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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01J
管理番号 1289422
審判番号 不服2013-16239  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-22 
確定日 2014-07-28 
事件の表示 特願2008-526529「マイクロ波プラズマ反応装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月22日国際公開、WO2007/020373、平成21年 2月 5日国内公表、特表2009-504393、請求項の数(32)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2006年7月27日(パリ条約による優先権主張2005年8月15日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成21年7月27日付けで手続補正がされ、平成23年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成24年7月9日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成25年4月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年8月22日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1?32に係る発明は、平成24年7月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものと認められるところ(以下、「本願発明1」?「本願発明32」という。)、本願の請求項1に係る発明(「本願発明1」)は以下のとおりである。

「【請求項1】
マイクロ波プラズマ反応装置であって、
反応チャンバと、
反応チャンバの内部に配置され、ガス入口及びガス出口を有してなるマイクロ波共鳴キャビティと、
マイクロ波放射を共鳴キャビティに導くための導波管であって、収束性のテーパ部分を有してなる導波管と、
共鳴キャビティの内部にプラズマを開始及び持続させるために、共鳴キャビティの内部にマイクロ波放射から電磁定在波を形成するための手段と、
共鳴キャビティの内部の電磁場の中に突出してなる導電部材であって、共鳴キャビティの中に突出してなる交換可能なチップを備えている導電部材と、
前記ガス入口から前記ガス出口へ流れるガスと共に、共鳴キャビティから運ばれたプラズマを収容すべくガス出口から延びてなる導管手段と、を備えていることを特徴とする反応装置。」

第3 原査定の理由の概要

原査定の理由の概要は、本願発明1?9、14?16、18、19、23、24、27?32は、下記の引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本願発明10?13は、下記の引用文献1?2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、さらに、本願発明20は、下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものである。

引用文献1.特開2000-296326号公報
引用文献2.特表平06-508718号公報
引用文献3.特開昭62-155934号公報

第4 当審の判断

1.引用文献に記載された事項

平成25年4月11日付け拒絶査定において引用された引用文献1?3には次の事項が記載されている。

[引用文献1(特開2000-296326号公報)]

1a「【請求項1】有機ハロゲン化合物をプラズマ化し、水と反応させて有機ハロゲン化合物を分解する有機ハロゲン化合物分解装置の運転制御方法において、・・・有機ハロゲン化合物分解装置の運転制御方法。」

1b「【0003】従来から有機ハロゲン化合物の処理方法として報告されているものは、主として高温での熱分解反応を利用したものがあり、この処理方法は更に焼却法とプラズマ法とに大別される。焼却法は、有機ハロゲン化合物を樹脂等の通常の廃棄物と一緒に焼却するものであるのに対し、プラズマ法は、プラズマ中で有機ハロゲン化合物を水蒸気と反応させ、二酸化炭素、塩化水素、フッ化水素に分解するものである。
【0004】さらに、後者のプラズマ法に係る有機ハロゲン化合物分解装置の運転制御方法については、マイクロ波を利用してプラズマを発生させるものが近年開発されている。この分解方法に用いられる分解装置は、アルカリ液を収容する排ガス処理タンクと、開口した下端部をアルカリ液に浸漬した状態で配設される反応管と、該反応管の上方において垂直方向に延在する円筒導波管と、該円筒導波管の内部に配されその下端を貫通して反応管に連通する放電管と、水平方向に延在しその一端部近傍において円筒導波管に連接される方形導波管と、該方形導波管の他端に装着されるマイクロ波発信器等を具備してなる。
【0005】この分解装置では、放電管にフロンガスおよび水蒸気が供給される一方で、マイクロ波発信器から発信されたマイクロ波が方形導波管を介して円筒導波管に伝送される。そして、円筒導波管の内部に形成されたマイクロ波電界で放電を起こし、反応管内でフロンガスを熱プラズマにより分解する。他方、この分解反応により生成された生成ガスは、アルカリ液中を通って中和されるとともに、炭酸ガス等を含む残りのガスは排気ダクトから排出される。

・・・

【0026】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る有機ハロゲン化合物分解装置の運転制御方法に用いられる分解装置について、図1から図5を参照しながら説明する。図1において、水平方向に延びる方形導波管1は、その始端部(右端部)に周波数2.45GHzのマイクロ波を発信するマイクロ波発信器2を備えており、始端側から終端(左)側に向けてマイクロ波を伝送する。
【0027】方形導波管1には、図1に示すように、マイクロ波発信機1その終端部側で反射して始端部側に戻ってきたマイクロ波を吸収することにより反射波の発信側への影響を防止するアイソレータ3と、複数の波動調整部材4を各々出入りさせることにより電波の波動的な不整合量を調整して放電管5に電波を収束させるチューナー6が設けられている。
【0028】この動作を詳細に説明する。マイクロ波発信機2は断面矩形の導波管の一端に置かれマグネトロンを駆動して所定周波数の電磁波を放射する。この電磁波の伝播現象は電磁波に関るマクスウェルの波動方程式を解くことによって特性が把握されるわけであるが、結果的には伝播方向に電界成分を持たない電磁波TE波として伝播する。
【0029】この1次成分TE_(10)の例を方向が交番する矢印で図2の方形導波管の伝播方向に示す。また、方形導波管1の他端部に2重の円筒状導体からなる2重円筒導波管の環状空洞には、導波管1を伝播する電磁波、管端で反射する電磁波の導体9による結合作用により、環状空洞部には、進行方向に電界成分を持つTM波が生じる。この1次成分であるTM_(10)波を同じく図2の環状空洞部に矢印で示す。電磁波の波動の伝播に関る2次以上の高調波に起因する微妙な調整はチューナ4で調整される。アイソレータ3は発信機2に根本的なダメージを及ぼすのを防止している。
【0030】円筒導波管7は、図2に示すように、外側導体8と、それよりも小径の内側導体9とから構成され、方形導波管1の終端部近傍において当該方形導波管1に連通した状態で垂直方向に延びるように接続されている。内側導体9は、方形導波管1の上部に固定された状態で石英製の放電管5を囲みつつ外側導体8の端板8Aに向けて延在し、この延在部分をプローブアンテナ9aとしている。
【0031】放電管5は、内管11と外管12とから構成され、円筒導波管7の中心軸に対して同軸となるように配置されている。また、放電管5の内管11には、着火装置13により内側導体9との間で火花を発生させるテスラコイル14が挿入されている。
【0032】さらに、内管11の先端(下端)は、プローブアンテナ9aの先端よりも所定の距離だけ内方に配されている。
【0033】他方、外管12の先端部は、外側導体8の端板8Aを貫通して銅製の反応管15に連通し、また、外管12の基端側(上端側)は、内側導体9との間に隙間をあけた状態で取り付けられている。符号17は、外側導体8の端板8Aと反応管15との間に露出する外筒12に向けられた光センサ17である。この光センサ17は、光度を検出することにより、プラズマの生成状態を監視するものである。
【0034】そして、前記隙間には、ガス供給管16が、外管12と内管11とにより形成される環状通路の入口側で、接線方向に沿って挿入されている。アルゴンガス(希ガス)、フロンガス(有機ハロゲン化合物)、エアー、および水蒸気は、ガス供給管16を介して放電管5の環状通路に供給される。これらアルゴンガス、フロンガス、およびエアーは、図1に示す電磁弁19a、19b、19cの開閉動作により、それぞれの供給源から選択的にヒータ18へと送られる。」

1c「【0041】しかるに、ヒータ18を通過したフロンガス等と水蒸気は、ミキサー37内で混合された後、ガス供給管16を通って放電管5へと供給される。ミキサー37の内部には、図4に示すように、オリフィス38が設けられ、その開口38aはφ0.1mm?5mmに設定されている。また、この開口38aが臨むミキサー37の出口側端面37Aは、流路断面が漸次縮小するような傾斜面をなしている。
【0042】排ガス処理タンク41は、フロンガスを分解した際に生成される酸性ガス(フッ化水素および塩化水素)を中和して無害化するために設けられたものであり、水に水酸化カルシウムを加えたアルカリ性懸濁液が収容されている。例えば、分解するフロンガスが廃冷蔵庫から回収した冷媒用のフロンR12の場合には、式1に示す分解反応により生成された生成ガスは式2に示す中和反応により無害化される。

・・・

【0045】排ガス処理タンク41の内部には、交換継手44を介して反応管15に接続される吹込管45が、その下端部をアルカリ液に浸漬した状態で垂直方向に延びるように配置されている。この吹込管45の先端部45aは、垂直方向に対して所定の角度傾斜するように形成されている。」

1d「【0065】そして、アルゴンガスの供給開始から一定の間隔をおいて、マイクロ波発信器2からマイクロ波を発信する。マイクロ波は、方形導波管1によりその後端部側に伝送され、さらに円筒導波管7へと伝送される。
【0066】このとき、円筒導波管7内の電界としては、電界強度の大きなTM_(01)モードが形成され、しかも、内側導体9により、方形導波管1内の電界モードと、円筒導波管7内の電界モードとがカップリングされているため、円筒導波管7内の電界は安定している。当然のことながら磁界は電解(「電界」の誤記と認める。)に直交叉する方向に生じている。この振動する電磁界により放電管5に導入されたガスはプラズマ状態に加熱される。
【0067】次に、点火装置13に連結されたテスラコイル14に高電圧を印加し、内側導体9との間に火花放電を発生させ着火させる。このとき、放電管5の内部は、エアーにより水分が除去され、かつ着火し易いアルゴンガスがあらかじめ供給されているため、容易に着火する。次いで、プランジャポンプ25により貯水タンク26から水を吸引し、これをヒータ18に通して生成した水蒸気を放電管5に供給する。」

1e「【0072】このようにして放電管5に供給されたフロンガスにマイクロ波が照射されると、放電管5内には、電子エネルギーが高く、しかも温度が2,000K?6,000Kに高められた熱プラズマが発生する。このとき、放電管5には、フロンガスと水蒸気のみならず、アルゴンガスも同時に供給されているため、プラズマの消失を招くこともない。
【0073】また、内管11の先端が、プローブアンテナ9aの先端よりも所定の距離だけ内方に配置されているため、生成されたプラズマの熱的影響を回避し得て、内管11の溶融破損が防止される。これにより、プラズマ形状の著しい変形をなくして、安定した分解運転が可能になる。
【0074】しかして、熱プラズマの発生により、フロンガスは塩素原子、フッ素原子、および水素原子に解離し易い状態になるため、式1に示すように、水蒸気と反応して容易に分解される。そして、プラズマが安定したら、電磁弁19aを閉にしてアルゴンガスの供給を止める。したがって、長時間にわたるフロンガスの分解時においては、アルゴンの供給は不要であり、アルゴン消費量が低く抑えられる。
【0075】分解反応による生成ガスは、交換継手44および吹込管45を通って排ガス処理タンク41内のアルカリ液中に放出される。ただし、これらの生成ガスは極めて高温であるため、吹込管45に流入するまでの間に、まず、反応管15の下部に付設された冷却器46によって約400℃に冷却される。」

[引用文献2(特表平06-508718号公報)]

2a「第2図は、導波路装置2のなかに、マグネトロンlのほうに向けられた側が定常波の電圧ピークに位置するように組み込まれているプラズマ放電管5を示しており、その際にプラズマ放電管5の壁は(向かい合う側と同様に)電圧ピークにより切断され得るが、電圧ピークは有利には壁の内面にも位置し得る。プラズマ放電管5自体は好ましくは水晶またはアルミニウム酸化物のような絶縁材料から製造されている。導波路装置2の終端12として反射面が設けられている。反射されたエネルギーは同調装置により、反射されて逆向きに導かれる定常波が反射面のほうに向けられたプラズマ放電管5の側において電圧ピークに達するように同調される。直接的な機械的な同調はそれ自体は公知の仕方で同調ピン13および14を用いて移相により行われる。」(第3頁右下欄第5?14行)

[引用文献3(特開昭62-155934号公報)]

3a「尚、上流室3及び第二下流室4bの上下には、図示されるように各々共通フランジを介してガラス窓18が取付けられていて、内部観察ができるようになっている。」(第4頁右上欄第14?17行)

2.引用文献1に記載された発明

引用文献1には、有機ハロゲン化合物である被処理ガスをマイクロ波によりプラズマ化し、水と反応させて有機ハロゲン化合物を分解する有機ハロゲン化合物分解装置(【図1】?【図3】、摘示1a、1b)が開示され、当該装置において、

・円筒導波管7は放電管5を有し、該放電管5は、内管11と外管12とから構成され、円筒導波管7の中心軸に対して同軸となるように配置されており、外管12の先端部は、反応管15に連通しており、外管12の基端側は、外管12と内管11とにより形成される環状通路の入口側であり、ガス供給管16が連通されており、そして、マイクロ波発信器2から円筒導波管7の内部にマイクロ波を発信し、放電管5による放電でプラズマを生成させ、反応管15内で熱プラズマにより被処理ガスを水蒸気と反応させて分解すること(摘示1b)、

・有機ハロゲン化合物分解装置は、マイクロ波を円筒導波管7に導くための方形導波管1を備えており、該方形導波管1は、図1?3の記載を見る限り、収束性のテーパ部分を有していること(【図1】?【図3】、摘示1b)、

・放電管5の内管11には、火花を発生させるテスラコイル14が挿入されていること(摘示1b)、

・反応管15は、図2の記載を見る限り、ガス出口を有し、該ガス出口は交換継手44を介して吹込管45に接続されていること(摘示1c)、

が開示されている。

そして、【図1】?【図3】および摘示1a?1cの事項からみて、引用文献1には次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明1」という。)。

引用発明1:

「有機ハロゲン化合物である被処理ガスをマイクロ波によりプラズマ化し、水と反応させて有機ハロゲン化合物を分解する有機ハロゲン化合物分解装置であって、

放電管5と、該放電管5に連通する反応管15と、

マイクロ波発信器2から発信されたマイクロ波を放電管5に導くための導波管であって、収束性のテーパ部分を有してなる方形導波管1と、

放電管5の内部にあるテスラコイルと、

ガス供給管16からガス出口へ流れるガスと共に、ガス出口から延びてなる吹込管45と、を備えていることを特徴とする分解装置。」

3.本願発明1と引用発明1との対比

本願発明1と引用発明1とを対比するに、引用発明1の「有機ハロゲン化合物である被処理ガスをマイクロ波によりプラズマ化し、水と反応させて有機ハロゲン化合物を分解する有機ハロゲン化合物分解装置」は、本願発明1の「マイクロ波プラズマ反応装置」に相当し、引用発明1の「放電管5と、該放電管5に連通する反応管15」、「マイクロ波発信器2から発信」、「方形導波管1」、「吹込管45」は、それぞれ、本願発明1の「反応チャンバ」、「マイクロ波放射」、「導波管」、「導管手段」に相当する。

してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>

マイクロ波プラズマ反応装置であって、
反応チャンバと、
マイクロ波放射を導くための導波管であって、収束性のテーパ部分を有してなる導波管と、
ガス入口からガス出口へ流れるガスと共に、プラズマを収容すべくガス出口から延びてなる導管手段と、を備えていることを特徴とする反応装置。

<相違点1>

本願発明1は、「反応チャンバの内部に配置され、ガス入口及びガス出口を有してなるマイクロ波共鳴キャビティ」を備えているのに対して、引用発明1は係る事項を発明特定事項としない点。

<相違点2>

本願発明1では、「共鳴キャビティの内部にプラズマを開始及び持続させるために、共鳴キャビティの内部にマイクロ波放射から電磁定在波を形成するための手段」を備えているのに対して、引用発明1は係る事項を発明特定事項としない点。

<相違点3>

本願発明1では、「共鳴キャビティの内部の電磁場の中に突出してなる導電部材であって、共鳴キャビティの中に突出してなる交換可能なチップを備えている導電部材」を備えているのに対して、引用発明1は係る事項を発明特定事項としない点。

4.相違点についての検討

(1)相違点1についての検討

ア. 引用発明1における放電管5は、上記摘示1a、1eによれば、マイクロ波電界中でプラズマを生成させ、被処理ガスをプラズマ化し、反応管15内で水と反応させており、それぞれの作用が放電管5と反応管15という別体で行われており、本願発明1のようなプラズマを生成させ、被処理ガスをプラズマ化し、かつ水と反応させるマイクロ波共鳴キャビティという単体で行われておらず、両者の装置構成は原理上異なるものと言わざるを得ず、また、引用文献2、3に記載されているいずれの発明においても、そのような共鳴キャビティに相当する構成は見当たらない。

イ. してみると、引用発明1の装置の構成上、プラズマの生成と被処理ガスのプラズマ化と、水との反応をそれぞれ別体で行うことが必定であり、本願発明1のようにそれらを単体で行うような設計事項の変更は想到するはずもなく、当業者にとって容易になし得ることは不可能であるといわざるを得ない。

(2)相違点2についての検討

ア. 上記4.(1)で述べたとおり、引用発明1は、いわゆる「共鳴キャビティ」に相当する構成がなく、したがって、「共鳴キャビティの内部にプラズマを開始及び持続させるために、共鳴キャビティの内部にマイクロ波放射から電磁定在波を形成するための手段」についても引用発明1には存在し得ないことになる。

イ.してみると、当該手段を付加する動機も存在し得ないことになり、当業者にとって容易になし得ることは不可能であるといわざるを得ない。

ウ.付言するに、引用発明1の摘示1b、1dによれば、放電管5においては、進行方向に電界成分を持つ「TM波」が生じているが、これは、本願発明1における進行方向に直交する方向に電界成分を持つ「電磁定在波」とは異なるものであり、この点からも当該手段を有することはあり得ないものである。

(3)相違点3についての検討

ア. 上記4.(1)で述べたとおり、引用発明1は、いわゆる「共鳴キャビティ」に相当するものがなく、したがって、「共鳴キャビティの内部の電磁場の中に突出してなる導電部材であって、共鳴キャビティの中に突出してなる交換可能なチップを備えている導電部材」についても引用発明1には存在し得ない。

イ.してみると、当該部材を付加する動機も存在し得ないことになり、当業者にとって容易になし得ることは不可能であるといわざるを得ない。

5.小括

よって、本願発明1は、引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6.本願発明2?32について

本願発明2?32も、上記相違点1?3に係る発明特定事項を備えるものであるから、上記「4.相違点についての検討」と同様の検討により、引用文献1?3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審決日 2014-07-16 
出願番号 特願2008-526529(P2008-526529)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神田 和輝  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 國島 明弘
日比野 隆治
発明の名称 マイクロ波プラズマ反応装置  
代理人 弟子丸 健  
代理人 井野 砂里  
代理人 松下 満  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 辻居 幸一  
代理人 吉野 亮平  
代理人 熊倉 禎男  

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