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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1289411
審判番号 不服2013-9750  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-27 
確定日 2014-07-03 
事件の表示 特願2008- 92191「アンテナモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日出願公開,特開2008-276759〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成20年3月31日(優先権主張:平成19年3月30日)の出願であって,平成24年8月20日付けの拒絶の理由の通知に対して,同年9月24日に意見書と手続補正書が提出され,平成25年2月22日付けで拒絶査定がなされ,同年5月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
その後,当審において,平成25年5月27日に提出された前記手続補正書による補正を平成26年2月4日付けで却下するとともに拒絶の理由を通知したところ,同年3月31日に意見書と手続補正書が提出された。

2 本願発明
本願の請求項1-3に係る発明は,平成26年3月31日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載されている事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,次のとおりである。

「【請求項1】
金属箔からなるアンテナコイルとコンデンサが形成された絶縁基板上に配置され,前記アンテナコイルによる通信を制御する電子機器と,
前記絶縁基板の前記電子機器が配置される面と反対側の面に,前記電子機器が配置される前記絶縁基板上の領域と少なくとも一部が前記絶縁基板を介して重なるように形成される,金属箔からなるパターンと,
前記電子機器を実装面側と非実装面側から挟み込み,前記非実装面側からは前記パターンの上に接着剤を介して接着される一対の金属製の補強板と
を備え,
前記電子機器は,
前記電子機器の温度を検知する検知部と,
前記電子機器の温度が所定の温度以上である場合,前記通信を停止する制御部と
を備える
アンテナモジュール。」

3 引用例とその記載事項,及び,引用発明
平成26年2月4日付けの拒絶の理由で引用した,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である下記の引用例1-6には,図面とともに次の事項が記載されている。(なお,下線は,当合議体において付したものである。以下同じ。)

ア 引用例1:特開2007-58817号公報(拒絶理由で引用した文献2)
(1a)「【請求項1】
接着剤を硬化させてなる接着材料層を介して一対のシート材が互いに貼り合わされ,情報を記憶したICチップを実装したアンテナモジュールが内蔵され,前記一対のシート材のうち少なくとも一方の表面には可逆性感熱記録層が設けられているICカードにおいて,前記ICチップのチップ本体側を囲繞する抜け穴を設けた樹脂層を前記アンテナモジュール上に導入し,前記樹脂層の厚さDは,前記ICチップのチップ本体の厚さをA,前記チップ本体をモールドしている接着剤層で前記チップ本体の上に存在する該接着剤層の厚さをB,該接着剤層の上に貼着された補強板の厚さをCとした場合,
(A+B+C)≧D≧(A+B+C)×0.7
の条件を満たし,前記アンテナモジュールに関し,前記チップ本体側の前記シート材の上に前記可逆性感熱記録層が形成されていることを特徴とするICカード。」

(1b)「【0011】
図28は従来例による非接触ICカード(以下「ICカード」という)1の概略断面図である。ICカード1は,非接触通信用のICモジュール2を接着材料層3を介して一対の外装シート材4A,4Bで挟み込んだ構成となっている。
【0012】
ICモジュール2は,絶縁基板5と,この絶縁基板5の上に形成されたアンテナコイル6とコンデンサー部7と,実装されたICチップ8からなる。図30で示すようにこのICチップ8の実装部を表裏から挟み込む一対の金属製(ステンレス等)の補強板9A,9Bとを備えている。補強板9A,9Bは封止剤10,10'により接着されている。
【0013】
絶縁基板5には,高分子フィルムを使用することができる。具体的には,ポリエステル,ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリイミド(PI),ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ塩化ビニル,アクリル樹脂,ポリカーボネート,エポキシ樹脂,尿素樹脂,ウレタン樹脂,メラミン樹脂等,従来より用いられている樹脂フィルムの中から適宜選択して利用することが可能であり,絶縁性であれば特に制限されることはない。
【0014】
絶縁基板5の上に形成されるアンテナコイル6は,導電性ペーストを印刷したものや,上記高分子フィルムとアルミ箔や銅箔等の金属箔とのラミネート基材を回路状にエッチングして形成される。絶縁基板5上にパターニングされるアンテナコイル6の表面形状は,カード構成後の表面形状に反映されるため,平滑であるのが好ましい。
【0015】
ICチップ8とアンテナコイル6との接続方法としては,ICチップ8の能動面に形成された突起電極(バンプ)とアンテナコイルとを異方性導電膜を介してフリップチップ実装する方式が採用されている。なお,これ以外の方法として,例えばはんだ付けによってICチップ8を実装することができる。リライト層Rが外装シート材料,4A,4Bの上に形成されているが,ICチップ部Qに対応して浮き上がっている。この浮き上がりはrとして示されている。この段差が印字抜けや印字カスレを生ずる。」

(1c)「【0017】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ,接着剤を介して一対の外装シート材を貼り合わせて製造され,表面に可逆性感熱記録層(リライト層)を有するICカードにおいて,印字抜けや印字カスレを抑制して,印字性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上の課題は,接着剤を硬化させてなる接着材料層を介して一対のシート材が互いに貼り合わされ,情報を記憶したICチップを実装したアンテナモジュールが内蔵され,前記一対のシート材のうち少なくとも一方の表面には可逆性感熱記録層が設けられているICカードにおいて,前記ICチップのチップ本体側を囲繞する抜け穴を設けた樹脂層を前記アンテナモジュール上に導入し,前記樹脂層の厚さDは,前記ICチップのチップ本体の厚さをA,前記チップ本体をモールドしている接着剤層で前記チップ本体の上に存在する該接着剤層の厚さをB,該接着剤層の上に貼着された補強板の厚さをCとした場合,
(A+B+C)≧D≧(A+B+C)×0.7
の条件を満たし,前記アンテナモジュールに関し,前記チップ本体側の前記シート材の上に前記可逆性感熱記録層が形成されていることを特徴とするICカード,によって解決される。」

(1d)「【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態によるICカードを示すが,従来例の図27乃至図29に示したICカードに対応する要素については同一の符号を付すものとする。本発明によれば,ICチップを囲繞するように樹脂層11がアンテナモジュール2板上に導入される。樹脂層11は図1,図2に示すようにICチップQ部分に抜け穴12を持つ形状にする。12aは抜け穴12の開口部を表わす。
【0027】
樹脂層11の厚みについては図5を参照して(A+B+C)≧D≧(A+B+C)×0.7であることを条件とした。リライト層RをIC実装面側13A(図5)に埋設する際の厚み条件である。ここで図5を参照してICチップの厚みをA,ICチップの上に存在する接着剤層の厚みをB,補強板の厚みをC,樹脂層の厚みをDとしている。Dが(A+B+C)よりも大きくなった場合,接着剤が硬化した後にチップ上部が凹んでしまう為,チップ上部の印字抜けや印字カスレといった印字不良が生じてしまう。また,Dを(A+B+C)×0.7よりも薄くした場合,接着剤の硬化収縮が原因で発生するICチップ部とその周辺に発生する段差が発生し,印字抜けや印字カスレといった印字不良が生じてしまう。」

(1e)「【実施例】
【0061】
以下,本発明の実施例について説明する。ここでは円形の補強板9A,9Bを用いた。
【0062】
厚み50μmのPEN基材に両面にALを用いて厚み30μmのアンテナコイルとコンデンサー部を導入したアンテナモジュール2に,厚み175μm,4mm角のICチップ8をフリップチップボンディングにより接続した。その後封止剤,補強板9A,9Bを用いてICチップ8の封止を行った。ICチップ本体非実装面13Bについても封止剤,補強板を用いて封止を行った。図5におけるA?C,E,Fの厚みはそれぞれA=175μm,B=50μm,C=50μm,E=50μm,F=50μmとなった。」

イ 引用発明
引用例1の上記摘記(1a)-(1e)の記載を総合勘案すれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「接着剤を硬化させてなる接着材料層を介して一対のシート材が互いに貼り合わされ,前記一対のシート材のうち少なくとも一方の表面には可逆性感熱記録層が設けられているICカードに内蔵される,ICチップを実装したアンテナモジュールであって,
絶縁基板であって,厚み50μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)基材からなる絶縁基板と,
前記絶縁基板の上に形成されたアンテナコイルとコンデンサー部であって,前記絶縁基板の両面にALを用いて導入した厚み30μmのアンテナコイルとコンデンサー部と,
ICチップであって,フリップチップボンディングにより接続された,厚み175μm,4mm角のICチップと,
前記ICチップの実装部を表裏から挟み込む一対の金属製(ステンレス等)の補強板であって,封止剤により接着されている前記補強板と,
を備える
アンテナモジュール。」

ウ 引用例2:特開2000-163543号公報(拒絶理由で引用した文献6)
(2a)「【請求項1】金属箔からなるアンテナコイルと金属箔からなるヒートシンクとを貼付て形成した下側カバーシートと,
該下側カバーシート上に形成されたヒートシンク上に接着剤で回路面と反対側の面を接着したICと,
該ICの回路面に形成された電極と前記アンテナコイルの端部との間を接続する接続部と,
前記下側カバーシート上におけるICおよび接続部を含めてICが実装された面を樹脂で覆って接着固定された上側カバーシートとを有することを特徴とする無線ICカード。
【請求項2】前記金属箔をAl,Au,Cuの金属箔もしくはこれらの少なくとも1つを用いた合金箔で形成したことを特徴とする請求項1記載の無線ICカード。」

(2b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,無線ICカードは,一般のカード類と同じように扱われる可能性が高いため,カード厚さを薄くすることが基本的な課題であった。また,ICカードの通信方式が無線による近接型及び遠距離型になると,無線ICカードとカード読み込み装置及び書き込み装置との通信距離によって無線ICカードのアンテナコイルに供給される電力に大小を生じるため,放熱を考慮した無線ICカードが信頼性の向上につながる基本的な課題であった。
【0004】本発明の目的は,上記課題を解決すべく,放熱性を向上させ,低コストの薄型無線ICカードを提供することにある。また,本発明の他の目的は,放熱性を向上させ薄型無線ICカードを低コストで製造できるようにした無線ICカードの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明は,金属箔からなるアンテナコイルと金属箔からなるヒートシンクとを貼付て形成した下側カバーシートと,該下側カバーシート上に形成されたヒートシンク上に接着剤で回路面と反対側の面を接着したICと,該ICの回路面に形成された電極と前記アンテナコイルの端部との間を接続する接続部と,前記下側カバーシート上におけるICおよび接続部を含めてICが実装された面を樹脂で覆って接着固定された上側カバーシートとを有することを特徴とする無線ICカードである。」

(2c)「【0013】
【発明の実施の形態】本発明に係る無線ICカードの実施の形態について,図面を用いて説明する。本発明に係る無線ICカードの実施の形態は,図1(a)の平面図に示すように絶縁性樹脂12を用いてヒートシンク15上にIC(半導体素子)11をダイボンディングし,アンテナコイル17とIC(半導体素子)11を電気的に接続して構成したものである。図1(b)にそのAA’断面図を,図3にその斜視図を示す。ところで,無線ICカードのアンテナコイル17は,リーダ/ライタ装置(図示せず)のアンテナコイルとの間において,無線による電力の伝送を受け,無線による通信の送受信が行われる。従って,アンテナコイル17に接続されたIC(半導体素子)11は,例えば,特開平10-145987号公報に記載されているように,アンテナコイル17で受信した電力を整流する整流回路,該整流回路で整流された電力を所望の直流電圧に変換してマイコン等のIC回路に対して供給する電源回路,上記アンテナコイル17で受信された通信の信号を抽出するLPフィルタ,該LPフィルタで得られた信号を波形整形する波形整形回路,該波形整形回路から得られる信号を復号化する復号化回路,該復号化回路から得られるデータを入力して処理するメモリを有するマイコン,該マイコンから出力されるデータを符号化する符号化回路,該符号化回路から得られる送信信号をロードスイッチング変調させて上記アンテナコイル17に供給するロードスイッチング変調回路等が存在し,熱を発生することになる。特に,リーダ/ライタ装置のアンテナコイルから無線ICカードのアンテナコイル17へ例えば13.56MHzで無線により電力を伝送する必要があるため,電力受信効率向上を図る必要がある。
【0014】図において,10は,無線ICカード,15は,IC(半導体素子)11のヒートシンク用の金属箔(厚さ:10?100μm程度,なお,厚くすると無線ICカードが厚くなるので,50μm程度より薄くすることが望まれる。)であり,IC11の回路面と反対の面をエポキシ,シリコーン,ポリイミド,フェノール,アクリルのいずれかのバインダ樹脂による接着剤や熱伝導グリース等の絶縁性樹脂12を用いて接着する。バインダ樹脂による接着剤は,通常熱伝導性は良くないが,IC11と金属箔15との間の厚さは100μm程度以下であるため,使用することが可能である。熱伝導グリースは,熱伝導性が良いが,反面接着力が弱いがIC11を含め絶縁性樹脂18で覆われ,しかも下側カバーシート16と上側カバーシート14とがホットメルト剤13で接着されるので使用することが可能である。19は,アンテナコイル17とIC11の回路面に形成された電極との電気的な接続を行うための金属線である。18は,IC11や接続部を保護するためのエポキシ,シリコーン,ポリイミド,フェノール,アクリルのいずれかのバインダ樹脂による絶縁性樹脂,13は,ポリエチレンテレフタレート(PETと記)等の絶縁性フィルムの上側カバーシート14とアンテナコイル17の形成やIC11を実装したPET等の絶縁性フィルムの下側カバーシート16とを接着して無線ICカードとするためのホットメルト剤である。また,絶縁性樹脂18の代わりにホットメルト剤13を用いても良い。
【0015】ここで,アンテナコイル17及びヒートシンク15は,電力受信効率の向上と熱伝導率の向上のために,導電性ペースト(例えばAgペースト)による配線に比べ,低抵抗率及び高熱伝導率を特徴とするAu,Al,Cuの金属箔もしくはこれらの元素を用いた合金箔が好ましい。同様に金属線19もAu,Al,Cuの金属線もしくはこれらの元素を用いた合金線が好ましい。これは,カードと通信を行う読み込み装置(リーダ)及び書き込み装置(ライタ)との通信距離が数0.1m程度から1.5m程度と変化しても,アンテナコイルの低抵抗化や配線抵抗値ばらつきの減少が図られるので確実に通信を行うことができる。また,熱伝導性の高いヒートシンク用の金属箔により,ICの温度上昇に伴う特性劣化の防止や信頼性を向上することが可能となる。これは,これまで説明してきたような構造の無線ICカードに限らず,コイルを用いて通信を行うものすべてに同様の効果が得られることは言うまでもない。アンテナコイル用の金属箔及びヒートシンク用の金属箔はエッチングプロセスや金属箔の貼付によって形成すればよい。」

エ 引用例3:特開2004-111808号公報(拒絶理由で引用した文献7)
(3a)「【請求項1】
可撓性のベース材と,
広域面に複数の端子を備えていて,これらの端子を介して前記ベース材の少なくとも片面に実装されたICパッケージと,
前記ベース材における前記ICパッケージと反対側の面に設けられていて,前記ICパッケージの特性を維持する部材と
を有することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1において,前記ICパッケージの特性を維持する部材は,前記ベース材よりも熱伝導率の高い部材であることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項2において,前記ICパッケージの特性を維持する部材が設けられた領域内にある前記ベース材に設けられた少なくとも1つのスルーホールをさらに有することを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1から請求項3の少なくともいずれか1つにおいて,前記ICパッケージの特性を維持する部材は遮光性を有することを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1から請求項4の少なくともいずれか1つにおいて,前記ICパッケージの特性を維持する部材は前記ICパッケージよりも広いことを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5の少なくともいずれか1つにおいて,前記ベース材はその表裏両面に銅パターンを有し,前記ICパッケージの特性を維持する部材は該銅パターンによって形成されることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
可撓性のベース材と,
広域面に複数の端子を備えていて,これらの端子を介して前記ベース材の少なくとも片面に実装されたICパッケージと,
前記ベース材における前記ICパッケージと反対側の面に設けられた銅膜とを
有することを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項1から請求項7の少なくともいずれか1つにおいて,前記複数の端子はハンダ突起端子であることを特徴とする配線基板。」

(3b)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,BGA(ball Grid Array),CSP(Chip Sized Package)等といった,広域面に複数の端子を備える構造のICパッケージを実装して成る配線基板,その配線基板を用いた電気光学装置,及びその電気光学装置を用いた電子機器に関する。」

(3c)「【0013】
しかしながら,広域面に複数のハンダ突起端子218を有する構造のパッケージは,特に,それがFPC(Flexible Printed Circuit),すなわち可撓性の配線基板上に実装されたとき,自らが発生する熱によって過熱状態となって特性劣化を生じるという問題があった。また,その能動面に光が当たると特性劣化することがあるという問題もあった。また,熱や光以外の物理量に対してもICパッケージの特性が劣化する事態が発生することも考えられる。
【0014】
本発明は,上記の問題点に鑑みて成されたものであって,ICパッケージの広域面に形成された複数の端子を介して可撓性基板上に当該ICパッケージを実装することによって形成された実装構造体に関して,当該ICパッケージが過熱状態や,その他の異常状態になることを防止して,当該ICパッケージの特性を許容状態範囲内に維持することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
(1)上記の目的を達成するため,本発明に係る配線基板は,可撓性のベース材と,広域面に複数の端子を備えていてこれらの端子を介して前記ベース材の少なくとも片面に実装されたICパッケージと,前記ベース材における前記ICパッケージと反対側の面に設けられていて前記ICパッケージの特性を維持する部材とを有することを特徴とする。
【0016】
ここで,「広域面」とはICパッケージの側面のような狭い面ではなくて,ICパッケージの底面のような広い面のことである。また,「ICパッケージの特性を維持する部材」とは,ICパッケージの特性を劣化させるおそれのある因子が当該ICパッケージに影響を及ぼすことを防止できる部材のことである。このような部材としては,例えば,ICパッケージの発熱を逃がすための熱伝導部材や,ICパッケージが光に晒されることを防止する遮光部材や,ICパッケージに曲げ荷重やせん断荷重等といった外力がかかることを防止する構造部材等といった,各種の部材が考えられる。
【0017】
上記構成の配線基板によれば,ICパッケージの特性を維持する部材をベース材を挟んで当該ICパッケージの反対面に設けたので,ICパッケージの特性劣化を防止できる。
【0018】
(2) 上記構成の配線基板において,前記ICパッケージの特性を維持する部材は,前記ベース材よりも熱伝導率の高い部材とすることができる。この構成は,ベース材を,例えばポリイミドによって形成した上で,熱伝導率の高い部材を,例えば銅(Cu)によって形成することによって実現できる。
【0019】
この構成によれば,可撓性のベース材上に実装されたICパッケージが発熱するとき,その熱は熱伝導率の高い部材を通して外部へ放出されるので,ICパッケージが過熱状態になることを確実に防止できる。これにより,ICが過熱によって特性劣化することを防止できる。

・・・<途中省略>・・・

【0023】
(6) 上記構成の配線基板において,前記ベース材はその表裏両面に銅パターンを有するフィルム材によって構成でき,その場合には,前記ICパッケージの特性を維持する部材は該銅パターンによって形成することができる。
【0024】
このように,ベース材を挟んでICパッケージの裏側に銅膜を設ければ,銅膜が有する熱伝導特性によりICパッケージの過熱を防止でき,銅膜が有する遮光性によりICパッケージが光を受けて特性劣化することを防止でき,さらに,銅膜を設けることによってベース材の機械的強度が増大してICパッケージに曲げ力,せん断力,その他の外力が作用してそのICパッケージが損傷することを防止できる。
【0025】
(7) 次に,本発明に係る他の配線基板は,可撓性のベース材と,広域面に複数の端子を備えていてこれらの端子を介して前記ベース材の少なくとも片面に実装されたICパッケージと,前記ベース材における前記ICパッケージと反対側の面に設けられた銅膜とを有することを特徴とする。
【0026】
この構成の配線基板によれば,銅膜が有する熱伝導特性によりICパッケージの過熱を防止でき,銅膜が有する遮光性によりICパッケージが光を受けて特性劣化することを防止でき,さらに,銅膜を設けることによってベース材の機械的強度が増大してICパッケージに曲げ力,せん断力,その他の外力が作用してそのICパッケージが損傷することを防止できる。
【0027】
(8) 上記構成の配線基板において,ICパッケージの広域面に形成される前記複数の端子はハンダ突起端子とすることができる。配線基板上にICチップ以外の電子部品,例えば,コンデンサ,抵抗等を実装する際には,ハンダ・リフロー処理が採用されることが多くなっている。これは,例えば,配線基板上にクリームハンダを希望のパターンで印刷,例えばスクリーン印刷した後,ICパッケージ及び電子部品をその配線基板上にマウントし,その後,配線基板をリフロー炉へ入れて加熱してハンダを溶かしてハンダ付けするという,一連の工程から成る処理である。
【0028】
上記のように,ICパッケージの広域面に形成される前記複数の端子をハンダ突起端子によって形成すれば,ICパッケージをその他の電子部品と共に,1回のハンダ・リフロー処理によってベース材上に実装できる。これにより,電子部品はハンダ・リフロー処理によってベース材上に実装し,他方,ICチップはACF等を用いてベース上に実装するという実装方法を行う場合に比べて,製造コストを大幅に低減できる。」

(3d)「【0067】
(変形例)
以上の説明では,ICパッケージ36の特性を維持するための部材として,銅膜部材38bbを用いたが,この部材は,ICパッケージ36の特性を維持できる可能性のある部材であれば,銅(Cu)以外の金属材料や,場合によっては樹脂材料を用いることも可能である。」

オ 引用例4:特開2001-143035号公報(拒絶理由で引用した文献3)
(4a)【請求項1】 ループ状に形成されたループアンテナと,前記ループアンテナに接続されるカードチップとからなり,前記カードチップは前記ループアンテナと電磁結合した非接触ICカードリーダライタからの電力を受けて動作する非接触ICカードにおいて,
前記電磁結合に基づき発生する前記ループアンテナのループ電流を周囲温度の規定値以上の上昇に応じて遮断するループ電流遮断素子を備えたことを特徴とする非接触ICカード。」

(4b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に,非接触ICカードリーダライタのアンテナから発生する発振磁界の強度は,各非接触ICカードリーダライタの仕様に応じて定められている。ここで,非接触ICカードを仕様の異なる非接触ICカードリーダライタに誤ってかざしたときにその非接触ICカードリーダライタが強い発振磁界を発生しているような場合は,非接触ICカードに許容範囲を超える過大電力が非接触ICカードリーダライタ側から供給される。このため,非接触ICカード内のカードチップが発熱し,その温度が許容温度を超えた場合はカードチップが破壊され非接触ICカードの以降の使用が不可になるという問題が生じている。したがって,本発明は,非接触ICカードリーダライタから過大電力が非接触ICカードに供給された場合に非接触ICカードのカードチップの破壊を防止し非接触ICカードの以降の使用を可能にすることを目的とする。」

(4c)「【0016】ここで,ICカードリーダ側からICカード1に過大電力が供給されると,ICカード1のループアンテナL1,無線インタフェース11,制御回路12及びメモリ13が発熱する。図1(a)に示すスイッチ素子SWは,制御回路12等の発熱により周囲温度が上昇すると例えば自身の接点を開放する素子であり,ICカードリーダ側からICカード1に過大電力が供給され,ループアンテナL1,無線インタフェース11,制御回路12及びメモリ13が発熱することにより周囲温度が規定値(即ち,この規定値以上の温度が所定時間継続すると制御回路12などの各部がその発熱により破壊される値)以上に達すると,前記スイッチ素子SWは動作してその接点を開放することによりICカード1のループアンテナL1のループを切断する。」

(4d)「【0019】このように,ICカード1が過大電力を伝送(供給)するICカードリーダに誤ってかざされた場合でも,この過大電力を受けてカードチップ10に供給するICカード1のループアンテナL1のループをスイッチ素子SWにより切断するか,或いは前記素子SWを高抵抗にしてループ電流を遮断するにしたので,カードチップ10の前記過大電力の供給に基づく破壊を防止することができる。なお,本実施の形態ではループアンテナL1のループ上にスイッチ素子SWを設けているが,カードチップ10内に設けるようにしても良い。」

カ 引用例5:特開2006-340085号公報(拒絶理由で引用した文献4)
(5a)「【0003】
そして,この種の無線通信媒体では,外部装置である無線通信装置から過大な誘導磁界(過大電力)が印加された場合,それに伴い発熱するICチップ内の温度を温度検知手段により検知し,ICチップ内の温度が所定のレベル以上と判断されたとき,ICチップの動作を停止させている。その場合,温度検知手段はハードウェアにて構成され,温度異常を検知した場合,ICチップ内のCPUに割込み信号を出力する。CPUは,この割込み信号を受信し,ファームウェアにてICチップ動作のホルト(停止)を行なっている(たとえば,特許文献1,特許文献2参照)。」

キ 引用例6:特開2002-109495号公報(拒絶理由で引用した文献5)
(6a)「【0051】感熱素子126は,ICチップ110の温度を検知し,当該温度に対応する温度情報信号S1を切替指示回路127に出力する。温度情報信号S1は,ICチップ110の温度に応じてレベルが変わる信号である。感熱素子126としては,例えば,ICチップ上に形成されたトランジスタを用いることができる。この場合,当該トランジスタのPN接合の順方向電圧を温度情報信号S1とすることができる。」

4 対比
(1)引用発明の「ALを用いて導入した厚み30μmのアンテナコイルとコンデンサー部」,「ICチップ」及び「ICチップの実装部を表裏から挟み込む一対の金属製(ステンレス等)の補強板」は,それぞれ,本願発明1の「金属箔からなるアンテナコイルとコンデンサ」,「アンテナコイルによる通信を制御する電子機器」及び「『電子機器を実装面側と非実装面側から挟み込』む『一対の金属製の補強板』」に相当する。

(2)そうすると,本願発明1と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりといえる。

<一致点>
「金属箔からなるアンテナコイルとコンデンサが形成された絶縁基板上に配置され,前記アンテナコイルによる通信を制御する電子機器と,
前記電子機器を実装面側と非実装面側から挟み込む,一対の金属製の補強板と
を備える
アンテナモジュール。」

<相違点>
・相違点1:本願発明1が,「前記絶縁基板の前記電子機器が配置される面と反対側の面に,前記電子機器が配置される前記絶縁基板上の領域と少なくとも一部が前記絶縁基板を介して重なるように形成される,金属箔からなるパターン」を備え,かつ,補強板が,「前記非実装面側からは前記パターンの上に接着剤を介して接着される」のに対して,引用発明では,このような構成が特定されていない点。

・相違点2:本願発明1の電子機器が,「前記電子機器の温度を検知する検知部と,前記電子機器の温度が所定の温度以上である場合,前記通信を停止する制御部とを備える」のに対して,引用発明では,このような構成が特定されていない点。

5 相違点についての判断
(1)相違点1について
ア 引用例2の上記摘記(2b)の「ICカードの通信方式が無線による近接型及び遠距離型になると,無線ICカードとカード読み込み装置及び書き込み装置との通信距離によって無線ICカードのアンテナコイルに供給される電力に大小を生じるため,放熱を考慮した無線ICカードが信頼性の向上につながる基本的な課題であった。本発明の目的は,上記課題を解決すべく,放熱性を向上させ,低コストの薄型無線ICカードを提供することにある。」及び「上記目的を達成するために,本発明は・・・金属箔からなるヒートシンクとを貼付」との記載から,「放熱を考慮することが,無線ICカードの信頼性の向上につながる基本的な課題として知られていたこと」,及び,上記課題を解決するための「金属箔からなるヒートシンク」を使用する方法が知られていたことを認めることができる。

イ そして,引用発明の「アンテナモジュール」を内蔵したICカードは,上記引用例2に記載された「無線ICカード」に相当する。
そうすると,引用発明の「アンテナモジュール」を内蔵したICカードが,引用例2に記載された「無線ICカード」と同様の課題を有する場合があることは当業者が容易に想到し得たことといえるから,引用発明と引用例2に接した当業者において,信頼性の向上のための基本的な課題である「放熱」を考慮するために,引用発明に「金属箔からなるヒートシンク」を使用して,前記課題の解決に努めるという動機付けが生じることは,自然なことといえる。

ウ しかしながら,引用例2の上記摘記(2a)及び(2c)の記載に照らして,引用例2における前記「金属箔からなるヒートシンク」の使用は,下側カバーシート上に形成されたヒートシンク上に,ICの回路面と反対側の面を接着剤で接着するとともに,該ICの回路面に形成された電極と前記アンテナコイルの端部との間を金属線で接続し,前記下側カバーシート上における前記ICおよび前記金属線を含めて樹脂で覆って,上側カバーシートを接着固定したものであると解されるところ,引用発明のICチップは,フリップチップボンディングにより接続されたものであるから,引用例2と引用発明とでは,ICチップの実装方法(ICチップを実装した際に,前記ICチップの回路が形成された面が向く方向)が異なり,引用例2に記載された課題解決手段を,そのままの態様で引用発明に適用することは不可能であることも,また当業者が直ちに理解することといえる。

エ 一方,引用例3の上記摘記(3c)の「広域面に複数のハンダ突起端子218を有する構造のパッケージは,特に,それがFPC(Flexible Printed Circuit),すなわち可撓性の配線基板上に実装されたとき,自らが発生する熱によって過熱状態となって特性劣化を生じるという問題があった。」,「本発明は,上記の問題点に鑑みて成されたものであって,ICパッケージの広域面に形成された複数の端子を介して可撓性基板上に当該ICパッケージを実装することによって形成された実装構造体に関して,当該ICパッケージが過熱状態や,その他の異常状態になることを防止して,当該ICパッケージの特性を許容状態範囲内に維持することを目的とする。」,「(1)上記の目的を達成するため,本発明に係る配線基板は,可撓性のベース材と,広域面に複数の端子を備えていてこれらの端子を介して前記ベース材の少なくとも片面に実装されたICパッケージと,前記ベース材における前記ICパッケージと反対側の面に設けられていて前記ICパッケージの特性を維持する部材とを有することを特徴とする。」,「「ICパッケージの特性を維持する部材」とは,ICパッケージの特性を劣化させるおそれのある因子が当該ICパッケージに影響を及ぼすことを防止できる部材のことである。このような部材としては,例えば,ICパッケージの発熱を逃がすための熱伝導部材・・・が考えられる。」及び「上記構成の配線基板によれば,ICパッケージの特性を維持する部材をベース材を挟んで当該ICパッケージの反対面に設けたので,ICパッケージの特性劣化を防止できる。」との記載,並びに,上記摘記(3d)の「ICパッケージ36の特性を維持するための部材として,銅膜部材38bbを用いたが,この部材は,ICパッケージ36の特性を維持できる可能性のある部材であれば,銅(Cu)以外の金属材料や,場合によっては樹脂材料を用いることも可能である。」との記載から,「広域面に複数の端子を備える構造のICパッケージ」を,配線基板上に実装したとき,自らが発生する熱によって過熱状態となって特性劣化を生じるという問題を解決する手段として,前記ICパッケージを実装したベース材の,前記ICパッケージが設けられている面とは反対側の面に,銅等の金属材料からなる膜を,前記ICパッケージの特性を維持する部材として設けることが行われていたことが理解できる。

オ そして,引用例3の上記摘記(3b)の「本発明は,BGA(ball Grid Array),CSP(Chip Sized Package)等といった,広域面に複数の端子を備える構造のICパッケージを実装して成る配線基板」との記載に照らして,引用例3の「広域面に複数の端子を備える構造のICパッケージ」の実装方法は,BGA(ball Grid Array),CSP(Chip Sized Package)等によるものと解されるところ,前記BGA(ball Grid Array),CSP(Chip Sized Package)は,引用発明の「フリップチップボンディング」の一種であると認められる。

カ そうすると,引用例3の上記摘記(3a)-(3d)の記載から,引用発明の「フリップチップボンディング」の一種であると認められる方法によって実装したICパッケージにおいて,自らが発生する熱によって過熱状態となって特性劣化を生じるという問題を解決するために,前記ICパッケージを実装したベース材,すなわち絶縁基板の,前記ICパッケージが設けられている面とは反対側の面に,銅等の金属材料からなる膜を,前記ICパッケージの特性を維持する部材として設けるという構造を採用することが知られていたと認められる。

キ してみれば,上記イで検討したように,引用発明と引用例2に接した当業者において,信頼性の向上のための基本的な課題である「放熱」を考慮するために,引用発明に「金属箔からなるヒートシンク」を使用して,前記課題の解決に努めるという動機付けが生じるものの,上記ウで検討したように,引用発明に引用例2に記載された課題解決手段を,そのままの態様で適用することが不可能である場合において,上記カで検討したように,引用発明の「フリップチップボンディング」の一種であると認められる方法によって実装したICパッケージにおいて,自らが発生する熱によって過熱状態となって特性劣化を生じるという問題を解決するために,前記ICパッケージを実装したベース材,すなわち絶縁基板の,前記ICパッケージが設けられている面とは反対側の面に,銅等の金属材料からなる膜を,前記ICパッケージの特性を維持する部材として設ける構造を採用することが知られていたのであるから,引用発明に「金属箔からなるヒートシンク」を使用して信頼性を向上するために,引用例2に記載された前記課題解決手段に替えて,引用例3に記載された,絶縁基板の,ICパッケージが設けられている面とは反対側の面に,銅等の金属材料からなる膜を,前記ICパッケージの特性を維持する部材として設けるという構造を採用することは,容易になし得たことである。

ク そして,引用発明において,前記キで検討したように,絶縁基板の,ICパッケージが設けられている面とは反対側の面に,銅等の金属材料からなる膜を設けた場合に,引用発明の「前記ICチップの実装部を表裏から挟み込む一対の金属製(ステンレス等)の補強板であって,封止剤により接着されている前記補強板」のうちの,ICチップの実装部を「裏から挟み込む金属製(ステンレス等)の補強板」の接着が,前記「銅等の金属材料からなる膜」を介した接着となることは,各部材の位置関係から必然的に生じる構成といえる。

ケ したがって,引用発明において,上記相違点1について,本願発明1の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。また,このような構成を採用したことによる効果も当業者が予測する範囲内のものである。

コ なお,ICチップが実装されない側の,「補強板」と「絶縁基板」との間の剥離強度は,使用する「接着剤」の種類,「絶縁基板」と「金属箔」の各々の材質及び表面の状態,及び,補強板と接着される部位の「金属箔」と「絶縁基板」との間の固着強度等が互いに影響して定まるものであって,絶縁基板の非実装面に金属箔を形成した方が,形成しない場合に比べて剥離強度が上がるとは一概には認められない。したがって,「接着剤」の種類,「絶縁基板」と「金属箔」の各々の材質及び表面の状態,及び,「金属箔」と「絶縁基板」との間の固着強度等についての限定がされていない請求項1に記載された事項によって特定される発明である本願発明1の効果として,審判請求人が平成26年3月31日に提出した意見書において主張する「作用効果」は認めることはできない。

(2)相違点2について
ア 引用例4の上記摘記(4a)の「前記電磁結合に基づき発生する前記ループアンテナのループ電流を周囲温度の規定値以上の上昇に応じて遮断するループ電流遮断素子を備えたことを特徴とする非接触ICカード。」,上記摘記(4b)の「非接触ICカード内のカードチップが発熱し,その温度が許容温度を超えた場合はカードチップが破壊され非接触ICカードの以降の使用が不可になるという問題が生じている。したがって,本発明は,非接触ICカードリーダライタから過大電力が非接触ICカードに供給された場合に非接触ICカードのカードチップの破壊を防止し非接触ICカードの以降の使用を可能にすることを目的とする。」との記載,上記摘記(4d)の「なお,本実施の形態ではループアンテナL1のループ上にスイッチ素子SWを設けているが,カードチップ10内に設けるようにしても良い。」との記載,及び,引用例5の上記摘記(5a)の「この種の無線通信媒体では,外部装置である無線通信装置から過大な誘導磁界(過大電力)が印加された場合,それに伴い発熱するICチップ内の温度を温度検知手段により検知し,ICチップ内の温度が所定のレベル以上と判断されたとき,ICチップの動作を停止させている。その場合,温度検知手段はハードウェアにて構成され,温度異常を検知した場合,ICチップ内のCPUに割込み信号を出力する。CPUは,この割込み信号を受信し,ファームウェアにてICチップ動作のホルト(停止)を行なっている」との記載に照らして,ICチップの温度が所定の温度以上となった場合に,アンテナを用いた通信を停止することで,前記ICチップの破壊を防止するという技術的思想は周知であると認められる。

イ そして,温度を検知する検知部として,例えば,ICチップ上に形成されたトランジスタを用いることは,引用例6の上記摘記(6a)の「感熱素子126は,ICチップ110の温度を検知し,当該温度に対応する温度情報信号S1を切替指示回路127に出力する。温度情報信号S1は,ICチップ110の温度に応じてレベルが変わる信号である。感熱素子126としては,例えば,ICチップ上に形成されたトランジスタを用いることができる。この場合,当該トランジスタのPN接合の順方向電圧を温度情報信号S1とすることができる。」との記載からも明らかなように周知の機構である。

ウ そうすると,引用発明のアンテナモジュールに設けられているICチップの破壊を防止するために,前記ICチップに,前記ICチップの温度を検知する検知部と,前記ICチップの温度が所定の温度以上である場合,通信を停止する制御部とを設けることは当業者が容易に想到し得たことである。そして,これらの構造を採用したことによる効果は,当業者が予測し得たものであり,また,このような構造を採用することを妨げる特段の理由も認められない。

エ したがって,引用発明において,上記相違点2について,本願発明1の構成となすことは当業者が適宜なし得たことである。また,このような構成を採用したことによる効果も当業者が予測する範囲内のものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用例1-6に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-01 
結審通知日 2014-05-08 
審決日 2014-05-21 
出願番号 特願2008-92191(P2008-92191)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 加藤 浩一
西脇 博志
発明の名称 アンテナモジュール  
代理人 稲本 義雄  
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