ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
---|---|
管理番号 | 1289378 |
審判番号 | 不服2012-24249 |
総通号数 | 176 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-07 |
確定日 | 2014-07-02 |
事件の表示 | 特願2008-545100「検出装置および検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日国際公開、WO2007/068955、平成21年 5月14日国内公表、特表2009-519459〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年12月18日(優先権主張日平成17年(2005年)12月16日、英国)を国際出願日とする国際出願であって、平成24年1月30日付けで拒絶理由が通知された後、同年6月12日付けで意見書と手続補正書の提出がなされたが、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成25年1月16日付けで審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書の提出がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成24年6月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであって、その請求項1は以下のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項1】 サンプル上のセキュリティインキの存在、非存在または特性を決定するための検出装置であって、 前記検出装置は、 前記サンプルに励起放射線を提供するための放射線源と、 前記サンプルから放出された放射線を検出するための検出器と、 使用時に、前記サンプルから放出され検出された放射線の分析に従って、前記サンプル上のインキの存在、非存在または特性を決定するように構成された処理手段と、 を有し、 前記処理手段は、前記サンプルの励起後に、励起周波数と同じスペクトル領域で、前記サンプルから放出された放射線を測定するように構成されており、 前記励起放射線の強度は、前記サンプルから放射され検出された放射線の強度に応じて調節されることを特徴とする検出装置。」 第3 引用刊行物の記載事項 1 刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物1(特表昭57-500923号公報)には、発光物質の真正特徴を有する有価証券及びその真偽を検査する方法に関して、次の事項が図面とともに記載されている。 (下線は、下記「2 刊行物1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に付したものである。) (1a)第3頁右上欄19行?左下欄5行 「本発明の要旨は、発光特徴の少なくとも一部が、狭い波長域でのみ励起することが出来、そしてそれと同じまたはそれに非常に近い波長域の光を放射し得ることを特徴とする発光性真正特徴を有する有価証券である。 さらに、本発明の要旨は、発光物質を有する有価証券の真偽を、電磁輻射線で励起しそして励起および(または)発光特徴を観察することにより検査する方法において、発光物質の励起を、検査される発光領域のスペクトルで行わせることを特徴とする有価証券の真偽検査法である。」 (1b)第5頁右下欄14行?20行 「本発明による有価証券には、多数の方法で発光体を施すことが出来る。発光体は、印刷インキ、紙またはセフティーラインに存在させることが出来る。 この点で、小さいスペクトル領域のみを励起および発光用に自由な状態にしておけばよいので、発光体を多数の染料および顔料と組合せることが出来ることは特に重要である。」 (1c)第6頁左下欄下から3行?第7頁左上欄19行 「次に、特徴物質が印刷された本発明による有価証券を検査するのに特に適した装置について第2図を参照しながら説明する。 本発明による発光物質が施されたコードライン22が個々の領域の形で有価証券20に施される。 装置には、フラッシュランプ24および光ダイオード26の領域が、図示しない光シールドにより互いに分離されて配置される。光ダイオードは、有価証券20のコード領域の特徴部分の真上に来ることが出来るように配置される。 さらに、装置には、有価証券の一端をつかむことが出来る爪28を設けたグリッパーアームが配置されている。爪28は、特殊電磁石29により閉じられる。爪28自身はグリッパーアーム27に固定され、このアームはソレノイド磁石25により長手方向に変位させることが出来る。 有価証券20をスロットから検査装置に挿入すると、位置決め停止装置たとえばマイクロスイッチまたは光ゲートが作動し、続く工程の始動信号が発せられる。電磁石29は爪28を閉じる。コードライン22の真上に位置するフラッシュランプ24が同時に作動する。爪28は、ソレノイド磁石25により何分の1秒でフラッシュランプ24の下に引張られ、有価証券のコードラインが光ダイオードによりとらえられるように光ダイオード領域26の下に導かれる。 フラッシュランプにより励起中領域22から放射される発光輻射線は、ある減衰特性を有する、すなわち、励起が終った後も、領域22は非常に短い時間の間発光する。フラッシュランプ24および光ダイオード26は光スクリーンにより互いに分離されているので、この「残光」は光ダイオード26により記録される。したがって、波長が励起光と同じスペクトル領域であるという事実にもかかわらずルミネッセンスを確認することが出来る。 フラッシュランプ24の代りに適当な光ダイオードを用いることが出来ることは明らかである。爪28およびソレノイド磁石25の代りに、有価証券20をフラッシュランプおよび光ダイオード領域の下を移動させる一定速度で作動する送り装置、たとえばコンベヤーベルトを設けることも出来る。この場合、数個の光ダイオード領域を送り方向に連続的に並べて使用するのが有利である。連続的に並べられた光ダイオードにより発信される信号の関係からも、発光輻射線の単なる存在ばかりでなく、減衰特性も測定することが出来る。」 (1d)図2には上記記載に対応する図が示されている。 「 」 2 刊行物1に記載された発明の認定 上記(1b)に記載の「発光体」は、(1b)の記載から印刷インキなどに存在する「発光物質」であるといえる。 よって、これらの記載(図面の記載も含む)を総合すれば、上記刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「発光物質を有する有価証券の真偽を、電磁輻射線で励起された発光の発光特徴を観察することにより検査するのに特に適した装置であって、 発光物質は、印刷インキに存在し、 上記の印刷インキに存在する発光物質が施されたコードライン22が個々の領域の形で有価証券20に施され、 装置には、フラッシュランプ24および光ダイオード26の領域が互いに分離されて配置され、 有価証券20をスロットから装置に挿入すると、コードライン22の真上に位置するフラッシュランプ24が作動した後、有価証券は、有価証券のコードライン22が光ダイオード26によりとらえられるように光ダイオード領域26の下に導かれ、 フラッシュランプ24により励起中領域である上記のコードライン22から放射される発光輻射線は、ある減衰特性を有し、すなわち、励起が終った後も、コードライン22は非常に短い時間の間発光し、フラッシュランプ24および光ダイオード26は光スクリーンにより互いに分離されているので、この「残光」は光ダイオード26により記録され、したがって、波長が励起光と同じスペクトル領域であるという事実にもかかわらずルミネッセンスを確認することが出来る装置。」(以下、この発明を「刊行物1発明」という。) 2 刊行物2 同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物2(特開平8-235301号公報)には、プリペイドカード等の各種物品上に設けるバーコードや文字の様な各種のマークを、光学的に検出する方法およびその検出方法を実施した検出装置(2頁右欄段落【0001】【産業上の利用分野】の項参照)に関して、次の事項が図面とともに記載されている。 (2a)3頁左欄 「【0008】すなわち、蛍光物質で形成したマーク上に周期的に断続する光を照射すると、そのマーク部分から放出される光は、マークおよびその下の媒体による一定強度の反射光と、その反射光と同一タイミングでその強度が増減する蛍光と、略一定レベルの外乱光とが重畳したものとなる。したがって、反射光や外乱光と蛍光とは両者の波形の違いを利用して分離できるとともに、蛍光成分による波形の違いによって蛍光物質の種類が特定できるのである。 【0009】本発明は上記知見に基づいてなされたものであって、単に入射光強度の強弱や残光の強さだけを検出するのではなく、入射光の波形変化を総合的に判断してマークを判定することにより、マークから発生される蛍光の検出条件の劣化にもかかわらず、的確にマーク形成位置の検出が行なえるばかりか、マークを構成している蛍光物質の種類をも検出することができる方法および装置を提供することを目的とする。」 (2b)4頁左欄 「【0021】カード21は、図2に示す如く、基材22として例えば白色のポリエステルフィルムを使用し、その基材22の上面側に、予め反射率を調整した任意の意匠の下地層23を印刷形成する一方、下面側に磁性塗料を塗布することにより、主情報を書き換え可能に記録する磁性層24を形成している。更に、上面側の下地層23上に蛍光物質によるマーク16を印刷形成し、セキュリティ用の副情報を固定可能としている。」 (2c)4頁左欄?右欄 「【0025】本発明にかかるマーク検出装置は、図3にその全体の構成を示す如く、各種の制御信号を発生する信号発生部31と、上記の様にして形成されたカード21の走行部32と、そのカード走行部32によって移行されるカード21に対する光照射部33と、光17が照射された位置から放出される光18を取り込んで電気信号に変換する光電変換部34と、変換された電気信号中からマーク16の形成位置に対応したマーク信号S1およびマーク16を構成する蛍光物質に対応した信号S10を出力するマーク検出部35と、検出した信号S1・S10からカード21上のデータ内容を判定するデータ処理部36とを備えている。」 (2d)5頁左欄?右欄 「【0034】本発明は、かかるマーク検出部35の構成に特徴を有するものであって、図5(f)で例示する入射光18の波形形状の変化を測定するサンプルホールド回路50と、第1?第4の比較回路51・52・53・76と、第1?第3の表示回路54・55・77とから構成される。 【0035】サンプルホールド回路50は、図4に例示する如く、OPアンプを使用した電圧バッファ回路56の入力側に、入力電圧値を保持するコンデンサ57と、上記した信号発生部31から送られるタイミング信号S3?S5の入力でオンするアナログスイッチ58を備えたものを1組のサンプリング回路60とし、少なくともそれを3組分備えたものであって、光電変換部34から送られる図5(f)で例示する様な入射光18の強度に対応した一連の電圧変化S7を、複数の時点で個別的且つ周期的にサンプリングするとともに、その各検出値を次のサンプリング時まで保持可能とするものである。 【0036】本実施例にあっては、図5(c)に示すタイミング信号S3を第1サンプリング回路60aに印加し、光17の照射を停止する直前の電圧値によって、図5(g)および(i)の太線で示す入射光18の最大値Vmを検出する。また、図5(d)で示すタイミング信号S4を第2サンプリング回路60bに印加し、光照射を停止した直後の電圧値によって、図5(g)および(i)の破線で示す残光の強度を電圧値Vdとして検出する。更に、図5(e)で示すタイミング信号S5を第3サンプリング回路60cに印加し、光17の照射を再開する直前の電圧値Vlによって、図5(g)および(i)の細線で示す入射光18の最小値を個別に検出する。このようにして、入射光18の波形の変化を電圧値の変化として求め、全体に占める蛍光強度の割合が判る様にしている。 【0037】ここで、マーク16の形成に使用する蛍光物質の種類によって、例えば図5(f)における時刻t1?t3間と時刻t5以降の様に、入射光18の電圧波形は相違する。本発明はかかる波形の違い、具体的には所定の検出タイミングにおける電圧値Vdの値の大小により、蛍光物質の有無に加えて、蛍光物質の種類をも判定できる様にしている。」 第3 対比、判断 1 本願発明と刊行物1発明との対比 (1)刊行物1発明の「有価証券20」が本願発明の「サンプル」に相当する。また、刊行物1発明の「印刷インキ」は、「有価証券の真偽」を「検査」するための「発光物質」が存在するものであるから、本願発明の「セキュリティインキ」に相当する。 そうすると、刊行物1発明の「印刷インキに存在する発光物質が施されたコードライン22」を励起したことによって生じる「発光輻射線」の「残光」による「ルミネッセンスを確認する」「装置」であるところの「発光物質を有する有価証券の真偽を、電磁輻射線で励起された発光の発光特徴を観察することにより検査するのに特に適した装置」が、本願発明の「サンプル上のセキュリティインキの存在、非存在または特性を決定するための検出装置」に相当する。 (2)刊行物1発明の「有価証券20」の「コードライン22」を「励起」することによって「コードライン22」から「発光輻射線」を放射させる「ラッシュランプ24」が、本願発明の「前記サンプルに励起放射線を提供するための放射線源」に相当する。 (3)刊行物1発明の「有価証券20」の「コードライン22」から生じた「残光」を記録する「光ダイオード26」が、本願発明の「前記サンプルから放出された放射線を検出するための検出器」に相当する。 (4)刊行物1発明は「ルミネッセンスを確認する」手段を有するものということができ、刊行物1発明のおける当該「ルミネッセンスを確認する」手段、すなわち、「フラッシュランプ24」によって「印刷インキに存在する発光物質が施されたコードライン22」を励起して生じる「発光輻射線」の「残光」による「ルミネッセンスを確認する」手段が、本願発明の「使用時に、前記サンプルから放出され検出された放射線の分析に従って、前記サンプル上のインキの存在、非存在または特性を決定するように構成された処理手段」に相当する。 (5)刊行物1発明における、上記(4)の「ルミネッセンスを確認する」手段が「フラッシュランプ24」によって「印刷インキに存在する発光物質が施されたコードライン22」を励起して生じる「発光輻射線」の「残光」により確認するものであり、そして、「(残光の)波長が励起光と同じスペクトル領域であるという事実にもかかわらずルミネッセンスを確認することが出来る」ことと、本願発明の「前記処理手段は、前記サンプルの励起後に、励起周波数と同じスペクトル領域で、前記サンプルから放出された放射線を測定するように構成されて」いることとは、「前記処理手段は、前記サンプルの励起後に、励起周波数と同じスペクトル領域で、前記サンプルから放出された放射線を取り扱うように構成されて」いる点で共通する。(下線は当審で付した。) 2 一致点 よって、両者は、 「サンプル上のセキュリティインキの存在、非存在または特性を決定するための検出装置であって、 前記検出装置は、 前記サンプルに励起放射線を提供するための放射線源と、 前記サンプルから放出された放射線を検出するための検出器と、 使用時に、前記サンプルから放出され検出された放射線の分析に従って、前記サンプル上のインキの存在、非存在または特性を決定するように構成された処理手段と、 を有し、 前記処理手段は、前記サンプルの励起後に、励起周波数と同じスペクトル領域で、前記サンプルから放出された放射線を取り扱うように構成されている検出装置。」 である点で一致し、下記の点で相違する。 3 相違点 (1)相違点1 サンプルから放出された放射線を取り扱う処理手段が、本願発明においては、放射線を「測定」するものであるのに対し、刊行物1発明においては、残光(放射線)によるルミネッセンスを確認する(すなわち、放射線の存否を検知する)ものである点。 (2)相違点2 本願発明では、「前記励起放射線の強度は、前記サンプルから放射され検出された放射線の強度に応じて調節される」ものであるのに対し、刊行物1発明では、前記励起放射線の強度は、前記サンプルから放射され検出された放射線の強度に応じて調節されることは特定されていない点。 4 相違点についての検討 (1)相違点1について 刊行物2の上記記載(2a)?(2d)には、使用時に、前記サンプルから放出され検出された放射線(発光)の強度を測定し、前記サンプル上のインキの存在、非存在または特性を決定するように構成された処理手段を設けることが記載されている。 そうすると、刊行物1発明においても、放射線の単なる存否だけなくその特性を知るという要請(自明の技術課題)に応じて、上記刊行物2に記載の技術を適用し、前記サンプル(有価証券)の励起後に、励起放射線(光)と同じスペクトル領域で、前記サンプルから放出された放射線(発光)の強度を測定するように構成するようなことは、当業者が普通に設計し得る範囲内の事項である。 (2)相違点2について 励起放射線(光)を用いてサンプルから放射される放射線(光)を検出する技術分野においては、励起放射線の強度は放射される放射線の強度を左右し、検出される放射線の強度が小さすぎて、ノイズに埋もれてしまうようなレベルであっては当然ならないし、検出される放射線を取り扱う機器等の性能によっても制限される場合が当然あるから、放射線(光)の検出が適切に行われるように、励起放射線(光)をサンプルに放射して検出された放射線(光)の強度に応じて、放射線の強度を調節することは、本願優先権主張日前に周知の技術である(必要ならば、例えば、特表平11-508352号公報、特に第19頁3行?4行、第31頁下から5行?第32頁4行等、特開2003-199746号公報、特に請求項1,段落【0008】?【0009】等参照)。 そして、刊行物1発明においても、放射線(光)の検出が適切に行われるように、前記周知技術を適用して、励起放射線の強度は、前記サンプルから放射され検出された放射線の強度に応じて調節されるように構成することは、当業者であれば必要に応じて採用し得る事項である。 そして、それらによる効果も格別のものとは認められない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、本願優先権主張日前に頒布された上記刊行物1発明、刊行物2に記載された技術的事項及び周知事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願は、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-01-30 |
結審通知日 | 2014-02-04 |
審決日 | 2014-02-20 |
出願番号 | 特願2008-545100(P2008-545100) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上田 泰 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 岡田 孝博 |
発明の名称 | 検出装置および検出方法 |
代理人 | 片山 健一 |
代理人 | 森田 耕司 |
代理人 | 鈴木 守 |
代理人 | 加藤 真司 |
代理人 | 大野 聖二 |
代理人 | 津田 理 |