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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1289416
審判番号 不服2013-14625  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-30 
確定日 2014-07-03 
事件の表示 特願2008-164664「剥離装置および剥離方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日出願公開、特開2010- 10207〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年6月24日を出願日とする出願であって、平成24年10月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月13日付けで手続補正がなされたが、平成25年4月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月30日に本件審判の請求がなされるとともに、同日付けにてさらに手続補正(以下「本件補正」という。)がなされた。
そして、平成25年11月18日付けで審尋がなされ、回答書が同年12月26日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年7月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容の概要
本件補正は、平成24年12月13日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線は当審で付した補正箇所を示す。

(1)<補正前の請求項1>
「【請求項1】
支持板が貼着された基板から、当該支持板を剥離する剥離装置であって、
前記支持板の外周側端部を把持する把持手段と、前記支持板を吸着する吸着手段とを備えており、
前記支持板は、その外周側端部が面取りされた支持板であり、
前記吸着手段は、前記吸着手段の接触面と前記支持板との間の気体を吸引し、吸引力により前記支持板を吸着するものであり、
前記把持手段は、前記吸着手段により吸着された前記支持板の前記外周側端部の面取り部位を把持するようになっていることを特徴とする剥離装置。」

(2)<補正後の請求項1>
「【請求項1】
支持板が貼着された基板から、当該支持板を剥離する剥離装置であって、
前記支持板の外周側端部を把持する把持手段と、前記支持板を吸着する吸着手段とを備えており、
前記支持板は、その外周側端部が面取りされており、全面に貫通孔が形成されている支持板であり、
前記吸着手段は、前記吸着手段の接触面と前記支持板との間の気体を吸引し、吸引力により前記支持板を吸着するものであり、
前記把持手段は、前記吸着手段により吸着された前記支持板の前記外周側端部の面取り部位を把持するようになっていることを特徴とする剥離装置。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明の特定事項である「支持板」について「全面に貫通孔が形成されている」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち独立特許要件について以下に検討する。

(1)補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「剥離装置」であると認める。

(2)刊行物およびその記載事項
これに対して、本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由にも引用された刊行物である以下の文献には、以下の発明あるいは事項が記載されていると認められる。
刊行物1:特開平6-268051号公報
刊行物2:特開2007-67167号公報

(2-1)刊行物1
刊行物1には、「ウエハ剥し装置」について、図1?20とともに次の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付したものである。

ア 刊行物1に記載された事項
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 下面を吸着面とし、該吸着面に真空吸着口を有し熱軟化性接着剤により貼り合わされた被剥離物のウエハと補強板とからなるワークの一方の面を吸着する上部吸着手段と、
上面を吸着面とし、該吸着面に真空吸着口を有し、上記ワークの他方の面を吸着する下部吸着手段と、上記上部吸着手段と上記下部吸着手段との少なくともいずれか一方に設けられ、上記熱軟化性接着剤を軟化させる加熱手段と、
上記上部吸着手段と、該上部吸着手段を上下動させるためのロボットアームとを回動自在に接続する連結手段とを備えたことを特徴とするウエハ剥し装置。
(省略)
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載のウエハ剥し装置において、
上記上部吸着手段は、その側部に、該上部吸着手段の吸着面に吸着された補強板を該上部吸着手段に圧接することにより保持する保持手段を備えていることを特徴とするウエハ剥し装置。
【請求項6】 請求項5記載のウエハ剥し装置において、
上記保持手段は、
上記上部吸着手段の側部に固定されたエアーシリンダと、
該エアーシリンダに連結され、該エアーシリンダの作動により上記上部吸着手段の吸着面に吸着された補強板の周端部を、該上部吸着手段とで挟持する爪とを有するものであることを特徴とするウエハ剥し装置。
(省略)
【請求項16】 請求項1ないし15のいずれかに記載のウエハ剥し装置において、
熱軟化性接着剤の溶剤を吹き付けるノズルを、上記下部吸着手段の近傍に、上記上,下部吸着手段に吸着保持されたウエハと補強板との接着面に向けて設けたことを特徴とするウエハ剥し装置。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明はウエハ剥し装置に関し、特にウエハの裏面処理を行なう為に、ウエハを熱軟化性接着剤により補強板に貼り付け、裏面処理後、ウエハを補強板から剥すようにしたウエハ剥し装置に関するものである。」

(ウ)「【0010】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、ウエハ剥離の際の欠けや傷の発生を防ぎ、これによりウエハ割れを低減させ、その歩留りの向上によりデバイスの低コスト化を実現させることのできるウエハ剥し装置を得ることを目的とし、加えて自動化を図ることのできるウエハ剥し装置を得ることを目的としている。」

(エ)「【0021】また、この発明においては、補強板を上部吸着手段の吸着面に圧接保持する保持手段を設け、この保持手段をエア-シリンダと爪とで構成したから、上部吸着手段がロボットアームにより上方に移動されると、補強板は爪により上部吸着手段に固定されているため、補強板の端部が曲げられながらウエハの周端部から剥離され、これによりウエハ剥しが容易となる。」

(オ)「【0025】また、この発明においては、ウエハと補強板間の接着部に向けて、溶剤等を吹き付けるノズルを配置するようにしたから、接着剤の除去が促進され、剥離をさらに容易に行なうことができる。
【0026】さらに、この発明においては、ウエハ剥し装置を、熱軟化性接着剤の溶剤を入れた容器内に設置し、あるいはそれに加えて、この容器を密閉し容器内を加圧するようにしたから、溶剤が接着剤層に浸透しやすくなる。」

(カ)「【0029】また11は同じく円盤形状の上部吸着加熱板で、この上部吸着加熱板11の吸着面11aにも上部真空吸着口11bが開口し、ワーク20を吸引吸着するために、上部吸着加熱板11の側面に開口した上部真空吸引口12を介して、図示しない真空ポンプに接続されている。また上部吸着加熱板11の空洞11cにはカートリッジヒータ13が挿入され、さらに上部吸着加熱板11の上面中央には支持軸14が固定され、カップリング15を介してロボットアーム16と連結されている。これにより上部吸着加熱板11はロボットアーム16によって上下動及び回動自在に保持される。」

(キ)「【0036】実施例2.図4はこの発明の第2の実施例によるウエハ剥し装置を示す構成図、図5は図4に示す保持手段の斜視図、図6は保持手段の動きを説明する図である。本実施例2では、上記実施例1に加えて、ワーク20の補強板2の周辺端を保持するために、上部吸着加熱板11の側部に一対の保持部21を設けたものであり、この保持部21は、図5に示すように補強板2の周辺端を挟持する爪21aと、この爪21aの作動点にシリンダピン21eを軸着したエアーシリンダ21bとからなり、エアーシリンダ21bと爪21aとは第1の軸21c及び第2の軸21dにより回動自在に上部吸着加熱板11に取り付けられている。
【0037】次に動作について説明する。ワーク20が上部吸着加熱板11の吸着面11aに吸着されるまでは、エアーシリンダ21bのシリンダピン21eは突出した状態にあり、このシリンダピン21eに軸着された爪21aは第2の軸21dを中心として上部吸着加熱板11の外側方向に回転しており、図6(a)に示すように、開いた状態にある。次に、図6(b)に示すように、ワーク20が上部吸着加熱板11の吸着面11aに吸着されるとエアーシリンダ21bが作動し、シリンダピン21eにより爪21aが引っ張られ、爪21aは第2の軸21dを中心として上部吸着加熱板11側に向かって回転する。これによりワーク20の補強板2の周辺端は上部吸着加熱板11の吸着面11aと爪21aとにより吸着面11aに挟持される。その後は、上記実施例1と同様であり、吸着動作により上,下部吸着加熱板11,4の間にワーク20が吸着保持されると、ロボットアーム16が作動し、上部吸着加熱板11を上昇させ、ウエハ1と補強板2との剥離を開始する。この時、補強板2の周辺端は爪21aにより挟持されているので、上部吸着加熱板11が上昇すると、補強板2の端部が曲げられ、ウエハ1の周囲から徐々に剥離が始まる。
【0038】このように本実施例2では、上部吸着加熱板11の側部に、上部吸着加熱板11の吸着面11aに吸着された補強板2を保持する保持部21を設け、補強板2の周端部を保持部21の爪21aにより挟持するようにしたので、ロボットアームにより上部吸着加熱板を上昇させる際に補強板の端部が曲げられ、これによりウエハの周端部から徐々に剥離され、ウエハの剥離を容易に行うことができる。」

(ク)「【0055】実施例11.図16はこの発明の第11の実施例によるウエハ剥し装置を示す構成図であり、上記第1の実施例によるウエハ剥し装置において、ワックス209等の接着剤を溶解させるソルファインTM(徳山石油化学の商品名)等の溶剤102を吹き付けるノズル101を、ウエハ1と補強板2との接着面に向けて設けたものである。
【0056】このように本実施例11では、ノズル101によりウエハ1と補強板2との接着面に溶剤102を吹き付けるようにしたので、ウエハ1と補強板2とが徐々に剥離され、その間隙にさらに溶剤102を吹き付けることができるので、接着力をさらに弱めることができるとともに、接着剤を除去することができる。」

イ 引用発明
上記摘記事項(ア)ないし(ク)を、図面を参酌しつつ技術常識を踏まえて補正発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「下面を吸着面とし、該吸着面に真空吸着口を有し熱軟化性接着剤により貼り合わされた被剥離物のウエハと補強板とからなるワークの一方の面を吸着する上部吸着手段と、
上面を吸着面とし、該吸着面に真空吸着口を有し、上記ワークの他方の面を吸着する下部吸着手段と、
上記上部吸着手段と上記下部吸着手段との少なくともいずれか一方に設けられ、上記熱軟化性接着剤を軟化させる加熱手段と、
上記上部吸着手段と、該上部吸着手段を上下動させるためのロボットアームとを回動自在に接続する連結手段と、
を備え、
上記上部吸着手段は、その側部に、該上部吸着手段の吸着面に吸着された補強板を該上部吸着手段に圧接することにより保持する保持手段を備えており、
上記保持手段は、上記上部吸着手段の側部に固定されたエアーシリンダと、該エアーシリンダに連結され、該エアーシリンダの作動により上記上部吸着手段の吸着面に吸着された補強板の周端部を、該上部吸着手段とで挟持する爪とを有するものであり、
さらに、熱軟化性接着剤の溶剤を吹き付けるノズルを、上記下部吸着手段の近傍に、上記上、下部吸着手段に吸着保持されたウエハと補強板との接着面に向けて設けた
ウエハ剥し装置。」

(2-2)刊行物2
刊行物2には、「サポートプレート、サポートプレートの剥離装置及び剥離方法」について、図1?10とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0008】そこで、本出願人はサポートプレートとして厚み方向に多数の貫通孔が形成されたものを提案している。図9は、このサポートプレートを剥離する方法を説明したものである。
この方法は、先ず、サポートプレート100の上面にOリング101を介して溶剤供給プレート102を重ねる。次に、サポートプレート100、Oリング101及び溶剤供給プレート102で囲まれる空間Sに溶剤供給管103から溶剤を供給する。これにより、サポートプレート100に形成した貫通孔104を介して接着剤層105を溶解するようにしたものである。」

(3)対比
補正発明と引用発明とを比較する。

ア まず、引用発明の「ウエハ」は、補正発明における「基板」の下位概念であることから、補正発明の「基板」に相当するといえる。
そして、引用発明においては「熱軟化性接着剤により貼り合わされた被剥離物のウエハと補強板」とから「ワーク」が構成されているのであるから、引用発明の「補強板」は、補正発明の「支持板」に相当するといえる。
また、上記摘記事項(イ)の「ウエハを補強板から剥すようにしたウエハ剥し装置」からみて、引用発明の「ウエハ剥し装置」は、「補強板」から「ウエハ」を剥離する剥離装置であるが、「ウエハ」を基準として見れば、「ウエハ」から「補強板」を剥離する剥離装置であるともいえる。そうすると、引用発明の「ウエハ剥し装置」は、補正発明の「基板から、当該支持板を剥離する剥離装置」に相当するといえる。

イ 引用発明の「補強板の周端部」が補正発明の「支持板の外周側端部」に相当することは明らかである。そして、下記に示す本願の図3においては「サポートプレート7の外周側端部」を「吸着プレート(吸着手段)3」と「ツメ部2’」とで挟持しているともいえるから、補正発明の「把持手段」は、そのような挟持状態を含むものである。


そうすると、引用発明の「補強板の周端部を、該上部吸着手段とで挟持する爪」を有する「保持手段」は、補正発明の「前記支持板の外周側端部を把持する把持手段」に相当するといえる。

ウ 引用発明においては「下面を吸着面とし、該吸着面に真空吸着口を有し・・・・・ウエハと補強板とからなるワークの一方の面を吸着する上部吸着手段は、・・・・・その側部に、該上部吸着手段の吸着面に吸着された補強板を該上部吸着手段に圧接することにより保持する保持手段を備えて」いる、すなわち、該「補強板」が該「上部吸着手段」の吸着面に吸着され、該吸着面と「補強板」との間の気体を吸引し、吸引力により前記「補強板」を吸着するのであるから、引用発明の「上部吸着手段」は、補正発明の「支持板を吸着する吸着手段」に相当し、「前記吸着手段の接触面と前記支持板との間の気体を吸引し、吸引力により前記支持板を吸着するもの」であるといえる。

エ 引用発明においては「上記保持手段は、上記上部吸着手段の側部に固定されたエアーシリンダと、該エアーシリンダに連結され、該エアーシリンダの作動により上記上部吸着手段の吸着面に吸着された補強板の外周側端部を、該上部吸着手段とで挟持する爪とを有するものであ」る、すなわち、引用発明の「保持手段」は「上部吸着手段」により吸着された「補強板」の周端部を挟持するのであるから、引用発明と補正発明とは、「前記把持手段は、前記吸着手段により吸着された前記支持板の前記外周側端部を把持するようになっている」点で共通するといえる。

そうすると、両者は、
(一致点)
「支持板が貼着された基板から、当該支持板を剥離する剥離装置であって、
前記支持板の外周側端部を把持する把持手段と、前記支持板を吸着する吸着手段とを備えており、
前記吸着手段は、前記吸着手段の接触面と前記支持板との間の気体を吸引し、吸引力により前記支持板を吸着するものであり、
前記把持手段は、前記吸着手段により吸着された前記支持板の前記外周側端部を把持するようになっている剥離装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
補正発明では「支持板」が「全面に貫通孔が形成されている」のに対して、引用発明ではそのような構成ではない点。

(相違点2)
補正発明では、「支持板は、その外周側端部が面取りされており」、「把持手段」が「前記外周側端部の面取り部位を把持するようになっている」のに対し、引用発明ではそのような構成であるか否か不明な点。

(4)相違点の判断
ア 相違点1について
本願出願前の平成20年2月21日に頒布された刊行物である特開2008-41985号公報の段落【0004】?【0005】には「ここで、厚さ方向に貫通孔が形成されたサポートプレートを用いることで、サポートプレートとウエハとの接着部分への剥離液の供給を容易にする手法が知られている。(例えば、特許文献1参照。)このサポートプレートの貫通孔は、サポートプレートとウエハとが同径の場合にはサポートプレートの略全面に、サポートプレートがウエハよりも大径の場合には周縁を除く位置(ウエハに対向する位置)に形成されるのが一般的である。
【特許文献1】特開2004-296935号公報(図2)」と記載され(下線は当審にて付与)、また、該特許文献1である特開2004-296935号公報の段落【0065】には「図2は、上記▲1▼の補強工程において、補強板1と半導体ウエハー3aとを接着層2を介して貼り合わせた状態を示している。図2に示すように、補強板1には、接着層2を溶融する溶剤を注入するための貫通孔4が複数設けられている。この貫通孔4は補強板1の表面10から補強板1の裏面9へ貫通しており、また、補強板1の全面に分散して設けられている。なお、この貫通孔4の分散状態は、均一(貫通孔4どうしが互いに等間隔)であることが好ましい。」と記載されている(下線は当審にて付与)ことからみて、「全面に貫通孔が形成されている支持板」は、剥離装置の技術分野において、本願出願前周知・慣用のものであったといえる。
そうすると、刊行物2においては「全面」と記載されていないものの、上述のように「全面に貫通孔が形成されている支持板」が周知・慣用であることを考慮すれば、上記摘記事項(2-2)(ア)の「多数の貫通孔104」も、「サポートプレート100」の全面に形成されているものと理解するのが相当である。
そして、引用発明において、接着剤の溶解を早めるという一般的な課題のために、「接着剤の溶剤を吹き付けるノズル」を設けるに換えて、その「補強板」を上記周知・慣用の「全面に貫通孔が形成されている支持板」の構成とすることには、当業者において十分動機付けがあり、また、何ら困難性および阻害要因もないといえる。
してみると、引用発明において、刊行物2記載の上記技術事項および周知・慣用の技術を適用して、相違点1に係る補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到するものであるといえる。

イ 相違点2について
そもそも、工作物の角または隅を斜めに削る「面取り」は、例えば物との接触による破損を防止を目的として、種々の技術分野において実施されている慣用の技術であり、引用発明においても、物との接触による破損を防止を目的として、その「補強板」の周端部を面取りすることは、当業者において十分動機付けがあり、また、何ら困難性および阻害要因もないといえる。そして、該「面取り」を実施した場合、その「面取り部」に「保持手段の爪」が必然的に接触し、その結果「面取り部位を把持する」こととなるといえる。
また、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-262465号公報には「また第4図は基板チャック部の拡大図である。基板10の面取り部を両端よりチャック30により押さえつける。」(2頁右下欄6?8行)と記載されているように、基板を取り扱う技術分野において「面取り部位を把持する」ことも周知の技術であるといえる。
してみると、引用発明において、上記周知の技術を適用して、相違点2に係る補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到するものであるといえる。

ウ 効果について
相違点1および2による本願明細書に記載された効果は、刊行物1、2および周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものとはいえない。

エ 小括
したがって、補正発明は、引用発明、刊行物2記載の事項および周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成24年12月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されたものであると認められ、その請求項1に係る発明は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「剥離装置」である。

2 引用刊行物およびその記載事項
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記第2の2(2)に示した刊行物1および刊行物2等である。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の特定事項である「支持板」について、「全面に貫通孔が形成されている」との限定を除いたものである。
そして、引用発明と本願発明とを比較すると、両者は、上記第2の2(3)にて検討した上記(一致点)にて一致し、上記(相違点2)のみにおいて相違し、相違点2については、上記第2の2(4)にて検討したとおりである。
そうすると、本願発明は、引用発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-23 
結審通知日 2014-05-07 
審決日 2014-05-20 
出願番号 特願2008-164664(P2008-164664)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 細川 翔多山本 健晴金丸 治之  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 長屋 陽二郎
久保 克彦
発明の名称 剥離装置および剥離方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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