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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1289545
審判番号 不服2013-3707  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-27 
確定日 2014-07-10 
事件の表示 特願2010-259858「コンピュータシステム管理のプログラム,コンピュータシステム管理装置,コンピュータシステムの管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月31日出願公開、特開2011- 65674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明

本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年9月30日(優先日:平成15年9月30日)に特許出願とした特願2004-286722号の一部を,平成22年11月22日に新たな特許出願としたものであって,
平成22年11月22日付けで審査請求がなされ,平成24年8月20日付けで拒絶理由通知(同年同月28日発送)がなされ,同年10月29日付けで意見書が提出されるとともに,手続補正がなされたが,同年11月21日付けで拒絶査定(同年同月27日謄本送達)がなされ,平成25年2月27日付けで審判請求がされ,その後,当審において平成26年1月30日付けで拒絶理由通知(同年2月4日発送)がなされ,同年4月3日付けで意見書の提出,及び手続補正がなされたものであって,
特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年4月3日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項4に記載された以下のとおりのものと認める。

「組織に設けられ運営されている複数のコンピュータと前記複数のコンピュータを管理するコンピュータシステム管理装置とがネットワークで接続されたコンピュータシステムのセキュリティに必須の対策が確実に講じられるよう管理するコンピュータシステムの管理方法であって,
前記複数の各コンピュータから起動時または周期的に報告されたそれぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報が送られてくるとコンピュータ別のインストール済みのアプリケーションの情報をインストール済みアプリ格納手段に格納し,
コンピュータシステムの必須のアプリケーションに対し不適合なアプリケーションまたはコンピュータシステムを運営する組織の正常な運営に不適合なアプリケーションとして前記組織により指定され設定されたアプリケーションの情報を不適合アプリ格納手段に格納し,
前記インストール済みアプリ格納手段に格納された各コンピュータのアプリケーションの情報と前記不適合アプリ格納手段に格納されたアプリケーションの情報とを照合し,不適合アプリケーションがインストールされていることを検出し,
前記不適合アプリケーションがインストールされていることを検出すると,当該コンピュータに対して検出された不適合アプリケーションのアンインストールを促す通知を行いアンインストールを行う,
ことを特徴とするコンピュータシステムの管理方法。」


第2 当審の判断

(1)引用文献の記載事項及び引用発明
(1-1)引用文献1
本願の優先日前に頒布され,当審による上記平成26年1月30日付けの拒絶理由通知において引用された,特開2000-235547号公報(以下,「引用文献1」という)には,関連する図面とともに,下記の事項が記載されている。
(当審注:下線は当審により参考のために付加したものである。)

A「【請求項16】資源管理装置が1つ以上の被管理装置それぞれが有する装置資源を管理する資源管理方法であって,
前記被管理装置それぞれは,
前記被管理装置が有する装置資源を示す資源データを生成し,
前記資源管理装置に対して,生成された前記資源データを送信し,
前記資源管理装置は,
前記被管理装置それぞれからの前記資源データを受信し,
受信された前記被管理装置それぞれの前記資源データを管理する資源管理方法。」

B「【0006】
【課題を達成するための手段】[資源管理システム]上記目的を達成するために,本発明にかかる資源管理システムは,資源管理装置および1つ以上の被管理装置を含み,前記被管理装置それぞれが有する装置資源を管理する資源管理システムであって,前記被管理装置それぞれは,前記被管理装置が有する装置資源を示す資源データを生成する資源データ生成手段と,前記資源管理装置に対して,生成された前記資源データを送信する資源データ送信手段とを有し,前記資源管理装置は,前記被管理装置それぞれからの前記資源データを受信する資源データ受信手段と,受信された前記被管理装置それぞれの前記資源データを管理する資源データ管理手段とを有する。
・・・(中略)・・・
【0010】好適には,前記資源管理装置において,前記資源データ管理手段は,前記被管理装置から受信された前記資源データに基づいて,受信された前記資源データに対応する前記被管理装置それぞれが,予め定められた特定の装置資源を含むか否かを判定する特定資源判定手段と,前記判定の結果に基づいて,前記被管理装置それぞれが含む前記特定の装置資源と,前記被管理装置それぞれの前記資源データとを管理する第2の資源管理手段とを有する。」

C「【0021】[資源管理システムの作用]本発明にかかる資源管理システムは,例えば,1台の管理用コンピュータ(資源管理装置)と,この資源管理装置により,それぞれソフトウェア資源およびハードウェア資源またはこれらのいずれか(装置資源)が管理される複数台のコンピュータ(被管理装置)とが,LAN等の通信網を介して接続され,相互にデータを送受信するコンピュータネットワークの装置資源管理を行う。
【0022】[資源管理装置および被管理装置の作用]本発明にかかる資源管理システムにおいて,資源管理装置は,例えば,ユーザの操作に応じて,あるいは,被管理装置から装置資源の変更があった旨の通知を受信した場合に,被管理装置それぞれに対して被管理装置それぞれにインストールされている装置資源を通信網を介して問い合わせる。
【0023】被管理装置(被管理装置自体と,被管理装置に接続されている周辺装置等とを含む)はそれぞれ,例えば,資源管理装置からの問い合わせに応じて,オペレーティングシステム(OS)のAPIおよびレジストリのチェック,あるいは,ファイルシステム内の実行ファイル(*.exe)の検索を行うことにより,その被管理装置がどのような装置資源を有しているかを調べて,その被管理装置の装置資源の現状を示す資源データを生成し,資源管理装置に対して送信する。あるいは,被管理装置は,例えば,ユーザが新たなソフトウェアをインストールまたはアンインストールした場合に,装置資源が変更されたことを管理装置に通知する。
【0024】被管理装置それぞれから資源データを受信すると,資源管理装置は,受信した資源データを,被管理装置ごとに記憶・管理する。さらに,資源管理装置は,例えば,被管理装置それぞれが標準的に備えているはずの装置資源と,受信した資源データが示す装置資源とを比較し,これらの資源の間の過不足を示す情報を記憶・管理し,システム管理者に対して表示する。また,さらに,資源管理装置は,例えば,受信した資源データが示す装置資源の中に,被管理装置にインストールしてはいけない特定の装置資源があるか否かを検出し,検出結果を記憶・管理し,システム管理者に対して表示する。」

D「【0025】[資源データ送信要求手段]本発明にかかる資源管理システムの管理装置において,資源データ送信要求手段は,例えば,資源管理装置に対するユーザ(システム管理者)による管理のための操作に応じて,一定時間間隔ごとに,あるいは,被管理装置から装置資源変更の通知を受けた場合に,被管理装置それぞれに対して,資源データの送信を要求する信号を送信する。
【0026】[資源データ受信手段]資源データ受信手段は,上記資源データの送信要求に応じて,通信網を介して被管理装置それぞれから送られてきた資源データを受信する。
【0027】[資源データ管理手段]資源データ管理手段は,被管理装置の装置資源のデータベースであって,被管理装置それぞれから受信した資源データを記憶,管理する。
・・・(中略)・・・
【0031】[特定資源判定手段]特定資源判定手段は,例えば,ゲームソフトといった,会社の業務遂行と関係なく,却って仕事の能率向上のために好ましくないと判断されている特定のソフトウェア(特定の装置資源),および,工程管理ソフトあるいは通信用ボードといった,必ず全職員が導入しなければならない特定のソフトウェア/ハードウェア(装置資源)の指定を予めシステム管理者から受け,被管理装置から受信した資源データが示す装置資源に,このような特定の装置資源が含まれているか否かを判定する
【0032】[第2の資源管理手段]第2の資源管理手段は,被管理装置それぞれの資源データおよび上記特定の装置資源に関する判定の結果を記憶し,さらに,システム管理者の操作に応じてこれらを表示する等の管理を行う。このように,第2の資源管理手段が,被管理装置それぞれについて特定の装置資源の有無を管理することにより,システム管理者は,例えば,コンピュータシステムから好ましくないソフトウェア(装置資源)の排除を進めることができ,あるいは,必須のソフトウェア(装置資源)を導入していないユーザに対して,その導入を促すことができる。」

E「【0043】[コンピュータネットワーク1]図1は,本発明にかかる第1の装置資源管理方法が適用されるコンピュータネットワーク1の構成を例示する図である。図1に例示するように,コンピュータネットワーク1は,1台の管理装置10,複数の被管理装置20-i(i=1,...,n;以下,被管理装置20-1?20-nのいずれかを特定せずに示す場合には,単に被管理装置20と記す)が,LAN,ISDN通信網あるいはデータ専用線等の通信ネットワーク30を介して互いにデータを送受信するように接続されて構成される。
【0044】図1に示したコンピュータネットワーク1において,管理装置10は,例えば,ユーザの操作に応じて,通信ネットワーク30を介して,被管理装置20それぞれに対して,インストールされているソフトウェア資源およびハードウェア資源またはこれらのいずれか(装置資源)を問い合わせる。
【0045】被管理装置20はそれぞれ,管理装置10からの問い合わせに応じて,ファイルシステム内の実行ファイル(*.exe)の検索等を行うことにより,どのような装置資源を有しているかを調べて,その現状を示す資源データを生成し,管理装置10に対して送信する。
【0046】被管理装置20それぞれから資源データを受信すると,資源管理装置10は,資源データを,被管理装置20ごとに記憶し,さらに,被管理装置20それぞれの装置資源の過不足,あるいは,特定の装置資源の有無等を検出し,システム管理者に通知する等の管理を行う。」

F「【0055】[システム管理プログラム4]システム管理プログラム4は,通信部40,データ解析部42,入力部44,表示部46およびデータベース部48から構成される。通信部40は,送信部400および受信部402から構成され,データベース部48は,システム管理データベース(DB)480,人事・組織DB482および装置資源情報DB484から構成される。システム管理プログラム4は,これらの構成部分により,管理装置10の以下の各機能を実現する。
・・・(中略)・・・
【0062】[資源情報解析]システム管理プログラム4は,予め入力装置102への入力あるいは記録媒体108により供給され,被管理装置20それぞれが標準的に備えるべき標準資源を示す標準資源データが示す装置資源と,システム管理プログラム4が被管理装置20それぞれから収集した資源データが示す装置資源とを比較し,被管理装置20それぞれの装置資源と標準資源との差分,つまり,被管理装置20それぞれの標準的な装置資源に対する過不足を検出して差分データとして記憶し,管理する(差分解析処理)。
【0063】また,システム管理プログラム4は,予め入力装置102への入力等により,コンピュータネットワーク1全体に対して,あるいは,被管理装置20それぞれに対して設定される特定の装置資源を示すデータ(特定資源データ)が,被管理装置20それぞれの資源データが示す装置資源に含まれているか否かを判定し,この判定結果を記憶し,管理する(突き合せ解析処理)。
【0064】上記特定資源には,例えば,被管理装置20それぞれについてインストールすることが禁じられている装置資源(例えば,業務に関係しないゲームソフトのソフトウェア)と,逆に,インストールが必要とされ,あるいは,命じられている装置資源(例えば,通信用ボード等の業務に必須なハードウェア,および,ワードプロセッサ,表計算ソフト等の業務用ソフトウェア)とが含まれる。」

G「【0072】[システム管理DB480]システム管理DB480は,入力装置102等から入力されるシステム管理データを記憶し,読み出し要求に応じて,データ解析部42および表示部46に対して出力する。また,システム管理DB480は,システム管理者がシステム管理データの内容に変更を加えた場合等に,この変更を人事・組織DB482に対して通知する。また,システム管理DB480は,人事・組織DB482から人事・組織データの変更の通知を受け,受けた変更と矛盾が生じないようにシステム管理データの内容を更新し,人事・組織データとの同期を保つ。
・・・(中略)・・・
【0074】[装置資源情報DB484]装置資源情報DB484は,受信部402から入力される資源データおよびキーワードと,システム管理DB480およびシステム管理DB482から読み出したシステム管理データおよび人事・組織データと,データ解析部42が生成した差分データまたは特定資源の判定結果を対応づけて記憶・管理する。
【0075】[データ解析部42]データ解析部42は,上述したシステム管理プログラム4の資源情報解析機能を実現する。つまり,データ解析部42は,入力部44から差分解析処理コマンドが入力された場合には,システム管理DB480から被管理装置20それぞれの標準資源データを読み出し,受信部402から入力される被管理装置20それぞれの資源データが示す装置資源と,標準資源データが示す装置資源とを比較して差分データを生成し,表示部46および装置資源情報DB484に対して出力する(差分解析処理)。また,データ解析部42は,入力部44から突き合せ解析処理コマンドが入力された場合には,特定資源データをシステム管理DB480から読み出し,被管理装置20それぞれの資源データが示す装置資源に,特定資源データが示す装置資源が含まれているか否かを判定し,この判定結果を表示部46および装置資源情報DB484に対して出力する(突き合せ解析処理)。」

H「【0133】[突き合せ解析処理]図14は,図8に示した突き合せ解析処理(S40,S42)を示すフローチャートである。図14に示すように,ステップ400(S400)において,システム管理者が,入力装置102を用いて,処理選択用画像70(図11)のボタン(怪しいものの表示;*2)を選択して押下し,管理装置10(図1,2)に対して突き合せ解析処理のコマンド入力操作を行い,さらに,差分解析の対象とする組織に指定すると,管理装置10(図1,2)の表示部46は,図12に示した差分解析処理の結果を表示装置104に表示するとともに,人事・組織DB482から,突き合せ解析の対象となる組織およびユーザに関する人事・組織データを読み出す。システム管理者が,表示された差分解析結果から,任意の装置資源を入力装置102等により指定して特定資源に指定すると,入力部44は,この指定をデータ解析部42および装置資源情報DB484に対して出力する。
【0134】ステップ402(S402)において,装置資源情報DB484は,入力部44から入力された特定資源を,特定資源データとして記憶・管理する。
【0135】ステップ20’(S20’)において,管理装置10は,図9に示した資源情報収集処理を,その時点で処理の対象になっている組織に含まれ,まだ資源データの収集が終了していない被管理装置20のいずれか1つについて行い,その被管理装置20それぞれの資源データを得る。
【0136】ステップ420(S420)において,データ解析部42は,S20’の処理により得られた資源データが示す装置資源と,特定資源データが示す特定資源とを比較し,特定資源がインストールされている被管理装置20を示すキーワードと特定資源とを装置資源情報DB484に対して出力する。装置資源情報DB484は,データ解析部42から入力された被管理装置20のキーワードと特定資源とを対応づけて,特定資源データとして記憶・管理する。
【0137】ステップ422(S422)において,データ解析部42は,処理の対象となっている組織の1つに含まれる全てのユーザ(被管理装置20)について,差分データを生成する処理が終わったか否かを判断し,終わった場合にはS424の処理に進み,これ以外の場合にはS20’の処理に進む。
【0138】ステップ424(S424)において,データ解析部42は,処理の対象として指定された組織に含まれるユーザ(被管理装置20)の全ての資源データの収集が完了したか否かを判断し,終了した場合にはS42の処理に進み,これ以外の場合にはS20’の処理に進む。
【0139】ステップ42(S42)において,表示部46は,システム管理DB480および人事・組織DB482からシステム管理データおよび人事・組織データを,装置資源情報DB484から特定装置データを読み出し,データをキーワードを用いて対応づけ,突き合せ解析の結果を,図11に例示するように,怪しいものの表示74として表示装置104に表示する(*1)。」

I「【0148】[変形例]標準資源データが,新たに得られた資源データで順次,置き換えられ,更新されるようにしてもよい。また,被管理装置20が,装置資源の変更を検出するたびに資源データを管理装置12に対して送信し,資源データを受信した管理装置12が,各データベースの内容を更新するように処理シーケンスを変更してもよい。また,上述したコンピュータネットワーク1の処理内容および構成は例示であって,同様の処理を行うことが可能な範囲で,使用器材および用途等に応じて,適宜,変更することが可能である。」

以下に,上記引用文献1の記載事項について検討する。

(ア)上記Aの記載から,引用文献1には,
“資源管理装置が1つ以上の被管理装置それぞれが有する装置資源を管理する資源管理方法であって,
前記被管理装置それぞれは,
前記被管理装置が有する装置資源を示す資源データを生成し,
前記資源管理装置に対して,生成された前記資源データを送信し,
前記資源管理装置は,
前記被管理装置それぞれからの前記資源データを受信し,
受信された前記被管理装置それぞれの前記資源データを管理する資源管理方法”が記載されていると解される。

(イ)上記(ア)における“資源管理装置”および“1つ以上の被管理装置”に関し,上記Cの「本発明にかかる資源管理システムは,例えば,1台の管理用コンピュータ(資源管理装置)と,この資源管理装置により,それぞれソフトウェア資源およびハードウェア資源またはこれらのいずれか(装置資源)が管理される複数台のコンピュータ(被管理装置)とが,LAN等の通信網を介して接続され,相互にデータを送受信するコンピュータネットワークの装置資源管理を行う。」との記載,及び,上記Eの「コンピュータネットワーク1は,1台の管理装置10,複数の被管理装置20-i・・・が,LAN,ISDN通信網あるいはデータ専用線等の通信ネットワーク30を介して互いにデータを送受信するように接続されて構成される。」との記載から,前記“資源管理装置“と前記“1つ以上の被管理装置”とは,“LAN等の通信網を介して接続されて”いることがよみとれ,
また,前記“1つ以上の被管理装置”に関し,上記Gの「装置資源情報DB484は,受信部402から入力される資源データ・・・と,・・・人事・組織データと・・・を対応づけて記憶・管理する。」との記載,上記Fの「システム管理プログラム4は,・・・管理装置10の以下の各機能を実現する。」,「システム管理プログラム4は,・・・判定し,この判定結果を記憶し,管理する(突き合せ解析処理)。」との記載,及び,上記Hにおける,システム管理者による,指定した組織を対象とした被管理装置に対する突き合せ解析処理の一連のフローについての記載から,前記“1つ以上の被管理装置”は“組織に対応して設けられ組織のシステム管理者により管理され”るものであることがよみとれ,
また,上記(ア)における“被管理装置それぞれが有する装置資源を管理”することは,“資源管理装置によって”行われるのは明らかである。
してみると,引用文献1に記載された“資源管理方法”は,
“資源管理装置が1つ以上の被管理装置それぞれが有する装置資源を管理する資源管理方法であり,
前記資源管理装置と前記1つ以上の被管理装置とはLAN等の通信網を介して接続されており,前記1つ以上の被管理装置は組織に対応して設けられ組織のシステム管理者により管理されるものであり,前記被管理装置それぞれが有する装置資源を資源管理装置によって管理する方法であ”ることがよみとれる。

(ウ)上記(ア)における“資源管理装置”が“受信された前記被管理装置それぞれの前記資源データを管理する”こととは,上記Dの「資源データ管理手段は,被管理装置の装置資源のデータベースであって,被管理装置それぞれから受信した資源データを記憶,管理する。」との記載によれば,
“受信された前記被管理装置それぞれの前記資源データ”を“被管理装置の装置資源についてのデータベースに記憶して”“管理する”ことであると解される。

(エ)上記Fの「システム管理プログラム4は,これらの構成部分により,管理装置10の以下の各機能を実現する。」,及び,「システム管理プログラム4は,予め入力装置102への入力等により,・・・被管理装置20それぞれに対して設定される特定の装置資源を示すデータ(特定資源データ)が,被管理装置20それぞれの資源データが示す装置資源に含まれているか否かを判定し,この判定結果を記憶し,管理する(突き合せ解析処理)。」との記載によれば,前記“資源管理装置”は,突き合せ解析処理を行うものであり,そして当該突き合せ解析処理とは,“予め入力により被管理装置それぞれに対して設定される特定の装置資源を示す特定資源データが,被管理装置それぞれの資源データが示す装置資源に含まれているか否かを判定し,この判定結果を記憶し管理する”ものであることがよみとれる。
その際,上記突き合せ解析処理における判定対象である“予め入力により被管理装置それぞれに対して設定される特定の装置資源を示す特定資源データ”とは,上記Gの「システム管理DB480は,入力装置102等から入力されるシステム管理データを記憶し,読み出し要求に応じて,データ解析部42および表示部46に対して出力する。」,及び,「データ解析部42は,・・・特定資源データをシステム管理DB480から読み出し,被管理装置20それぞれの資源データが示す装置資源に,特定資源データが示す装置資源が含まれているか否かを判定・・・する(突き合せ解析処理)。」との記載によれば,“予め入力により被管理装置それぞれに対して”システム管理DBに“設定され”呼び出され“る特定の装置資源を示す特定資源データ”であると解され,
同じく上記突き合せ解析処理における“被管理装置それぞれの資源データが示す装置資源”とは,上記Dの「資源データ管理手段は,被管理装置の装置資源のデータベースであって,被管理装置それぞれから受信した資源データを記憶,管理する。」との記載によれば,被管理装置の装置資源についてのデータベースから呼び出される“被管理装置それぞれの資源データが示す装置資源”であると解され,
同じく上記突き合せ解析処理における“判定結果”については,上記Gの「データ解析部42は,・・・この判定結果を表示部・・・に対して出力する」との記載によれば,表示するものであると解される。
してみると,引用文献1には,
“前記資源管理装置”は,
“予め入力により被管理装置それぞれに対して管理DBに設定され呼び出される特定の装置資源を示す特定資源データが,被管理装置の装置資源についてのデータベースから呼び出される被管理装置それぞれの資源データが示す装置資源に含まれているか否かを判定し,この判定結果を記憶し管理するとともに表示する”ことがよみとれる。

(オ)上記(エ)における“特定資源データ”が設定された“管理DB”に関し,上記Fの「被管理装置20それぞれに対して設定される特定の装置資源を示すデータ(特定資源データ)」,及び,「上記特定資源には,例えば,被管理装置20それぞれについてインストールすることが禁じられている装置資源(例えば,業務に関係しないゲームソフトのソフトウェア)・・・が含まれる。」との記載から,
“前記管理DBは,インストールすることが禁じられているソフトウェアを含む特定の装置資源についての特定資源データを設定するものであ”ることがよみとれる。

(カ)上記(エ)における“被管理装置の装置資源についてのデータベース”に関し,上記Cの「それぞれソフトウェア資源・・・(装置資源)が管理される複数台のコンピュータ(被管理装置)」,「被管理装置は,・・・ユーザが新たなソフトウェアをインストール・・・した場合に,装置資源が変更されたことを管理装置に通知する。」,及び,「被管理装置それぞれから資源データを受信すると,資源管理装置は,受信した資源データを,被管理装置ごとに記憶・管理する。」との記載から,
“前記被管理装置の装置資源についてのデータベースは,インストールされたソフトウェアを含む被管理装置の装置資源についての資源データを記憶・管理するものである”ことがよみとれる。

以上,(ア)ないし(カ)を踏まえると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

資源管理装置が1つ以上の被管理装置それぞれが有する装置資源を管理する資源管理方法であり,
前記資源管理装置と前記1つ以上の被管理装置とはLAN等の通信網を介して接続されており,前記1つ以上の被管理装置は組織に対応して設けられ組織のシステム管理者により管理されるものであり,前記被管理装置それぞれが有する装置資源を資源管理装置によって管理する方法であって,
前記被管理装置それぞれは,
前記被管理装置が有する装置資源を示す資源データを生成し,
前記資源管理装置に対して,生成された前記資源データを送信し,
前記資源管理装置は,
前記被管理装置それぞれからの前記資源データを受信し,
受信された前記被管理装置それぞれの前記資源データを被管理装置の装置資源についてのデータベースに記憶して管理し,
予め入力により被管理装置それぞれに対して管理DBに設定され呼び出される特定の装置資源を示す特定資源データが,前記被管理装置の装置資源についてのデータベースから呼び出される被管理装置それぞれの資源データが示す装置資源に含まれているか否かを判定し,この判定結果を記憶し管理するとともに表示するものであり,
前記管理DBは,インストールすることが禁じられているソフトウェアを含む特定の装置資源についての特定資源データを設定するものであり,
前記被管理装置の装置資源についてのデータベースは,インストールされたソフトウェアを含む前記被管理装置の装置資源についての資源データを記憶・管理するものである
資源管理方法。

(1-2)引用文献2
本願の優先日前に頒布され,当審による上記平成26年1月30日付けの拒絶理由通知において周知例として引用された,特開2003-76434号公報(以下,「引用文献2」という)には,関連する図面とともに,下記の事項が記載されている。
(当審注:下線は当審により参考のために付加したものである。)

J「【0006】この発明は,上記のような課題を解決するためになされたもので,情報機器にインストールされたソフトウェア全てを統合的に管理し一括して更新作業を行い,セキュリティホールをつくらないようソフトウェアを更新することができるセキュリティアップデート監視装置を得ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明に係わるセキュリティアップデート監視装置においては,ソフトウエアを有する情報端末装置にネットワークを介して接続され,情報端末装置のソフトウエア情報を取得して,ソフトウエアの最新更新情報と比較することにより更新が必要なソフトウエアを判定すると共に,更新が必要と判定されたソフトウエアの更新を指示する管理部を備えたものである。また,それぞれソフトウエアを有する複数の情報端末装置にネットワークを介して接続され,複数の情報端末装置のソフトウエア情報を取得して,ソフトウエアの最新更新情報と比較することにより更新が必要なソフトウエアを判定すると共に,更新が必要と判定されたソフトウエアの更新を指示する管理部を備えたものである。」

(1-3)引用文献3
本願の優先日前に頒布され,当審による上記平成26年1月30日付けの拒絶理由通知において周知例として引用された,特開平10-91454号公報(以下,「引用文献3」という)には,関連する図面とともに,下記の事項が記載されている。
(当審注:下線は当審により参考のために付加したものである。)

K「【0016】
【発明の実施の形態】図1は,2つのコンピュータ・システムをもつコンピュータ・ネットワークの図を示す。ここで図1を参照して,ローカル・コンピュータ・システム102は,表示要素108をもつ。ローカル・コンピュータ・システム102は,ネットワーク106を通してリモート・コンピュータ・システム104に接続される。ネットワーク106は,典型的にローカル・エリア・ネットワーク(LAN)であるが,モデムを使用する直列インターフェースを含む任意の型のネットワークでありえる。本発明は,ネットワーク106を通して,ローカル・コンピュータ・システム102からリモート・コンピュータ・システム104に,ソフトウェアをインストールし,ソフトウェアをアンインストールし,または他のソフトウェア機能を実施するための,ローカル・コンピュータ・システム102およびリモート・コンピュータ・システム104で走るソフトウェアを含む。」

(2)参考文献の記載事項
(2-1)参考文献1
本願の優先日前に頒布された,特開2002-49434号公報(以下,「参考文献1」という)には,関連する図面とともに,下記の事項が記載されている。
(当審注:下線は当審により参考のために付加したものである。)

L「【0113】また,メールの着信信号等によってアンインストール情報を送信し,ネットワーク側から強制的に端末のアンインストールを行う時のフローチャートを図4に示す。携帯電話端末のメールについては,通常,ネットワーク側が制御信号でメールの着信があることを通知する。メール着信の制御信号を受信(S71)した携帯電話端末はメール情報を受信するためにネットワーク管理センターに発信をする(S72)。そして,メールデータを受信するのであるが,発信の手順は着信の時と同様に,リンク確立手順(S73),呼設定手順(S74),認証手順(S75)に分けられる。これらを実行後,メールデータを受信(S76)し記憶装置12にメールデータを格納する。このメールデータ内にアプリケーションをアンインストールした旨を通知しておく。そしてメール着信の(着信音)RINGを数回鳴らし(S77)切断(S78)する。
【0114】ここでは,メール受信時(S76)のメールデータにアンインストール情報を付加しておく。あるいは,上記のメールの着信(S71)があったことを通知する制御信号(メール着信信号)に,アンインストール情報を付加しておく。着信種別判定(S79)において,付加されているアンインストール情報を制御装置15のアンインストール情報判別部20が判別し,アンインストール情報を記憶装置12に一時格納する。
【0115】切断後,制御装置15は記憶装置12に一時格納していたアプリケーション情報と一致するアプリケーション情報を持つアプリケーションを検索する。一致するアプリケーション情報を持つアプリケーション本体を,一時格納したアプリケーション情報とともに記憶装置12からアンインストールを実行する(S80)。
【0116】端末の使用者が,メールの着信を知り入力装置13からメール表示操作(S81)をすることによって,メール受信した(S76)時のメールデータが記憶装置12から読み出され表示装置14にメールデータが表示(S82)される。このようにして端末の使用者がアプリケーションの強制アンインストールされたことを知ることができる。このように,メール着信信号やメールデータにアンインストール情報をのせることにより,ネットワークからの強制的なアンインストールが行えるとともに,同時にメールの内容で利用者に通知することができる。」

(2-2)参考文献2
本願の優先日前に頒布された,特開2000-259519号公報(以下,「参考文献2」という)には,関連する図面とともに,下記の事項が記載されている。
(当審注:下線は当審により参考のために付加したものである。)

M「【請求項1】 配布された1つ以上のソフトウェアを記憶し,これらのソフトウェアに基づき,指定された処理を実行する複数の端末装置と,ネットワークを介して前記各端末装置に記憶されているソフトウェアの更新処理を行うソフトウェア配布装置とを有するネットワークシステムにおいて,
前記ソフトウェア配布装置は,
前記各端末装置に配布済みの各ソフトウェアのいずれかを更新したとき,ソフトウェア更新情報を生成して前記各端末装置に供給するソフトウェア更新情報送信部と,
前記各端末装置からダウンロード要求が出されたとき,このダウンロード要求を出した端末装置に対し,前記ダウンロード要求で指定された更新済みのソフトウェアを配布するソフトウェア配布部と,を備え,
前記各端末装置は,
前記ソフトウェア配布装置から前記ソフトウェア更新情報が供給されたとき,このソフトウェア更新情報の内容を解析し,更新対象に指定されたソフトウェアを特定する更新対象判定部と,
この更新対象判定部によって,更新対象と判定されたソフトウェアが使用中かどうかを判定し,当該ソフトウェアが使用されていないときには,ダウンロード要求を前記ソフトウェア配布装置に出力する一方,これに応答した前記ソフトウェア配布装置から当該更新済みのソフトウェアをダウンロードするダウンロード部と,
を備えたことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】 請求項1に記載のネットワークシステムにおいて,
前記ダウンロード部は,前記更新対象判定部によって更新対象と判定されたソフトウェアが現在使用中であるときには,ユーザ側にその旨を通知して当該ソフトウェアの使用終了を促す,
ことを特徴とするネットワークシステム。」

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(3-1)引用発明の「1つ以上の被管理装置」は,「組織に対応して設けられ組織のシステム管理者により管理されるものであ」ることから,本願発明の「組織に設けられ運営されている複数のコンピュータ」に相当し,また,引用発明の「資源管理装置」,及び,「LAN等の通信網」は,それぞれ本願発明の「コンピュータシステム管理装置」,及び,「ネットワーク」に相当する。
してみると,引用発明の「資源管理装置が1つ以上の被管理装置それぞれが有する装置資源を管理する資源管理方法であり,前記資源管理装置と前記1つ以上の被管理装置とはLAN等の通信網を介して接続されており,前記1つ以上の被管理装置は組織に対応して設けられ組織のシステム管理者により管理されるものであり,前記被管理装置それぞれが有する装置資源を資源管理装置によって管理する方法」と,本願発明の「組織に設けられ運営されている複数のコンピュータと前記複数のコンピュータを管理するコンピュータシステム管理装置とがネットワークで接続されたコンピュータシステムのセキュリティに必須の対策が確実に講じられるよう管理するコンピュータシステムの管理方法」とは,ともに,“組織に設けられ運営されている複数のコンピュータと前記複数のコンピュータを管理するコンピュータシステム管理装置とがネットワークで接続されたコンピュータシステムを管理するコンピュータシステムの管理方法”である点で共通する。

(3-2)引用発明の「資源管理装置」における「被管理装置の装置資源についてのデータベース」は,本願発明の「インストール済みアプリ格納手段」に対応するものである。
そして,この場合の「被管理装置の装置資源についてのデータベース」は「被管理装置」から「送信」される「被管理装置それぞれの前記資源データ」を「記憶」するものであり,また当該「記憶」する「被管理装置それぞれの前記資源データ」は「インストールされたソフトウェアを含む前記被管理装置の装置資源についての資源データ」であるから,本願発明の「コンピュータ別」であり「それぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報」に相当するといえる。
してみると,引用発明の「被管理装置」から「送信」される「被管理装置それぞれの前記資源データ」である「インストールされたソフトウェアを含む前記被管理装置の装置資源についての資源データ」を「被管理装置の装置資源についてのデータベース」に「記憶」することと,本願発明の「前記複数の各コンピュータから起動時または周期的に報告されたそれぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報が送られてくるとコンピュータ別のインストール済みのアプリケーションの情報をインストール済みアプリ格納手段に格納」することとは,ともに,“前記複数の各コンピュータから報告されたそれぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報が送られてくるとコンピュータ別のインストール済みのアプリケーションの情報をインストール済みアプリ格納手段に格納”することである点で共通する。

(3-3)引用発明の「資源管理装置」における「管理DB」は,本願発明の「不適合アプリ格納手段」に対応するものである。
そして,この場合の「管理DB」は,「インストールすることが禁じられているソフトウェアを含む特定の装置資源についての特定資源データ」を「設定」するものであり,これは「特定資源データ」を格納することに他ならず,また当該格納する「インストールすることが禁じられているソフトウェア」とは,上記Dの「システム管理者は,例えば,コンピュータシステムから好ましくないソフトウェア(装置資源)の排除を進めることができ」との記載によれば,「システム管理者によりコンピュータシステムからの好ましくないソフトウェア(装置資源)の排除を進める」対象となるものであるから,「好ましくな」く「インストールすることが禁じられている」として組織のシステム管理者により指定され上記「管理DB」に設定されて「特定資源データ」が格納されていることは明らかであり,本願発明の「コンピュータシステムを運営する組織の正常な運営に不適合なアプリケーションとして前記組織により指定され設定されたアプリケーションの情報」に相当するといえる。
してみると,引用発明の「インストールすることが禁じられているソフトウェアを含む特定の装置資源についての特定資源データ」を「管理DB」に格納することは,本願発明の「コンピュータシステムの必須のアプリケーションに対し不適合なアプリケーションまたはコンピュータシステムを運営する組織の正常な運営に不適合なアプリケーションとして前記組織により指定され設定されたアプリケーションの情報を不適合アプリ格納手段に格納」することに相当するといえる。

(3-4)引用発明の「予め入力により被管理装置それぞれに対して管理DBに設定され呼び出される特定の装置資源を示す特定資源データが,前記被管理装置の装置資源についてのデータベースから呼び出される被管理装置それぞれの資源データが示す装置資源に含まれているか否かを判定し,この判定結果を記憶し管理するとともに表示する」ことは,表示のために「インストールすることが禁じられているソフトウェア」すなわち不適合アプリケーションを検出していることは明らかである。
してみると,引用発明の「予め入力により被管理装置それぞれに対して管理DBに設定され呼び出される特定の装置資源を示す特定資源データが,前記被管理装置の装置資源についてのデータベースから呼び出される被管理装置それぞれの資源データが示す装置資源に含まれているか否かを判定し,この判定結果を記憶し管理するとともに表示する」ことは,本願発明の「前記インストール済みアプリ格納手段に格納された各コンピュータのアプリケーションの情報と前記不適合アプリ格納手段に格納されたアプリケーションの情報とを照合し,不適合アプリケーションがインストールされていることを検出」することに相当するといえる。

以上の対比から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)
組織に設けられ運営されている複数のコンピュータと前記複数のコンピュータを管理するコンピュータシステム管理装置とがネットワークで接続されたコンピュータシステムを管理するコンピュータシステムの管理方法であって,
前記複数の各コンピュータから報告されたそれぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報が送られてくるとコンピュータ別のインストール済みのアプリケーションの情報をインストール済みアプリ格納手段に格納し,
コンピュータシステムの必須のアプリケーションに対し不適合なアプリケーションまたはコンピュータシステムを運営する組織の正常な運営に不適合なアプリケーションとして前記組織により指定され設定されたアプリケーションの情報を不適合アプリ格納手段に格納し,
前記インストール済みアプリ格納手段に格納された各コンピュータのアプリケーションの情報と前記不適合アプリ格納手段に格納されたアプリケーションの情報とを照合し,不適合アプリケーションがインストールされていることを検出する,
ことを特徴とするコンピュータシステムの管理方法。

(相違点1)
本願発明が,「セキュリティに必須の対策が確実に講じられるよう」管理するものであるのに対し,引用発明は,管理についてそのような特定はなされていない点。

(相違点2)
インストールされたアプリケーションの情報の複数の各コンピュータからの報告に関し,
本願発明が,「起動時または周期的に」行うとしているのに対し,引用発明は,そのような構成について言及していない点。

(相違点3)
本願発明が,「不適合アプリケーションがインストールされていることを検出すると,当該コンピュータに対して検出された不適合アプリケーションのアンインストールを促す通知を行いアンインストールを行う」ものであるのに対し,引用発明は,そのような構成について言及していない点。

(4)判断
上記(相違点1)ないし(相違点3)について検討する。

(4-1)(相違点1)について
被管理装置を含むコンピュータシステムの管理装置において,システムの被管理装置に対するセキュリティ対策を講ずるように管理することは,本願優先日前に周知の事項(例えば,引用文献2の上記Jの記載を参照されたい。)である。
してみると,引用発明における被管理装置に対する資源管理を,「セキュリティに必須の対策が確実に講じられるよう」行うものとすること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点1は格別なものではない。

(4-2)(相違点2)について
ネットワークで接続されたサーバへの情報送信を,コンピュータ側から行うこと(例えば,引用文献1の上記Iの記載には,被管理装置が自らの検出を契機に,管理装置へデータを送信する例が記載されている。),及び,当該コンピュータからの送信を,一定期間毎すなわち周期的に行うようにすることは,いずれも情報処理技術の分野における常とう手段であり,当該常とう手段を,とりわけコンピュータのソフトウェア情報の送信のために用いることに,格別困難性があるとも認められない。
してみると,引用発明における被管理装置それぞれからの資源データの送信を周期的に行うようにすること,すなわち,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点2は格別なものではない。

(4-3)(相違点3)について
引用発明は,被管理装置の「インストールすることが禁じられているソフトウェア」が検出された場合に,アンインストールを促す通知やリモートでアンインストールを行うものではないものの,引用文献1の上記Dに「このように,第2の資源管理手段が,・・・管理することにより,システム管理者は,例えば,コンピュータシステムから好ましくないソフトウェア(装置資源)の排除を進めることができ」との記載があるとおり,検出した上記「インストールすることが禁じられているソフトウェア」に対し,排除すなわちアンインストールを進めるよう何らかの対処をすることは,引用文献1に記載されている。
そして,コンピュータに対するソフトウェアのアンインストールをリモート操作により行うことは,本願優先日前に周知の技術(例えば,引用文献3の上記Kの記載,及び,参考文献1の上記Lの記載を参照されたい。)であり,また,コンピュータに対するリモート操作を,当該操作を促す旨の通知の後に行うことも周知技術(例えば,参考文献2の上記Mの記載を参照されたい。)であるといえ,そして,引用発明,上記引用文献1の記載事項,及び,当該周知技術とが共通の技術分野に属するものであることは明らかである。
したがって,引用発明における検出された被管理装置の「インストールすることが禁じられているソフトウェア」が検出された場合について,上記引用文献1の記載事項の如くアンインストールのための対処を行うようにすることに格別困難性はなく,その際,当該アンインストールのための対処として上記周知技術を採用することで,コンピュータに対して,アンインストールを促す通知を行ってアンインストールに係るリモート操作を行うようにすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
してみると,引用発明における被管理装置にインストールされたソフトウェアについて,不適合アプリケーションがインストールされていることを検出すると,コンピュータに対して検出された不適合アプリケーションのアンインストールを促す通知を行いアンインストールを行うようにすること,すなわち,相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点3は格別なものではない。

そして,本願発明により奏する効果も,引用発明,引用文献1に記載の事項,及び,周知技術等から当然予想される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものとは認められない。

よって,本願発明は,引用発明,引用文献1に記載の事項,及び,周知技術等から,当業者が容易になし得たものである。

(5)意見書の主張について
本願発明の進歩性に関し,審判請求人は,平成26年4月3日付けの意見書(以下,単に「意見書」という。)において,

「拒絶理由では,この点について,「コンピュータシステムの管理装置において,被管理装置に対するセキュリティ対策を講じるようにすることは周知技術(例えば,引用文献2の記載を参照)であり,引用発明において上記周知技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。」と認定されています。
しかし,引用文献2の発明は,セキュリティアップデート監視装置であり,ソフトウェアの更新を行うもので,「この発明は,情報端末装置等にインストールされているソフトウェアのセキュリティホールへの対策を実施するセキュリティアップデート監視装置に関するものである。」と引用文献2の段落〔0001〕に記載されているとおりです。
したがって,インストールされたソフトウェアのアップデート(更新)をすることができますが,アンインストールさせるソフトウェアを組織が指定することについての記載はありません。そのため,セキュリティに必須の対策が確実に講じられるよう,不適合アプリケーションを組織が指定してアンインストールさせるものではありません。」(以下,「主張1」という。),

「そして,本願の補正された請求項1は「前記複数の各コンピュータから起動時または周期的に報告されたそれぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報を受け取るとコンピュータ別のインストール済みアプリケーション情報をインストール済みアプリデータベースに格納する手段」を備えていますが,この構成により「各コンピュータから起動時または周期的に」それぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報が報告されて来るため,各コンピュータがコンピュータシステム管理装置によるセキュリティの管理下にあり,漏れなくコンピュータシステムが安全対策を取られていることをその都度確認できるという効果があります。」(以下,「主張2」という。),

「また,引用文献1では,管理装置のユーザの操作に応じて,通信ネットワークを介して被管理装置それぞれに対して,インストールされているソフトウェア資源およびハードウェア資源またはこれらのいずれかを問い合わせて,被管理装置の装置資源を収集しており(引用文献1の段落〔0043〕?〔0046〕),本願請求項1の「前記複数の各コンピュータから起動時または周期的に報告されたそれぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報を受け取るとコンピュータ別のインストール済みアプリケーション情報をインストール済みアプリデータベースに格納する手段」という構成とは明らかに動作原理が異なります。この相違により,引用文献1の発明では,管理装置のユーザが各被管理装置のそれぞれに対してそれぞれのソフトウェア資源とハードウェア資源を「問い合わせ」るという操作をすることが要求される点で,本願請求項1の発明とは,各コンピュータにインストールされているアプリケーションの情報を収集する動作主体及び動作態様が明らかに相違しています。」(以下,「主張3」という。),

「拒絶理由では,「PC内のソフトウェアのアンインストールをリモートにより行うことは周知技術(例えば,引用文献3の記載参照)であることを考慮すれば,引用発明において上記周知技術を適用し,リモートでアンインストールを行うこと,またはアンインストールを促すよう通知する程度のことは,当業者が容易に想到し得たことである。」と認定されています。
しかし,引用文献3は,ネットワークを通して,ローカル・コンピュータ・システムからリモート・コンピュータ・システムに,ソフトウェアをインストールまたはアンインストールするコンピュータ・システムが記載されているに止まり,組織により指摘され設定された不適合アプリケーションをアンインストールするものではありません。さらに,本願の補正された請求項1の発明は,「前記不適合アプリケーションがインストールされていることを検出する手段により不適合アプリケーションがインストールされていることを検出すると」という前提条件があり,この条件が成立すると「前記コンピュータに対して前記不適合アプリケーションのアンインストールを促す通知を行う手段」が動作するものである点で,単なる「アンインストール」を行う構成とは異なることは明らかです。」(以下,「主張4」という。),

「なお,引用文献1では,システム管理者は,各被管理装置のユーザ(職員)が,自分のコンピュータ(被管理装置)に会社業務の遂行と関係のないハードウェア・ソフトウェアをインストールしているか否かを監視することができるとしています(引用文献1の段落〔0030〕)。
しかし,資源の過不足を示す情報は,システム管理者に対して表示されるのみ(引用文献1の段落〔0024〕)で,それ以上の対応がとられていないという問題があります。資源の過不足に対して対応を取りたい場合は,システム管理者が自分の手作業で行わなければなりません。
一方,本発明では,不適合なアプリケーションとして組織により指定され設定されたアプリケーションがインストールされている場合は,すみやかに強制的な対応をとることができます。本発明では,不適合アプリケーションがインストールされていることを検出すると,インストールしているコンピュータに対し,不適合アプリケーションのアンインストールを促す通知を行います。」(以下,「主張5」という。)

と主張していることから,各主張について以下に検討する。
まず,主張1について,引用文献2は「アンインストールさせるソフトウェアを組織が指定すること」が示されているとして引用したものではなく,そして,その点の記載がないことをもって引用発明に上記引用文献2の記載に基づく周知の事項を適用することが困難であるとは認められず,また,本願発明の「コンピュータシステムの必須のアプリケーションに対し不適合なアプリケーションまたはコンピュータシステムを運営する組織の正常な運営に不適合なアプリケーションとして前記組織により指定され設定されたアプリケーションの情報を不適合アプリ格納手段に格納し」に相当する構成については,上記(3)の対比において引用文献1に記載されているとし,当該記載をもとに上記(4-1)では(相違点1)に係る本願発明の構成は容易に想到できるとしたものであるから,いずれにしても上記主張1は採用できない。
次に,主張2について,「起動時または周期的に」との点については,上記(4)の「(相違点2)について」で述べたとおりである。
次に,主張3について,本願の請求項には,「それぞれのコンピュータにインストールされたアプリケーションの情報」を「複数の各コンピュータから起動時または周期的に報告」することが,“何らか”の契機に基づいて行われることについては格別記載がなく,したがって,「動作原理」や「情報を収集する動作主体及び動作態様」が異なるとの主張は本願の請求項の記載に基づかないものであるし,仮に上記のような点が記載上明確になったとしても,コンピュータからの報告の契機をコンピュータ側の動作に基づくものとすることは,上記(4-2)で示したとおり引用文献1に記載されている事項であるから,いずれにしても上記主張3は採用できない。
次に,主張4について,引用文献3は「組織により指摘され設定された不適合アプリケーションをアンインストールする」ことが示されているとして引用したものではなく,そして,その点の記載がないことをもって引用発明に上記引用文献3の記載に基づく周知の技術を適用することが困難であるとは認められず,また,「不適合アプリケーションがインストールされていることを検出し」に相当する構成については,上記(3)の対比において,引用文献1に記載されているとし,当該記載をもとに上記(4-3)では(相違点3)に係る本願発明の構成は容易に想到できるとしたものであるから,いずれにしても上記主張4は採用できない。
そして,主張5について,本願の請求項には,「コンピュータに対して検出された不適合アプリケーションのアンインストールを促す通知を行いアンインストールを行う」との記載はあるものの,当該通知及び指示が,誰に対してなされたものであるかについては格別記載がなく,したがって,「システム管理者に対して表示されるのみ・・・で,それ以上の対応がとられていないという問題があります。」,「システム管理者が自分の手作業で行わなければなりません。」との主張は本願の請求項の記載に基づかないものであるし,また,「不適合アプリケーションがインストールされていることを検出すると,当該コンピュータに対して検出された不適合アプリケーションのアンインストールを促す通知を行いアンインストールを行う」に相当する構成については,上記(4-3)において(相違点3)に係る本願発明の構成は,引用発明,引用文献1に記載の事項,及び,周知技術から容易に想到できるとしたものであり,いずれにしても上記主張5は採用できない。
以上のとおりであるから,審判請求人の前記意見書における主張は採用できない。


第3 むすび

以上から,本願の請求項4に係る発明は,引用発明,引用文献1に記載の事項,及び,周知技術等に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-22 
結審通知日 2014-05-07 
審決日 2014-05-28 
出願番号 特願2010-259858(P2010-259858)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 州一郎  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 仲間 晃
辻本 泰隆
発明の名称 コンピュータシステム管理のプログラム,コンピュータシステム管理装置,コンピュータシステムの管理方法  
代理人 渡部 章彦  
代理人 重久 啓子  
代理人 穂坂 和雄  

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