボンブラック、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラック、またはそれらの組合せであり、
前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、ポリスルホン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、ABS、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、シリコーンポリマー、アルキッド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素-、メラミン-、若しくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、またはそれらのブレンドである、ポリマー組成物の製造方法」とする補正事項。

補正事項2
補正前の請求項15、乃至、19、21、23を削除する補正事項。

補正事項3
補正事項2に係る請求項の削除にともない、請求項20、22、24をそれぞれ請求項15、16、17に繰り上げる補正事項。

補正事項1は、発明を特定するために必要な事項をさらに限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものであるので,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、補正事項2は、同法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当し、補正事項3は、同法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
上記のとおり、本件手続補正は、特許法特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含むから、本件手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(i)本件手続補正後の請求項1に係る発明

本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、本件手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次に記載のとおりのものと認める。

「少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の変性顔料を含む少なくとも1つのスラリーを、水性ポリマー溶液に導入して混合物を形成し、ここで該水性ポリマー溶液は脱水されていないこと、ならびに、
該混合物を脱水してポリマー組成物を形成すること
を含み、
前記変性顔料が、変性カーボンブラック、変性炭素繊維、変性活性炭、変性グラファイト、変性活性化グラファイト、変性カーボンクロス、変性ガラス質炭素、炭素相およびケイ素-含有種相を含む凝集体、炭素相および金属含有種相を含む凝集体、シリカで被覆されたカーボンブラック、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラック、またはそれらの組合せであり、
前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、ポリスルホン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、ABS、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、シリコーンポリマー、アルキッド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素-、メラミン-、若しくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、またはそれらのブレンドである、
ポリマー組成物の製造方法。」

(ii)刊行物及び刊行物に記載された事項

本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2002-512288号公報(以下、「刊行物1」という。平成23年2月15日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献1。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は、当審による。)

(ア)
「 【請求項1】 微細な粉末状のゴムにおいて、ゴムマトリックスと強固に結合し、式(I)、(II)または(III)の有機ケイ素化合物で変性された充填剤を含有することを特徴とする、微細な粉末状のゴム(ゴム粉末)。
【請求項2】 20?250phrの変性および非変性充填剤を含有している、請求項1記載の微細なゴム粉末。
【請求項3】 充填剤として有機ケイ素化合物で変性された沈降ケイ酸を5?200phr含有している、請求項1または2記載の微細なゴム粉末。
【請求項4】 充填剤として有機ケイ素化合物で変性されたカーボンブラックおよび場合により非変性カーボブラックを20?250phr含有している、請求項1または2記載の微細なゴム粉末。
・・・
【請求項8】 懸濁液の形での充填剤、元素の周期系のIIa、IIb、IIIaおよびVIII属の金属の水溶性塩およびゴムラテックスまたはゴム溶液の水性エマルジョンを含有する含水混合物から酸の添加により沈降させることにより微細な粉末状の充填剤含有ゴム(ゴム粉末)を製造する方法において、表面が式(I)、(II)または(III)による有機ケイ素化合物で少なくとも部分的に変性された微細な充填剤≧50質量%を、ゴム100質量部あたり0.1?6.5質量部の前記の水溶性塩およびゴムラテックスまたはゴム溶液の水性エマルジョンと混合し、該混合物のpH値を5.5?4.5の範囲に低下させ(第一工程)、場合により同様に変性された白色もしくは場合により黒色の微細な充填剤の残分を懸濁液の形で添加し、かつpH値を約3.2に低下させ(第二工程)、該混合物中に存在するゴムを充填剤と一緒に完全に沈降させることを特徴とする、微細なゴム粉末の製造方法。
・・・
【請求項11】 平均粒径1?9μmを有するカーボンブラックを使用する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
・・・
【請求項18】 一般式
[R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk)_(m)-(Ar)_(p)]_(q)[B] (I)
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk) (II)
または
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(アルケニル) (III)
[上記式中、
Bは、-SCN、-SH、-Cl、-NH_(2)(q=1の場合)または-Sx-(q=2の場合)を表し、
RおよびR^(1)は、1?4個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のアルキル基、フェニル基を表し、その際、全ての基RおよびR^(1)はそれぞれ同一であるか、または異なったものを表してもよく、有利にはアルキル基であり、
Rは、分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC_(1)?C_(4)-アルキル、-C_(1)?C_(4)-アルコキシ基を表し、
nは、0、1または2を表し、
Alkは、1?6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の2価の炭素基を表し、
mは、0または1を表し、
Arは、6?12個の炭素原子を有するアリーレン基を表し、
pは、0または1を表すが、ただしその際、pおよびnは同時に0を表すことはなく、
xは、2?8の数を表し、
アルキルは、1?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表し、
アルケニルは、2?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表す]の有機ケイ素化合物1種以上で変性された充填剤を使用する、請求項8から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】 加硫性ゴム混合物を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載の粉末状の充填剤含有ゴム粉末の使用。」
(イ)
「【0013】
本発明による粉末は従来技術に由来する粉末よりも狭く、かつ小さい粒径へと移動したスペクトルを有している(Kautschuk + Gummi + Kunststoffe 7, 28 (1975) 397-402)。この状況は粉末の加工を容易にする。製造方法に基づいて個々の粒子中で粒度に依存する充填剤割合も見られない。粉末状のゴムは20?250phr、特に50?100phrの充填剤を含有しており(phrとはゴム100部あたりの部である)、その中で少なくとも一部はゴム分野で公知の式(I)の有機ケイ素化合物を使用して表面を変性されている。ゴムのタイプとして以下の種類が、単独で、もしくは混合物として適切であることが判明した:天然ゴム、10?50%のスチレン割合を有するエマルジョン-SBR、ブチル-アクリロニトリル-ゴム。ブチルゴム、エチレン、プロピレン(EPM)および非共役ジエン(EPDM)からなるターポリマー、ブタジエンゴム、溶液重合法により製造され、10?25%のスチレン含有率ならびに20?55%のビニル成分を含有するSBR、およびイソプレンゴム、特に3,4-イソプレン。」
(ウ)
「【0021】
上記の種類の非変性充填剤は、本発明により変性された充填剤に対して付加的にここで請求されているゴム混合物中に含有されているのみである。非変性充填剤の割合は個別に製造するべき混合物に依存する。いずれの場合でも充填剤の総量は20?250phrである。これは一般に変性された充填剤:ケイ酸および/または場合によりカーボンブラック30?100%、有利には60?100%からなる。表面の変性のために一般に、一般式:
[R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk)_(m)-(Ar)_(p)]_(q)[B] (I)
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk) (II)
または
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(アルケニル) (III)
[上記式中、
Bは、-SCN、-SH、-Cl、-NH_(2)(q=1の場合)または-Sx-(q=2の場合)を表し、
RおよびR^(1)は、1?4個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のアルキル基、フェニル基を表し、その際、全ての基RおよびR^(1)はそれぞれ同一であるか、または異なったものを表してもよく、有利にはアルキル基であり、
Rは、分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC_(1)?C_(4)-アルキル、-C_(1)?C_(4)-アルコキシ基を表し、
nは、0、1または2を表し、
Alkは、1?6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の2価の炭素基を表し、
mは、0または1を表し、
Arは、6?12個の炭素原子を有するアリーレン基を表し、
pは、0または1を表すが、ただしその際、pおよびnは同時に0を表すことはなく、
xは、2?8の数を表し、
アルキルは、1?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表し、
アルケニルは、2?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表す]の有機ケイ素化合物を使用する。」
(エ)
「【0052】
一般に本発明による方法を以下のとおりに実施する:
まず、最終生成物中に含有されている、表面において少なくとも部分的に変性された充填剤の一部、有利には≧50%を金属塩および場合によりアルカリ金属ケイ酸塩溶液と一緒に水中に分散させて充填剤懸濁液を製造する。合計して使用される水の量は、充填剤の種類および溶解度に合わせて調整する。一般に充填剤の水不溶性成分は約6質量%である。この値は拘束力のある制限ではなく、かつこの値を下回っても、上回ってもよい。最大含有率は懸濁液のポンプ輸送性により制約される。
【0053】
こうして製造した充填剤懸濁液を引き続き場合によりアルカリ金属ケイ酸塩溶液を含有しているゴム-ラテックスまたは場合によりアルカリ金属ケイ酸塩溶液を含有するゴム溶液の水性エマルジョンと充分に混合する。このために公知の撹拌装置、例えばプロペラ撹拌機が適切である。
【0054】
混合の後で攪拌工程を維持しながら酸を用いてまずpH値を5.5?4.5の範囲に調整する。この場合、一定の充填剤含有率を有するゴムベース粒子が生じる。このベース粒子の大きさは選択される金属塩の量により0.1?6.5phrの範囲で制御される。この制御は金属塩の最低量で最大の粒度加工が得られるように実施する。
【0055】
微細な、場合により同様に変性された白色充填剤の残りを割合を懸濁液の形で添加し、かつpH値は約3.2に低下する。
【0056】
使用されるラテックスの固体含有率は、一般に20?25質量%である。ゴム溶液の固体含有率は一般に3?35質量%であり、ゴムエマルジョンの固体含有率は一般に5?30質量%である。
【0057】
これらの混合物およびその製造は従来技術から公知である。
【0058】
充填剤含有率≧100phrを有するゴム粉末の後処理のために、相分離の前にpH値を2.5に低下させることは有利である。このために有利には前記の酸の群からの酸を1種使用する。
【0059】
本発明による方法は不連続式にも連続式にも実施することができる。
【0060】
沈降させたゴム粉末を有利には遠心分離を用いて分離し、かつ次いで一般に残留水分が≦1%になるまで、特に流動床乾燥器中で乾燥させる。」

(iii)刊行物1に記載された発明
刊行物1(摘示(ア)の請求項8、11、18)には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「懸濁液の形での充填剤、元素の周期系のIIa、IIb、IIIaおよびVIII属の金属の水溶性塩およびゴムラテックスまたはゴム溶液の水性エマルジョンを含有する含水混合物から酸の添加により沈降させることにより微細な粉末状の充填剤含有ゴム(ゴム粉末)を製造する方法において、表面が下記式(I)、(II)または(III)による有機ケイ素化合物で少なくとも部分的に変性された微細な充填剤≧50質量%を、ゴム100質量部あたり0.1?6.5質量部の前記の水溶性塩およびゴムラテックスまたはゴム溶液の水性エマルジョンと混合し、該混合物のpH値を5.5?4.5の範囲に低下させ(第一工程)、場合により同様に変性された白色もしくは場合により黒色の微細な充填剤の残分を懸濁液の形で添加し、かつpH値を約3.2に低下させ(第二工程)、該混合物中に存在するゴムを充填剤と一緒に完全に沈降させる、微細なゴム粉末の製造方法であって、
充填剤として平均粒径1?9μmを有するカーボンブラックを一般式
[R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk)_(m)-(Ar)_(p)]_(q)[B] (I)
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk) (II)
または
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(アルケニル) (III)
[上記式中、
Bは、-SCN、-SH、-Cl、-NH_(2)(q=1の場合)または-Sx-(q=2の場合)を表し、
RおよびR^(1)は、1?4個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のアルキル基、フェニル基を表し、その際、全ての基RおよびR^(1)はそれぞれ同一であるか、または異なったものを表してもよく、有利にはアルキル基であり、
Rは、分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC_(1)?C_(4)-アルキル、-C_(1)?C_(4)-アルコキシ基を表し、
nは、0、1または2を表し、
Alkは、1?6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の2価の炭素基を表し、
mは、0または1を表し、
Arは、6?12個の炭素原子を有するアリーレン基を表し、
pは、0または1を表すが、ただしその際、pおよびnは同時に0を表すことはなく、
xは、2?8の数を表し、
アルキルは、1?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表し、
アルケニルは、2?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表す]の有機ケイ素化合物1種以上で変性したものを使用する方法。」

(iv)対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ゴム」は、具体的には摘示(イ)から、天然ゴム、10?50%のスチレン割合を有するエマルジョン-SBR、ブチル-アクリロニトリル-ゴム、ブチルゴム、エチレン、プロピレン(EPM)および非共役ジエン(EPDM)からなるターポリマー、ブタジエンゴム、溶液重合法により製造され、10?25%のスチレン含有率ならびに20?55%のビニル成分を含有するSBR、およびイソプレンゴム、特に3,4-イソプレンが単独で、もしくは混合物として適切であるとされているところ、当該選択肢は、天然ゴム、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレンを含むものである。また、補正発明の「少なくとも1種のポリマー」「前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、ポリスルホン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、ABS、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、シリコーンポリマー、アルキッド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素-、メラミン-、若しくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、またはそれらのブレンド」も、選択肢として天然ゴム、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレンを含むものである。
そうすると、引用発明の「ゴム」は、補正発明の「少なくとも1種のポリマー」「前記ポリマーが、溶液SBR、天然ゴム、官能化した溶液SBR、エマルジョンSBR、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、ポリスルホン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレン、ABS、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、ケトン基含有ポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド-イミド、ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、シリコーンポリマー、アルキッド、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、尿素-、メラミン-、若しくはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、またはそれらのブレンド」に相当する。

引用発明の「表面が下記式(I)、(II)または(III)による有機ケイ素化合物で少なくとも部分的に変性された微細な充填剤」
「充填剤として平均粒径1?9μmを有するカーボンブラックを一般式
[R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk)_(m)-(Ar)_(p)]_(q)[B] (I)
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(Alk) (II)
または
R^(1)_(n)-(RO)_(3-n)Si-(アルケニル) (III)
[上記式中、
Bは、-SCN、-SH、-Cl、-NH_(2)(q=1の場合)または-Sx-(q=2の場合)を表し、
RおよびR^(1)は、1?4個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のアルキル基、フェニル基を表し、その際、全ての基RおよびR^(1)はそれぞれ同一であるか、または異なったものを表してもよく、有利にはアルキル基であり、
Rは、分枝鎖状もしくは非分枝鎖状のC_(1)?C_(4)-アルキル、-C_(1)?C_(4)-アルコキシ基を表し、
nは、0、1または2を表し、
Alkは、1?6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の2価の炭素基を表し、
mは、0または1を表し、
Arは、6?12個の炭素原子を有するアリーレン基を表し、
pは、0または1を表すが、ただしその際、pおよびnは同時に0を表すことはなく、
xは、2?8の数を表し、
アルキルは、1?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表し、
アルケニルは、2?20個の炭素原子、有利には2?8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状の1価の不飽和炭化水素基を表す]の有機ケイ素化合物1種以上で変性したものを使用する」は、「少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラック」に該当することは明らかであるから、補正発明の「変性顔料」「前記変性顔料が、変性カーボンブラック、変性炭素繊維、変性活性炭、変性グラファイト、変性活性化グラファイト、変性カーボンクロス、変性ガラス質炭素、炭素相およびケイ素-含有種相を含む凝集体、炭素相および金属含有種相を含む凝集体、シリカで被覆されたカーボンブラック、少なくとも1つの有機基を結合したカーボンブラック、またはそれらの組合せであり」に相当する。

引用発明の「懸濁液の形での充填剤」は、その具体例について刊行物1(摘示(エ)の段落【0052】)に、表面において少なくとも部分的に変性された充填剤の一部を水中に分散させて充填剤懸濁液を製造したことが記載されていることも勘案すると、充填剤が液に懸濁した懸濁液であるから、補正発明の「少なくとも1種の変性顔料を含む少なくとも1つのスラリー」に相当する。
引用発明の「ゴム溶液の水性エマルジョン」は、その具体例について刊行物1(摘示(エ)の段落【0053】)に、充填剤懸濁液を引き続き場合によりアルカリ金属ケイ酸塩溶液を含有しているゴム-ラテックスまたは場合によりアルカリ金属ケイ酸塩溶液を含有するゴム溶液の水性エマルジョンと充分に混合したことが記載されていることも勘案すると、補正発明の「水性ポリマー溶液」に相当する。
引用発明の「充填剤≧50質量%を、ゴム溶液の水性エマルジョンと混合し」は、補正発明の「スラリーを、水性ポリマー溶液に導入して混合物を形成し」に相当する。
引用発明の「ゴム溶液の水性エマルジョン」は、水を含有することが明らかであるから、補正発明の「ここで該水性ポリマー溶液は脱水されていないこと」を満足する。
引用発明の「該混合物中に存在するゴムを充填剤と一緒に完全に沈降させる」は、補正発明の「該混合物を脱水してポリマー組成物を形成すること」に相当する。

そうすると、補正発明と引用発明は、一致しており、相違点はない。

(v)審判請求人の主張について

審判請求人は、審判請求書5頁において、
「審査官殿は、引例1におけるゴムを充填剤と一緒に沈降させる工程の後、沈降物を水から分離し乾燥して粉末化することが一般的であり、この後工程が、本願発明に係る「混合物を脱水してポリマー組成物を形成すること」と同じであると認定されております。しかしながら、引例1に記載の方法は、脱水の前に、複合粉末ゴム生成物の沈降物を生成することに関連しており、引例1では、充填剤が沈降生成物のゴムマトリックスに強固に結合しています(例えば、引例1の段落0039?0045及び請求項1を参照ください)。引例1に記載されるように、(中間)混合物中のゴムは、充填剤と完全に共沈し、充填剤が、結合によってゴムの表面に導入され組み込まれており、充填剤が、粉末の高い流動性をもたらし、且つ粉末の貯蔵の際の付着を防止するために、充填剤の沈降ゴム粉末粒子への結合が必要とされています(引例1の段落0045を参照ください)。このように、引例1においては、全てが複合粒子の粉末として形成されております。
これに対して、本願発明においては、ポリマー及び変性顔料を含む混合物を脱水または洗浄してポリマー組成物が形成されます(段落0010?0017及び0038?0048)。上述しましたように、引例1においては、脱水の前に、充填剤がゴムと完全に共沈し、充填剤がゴムに強固に結合した沈降複合粒子が形成されており、本願発明のような異なる材料の混合物は形成されません。当業者にとって、引例1の段落0058に記載される脱水後の沈降生成物が、ポリマー及び改質顔料の混合物等の沈降「混合物」であるとは到底みなすことはできません。このように、引例1には、本願請求項1、6、及び7に特定した少なくとも一種のポリマー及び少なくとも一種の変性顔料の混合物を含む脱水または洗浄したポリマー組成物の生成物を提供することについて、記載も示唆もされておらず、本願発明の課題及び解決法について何の言及もなされておりません。」と主張している。

請求人は、要するに、本願発明1に係る組成物と引用発明に係る組成物は、構成が異なる旨主張しているものと認められるが、本願発明1に係る組成物は、「少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物」であって、その構成に関しポリマーと変性顔料を含むこと以外に何も限定のないポリマー組成物の発明であるから、請求人の主張は、そもそも、特許請求の範囲の記載に基くものではない。
そして、ポリマー組成物の原料(ポリマーと変性顔料)および製造工程が、上記(iv)対比・判断に記載したとおり、一致しているのであるから、製造される組成物の構成も、一致するはずである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(vi)小括
以上のとおりであるから、補正発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条1項3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明

上記のとおり、平成24年10月5日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1?24に係る発明は、平成23年8月22日付け手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1および7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」および「本願発明7」という。)は、以下のとおりのものである。

<本願発明1>
「少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
少なくとも1種の変性顔料を含む少なくとも1つのスラリーを、水性ポリマー溶液に導入して混合物を形成し、ここで該水性ポリマー溶液は脱水されていないこと、ならびに、
該混合物を脱水してポリマー組成物を形成すること
を含む、ポリマー組成物の製造方法。」

<本願発明7>
「少なくとも1種のポリマーおよび少なくとも1種の変性顔料を含むポリマー組成物の製造方法であって、
クエンチされた未洗浄の溶液ポリマーおよび重合溶媒の存在下で、2相混合物中にて、
少なくとも1つの有機基を顔料に結合すること;ならびに
前記混合物を洗浄してポリマー組成物を形成すること
を含む、ポリマー組成物の製造方法。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の理由とされた、平成23年2月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由は、以下のとおりである。

「1.この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.この出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2002-512288号公報 」

3.当審の判断

(1)特許法第29条1項3号に係る理由について

本願発明1は、上記1.本願発明に記載したとおりのものであるところ、本願発明1をさらに限定した補正発明が刊行物1(特表2002-512288号公報)に記載された発明であることは、上記第2.2.(2)独立特許要件に記載したとおりであるから、補正発明を含む本願発明1も刊行物1に記載された発明である。

(2)特許法第37条に係る理由について

本願発明1は、上記(1)特許法第29条1項3号に係る理由についてに記載したとおり、刊行物1に記載された発明であるから、解決しようとする課題(出願時まで未解決であった、発明が解決しようとする技術上の課題)および主要部(解決しようとする課題に対応した新規な事項)を有していない。
したがって、本願発明1と本願発明7は、特許法第37条第1号、および、第2号の関係にない。
また、本願発明1と本願発明7は、特許法第37条第3号、および、第4号の関係にないことは明らかである。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本願に係る原査定の拒絶の理由1、3は妥当なものであり、他の理由について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-30 
結審通知日 2014-02-04 
審決日 2014-02-17 
出願番号 特願2001-561092(P2001-561092)
審決分類 P 1 8・ 641- Z (C08J)
P 1 8・ 642- Z (C08J)
P 1 8・ 113- Z (C08J)
P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 行令福井 美穂  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 大島 祥吾
富永 久子
発明の名称 変性顔料を含むポリマーおよびその製造方法  
代理人 青木 篤  
代理人 高橋 正俊  
代理人 古賀 哲次  
代理人 永坂 友康  
代理人 石田 敬  
代理人 河野上 正晴  

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