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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1289530
審判番号 不服2012-24760  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-13 
確定日 2014-07-07 
事件の表示 特願2007-532682「複素環誘導体および治療薬としてのそれらの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月30日国際公開、WO2006/034441、平成20年5月1日国内公表、特表2008-513515〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2005年9月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年9月20日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年8月28日に手続補正書が提出され、平成23年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月16日に意見書、手続補足書及び手続補正書が提出され、同年8月10日付けで拒絶査定がされ、同年12月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成25年3月21日付けで審尋がされ、同年7月22日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年12月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成24年12月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正
平成24年12月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1?18を、補正後の請求項1?13とする補正であり、独立請求項に関する補正として、補正前の請求項1を補正後の請求項1とする補正、補正前の請求項2を補正後の請求項2とする補正、補正前の請求項12を補正後の請求項11とする補正(以下「本件補正1」という。)及び補正前の請求項18を補正後の請求項13とする補正(以下「本件補正2」という。)を含んでいる。

(1)本件補正1
補正前の請求項12である、
「それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩としての、式(Ia)の化合物:


ここで:
xおよびyは、それぞれ別個に、0、1、2または3である;
JおよびKは、それぞれ別個に、NまたはC(R^(10))である;
Vは、直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、または-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)である;
Wは、R^(2)-N(R^(1))C(O)-、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1または2である)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)2N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-またはR^(2)-C(R^(1))_(2)-である;
各R^(1)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択される;
各R^(2)は、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)アルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、C_(3)?C_(12)シクロアルキル、必要に応じて置換したC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換したアリール、非置換C_(7)?C_(19)アラルキル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)ヘテロアリール、および非置換C_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される;
あるいは各R^(2)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(3)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない;
あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)およびR^(5a)は、一緒になって、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(7)およびR^(7a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基であるが、但し、Vが-C(O)-であるとき、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基を形成しないのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)、R^(5a)、R^(6)およびR^(6a)の1個は、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)の1個と一緒になって、直接結合または置換もしくは非置換のアルキレン架橋を形成するのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)、およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(10)は、別個に、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキルまたは置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシから選択される、
但し、R^(3)は、必要に応じて置換したチエニルで置換したフェニルではあり得ない;そしてR^(2)は、WがR^(2)-C(O)N(R^(1))-であるとき、必要に応じて置換したフェニル、必要に応じて置換したイミダゾリル、必要に応じて置換したベンゾイミダゾリル、必要に応じて置換したイソキサゾリル、必要に応じて置換したオキサジアゾリル、必要に応じて置換したチアゾリル、必要に応じて置換したチアジアゾリル、必要に応じて置換したピリジニル、必要に応じて置換したキナゾリニルまたは必要に応じて置換したキノキサリニルではあり得ない、
化合物。」
を、補正後の請求項11である、
「式(I)の化合物、あるいはそれらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体、または立体異性体の混合物、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩であって:


ここで:
xおよびyは、それぞれ、1である;
JおよびKは、それぞれ、Nである;
Vは、-C(O)-である;
Wは、R^(2)-N(R^(1))C(O)-である;
R^(1)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択される;
R^(2)は、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルである;
R^(3)は、1個以上の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであって、該置換基は、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)トリハロアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)トリハロアルコキシ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルスルホニル、-N(R^(11))_(2)、-OC(O)R^(11)、-C(O)OR^(11)、-S(O)_(2)N(R^(11))_(2)、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールシクロアルキルからなる群から選択される;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(11)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルから選択される、
化合物、あるいはそれらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体、または立体異性体の混合物、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩。」
とする補正である(審決注:補正箇所に下線を付した。)。

(2)本件補正2
補正前の請求項18である、
「薬学的に受容可能な賦形剤または担体と、治療有効量の式(I)の化合物とを、それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩として、含有する医薬組成物:


ここで:
xおよびyは、それぞれ別個に、0、1、2または3である;
JおよびKは、それぞれ別個に、NまたはC(R^(10))である;
Vは、直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、または-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)である;
Wは、-CN、R^(2)-N(R^(1))C(O)-、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-O-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1または2である)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)_(2)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-またはR^(2)-C(R^(1))_(2)-である;
各R^(1)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択される;
各R^(2)は、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)アルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、C_(3)?C_(12)シクロアルキル、必要に応じて置換したC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換したアリール、非置換C_(7)?C_(19)アラルキル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)ヘテロアリール、および非置換C_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される;
あるいは各R^(2)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(3)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない;
あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)およびR^(5a)は、一緒になって、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(7)およびR^(7a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基であるが、但し、Vが-C(O)-であるとき、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基を形成しないのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)、R^(5a)、R^(6)およびR^(6a)の1個は、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)の1個と一緒になって、直接結合または置換もしくは非置換のアルキレン架橋を形成するのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)、およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(10)は、別個に、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキルまたは置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシから選択される、
但し、R^(3)は、必要に応じて置換したチエニルで置換したフェニルではあり得ない;そしてR^(2)は、WがR^(2)-C(O)N(R^(1))-であるとき、必要に応じて置換したフェニル、必要に応じて置換したイミダゾリル、必要に応じて置換したベンゾイミダゾリル、必要に応じて置換したイソキサゾリル、必要に応じて置換したオキサジアゾリル、必要に応じて置換したチアゾリル、必要に応じて置換したチアジアゾリル、必要に応じて置換したピリジニル、必要に応じて置換したキナゾリニルまたは必要に応じて置換したキノキサリニルではあり得ない、
組成物。」
を、補正後の請求項13である、
「薬学的に受容可能な賦形剤または担体と、治療有効量の式(I)の化合物、あるいはそれらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体、または立体異性体の混合物、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩とを含有する医薬組成物であって:


ここで:
xおよびyは、それぞれ、1である;
JおよびKは、それぞれ、Nである;
Vは、-C(O)-である;
Wは、R^(2)-N(R^(1))C(O)-である;
R^(1)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択される;
R^(2)は、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルである;
R^(3)は、1個以上の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであって、該置換基は、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)トリハロアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)トリハロアルコキシ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルスルホニル、-N(R^(11))_(2)、-OC(O)R^(11)、-C(O)OR^(11)、-S(O)_(2)N(R^(11))_(2)、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールシクロアルキルからなる群から選択される;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(11)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルから選択される、
医薬組成物。」
とする補正である(審決注:補正箇所に下線を付した。)。

2 補正の適否

(1)本件補正1は、請求項12の、化合物に係る発明について、
(i)補正前の(Ia)の化学式で表される式(Ia)の化合物を、補正後の(I)の化学式で表される式(I)の化合物に補正し、
(ii)「それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩としての、式(Ia)の化合物」の文言を「式(I)の化合物、あるいはそれらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体、または立体異性体の混合物、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩」に補正する、
ものであるところ、
(i)は、(1a)の化学式と(1)の化学式の表記が共通であるので、置換基R^(3)の範囲をみると、補正前は、
「R^(3)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない」、
「あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る」、
及び
「但し、R^(3)は、必要に応じて置換したチエニルで置換したフェニルではあり得ない」
と特定されるものであったのが、補正後は、
「R^(3)は、1個以上の置換基で必要に応じて置換されたフェニルであって、該置換基は、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)トリハロアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)トリハロアルコキシ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルスルホニル、-N(R^(11))_(2)、-OC(O)R^(11)、-C(O)OR^(11)、-S(O)_(2)N(R^(11))_(2)、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールシクロアルキルからなる群から選択される」
及び
「各R^(11)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルから選択される」
と特定されるものとなる。
すなわち、補正前の式(1a)の化合物からは排除されていた、R^(3)がチエニルで置換したフェニルである化合物が、「チエニル」はヘテロアリールの一種であるから(技術常識であり、この出願の明細書の段落【0073】の「ヘテロアリール」の定義中にも「チオフェニル」すなわちチエニルが挙げられている。)、補正後の式(I)の化合物には含まれることになる。
そうすると、本件補正1は、補正前の請求項12に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、補正前の不明瞭な記載が補正により明瞭になるというものではないから、同条同項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものでもない。さらに、同第1号に掲げる請求項の削除及び同第3号に掲げる誤記の訂正のいずれを目的とするものでもない。

(2)本件補正2は、請求項18の、医薬組成物に係る発明について、
(i)補正前の(I)の化学式で表される式(I)の化合物を、補正後の(I)の化学式で表される式(I)の化合物に補正し、
(ii)「式(I)の化合物とを、それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩として、含有する医薬組成物:・・・組成物」の文言を「式(I)の化合物、あるいはそれらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体、または立体異性体の混合物、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩とを含有する医薬組成物であって:・・・医薬組成物」に補正する、
ものであるところ、
(i)は、置換基R^(3)の範囲について、上記(1)と同様であって、補正前の式(I)の化合物からは排除されていた、R^(3)がチエニルで置換したフェニルである化合物が、補正後の式(I)の化合物には含まれることになる。
そうすると、本件補正2は、補正前の請求項18に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、補正前の不明瞭な記載が補正により明瞭になるというものではないから、同条同項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的とするものでもない。さらに、同第1号に掲げる請求項の削除及び同第3号に掲げる誤記の訂正のいずれを目的とするものでもない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正1及び本件補正2は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、その余について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
平成24年12月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成24年4月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、独立請求項である請求項1、請求項2、請求項12及び請求項18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明12」及び「本願発明18」といい、区別せずに「本願発明」ということがある。他の請求項についても同様に「本願発明3」などという。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ヒトステアロイル-CoA不飽和化酵素(hSCD)活性を阻害するための組成物であって、式(I)の化合物を、それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、またはそれらの薬学的に受容可能な塩として、含む、組成物であって:


ここで:
xおよびyは、それぞれ別個に、0、1、2または3である;
JおよびKは、それぞれ別個に、NまたはC(R^(10))である;
Vは、直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、または-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)である;
Wは、-CN、R^(2)-N(R^(1))C(O)-、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-O-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1または2である)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)_(2)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-またはR^(2)-C(R^(1))_(2)-である;
各R^(1)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは
非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロア
ルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択
される;
各R^(2)は、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリール、および置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される;
あるいは各R^(2)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(3)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない;
あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)およびR^(5a)は、一緒になって、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(7)およびR^(7a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基であるが、但し、Vが-C(O)-であるとき、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基を形成しないのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)、R^(5a)、R^(6)およびR^(6a)の1個は、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)の1個と一緒になって、直接結合または置換もしくは非置換のアルキレン架橋を形成するのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)、およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(10)は、別個に、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキルまたは置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシから選択される、
組成物。」
「【請求項2】哺乳動物におけるステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患または病態の治療における使用のための医薬組成物であって、ここで、該医薬組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤と式(I)の化合物を、それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩として含み、ここで該疾患または病態が、II型糖尿病、糖耐性障害、インシュリン耐性、肥満、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、アクネ、異脂肪血症およびメタボリックシンドロームならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される:


ここで:
xおよびyは、それぞれ別個に、0、1、2または3である;
JおよびKは、それぞれ別個に、NまたはC(R^(10))である;
Vは、直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、または-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)である;
Wは、-CN、R^(2)-N(R^(1))C(O)-、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-O-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1または2である)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)_(2)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-またはR^(2)-C(R^(1))_(2)-である;
各R^(1)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択される;
各R^(2)は、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリール、および置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される;
あるいは各R^(2)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(3)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、C_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない;
あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)およびR^(5a)は、一緒になって、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(7)およびR^(7a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基であるが、但し、Vが-C(O)-であるとき、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基を形成しないのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)、R^(5a)、R^(6)およびR^(6a)の1個は、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)の1個と一緒になって、直接結合または置換もしくは非置換のアルキレン架橋を形成するのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)、およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(10)は、別個に、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキルまたは置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシから選択される、
医薬組成物。」
「【請求項12】それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩としての、式(Ia)の化合物:


ここで:
xおよびyは、それぞれ別個に、0、1、2または3である;
JおよびKは、それぞれ別個に、NまたはC(R^(10))である;
Vは、直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、または-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)である;
Wは、R^(2)-N(R^(1))C(O)-、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1または2である)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)2N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-またはR^(2)-C(R^(1))_(2)-である;
各R^(1)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択される;
各R^(2)は、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)アルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、C_(3)?C_(12)シクロアルキル、必要に応じて置換したC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換したアリール、非置換C_(7)?C_(19)アラルキル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)ヘテロアリール、および非置換C_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される;
あるいは各R^(2)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(3)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない;
あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)およびR^(5a)は、一緒になって、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(7)およびR^(7a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基であるが、但し、Vが-C(O)-であるとき、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基を形成しないのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)、R^(5a)、R^(6)およびR^(6a)の1個は、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)の1個と一緒になって、直接結合または置換もしくは非置換のアルキレン架橋を形成するのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)、およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(10)は、別個に、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキルまたは置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシから選択される、
但し、R^(3)は、必要に応じて置換したチエニルで置換したフェニルではあり得ない;そしてR^(2)は、WがR^(2)-C(O)N(R^(1))-であるとき、必要に応じて置換したフェニル、必要に応じて置換したイミダゾリル、必要に応じて置換したベンゾイミダゾリル、必要に応じて置換したイソキサゾリル、必要に応じて置換したオキサジアゾリル、必要に応じて置換したチアゾリル、必要に応じて置換したチアジアゾリル、必要に応じて置換したピリジニル、必要に応じて置換したキナゾリニルまたは必要に応じて置換したキノキサリニルではあり得ない、
化合物。」
「【請求項18】薬学的に受容可能な賦形剤または担体と、治療有効量の式(I)の化合物とを、それらの立体異性体、鏡像異性体または互変異性体として、立体異性体の混合物として、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩として、含有する医薬組成物:


ここで:
xおよびyは、それぞれ別個に、0、1、2または3である;
JおよびKは、それぞれ別個に、NまたはC(R^(10))である;
Vは、直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、または-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)である;
Wは、-CN、R^(2)-N(R^(1))C(O)-、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-O-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1または2である)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1または2である)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)_(2)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-またはR^(2)-C(R^(1))_(2)-である;
各R^(1)は、別個に、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキルおよび置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキルからなる群から選択される;
各R^(2)は、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)アルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、必要に応じて置換したC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、C_(3)?C_(12)シクロアルキル、必要に応じて置換したC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換したアリール、非置換C_(7)?C_(19)アラルキル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、必要に応じて置換したC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)ヘテロアリール、および非置換C_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される;
あるいは各R^(2)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(3)は、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のC_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない;
あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;
R^(4)は、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシ、置換もしくは非置換のハロアルキル、シアノ、ニトロまたは-N(R^(9))_(2)である;
R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)およびR^(5a)は、一緒になって、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(7)およびR^(7a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基であるが、但し、Vが-C(O)-であるとき、R^(6)およびR^(6a)は、一緒になって、またはR^(8)およびR^(8a)は、一緒になって、オキソ基を形成しないのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
あるいはR^(5)、R^(5a)、R^(6)およびR^(6a)の1個は、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)の1個と一緒になって、直接結合または置換もしくは非置換のアルキレン架橋を形成するのに対して、残りのR^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)、およびR^(8a)は、それぞれ別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(3)アルキルから選択される;
各R^(9)は、別個に、水素または置換もしくは非置換のC_(1)?C_(6)アルキルから選択される;そして
各R^(10)は、別個に、水素、フルオロ、クロロ、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキルまたは置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルコキシから選択される、
但し、R^(3)は、必要に応じて置換したチエニルで置換したフェニルではあり得ない;そしてR^(2)は、WがR^(2)-C(O)N(R^(1))-であるとき、必要に応じて置換したフェニル、必要に応じて置換したイミダゾリル、必要に応じて置換したベンゾイミダゾリル、必要に応じて置換したイソキサゾリル、必要に応じて置換したオキサジアゾリル、必要に応じて置換したチアゾリル、必要に応じて置換したチアジアゾリル、必要に応じて置換したピリジニル、必要に応じて置換したキナゾリニルまたは必要に応じて置換したキノキサリニルではあり得ない、
組成物。」

第4 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、平成23年11月14日付けの拒絶理由通知における理由2?6であり、その理由2、理由4及び理由5は、以下のとおりである。
その理由2は、この出願の請求項1?19に係る発明は、その出願前(優先日前)に頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないという理由を含む。その引用文献1は、特開昭59-175472号公報(以下「刊行物1」という。)である。本願発明12は、拒絶理由が通知された請求項13に係る発明に対応する。そして、刊行物1に記載された発明であることを理由とする拒絶査定の対象に、本願発明12が含まれている。
その理由4は、発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないというものであり、以下の理由からなる。
(i)請求項1?12、19に係る発明に関連して「明細書に特定の薬理試験の結果である薬理データまたはそれと同視できる程度の記載をして医薬として有用であることを裏付ける必要がある」、「当業者が・・・発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない」と説示した理由(以下「理由4(i)」という。)であり、拒絶査定では、本願発明1?11、18に関連した発明の詳細な説明の不備が、拒絶査定の理由とされている。上記第3で示した本願発明1、2及び18は、それぞれ、拒絶理由通知で指摘された請求項1、4、19に対応する。
(ii)請求項1?11、13?16、19に係る発明に関連して「マーカッシュで表される化合物全般にわたり合成でき使用できると一般に認識できる程度の試験結果、又は明細書中での論理的な説明が必要である」、「当業者が・・・発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない」と説示した理由(以下「理由4(ii)」という。)であり、拒絶査定では、本願発明1?10、12?15、18に関連した発明の詳細な説明の不備が、拒絶査定の理由とされている。上記第3で示した本願発明1、2、12及び18は、それぞれ、拒絶理由通知で指摘された請求項1、4、13、19に対応する。
このように、本願発明1、2及び18に関連して理由4(i)及び理由4(ii)が原査定の理由とされている。
その理由5は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものであり、以下の理由からなる。
(i)請求項1?12、19に係る発明に関連して「明細書に特定の薬理試験の結果である薬理データまたはそれと同視できる程度の記載をして医薬として有用であることを裏付ける必要がある」、「本願・・・発明が、本願の発明の詳細な説明に記載したものとはいえない」と説示した理由(以下「理由5(i)」という。)であり、拒絶査定では、本願発明1?11、18に関連した特許請求の範囲の不備が、拒絶査定の理由とされている。上記第3で示した本願発明1、2及び18は、それぞれ、拒絶理由通知で指摘された請求項1、4、19に対応する。
(ii)請求項1?11、13?16、19に係る発明に関連して「マーカッシュで表される化合物全般にわたり合成でき使用できると一般に認識できる程度の試験結果、又は明細書中での論理的な説明が必要である」、「本願・・・発明が、本願の発明の詳細な説明に記載したものとはいえない」と説示した理由(以下「理由5(ii)」という。)であり、拒絶査定では、本願発明1?10、12?15、18に関連した特許請求の範囲の不備が、拒絶査定の理由とされている。上記第3で示した本願発明1、2、12及び18は、それぞれ、拒絶理由通知で指摘された請求項1、4、13、19に対応する。
このように、本願発明1、2及び18に関連して理由5(i)及び理由5(ii)が原査定の理由とされている。

第5 当審の判断

1 理由2について

(1)刊行物
刊行物1:特開昭59-175472号公報

(2)刊行物の記載事項
(1a)「(1)式

〔式中,R_(1)およびR_(2)は、独立に、所望により置換された脂肪族、ヘテロアリールまたはアリール基を示すか、またはR_(1)は水素を示してもよく、R_(3)およびR_(4)は水素、ハロゲン、ニトロ、所望により置換された脂肪族基であって所望によりS、O、SO若しくはSO_(2)を介して結合する基、または所望により置換されたフエニルもしくはフエノキシ、XはNまたはCHを示す〕
で示される化合物の遊離形または酸付加塩形。
・・・・・・・・・・・・・・・
(4)式(II)


(式中、R_(1)、R_(3)、R4_(お)よびXは特許請求の範囲第1項記載の意味)
で示される化合物をアシル化し、得られる化合物を遊離形または酸付加塩形で回収することからなる、特許請求の範囲第1項記載の化合物の製法。」(1?2頁、特許請求の範囲第1項及び第4項)
(1b)「実施例1
N-ピバロイル-1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エチルアミンの製造。
1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エチルアミン1gをピリジンに溶解し、ピバロイルクロライド470mgおよび必要に応じて4-ジメチルアミノピリジン1当量と混合し、室温で反応が完結するまで(約1時間)攪拌する。溶媒を減圧下回転留去し、残渣を水とメチレンクロライド間に分配し、有機層を洗浄、乾燥、回転蒸発する。粗製標記化合物をイソブチルメチルケトン/ジイソプロピルエー
テルから結晶化して精製し、無色結晶(mp84-88℃)を得る。
実施例2
N-〔4-(4-クロロフエニル)ベンゾイル〕-1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エチルアミンの製造。
4-(4-クロロフエニル)安息香酸ピリジル-2-チオエステル1.5gおよび1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エチルアミン1.26gをジメチルホルムアミド50mlと反応が完結するまで(約1時間)室温で攪拌する。溶媒を減圧留去し、残渣をメチレンクロライドとNaHCO3水溶液間に分配する。有機層を洗浄、乾燥、減圧濃縮し、残渣をエタノールから結晶化して、無色結晶(mp246-250℃)を得る。
実施例1および2と同様にして、下記化合物を得る(なお、表中Exは実施例番号を示す。)
・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・
出発原料は下記方法によつて得られる。
A)1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エチルアミン(実施例1、2、・・・41、45の原料)
1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)クロロエタン17.6gをリチウムアジド3.8gとジメチルホルムアミド中、90℃で2時間攪拌する。次いで水を加え、溶媒の大部分を減圧留去し、残渣を水とメチレンクロライド間に分配し、有機層を洗浄、乾燥、減圧濃縮する。
粗1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)アジドエタン・・・を、水素化装置中、Pd/C(10%)1gと溶媒として氷酢酸を用い常圧で水素化する。溶媒の大部分を除き、残渣を水で希釈する。酸性の水層をメチレンクロライドで洗い、水酸化ナトリウム溶液でアルカリ性にし、再びメチレンクロライドで抽出する。有機層を洗浄、乾燥、濃縮し、ジ塩酸塩に導いて標記化合物の結晶を得る(エタノール/エーテルから、mp227-240℃)。
NMR:・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
F)1-(4-カルボキシフエニル)-4-ジメチルカルバモイルピペラジン(実施例35の原料)
a)1-(4-エトキシカルボニルフエニル)-4-ジメチルカルバモイルピペラジン。
・・・・・・・・・・・・・・・
b)1-(4-カルボキシフエニル)-4-ジメチルカルバモイルピペラジン
1-(4-エトキシカルボニルフエニル)-4-ジメチルカルバモイルピペラジン2.4gを、エタノール70ml、水8mlおよびNaOH0.8gの混合物中、3時間還流する。反応混合物を酸性にし、メチレンクロライドで抽出し、有機層を乾燥、濃縮し、得られた粗製標記化合物をそのまま次工程に用いる。
G)4-ベンジル-1-(4-カルボキシフエニル)ピペラジン(実施例34の原料)
a)4-ベンジル-1-(4-エトキシカルボニルフエニル)ピペラジン。
1-(4-エトキシカルボニルフエニル)ピペラジン5g、K_(2)CO_(3) 5.9gおよびベンジルブロマイド3.6gを、ジメチルホルムアミド中、100℃1時間加熱する。溶媒を減圧留去し、残渣をメチレンクロライドとNaHCO_(3) 水溶液間に分配する。有機層を洗浄、乾燥、回転濃縮し、得られた粗製標記化合物をそのまま次工程に用いる。・・・
b)4-ベンジル-1-(4-カルボキシフエニル)ピペラジン。
F)b)と同様にして得る。mp221-229℃
H)4-ベンゾイル-1-(4-カルボキシフエニル)ピペラジン(実施例41の原料)。
G)と同様にして得る。
a)4-ベンゾイル-1-(4-エトキシカルボニルフエニル)ピペラジン。
mp127-132℃
b)4-ベンゾイル-1-(4-カルボニルフエニル)ピペラジン。
直接次工程に使用。」(6頁左下欄12行?9頁右下欄10行)

(3)刊行物に記載された発明
刊行物1には、特許請求の範囲第1項に式

で示された化合物に該当する化合物について、その実施例1及び2において具体的に化合物が合成され、実施例46までについても、同様にして化合物を得るとされており、出発原料の合成や、生成物の融点も示されているから、実施例41で合成された、特許請求の範囲に示された一般式においてR_(1)がH、R_(2)が


であり、R_(3)が2位のCl、R_(4)が4位のCl、XがCHである、
「以下の化学構造式で示される化合物


の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているということができる。
なお、刊行物1の実施例1及び2に倣って化合物名で表示すると、「N-〔4-{(4-ベンゾイル)ピペラジン-1-イル}ベンゾイル〕-1-(2,4-ジクロロフエニル)-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エチルアミン」である。

(4)対比・判断
本願発明12と各引用発明とを対比する。
引用発明の化合物を本願発明の式(1a)に当てはめると、xが「1」、yが「1」、Jが「N」、Kが「N」、Vが「-C(O)-」、Wが「


」、R^(3)が「フェニル」、R^(4)が「水素」、R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)及びR^(8a)が「水素」であることに相当するから、WとR^(3)以外は、本願発明12における置換基及び構造部分の選択肢として明示されたものと同一である。WとR^(3)についても、以下のとおり、本願発明12における置換基及び構造部分の選択肢に該当し同一である。
本願発明12のR^(3)は「置換もしくは非置換のアリール」を含み、「アリール」には「フェニル」が含まれる(この出願の明細書(以下「本願明細書」という。補正はされていない。)の段落【0053】も参照)。引用発明の化合物における「フェニル」は、これに相当する。
本願発明12のWは「R^(2)-N(R^(1))C(O)-」を含み、そのR^(1)は「水素」を含み、そのR^(2)は「必要に応じて置換したC_(1)?C_(12)アルキル」を含む。本願明細書の段落【0028】には「アルキル基は、必要に応じて、以下の基の1個で置換され得る:・・・アリール、・・・ヘテロアリール、・・・」と記載され、「アリール」には「フェニル」が含まれ(本願明細書の段落【0053】)、また、アリールは「必要に応じて、1個またはそれ以上の置換基で置換されており、これらの置換基は、・・・ハロ、・・・からなる群から選択され」とされ(同段落【0053】)、「ハロ」には「クロロ」が含まれ(同段落【0066】)、そして、「ヘテロアリール」には「イミダゾリル」が含まれる(同段落【0073】)。引用発明の化合物における




は、これに相当する。
したがって、本願発明12の化合物と引用発明の化合物とは同一の化合物である。

(5)理由2のまとめ
以上のとおり、本願発明12は、本願の優先日前に頒布された刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 理由4について
本願発明2及び18は医薬組成物に関する発明であるのに対し、本願発明1は医薬組成物とは特定されない組成物に関する発明であるので、本願発明2、18、1の順に、関連する理由4について、理由4(i)及び理由4(ii)をまとめて検討する。

(1)本願発明2に関連する理由4について

ア 発明の詳細な説明の記載

(ア)出願時の技術水準及び発明の課題についての記載

a 本願明細書の段落【0001】?【0008】に、以下のように記載されている。
「【0001】(発明の分野)
本発明は、一般的に、複素環誘導体のようなステアロイル-CoA不飽和化酵素のインヒビター、ならびにステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)(好ましくは、SCD1)によって媒介される疾患(特に、高い脂質レベルに関連する疾患、心臓血管疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなど)を含む、種々のヒトの疾患の処置および/または予防におけるこのような化合物の使用の分野に関する。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0007】現在、SCD活性が一般的なヒトの疾患プロセスに直接かかわっているという証拠に、説得力があるので、SCD酵素活性の低分子インヒビターが存在しないことは、大きな科学的および医学的な失望である・・・
【0008】本発明は、SCD活性を調節すること、および脂質レベル(特に、血漿脂質レベル)を制御することにおいて有用であり、かつSCD媒介性疾患(例えば、異脂肪血症および脂質の代謝に関する疾患(特に脂質レベルの上昇に関する疾患)、心血管疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなど)の処置において有用な、新しい種類の化合物を提示することによって、上記課題を解決する。」

b 以上によれば、この出願の発明の課題は、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとして有用な化合物を提供し、血漿脂質レベルの制御、及びSCDによって媒介される疾患の処置に有用な、医薬組成物を提供することであると認められる。

(イ)式(I)の化合物の具体例の記載

a 本願明細書の段落【0111】?【0112】に化合物名と化学構造式が、段落【0129】に化合物名が、及び段落【0181】?【0189】の実施例1?実施例3.1の合成例に化合物名が、以下のように記載されている。
「【0111】・・・次式の化合物は、本明細書中では、N-(2-シクロプロピルエチル)-4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)ピペラジン-1-イル]ベンズアミドと命名されている:
【0112】


「【0129】この実施態様のうち、特定の実施態様は、前記式(Ic)の化合物が、以下からなる群から選択される化合物である、本発明の方法:
4-[4-(2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)-ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリル;および
4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)-ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリル。」
「【0181】(実施例1)
(N-(2-シクロプロピルエチル)-4-[4-(2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)ピペラジン-1-イル]ベンズアミドの合成)
・・・・・・・・・・・・・・・
【0183】(実施例2)
(N-(2-シクロプロピルエチル)-4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]ベンズアミドの合成)
・・・・・・・・・・・・・・・
【01888】(実施例3)
(4-[4-(2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリルの合成)
・・・・・・・・・・・・・・・
【0189】(実施例3.1)
(4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)-ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリルの合成)
・・・・・・・・・・・・・・・」

b 実施例1?実施例3.1の化合物は、化学構造式で表すと、それぞれ以下のとおりである。
(実施例1)

(実施例2)

(実施例3)

(実施例3.1)

段落【0111】?【0112】及び【0129】に示された化合物は、上記実施例2、実施例3、実施例3.1の化合物と同じであるから、本願明細書の発明の詳細な説明に式(I)の化合物が化合物名又は化学構造式で具体的に記載されているのは、この4個のみである。この4個の化合物について、後記(キ)aで摘示する実施例1?実施例3.1に、合成実施例と同定データ(^(1)H NMR、^(13)C NMR、MS)が示されている。

(ウ)式(I)の化合物の合成スキームについての記載

a 本願明細書の段落【0164】?【0176】に、以下のように記載されている。
「【0164】(本発明の化合物の調製)
・・・・・・・・・・・・・・・
【0165】当業者は、下記のプロセスにおいて、中間体化合物の官能基が適当な保護基で保護される必要があり得ることを理解する。このような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が挙げられる。ヒドロキシに適当な保護基には、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたぱトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが挙げられる。アミノ、アミジノおよびグアニジノに適当な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。メルカプトに適当な保護基には、-C(O)-R”(ここで、R”は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが挙げられる。カルボン酸に適当な保護基には、アルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルが挙げられる。
【0166】保護基は、標準的な技術(これらは、当業者に周知であり、本明細書中で記述されている)に従って、付加または除去され得る。
【0167】保護基の使用は、Green、T. W. and P. G. M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis(1999), 3rd Ed., Wileyで詳細に記載されている。この保護基はまた、高分子樹脂(例えば、Wang樹脂または2-クロロトリチル-クロライド樹脂)であり得る。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0169】以下の反応スキームは、本発明の化合物を製造する方法を図示している。当業者は、当業者に公知の方法または類似の方法により、これらの化合物を製造できることが分かる。一般に、出発成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis, Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCI、およびFluorochem USAなどのような業者から得られるか、または当業者に公知の原料(例えば、Advanced Organic Chemistry:Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition(Wiley, December 2000)を参照のこと)に従って合成され得るか、あるいは本発明で記述したようにして調製され得る。
【0170】以下の反応スキームにおいて、R^(2)、R^(3)、R^(4)、R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)、R^(8a)およびVは、特に定義しない限り、本明細書中で定義したとおりである。Zは、ClまたはBrから選択される。PGは、保護基(例えば、BOC、ベンジル基など)を表わす。
【0171】・・・
一般に、本発明の化合物(ここで、JおよびKは、両方とも、Nであり、Vは、-C(O)-であり、そしてWは、-N(R^(1))C(O)-である)は、反応スキーム1で下記の一般手順に従って、合成できる:
(反応スキーム1)
【0172】

上記反応スキームのための出発物質は、市販されているか、あるいは、当業者に公知の方法または本明細書中で開示された方法に従って、調製できる。一般に、本発明の化合物は、以下のようにして、上記反応スキームにおいて、調製される:
塩基(例えば、トリエチルアミンがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、塩化ハロ(Z=BrまたはCl)ベンゾイル化合物101と適当なアミンとを反応させると、アミド102が得られる。塩基(例えば、トリエチルアミンがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、保護ピペラジン103を適当な塩化アシルで処理すると、アミド化合物104が得られる。化合物104中のの保護基(これは、一般に、t-ブチルオキシカルボニル基である)は、Green, T. W. and P. G. M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis(1999), 3rd Ed., Wileyで記載された酸性条件を使用することにより、除去でき、所望生成物105が得られる。このバックウォルド/ハートウィグ(Buchwald/Hartwig)アミノ化反応は、遷移金属触媒(例えば、酢酸パラジウムまたはトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0))、塩基(例えば、ナトリウムまたはカリウム第三級ブトキシド)の存在下にて、溶媒(例えば、トルエン、DMFまたはジオキサンがあるが、これに限定されない)中で、ハロ化合物102とピペラジン化合物105とを反応させることにより、実行でき、最終生成物106を形成する(例えば、Buchwald, S. L. ら J. Org. Chem. 2000, 65, 1158を参照のこと)。
【0173】一般に、本発明の化合物(ここで、JおよびKは、両方とも、Nであり、Vは、-C(O)-であり、Wは、-N(R1)C(O)-であり、R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)およびR^(8a)は、それぞれ、水素であり、xおよびyは、それぞれ、1である)は、反応スキーム2で記述した一般手順に従って、合成できる。
【0174】(反応スキーム2)
【0175】

上記反応スキームのための出発物質は、市販されているか、あるいは、当業者に公知の方法または本明細書中で開示された方法に従って、調製できる。一般に、本発明の化合物は、以下のようにして、上記反応スキームにおいて、調製される:
塩基(例えば、炭酸カリウムがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、クロロベンゼンがあるが、これに限定されない)中で、アニリノ化合物107とビス-(2-クロロエチル)アミン塩酸塩とを反応させると、ピペラジン生成物108が得られる。塩基(例えば、トリエチルアミンがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、108を適当な塩化アシルで処理すると、アミド化合物109が得られる。シアン化ナトリウムの存在下にて、あるいは、エステル110を塩基(例えば、水酸化リチウムがあるが、これに限定されない)で加水分解した後、その酸または塩化アシル誘導体を経由して、エステル109を適当なアミン(過剰量)と直接反応させることにより、最終生成物110を得ることができる。酸を使って、この反応は、塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン、1-ヒドロキシル-1H-ベンゾトリアゾールおよび1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、実行される。塩化アシルを使って、この反応は、塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、実行される。
【0176】当業者は、上で開示した一般的な技術に従って、本発明の化合物を調製できるものの、本発明の化合物の合成技術に関するさらに具体的な詳細は、便宜上、本明細書中の他の箇所で提供されている。この場合もやはり、合成において使用される全ての試薬および反応条件は、当業者に公知であり、通常の業者から入手できる。」

b 以上のように、式(I)の化合物であって、JがN、KがN、Vが-C(O)-、WがR^(2)-N(R^(1))C(O)-である化合物の合成のための反応スキーム1と、上記化合物のうち、さらにxが1、yが1、R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)及びR^(8a)が水素である化合物のための反応スキーム2について、一般的な記載がされている。
しかし、JやKがC(R^(10))である化合物、WがR^(2)-N(R^(1))C(O)-以外の-CN、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-O-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1又は2)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1又は2)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1又は2)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)_(2)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-又はR^(2)-C(R^(1))_(2)-である化合物、また、Vが-C(O)-以外の直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1又は2)、又は-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1又は2)である化合物については、一般的な反応スキームの記載は、されていない。

(エ)式(I)の化合物の立体異性体、鏡像異性体、互変異性体、薬学的に受容可能な塩、及び薬学的に受容可能な賦形剤についての記載

a 本願明細書の段落【0107】?【0109】、【0099】?【0101】、【0098】、【0160】に、以下のように記載されている。
「【0107】本発明の化合物、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩は、1個またはそれ以上の不斉中心を含み得、それゆえ、鏡像異性体、ジアステレオマー、および他の立体異性形状(これは、アミノ酸について、絶対的な原子の空間的配置の点で、(R)または(S)として、あるいは(D)または(L)として、定義され得る)を生じ得る。本発明は、全てのこのような可能な異性体だけでなく、それらのラセミ形状および光学活性形状を含むことを意味する。光学活性(+)および(-)、(R)および(S)、または(D)および(L)異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製され得るか、あるいは、通常の技術(例えば、キラルカラムを使用するHPLC)を使用して、分割され得る。本明細書中で記述した化合物がオレフィン性二重結合または他の幾何学的非対称中心を含みとき、特に明記しない限り、これらの化合物は、EおよびZの両方の幾何異性体を含むと解釈される。同様に、全ての互変異性形状もまた、含まれると解釈される。
【0108】「立体異性体」とは、異なる三次元構造(これらは、交換不可能である)を有すること以外は、同じ結合により結合された同じ原子から構成された化合物を意味する。本発明は、種々の立体異性体およびそれらの混合物を考慮しており、これらには、「鏡像異性体」が挙げられ、これは、分子が互いに重ね合わせ不可能な鏡像である2種の立体異性体を意味する。
【0109】「互変異性体」とは、分子のある原子から同じ分子の他の原子へのプロトンのシフトを意味する。本発明は、任意の該化合物の互変異性体を包含する。」
「【0099】「薬学的に受容可能な塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が挙げられる。
【0100】「薬学的に受容可能な酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持する塩を意味し、これらは、生物学的あるいはそれ以外で有害ではなく、そして無機酸(これらには、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などがあるが、これらに限定されない)、および有機酸(これらには、例えば、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ショウノウ酸、カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタリン(galactaric)酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソ-グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシレン酸などがあるが、これらに限定されない)を使って形成される。
【0101】「薬学的に受容可能な塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持する塩を意味し、これらは、生物学的あるいはそれ以外で有害ではない。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に付加することから調製される。無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい無機塩には、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩がある。有機塩基から誘導された塩には、以下の塩が挙げられるが、これらに限定されない:第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン(これには、天然に存在する置換アミンが挙げられる)、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂(例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、デアノール、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、ベネタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが。特に好ましい有機塩基には、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインがある。」
「【0098】「薬学的に受容可能な担体、希釈液または賦形剤」には、米国食品医薬品局により、ヒトまたは家畜において使用するのに許容されると認可された任意の補助剤、担体、賦形剤、グライダント、甘味剤、希釈液、防腐剤、染料/着色剤、調味料、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。」
「【0160】本明細書中の有用な薬学的組成物はまた、それ自体、この組成物を受容する個体に有害な抗体の生成を誘導しない任意の薬学的因子を含み、かつ過度の毒性を伴わずに投与され得る薬学的に受容可能なキャリア(任意の適切な希釈剤または賦形剤が挙げられる)を含む。薬学的に受容可能なキャリアとしては、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールなどのような液体が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、および他の賦形剤の完全な考察は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub. Co., N. J. current edition)に提示される。」

b 以上によれば、本願発明の医薬組成物は、式(I)の化合物の立体異性体、鏡像異性体、互変異性体とは、不斉中心の周りの配置がR配置かZ配置かの異性体を含み、二重結合に関してE-異性体とZ-異性体とを含むと認められる。また、薬学的に受容可能な塩、薬学的に受容可能な賦形剤については、医薬の技術分野において周知の任意のものが使用できるものと認められる。また、賦形剤は担体(キャリア)の一種と位置づけることができるものである。

(オ)本願発明の医薬組成物の適用疾患、用量、投与方法についての記載

a 本願明細書の段落【0132】?【0134】、【0136】?【0148】、【0149】、【0161】、【0162】に、以下のように記載されている。
「【0132】(本発明化合物の有用性および試験)
本発明は、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)(特に、ヒトSCD(hSCD))によって媒介される疾患(好ましくは、異脂肪血症に関連する疾患および脂肪代謝障害、および特に、高い血漿高脂質レベルに関連する疾患(特に、心臓血管疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなど)を、このような処置を必要とする患者に有効量のSCD調節剤(特に、阻害剤)を投与することによって、処置および/または予防するための化合物、薬剤組成物、ならびにこの化合物および薬剤組成物を使用する方法に関する。
【0138】一般的に、本発明は、異脂肪血症に関連する疾患および/もしくは脂肪代謝障害について患者を処置するか、または異脂肪血症に関連する疾患および/もしくは脂肪代謝障害を発症することから患者を保護するための方法を提供し、ここで動物(特に、ヒト)における脂質レベルは、正常範囲を逸脱しており(すなわち、高い血漿脂質レベルのような異常な脂質レベル)、特に、正常より高いレベルであり、好ましくは、上記脂質が、脂肪酸(例えば、遊離脂肪酸または複合脂肪酸)、トリグリセリド、リン脂質、またはLDL-コレステロールレベルが上昇しているかもしくはHDL-コレステロールレベルが減少している場合のようなコレステロール、またはそれらの任意の組み合わせであり、上記脂質に関連する状態または疾患は、SCD媒介疾患または状態である。この方法は、哺乳動物(特に、ヒト患者)のような動物に、本発明の化合物または本発明の化合物を含有する薬剤組成物の治療有効量を投与する工程を包含し、本発明の化合物は、SCD(好ましくは、ヒトSCD1)の活性を調節する。
【0134】本発明の化合物は、ヒトSCD酵素(特に、ヒトSCD1)の活性を調節する(好ましくは、阻害する)。」
「【0136】本発明の化合物は、Δ-9不飽和化酵素インヒビターであり、そしてΔ-9不飽和化酵素の異常な生物活性の結果であるか、またはΔ-9不飽和化酵素の生物活性を調節することによって寛解し得る、ヒトの疾患および障害の全てを含む、ヒトおよび他の生物における疾患および障害を処置するのに有用である。
【0137】本明細書中で定義される場合、SCD媒介疾患または状態としては、心臓血管疾患、異脂肪血症(トリグリセリド、高トリグリセリド血症、VLDL、HDL、LDL、脂肪酸の不飽和指数(fatty acid Desaturation index)(たとえば、本明細書において他のところで定義されるように、比率18:1/18:0の脂肪酸、または他の脂肪酸)、コレステロール、および総コレステロールの血清レベルの障害、高コレステロール血症、ならびにコレステロール障害(不完全なコレステロール逆輸送系によって特徴付けられる障害を含む))、家族性複合高脂質血症、冠動脈疾患、アテローム硬化症、心臓病、脳血管疾患(脳卒中、虚血性脳卒中および一過性脳虚血発作(TIA)が挙げられるが、これらに限定されない)、末梢血管疾患、および虚血性網膜症であるか、もしくはそれらに関連する疾患または状態が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、患者のHDLレベルを増大させ、そして/またはトリグリセリドレベルを減少させ、そして/またはLDLコレステロールレベルもしくは非HDLコレステロールレベルを減少させる。
【0138】SCD媒介疾患または状態としてはまた、メタボリックシンドローム(異脂肪血症、肥満およびインスリン抵抗性、高血圧、低アルブミン血症、高尿酸血症、および凝固能亢進が挙げられるが、これらに限定されない)、X症候群、糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能減少、インスリン非依存性糖尿病、II型糖尿病、I型糖尿病、糖尿病の合併症、体重障害(body weight disorder)(肥満、体重超過、悪液質および拒食症が挙げられるが、これらに限定されない)、体重減少、ボディマス指数関連疾患およびレプチン関連疾患が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、糖尿病および肥満を処置するために使用される。
【0139】本明細書で使用される場合、用語「メタボリックシンドローム」は、II型糖尿病、耐糖能障害、インスリン抵抗性、高血圧、肥満、増大した腹囲、高トリグリセリド血症、低HDL、高尿酸血症、凝固能亢進および/または低アルブミン血症の組み合わせを含む状態を記載するのに使用される認められた臨床的用語である。
【0140】SCD媒介疾患または状態としてはまた、脂肪肝、肝臓脂肪症、肝炎、非アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝炎、急性脂肪肝、妊娠性脂肪肝、薬物誘発性肝炎、赤血球肝性プロトポルフィリン症、鉄過剰障害(iron overload disorders)、遺伝性ヘモクロマトーシス、肝線維症、肝硬変、肝臓癌およびそれに関連する状態が挙げられる。
【0141】SCD媒介疾患または状態としてはまた、高リポタンパク血症、家族性組織球性網膜症、リポタンパクリパーゼ欠損症、アポリポタンパク欠損症(例えば、ApoCII欠損症またはApoE欠損症)などのような原発性高トリグリセリド血症、または別の障害または疾患に付随する高トリグリセリド血症、または原因が不明であるかもしくは特定されていない高トリグリセリド血症、あるいはこれらに関連する疾患もしくは状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】SCD媒介疾患または状態はまた、多価不飽和脂肪酸(PUFA)障害(polyunsaturated fatty acid(PUFA)disorder)の障害または皮膚疾患が挙げられ、それらとしては、湿疹、アクネ、乾癬、ケロイド状の瘢痕の形成または阻止、粘膜からの産生物または分泌物(例えば、一価不飽和脂肪酸、ワックスエステルなど)に関連する疾患などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】SCD媒介疾患または状態としてはまた、炎症、静脈胴炎(sinusitis)、喘息、膵炎、骨関節炎、関節リウマチ、嚢胞性線維症、および月経前症候群が挙げられる。
【0144】SCD媒介疾患または状態としてはまた、癌、腫瘍形成、悪性腫瘍、転移、腫瘍(良性または悪性)、発癌、肝癌など、または関連する疾患もしくは状態をも含むが、それらに限定されない。
【0145】SCD媒介疾患または状態としてはまた、筋肉増強を通して成果を高めることにおいて望ましいような、除脂肪体重または除脂肪筋肉量(lean muscle mass)を増加させることが望まれる状態が挙げられる。カルニチンパルミトイル転移酵素欠損症(CPT IまたはCPT II)のようなミオパシーおよび脂質性ミオパシー(lipid myopathies)もまたこの中に含まれる。このような処置は、ウシ、ブタまたは鳥の飼育されている動物または他の任意の動物へ投与し、トリグリセリド産生を減少させ、そして/または脂肪のない肉製品および/もしくはより健康的な動物を提供することを含めて、ヒトおよび飼畜において有用である。
【0146】SCD媒介疾患または状態としてはまた、神経系疾患、精神障害、多発性硬化症、眼疾患、および免疫障害であるか、またはそれらに関連する疾患もしくは状態が挙げられる。
【0147】SCD媒介疾患または状態としてはまた、ウイルス疾患もしくはウイルス感染、またはそれらに関連する疾患もしくは状態が挙げられ、それらのウイルスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:全てのプラス鎖RNAウイルス、コロナウイルス、SARSウイルス、SARS関連コロナウイルス、トガウイルス、ピコルナウイルス、コクサッキーウイルス、黄熱病ウイルス、フラビウイルス、アルファウイルス(トガウイルス)科(風疹ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、チクングニアウイルス、オニョンニョンウイルス、ロス川ウイルス、マヤロウイルス、アルファウイルスが挙げられる);アストロウイルス科(アストロウイルス、ヒトアストロウイルスが挙げられる);カリシウイルス科(ブタ口内発疹ウイルス、ノーウォークウイルス、カリシウイルス、ウシカリシウイルス、ブタカリシウイルス、E型肝炎が挙げられる);コロナウイルス科(コロナウイルス、SARSウイルス、ニワトリ伝染性気管支炎ウイルス、ウシコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス、ヒトコロナウイルス299E、ヒトコロナウイルスOC43、マウス肝炎ウイルス、ブタ伝染性下痢ウイルス、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、ブタ伝播性胃腸炎ウイルス、ラットコロナウイルス、七面鳥コロナウイルス、ウサギコロナウイルス、ベルンウイルス、ブレダウイルス(Breda virus)が挙げられる);フラビウイルス科(C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、デング熱群(Dengue Group)、G型肝炎ウイルス、日本脳炎B型ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ亜型ダニ媒介脳炎ウイルス、東洋亜型ダニ媒介脳炎ウイルス、キャサヌールフォレストウイルス、跳躍病ウイルス、ポーワッサンウイルス、オムスク出血性熱ウイルス、クミリンゲウイルス(Kumilinge virus)、アブセタロブアンザロバハイパーウイルス(Absetarov anzalova hypr virus)、イルヘウスウイルス、ロシオ脳炎ウイルス(Rocio encephalitis virus)、ランガットウイルス(Langat virus)、ペスチウイルス、ウシウイルス性下痢、ブタコレラウイルス、リオブラボー群(Rio Bravo Group)、チュレニー群(Tyuleniy Group)、ヌタヤ群(Ntaya Group)、ウガンダS群、モードック群が挙げられる);ピコルナウイルス科(コクサッキーAウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、脳心筋炎ウイルス、メンゴウイルス、MEウイルス、ヒトポリオウイルス1、コクサッキーBが挙げられる);ポティウイルス(Potyvirus)、ライモウイルス、バイモウイルス(Bymovirus)を含むポティウイルス科(POTYVIRIDAE)。さらに、SCD媒介疾患または状態は、肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどによって引き起こされるか、それらに関連する疾患もしくは感染症であり得る。処置可能なウイルス感染症としては、ウイルスによって、複製サイクルの一部分としてRNA中間体が使用されるものが挙げられる(肝炎またはHIV);さらに、それは、RNAマイナス鎖ウイルス(例えば、インフルエンザおよびパラインフルエンザウイルス)によって引き起こされるか、またはそれらに関連する疾患もしくは感染症であり得る。
【0148】本明細書で特定化される化合物は、ステアロイル-CoA不飽和化酵素1(SCD1)のようなΔ-9不飽和化酵素によって達成される種々の脂肪酸の不飽和化(例えば、ステアロイル-CoAのC9-C10不飽和化)を阻害する。このような化合物は、それ自体、種々の脂肪酸およびその下流の代謝産物の形成を阻害する。これによってステアロイル-CoAまたはパルミトイル-CoAおよび種々の脂肪酸の他の上流の前駆物質が蓄積する;これは、おそらく脂肪酸代謝おける全体的な変化を引き起こす負のフィードバックループを生じ得る。このような結果のいずれもが、最終的に、これらの化合物によってもたらされる治療的利益全体を担い得る。」
「【0149】代表的に、首尾良いSCD阻害性治療剤は、以下の判定基準の一部または全部を満たし得る。経口での利用能は、20%かまたはそれ以上である。動物モデルでの有効性は、約2mg/Kg、1mg/Kg、または0.5mg/Kg未満であり、そして、標的がヒトの用量は、50mg/70Kgと250mg/70Kgの間であるが、この範囲の外にある用量も許容され得る(「mg/Kg」は、投与されている被験体の体重、1キログラムあたりの化合物のミリグラムを意味する)。治療指数(すなわち、治療用量に対する毒性用量の比)は、100より大きいはずである。効力(IC_(50)値で表される)は、10μM未満、好ましくは1μM未満、最も好ましくは50nM未満であるべきである。このIC_(50)(「50%阻害濃度」)は、SCDの生物活性のアッセイにおいて一定の期間にわたってSCDの活性を50%阻害を達成するのに必要とされる化合物の量の程度である。SCD酵素(好ましくは、マウスSCD酵素またはヒトSCD酵素)の活性を測定するための任意のプロセスは、本発明の方法において、上記のSCD活性を阻害するのに有用な化合物の活性をアッセイするために利用され得る。本発明の化合物は、15分間のミクロソームアッセイ(microsomal assay)において、好ましくは、10μM未満、5μM未満、2.5μM未満、1μM未満、750nM未満、500nM未満、250nM未満、100nM未満、50nM未満、そして最も好ましくは、20nM未満のIC_(50)を示す。本発明の化合物は、可逆的阻害(すなわち、競合的阻害)を示し得、そして好ましくは他の鉄結合タンパクを阻害しない。必要な投薬は、好ましくは、多くても一日に約一回もしくは二回、または食事時であるべきである。」
「【0161】当業者は、本明細書で意図されている疾患および障害を処置するのに使用するための化合物の適切な用量を決定する方法を理解している。治療用量は、一般に、動物研究から得られる予備的な証拠に基づいて、ヒトにおける用量範囲探索試験(dose ranging study)によって特定化される。用量は、患者に対し好ましくない副作用を引き起こすことなく所望の治療的利益をもたらすのに十分でなければならない。動物に対する好ましい投与量範囲は、0.5mg/Kg、1.0mg/Kgおよび2.0mg/Kgを含む0.001mg/Kg?10,000mg/Kgであるが、この範囲外の投与量が、受容可能であり得る。投薬計画は、一日あたり一回または二回であり得るが、これより多くても少なくても十分であり得る。」
「【0162】当業者はまた、それを必要とする被験体への投与方法(経口、静脈内、吸入、皮下など)、投与形態、適切な薬学的賦形剤および上記化合物の送達に関連する他の物質を決定することに精通している。」

b 以上のように、本願発明の医薬組成物の適用疾患、用量、投与方法について一般的な記載がされている。
適用疾患は、発明の課題に関連して本願明細書の段落【0008】に挙げられた異脂肪血症、脂質レベルの上昇に関する疾患、心血管疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム(上記(ア)a参照)以外に、炎症、癌、神経系疾患、精神障害、眼疾患、免疫障害、ウイルス疾患が挙げられており、本願発明2の医薬組成物において発明特定事項とされている適用対象の「疾患または病態」である「II型糖尿病、糖耐性障害、インシュリン耐性、肥満、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、アクネ、異脂肪血症およびメタボリックシンドローム」に対応するものも記載されている。これらは極めて広範なものである。
用量は、「0.5mg/Kg、1.0mg/Kgおよび2.0mg/Kgを含む0.001mg/Kg?10,000mg/Kgである」と記載され、1000万倍の幅がある。
投与方法は、医薬の投与形態に応じた通常のものであると認められる。
なお、「筋肉増強を通して成果を高めることにおいて望ましいような、除脂肪体重または除脂肪筋肉量(lean muscle mass)を増加させること」、「ウシ、ブタまたは鳥の飼育されている動物または他の任意の動物へ投与し、トリグリセリド産生を減少させ、そして/または脂肪のない肉製品および/もしくはより健康的な動物を提供することを含めて、ヒトおよび飼畜において有用である。」と記載されており、疾患の治療目的ではない医薬、動物用の医薬又は畜産業で用いる飼料に添加する剤としての用途についても言及されている。

(カ)式(I)の化合物のアッセイについての記載

a 本願明細書の段落【0135】、【0150】に、以下のように記載されている。
「【0135】SCDの活性の調節(特に、阻害)における本発明の化合物の一般的な価値は、下で実施例4において記載されるアッセイを用いて決定され得る。あるいは、障害および疾患の処置における上記化合物の一般的な価値は、肥満、糖尿病または高いトリグリセリドレベルまたは高いコレステロールレベルの処置における化合物の有効性を示すためか、または耐糖能を改善するための産業用標準動物モデルにおいて確立され得る。このようなモデルとしては、Zucker obese fa/faラット(Harlan Sprague Dawley, Inc(Indianapolis、Indiana)から入手可能)またはZucker diabetic fattyラット(ZDF/GmiCrl-fa/fa)(Charles River Laboratories(Montreal、Quebec)から入手可能)が挙げられる。」
「【0150】SCDインヒビターとしての本発明の化合物を同定は、SCD酵素、およびBrownlieら(前出)に記載されるミクロソームアッセイ手順を用いて、容易に行われた。このアッセイにおいて試験される場合、本発明の化合物は、試験化合物の10μMの濃度にて50%以下の残存SCD活性、好ましくは、試験化合物の10μMの濃度にて40%以下の残存SCD活性、より好ましくは、試験化合物の10μMの濃度にて30%以下の残存SCD活性、そしてさらに好ましくは、試験化合物の10μMの濃度にて20%以下の残存SCD活性を有し、それによって本発明の化合物がSCD活性の強力なインヒビターであることを示した。」

b 以上のように、式(I)の化合物のアッセイについて、文献を引用しつつ、一般的な記載がされている。試薬や手順については、後記(ク)aで摘示する実施例4に記載されている。
なお、ここで引用されている文献「Brownlieら(前出)」は、後記(ク)aの段落【0190】に記載される、公開されたPCT特許出願(WO01/62954)を指すと認められる。この文献は、摘示していないが段落【0004】及び【0007】に特許文献1として提示されている。

(キ)式(I)の化合物の合成実施例(実施例1?実施例3.1)の記載

a 本願明細書の段落【0177】?【0179】に原料化合物の調製例が記載されたのに続けて、段落【0181】?【0189】に、以下のように記載されている。
「【0181】(実施例1)
(N-(2-シクロプロピルエチル)-4-[4-(2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)ピペラジン-1-イル]ベンズアミドの合成)
塩化4-ブロモベンゾイル(0.600g、2.700mmol)のジクロロメタン(20ml)溶液に、0℃で、2-シクロプロピルエチルアミン(0.270g、3.28mmol)を加えた。その混合物を、周囲温度で、12時間撹拌し、次いで、希HCl溶液およびNaHCO_(3)で順次洗浄した。有機相を分離し、乾燥し、そして濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、そして酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶して、4-クロロ-N-(2-シクロプロピルエチル)ベンズアミドを得た。
【0182】4-クロロ-N-(2-シクロプロピルエチル)ベンズアミド(0.677g、2.500mmol)、ピペラジン-1-イル-(2-トリフルオロメチルフェニル)メタノン(0.770g、3.000mmol)、BINAP(0.046g、0.075mmol)、カリウム第三級ブトキシド(0.392g、3.500mmol)、Pd_(2)(dba)_(3)(0.022g、0.025mmol)および1,4-ジオキサン(20ml)の混合物を、窒素雰囲気下にて、18時間還流した。次いで、この反応混合物を冷却し、そしてセライトケーキで濾過した。濾液を、水、ブラインで洗浄し、無水Na_(2)SO_(4)で乾燥し、次いで、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、白色粉末として、収率28%(0.150g)で、表題化合物を得た。
^(1)H NMR(300MHz,CDCl_(3))δ 7.60(m,5H),7.34(d,J=7.4Hz,1H),6.90(d,J=7.3Hz,2H),6.15(m,1H),3.95(m,2H),3.49(m,2H),3.35(m,4H),3.15(m,2H),1.47(m,2H),0.68(m,1H),0.45(m,2H),0.07(m,2H).^(13)C NMR(75MHz,CDCl_(3))δ 167.4,166.8,152.6,134.5,132.3,129.4,128.3,127.3,126.8,126.8,125.9,121.8,115.2,48.2,46.6,41.4,40.2,34.5,8.7,4.2.MS(ES+)m/z 446.1(M+1)。
【0183】(実施例2)
(N-(2-シクロプロピルエチル)-4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]ベンズアミドの合成)
A.クロロベンゼン(200ml)中のビス-(2-クロロエチル)アミン塩酸塩(5.35g、30.00mmol)、4-アミノ安息香酸エチルエステル(4.13g、25.00mmol)および炭酸カリウム(4.40g、32.00mmol)の撹拌混合物を、30時間還流した。周囲温度まで冷却した後、この混合物を濾過し、そして濾液を真空中で乾燥状態まで濃縮して、4.27g(収率73%)の4-ピペラジン-1-イル-安息香酸エチルエステルを得た。
【0184】B.ジクロロメタン(15ml)に溶解した4-ピペラジン-1-イル安息香酸エチルエステル(1.21g、5.00mmol)の溶液に、周囲温度で、ジクロロメタン(10ml)中の塩化5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル(1.15g、5.00mmol)およびトリエチルアミン(1.5ml)の混合物を加えた。得られた混合物を2時間撹拌し、次いで、水でクエンチし、そしてジクロロメタンで抽出した。有機相を水で洗浄し、そして乾燥し、次いで、SiO_(2)パッドで濾過した。溶媒を除去すると得られた油状残渣(2.010g、4.740mmol)を、精製することなく、次の工程で使用した。
【0185】C.水/メタノール混合物(2:8)50mL中の4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]-安息香酸エチルエステル(2.010g、4.740mmol、LiOH(0.480g、20.00mmol)の混合物を、3時間還流した。冷却した後、真空中でメタノールを除去した。次いで、濃H2SO4(3ml)を加え、そして沈殿した白色固形物を濾過により集めた。収量 1.2g(61%)。
【0186】D.4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]安息香酸(0.396g、1.00mmol)を、周囲温度で、塩化チオニル(2ml)中で、1滴のDMFの存在下にて、一晩撹拌した。真空中で、過剰量の塩化チオニルを除去した。残渣をDCM(15ml)に溶解し、そしてさらに精製することなく、次の反応工程に使用した。
【0187】E.ジクロロメタン(10ml)中の2-シクロプロピルエチルアミン(30μL、0.37mmol)およびトリエチルアミン(0.3ml)の撹拌混合物に、4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]塩化ベンゾイル(0.119g、0.287mmol)のジクロロメタン(7.5ml)溶液を加えた。得られた混合物を30分間撹拌し、次いで、クエン酸(25ml)、水で洗浄し、MgSO_(4)で乾燥し、そして濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、そしてエーテルから再結晶して、収率46%(0.138g)で、表題化合物が得られた。
^(1)H NMR(300MHz,CDCl_(3))δ 7.75-7.65(m,3H),7.25-7.18(m,1H),7.08-7.04(m,1H),6.90(d,J=9.0Hz,2H),6.15-6.13(m,1H),4.00-3.86(m,2H),3.54-3.48(m,2H),3.37-3.33(m,4H),3.19-3.16(m,2H),1.53-1.46(m,2H),0.75-0.64(m,1H),0.49-0.44(m,2H),0.11-0.06(m,2H).^(13)C NMR(75MHz,CDCl_(3))δ 166.8,165.9,152.6,129.6,129.5,128.3,126.0,116.7,116.4,115.2,114.9,114.6,48.2,48.1,46.6,41.5,40.2,34.5,8.7,4.2.MS(ES+)m/z 464.1(M+1)。
【0188】(実施例3)
(4-[4-(2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリルの合成)
ジクロロメタン(15ml)およびトリエチルアミン(0.452g、4.47mmol)中の4-ピペラジン-1-イルベンゾニトリル塩酸塩(0.200g、0.890mmol)の混合物に、0℃で、塩化2-トリフルオロメチルベンゾイル(0.186g、0.890mmol)を加えた。その反応混合物を周囲温度まで温め、そして6時間撹拌し、次いで、水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出した。有機相を分離し、希HCl溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、ブラインで洗浄し、次いで、無水MgSO_(4)で乾燥し、そして濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてn-ヘキサンから結晶化し、白色固形物として、収率91%(0.294g)で、表題化合物を得た。
^(1)H NMR(300MHz,CDCl_(3))δ 7.72(d,J=8.9Hz,1H),7.54(m,4H),7.36(m,1H),6.84(d,J=9.6Hz,2H),3.94(m,2H),3.33(m,6H).^(13)C NMR(75MHz,CDCl_(3))δ 167.5,153.0,134.3,133.6,132.4,129.5,127.6,127.2,125.4,121.8,119.7,114.9,101.5,47.3,46.4,41.2.MS(ES+)m/z 360.1(M+1)。
【0189】(実施例3.1)
(4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)-ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリルの合成)
実施例3で記述した手順に従って、必要に応じてのみ、塩化2-トリフルオロメチルベンゾイルに代えて塩化5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイルを使用するという変更を行って、白色固形物として、74%(0.250g)で、表題化合物を得た。
^(1)H NMR(300MHz,CDCl_(3))δ 7.73(m,1H),7.52(m,2H),7.22(m,1H),7.05(m,1H),6.87(m,2H),3.91(m,2H),3.37(m,4H),3.24(m,2H).^(13)C NMR(75MHz,CDCl_(3))δ 166.1,162.6,152.9,133.6,129.7,125.1,123.3,122.9,119.7,116.5,116.8,101.7,47.2,46.4,41.3.MS(ES+)m/z 378.2(M+1)。」

b 以上のように、4個の化合物(化学構造式は上記(イ)に示した。)の合成実施例が記載されている。また、これら4個の化合物の同定データ(^(1)H NMR、^(13)C NMR、MS)が示されている。

(ク)式(I)の化合物のアッセイの実施例(実施例4)の記載

a 本願明細書の段落【0190】?【0195】に、以下のように記載されている。
「【0190】(実施例4)
(マウス肝臓ミクロソームを使用した、試験化合物のステアロイル-COA不飽和化酵素阻害活性の測定)
SCDインヒビターとしての本発明の化合物の同定を、SCD酵素およびBrownlieらの公開されたPCT特許出願(WO01/62954)に記載されるミクロソームアッセイ手順を使用して容易に達成した。
【0191】(マウス肝臓ミクロソームの調製)
オスICRマウス(高炭水化物の低脂肪食)を、軽いハロタン麻酔(鉱油中の15%)下で、高い酵素活性の期間の間に瀉血によって屠殺する。肝臓を、0.9%の冷NaCl溶液を用いて直ちにリンスし、秤量し、そして鋏によって細かく刻む。特に明記されない限り、全ての手順を、4℃にて行った。肝臓を、Potter-Elvehjem組織ホモジナイザーの4ストロークを使用して、0.25Mのスクロース、62mMのリン酸カルシウム緩衝液(pH7.0)、0.15MのKCl、1.5mMのN-アセチルシステイン(acetyleysteine)、5nMのMgCl_(2)、および0.1nMのEDTAを含む溶液(1:3 w/v)中でホモジナイズする。このホモジネートを、10,400×gにて20分間遠心分離して、ミトコンドリアおよび細胞の破片を除去する。上清を、3層の寒冷紗を通して濾過し、そして105,000×gにて60分間遠心分離する。ミクロソームのペレットを、小さなガラス/テフロン(登録商標)ホモジナイザーを用いて同じホモジナイズ溶液中に穏やかに懸濁し、そして-70℃にて保存する。ミトコンドリアの混入の非存在を、酵素的に評価する。タンパク質濃度を、標準としてウシ血清アルブミンを使用して測定する。
【0192】(試験化合物とマウス肝臓ミクロソームとのインキュベーション)
反応を、1.5mlのホモジナイズ溶液(42mMのNaF、0.33mMのナイアシンアミド、1.6mMのATP、1.0mMのNADH、0.1mMの補酵素Aおよび10μMの濃度の試験化合物を含む)中に33.3μMの最終濃度にて、0.20μCiの基質の脂肪酸(1-14Cパルミチン酸)を含むプレインキュベートしたチューブに2mgのミクロソームタンパク質を添加することによって開始する。このチューブを、激しくボルテックスし、そして振盪水浴(37℃)中で15分間インキュベートした後、この反応を停止し、そして脂肪酸を分析する。
【0193】脂肪酸を、以下の通りに分析する:反応混合物を10%のKOHによってけん化して、遊離脂肪酸を得る。この遊離脂肪酸を、メタノール中のBF_(3)を使用してさらにメチル化する。この脂肪酸メチルエステルを、205nmに設定したダイオードアレイ検出器、固体シンチレーションカートリッジ(^(14)C-検出ついて97%の効率)を有する放射性同位体検出器(Model 171、Beckman、CA)、およびμBondapak C-18(Beckman)インサートを有するプレカラムに接続された逆相ODS(C-18)Beckmanカラム(250mm×4.6mm i.d.;5μmの粒子サイズ)を取り付けたHewlett Packard 1090,Series IIクロマトグラフを使用した、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析する。脂肪酸メチルエステルを、1mL/ 分の流速にてアセトニトリル/水(95:5 v:v)を用いて定組成的に(isocratically)分離し、そして確実な標準と比較することによって同定する。あるいは、脂肪酸メチルエステルは、キャピラリーカラムガスクロマトグラフィー(GC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分析され得る。
【0194】当業者は、ミクロソームにおけるステアロイル-CoA不飽和化酵素活性の試験化合物による阻害を測定するのに有用であり得るこのアッセイに対する種々の改変を理解する。
【0195】本発明の代表的な化合物は、このアッセイにおいて試験した場合、SCDのインヒビターとしての活性を示した。この活性を、上記試験化合物の所望の濃度において残存するSCD酵素活性の%によって定義した。」

b 以上のように、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素阻害活性のアッセイについて、文献を引用しつつ、手順、装置、試薬について記載されている。
しかし、手順の概要と装置、試薬の種類が示されるだけで、具体的にどの化合物を試験したのかは記載されていない。「SCDのインヒビターとしての活性を示した。」、「この活性を、上記試験化合物の所望の濃度において残存するSCD酵素活性の%によって定義した。」との記載があるが、試験結果の数値データは、全く示されていない。

イ 検討

(ア)上記ア(ア)、(エ)、(オ)、(カ)、(ク)によれば、本願発明2は、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を利用して、SCDの関与が病因となっている様々な疾患(異脂肪血症、脂質レベルの上昇に関する疾患、心血管疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなど、さらに炎症、癌、神経系疾患、精神障害、眼疾患、免疫障害、ウイルス疾患など)の処置に有用な、より具体的には本願発明2の医薬組成物において発明特定事項とされている適用対象の「疾患または病態」である「II型糖尿病、糖耐性障害、インシュリン耐性、肥満、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、アクネ、異脂肪血症およびメタボリックシンドローム」の処置に有用な、医薬組成物とする点に技術的特徴を有する、医薬用途発明であると認められる。
また、請求項12において、式(I)と実質的に同じ範囲の式(Ia)の化合物の発明について、特許を受けようとしていることからみて、本願発明2は、有効成分である式(I)の化合物が新規化合物であることを前提とするものであると認められる。
このような本願発明2において、発明の詳細な説明の記載が、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるためには、当業者が、本願発明2の医薬組成物を生産することができ、使用することができるように、記載したものである必要がある。そして、生産することができるように記載したものであるというためには、少なくとも、式(I)の化合物を当業者が入手できるように記載されている必要がある。使用することができるように記載したものであるというためには、式(I)の化合物がSCDのインヒビターとしての薬理作用を有するものであることを当業者が理解できるように記載されているか、本願発明2の医薬組成物が上記の疾患の処置に有効なものであることを当業者が理解できるように記載されている必要がある。
以下、この観点で、本願発明2の医薬組成物を、生産することができるように記載したものであるといえるか、使用することができるように記載したものであるといえるか、について、発明の詳細な説明の記載を検討する。

(イ)本願発明2の医薬組成物を生産することができるように記載したものであるかについて

a 式(I)の化合物を当業者が入手できるように記載されているか検討する。

(a)式(I)の化合物は、上記1で検討した刊行物1に記載された引用発明の化合物のように、たまたま、その式(I)に該当する化合物が存在するとしても、それ以外は、新規化合物であり、これを入手するためには、これを製造する必要があると解される。

(b)請求項2に記載された式(I)の化合物の化学構造式は、


であるところ、発明の詳細な説明には、上記ア(ウ)、(キ)のとおり、有効成分である式(I)の化合物であって、JがN、KがN、Vが-C(O)-、WがR^(2)-N(R^(1))C(O)-である、限定された化合物の合成スキームが、
「(反応スキーム1)

・・・・・・・・・・・・・・・
塩基(例えば、トリエチルアミンがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、塩化ハロ(Z=BrまたはCl)ベンゾイル化合物101と適当なアミンとを反応させると、アミド102が得られる。塩基(例えば、トリエチルアミンがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、保護ピペラジン103を適当な塩化アシルで処理すると、アミド化合物104が得られる。化合物104中のの保護基(これは、一般に、t-ブチルオキシカルボニル基である)は、Green, T. W. and P. G. M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis(1999), 3rd Ed., Wileyで記載された酸性条件を使用することにより、除去でき、所望生成物105が得られる。このバックウォルド/ハートウィグ(Buchwald/Hartwig)アミノ化反応は、遷移金属触媒(例えば、酢酸パラジウムまたはトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0))、塩基(例えば、ナトリウムまたはカリウム第三級ブトキシド)の存在下にて、溶媒(例えば、トルエン、DMFまたはジオキサンがあるが、これに限定されない)中で、ハロ化合物102とピペラジン化合物105とを反応させることにより、実行でき、最終生成物106を形成する(例えば、Buchwald, S. L. ら J. Org. Chem. 2000, 65, 1158を参照のこと)。」
と記載され、上記化合物のうち、さらにxが1、yが1、R^(5)、R^(5a)、R^(6)、R^(6a)、R^(7)、R^(7a)、R^(8)及びR^(8a)が水素である、さらに限定された化合物の合成スキームが、
「(反応スキーム2)

・・・・・・・・・・・・・・・
塩基(例えば、炭酸カリウムがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、クロロベンゼンがあるが、これに限定されない)中で、アニリノ化合物107とビス-(2-クロロエチル)アミン塩酸塩とを反応させると、ピペラジン生成物108が得られる。塩基(例えば、トリエチルアミンがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、108を適当な塩化アシルで処理すると、アミド化合物109が得られる。シアン化ナトリウムの存在下にて、あるいは、エステル110を塩基(例えば、水酸化リチウムがあるが、これに限定されない)で加水分解した後、その酸または塩化アシル誘導体を経由して、エステル109を適当なアミン(過剰量)と直接反応させることにより、最終生成物110を得ることができる。酸を使って、この反応は、塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン、1-ヒドロキシル-1H-ベンゾトリアゾールおよび1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドがあるが、これに限定されない)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、実行される。塩化アシルを使って、この反応は、塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下にて、溶媒(例えば、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない)中で、実行される。」
と記載され、実施例1?実施例3.1に、順次以下の4つの化合物

の合成実施例が、それぞれ、
「(実施例1)
(N-(2-シクロプロピルエチル)-4-[4-(2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)ピペラジン-1-イル]ベンズアミドの合成)
塩化4-ブロモベンゾイル(0.600g、2.700mmol)のジクロロメタン(20ml)溶液に、0℃で、2-シクロプロピルエチルアミン(0.270g、3.28mmol)を加えた。その混合物を、周囲温度で、12時間撹拌し、次いで、希HCl溶液およびNaHCO_(3)で順次洗浄した。有機相を分離し、乾燥し、そして濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、そして酢酸エチルおよびヘキサンから再結晶して、4-クロロ-N-(2-シクロプロピルエチル)ベンズアミドを得た。
4-クロロ-N-(2-シクロプロピルエチル)ベンズアミド(0.677g、2.500mmol)、ピペラジン-1-イル-(2-トリフルオロメチルフェニル)メタノン(0.770g、3.000mmol)、BINAP(0.046g、0.075mmol)、カリウム第三級ブトキシド(0.392g、3.500mmol)、Pd_(2)(dba)_(3)(0.022g、0.025mmol)および1,4-ジオキサン(20ml)の混合物を、窒素雰囲気下にて、18時間還流した。次いで、この反応混合物を冷却し、そしてセライトケーキで濾過した。濾液を、水、ブラインで洗浄し、無水Na_(2)SO_(4)で乾燥し、次いで、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、白色粉末として、収率28%(0.150g)で、表題化合物を得た。」
「(実施例2)
(N-(2-シクロプロピルエチル)-4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]ベンズアミドの合成)
A.クロロベンゼン(200ml)中のビス-(2-クロロエチル)アミン塩酸塩(5.35g、30.00mmol)、4-アミノ安息香酸エチルエステル(4.13g、25.00mmol)および炭酸カリウム(4.40g、32.00mmol)の撹拌混合物を、30時間還流した。周囲温度まで冷却した後、この混合物を濾過し、そして濾液を真空中で乾燥状態まで濃縮して、4.27g(収率73%)の4-ピペラジン-1-イル-安息香酸エチルエステルを得た。
B.ジクロロメタン(15ml)に溶解した4-ピペラジン-1-イル安息香酸エチルエステル(1.21g、5.00mmol)の溶液に、周囲温度で、ジクロロメタン(10ml)中の塩化5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル(1.15g、5.00mmol)およびトリエチルアミン(1.5ml)の混合物を加えた。得られた混合物を2時間撹拌し、次いで、水でクエンチし、そしてジクロロメタンで抽出した。有機相を水で洗浄し、そして乾燥し、次いで、SiO_(2)パッドで濾過した。溶媒を除去すると得られた油状残渣(2.010g、4.740mmol)を、精製することなく、次の工程で使用した。
C.水/メタノール混合物(2:8)50mL中の4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]-安息香酸エチルエステル(2.010g、4.740mmol、LiOH(0.480g、20.00mmol)の混合物を、3時間還流した。冷却した後、真空中でメタノールを除去した。次いで、濃H2SO4(3ml)を加え、そして沈殿した白色固形物を濾過により集めた。収量 1.2g(61%)。
D.4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]安息香酸(0.396g、1.00mmol)を、周囲温度で、塩化チオニル(2ml)中で、1滴のDMFの存在下にて、一晩撹拌した。真空中で、過剰量の塩化チオニルを除去した。残渣をDCM(15ml)に溶解し、そしてさらに精製することなく、次の反応工程に使用した。
E.ジクロロメタン(10ml)中の2-シクロプロピルエチルアミン(30μL、0.37mmol)およびトリエチルアミン(0.3ml)の撹拌混合物に、4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]塩化ベンゾイル(0.119g、0.287mmol)のジクロロメタン(7.5ml)溶液を加えた。得られた混合物を30分間撹拌し、次いで、クエン酸(25ml)、水で洗浄し、MgSO_(4)で乾燥し、そして濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、そしてエーテルから再結晶して、収率46%(0.138g)で、表題化合物が得られた。」
「(実施例3)
(4-[4-(2-トリフルオロメチルベンゾイル)ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリルの合成)
ジクロロメタン(15ml)およびトリエチルアミン(0.452g、4.47mmol)中の4-ピペラジン-1-イルベンゾニトリル塩酸塩(0.200g、0.890mmol)の混合物に、0℃で、塩化2-トリフルオロメチルベンゾイル(0.186g、0.890mmol)を加えた。その反応混合物を周囲温度まで温め、そして6時間撹拌し、次いで、水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出した。有機相を分離し、希HCl溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、ブラインで洗浄し、次いで、無水MgSO_(4)で乾燥し、そして濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてn-ヘキサンから結晶化し、白色固形物として、収率91%(0.294g)で、表題化合物を得た。」
「(実施例3.1)
(4-[4-(5-フルオロ-2-トリフルオロメチル-ベンゾイル)-ピペラジン-1-イル]-ベンゾニトリルの合成)
実施例3で記述した手順に従って、必要に応じてのみ、塩化2-トリフルオロメチルベンゾイルに代えて塩化5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイルを使用するという変更を行って、白色固形物として、74%(0.250g)で、表題化合物を得た。」
と記載され、それぞれ、同定データが示されている。

(c)本願明細書の、反応スキーム1及び反応スキーム2の記載は、合成経路と主な試薬が記載されているだけで、実際の合成反応の操作についての具体的記載はない。
一方、実施例1は、反応スキーム1に従うものと認められる。実施例2は、反応スキーム2に従うものと認められる。実施例3及び実施例3.1は、Wが-CNであるから何れでもないが、置換フェニル基が結合したピペラジンの>N-Hに酸塩化物を反応させて>N-C(O)-R^(3)とする点は、反応スキーム2と類似する。しかし、実施例2、実施例3及び実施例3.1の反応条件をみると、実施例2は「ジクロロメタン(15ml)に溶解した4-ピペラジン-1-イル安息香酸エチルエステル(1.21g、5.00mmol)の溶液に、周囲温度で、ジクロロメタン(10ml)中の塩化5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイル(1.15g、5.00mmol)およびトリエチルアミン(1.5ml)の混合物を加えた。得られた混合物を2時間撹拌し、次いで、水でクエンチし、そしてジクロロメタンで抽出した。」であり、実施例3は「ジクロロメタン(15ml)およびトリエチルアミン(0.452g、4.47mmol)中の4-ピペラジン-1-イルベンゾニトリル塩酸塩(0.200g、0.890mmol)の混合物に、0℃で、塩化2-トリフルオロメチルベンゾイル(0.186g、0.890mmol)を加えた。その反応混合物を周囲温度まで温め、そして6時間撹拌し、次いで、水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出した。」であり、実施例3.1は「実施例3で記述した手順に従って、必要に応じてのみ、塩化2-トリフルオロメチルベンゾイルに代えて塩化5-フルオロ-2-トリフルオロメチルベンゾイルを使用するという変更を行って」であり、2種の反応原料に対する溶媒の使い方や、混合の温度、攪拌時間などが異なる。
このように、Wが異なると、置換フェニル基が結合したピペラジンの>N-Hに酸塩化物を反応させて>N-C(O)-R^(3)(R^(3)は5-フルオロ-2-トリフルオロメチル-フェニル)とする同じ反応であっても、反応条件を変える必要がある。
そして、これらの具体的な記載に対して、式(I)の化合物においては、JやKがC(R^(10))であってもよいほか、-V-R^(3)は-C(O)-R^(3)(R^(3)は5-フルオロ-2-トリフルオロメチルフェニル又は2-トリフルオロメチルフェニル)に限られず、Wもシクロプロピルエチルアミノカルボニルやシアノに限られず、多様な選択肢から選ばれるものである。
例えば、Wが、R^(2)-N(R^(1))C(O)-、-CN以外の、R^(2)-C(O)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)N(R^(1))-、R^(2)-N(R^(1))C(O)N(R^(1))-、R^(2)-O-、R^(2)-N(R^(1))-、R^(2)-S(O)_(t)-(ここで、tは、0、1又は2)、R^(2)-N(R^(1))S(O)_(p)-(ここで、pは、1又は2)、R^(2)-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1又は2)、R^(2)-C(O)-、R^(2)-OS(O)_(2)N(R^(1))-、R^(2)-OC(O)-、R^(2)-C(O)O-、R^(2)-N(R^(1))C(O)O-又はR^(2)-C(R^(1))_(2)-である化合物が含まれる。
また、Vが、-C(O)-以外の直接結合、-N(R^(1))-、-N(R^(1))C(O)-、-O-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(O)N(R^(1))-、-S(O)_(p)-(ここで、pは、1又は2)、又は-S(O)_(p)N(R^(1))-(ここで、pは、1又は2)である化合物が含まれる。
また、R^(3)が、2-トリフルオロメチルフェニル又は5-フルオロ-2-トリフルオロメチル以外の、水素、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)アルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)ヒドロキシアルケニル、置換もしくは非置換のC_(2)?C_(12)アルコキシアルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)シクロアルキル、置換もしくは非置換のC_(4)?C_(12)シクロアルキルアルキル、置換もしくは非置換のアリール、C_(7)?C_(19)アラルキル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリル、置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロシクリルアルキル、置換もしくは非置換のC_(1)?C_(12)ヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のC_(3)?C_(12)ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されるが、但し、R^(3)は、必要に応じて置換したシクロペンチルまたは必要に応じて置換した5員ヘテロシクリル環ではない;あるいはR^(3)は、2個?4個の環を有する多環構造であり、ここで、該環は、別個に、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクリル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアリールからなる群から選択され、ここで、該環の一部または全部は、互いに縮合され得る;である化合物が含まれる。
このような多様なW、V、R^(3)に対応する式(I)の化合物について、どのように入手するのかについて、発明の詳細な説明には、反応スキーム1及び2における一般的な記載の他には、実施例1?実施例3.1における、特定の化合物の合成例の記載しかない。
また、J又はKがC(R^(10))である式(I)の化合物について、どのように入手するのかについて、発明の詳細な説明には、記載がない。
このような記載では、多様なW、V、R^(3)に対応する式(I)の化合物や、J又はKがC(R^(10))である式(I)の化合物の入手についての、発明の詳細な説明の記載は、十分であるとはいえない。
また、仮に、反応スキーム1又は反応スキーム2に示される中間化合物であって、多様なW、V、R^(3)、J又はKに対応する中間化合物を入手できたとしても、それらの中間化合物は、その置換基の違いに基づいて、各種溶媒への溶解性や、安定性、反応性が異なるものであると考えられる。そうすると、反応スキーム1及び反応スキーム2の記載があり、実施例1?実施例3.1に4個の化合物の合成実施例の記載があるだけでは、上記の多様な式(I)の化合物を得ようとする場合に、所望の目的物が得られるような反応溶媒、各試薬の添加量、反応温度、後処理の方法、目的物の単離精製の手順を、試行錯誤により決定して化合物を製造する必要があり、当業者に過度の負担を強いるものである。

(d)上記(a)?(c)によれば、発明の詳細な説明には、そのW、V、R^(3)について多様な選択肢を有し、J及びKがNでもC(R^(10))でもよい式(I)の化合物を、当業者が入手できるように記載されているとはいえない。

b 以上によれば、発明の詳細な説明には、式(I)の化合物を当業者が入手できるように記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明2の医薬組成物を生産することができるように記載したものであるとはいうことができない。

(ウ)本願発明2の医薬組成物を使用することができるように記載したものであるかについて

a 式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するものであることを当業者が理解できるように記載されているか検討する。
発明の詳細な説明には、上記ア(カ)、(ク)のとおり、式(I)の化合物の薬理作用のアッセイについては、文献を引用しつつ、一般的な記載と、実施例において試薬や手順について説明する記載がある。しかし、手順の概要と装置、試薬の種類が示されるだけで、具体的にどの化合物を試験したのかは記載されていない。「SCDのインヒビターとしての活性を示した。」、「この活性を、上記試験化合物の所望の濃度において残存するSCD酵素活性の%によって定義した。」との記載があるが、試験結果の数値データはもとより、当業者が、式(I)の化合物が実際に、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を示すと客観的に判断し得るような事項は、全く示されていない。
また、式(I)の化合物が一部の例外を除いて新規化合物であり、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するという技術常識は存在しなかったことからすると、上記ア(カ)、(ク)のとおり、当該化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての阻害の程度についての情報が、発明の詳細な説明に全く記載されていないから、改めて実際に化合物が活性を有することを確認し、用量を決定するための活性試験を、試行錯誤により繰り返す必要がある。
このような、発明の詳細な説明の記載は、当業者に過度の負担を強いるものといえる。
そうすると、発明の詳細な説明の記載には、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するものであることを当業者が理解できるように記載されているとはいえない。

b 本願発明2の医薬組成物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置に有効なものであることを当業者が理解できるように記載されているか検討する。
発明の詳細な説明には、上記ア(オ)のとおり、本願発明2の医薬組成物の適用疾患、用量、投与方法について、一般的な記載がされている。しかし、実際に医薬製剤としたことは記載されていないし、動物に投与して上記の疾患の処置に有効なものであることを確認したことは記載されていない。
そして、上記aで述べたように、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するものであることを当業者が理解できるように記載されてもいない。
そうすると、発明の詳細な説明には、本願発明2の医薬組成物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置、より具体的には本願発明2の医薬組成物において発明特定事項とされている適用対象の「疾患または病態」である「II型糖尿病、糖耐性障害、インシュリン耐性、肥満、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、アクネ、異脂肪血症およびメタボリックシンドローム」の処置に、有効なものであることを、当業者が理解できるように記載されているとはいえない。

c 以上によれば、発明の詳細な説明には、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するものであることを当業者が理解できるように記載されているとはいえず、本願発明2の医薬組成物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置に有効なものであることを当業者が理解できるように記載されているともいえないから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明2の医薬組成物を使用することができるように記載したものであるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本願発明2の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。

(2)本願発明18に関連する理由4について

ア 発明の詳細な説明の記載
上記(1)アに示したとおりである。

イ 検討
上記(1)で検討した本願発明2が「哺乳動物におけるステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患または病態の治療における使用のための医薬組成物であって、ここで、該医薬組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤と式(I)の化合物を・・・含み、ここで該疾患または病態が、II型糖尿病、糖耐性障害、インシュリン耐性、肥満、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、アクネ、異脂肪血症およびメタボリックシンドロームならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される・・・医薬組成物」と特定されたものであるのに対し、本願発明18は、「薬学的に受容可能な賦形剤または担体と、治療有効量の式(I)の化合物とを・・・含有する医薬組成物」と特定されたものである。
まず、本願発明18の医薬組成物を生産することができるように記載したものであるかについて検討すると、上記(1)イ(イ)で検討したのと同様であり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明18の医薬組成物を生産することができるように記載したものであるとはいえない。
次に、本願発明18の医薬組成物を使用することができるように記載したものであるかについて検討する。本願発明18は、本願発明2とは違って医薬組成物の適用対象の疾患又は病態が特定されるものではないが、「治療有効量の式(I)の化合物とを・・・含有する医薬組成物」の発明である以上、式(I)の化合物がどのような薬理作用を有し、本願発明18の医薬組成物がどのような疾患の治療に有効なものであるのかを、当業者が理解できるように記載されている必要があるところ、上記(1)イ(ウ)で検討したとおり、発明の詳細な説明には、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するものであることを当業者が理解できるように記載されているとはいえず、本願発明の医薬組成物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置に有効なものであることを当業者が理解できるように記載されているともいえない。また、他に、式(I)の化合物が上記以外の薬理作用を有することや、その薬理作用に基づき何らかの疾患の治療に用いられることは、記載されていない。したがって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明18の医薬組成物を使用することができるように記載したものであるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本願発明18の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。

(3)本願発明1に関連する理由4について

ア 発明の詳細な説明の記載
上記(1)アに示したとおりである。

イ 検討
上記(1)で検討した本願発明2が「哺乳動物におけるステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患または病態の治療における使用のための医薬組成物であって、ここで、該医薬組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤と式(I)の化合物を・・・含み、ここで該疾患または病態が、II型糖尿病、糖耐性障害、インシュリン耐性、肥満、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、アクネ、異脂肪血症およびメタボリックシンドロームならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される・・・医薬組成物」と特定されたものであるのに対し、本願発明1は、「ヒトステアロイル-CoA不飽和化酵素(hSCD)活性を阻害するための組成物であって、式(I)の化合物を・・・含む、組成物」と特定されたものである。
また、本願発明1の組成物は、上記(1)イ(ア)で述べたとおり、式(I)の化合物が新規化合物であることを前提とするものである。
本願発明1の組成物は、医薬組成物に限定されるものではないが、本願発明1において、発明の詳細な説明が、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるためには、当業者が、本願発明1の組成物を生産することができ、使用することができるように、記載したものである必要があることは、上記(1)で検討した医薬組成物の発明である本願発明2におけるのと、同様である。
まず、本願発明1の組成物を生産することができるように記載したものであるかについて検討すると、上記(1)イ(イ)で検討したのと同様であり、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1の組成物を生産することができるように記載したものであるとはいえない。
次に、本願発明1の組成物を使用することができるように記載したものであるかについて検討する。本願発明1は、本願発明2とは違って医薬組成物と特定されるものではないが、「ヒトステアロイル-CoA不飽和化酵素(hSCD)活性を阻害するための組成物であって、式(I)の化合物を・・・含む、組成物」の発明である以上、式(I)の化合物がヒトステアロイル-CoA不飽和化酵素(hSCD)活性を阻害する性質を有することを、当業者が理解できるように記載されている必要があるところ、上記(1)イ(ウ)で検討したとおり、発明の詳細な説明には、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するものであることを当業者が理解できるように記載されているとはいえない。したがって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明1の組成物を使用することができるように記載したものであるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本願発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。

(4)理由4のまとめ
したがって、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

3 理由5について
本願発明2及び18は医薬組成物に関する発明であるのに対し、本願発明1は医薬組成物とは特定されない組成物に関する発明であるので、本願発明2、18、1の順に、関連する理由5について、理由5(i)及び理由5(ii)をまとめて検討する。

(1)本願発明2に関連する理由5について

ア はじめに
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号に規定する要件(いわゆる、「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」(知財高裁特別部平成17年(行ケ)第10042号判決)である。
以下、この観点に立って、検討する。

イ 本願発明2の課題
上記2(1)ア(ア)によれば、本願発明2の課題は、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を利用して、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置に有用な医薬組成物を提供することであると認められる。

ウ 発明の詳細な説明の記載
上記2(1)アに示したとおりである。

エ 本願発明2と発明の詳細な説明との対比及び出願時の技術常識について

a 式(I)の化合物は、そのW、V、R^(3)は多様な選択肢から選ばれるものであり、J又はKがC(R^(10))であってもよく、膨大な数の化合物を包含するものであるところ、その薬理作用の確認については、上記2(1)でも検討したとおり、実施例においても、アッセイのための手順の概要と装置、試薬の種類と、「SCDのインヒビターとしての活性を示した。」、「この活性を、上記試験化合物の所望の濃度において残存するSCD酵素活性の%によって定義した。」との記載があるだけで、具体的にどの化合物を試験したのかも、試験結果の数値データも、全く示されていない。このように、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての阻害の程度についての情報が、発明の詳細な説明に全く記載されていない。
また、発明の詳細な説明には、現実に医薬組成物を製造して、その効果を確認したことの記載もない。
そうすると、本願発明2すなわち医薬組成物についての発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないし、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記イの課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
そして、上記2(1)でも検討したとおり、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するという技術常識は存在しなかったことからすると、当業者の技術常識からみて、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも上記イの課題が解決できると当業者が認識できるものであるともいえない。

b なお、仮に、実施例において「SCDのインヒビターとしての活性を示した。」とされた化合物が、実施例1?実施例3.1で製造された4つの化合物であり、かつ、上記のSCDのインヒビターとしての活性が、本願発明2の医薬組成物のために十分な値であるとした場合でも、式(I)の化合物は、そのW、V、R^(3)は多様な選択肢から選ばれるものであり、J又はKがC(R^(10))であってもよく、多様な化学構造の化合物を包含するものであるところ、そのW、V、R^(3)、J、Kの選択に応じてその薬理活性等の性質は変動すると考えられることからすれば、それら多様な化学構造の式(I)の化合物の全てを用いる場合について、本願発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないし、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記イの課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
そして、上記2(1)でも検討したとおり、式(I)の化合物がステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を有するという技術常識は存在しなかったことからすると、当業者の技術常識からみて、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも上記イの課題が解決できると当業者が認識できるものであるともいえない。

オ まとめ
以上のとおり、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を利用して、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される様々な疾患の処置に有用な医薬組成物としたことを特徴とする本願発明2が、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえず、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
してみると、請求項2の特許を受けようとする発明(本願発明2)が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいうことができないから、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

(2)本願発明18に関連する理由5について

ア はじめに
上記(1)アに示したのと同様である。

イ 本願発明18の課題
本願発明18は、「薬学的に受容可能な賦形剤または担体と、治療有効量の式(I)の化合物とを・・・含有する医薬組成物」と特定されたものである。
発明の詳細な説明には、式(I)の化合物が、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとして以外の薬理作用を有することや、その薬理作用に基づき何らかの疾患の治療に用いられることは、記載されていない。
したがって、本願発明18の課題は、上記(1)イに示した本願発明2の課題と同じく、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を利用して、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置に有用な医薬組成物を提供することであると認められる。

ウ 発明の詳細な説明の記載
上記2(1)アに示したとおりである。

エ 本願発明18と発明の詳細な説明との対比及び出願時の技術常識について
上記(1)エに示したのと同様である。

オ まとめ
したがって、式(I)の化合物の薬理作用を利用して、医薬組成物としたことを特徴とする本願発明18が、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえず、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
してみると、請求項18の特許を受けようとする発明(本願発明18)が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいうことができないから、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

(3)本願発明1に関連する理由5について

ア はじめに
上記(1)アに示したのと同様である。

イ 本願発明1の課題
本願発明1は、「ヒトステアロイル-CoA不飽和化酵素(hSCD)活性を阻害するための組成物であって、式(I)の化合物を・・・含む、組成物」と特定されたものである。
本願発明1の組成物は、医薬組成物に限定されるものではないが、「ヒトステアロイル-CoA不飽和化酵素(hSCD)活性を阻害するための組成物であって、式(I)の化合物を・・・含む、組成物」の発明である以上、本願発明1の課題は、上記(1)イに示した本願発明2の課題と同じ、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を利用して、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置に有用な医薬組成物を提供することを、含むと認められる。
また、発明の詳細な説明には、「筋肉増強を通して成果を高めることにおいて望ましいような、除脂肪体重または除脂肪筋肉量(lean muscle mass)を増加させること」、「ウシ、ブタまたは鳥の飼育されている動物または他の任意の動物へ投与し、トリグリセリド産生を減少させ、そして/または脂肪のない肉製品および/もしくはより健康的な動物を提供することを含めて、ヒトおよび飼畜において有用である。」と記載されており、疾患の治療目的ではない医薬、動物用の医薬又は畜産業で用いる飼料に添加する剤としての用途についても言及されているので、これらの組成物を提供することも、本願発明1の課題に含まれると認められる。
したがって、本願発明1の課題は、上記(1)イに示した本願発明2の課題と同じく、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を利用して、ステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)により媒介される疾患の処置に有用な医薬組成物を提供することに加えて、上記薬理作用を利用する、疾患の治療目的ではない医薬、動物用の医薬又は畜産業で用いる飼料等の組成物を提供することであると認められる。

ウ 発明の詳細な説明の記載
上記2(1)アに示したとおりである。

エ 本願発明1と発明の詳細な説明との対比及び出願時の技術常識について
上記(1)エに示したのと同様である。

オ まとめ
したがって、式(I)の化合物のステアロイル-CoA不飽和化酵素(SCD)のインヒビターとしての薬理作用を利用して、組成物(疾患の処置に有用な医薬組成物、及び、疾患の治療目的ではない医薬、動物用の医薬又は畜産業で用いる飼料等の組成物)としたことを特徴とする本願発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえず、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
してみると、請求項1の特許を受けようとする発明(本願発明1)が、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいうことができないから、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。

(4)理由5のまとめ
したがって、この出願は、特許請求の範囲の請求項1、2、18の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび
以上のとおり、この出願の請求項12に係る発明は、特許法第29条の規定により特許をすることができないものであり、この出願は、特許法第36条第4項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていないから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-31 
結審通知日 2014-02-03 
審決日 2014-02-25 
出願番号 特願2007-532682(P2007-532682)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C07D)
P 1 8・ 57- Z (C07D)
P 1 8・ 113- Z (C07D)
P 1 8・ 536- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 春日 淳一  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 村守 宏文
齋藤 恵
発明の名称 複素環誘導体および治療薬としてのそれらの使用  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  

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