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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1289381
審判番号 不服2012-24898  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-28 
確定日 2014-06-30 
事件の表示 特願2006-357463「養殖海藻のビジネスシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月17日出願公開、特開2008-165666〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成18年12月26日の出願であって,平成21年12月28日に手続補正書が提出され,平成23年10月14日付けの拒絶理由通知に対して,平成24年1月16日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成24年7月17日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成24年11月28日に審判が請求されたものである。

第2 本願発明
平成24年1月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載によれば,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「(A):促成昆布養殖生産者のコンピューターデーターベース入力部は,入力手段に依って係留ロープ式大型促成昆布養殖施設の衛星リモートセンシング情報,画素面積,一画素当たりの刈り取り昆布湿重量,単位(一画素)湿重量当たりの二酸化炭素固定量等の諸情報を入力して保存する。
(B):前記コンピューター入力部の受付手段は,上記養殖施設の人工衛星リモートセンシングの情報を受信して受け取り,其の映像を着色画像化するかせずして保管する。
(C):次いで比較手段で前記受信情報を,データーベースから抽出した同種情報と比較して,其の色彩の濃淡に依り,養殖昆布の作柄を区別して区画化する。
(D):更に演算手段で,データーベースの画素面積,画素当りの昆布湿重量,養殖昆布総湿重量,及び二酸化炭素固定量を参照して,前記各区画の面積,昆布総湿重量,及び二酸化炭素固定量を夫々算出する。
(E):上記算出された二酸化炭素固定量に基ずき,文書作成手段で二酸化炭素排出権認定の申請書を作成して,インターネット又は通常の通信手段を介して公的第三者機関に送信して其の認定を申請する。
(F):認定された排出権情報は,前記生産者コンピューターの出力部から,インターネットを介して,二酸化炭素排出権取引センターコンピューター(取引サーバー)の入力部に送信され,その入力部で保管する。
(G):一方,サーバーは,前記養殖昆布生産者の素昆布及び此の素昆布を加工して生産した種々な商品の情報も又,インターネット回線を通じて,前記排出権と同様に,夫々の生産者の端末から受信して,其の受付部に蓄積-保管し,必要に応じて,此れ等商品の情報を,掲示手段で掲示部に掲示する。
(H):此れ等掲示商品の購入取引の為のクライアント端末は,クライアントの取引条件が,掲示部商品の条件と一致した時,インターネット回線を介して,文書作成手段で作成した注文状を,インターネット回線を介して,サーバーの受付手段に送信する。
(I):此の注文状を受信したサーバーは,注文商品生産者端末の受付部に,此の文書を回送する。
(J): 此の注文状を受信した生産者端末は,納品書及び代金請求書を作成し,サーバーを経由してクライアントに送信し,其の商品は,生産者が直接クライアントに発送し,一方クライアント自身が電子マネー決算又は普通口座決算で生産者口座に払い込む。:
事を特徴とする促成養殖昆布のビジネスシステム。」
なお,以下(A)?(J)に項分けされた各発明特定事項を,便宜上「分説A」などということがあり,「此の」は「この」などと,「其の」は「その」と,「依り」は「より」と,「事」は「こと」と記載する。

第3 原査定の拒絶の理由について
原査定の拒絶理由の[理由3]の概要は,以下のとおりである。
<拒絶理由>
『この出願は,次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら,この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。
理 由
[理由1](略)
[理由2](略)
[理由3]この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1-6
・引用例1-8
・備考
引用例1には,海藻の二酸化炭素固定作用等を用いた海洋を利用した二酸化炭素固定技術に基づいた二酸化炭素固定量を用いた,二酸化炭素排出権取引に係るシステムが記載されている。
引用例2には,衛星などによるリモートセンシングにより,森林樹木だけではなくダムや池などで発生するものをも含む植物の活力度を評価するものであるシステムが記載され,(途中略)
引用例6には,海草等の水産物含む生産物をインターネット等を介して販売するためのものであるシステムが記載され,(途中略)
るように,各々周知技術である。
してみれば,引用例1のシステムにおいて,上記周知技術等を用いて本願発明に係るシステムとすることは,当業者が容易になし得た事項である。
引 用 文 献 等 一 覧
1:特開2005-129088号公報
2:特開2002-360070号公報
3:(略)
4:(略)
5:(略)
6:特開2003-256679号公報
7:(略)
8:(略)』
<拒絶査定>
『この出願については,平成23年10月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-3によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。』

第4 当審の判断
1.引用例について。
(1)引用例1と引用発明について。
ア 原査定の拒絶理由通知で引用文献1として引用した「特開2005-129088号公報」(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下のことが記載されている。
(以下「引用例1摘記事項」などという。なお,下線は当審で付したものである。)
(ア)「【技術分野】
【0001】本発明は,海洋を利用した二酸化炭素固定技術に基づく二酸化炭素排出権の取引を促進し,排出権取引ビジネスを活性化し,環境保全に資することを目的とする二酸化炭素排出権取引システム用管理装置に関する。」
(イ)「【課題を解決するための手段】
【0012】海洋を利用した二酸化炭素固定技術の種別,評価点及び利用可能地域と面積からなるデータベースの記憶部,二酸化炭素排出量の入力受付部,入力された二酸化炭素排出量とデータベース記憶部に記憶されたデータから面積と評価点の積を求め,入力量と積を比較する演算比較手段,比較した結果,積が入力量より大きな技術を選択して表示する表示手段からなる二酸化炭素排出権取引システム用管理装置である。
入力手段または表示手段が通信回線に接続されており,場所を選ぶことなく管理装置を使用することが可能である。
受付手段には,技術種別と共に海域が地図で表示されており,受付手段にデータを入力する際には,ポインティングデバイスで迅速にデータ入力をすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】 図1は,本発明の管理装置のブロック図である。
管理装置は,受付手段1,演算手段2,比較手段3,出力手段4及びデータベース記憶部5とデータ入力手段51から構成されている。
データベース記憶部5にデータ入力手段51を介して入力される海洋を利用した二酸化炭素固定技術の一例を挙げると,一定海域を二酸化炭素の吸収固定のために確保するもの,珊瑚礁を育成保護によるもの,各種の貝を育成する海域の確保及び整備によるもの,海藻の育成海域の確保及び整備によるもの,マングローブを育成するための海浜の確保と整備によるものなど,二酸化炭素吸収固定技術の種別である。
【0014】更には,その個別技術が適用可能な状態となっている海域名,または,海域整備によって二酸化炭素固定が可能となる海域名及びその適用可能面積,単位面積当たりの二酸化炭素固定量(原単位)がデータベース記憶部5に記憶されている。
受付手段1は,二酸化炭素排出量,または,技術種別若しくは海域名のいずれかを入力するものであり,受付手段1の表示面にデータベースに基づく海域名が地図と共に表示してあり,ポインティングデバイスで選択することによって海域や技術が選択されて入力される。また,操作者が必要とする二酸化炭素排出量の数値を入力する枠が設けてあり,キーボード等で数値を入力する。
【0015】演算手段2は,受付手段1から入力された二酸化炭素排出量と海域名若しくは技術種別の入力データに基づき,データベース記憶部に記憶されたデータから面積と原単位との積,即ち二酸化炭素固定可能量を求めるものである。
比較手段3は,演算手段2で求めた二酸化炭素固定可能量と入力データの二酸化炭素排出量とを比較するものであり,比較した結果は出力手段4に予め定められた様式で出力される。
【0016】データベースに入力するデータ,海域が二酸化炭素固定技術の適用可能な状態であるかの判定,また,可能であると判定された場合の原単位の評価決定が重要であるので,決定に当たっては,その技術を公正な第三者機関が評定することによって,信用度を高めることが肝要である。また,海洋を利用した二酸化炭素固定技術であり,同一技術であっても海域の状況によって原単位が変動する場合があるので,原単位を海域ごとに細かく設定することによって二酸化炭素固定量の算出を精緻なものにすることが好ましい。
【0017】管理装置の受付手段及び出力手段は,インターネットなど通信回線に接続されており,遠隔地からでも自由に入出力できるものである。必要に応じて,予め登録してパスワードを入手したものだけが接続できるようにしておく。
【0018】図2は,本発明の二酸化炭素排出権取引システム用管理装置が使用される取引市場の概念図であり,海洋を利用した開発すべき二酸化炭素固定技術,例えば,海洋が有している二酸化炭素固定能力の活性化技術,サンゴ礁を育成することによるサンゴによる大気中の二酸化炭素固定技術,二枚貝の繁殖場を構築することによる二酸化炭素固定技術,海藻が育成しやすい繁殖場を設けることによる二酸化炭素固定技術,更には,マングローブを繁茂させることによる二酸化炭素固定技術が挙げられる。
【0019】これらの,提案技術は公的な第三者機関によって,その技術を適用することが可能な海域及び海域ごとの二酸化炭素固定量の原単位が定められ,二酸化炭素排出権取引所の管理装置に入力されてデータベースとして格納され,二酸化炭素排出権を必要とする環境負荷型産業の企業や国等が取引所において二酸化炭素排出権を購入することになるものであり,管理装置と取引装置を連動させることよって,オークション形式で特定海域と特定二酸化炭素固定技術の組み合わせによる二酸化炭素排出権を取引することができる。」
(ウ)図4には,「従来の二酸化炭素取引システムの概念図」であって,A電力,B電力,代替発電などの排出権取引の参加者がインターネットを介して注文をし,売買報告をし,代金を受け渡すこと,参加者のあいだで電力を供給し料金を支払うことが図示されている。

イ 上記アの摘記事項(ア)?(ウ)によれば,引用例1には以下の技術的事項が記載されている。
(ア)引用例1に記載された発明は「海洋を利用した二酸化炭素固定技術に基づく二酸化炭素排出権取引システム」に関する技術である(【0001】【0012】)。
(イ)引用例1の「二酸化炭素排出権取引システム」の「管理装置」は,「演算手段及びデータベース記憶部とデータ入力手段などから構成」され(【0013】),「データベース記憶部」には,「データ入力手段」を介して,「海藻の育成海域の確保及び整備により二酸化炭素固定が可能な海域の適用可能面積,単位面積当たりの二酸化炭素固定量(原単位)が記憶」され(【0013】【0014】),「演算手段」が,「面積と原単位との積により二酸化炭素固定可能量を求める」もの(【0015】)である。
(ウ)ここで,「海域が固定技術を適用可能かの判定やその海域の原単位の評価決定は公正な第三者機関が評定」する(【0016】)ものであり,「海域の状況により原単位が変動するので原単位を海域ごとに細かく設定して二酸化炭素固定量の算出を精緻なものとする」(【0016】)ものである。
(エ)「取引市場」では「管理装置」が使用され,「管理装置と取引装置を連動させ,オークション形式で二酸化炭素排出権を取引」することにより,排出権を必要とする者が購入する(【0018】【0019】)。
(オ)図4には,「従来の二酸化炭素取引システムの概念図」であって,「A電力,B電力,代替発電などの排出権取引の参加者がインターネットを介して注文をし,売買報告をし,代金を受け渡す」ことが図示されており,引用例1の発明は,図4の従来のシステムで用いられる(引用例1の段落【0021】参照。)ものであるから,引用例1の発明は,「参加者が排出権をインターネットのシステムにより売買注文し,インターネットのシステムにより売買代金を清算する」ものである。
(カ)図4には,さらに,「A電力,B電力,代替発電などの排出権取引の参加者のあいだで電力を供給し料金を支払う」ことが図示されていることから,引用例1の発明は,市場参加者間で排出権の売買のほか,参加者の本来業務である電力という商品の売買をする。

ウ 上記イの(ア)?(カ)のことから,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「海洋を利用した二酸化炭素固定技術に基づく二酸化炭素排出権取引システムであって,
管理装置は,演算手段及びデータベース記憶部とデータ入力手段などから構成され,
データベース記憶部には,データ入力手段を介して,海藻の育成海域の確保及び整備により二酸化炭素固定が可能な海域の適用可能面積,単位面積当たりの二酸化炭素固定量(原単位)が記憶され,
演算手段が,面積と原単位との積により二酸化炭素固定可能量を求めるものであり,
ここで,海域が固定技術を適用可能かの判定やその海域の原単位の評価決定は公正な第三者機関が評定し,海域の状況により原単位が変動するので原単位を海域ごとに細かく設定して二酸化炭素固定量の算出を精緻なものとするものであり,
取引市場で管理装置が使用され,管理装置と取引装置を連動させ,オークション形式で二酸化炭素排出権を取引して,排出権を必要とする者が購入するものであり,
参加者が排出権をインターネットのシステムにより売買注文し,インターネットのシステムにより売買代金を清算し,
市場参加者間では排出権の売買のほか,参加者の本来業務商品の売買をする,
二酸化炭素排出権取引システム。」

(2)引用例2と引用例2記載事項について。
ア 原査定の拒絶理由通知で引用文献2として引用した「特開2002-360070号公報」(以下「引用例2」という。)には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例2摘記事項」という。)
(ア)「【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は植物の活力度評価法に関し,詳しくは森林樹木,果樹,農作物などの植物の活力度をリモートセンシングにより評価する方法において,より評価精度を高めるようにした植物の活力度評価法に関するものである。」
(イ)「【0007】そこで,飛行機,ヘリコプタなどの航空機や,バルーンや,ランドサット,SPOT,ERSなどの衛星(以下,航空機や衛星などという)を利用した,いわゆるリモートセンシングによる評価法が行われている。この評価法は,高所から観測するため,広範囲の評価が可能になる利点があるが,反面,費用が高額になるため,現地調査が極めて困難な場所か,時間や費用などが制限される場合に限られ,しかも,植物は樹種や地域によって,分光特性が異なるため,高所からの情報だけでは,どうしても評価精度が低くなるという問題点がある。」
(ウ)「【0011】【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載された植物の活力度評価法は,上記課題を解決するために,リモートセンシングによる植物の活力度評価法において,現地において植物の陽葉の分光特性データを測定収集し,この収集データからその植物の活力度を算出して基準データとしてデータベース化しておき,リモートセンシングによる植物の分光特性の測定データに基づいて前記データベースにおける基準データを参照して算出した値から植物の活力度を評価することを特徴とするものである。」
(エ)「【0019】また,「地域別」とは,大きくは,例えば,日本海側,中央内陸部,太平洋側など,あるいは近畿地方,東海地方などの地方別に,さらには都道府県別など行政区別に,必要に応じてさらに市町村別など,地域別に区別してデータベース化する。航空機や衛星などのリモートセンシングデータは,対象地域画像を多数のピクセルに分割し,ピクセルごとに森林樹木などの活力度を評価し,それらピクセルごとのデータを総合して対象地域全体の活力度を評価する。ピクセルサイズは,小さいほど精度が高くなるが,データ量が多くなるので,要求される精度に応じて適宜決定する。通常の評価法では,衛星データを利用して,例えば30m四方のピクセルサイズが用いられる。より高精度が要求される場合は,高解像度衛星データを利用して,例えば4m四方のピクセルサイズが用いられる。」
(オ)「【0058】さらには,果樹や農作物の活力度の評価も同様に行え,果実または農作物の品質のランク付けや収穫量予測など,多方面の応用が考えられる。」

イ 上記摘記事項(ア)?(オ)によれば,引用例2には以下の事項が記載されている。
(以下「引用例2記載事項」という。)
「衛星を利用したリモートセンシングにより,果樹や農作物などの植物の活力度を評価するものであって,
リモートセンシングの測定データに基づいて,データベースの基準データを参照して算出した値から活力度を評価すること,
活力度の評価は,対象地域画像を多数のピクセルに分割し,ピクセルごとに活力度を評価し,ピクセルごとのデータを総合し,対象地域全体の活力度を評価すること,
ピクセルサイズは,小さいほど精度が高く,高解像度衛星データを利用して4m四方のピクセルサイズであってよいこと,
これにより果樹や農作物の品質のランク付けや収穫量を予測をする活力度評価法。」

(3)引用例3と引用例3記載事項について。
ア 原査定の拒絶理由通知で引用文献6として引用した「特開2003-256679号公報」(以下「引用例3」という。)には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例3摘記事項」という。)
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ネットワークを介して相互に通信可能な商品掲示サーバーおよびクライアント端末を含み,上記商品掲示サーバーは,商品情報を掲示するとともに,併せて掲示した商品についての履歴情報と,その商品の生産環境情報とを開示する掲示手段を有するネット販売システム。
【請求項2】上記クライアント端末は,上記掲示手段において掲示された商品について注文する注文入力手段を有する請求項1に記載のネット販売システム。」
(イ)「【請求項8】上記商品情報は農産物または水産物に関する情報である請求項1?請求項7のいずれか1項に記載のネット販売システム。
【請求項9】上記商品情報は農産物の加工商品または水産物の加工商品に関する情報である請求項1?請求項7のいずれか1項に記載のネット販売システム。」

イ 上記摘記事項(ア)?(イ)によれば,引用例3には以下の事項が記載されている。
(以下「引用例3記載事項」という。)
「ネット販売システムであって,
ネットワークを介して相互に通信可能な商品掲示サーバーおよびクライアント端末を含み,
商品掲示サーバーは,商品情報を掲示し,
クライアント端末は,掲示手段に掲示された商品の注文を入力し,
商品情報は農産物や水産物,又は農産物の加工商品や水産物の加工商品に関する情報である,
ネット販売システム。」

2.対比
ア 本願発明と,引用発明とを比較する。
(ア)引用発明は,海藻を育成して固定する二酸化炭素の固定可能量を排出権として市場で取引するものである。
引用発明の「海藻の育成海域」は,ここで育成される海藻により固定される二酸化炭素の固定可能量を排出権とするものであるから,本願発明の「係留ロープ式大型促成昆布養殖施設」とは,「海洋を利用した二酸化炭素固定技術に基づく二酸化炭素吸収施設」である点で共通する。
引用発明の「取引市場への参加者」は,海藻の育成海域の確保及び整備に関わるものであって,「二酸化炭素吸収施設」で生じる排出権を,これを購入する者との間で取引するから,本願発明の「促成昆布養殖生産者」とは,排出権の「販売者」である点で共通する。
そして,引用発明の,排出権を購入する者と,本願発明の「クライアント」とは,「購入者」である点で共通する。
引用発明は,排出権を特定する「管理装置」と,市場で排出権を取引する「取引装置」とからなり,本願発明は,排出権を特定するための「生産者コンピューター」と,市場で排出権を取引する「二酸化炭素排出権取引センターコンピューター(取引サーバー)」とからなることから,前者と後者とは,それぞれ「販売者コンピューター」と,「取引コンピューター」である点で共通する。
以下,「海洋を利用した二酸化炭素固定技術に基づく二酸化炭素吸収施設」である海藻の育成海域を「二酸化炭素吸収施設」,海藻の育成海域の確保及び整備に関わる取引市場への参加者を「販売者」,排出権を購入する者を「購入者」,「管理装置」を「販売者コンピューター」,「取引装置」を「取引コンピューター」と記載する。
(イ)引用発明は,「販売者」が,「販売者コンピューター」のデータ入力手段を介して,「二酸化炭素吸収施設」により二酸化炭素固定が可能な面積,単位面積当たりの二酸化炭素固定量(原単位)を入力し,これがデータベース記憶部に記憶され,演算手段が,面積と原単位との積により二酸化炭素固定可能量を求めるものである
ここで,引用発明の「データ入力手段」「二酸化炭素固定が可能な面積」「単位面積当たりの二酸化炭素固定量(原単位)」は,後記する点で相違するものの,本願発明の,「コンピューターデーターベース入力部の入力手段」「面積」「単位当たりの二酸化炭素固定量」に相当する。
してみると,引用発明の「管理装置」の「入力手段」と「記憶部」と,本願発明の分説Aとは,後記する点で相違するものの,「販売者のコンピューターデーターベース入力部は,入力手段によって二酸化炭素吸収施設の,面積,単位当たりの二酸化炭素固定量等の諸情報を入力して保存」するという点で共通する。
(ウ)引用発明は,「演算手段」が,「面積と原単位との積により二酸化炭素固定可能量を求める」ものであり,「海域の状況により原単位が変動するので原単位を海域ごとに細かく設定して二酸化炭素固定量の算出を精緻なものとする」ものである。
してみると,引用発明の「演算手段」と,本願発明の分説Dとは,後記する点で相違するものの,「演算手段で,設定された面積当りの二酸化炭素固定量を参照して,二酸化炭素固定量を算出」する点で共通する。
(エ)引用発明は,「海域が固定技術を適用可能かの判定やその海域の原単位の評価決定は公正な第三者機関が評定」し,排出権として市場で取引される。
この排出権の取引は,「演算手段」と取引市場の「取引装置」が「連動」してなされる。
そして「公正な第三者機関」には「公的第三者機関」が含まれる。
してみると,引用発明が「評定すること」と,本願発明の分説E,Fとは,後記する点で相違するものの,「算出された二酸化炭素固定量に基づき,公的第三者機関に二酸化炭素排出権の認定を申請し,認定された排出権情報は,販売者コンピューターから取引コンピューターに送信されて保管」する点で共通する。
(オ)引用発明は,「取引市場」で「取引装置」が「管理装置」と連動してオークション形式で二酸化炭素排出権を取引し,排出権を必要とする者が購入するものであり,参加者が排出権をインターネットのシステムにより売買注文し,インターネットのシステムにより売買代金を清算」するものである。
インターネットのシステムによるオークション形式での売買注文などの取引や売買代金の清算は,販売者が出品物の情報を掲示し,掲示された出品物の購入取引のための購入者が,購入者の端末で,購入者の取引条件が掲示された出品物の条件と一致したとき,インターネット回線を介して注文を取引コンピューターに送信し,注文を受信した取引コンピューターが販売者コンピューターの端末にこの注文を回送し,この注文を受信した販売者の端末が,納品書と代金請求書を作成し,取引コンピュータを経由して購入者へ送信し,出品物が販売者から購入者へ移転し,購入者自身が販売者の口座に払い込むものであることが技術常識であることから,引用発明には,排出権をオークション形式で売買するため,販売者が必要に応じて排出権の情報を,掲示手段で掲示部に掲示し,これ等の掲示された排出権の購入取引のための購入者が,購入者の端末で,購入者の取引条件が掲示された排出権の条件と一致したとき,インターネット回線を介して注文状を取引コンピューターに送信し,注文状を受信した取引コンピューターが販売者コンピューターの端末にこの注文を回送し,この注文状を受信した販売者の端末が,納品書と代金請求書を作成し,取引コンピュータを経由して購入者へ送信し,二酸化炭素排出権が販売者から購入者へ移転し,購入者自身が販売者の口座に払い込むことが開示されているといえる。
そして,本願発明は,インターネット回線を通じて排出権と商品とを同様に取引するものであるから,引用発明の「取引」と,本願発明の分説G?Jとは,後記する点で相違するものの,「販売者が必要に応じて排出権の情報を,掲示手段で掲示部に掲示し,これ等の掲示された排出権の購入取引のための購入者が,購入者の端末で,購入者の取引条件が掲示された排出権の条件と一致したとき,インターネット回線を介して注文状を取引コンピューターに送信し,注文状を受信した取引コンピューターが販売者コンピューターの端末にこの注文を回送し,この注文状を受信した販売者の端末が,納品書と代金請求書を作成し,取引コンピュータを経由して購入者へ送信し,排出権が販売者から購入者へ移転し,購入者自身が販売者の口座に払い込む」という点で共通する。
(カ)以上のことから,引用発明と本願発明とは,「ビジネスシステム」である点で共通する。

イ そうすると両者は,
[一致点]
「販売者のコンピューターデーターベース入力部は,入力手段によって二酸化炭素吸収施設の,面積,単位当たりの二酸化炭素固定量等の諸情報を入力して保存し,
演算手段で,設定された面積当りの二酸化炭素固定量を参照して,二酸化炭素固定量を算出し,
算出された二酸化炭素固定量に基づき,公的第三者機関に二酸化炭素排出権の認定を申請し,
認定された排出権情報は,販売者コンピューターから取引コンピューターに送信されて保管され,
販売者が必要に応じて排出権の情報を,掲示手段で掲示部に掲示し,これ等の掲示された排出権の購入取引のための購入者が,購入者の端末で,購入者の取引条件が掲示された排出権の条件と一致したとき,インターネット回線を介して注文状を取引コンピューターに送信し,注文状を受信した取引コンピューターが販売者コンピューターの端末にこの注文を回送し,この注文状を受信した販売者の端末が,納品書と代金請求書を作成し,取引コンピュータを経由して購入者へ送信し,排出権が販売者から購入者へ移転し,購入者自身が販売者の口座に払い込む,
ビジネスシステム」
である点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明が,養殖昆布である促成昆布が吸収する二酸化炭素を排出権として取引するものであり,「二酸化炭素吸収施設」が「係留ロープ式大型促成昆布養殖施設」であって「販売者」が「促成昆布養殖生産者」であり,「二酸化炭素固定量」が,「刈り取り昆布総湿重量」から算出されるのに対し,引用発明はそのようなものではない点。
[相違点2]
本願発明が,作柄を衛星リモートセンシングするものであり,「衛星リモートセンシング情報,画素面積,一画素当たりの刈り取り昆布湿重量,単位(一画素)湿重量当たりの二酸化炭素固定量の情報を入力」して保存し,「コンピューター入力部の受付手段は,養殖施設の人工衛星リモートセンシングの情報を受信して受け取り,その映像を着色画像化するかせずして保管」し,「比較手段で受信情報を,データーベースから抽出した同種情報と比較して,その色彩の濃淡により,養殖昆布の作柄を区別して区画化」し,「演算手段で,データーベースの画素面積,画素当りの昆布湿重量,養殖昆布総湿重量,及び二酸化炭素固定量を参照して,各区画の面積,昆布総湿重量,及び二酸化炭素固定量を夫々算出する」のに対し,引用発明はそのようなものではない点。
[相違点3]
本願発明が,「算出された二酸化炭素固定量に基づき,文書作成手段で二酸化炭素排出権認定の申請書を作成して,インターネット又は通常の通信手段を介して公的第三者機関に送信してその認定を申請」し,「認定された排出権情報は,生産者コンピューターの出力部から,インターネットを介して,二酸化炭素排出権取引センターコンピューター(取引サーバー)の入力部に送信され,その入力部で保管」されるのに対して,引用発明はそのようなものではない点。
[相違点4]
本願発明では,排出権を取引する際,「素昆布及びこの素昆布を加工して生産した種々な商品」も取引するものであり,「素昆布及びこの素昆布を加工して生産した種々な商品の情報も又,インターネット回線を通じて,排出権と同様に,夫々の生産者の端末から受信して,その受付部に蓄積-保管し,必要に応じて,これ等商品の情報を,掲示手段で掲示部に掲示し,これ等掲示商品の購入取引の為のクライアント端末は,クライアントの取引条件が,掲示部商品の条件と一致した時,インターネット回線を介して,文書作成手段で作成した注文状を,インターネット回線を介して,サーバーの受付手段に送信し,この注文状を受信したサーバーは,注文商品生産者端末の受付部に,この文書を回送し,この注文状を受信した生産者端末は,納品書及び代金請求書を作成し,サーバーを経由してクライアントに送信し,その商品は,生産者が直接クライアントに発送し,一方クライアント自身が電子マネー決算又は普通口座決算で生産者口座に払い込む」,「促成養殖昆布のビジネスシステム」であるのに対し,引用発明はそのようなものではない点。

3.判断
ア[相違点1]について。
(ア)育成される海藻,つまり養殖される海藻として「促成昆布」があることが知られている。(以下「周知の事項A」という。)
例えば,特開平09-103268号公報(以下「周知例1」という。)には,「養殖物の促成昆布」と「天然で育つ昆布」とがあることが記載されている(段落【0009】。)。
また,昆布を養殖するための「係留ロープ式大型養殖施設」も良く知られている。(以下「周知の事項B」という。)
例えば,特開平09-224510号公報(以下「周知例2」という。)の図2には,本願の図4と同様の,フロート,幹網,養成網,おもり(つまり本願の「沈子」。),ロープ(つまり本願の「根尾綱」。),ブロック(つまり本願の「アンカー」。)からなる養殖施設が記載されている。
そして,昆布が光合成で成長することも良く知られている。(以下「周知の事項C」という。)
例えば,上記周知例2の段落【0013】【0024】【0028】には,太陽光線のエネルギーが昆布の光合成を促進し成長することが記載されている。
つまり,光合成による二酸化炭素の固定により昆布は成長する。
(イ)してみると,引用発明が,海藻を育成して固定する二酸化炭素の固定可能量を排出権として市場で取引するところ,これに周知の事項A?Cを適用することにより,養殖昆布である促成昆布が吸収する二酸化炭素を排出権として取引するよう構成し,二酸化炭素吸収施設を係留ロープ式大型促成昆布養殖施設の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
その際,二酸化炭素を固定するのは促成昆布養殖生産者であるから,促成昆布養殖生産者自身が排出権取引をするよう構成することも,当業者が容易に想到することができたものである。
そして,光合成による二酸化炭素の固定により昆布は成長するものであり,成長により昆布の湿重量が増加するものであるから,成長した昆布の総湿重量により二酸化炭素固定量を算出すること,つまり「二酸化炭素固定量」を「刈り取り昆布総湿重量」から算出するよう構成することも,当業者が容易に想到することができたものである。
(ウ)以上のことから,引用発明に周知の事項を適用することにより,養殖昆布である促成昆布が吸収する二酸化炭素を排出権として取引するよう構成し,「二酸化炭素吸収施設」を「係留ロープ式大型促成昆布養殖施設」とし,「販売者」を「促成昆布養殖生産者」とし,「二酸化炭素固定量」を「刈り取り昆布総湿重量」から算出するよう構成し,もって[相違点1]に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

イ[相違点2]について。
(ア)相違点2に係る事項を明細書の記載で確認する。
相違点2に係る事項は,本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0020】の「人工衛星リモートセンシング」により「予め入力されている養殖技術のデーターベースの記録と対比しながらその作況を把握」して「二酸化炭素固定量を算出する」との記載事項に対応するものである。
当初明細書の記載と,相違点2に係る発明特定事項との関係は必ずしも明確ではないものの,平成24年1月16日の手続補正書を参酌すれば,補正後の明細書の段落【0034】?【0040】に記載される,「人工衛星IKONOSの画像データを用いた濃淡むら着色による生育むら分別による収量推定の正確化」という趣旨の補正事項に対応するもであって,具体的には,補正後の明細書の段落【0039】の,「むら区画の画素を計数すると同時に,同色のむらの一画素に対する養殖昆布湿重量を参照して各区画の湿昆布重量を演算しこれら区画の湿重量の和をもってこの圃場の養殖昆布湿重量と推定」して二酸化炭素固定量を算出するとの補正事項に対応するものと認められる。
そして相違点2の「画素」は,上記補正により追加された図8-Bの「11」であって,補正後の明細書の段落【0037】の記載によれば,「2?4m×7.7m」の「区画」であると認められる。
相違点2に係る事項が,上記補正書に記載されたものであるとして以下に検討する。
(イ)引用例2記載事項によれば,引用例2には,再掲すれば,「衛星を利用したリモートセンシングにより,果樹や農作物などの植物の活力度を評価するものであって,リモートセンシングの測定データに基づいて,データベースの基準データを参照して算出した値から活力度を評価すること,活力度の評価は,対象地域画像を多数のピクセルに分割し,ピクセルごとに活力度を評価し,ピクセルごとのデータを総合し,対象地域全体の活力度を評価すること,ピクセルサイズは,小さいほど精度が高く,高解像度衛星データを利用して4m四方のピクセルサイズであってよいこと,これにより果樹や農作物の品質のランク付けや収穫量を予測をする活力度評価法。」との事項が記載されている。
すなわち,引用例2には,衛星リモートセンシングであって,対象地域画像のピクセル分解と,データベースの基準データを参照して算出したピクセルごとの活力度(つまり「作柄」。)の評価により対象地域全体の収穫量予測をすることが記載されている。
ここで,引用発明は,「海域の状況により原単位が変動するので原単位を海域ごとに細かく設定して二酸化炭素固定量の算出を精緻なものとする」ことが必要であることから,引用発明が原単位を海域毎に細かく設定して二酸化炭素固定量の算出を精緻なものとする際,引用例2記載事項を適用することにより,海藻である昆布の作柄を衛星リモートセンシングにより原単位を細かく設定しようとする動機付けが働く。
(ウ)さらに,以下のことが言える。
(a)「刈り取り昆布総湿重量」は,養殖施設の総面積と単位面積当たりの刈り取り昆布湿重量と作柄とから求められることが技術常識であること。
(b)映像を着色画像化し色彩の濃淡むらにより作柄を判断することは周知の事項(以下「周知の事項D」という。)であること(例えば,特開2006-250827号公報(以下「周知例3」という。)の図10には,リモートセンシングによる蛋白マップが記載されている。)。
(c)引用例2の収穫量予測は,例えば4m四方のピクセル(つまり「画素」である「区画」。)ごとの作柄のデータ(つまり「区画」ごとの作柄である「むら」。)を総合して対象地域全体の総収穫量を予測するものであるから,作柄ごとの区画のピクセルを計数し,同じ作柄のピクセルに対する収穫量を参照して各区画の収穫量を演算し,これら区画の収穫量の和をもって対象地域全体の総収穫量を予測するものであるといえること。
(エ)以上,上記(イ)のことから,引用発明が,「原単位を海域ごとに細かく設定して,海藻を育成して固定する二酸化炭素の固定可能量を精緻に求める」際,引用例2記載事項を適用することにより,「人工衛星リモートセンシング」により「予め入力されているデーターベースの記録と対比しながらその作況を把握」して精緻に二酸化炭素の固定可能量を求めるよう構成することは,当業者が容易に想到することができたものであり,上記(ウ)のことを勘案すれば,「人工衛星リモートセンシング」により,「むら区画の画素(区画)を計数すると同時に,同色のむらの一画素(一区画)に対する養殖昆布湿重量を参照して各区画の湿昆布重量を演算しこれら区画の湿重量の和をもってこの圃場の養殖昆布湿重量と推定」して「海藻を育成して固定する二酸化炭素の固定可能量」を求めるよう構成することも,当業者が容易に想到することができたものである。
そして,画像のむら区画の情報を得るために,予め区画の情報や基準となる情報を入力して保存し,新たな情報を受信して保管し,基準となる情報と新たな情報とを比較してむら区画化すること,また,得られた各むら区画ごとの情報から同じむら区画の情報を集計し,これを合計して全体の情報を得ることは,それぞれ常套手段であるから,「衛星リモートセンシング情報」とともに,予め区画の情報や基準となる情報である「画素面積,一画素当たりの刈り取り昆布湿重量,単位(一画素)湿重量当たりの二酸化炭素固定量の情報を入力して保存」するよう構成すること,「コンピューター入力部の受付手段」が,新たな情報である「養殖施設の人工衛星リモートセンシングの情報を受信」して受け取り,「その映像を着色画像化するかせずして保管」するよう構成すること,基準となる情報と新たな情報とを比較してむら区画化するべく「比較手段で受信情報を,データーベースから抽出した同種情報と比較して,その色彩の濃淡により,養殖昆布の作柄を区別して区画化」するよう構成すること,得られた各むら区画ごとの情報から同じむら区画の情報を集計し,これを合計して全体の情報を得るべく「演算手段で,データーベースの画素面積,画素当りの昆布湿重量,養殖昆布総湿重量,及び二酸化炭素固定量を参照して,各区画の面積,昆布総湿重量,及び二酸化炭素固定量を夫々算出する」よう構成することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。
(オ)以上のとおりであるから,引用発明に引用例2記載事項及び周知の事項を適用することにより,[相違点2]に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

ウ[相違点3]について。
(ア)公的機関が権利の設定をする際,申請者が作成した申請書により認定をすることは良く知られている。(以下「周知の事項E」という。)
してみると,引用発明が,算出された二酸化炭素固定量に基づき公的第三者機関に二酸化炭素排出権の認定を申請して認定を受ける際,周知の事項Eを適用することにより,文書作成手段で作成した二酸化炭素排出権認定の申請書を送信して認定を受けるよう構成すること,つまり,「算出された二酸化炭素固定量に基づき,文書作成手段で二酸化炭素排出権認定の申請書を作成して,インターネット又は通常の通信手段を介して公的第三者機関に送信してその認定を申請」し,「認定」を受けるよう構成することは,当業者が容易に相当することができたものである。
(イ)さらに,引用発明は,「管理装置」と「取引装置」とが連動して取引がなされるところ,管理装置は販売者の排出権に係る処理をなし,取引装置は取引市場で参加者間の売買をインターネットでなすものであるから,管理装置を排出権取引の参加者が管理し,取引装置を取引市場が管理して,インターネットを介して排出権取引に必要な情報の送受信をするよう構成することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。
以上の(ア)(イ)のことから,引用発明に周知の事項を適用することにより,「算出された二酸化炭素固定量に基づき,文書作成手段で二酸化炭素排出権認定の申請書を作成して,インターネット又は通常の通信手段を介して公的第三者機関に送信してその認定を申請」するよう構成し,「認定された排出権情報は,生産者コンピューターの出力部から,インターネットを介して,二酸化炭素排出権取引センターコンピューター(取引サーバー)の入力部に送信され,その入力部で保管」するよう構成し,もって[相違点3]に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

エ[相違点4]について。
(ア)引用発明は,市場参加者間で排出権の売買のほか,参加者の本来業務商品の売買をするものであり,従来の電力の参加者は発電電力の売買をするところ,海藻の育成による排出権を販売するものであれば,その海藻が本来業務商品であって,これを販売しようとするものであることが明らかである。
(イ)ここで引用例3記載事項によれば,引用例3には,水産物とその加工品を商品掲示サーバーに掲示し,クライアント端末からの注文によりネット販売することが記載されている。
(ウ)してみると,引用発明に引用例3記載事項を適用することにより,販売者が育成した昆布を,素昆布の商品とこの素昆布を加工して生産した種々の商品としてインターネットで排出権と同様に販売すること,つまり,排出権を取引する際,「素昆布及びこの素昆布を加工して生産した種々な商品」も取引するよう構成し,以下排出権の取引と同様に,「素昆布及びこの素昆布を加工して生産した種々な商品の情報も又,インターネット回線を通じて,排出権と同様に,夫々の生産者の端末から受信して,その受付部に蓄積-保管し,必要に応じて,これ等商品の情報を,掲示手段で掲示部に掲示し,これ等掲示商品の購入取引の為のクライアント端末は,クライアントの取引条件が,掲示部商品の条件と一致した時,インターネット回線を介して,文書作成手段で作成した注文状を,インターネット回線を介して,サーバーの受付手段に送信し,この注文状を受信したサーバーは,注文商品生産者端末の受付部に,この文書を回送し,この注文状を受信した生産者端末は,納品書及び代金請求書を作成し,サーバーを経由してクライアントに送信し,その商品は,生産者が直接クライアントに発送し,一方クライアント自身が電子マネー決算又は普通口座決算で生産者口座に払い込む」,「促成養殖昆布のビジネスシステム」の構成とし,もって[相違点4]に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

以上ア?エのことから,引用発明に引用例2記載事項,引用例3記載事項及び周知の事項を適用することにより,[相違点1]?[相違点4]に係る発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。
また,本願発明の作用効果も,引用発明,引用例2記載事項,引用例3記載事項及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

4.審判請求人の主張の参酌
審判請求人は審判請求書で以下の趣旨の主張をしているので順次検討する。

進歩性に係る主張について。
(ア)審判請求人は平成25年2月19日の手続補正書(以下「理由補充」という。)の「4.(C)-2.」で以下の主張をしている。
「然しながら,本発明の要点とする所は,「促成昆布を養殖し,二酸化炭素排出権を創成する促成昆布養殖業者と,この養殖昆布を購入し種々な商品を加工生産する昆布加工業者と,これ等商品並びに二酸化炭素輩出権の購入を希望する購入業者間の取引売買を行うネットシステムであって,これ等業者の少なくとも一個の端末間に,これ等商品の取引を実施する取引サーバーを備えたネットワークシステムに関する」点に有り,その特許条件を形成する諸種の要素は,
先ず第一に:この商品の素材が,上記した促成養殖昆布であると共に,其れを養殖栽培する施設が,創生される二酸化炭素排出権の解析用画素の確定が容易な大型ロープ式養殖施設である事。
次いで第二に:その取引商品が,前記促成養殖昆布穂場の人工衛星リモートセンシング解析によって得られる二酸化炭素排出権と,養殖昆布素材のみの取引ではなく,多数の加工業者によって生産される同一素材からの多種多様の商品の巨大なネットワーク取引システムである事。
更に第三に:これ等業者間の売買取引を処理する取引センターサーバーは,各業者間の商品取引情報ばかりでなく,当業界の活性化の為のインセンティブ資金の徴収,積立,還元,拠出情報等の処理に加え,これ等取引資金の決算,残高管理等の経理又はバンキング処理をも行う事;にある。」
(イ)審判請求人の上記主張について検討すると,審判請求人の第一,第二,及び第三の主張の前段までの主張については,前記「3.」で判断したとおりであり,第三の主張の後段の主張,つまり「当業界の活性化の為のインセンティブ資金の徴収,積立,還元,拠出情報等の処理に加え,これ等取引資金の決算,残高管理等の経理又はバンキング処理をも行う」との主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張であるから,審判請求人の上記主張を採用することはできない。

イ 「補正書案」について。
(ア)審判請求人は理由補充で「特許請求の範囲補正書案」「図7A補正書案」「図7B補正書案」を提出しており,これら「補正書案」による本願発明の進歩性を主張しているともみられる。
(イ)そこで念のため上記「補正書案」について検討すると,これら「補正書案」は一見して当初明細書や図面の記載から著しく逸脱することが明らかである。
したがって,上記「補正書案」は,当業者によって明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものとはいえないことから不適法(知財高裁平成18年(行ケ)10563号判決参照。)なものであり,上記補正書案による本願発明の進歩性を主張する審判請求人の主張を採用することはできない。

5.まとめ
以上1.?4.のことから,本願発明は,引用発明,引用例2記載事項,引用例3記載事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2記載事項,引用例3記載事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,原査定の他の拒絶理由を検討するまでもなく特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-12 
結審通知日 2014-04-08 
審決日 2014-04-22 
出願番号 特願2006-357463(P2006-357463)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 須田 勝巳
手島 聖治
発明の名称 養殖海藻のビジネスシステム  

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