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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1289400
審判番号 不服2011-27958  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-27 
確定日 2014-07-03 
事件の表示 特願2001-578488「新規コレクチン」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 1日国際公開、WO01/81401〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年4月23日(優先日 平成12年4月21日、特願2000-120358号)を国際出願日とする出願であって、その請求項1?24に係る発明は、平成22年11月24日付手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?24に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
配列番号:4に記載の245個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号:6に記載の197個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項4】
請求項3に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号:8に記載の221個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項6】
請求項4に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号:10に記載の221個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項8】
請求項7に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号:13に記載の271個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項10】
請求項9に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号:37に記載の223個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項12】
請求項11に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列番号:39に記載の247個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項14】
請求項12に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列番号:41に記載の247個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質。
【請求項16】
請求項15に記載のタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項2、4、6、8、10、12、14または16に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター。
【請求項18】
請求項2、4、6、8、10、12、14または16に記載のポリヌクレオチドを発現可能に保持する形質転換細胞。
【請求項19】
請求項2、4、6、8、12、14または16に記載のポリヌクレオチドで形質転換した細胞を培養し、産生されたコレクチンタンパク質を採取する、工程を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法。
【請求項20】
請求項10に記載のポリヌクレオチドで形質転換した細胞を培養し、産生されたコレクチンタンパク質を採取する、工程を含むことを特徴とするタンパク質の製造方法。
【請求項21】
前記細胞が、大腸菌、動物細胞および昆虫細胞からなるグループから選択される請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1、3、5、7、9、11、13または15に記載のタンパク質に対するモノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項22に記載のモノクローナル抗体と請求項19または20に記載の方法に従って製造されたコレクチンタンパク質との間の免疫学的な結合に基づいて、当該タンパク質を測定する方法。
【請求項24】
請求項1、3、5、7、9、11、13または15に記載のタンパク質を用いることを特徴とする薬物のスクリーニング方法。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された、本願優先日前の2000年4月6日に頒布された刊行物である国際公開第00/18922号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるため、日本語訳を記載する。

ア「C型レクチンには、Ca^(2+)依存性糖認識ドメインが含まれる。原型のC型レクチンが内在性膜タンパク質(例えば、アシアログリコプロテイン受容体)であり、多くの可溶性C型レクチンが同定されている。C型レクチンの例には、肺表面活性タンパク質A及びB(SP-A及びSP-B)、哺乳動物C1qタンパク質、ウシコレクチン43、ウシコングルチニン、マウスインテレクチン及びマンノース結合タンパク質がある。
SP-Dは、コレクチンと呼ばれる宿主防衛レクチンのファミリーメンバーである。コレクチンは、ウイルス、細菌及び真菌を含む潜在的な病原体から防御するために、肺及び循環器系の先天性免疫において機能する(Reid, K.B.(1998) Immunobiology,199:200-207)。コレクチンは、多数のGly-Xaa-Xaa反復、または頚部領域と呼ばれる内部領域及び糖結合C末端ドメインを含むコラーゲン様N末端ドメインを有する。SP-Dは、肺でのみ合成される(Lim 他 (1993) Immunology,78:159-165)。SP-Dは、in vivoのヒト白血球のレクチン-及び抗-CD3刺激性増殖を阻害し、この阻害が細胞内のインターロイキン2の生成の低下に関連する(Borron, P.J. 他 (1998) J.Immunol.161:4599-4603)。」(第6頁16?29行)

イ「図5Aおよび5Bは、CRBAP-6(2821011; SEQ ID NO:6)及びウシの肺のSP-D(GI 415939; SEQ ID NO:19)の間のアミノ酸配列アライメントを示す図である。アライメントの作成にはLASERGENEソフトウエアのマルチシーケンス・アライメントプログラム(DNASTAR, Madison WI)を使用した。」(第10頁3?5行)

ウ「図5A及び図5Bに示すように、CRBAP-6はウシの肺のSP-D(GI 415939; SEQ ID NO:19)と化学的及び構造的類似性を有する。詳細には、CRBAP-6及びウシの肺のSP-Dは、シグナルペプチド配列、C型レクチン及びC1qドメインタンパク質配列、残基C170、C242、C256及びC264における4つの保存された残基並びにコラーゲン様ドメインを含めた32%の同一性を共有する。」(第19頁31行?第20頁1行)

エ 配列表の第7頁には、271個のアミノ酸からなる、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列が記載されている。(配列の摘記は省略)

オ 第59頁の表1の6行目には、「SEQ ID NO:6」のポリペプチドのヌクレオチド配列「SEQ ID NO:13」が記載されている。

カ「CRBAPのモノクローナル抗体は、培養における持続的な細胞株によって抗体分子を産生させる任意の技術を用いて調製できる。このような技術には、以下に限定しないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びEBV-ハイブリドーマ技術が含まれる(例えば、Kohler,G.ら(1975) Nature 256:495-497;Kozbor,D.ら(1985) Immunol.Methods 81:31-42;Cote, R.J.ら(1983) Proc.Natl.Acad. Sci.80:2026-2030;Cole,S.P.ら(1984) Mol.Cell Biol.62:109-120参照)。」(第34頁9?14行)

3.請求項2,12,14,16に係る発明について
(1)請求項2,12,14,16のポリヌクレオチド
請求項14がタンパク質として引用する“請求項12”はタンパク質に関するものではないから、“請求項12”の記載はタンパク質に関する“請求項13”の誤記であると認める。したがって、請求項2,12,14,16は、それぞれ請求項1,11,13,15に記載されたタンパク質をコードするポリヌクレオチドに係るものである。

(2)請求項2に係る発明について
(2-1)本願発明2
請求項1を引用して記載する請求項2を引用しない形式で記載すると、請求項2に係る発明は、以下のとおりのものである。
「配列番号:4に記載の245個のアミノ酸配列からなる精製および単離されたタンパク質をコードする精製および単離されたポリヌクレオチド。」(以下、「本願発明2」という。)

(2-2)引用発明A
上記2.の引用文献1の記載、特にイ、エの記載からみて、CRBAP-6タンパク質はSEQ ID NO:6として示される271個のアミノ酸からなる配列を有するものであり、またオの記載から、CRBAP-6タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:13に示されたものであると認められる。そしてこのポリヌクレオチドは、配列が決定されているのであるから、精製および単離されたものであるといえる。
したがって、引用文献1には、「精製および単離されたSEQ ID NO:6の271個のアミノ酸配列からなるCRBAP-6タンパク質をコードする、精製および単離されたポリヌクレオチド」の発明(以下「引用発明A]という。)が記載されていると認められる。

(2-3)対比
本願発明2と引用発明Aを対比する。
本願明細書の第9頁13?17行には、「生体防御に重要な役割を担っている補体系は免疫グロブリンを認識分子とし、補体第一成分であるC1が活性化される古典的経路および細菌等の異物に補体第三成分であるC3が直接結合する第二経路が知られている。近年これらの補体活性化経路に加えて、血清レクチンであるマンノース結合蛋白質(以下、MBPと称する)が異物表面の糖鎖を直接認識し結合することにより補体系を活性化させるレクチン経路が明らかにされた(Sato,T.et al.;Int.Immunol.,6,665-669,1994)。/(改行)MBPはCa存在下、マンノースやN-アセチルグルコサミン等に特異的に結合するC型レクチンであり、その構造は少なくとも(Gly-Xaa-Yaa)nから成るコラーゲン様領域、糖鎖認識領域(CRD)を含んでいる。MBPと同様にコラーゲン様領域およびCRDを有するレクチンはコレクチンと総称され(Malhotora,R.et al.;Eur.J.Immunol.,22,1437-1445,1992)、MBP以外にコレクチン-43(CL-43)、サーファクタント蛋白質A(SP-A)、サーファクタント蛋白質D(SP-D)およびウシコングルチニン(BKg)等を挙げることができる。」と記載され、第19頁下から7?第20頁7行には「本発明者らはヒトおよびマウス新規コレクチン遺伝子(hCL-L2およびmCL-L2)のクローニングに成功した。新規CL-L2のC末端側には、基礎免疫に関与すると考えられるCRD(配列番号2および13のアミノ酸番号113?271、配列番号4のアミノ酸番号87?245)ならびに(Gly-Xaa-Yaa)n構造を有するコラーゲン様領域(配列番号2および13のアミノ酸番号41?112、配列番号4のアミノ酸番号18?86)を有していた。/また、hCL-L2には第4図に示したように、N末端側のアミノ酸配列が異なる2種類のタンパク質(CL-L2-1およびCL-L2-2)が存在していた。具体的には、CL-L2-1(配列番号2に示す)のN末端側(第1?43位)アミノ酸とCL-L2-2(配列番号4に示す)のN末端側(第1?17位)アミノ酸が異なっており、その余は同一であった。さらに、CL-L2-1のN末端側アミノ酸の第1?43位にはシグナル配列およびコラーゲン構造1巻分等が含有されていたが、CL-L2-2のN末端側アミノ酸第1?17位にはシグナル配列およびコラーゲン様構造一巻分は存在しなかった。」と記載されている。そうすると、本願明細書で「hCL-L2-2」と名付けられたタンパク質は、コレクチンの一種である。
一方、引用文献1記載事項ア?ウからみて、コレクチンであるSP-Dと同一性を有する引用発明AのCRBAP-6タンパク質も、コレクチンの一種であると認められる。
そうすると、両者は、「精製および単離されたコレクチンをコードする精製および単離されたポリヌクレオチド」である点で一致し、本願発明2は、コードするコレクチンが「配列番号:4に記載の245個のアミノ酸配列からなるhCL-L2-2」であるのに対して、引用発明Aは、「SEQ ID NO:6の271個のアミノ酸配列からなるCRBAP-6」である点で相違している。

(2-4)当審の判断
引用文献1の記載事項アにもあるように、コレクチンは既に幾つかがクローニングされており、宿主防衛機能が期待される有用なタンパク質であるから、新たなコレクチンのメンバーをクローニングすることは、本願優先日前既に自明の技術的課題であった。
そして既知のヌクレオチド配列に基づく断片をプローブまたはプライマーとして用いて、様々な組織由来のcDNAライブラリーより、有用なタンパク質に類似するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得しようとすることは、本願優先日前に広く行われていた周知技術である。
また、本願発明2のアミノ酸配列と、引用発明AのCRBAP-6タンパク質のアミノ酸配列とは、前者のアミノ酸番号1-17と後者のアミノ酸番号1-43の配列のみが相違し、それ以外は完全に一致する。
したがって、引用文献1のCRBAP-6タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号13)を用い、上記周知技術によってヒト組織由来のcDNAライブイラリーをスクリーニングして、CRBAP-6タンパク質に類似する新たなコレクチンをコードするポリヌクレオチドを取得することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際、CRBAP-6タンパク質とN末端のアミノ酸しか相違しない本願発明2のhCL-L2-2をコードするポリヌクレオチドは、当業者であれば容易に取得できるものである。
そして、本願明細書の記載をみても、本願発明2に係るポリヌクレオチドが、引用文献1の記載から予測できないような効果を奏するものとも認められない。
したがって、本願発明2は、引用文献1の記載から当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求項12,14,16に係る発明について
上記(2)で述べたとおり、引用文献1のCRBAP-6タンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列番号13)を利用し、CRBAP-6タンパク質に類似するコレクチンをコードするポリヌクレオチドを取得することは、当業者が容易に想到し得ることであり、CRBAP-6の配列番号6のアミノ酸と配列の多くが共通するタンパク質をコードするポリヌクレオチドは取得できるといえる。
一方、請求項11,13,15に記載されたタンパク質のアミノ酸配列とCRBAP-6タンパク質のアミノ酸配列を比較すると、請求項11に記載された『配列番号:37に記載の223個のアミノ酸配列からなるタンパク質』は、『CRBAP-6タンパク質』のアミノ酸番号44?91間が欠失したものであり、請求項13に記載された『配列番号:39に記載の247個のアミノ酸配列からなるタンパク質』は、『CRBAP-6タンパク質』のアミノ酸番号44?67間が欠失したものであり、請求項15に記載された『配列番号:41に記載の247個のアミノ酸配列からなるタンパク質』は、『CRBAP-6タンパク質』のアミノ酸番号68?91間が欠失したものであり、それ以外の配列は完全に一致する。
そうすると、請求項11,13,15に記載されたタンパク質をコードするポリヌクレオチドについても、本願発明2と同様に、上記(2-4)に記載した理由により、当業者が容易に取得できるものである。
そして、本願明細書の記載をみても、請求項12,14,16に係るポリヌクレオチドが、引用文献1の記載から予測できないような効果を奏するものとも認められない。
したがって、請求項12,14,16に係る発明についても、本願発明2と同様に、引用文献1の記載から当業者が容易になし得るものである。

(4)小括
以上のとおり、請求項2,12,14,16に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書において、引用文献1に記載されるCRBAP-6タンパク質のアミノ酸配列は、「本願発明のタンパク質」を構成するいずれのアミノ酸配列とも異なるものであること、本願発明のタンパク質を構成するアミノ酸配列との構造上の類似性のみに依拠して、本願発明のタンパク質が奏する効果までをも正確に想到することは、たとえ当業者であっても困難であること、を主張している。
しかし、上記(2)(3)で述べたとおり、引用文献1に記載されるCRBAP-6タンパク質のアミノ酸配列と請求項1,11,13,15に記載されたタンパク質(これらは請求人のいう「本願発明のタンパク質」に含まれる)のアミノ酸配列とは極めて類似するものであり、上記(2)(3)のとおり、請求項2,12,14,16に係るポリヌクレオチドを得ることは当業者が容易になし得るから、同様にこれらにコードされるタンパク質を取得することは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得ることである。請求人は「本願発明のタンパク質」が効果を奏することを主張しているが、引用文献1には、CRBAP-6タンパク質が糖質関連タンパク質として記載されていることから、本願明細書に記載される本願発明のタンパク質の糖結合特性は、当業者の予測の範囲内であるといえる。
また請求人は、当該技術分野の周知技術を参照しても、相応の労力と相当の試行錯誤を要することを主張している。しかし、有用なタンパク質のアミノ酸配列やそれをコードするヌクレオチド配列が取得された場合に、該有用なタンパク質と同様の活性を持つ類似するタンパク質やポリヌクレオチドを探索するという自明の技術課題の解決のために、周知技術に基づいて実験を繰り返すことは、当業者の通常の創作活動の範囲内のことに過ぎず、そのことをもって進歩性を基礎づけることはできない。
よって、請求人の主張は、いずれも失当である。

4.本願の請求項22に係る発明について
(1)引用発明B
上記2.の引用文献1の記載、特にカの記載から、引用文献1には、「SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を有し、271個のアミノ酸からなるCRBAP-6タンパク質に対するモノクローナル抗体」の発明(以下「引用発明B]という。)が記載されているといえる。

(2)対比・検討
本願の請求項22に係る発明と引用発明Bを対比すると、両者は、「モノクローナル抗体」である点で一致し、本願の請求項22に係る発明は「請求項1、3、5、7、9、11、13または15に記載のタンパク質に対する」ものであるのに対して、引用発明Bは、「CRBAP-6タンパク質に対する」ものである点で一見相違している。
そこで、請求項22に特定されている「請求項1、3、5、7、9、11、13または15に記載のタンパク質」のひとつである、請求項1に記載のタンパク質に対するモノクローナル抗体に係る発明について検討する。
上記3.(2-4)で述べたとおり、請求項1に記載の『配列番号:4に記載の245個のアミノ酸配列からなるhCL-L2-2タンパク質』と、『CRBAP-6タンパク質』とは、アミノ酸配列のN末端の部分のみ相違し、前者のアミノ酸番号18-245と後者のアミノ酸番号44-271の、228個のアミノ酸からなるC末端は完全に一致する。
そして、タンパク質のN末端およびC末端に結合する抗体が産生され易いことは、技術常識であるから、「CRBAP-6タンパク質に対する」モノクローナル抗体が請求項1のhCL-L2-2タンパク質に結合する蓋然性は非常に高いといえる。
そうすると、本願の請求項22に係る発明と引用発明Bとは、モノクローナル抗体という物質として区別することはできないから、両者は相違しない。
したがって、本願の請求項22に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(3)請求人の主張について
請求人は、引用文献1には、CRBAP-6タンパク質に対して特異的なモノクローナル抗体の具体的な記載はない、と主張している。
しかし、上記2.カのとおり、引用文献1には、CRBAPのモノクローナル抗体が、ハイブリドーマ技術のような周知技術を用いて調製できることが示されており、このような周知技術によってCRBAP-6タンパク質のモノクローナル抗体が取得できることは明らかであるから、引用文献1には、実質的には、CRBAP-6タンパク質に対するモノクローナル抗体が記載されているといえる。
このことは、本願明細書においても、請求項1、11、13、15に記載のタンパク質に対する抗体を実際に製造した記載がないことからもうかがえる。
請求人は、抗体としての違いについても主張しているが、請求項22は、「請求項1、3、5、7、9、11、13または15に記載のタンパク質に対するモノクローナル抗体。」と、タンパク質に対する抗体であること、すなわち、タンパク質に結合するという機能の観点から特定しているのであって、抗体をアミノ酸配列のような構造を表す観点から特定している訳ではないから、請求人の主張は失当である。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項2,12,14,16に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また本願の請求項22に係る発明は、同条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-01 
結審通知日 2014-05-07 
審決日 2014-05-20 
出願番号 特願2001-578488(P2001-578488)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 匡子  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 田中 晴絵
中島 庸子
発明の名称 新規コレクチン  
代理人 角田 嘉宏  

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