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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B05C |
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管理番号 | 1289412 |
審判番号 | 不服2013-10409 |
総通号数 | 176 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-05 |
確定日 | 2014-07-03 |
事件の表示 | 特願2007-161978「塗布液供給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 1月 8日出願公開、特開2009- 596〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成19年6月20日の出願であって、平成24年8月9日付けで拒絶理由が通知され、同年9月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年2月22日付けで拒絶査定がされ、平成25年6月5日に拒絶査定に対する審判の請求がされると同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、さらに、同年9月2日付けで当審において書面による審尋がされ、それに対して同年10月22日に回答書が提出されたものである。その後、平成26年1月7日付けで当審により前記平成25年6月5日付けの手続補正を却下する決定がされるとともに、同年1月23日付けで当審により拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月26日に意見書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。 第2.本願発明 本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、願書に最初に添付した明細書及び図面並びに平成26年3月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「 【請求項1】 塗布液を貯留するタンクと、 前記タンク内の前記塗布液を取り出して再び前記タンクに戻す第1及び第2の循環経路と を備え、 前記第1の循環経路には上流側から順にポンプ、フィルター、スリットノズル及び開閉弁が設けられ、 前記第2の循環経路には上流側から順にポンプ及び温調装置が設けられ、 前記スリットノズルは、前記塗布液が供給される一端と前記塗布液が戻される他端とを接続する一本の流路を有し、前記流路につながるスリット状吐出口が下方に向かって開口しており、前記流路が、前記スリット状吐出口を介さずに前記塗布液を循環させる前記第1の循環経路の一部を構成していると共に、前記流路のうち前記塗布液が流れる上流側である前記一端側の径よりも前記流路のうち前記塗布液が流れる下流側である前記他端側の径の方が大きくなるように形成されている ことを特徴とする塗布液供給システム。」 第3.当審拒絶理由に引用された引用文献 1.特開平11-319675号公報(以下、「引用文献」という。)の記載事項 ア.「【0010】 【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。本発明の塗工ヘッドは、図1に示すように、対峙する上部金型(11)と下部金型(12)のスリット部(13)より塗液を吐出し、被塗工基材に塗工するスロットコーター用の塗工ヘッド(1)であって、図2に示す塗液を供給する塗液供給部(2)、図1に示す塗液を均一に吐出させるマニホールド部(18)、塗液を吐出するスリット部(13)、2枚の対峙する上部金型(11)と下部金型(12)を固定するため二つのサイドプレート部(15)から成り、該サイドプレート部(15)のそれぞれに塗液供給口(16)と塗液排出口(17)を備えてなるもので、塗工時には前記塗液排出口(17)を閉めることによりスリット部(13)から塗液を吐出し、非塗工時には塗液排出口(17)を開けることにより排出口から塗液を排出する構造としたものであって、さらに、例えば図3(当審注:「図3」は「図2」の誤記であると認める。)に示すように、非塗工時に塗液排出口(17)に送られる塗液は、一旦塗液供給部(2)の塗液供給タンク(21)に入り、再度フィルター(19)を介してフィルタリング処理をした後に塗液供給口(16)より塗工ヘッド(1)内に送り込まれるような循環構造としたものであ。この場合のフィルター(19)の設置位置は出来るかぎり塗液供給口(16)に近い方が、塗液のゲル化の抑制に有効であり望ましい。」(段落【0010】) イ.「【0011】上記のように、非塗工時においても塗液が塗工ヘッド(1)内を循環しているので、塗工ヘッド(1)内部に塗液が滞留することがなく、よって塗膜中に欠陥等を防止でき、かつ塗液の無駄を防止できるものである。」(段落【0011】) 2.上記1.及び図面から分かること カ.上記1.ア.及びイ.並びに図1及び2から、塗液供給装置は、塗液を貯留する塗液供給タンク21と、塗液供給タンク21内の塗液を取り出して再び塗液供給タンク21に戻す第1の循環経路を有することが分かる。 キ.上記1.ア.及びイ.並びに図1及び2から、第1の循環経路には上流側から順にポンプ20、フィルター19、塗工ヘッド1及び開閉弁22が設けられることが分かる。 ク.上記1.ア.及びイ.並びに図1及び2から、塗工ヘッド1は、塗液が供給される塗液供給口16と塗液が戻される塗液排出口17とを接続する一本の流路を有し、前記流路につながるスリット部13が側方に向かって開口しており、前記流路が、スリット部13を介さずに前記塗液を循環させる第1の循環経路の一部を構成していることが分かる。 3.引用文献記載の発明 上記1.及び2.並びに図面によると、引用文献には、次の発明が記載されている。 「 塗液を貯留する塗液供給タンク21と、 前記塗液供給タンク21内の前記塗液を取り出して再び前記塗液供給タンク21に戻す第1の循環経路と を備え、 前記第1の循環経路には上流側から順にポンプ20、フィルター19、塗工ヘッド1及び開閉弁22が設けられ、 前記塗工ヘッド1は、前記塗液が供給される塗液供給口16と前記塗液が戻される塗液排出口17とを接続する一本の流路を有し、前記流路につながるスリット部13が側方に向かって開口しており、前記流路が、前記スリット部13を介さずに前記塗液を循環させる前記第1の循環経路の一部を構成している 塗液供給装置。」(以下、「引用文献記載の発明」という。) 第4.対比 本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「塗液」、「塗液供給タンク21」、「ポンプ20」、「フィルター19」、「塗工ヘッド1」、「開閉弁22」、「塗液供給口16」、「塗液排出口17」、「スリット部13」及び「塗液供給装置」は、それぞれの技術的意義及び機能からみて、本願発明における「塗布液」、「タンク」、「ポンプ」、「フィルター」、「スリットノズル」、「開閉弁」、「一端」、「他端」、「スリット状吐出口」及び「塗布液供給システム」に、それぞれ相当する。 引用文献記載の発明における「側方に向かって開口」は、「外方に向かって開口」という限りにおいて、本願発明の「下方に向かって開口」に相当する。 したがって、本願発明と引用文献記載の発明は、 「 塗布液を貯留するタンクと、 前記タンク内の前記塗布液を取り出して再び前記タンクに戻す第1の循環経路と を備え、 前記第1の循環経路には上流側から順にポンプ、フィルター、スリットノズル及び開閉弁が設けられ、 前記スリットノズルは、前記塗布液が供給される一端と前記塗布液が戻される他端とを接続する一本の流路を有し、前記流路につながるスリット状吐出口が外方に向かって開口しており、前記流路が、前記スリット状吐出口を介さずに前記塗布液を循環させる前記第1の循環経路の一部を構成している 塗布液供給システム。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 1)本願発明においては、「タンク内の前記塗布液を取り出して再び前記タンクに戻す第2の循環経路」を有し、「前記第2の循環経路には上流側から順にポンプ及び温調装置が設けられ」ているのに対して、引用文献記載の発明においては、「第2の循環経路」が設けられているかどうかが明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。 2)本願発明においては、スリット状吐出口が下方に向かって開口しているのに対して、引用文献記載の発明においては、スリット部13(本願発明の「スリット状吐出口」に相当。)が側方に向かって開口している点(以下、「相違点2」という。)。 3)本願発明においては、「流路のうち塗布液が流れる上流側である一端側の径よりも前記流路のうち前記塗布液が流れる下流側である他端側の径の方が大きくなるように形成されている」のに対して、引用文献記載の発明においては、「流路のうち塗布液が流れる上流側である一端側の径よりも前記流路のうち前記塗布液が流れる下流側である前記他端側の径の方が大きくなるように形成されている」かどうかが明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。 第5.当審の判断 上記相違点1ないし3について、以下に検討する。 1)相違点1に対して 処理液をタンクから供給するに際して、タンクから供給される処理液の温度を最適化することは周知の課題であって、処理液の温度を調整するために、タンク内の処理液を取り出して再び前記タンクに戻す循環経路を設けるとともに、このような循環経路には上流側から順にポンプ及び温調装置を設けることは周知の技術(例えば、特開平3-202488号公報の第2図及び特開2004-14642号公報の図1等参照。以下、「周知技術1」という。)である。 してみれば、引用文献記載の発明に上記周知技術1を適用して、相違点1に係る本願発明における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 2)相違点2に対して スリット状吐出口の開口方向を下方とすることは周知の技術(例えば、特開2006-95460号公報の図4及び特開2005-144376号公報の図1等参照。以下、「周知技術2」という。)であり、また、スリット状吐出口の開口方向をどの方向にするかは、当業者が塗液を供給する対象に応じて、適宜設計し得る程度の設計的事項にすぎない。 してみれば、引用文献記載の発明に上記周知技術2を適用して、相違点2に係る本願発明における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 3)相違点3に対して 引用文献記載の発明においても、「流路」が、塗布液供給時には、スリット状吐出口への塗布液の供給路として用いられ、塗布液循環時には、スリット状吐出口を介さずに塗布液を循環させる第1の循環経路として用いられることは明らかである。 そして、塗布液供給時においてスムーズな塗布液の流れを形成するために、流路のうち塗布液が流れる上流側である一端側の径よりも前記流路のうち前記塗布液が流れる下流側である他端側の径の方が大きくなるように形成することは周知の技術(例えば、特開2006-95460号公報の図1及び特開2005-144376号公報の図11等参照。以下、「周知技術3」という。)である。 そして、上記周知技術3である流路を、引用文献記載の発明に適用することにより、塗布液循環時においてもスムーズな塗布液の流れを形成できることは自明である。 さらに、塗布液の均一な塗布を目的として流路のうち塗布液が流れる上流側である一端側の径よりも前記流路のうち前記塗布液が流れる下流側である他端側の径の方が小さくなるように形成することも周知の技術(例えば、特開平10-202159号公報の図3及び特開2000-271525号公報の図4参照。)である。 そうすると、流路のうち塗布液が流れる上流側である一端側の径と、前記流路のうち前記塗布液が流れる下流側である前記他端側の径との大小関係は当業者が解決しようとする課題に応じて、適宜設計し得る程度の設計上の選択的事項(以下、「選択的事項」という。)にすぎないと認める。 してみれば、引用文献記載の発明において、上記選択的事項を参酌することにより、スムーズな塗布液の流れの形成を目的とした上記周知技術3を適用して、相違点3に係る本願発明における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 また、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び上記周知技術1ないし3から予測される以上の格別の効果を奏するものとも認めることはできない。 よって、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-02 |
結審通知日 | 2014-05-07 |
審決日 | 2014-05-21 |
出願番号 | 特願2007-161978(P2007-161978) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B05C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 日下部 由泰 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 藤原 直欣 |
発明の名称 | 塗布液供給システム |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 五十嵐 光永 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 鈴木 三義 |