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審決分類 審判 全部無効 産業上利用性  G01N
審判 全部無効 2項進歩性  G01N
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G01N
管理番号 1289878
審判番号 無効2013-800075  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-04-26 
確定日 2014-06-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4987117号発明「IL-6アンタゴニストを有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 特許第4987117号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由
第1 手続の経緯

本件特許第4987117号に係る出願は、平成12年10月27日に出願した特願2002-538974号の一部を平成22年12月27日に新たな特許出願としたものであって、本件無効審判の手続経緯は以下のとおりである。

平成24年 5月11日 特許権の設定登録

平成25年 4月26日 審判請求書、並びに甲第1号証から甲第5号証
および甲第2号証の翻訳
平成25年 7月29日 訂正請求書(1回目)、並びに答弁書
および乙第1号証から乙第4号証
平成25年 8月 7日 上申書(被請求人、1回目)、並びに
乙第2および3号証の表紙、目次、奥付
平成25年 9月 5日 弁駁書(1回目)および参考資料1
平成25年10月 9日 審理事項通知書
平成25年11月18日 口頭審理陳述要領書(請求人)および甲第5号証
の翻訳
平成25年11月18日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年12月 2日 口頭審理
平成25年12月 6日 上申書(被請求人、2回目)
平成25年12月12日 審決の予告

平成26年 2月17日 訂正請求書(2回目)、
並びに上申書(被請求人、3回目)
および乙第5号証から乙第8号証
平成26年 3月28日 弁駁書(2回目)


第2 訂正の適否

本件特許の訂正について、平成25年7月29日付け訂正請求書(1回目)及び平成26年2月17日付け訂正請求書(2回目)が提出されているが、「訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす」(特許法第134条の2第6項)と規定されているから、訂正請求書(2回目)における訂正の請求のみを検討の対象とする。

1 訂正事項
被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第4987117号の明細書及び特許請求の範囲(以下、両者を併せて「特許明細書」という。)を、平成26年2月17日付けで提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することであり、訂正事項は、以下の訂正事項1ないし11のとおりである。
なお、下線は訂正箇所を示す。

(1)請求項1?2からなる一群の請求項に係る訂正
(1-1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「検出・評価・判定方法。」とあるのを、
「検出・評価・判定方法。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」と訂正する。

(1-2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「検体中のMMP-3濃度を指標」とあるのを、
「(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標」と訂正する。

(1-3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「・・・の効果の・・」とあるのを、「・・・の軟骨破壊抑制効果の・・」と訂正する。

(1-4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0014】を、「本発明は、血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤、さらには、該低下剤および/または、該抑制剤の効果の検出・評価・判定方法およびそれに使用される試薬を提供しようとするものである。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」と訂正する。

(1-5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0021】を、「本発明はまた、MMP-3、MMP-1及びTIMP-1から成る群から選ばれたものの、特にMMP-3の体内濃度、例えば血中濃度などの投与後の経時での低下を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの軟骨破壊抑制効果(例えば治療効果など)につき、その検出・評価・判定のいずれかを行う方法、及びそれに使用される試薬を提供する。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」と訂正する。

(1-6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0151】を、「22.(1)(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標とし、かつ(2)(a)IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、(b)IL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(c)IL-6アンタゴニストを有効成分とした変形性関節症治療剤の軟骨破壊抑制効果の検出・評価・判定方法。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」と訂正する。

(2)請求項3?4からなる一群の請求項に係る訂正
(2-1)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3に「検出・評価・判定する」とあるのを、「検出・評価・判定する(但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。)」と訂正する。

(2-2)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3に「(1)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の変形性関節症治療効果、を検出・評価・判定」とあるのを、
「(1)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の変形性関節症治療での軟骨破壊抑制効果を、薬剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標として検出・評価・判定」と訂正する。

(2-3)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0014】を、「本発明は、血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤、さらには、該低下剤および/または、該抑制剤の効果の検出・評価・判定方法およびそれに使用される試薬を提供しようとするものである。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」と訂正する。

(2-4)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0021】を、「本発明はまた、MMP-3、MMP-1及びTIMP-1から成る群から選ばれたものの、特にMMP-3の体内濃度、例えば血中濃度などの投与後の経時での低下を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの軟骨破壊抑制効果(例えば治療効果など)につき、その検出・評価・判定のいずれかを行う方法、及びそれに使用される試薬を提供する。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」と訂正する。

(2-5)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0152】を、「23.(1)IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤の変形性関節症治療での軟骨破壊抑制効果を、薬剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標として検出・評価・判定する(但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。)ために使用することを特徴とする検体中のMMP-3濃度測定用試薬。
24.抗MMP-3抗体を含有することを特徴とする第23項の試薬。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の「検出・評価・判定方法。」を、「検出・評価・判定方法。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」へ訂正するものである。
訂正前の請求項1記載の特許発明では、「検出・評価・判定方法。」と記載されていたものを、訂正後の請求項1記載の発明では、検出・評価・判定方法から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
医師が人間を手術、治療又は診断する方法が、産業上利用することができる発明に該当しないことは、特許・実用新案審査基準 第II部 第1章 2.1.1に記載されている通り明らかである。ここで、医師が人間を手術、治療又は診断する方法とは、具体的には、「医師(医師の指示を受けた者を含む。)が人間に対して手術、治療又は診断する方法」である。なお、訂正後の請求項1には、「医師の指示を受けた者を含む。」ことは明示されていないが、上記の通り、訂正後の請求項1記載の「医師」には、「医師の指示を受けた者」が含まれることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、もともと、請求項1記載の特許発明から除外されていた範囲を、確認的に、ただし書を用いて除いた訂正に過ぎず、新たな技術的事項を導入する訂正ではないから、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項1は、出願当初から請求項1記載の特許発明に包含されていない、医師が人間を手術、治療又は診断する方法を、確認的に除外することを目的とした訂正であり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項1の「検体中のMMP-3濃度を指標」を、「(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標」へ訂正するものである。
訂正前の請求項1記載の特許発明では、「検体中のMMP-3濃度を指標」として、指標を、検体中のMMP-3濃度とすることのみを特定していたが、その指標がどのようなものであるのかについては特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1記載の特許発明では、当該指標を、「(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下」とする旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
特許明細書の段落【0015】には「・・・MMP-3の血中濃度を低下させることを見出し・・」との記載が、段落【0022】には「【図2】図2は・・・ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中MMP-3の経時変化を示す・・」との記載が、段落【0103】には「後述の実施例に示されるように、抗IL-6受容体抗体の投与により・・・MMP-3の血中濃度の低下が認められたことから、抗IL-6受容体抗体等のIL-6アンタゴニストは血中MMP-3濃度低下効果を有し・・」との記載が、段落【0107】には「・・・抗IL-6受容体抗体などのIL-6アンタゴニストの作用により、・・・こうしたMMP-3などの血中濃度を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの効果・・・、それを検出・・・する方法や、該方法に使用される試薬が、有用なもの・・」との記載が、それぞれなされており、【図2】には、IL-6受容体抗体投与後の経時でMMP-3濃度が低下していることが示されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項2は、指標とする「検体中のMMP-3濃度」に関して発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項1の「・・・の効果の・・」を、「・・・の軟骨破壊抑制効果の・・」と訂正するものである。
訂正前の請求項1記載の特許発明では、「・・・の効果」として、軟骨破壊抑制剤または変形性関節症治療剤の効果とのみを特定していたが、その効果がどのようなものであるのかについては特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1記載の特許発明では、当該効果を、「軟骨破壊抑制効果」とする旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
特許明細書の段落【0103】には「後述の実施例に示されるように、抗IL-6受容体抗体の投与により・・・MMP-3の血中濃度の低下が認められたことから、抗IL-6受容体抗体等のIL-6アンタゴニストは血中MMP-3濃度低下効果を有し、これにより軟骨破壊抑制作用を有する・・」との記載が、段落【0107】には「・・・抗IL-6受容体抗体などのIL-6アンタゴニストの作用により、・・・こうしたMMP-3などの血中濃度を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの効果・・・、それを検出・・・する方法や、該方法に使用される試薬が、有用なもの・・・」との記載が、それぞれなされている。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項3は、軟骨破壊抑制剤または変形性関節症治療剤の「効果」に関し、発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0014】に記載された「検出・評価・判定方法」から、「医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く」ことを、明確にするために、「但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」というただし書を付すように訂正するものである。
訂正前の明細書の段落【0014】では、「検出・評価・判定方法。」と記載されていたものを、訂正後の明細書の段落【0014】では、検出・評価・判定方法から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(1)イに記載したとおり、訂正事項4は、もともと、請求項1?2記載の特許発明から除外されていた範囲を、確認的に、ただし書を用いて除いた訂正に過ぎず、新たな技術的事項を導入する訂正ではないから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(1)ウに記載したとおり、訂正事項4は、出願当初から請求項1?2記載の特許発明に包含されていない医師が人間を手術、治療又は診断する方法を、確認的に除外することを目的とした訂正であり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(3)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、上記訂正事項1?3に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落 【0021】に記載された「検出・評価・判定方法」から、「医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く」ことを、明確にするために、「但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」というただし書を付すように訂正するものである。
訂正前の明細書の段落【0021】では、「検出・評価・判定方法。」と記載されていたものを、訂正後の明細書の段落【0021】では、検出・評価・判定方法から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(4)イと同様に、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(4)ウと同様に、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項1?3に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0151】に記載された「検出・評価・判定方法」から、「医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く」ことを、明確にするために、「但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」というただし書を付すように訂正するものである。
訂正前の明細書の段落【0151】では、「検出・評価・判定方法。」と記載されていたものを、訂正後の明細書の段落【0151】では、検出・評価・判定方法から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(4)イと同様に、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(4)ウと同様に、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項6は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、請求項3の「検出・評価・判定する」を、「検出・評価・判定する(但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。)」へ訂正するものである。
訂正前の請求項3記載の特許発明では、「検出・評価・判定する」と記載されていたものを、訂正後の請求項3記載の発明では、検出・評価・判定から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項7は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
医師が人間を手術、治療又は診断する方法が、産業上利用することができる発明に該当しないことは、特許・実用新案審査基準 第II部 第1章 2.1.1に記載されている通り明らかである。ここで、医師が人間を手術、治療又は診断する方法とは、具体的には、「医師(医師の指示を受けた者を含む。)が人間に対して手術、治療又は診断する方法」である。なお、訂正後の請求項3には、「医師の指示を受けた者を含む。」ことは明示されていないが、上記の通り、訂正後の請求項3記載の「医師」には、「医師の指示を受けた者」が含まれることは明らかである。
したがって、訂正事項7は、もともと、請求項3記載の特許発明から除外されていた範囲を、確認的に、ただし書を用いて除いた訂正に過ぎず、新たな技術的事項を導入する訂正ではないから、訂正事項7は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項7は、出願当初から請求項3記載の特許発明に包含されていない医師が人間を手術、治療又は診断する方法を、確認的に除外することを目的とした訂正であり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項7は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(8)訂正事項8
ア 訂正の目的について
請求項3の「(1)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の変形性関節症治療効果、を検出・評価・判定」を、「(1)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の変形性関節症治療での軟骨破壊抑制効果を、薬剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標として検出・評価・判定」と訂正するものである。
訂正前の請求項3記載の特許発明では、「・・・(1)・・・薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)・・・薬剤の変形性関節症治療効果、を検出・評価・判定・・・」として、薬剤の効果がいかなるものかは特定がなく、指標についても特定されていない。
これに対して、訂正後の請求項3記載の特許発明では、「・・・(1)・・・薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)・・・薬剤の変形性関節症治療での軟骨破壊抑制効果を、薬剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標として検出・評価・判定」とする旨を明らかにすることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項8は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
特許明細書の段落【0015】には「・・・MMP-3の血中濃度を低下させることを見出し・・」との記載が、段落【0022】には「【図2】図2は・・・ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中MMP-3の経時変化を示す・・」との記載が、段落【0103】には「後述の実施例に示されるように、抗IL-6受容体抗体の投与により・・・MMP-3の血中濃度の低下が認められたことから、抗IL-6受容体抗体等のIL-6アンタゴニストは血中MMP-3濃度低下効果を有し・・」との記載が、段落【0107】には「・・・抗IL-6受容体抗体などのIL-6アンタゴニストの作用により、・・・こうしたMMP-3などの血中濃度を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの効果・・・、それを検出・・・する方法や、該方法に使用される試薬が、有用なもの・・」との記載が、それぞれなされており、【図2】には、IL-6受容体抗体投与後の経時でMMP-3濃度が低下していることが示されている。
したがって、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項8は、変形性関節症治療効果、及び検出・評価・判定に関して発明特定事項を直列的に付加するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、上記訂正事項7に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0014】に記載された「検出・評価・判定方法」から、「医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く」ことを、明確にするために、「但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」というただし書を付すように訂正するものである。
訂正前の明細書の段落【0014】では、「検出・評価・判定方法。」と記載されていたものを、訂正後の明細書の段落【0014】では、検出・評価・判定方法から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(7)イに記載したとおり、訂正事項9は、もともと、請求項3?4記載の特許発明から除外されていた範囲を、確認的に、ただし書を用いて除いた訂正に過ぎず、新たな技術的事項を導入する訂正ではないから、訂正事項9は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(7)ウに記載したとおり、訂正事項9は、出願当初から請求項3?4記載の特許発明に包含されていない医師が人間を手術、治療又は診断する方法を、確認的に除外することを目的とした訂正であり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項9は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(10)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、上記訂正事項7および8に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落 【0021】に記載された「検出・評価・判定方法」から、「医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く」ことを、明確にするために、「但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」というただし書を付すように訂正するものである。
訂正前の明細書の段落【0021】では、「検出・評価・判定方法。」と記載されていたものを、訂正後の明細書の段落【0021】では、検出・評価・判定方法から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項10は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(9)イと同様に、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(9)ウと同様に、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項10は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

(11)訂正事項11
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、上記訂正事項7および8に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0152】に記載された「検出・評価・判定」から、「医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く」ことを、明確にするために、「但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」というただし書を付す訂正をするものである。
訂正前の明細書の段落【0152】では、「検出・評価・判定」と記載されていたものを、訂正後の明細書の段落【0152】では、検出・評価・判定から、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く旨を明らかにするものである。
したがって、訂正事項11は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
上記(9)イと同様に、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
上記(9)ウ同様に、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ まとめ
上記「ア」?「ウ」から、訂正事項11は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたもので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正でもない。

3 訂正請求に対する結論

以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号および第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項により準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。
よって、本件訂正を認める。


第3 本件訂正発明

以上のとおりであるから、本件請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」ないし「訂正発明4」という。)は、訂正明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりの以下のものであると認める。

【請求項1】
(1)(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標とし、かつ
(2)(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤の軟骨破壊抑制効果の検出・評価・判定方法。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。
【請求項2】
前記軟骨破壊抑制剤がリウマチ治療剤であることを特徴とする請求項1に記載の検出・評価・判定方法。
【請求項3】
抗MMP-3抗体を含有し、(1)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の変形性関節症治療での軟骨破壊抑制効果を、薬剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標として検出・評価・判定する(但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。)ために使用することを特徴とする検体中のMMP-3濃度測定用試薬。
【請求項4】
前記軟骨破壊抑制作用がリウマチ治療効果であることを特徴とする請求項3に記載のMMP-3濃度測定用試薬。


第4 請求人の主張の概要

1 審決予告前
請求人は、「特許第4987117号の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された発明についての特許を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。」
との審決を求め、甲第1?5号証を添付して審判請求書を提出し、参考資料1を添付して平成25年9月5日弁駁書、および平成25年11月18日口頭審理陳述要領書を提出し、以下の無効理由1及び2により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであると主張している。

(無効理由1)特許法第29条第1項柱書違反
訂正発明1及び2は、軟骨破壊抑制剤(リウマチ治療剤)または変形性関節症治療剤の効果を検出・評価・判定する方法に関するものであり、治療剤の効果について検出・評価・判定を行うのは医師であるから、人間を診断する方法に関する発明に該当する。
また、訂正発明3及び4は、医師による「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤」の効果を検出・評価・判定するために使用するという医療行為が構成要件とされており、この結果、東京高判平成14年4月11日判決(平成12年(行ケ)第65号)が判示するように、「医師は、常に、これから自分が行おうとしていることが特許の対象になっているのではないか、それを行うことにより特許権侵害の責任を追及されることになるのではないか、どのような責任を追及されることになるのか、などといったことを恐れながら、医療行為に当たらなければならないことになりかねない。」ので、医療行為に当たる医師をこのような状況に追い込む訂正発明3及び4は特許性が認められるべきではない。
したがって、訂正発明1?4は、いずれも特許法第29条第1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しない。

(無効理由2)特許法第29条第1項第3号および第2項違反
(無効理由2-1)訂正発明1?4の進歩性欠如
訂正発明1?4は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、MMP-3濃度を指標として「IL-6受容体に対する抗体を有効成分としたリウマチ治療剤(軟骨破壊抑制剤)」の効果を検出・評価・判定することは容易に想到することができたので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(無効理由2-2)訂正発明3および4の新規性欠如
訂正発明3及び4は、「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤」に特定しているものの、結局、MMP-3濃度測定用試薬自体は、訂正発明3及び4も、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証のいずれかに記載された発明も、MMP-3濃度を測定するという点において同じ作用及び機能を利用するものであり、リウマチ診断という点で同じ用途に使用されるものであるから、両者を区別することはできない。
そして、訂正明細書には、検体中のMMP-3を測定するのに適した技術として甲第3号証が記載されていること(【0113】)から、訂正発明3及び4は、新規のMMP-3濃度測定用試薬を提供するものではなく、従来から公知のMMP-3濃度測定用試薬を採用したに過ぎない。
したがって、訂正発明3及び4は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証のいずれかに記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

そして、請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

(甲第1号証)杉本和則ほか著「慢性関節リウマチにおける疾患修飾性リウマチ薬の治療効果と血清MMP-3濃度の変動」中部リウマチ Vol.30、No.1、34?35頁(中部リウマチ学会、平成11年2月発行)
(甲第2号証)F.M.BRENNAN他著「REDUCTION OF SERUM MATRIX METALLOPROTEINASE 1 AND MATRIX METALLOPROTEINASE 3 IN RHEUMATOID ARTHRITIS PATIENTS FOLLOWING ANTI-TUMOUR NECROSIS FACTOR-α(cA2) THERAPY」British Journal of Rheumatology, Vol.36, No.6, p.643-650 (1997)
(甲第3号証)特開平4-237499号公報
(甲第4号証)国際公開第96/11020号
(甲第5号証)Gene A. HOMANDBERG他著「Fibronectin-fragment-induced cartilage chondrolysis is associated with release of catabolic cytokines」Biochem. J., Vol.321, No.3, p.751-757 (1997)

2 審決予告に基づく訂正請求(2回目)後
請求人は、平成26年3月28日付け弁駁書(2回目)において、上申書(被請求人、3回目)による被請求人の主張及び乙第5?8号証の記載を考慮しても、審決予告に記載された無効理由2の認定判断に影響はなく、訂正発明1?4は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであると主張し、また、無効理由1についても解消されていないと主張している。

第5 被請求人の主張の概要

1 審決予告前
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、乙第1ないし4号証を添付して答弁書と共に「訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求める。」と訂正請求書を平成25年7月29日付けで提出し、平成25年11月18日付け口頭審理陳述要領書および平成25年12月6日付け上申書を提出して、本件訂正は認められるべきであり、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては訂正発明1ないし4を無効とすることはできないと主張している。

被請求人の提出した証拠方法は以下のとおりである。

(乙第1号証)臨床検査、vol.35, no.5, 447-452頁(1991年5月)
(乙第2号証)別冊・医学のあゆみ「サイトカインと疾患」(2000年7月10日発行)26?30頁
(乙第3号証)「診断のマニュアルとEBMに基づく治療ガイドライン」(平成16年4月1日発行)84?98頁
(乙第4号証)リウマチ、Vol.34(6), p.1013-1018 (1994)

2 審決予告に基づく訂正請求(2回目)後
平成26年2月17日に、「訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求める。」との訂正請求書(2回目)および乙第5?8号証を添付した上申書(3回目)を提出して、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては訂正発明1?4を無効とすることはできないと主張している。

被請求人の提出した証拠方法は以下のとおりである。

(乙第5号証)リウマチ、Vol.38(5), p.752-761 (1998)
(乙第6号証)ARTHRITIS & RHEUMATISM, Vol.41, No.7, pp.l203-1209 (1998)
(乙第7号証)末長敢著「慢性関節リウマチ膝関節における骨・軟骨移行部の病態に関する研究」100(9-10), pp.959-970, 1988, 岡山医学会
(乙第8号証)リウマチ科, 20(6)「慢性関節リウマチにおける血清IL-6およびMMP-3濃度の臨床的有用性について」pp.575-580, 1998


第6 証拠の記載事項

本件特許の原出願日である平成12年10月27日よりも前に頒布された刊行物である以下の甲号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。下線は当審で加えたものである。

1 甲第1号証

(1a)「慢性関節リウマチにおける疾患修飾性抗リウマチ薬の治療効果と血清MMP-3濃度の変動」(34頁表題)

(1b)「はじめに
matrix metalloproteinase(以下MMP)は細胞外のmatrix componentに作用し、関節破壊に関与する蛋白溶解酵素であり、なかでもMMP-3はpannus tissueでより多く認められるため関節破壊により深く関与していると考えられている。またMMP産生は炎症性サイトカインによって促進されることも知られている。
今回われわれは、慢性関節リウマチ(以下RA)患者の血清MMP-3を測定し、疾患修飾性抗リウマチ薬(以下DMARDs)による治療によりどのように変動したかを検討したので報告する。」(34頁左欄1?11行)

(1c)「対象と方法
1987年ARA改訂基準を満たす当院に通院しているRA患者71例(男性7例、女性64例、平均年齢±SD:57.7±10.8歳、平均罹病期間±SD:8.9±8.2年)を対象とした。
対象RA患者より採血後、2400rpmにて10分間遠心し、その上清を血清サンプルとした。測定までは-80℃にて保存した。測定にはone step sandwich法を用いた。」(34頁左欄12?19行)

(1d)「結果
・・・
近年RAの薬効評価には1993年に出されたACR core setが用いられるようになった。今回われわれは疾患活動性評価にACR core setではなくLansbury指数を用いたが、ACR core setの20%以上の改善にならいLansbury指数が全値と比較して20%以上改善している症例だけを集めて検討した。この場合、治療後6ヶ月での血清MMP-3は治療前の値と比較して有意に減少した(Fig.2)。
・・・
さらにLansbury指数と血清MMP-3との間の相関について検討した。有意な相関が認められた(Fig.3)。
Lansbury指数は、1)朝のこわばり、2)握力、3)関節点数、4)赤血球沈降速度の4項目で算出される。血清MMP-3がこれら4項目のどれと相関するかを次に検討した。その結果、朝のこわばり・握力・関節点数とは相関を認めなかったが、赤血球沈降速度とは有意な相関を示した(Fig.4)。
赤血球沈降速度と同様に炎症反応といわれるCRPについても検討したが、赤血球沈降速度と同様にCRPも血清MMP-3と有意な相関を認めた。」(34頁左欄20行?右欄17行)

(1e)「考察
MMPはRAにおける関節破壊に関係する蛋白溶解酵素であり、なかでもMMP-3はpannus tissueに多く認められることから特に重要と考えられる。本来であれば関節液中のMMP-3を測定すべきであるが、1)関節液中と血清中のMMP-3は相関するという報告が複数なされていること、2)関節液採取より血清採取の方が患者負担が少ないことより血清MMP-3を測定し、DMARDs治療によってどのように変動するかを検討することにした。
DMARDs治療前と治療後6ヶ月との血清MMP-3を単純に比較すると有意な変動を認めなかったが、Lansbury指数にて20%以上改善した症例に限ると血清MMP-3は有意に減少した(Fig.2)。」(34頁右欄18?30行)

(1f)「まとめ
1)血清MMP-3は、疾患修飾性抗リウマチ薬が奏効し、疾患活動性が低下した症例で減少した。
2)血清MMP-3は、赤血球沈降速度やCRPなどの炎症反応と有意な相関を示した。
3)血清MMP-3と骨関節破壊との関係は、観察期間が短いこともあり明らかではなかった。今後もX線変化について経過観察することが必要であると思われる。」(35頁右欄16?23行)

(1g)「


」(35頁)

2 甲第2号証および甲第2号証の訳文
なお、甲第2号証の下記の訳文は、請求人が提出した翻訳文に基づいている。

(2a)「REDUCTION OF SERUM MATRIX METALLOPROTEINASE 1 AND MATRIX METALLOPROTEINASE 3 IN RHEUMATOID ARTHRITIS PATIENTS FOLLOWING ANTI-TUMOUR NECROSIS FACTOR-α(cA2) THERAPY」(643頁の表題)
(訳文)「関節リウマチ患者における抗腫瘍壊死因子-α(cA2)療法後の血清マトリックスメタロプロティナーゼ1及びマトリックスメタロプロティナーゼ3の減少」

(2b)「SUMMARY
Matrix metalloproteinase (MMP)-1 and MMP-3 levels were measured in serum samples from rheumatoid arthritis (RA) patients undergoing a double-blinded placebo-controlled trial with the chimaeric anti-tumour necrosis factor (TNF)-α antibody cA2. Both MMP-1(P<0.015), but to a larger extent MMP-3(P<0.001) levels were elevated in all RA patients prior to the commencement of the trial compared with normal control sera. Following cA2 therapy, MMP-1 and MMP-3 levels were assessed in the placebo, and 1 and 10 mg/kg cA2-treated groups at 7, 14, 21 and 28 days. In both the 1 and the 10 mg/kg cA2-treated groups, a significant decrease in serum MMP-3 levels at all time points was observed, reducing maximally to 41% of pre-infusion values at day 7.」(643頁要約1?6行)
(訳文)「要約
キメラ型抗腫瘍壊死因子(TNF)-α抗体cA2を用いた二重盲検プラセボ比較試験の被験関節リウマチ(RA)患者からの血清試料において、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-1及びMMP-3値を測定した。試験開始前の全てのRA患者でMMP-1(P<0.015)及びMMP-3(P<0.001)値は、いずれも、しかもMMP-3では、より大幅に、健常人血清に比較して高い値を示した。 cA2療法後、MMP-1及びMMP-3値を、プラセボ、並びに1及び10mg/kg cA2投与群において、7、14、21、及び28日に測定した。1及び10mg/kg cA2投与群の双方において、全ての時点で血清MMP-3値に有意な減少が見られ、7日目には注入投与前値の41%と最も減少した。」(甲第2号証翻訳1頁11?19行)

(2c)「Of the conventional MMP enzymes MMP-1 (interstitial collagenase) and MMP-3 (stromelysin-1) are thought most likely to be involved in the pathogenesis of RA as MMP-1 degrades collagen type II and MMP-3 degrades a range of matrix proteins including proteoglycans, laminin, fibronectin and gelatin found in connective tissue in the synovial joint (reviewed in [12]). This concept is supported by the observation that MMP-1 [15, 16] and, in particular, MMP-3 levels [16, 17] are raised in RA synovial fluid, with MMP-3 levels also correlating with markers of disease activity such as C-reactive protein (CRP) and erythrocyte sedimentation rate (ESR). Serum levels of MMP-3, but not of MMP-1 [17-20], are also increased compared with normal control levels, and show a highly significant correlation with matched synovial fluids [19, 20], indicating that serum pro-MMP-3 is derived chiefly from that synthesized in the synovium.」(643頁右欄下から8行?644頁左欄10行)
「測定されるMMP酵素の中では、MMP-1(間質コラゲナーゼ)及びMMP-3(ストロムライシン-1)が、RAの病理発生に関与している可能性が最も高いと考えられるが、それは、MMP-1がII型コラーゲンを分解し、MMP-3が、滑膜関節の結合組織中に見られる、プロテオグリカン、ラミニン、フィブロネクチン、及びゼラチンを含む様々なマトリックスタンパク質を分解するからである([12]に総説)。この概念は、MMP-1[15、16]及び特にMMP-3値[16、17]が、RA滑液中で高値化し、かつMMP-3に、C-反応性タンパク質(CRP)及び赤血球沈降速度(ESR)などの疾患の活動性のマーカーと相関するという知見によって支持される。MMP-1では顕著ではないが[17-20]、血清中のMMP-3値は、健常人の値に比較して増加し、かつ対応する滑液と非常に有意な相関を示し[19、20]、血清中のpro-MMP-3が、滑膜内で合成されたものに主に由来することを示している。」(甲第2号証翻訳3頁3?12行)

(2d)「MMP-3 was assayed in a blinded fashion by ELISA using reagents provided by Dr Jaspar, Biosource Europe S.A, Belgium. The assay recognizes pro-MMP-3 activated MMP-3, MMP-3 in complex with TIMP-1, but not MMP-3 complexed with α_(2)M (data not shown). The range of the assay was 1.25-20 ng/ml. Briefly, blocked 96-well plates were received coated with a monoclonal antibody specific to human MMP-3. Serum samples were diluted from 1:10 to 1:200 and 50μl added to the plates in duplicate; individual patients were assayed on the same plate. An anti-MMP-3 antibody conjugated to horseradish peroxidase (HRP) was diluted and 50 μl added to each well. The plates were incubated at room temperature for 2 h on a horizontal shaker set at 700 ±100 r.p.m. The liquid from each well was aspirated and the plates washed four times with 0.4 ml of Medgenix wash solution in each well. Plates were developed using 100 μl of freshly prepared TMB solution for 15 min at room temperature on a horizontal shaker set at 700±100 r.p.m. The reaction was stopped by the addition of 200 μl of 0.3 N H_(2)SO_(4) and the absorbance was read at 450 nm within 30 min. MMP-3 concentrations were calculated by reference to a standard curve. Up to 100 mg/ml cA2 were added to the standard curve and did not significantly affect the results (data not shown).」(645頁左欄31?57行)
(訳文)「MMP-3は、ヤスパー(Jaspar)博士、バイオソース・ヨーロッパ(Biosource Europe)S.A.ベルギー、により提供された試薬を用いて、ELISAによるブラインド方式で測定した。測定で、pro-MMP-3、活性型MMP-3、TIMP-1と複合体を形成したMMP-3を認識するが、α_(2)Mと複合体を形成したMMP-3は認識しない(データは示さず)。測定の範囲は、1.25ないし20ng/mlであった。簡単にいえば、ヒトMMP-3に特異的なモノクローナル抗体でコートされた96ウェルプレートの提供を受けた。血清試料を1:10から1:200 まで希釈し、50μlをプレートに二重測定できるように添加し;個々の患者を同一のプレート上で測定した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗MMP-3抗体を希釈し、50μ1を各ウェルに添加した。プレートを、700±100 r.p.m.にセットされた水平型シェーカー上で、室温で2時間インキュベートした。各ウェルから液体を吸引し、プレートを各ウェルに0.4mlのメドジェニクス(Medgenix)洗浄液を用いて4回洗浄した。プレートを、新たに調製した100μ1のTMB溶液を用いて、700±100 r.p.m.にセットされた水平型シェーカー上で、室温で15分間反応させた。 200μ1の0.3N H_(2)S0_(4)の添加により反応を停止し、30分以内に波長450nmでの吸収を測定した。MMP-3濃度を、標準曲線を用いて計算した。100μg/m1までのcA2を標準に添加したが、結果に有意な影響はなかった(データは示さず)。」(甲第2号証翻訳6頁4?19行)

(2e)「Serum levels of MMP-3 in patients treated with cA2
Table II summarizes the pre- and post-infusion (day 7, 14, 21, 28) MMP-3 levels (mean, median and range) in the RA sera (n=57) analysed from the multicentre, placebo-controlled cA2 trial. The median MMP-3 concentration in the pre-infusion RA serum samples was 79.2 ng/ml (placebo group), 118.6 ng/ml (1 mg/kg cA2 group) and 88.6 ng/ml (10 mg/kg cA2 group), not significantly different from each other, but all were significantly higher (P<0.001) than the median MMP-3 serum levels (14.4 ng/ml) in the normal control group (n=44).
As with the MMP-1 data, the MMP-3 data within groups were analysed by the Wilcoxon rank test to compare median values at each time point with the pre-infusion value (Table II) and by the Mann-Whitney U-test to compare the placebo group at each time point with the cA2 (1 or the 10 mg/kg) treated group using the median data expressed as a percentage relative to pre-infusion values (Fig.2) and adjusted with the Bonferroni correction.
The median MMP-3 levels in the placebo-treated patients were relatively unchanged over the course of the 4 weeks for which samples were assayed (Table II, Fig.3). However, in both the 10 mg/kg cA2-treated group and the 1 mg/kg cA2-treated group, a significant reduction in median MMP-3 levels was observed by day 7 and at all other subsequent time points. Thus, at day 7 in the 10 mg/kg cA2-treated group, a significant decrease (P<0.012) from the pre-infusion median level of 87 ng/ml to 34 ng/ml was observed, which was maintained at day 14 (41 ng/ml), day 21 (46 ng/ml) and day 28 (55 ng/ml)(P<0.004)(Table II). The MMP-3 level at day 7 was 41% of pre-infusion values (Fig.2), and was significantly different (P<0.002) from the placebo group analysed by the Mann-Whitney U-test, and throughout the 28 day trial period: day 14 (to 43%, P<0.001), day 21 (to 56%, P<0.002), day 28 (to 62%, P<0.001), respectively.
In the patients receiving 1 mg/kg cA2, the median pre-infusion level of 119 ng/ml reduced to 79 ng/ml (P<0.024) at day 7, 60 ng/ml (P<0.012) at day 14, 77 ng/ml (P<0.044) at day 21, and 81 ng/ml (P<0.032) at day 28 (Table II). These changes in MMP-3 levels were also significantly different from the placebo-treated group at each time point except day 28; thus at day 7 the MMP-3 level was 67% of pre-infusion values (P<0.017), 53% at day 14 (P<0.0038), and 75% at day 21 (P<0.02).」(646頁右欄12行?647頁右欄12行)
(訳文)「cA2を投与した患者における血清中MMP-3値
表IIに、cA2の多施設比較臨床試験で測定した、RA血清(n=57)中の投与前及び注入投与後(7、14、21、及び28日)のMMP-3値(平均値、中央値、及び範囲)を要約する。投与前のRA患者血清試料におけるMMP-3濃度の中央値は、79.2ng/ml(プラセボ群)、118.6ng/ml (lmg/kg cA2投与群)、及び88.6ng/ml (10mg/kg cA2投与群)で、有意差はなかったが、全てが、健常人群(n=44)におけるMMP-3血清レベルの中央値(14.4ng/ml)よりも高かった(P<0.001)。
MMP-1の値と同様に、群内のMMP-3値を測定時点における中央値を注入投与前値とウィルコクソンの順位和検定によって比較分析して、(表II)、かつ測定時点におけるプラセボ群とcA2 (1又はl0mg/kg)投与群を、注入投与前値と比較したパーセントとした値の中央値を用いてマン・ホイットニーのU検定で比較し(図2)、ボンフェローニの補正によって調整した。
プラセボ群におけるMMP-3値の中央値は、試料の測定を行った4週間にわたり、比較的変化しなかった(表II、図3[図2が正しい])。しかしながら、10mg/kg cA2投与群及びlmg/kg cA2投与群の双方において、7日目及びそれに続く全ての測定日で、MMP-3レベルの中央値に有意な減少が見られた。したがって、10mg/kg cA2投与群では7日で87ng/mlの注入投与前値の中央値から34ng/mlへの有意な減少(P<0.012)が観察され、14日(41ng/ml)、21日(46ng/ml)、及び28日(55ng/ml)まで維持された(P<0.004)(表II)。7日でのMMP-3値は、注入投与前値の41%であり(図2)、プラセボ群と比較してマン・ホイットニーのU検定は有意差がみられ(P<0.002)、また28日の試験期間全体では:それぞれ14日(43%、P<0.001)、21日(56%、P<0.002)、28日(62%、P<0.001)であった。
lmg/kg cA2を受けた患者では、注入投与前値の中央値119ng/mlは、7日では79ng/ml (P<0.024)に、14日では60ng/ml(P<0.012)に、21日では77ng/ml (P<0.044)に、また28日では81ng/ml (P<0.032)に減少した(表II)。MMP-3値におけるこれらの変化は、28日を除く各時点においても、プラセボ処理群とは有意な差が見られ、7日におけるMMP-3レベルは注入前値の67%(P<0.017)であり、14日では53%(P<0.0038)、21日では75% (P<0.02)であった。」(甲第2号証翻訳8頁7行?9頁5行)

(2f)「DISCUSSION
The MMP enzymes are generally considered to play a role in the pathogenesis of RA, based on their local expression in the synovial joint and their capacity to destroy connective tissue components. As the pro-inflammatory cytokine TNF-α is a potent transcriptional inducer of MMPs [4, 33], it was of interest to determine whether serum levels of these enzymes, which are elevated in RA, were reduced following treatment with the chimaeric neutralizing anti-TNF-α antibody cA2. We focused on MMP-1 (collagenase) and MMP-3 (stromelysin) as these two MMPs, in particular, have been linked to the connective tissue changes which occur in this disease, and their serum levels correlate with disease activity. In our study we confirmed the previous observation [17-20] that compared with normal sera, MMP-3 (>5-fold), but also MMP-1 (1.5- to 2-fold) levels were elevated in RA sera. Following cA2 therapy, MMP-3 levels fell rapidly and in the first sample collected 7 days post-infusion were 40% of the pre-infusion values in the 10 mg/kg cA2 treatment group. The decrease in MMP-3 levels was significant throughout the study period (up to 4 weeks) and was apparent in both the high (10 mg/kg) and low (1 mg/kg) cA2 group. In this respect, the rapid modulation of serum MMP-3 levels was similar to that observed with many other parameters of disease activity, including IL-6 and CRP levels [30].」(648頁左欄下から7行?右欄21行)
(訳文)「考察
MMP酵素は一般に、滑膜関節における局所的発現と結合組織成分の破壊能とに基づき、RAの病因としての役割をもつと考えられている。炎症促進性サイトカインTNF-aは、MMPの強力な転写誘導体であることから[4、33]、RAにおいて高められるこれらの酵素の血清レベルが、キメラ型中和性抗TNF-α抗体、cA2投与処理の後に低下するかどうかを測定することは興味深いことであった。我々は、MMP-1(コラゲナーゼ)及びMMP-3(ストロムライシン)に注目したが、それは、これら2つのMMPが特に、この疾患において起こる結合組織の変化に関連していること、及びそれらの血清での値が疾患の活動性と相関することからである。今回の研究において、我々は、健常人血清に比較してMMP-3(>5倍)が、またMMP-1(1.5ないし2倍)値も、RA患者血清中で上昇しているという先の知見[17-20]を確認した。cA2の投与療法の後、MMP-3値は速やかに低下し、注入投与後7日で採取された最初の試料中では、10mg/kg cA2 投与群で、注入投与前値の40%であった。MMP-3 値の減少は、試験期間(4週間まで)を通して有意であり、高い用量(10mg/kg)及び低い用量(lmg/kg)のcA2投与群の双方において明らかであった。この点については、血清MMP-3値の速やか調節は、IL-6及びCRP値[30]を含め、多くの他の疾患活動性のパラメータについて観察されるものと同様であった。」(甲第2号証翻訳10頁10?25行)

3 甲第3号証

(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ヒトストロムライシンに存在する抗原決定基のうち、いずれか一つの抗原決定基のみに免疫反応性を有する各モノクローナル抗体であって、潜在型ストロムライシン(プロストロムライシン)と活性型ストロムライシンとを区別することなく反応するモノクローナル抗体。
【請求項2】ヒトストロムライシンの異なる2つの抗原決定基に対し、それぞれ特異的に結合する請求項1記載のモノクローナル抗体2種の組み合わせを用いてサンドイッチ法により、潜在型ストロムライシンの量と活性型ストロムライシンの量の総和を定量することを特徴とするヒトストロムライシンの酵素免疫測定法。
【請求項3】請求項2に記載の酵素免疫測定法により、検体中に存在するヒトストロムライシンを潜在型ストロムライシンの量と活性型ストロムライシンの量の総和として定量し、その定量値を健常人の相当する検体の定量値と比較することに基づき、慢性関節リウマチ疾患を診断する方法。」

(3b)「【0001】
【技術分野】本発明は、抗ヒトストロムライシンモノクローナル抗体、及びそのモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定法ならびに該測定法に基づき、検体中に存在するヒトストロムライシンを潜在型ストロムライシンの量及び活性型ストロムライシンの量の総和として定量し、それによって、慢性関節リウマチ疾患を診断する方法に関する。
【0002】
【背景技術】ストロムライシンは、プロテオグリカナーゼあるいはMMP-3(マトリックス・メタロプロティナーゼ-3)とも呼ばれ、各種のサイトカインあるいは各種の増殖因子などで刺激された線維芽細胞や腫瘍細胞で産生される物質である。生体内では、慢性関節リウマチ疾患患者の関節局所で産生されるほか、血液中あるいは関節液中に存在する。」

(3c)「【0009】ヒトストロムライシンは、種々の関節疾患のうちでも特に慢性関節リウマチ疾患において、その疾患患者の関節局所で多量に合成・分泌されていることが見出された。変形性関節症疾患患者の滑膜表層細胞や関節軟骨細胞もストロムライシンを合成・分泌しているが、慢性関節リウマチ疾患では、多発性の関節炎を生じるのに対し、変形性関節症疾患では、通常、単発性であることから、変形性関節症疾患患者の血中あるいは関節液中のストロムライシン量には健常人の場合に比べて著明な増加は認められない。」

(3d)「【0011】
【発明の開示】本発明は、ハイブリドーマによるIgGクラスの抗ヒトストロムライシンモノクローナル抗体ならびにその製造方法、及び上記モノクローナル抗体を用いるサンドイッチ法に基づくヒトストロムライシンの酵素免疫測定法及びその測定法により慢性関節リウマチ疾患患者の血液その他の検体中のストロムライシン量を定量し、その定量値を健常人の相当する検体中のストロムライシンの定量値と比較することに基づき慢性関節リウマチ疾患を診断する方法を提供するものである。」

4 甲第4号証

(4a)「「技術分野
本発明はインターロイキンー6アンタゴニストを有効成分とする慢性関節リウマチ治療剤又は滑膜細胞増殖抑制剤に関する。」(明細書1頁3?5行)

(4b)「IL-6は、細胞上で二種のタンパク質を介してその生物学的活性を伝達する。一つは、IL-6が結合する分子量約80KDのリガンド結合性タンパク質、IL-6レセプター(IL-6R)である。
IL-6Rは、細胞膜を貫通して細胞膜上に発現する膜結合型の他に、主にその細胞外領域からなる可溶性IL-6R(sIL-6R)としても存在する。もう一つは非リガンド結合性のシグナル伝達に係わる分子量約130KDのgp130である。IL-6とIL-6RはIL-6/IL-6R複合体を形成し、次いでもう一つの膜クンパク質gp130と結合することにより、IL-6の生物学的活性が細胞に伝達される(Tagaら、J . Exp. Med. 196:967, 1987)。
慢性関節リウマチ患者の血清あるいは滑液には、過剰な量のインターロイキンー6(IL-6)と可溶性IL-6レセプター(sIL-6R)が存在することが報告され・・・、関節リウマチモデル動物でも同様の結果が得られている・・・ことからIL-6が慢性関節リウマチとなんらかの係わりを有すると推察されている。」(明細書2頁22行?3頁18行)

(4c)「本発明の慢性関節リウマチ治療剤とは、慢性関節リウマチ患者に投与することにより、関節の滑膜細胞の増殖を抑制し、症状の緩和および治療効果を有する薬剤である。
本発明で使用されるIL-6アンタゴニストは、IL-6によるシグナル伝達を遮断し、IL-6の生物学的活性を阻害するものであれば、その由来を問わない。IL-6アンタゴニストとしては、IL-6抗体、IL-6R抗体、gp130抗体、IL-6改変体、IL-6RのアンチセンスあるいはIL-6またはIL-6Rの部分ペプチド等が挙げられる。」(明細書6頁4行?12行)

(4d)「IL-6R抗体としては、PM-1抗体(Hirataら、J. Immunol. 143:2900-2906, 1989)、AUK12-20抗体、AUK64-7抗体あるいはAUK146-15抗体(国際特許出願公開番号WO92-19759)などが挙げられる。」(明細書7頁4?8行)

(4e)「実施例2.
マウス関節炎モデルでの関節炎発症に対するIL-6レセプター抗体の抑制効果を調べた。
・・・その結果、IL-6レセプター抗体投与群ではコントロール抗体投与群に比べて軟骨や骨への肉芽組織の侵潤すなわち慢性増殖性滑膜炎が抑制されていた。」(明細書25頁10行?26頁16行)

5 甲第5号証
(5a)「Fibronectin-fragment-induced cartilage chondrolysis is associated with release of catabolic cytokines」(751頁表題)
(訳文)「フィブロネクチン断片により誘導される軟骨融解には、カタボリックサイトカイン(異化促進性サイトカイン)類の放出が関係している」(甲第5号証翻訳1頁1?2行)

(5b)「The physiological significance of these activities is supported by observations that injection of fibronectin fragments into rabbit knee joints causes over 50% removal of articular cartilage PG within 7 days [6] and that synovial fluids of patients with osteoarthritis and rheumatoid arthritis contain elevated levels of fibronectin fragments of a range of sizes [7,8].」(751頁左欄下から6?12行)
(訳文)「このような活性の生理的重要性を支持する知見としては、ウサギ膝関節にフィブロネクチン断片を注入すると関節軟骨PGが7日以内に50%超も減少すること^(参考文献6)、及び骨関節炎及び関節リウマチ患者において様々な大きさのフィブロネクチン断片の関節液中濃度が上昇していることが挙げられる^(参考文献7, 8)。」(甲第5号証翻訳2頁17?20行)

(5c)「MMP-3 ELISA
MMP-3 protein was measured in conditioned medium of human chondrocyte culture using an ELISA kit from Fuji Chemicals Industries.」(753頁左欄24?27行)
(訳文)「MMP-3のELISA
MMP-3蛋白質は、富士化学工業株式会社のELISA試薬キットを用いて、培養したヒト軟骨細胞の条件培地で行った。」(甲第5号証翻訳6頁下から3?1行)

(5d)「

」(756頁Table 3)
(訳文)「表3.異化促進性サイトカインの中和抗体が、91歳ドナー由来の大腿骨骨頭軟骨細胞のFn-fによるMMP-3放出に及ぼす効果
10%血清/DMEM中でヒト関節軟骨細胞の培養を確立し、培養開始4日後に、ウェル中が5μg/m1の抗体となるように調節した。さらに24時間後、培地を交換して新たな抗体を加え、0.1μMFn-fとなるように培地を調節した。24時間後に、ELISAを用いて培地中MMP-3量を測定した。MMP-3濃度は、培養ウェル当たり10^(6)細胞に標準化した条件培地中の濃度である。6個のウェルの平均土SD値を示す。P値<0.05を有意とし、(s)で示した。阻害度(%)は([Fn-f単独値]-[Fn-f+抗体値])×100/[Fn-f単独値]と定義した。


」(甲第5号証翻訳16頁1?9行)


第7 当審の判断

1 無効理由1(特許法第29条第1項柱書)について

(1)訂正発明1及び2について
請求人の主張は、訂正発明1及び2は、軟骨破壊抑制剤(リウマチ治療剤)または変形性関節症治療剤の軟骨破壊抑制効果を検出・評価・判定する方法に関するものであり、治療剤の効果について検出・評価・判定を行うのは医師であるから、人間を診断する方法に関する発明に該当し、特許法第29条第1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しない、というものである。

まず、我が国における一般的な判断基準を検討するに、日本医師会の代表者も構成員となっている知的財産戦略本部・知的財産による競争力強化専門調査会・先端医療特許検討委員会が2009(平成21)年5月29日に取りまとめた「先端医療分野における特許保護の在り方について」と題する報告書28?29頁には、「最終的な診断を補助するための人体のデータ収集方法の発明」に関する有識者の提言として、
「先進諸外国の特許制度との調和を図りつつ、今後出現する画期的な仕組み、原理の測定機器に係る発明の包括的な保護を可能とし、新たな技術を適切に保護するため、現在特許対象外となっている「最終的な診断を補助するための人体のデータ収集方法(手術、治療、診断が含まれない人体の計測・測定方法)の発明」( 例:MRI、X 線CT 等による断層画像撮像の仕組み、原理等)を新たに特許対象とすべく、特許対象となる事例と特許対象外となる事例を示しつつ、審査基準を改訂すべきである。」と記載されており、
この提言を踏まえて、特許庁が平成21年10月23日に公表した「特許・実用新案審査基準 第II部 第1章 産業上利用することができる発明」の2.1.1.2(3)において、「人体から各種の資料を収集するための以下の方法は、医療目的で人間の病状や健康状態等の身体状態若しくは精神状態について、又は、それらに基づく処方や治療・手術計画について、判断する工程を含まない限り、人間を診断する方法に該当しない」ことが明確になり、特許可能な発明として「人体から収集された試料又はデータを用いて基準と比較するなどの分析を行う方法」が例示されている。

訂正発明1及び2に係る「(a)・・・軟骨破壊抑制剤、または(b)・・・変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標とし、・・・(a)・・・軟骨破壊抑制剤、または(b)・・・変形性関節症治療剤の軟骨破壊抑制効果の検出の検出・評価・判定方法。」について検討するに、訂正明細書には、【発明の概要】として、「【0021】本発明はまた、MMP-3 、MMP-1 及びTIMP-1から成る群から選ばれたものの、特にMMP-3の体内濃度、例えば血中濃度などの投薬後の経時での低下を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの軟骨破壊抑制効果(例えば治療効果など)につき、その検出・評価・判定のいずれかを行う方法、及びそれに使用される試薬を提供する。」と記載され、【実施例】として、「【0119】前値、治療開始後2ヶ月、および6ヶ月間治療を継続したリウマチ患者4例およびCD患者2例については6ヶ月目の値も検討した。MMP-1,-2,-3,-7,-8および-13並びにTIMP-1および-2の血中濃度の測定にはELISA kit(富士薬品工業)を用いた。その結果、ヒト型化抗IL-6受容体抗体はリウマチ患者およびキャスルマン病患者においてMMP-1,MMP-3およびTIMP-1の血中濃度を低下させることを示している(図1から図6)。【0120】以上より、抗IL-6受容体抗体は、血中MMP-3濃度を低下させ、軟骨破壊抑制剤、変形性関節症治療剤となる可能性が示された。」と記載されている。
すなわち、訂正明細書にはMMP-3濃度を測定することが記載される一方で医師における具体的な判断基準への言及が一切なされていないことから、訂正発明1及び2は、上記審査基準にいう、「人間の病状や健康状態等の身体状態・・・について」医師が「判断する工程を含まない」ものであって、MMP-3の体内濃度、例えば血中濃度を検出することを意図した、「人体から収集された試料又はデータを用いて基準と比較するなどの分析を行う方法」であると判断するのが妥当である。

また、「但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。」という文言を訂正により追加することによって、上述した、医師が「判断する工程を含まない」ものであることを確認的に明示している。

よって、訂正発明1及び2は、「人間を診断する方法」に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定された「産業上利用することができる発明」に該当しない、とすることはできない。

なお、請求人は、医療機関における臨床検査を業とする者等は、「臨床検査技師等に関する法律」において「医師又は歯科医師の指示の下に」各種の検査を行うことから、当該検査を実施する行為が含まれる訂正発明1及び2は、特許法第29条第1項柱書に規定された「産業上利用することができる発明」に該当しない、と主張している。
しかしながら、「医師又は歯科医師の指示の下に」行われる行為であっても、指示された行為(例えば、入院患者の食事の世話やシーツ交換等)が「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しない限り、特許法第29条第1項柱書に規定された「産業上利用することができる発明」に該当しない、とすることはできないことは明らかである。そして、訂正発明1及び2に係る行為が「人間を診断する方法」に該当しないことは先に述べたとおりである。
したがって、たとえ医療機関において医師の指示の下に「臨床検査を業とする者」が訂正発明1及び2に係る臨床検査を実施する行為が訂正発明1及び2に含まれるとしても、特許法第29条第1項柱書に規定された「産業上利用することができる発明」に該当しない、とすることはできない。

(2)訂正発明3及び4について
請求人は、訂正発明3及び4は、医師による「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤」の軟骨破壊抑制効果を検出・評価・判定するために使用するという医療行為が構成要件とされており、この結果、東京高判平成14年4月11日判決(平成12年(行ケ)第65号)が判示するように、「医師は、常に、これから自分が行おうとしていることが特許の対象になっているのではないか、それを行うことにより特許権侵害の責任を追及されることになるのではないか、どのような責任を追及されることになるのか、などといったことを恐れながら、医療行為に当たらなければならないことになりかねない。」ので、医療行為に当たる医師をこのような状況に追い込む訂正発明3及び4は特許性が認められるべきではない、と主張している。
しかしながら、上記「特許・実用新案審査基準 第II部 第1章 産業上利用することができる発明」の2.1.1.2(1)にも「医療機器、医薬自体は、物であり、「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しない。」と記載されているように、従来から、「物」のカテゴリーの発明について、「人間を手術、治療又は診断する方法」や「医療行為」に係る特許法第29条第1項柱書に規定される「産業上利用することができる発明」の該当性が問題とされることはない。

なお、実際に、1976(昭和51)年以降、医薬や診断薬に係る「物」のカテゴリーの発明が多数特許されているが、医療行為に当たる医師が特許権侵害の責任を追及されることが大きな社会問題となった事実はない。

(3)小括
訂正発明1?4は、いずれも特許法第29条第1項柱書に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しない、とすることはできない。


2 無効理由2
2-1 無効理由2-1
無効理由2-1は、訂正発明1?4は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、MMP-3濃度の低下を指標として「IL-6受容体に対する抗体を有効成分としたリウマチ治療剤(軟骨破壊抑制剤)」の軟骨破壊抑制効果を検出・評価・判定することは容易に想到することができたので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との請求人の主張に基づくものである。

(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「慢性関節リウマチにおける疾患修飾性抗リウマチ薬の治療効果と血清MMP-3濃度の変動」(1a)という研究テーマの下、「慢性関節リウマチ(以下RA)患者の血清MMP-3を測定し、疾患修飾性抗リウマチ薬(以下DMARDs)による治療によりどのように変動したかを検討した」(1b)こと、「測定にはone step sandwich法を用いた」(1c)こと、すなわち、抗体を用いてMMP-3を測定したこと、「Lansbury指数が全値と比較して20%以上改善している症例だけを集めて検討した。この場合、治療後6ヶ月での血清MMP-3は治療前の値と比較して有意に減少した」(1d、1e)ことが記載されている。
してみると、甲第1号証には、「慢性関節リウマチ(RA)患者における血清MMP-3濃度の低下を抗体を用いて測定し、抗リウマチ薬の治療効果を検討する方法」の発明(以下、「甲第1号証発明」という。)が記載されている。

(2)訂正発明1について
(2-1)訂正発明1と甲第1号証発明の対比
ア 訂正発明1と甲第1号証発明を対比すると、訂正発明1の「検体」は、訂正明細書を参酌すれば、「慢性関節リウマチ(RA)患者」から得られる検体試料であることは明らかであるから、甲第1号証発明の慢性関節リウマチ患者の「血清」に相当する。

イ 本件特許の請求項2には「前記軟骨破壊抑制剤がリウマチ治療剤であることを特徴とする請求項1に記載の検出・評価・判定方法。」と記載されているので、訂正発明1の「軟骨破壊抑制剤」には甲第1号証発明の「抗リウマチ薬」が含まれている。

ウ 訂正発明1の「検出・評価・判定方法」について、訂正明細書には、「【0107】 本発明では、抗IL-6受容体抗体などのIL-6アンタゴニストの作用により、MMP-3 、MMP-1 及びTIMP-1から成る群から選ばれたものの体内濃度、例えば血中濃度などが低下することが観察されていることから、こうしたMMP-3 などの血中濃度を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの効果(例えば治療効果など)について、それを検出したり、評価したり、及び/又は判定したりする方法や、該方法に使用される試薬が、有用なものであることが理解されよう。」と記載されており、甲第1号証発明の「抗リウマチ薬の治療効果を検討する方法」は、「抗リウマチ治療薬の効果を検出・評価・判定方法」である点で訂正発明1と相違がない。

エ 訂正発明1の「軟骨破壊抑制剤・・・を投与した後の経時での」検体中のMMP-3濃度の低下を指標とすることに関して、訂正明細書の段落【0022】において「【図2】図2は、8名のリウマチ患者における、ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の血中MMP-3の経時変化を示すグラフである。」と記載され、図2には0?6月を横軸としたMMP-3濃度の経時変化が記載されている。
一方、甲第1号証には、「DMARDs治療前と治療後6ヶ月との血清MMP-3を単純に比較すると有意な変動を認めなかったが、Lansbury指数にて20%以上改善した症例に限ると血清MMP-3は有意に減少した(Fig.2)。」(1e)と記載され、Fig.2(1g)には治療前?治療後6カ月を横軸としたMMP-3濃度の経時変化が記載されている。
してみると、リウマチ治療剤「を投与した後の経時での」発明である点で訂正発明1と甲第1号証発明に相違はない。

してみると、訂正発明1と甲第1号証発明は、「(1)リウマチ治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標とし、かつ(2)リウマチ治療剤の効果の検出・評価・判定方法」である点で一致し、以下の相違点を有する。

(相違点1)
訂正発明1が「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤である「軟骨破壊抑制剤」を用いているのに対して、甲第1号証発明では「疾患修飾性抗リウマチ薬(以下DMARDs)」と記載されるのみで実際に用いられたリウマチ治療剤が明確でない点

(相違点2)
訂正発明1がリウマチ治療剤の「軟骨破壊抑制効果」の検出・評価・判定方法であるのに対して、甲第1号証発明では「軟骨破壊抑制効果」についての記載がない点

(2-2)相違点1に対する判断
リウマチ治療剤の効果とMMP-3濃度の関係については、甲第1号証に限らず、甲第2号証に係る「関節リウマチ患者における抗腫瘍壊死因子-α(cA2)療法後の血清・・・マトリックスメタロプロティナーゼ3の減少」と題する研究においても、リウマチ治療剤「cA2療法後、MMP-1及びMMP-3値を、プラセボ、並びに1及び10mg/kg cA2投与群において、7、14、21、及び28日に測定した。1及び10mg/kg cA2投与群の双方において、全ての時点で血清MMP-3値に有意な減少が見られ、7日目には注入投与前値の41%と最も減少した」(2b)こと(更なる詳細は2e及び2f参照)およびMMP-3濃度は抗MMP-3抗体を用いて測定すること(2d)が記載されている。
また、リウマチ疾患とMMP-3濃度の関係については、甲第3号証(3a?3d)には、抗MMP-3抗体(抗ヒトストロムライシンモノクローナル抗体)を用いて血中あるいは関節液中のMMP-3(ストロムライシン)を定量し慢性関節リウマチ疾患を診断することが記載されている。
してみると、甲第2号証や甲第3号証に記載された事項も参酌すると、甲第1号証に記載されように、抗MMP-3抗体で測定されたMMP-3濃度の低下を指標としてリウマチ治療剤の治療効果を確認することは、本件特許の原出願日当時に一般に行われていたものと判断される。

したがって、訂正発明1において用いられた「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤は、甲第4号証に記載されているように、本件特許の原出願日前に既に公知であるから、甲第1号証に記載された従来のリウマチ治療剤と同様に、「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤についてもMMP-3濃度の低下を指標として治療効果を確認することは当業者であれば容易に想到し得るものと認められる。

(2-3)相違点2に対する判断
甲第1号証発明の「リウマチ治療剤」である甲第1号証に記載された「疾患修飾性抗リウマチ薬(以下DMARDs)」とは、「関節リウマチrheumatic arthritis(RA)の免疫異常を是正することによりRAの炎症を沈静化させ、寛解導入を目的とする薬物の総称である」(南山堂医学大事典19版1048頁)である。そして、「関節リウマチrheumatic arthritis(RA)」とは、「初期には滑膜の炎症のみであるが、進行すると軟骨、骨の破壊が起こり、関節は変形、脱臼し、また骨性硬直により可動性を失う」(南山堂医学大事典19版469頁)ものである。
してみると、「軟骨、骨の破壊が起こ」る「関節リウマチ」の「寛解導入を目的とする薬物の総称である」「疾患修飾性抗リウマチ薬(以下DMARDs)」において、「関節リウマチ」の主症状である「軟骨破壊抑制」効果を当業者が期待するのは当然のことである。

そして、甲第4号証には、「IL-6レセプター抗体投与群ではコントロール抗体投与群に比べて軟骨や骨への肉芽組織の侵潤すなわち慢性増殖性滑膜炎が抑制されていた。」(4e)と記載されており、「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤を投与した後に「軟骨破壊抑制効果」が期待できることは当業者であれば容易に理解できたことである。

(2-4)訂正発明1の作用効果
訂正発明1の作用効果について、訂正明細書には、
「【0118】
実施例 ヒト型化抗IL-6受容体抗体(ヒト型化PM-1抗体;WO92/19759に記載されている、L鎖バージョンaとH鎖バージョンfから成る)による2ヶ月以上の治療を行ったリウマチ患者8例、並びにMulticentric Castleman's Disease(CD)の患者5例の患者について、治療に伴うMMP-1,-2,-3,-7,-8および-13並びにTIMP-1および-2の血中濃度の変化について検討した。抗体は生理食塩水100mlに溶解し1mg、10mg、50mgと安全を確認しながら増量し、50mg/body週2回あるいは100mg/body週1回の割合で点滴静注にて使用した。
【0119】
前値、治療開始後2ヶ月、および6ヶ月間治療を継続したリウマチ患者4例およびCD患者2例については6ヶ月目の値も検討した。MMP-1,-2,-3,-7,-8および-13並びにTIMP-1および-2の血中濃度の測定にはELISA kit(富士薬品工業)を用いた。その結果、ヒト型化抗IL-6受容体抗体はリウマチ患者およびキャスルマン病患者においてMMP-1,MMP-3およびTIMP-1の血中濃度を低下させることを示している(図1から図6)。
【0120】
以上より、抗IL-6受容体抗体は、血中MMP-3濃度を低下させ、軟骨破壊抑制剤、変形性関節症治療剤となる可能性が示された。」および
「【0140】
発明の効果 本発明により、抗IL-6受容体抗体等のIL-6アンタゴニストが血中MMP-3濃度低下効果効果を有することが示された。したがって、IL-6アンタゴニストは血中MMP-3濃度低下、軟骨破壊抑制剤および/または変形性関節症治療剤として有用であることが明らかにされた。」
と記載されるのみであって、「MMP-3濃度低下」をもって、「軟骨破壊抑制剤」としての医薬用途発明の薬理試験データに代替しており、他に「軟骨破壊抑制剤」としての薬理効果を直接的に確認する実験は行われていない。
換言すると、訂正発明1の「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤を含む「軟骨破壊抑制剤」の効果は、「MMP-3濃度低下」を確認できれば「軟骨破壊抑制剤」(リウマチ治療剤を含む)としての新規の医薬用途発明の効果確認が十分に可能であるとの技術常識に基づいているとしか判断できない。

してみると、甲第1号証に記載された作用効果と比べて、訂正発明1において顕著な効果が奏されるものとも認められない。

(2-5)被請求人の反論について
被請求人は、
ア)甲第1号証の35頁右欄11?13行には、「血清MMP-3と骨関節破壊の進展については、erosion scoreなど検討してみたが、明らかな変化を認めることができなかった。」と記載されており、血清MMP-3の低下が認められたにもかかわらず、骨関節破壊進展の抑制が認められなかったことが記載されていること、
イ)IL-6が多機能性サイトカインの一種であって生体に対してどのような影響を及ぼすか明らかでなったこと(乙第1号証)、関節リウマチの原因自体が明確に特定されていないこと(乙第2号証)等を指摘して、訂正発明1の「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤を甲第1号証のリウマチ薬DMARDs群(乙第3号証)と置き換えることを当業者が想到し得るものではないこと、
ウ)甲第1号証のFig.2及びFig.3、並びに甲第2号証の表3に記載された実験データに基づいて関節リウマチ治療剤の効果とMMP-3濃度の減少の相関性を論じることができないこと、
エ)乙第5号証を提出して、「抗MMP-3抗体で測定されたMMP-3濃度を指標としてDMARDSの軟骨破壊抑制効果を確認することが、本件特許の原出願日当時に一般的に行われていたとすることはでき」ないこと、および「本件特許に係る発明におけるIL-6受容体抗体は、この範躊の中でステロイド薬、非ステロイド薬、および関節痛や炎症を抑えるいわゆる関節リウマチ治療剤であるDMARDsとは異なる別の一部に属する薬剤として位置付けられ、本件特許に係る発明は、その軟骨破壊抑制効果とMMP-3濃度に着目した発明であります。IL-6受容体抗体が見出される以前、軟骨破壊抑制効果を有する関節リウマチ治療薬は見出されて」いないこと
を主張しているので、念のために以下に検討する。

ア)については、甲第1号証には、骨関節破壊の進展に変化が認められなかった点について、「これは観察期間が短いことに起因すると思われる。今後も血清MMP-3とX線変化について経過観察を継続する必要があると思われる。」(35頁13行?15行)と記載しており、甲第1号証の筆者は、被請求人が主張するような否定的な結果として記載していないので、この点は阻害要因とはならない。

イ)については、なるほど被請求人が指摘するように、リウマチ治療薬の作用機序は様々であって不明な点も少なからず存在することは事実である。しかしながら、リウマチ疾患とMMP-3濃度の関連性は、上述したように、甲第1号証のみならず、甲第2号証や甲第3号証にも記載されるように一般によく知られたことである。また、甲第5号証(5d)にも、Fn-fで人工的に作られたリウマチ症状であるものの、抗IL-6抗体がMMP-3濃度を減少させたことも記載されている。当業者において、よく知られたリウマチ疾患とMMP-3濃度の関連性およびIL-6とMMP-3濃度の関連性についての公知の知見に基づけば、たとえ作用機序が不明であるとしても、新規のリウマチ治療剤である訂正発明1の「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤である「軟骨破壊抑制剤」についてもMMP-3濃度との関連性を確認しようとする強い動機付けが当業者にはあったと言える。
なお、上述したように、訂正明細書においても、MMP-3濃度低下をもって、軟骨破壊抑制剤(リウマチ治療剤を含む)としての薬理試験データに代替しており、他に軟骨破壊抑制剤(リウマチ治療剤を含む)としての薬理効果を確認する実験は行われておらず、訂正発明1の「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤を含む「軟骨破壊抑制剤」の効果は、MMP-3濃度低下を確認できれば軟骨破壊抑制剤(リウマチ治療剤を含む)としての新規の医薬用途発明の効果確認が十分に可能であるとの技術常識に基づいているとしか言えない状況である。

ウ)については、甲第1及び2号証には、上述したように、被請求人が不備であると指摘するデータに基づく詳細な本文の記載があり、データに致命的な不備がない以上、上述した本文の記載を優先して技術内容を理解するのが適当である。

エ)については、上記(2-3)に記載したように、「DMARDs」とは「関節リウマチ(RA)の免疫異常を是正することによりRAの炎症を沈静化させ、寛解導入を目的とする薬物の総称である」から、「IL-6受容体抗体は、・・・DMARDsとは異なる別の一部に属する薬剤として位置付けられ」るとの前提には根拠がない。
加えて、本件特許の原出願日当時には、甲第4号証においてIL-6受容体抗体を有効成分とする関節リウマチ治療剤が軟骨破壊抑制効果を有することも既に公知であるから(4e)、仮に被請求人が主張するように「IL-6受容体抗体が見出される以前、軟骨破壊抑制効果を有する関節リウマチ治療薬は見出されて」いないことを前提としても、甲第1号証に接した当業者が、関節リウマチ治療剤の主たる目的である軟骨破壊抑制効果を「DMARDs」の治療効果から敢えて排除するとは考えがたい。

よって、被請求人の主張はいずれも理由がない。

(2-6)訂正発明1の進歩性についてのまとめ
訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第4号証に記載された発明及び甲第2、3、5号証に記載された甲第1号証の記載事実を補強する発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)訂正発明2について
訂正発明2は、訂正発明1の「軟骨破壊抑制剤」を「リウマチ治療剤」に限定するものである。甲第1?5号証はいずれも「リウマチ治療剤」について記載するものであるから、上記(2)と同様にして、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第4号証に記載された発明及び甲第2、3、5号証に記載された甲第1号証の記載事実を補強する発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)訂正発明3及び4について
訂正発明3及び4は、訂正発明1及び2に使用することを特徴とする「抗MMP-3抗体を含有」する「MMP-3濃度測定用試薬」である。
甲第1号証(1c)においてもMMP-3濃度の測定に抗MMP-3抗体が用いられており、かつMMP-3濃度の測定に抗MMP-3抗体を用いることは本件特許の原出願日当時の常套手段(2d、3a、5c)であるから、上記(2)(3)と同様にして、訂正発明3及び4は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第4号証に記載された発明及び甲第2、3、5号証に記載された甲第1号証の記載事実を補強する発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)小括
訂正発明1?4は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第4号証に記載された発明及び甲第2、3、5号証に記載された甲第1号証の記載事実を補強する発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


2-2 無効理由2-2
請求人は、訂正発明3及び4は、「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤」に特定しているものの、結局、MMP-3濃度測定用試薬自体は、訂正発明3及び4も、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証のいずれかに記載された発明も、MMP-3濃度を測定するという点において同じ作用及び機能を利用するものであり、リウマチ診断という点で同じ用途に使用されるものであるから、両者を区別することはできないので、訂正発明3及び4は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証のいずれかに記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、と主張している。

甲第1号証(1d、1e、1f)および甲第2号証(2b、2e、2f)には、リウマチ治療剤(DMARDsおよびcA2)を投与された関節リウマチ患者においてMMP-3濃度が有意に減少したことが記載され、MMP-3の検出には抗MMP-3抗体が用いられたこと(1c、2d)が記載されている。また、甲第3号証(3a?3d)には、関節リウマチ疾患の診断に用いる抗MMP-3抗体が記載されている。
しかしながら、甲第1?3号証のいずれにも訂正発明の発明特定事項である「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」関節リウマチ治療剤を含む軟骨破壊抑制剤に関する記載はない。

訂正発明3及び4は、「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」薬剤のリウマチ治療効果(軟骨破壊抑制作用と一部重複)を検出・評価・判定するために使用することを特徴とする「MMP-3濃度測定用試薬」であって、甲第1?3号証に記載された発明と「慢性リウマチ治療剤」の効果を検出する「MMP-3濃度測定用試薬」である点で一致するものの、「慢性リウマチ治療剤」が「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」薬剤である点で相違する。
甲第4号証に記載されているように、本件特許の原出願日当時において抗IL-6受容体抗体を「慢性リウマチ治療剤」として用いることは公知であったことは事実であるが、甲第1?3号証において「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」リウマチ治療剤が記載されているに等しいとまでは言えない。
そして、「MMP-3濃度測定用試薬」について、「IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした」薬剤のリウマチ治療効果(軟骨破壊抑制作用と一部重複)を検出・評価・判定するために使用することは、その他のリウマチ治療剤の治療効果を検出・評価・判定するために使用することとは異なる「新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく発明」、すなわち「用途発明」を構成すると解すべきである。
したがって、訂正発明3及び4は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。


第8 むすび

以上のとおりであるから、訂正発明1?4は、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第4号証に記載された発明及び甲第2、3、5号証に記載された甲第1号証の記載事実を補強する発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
IL-6アンタゴニストを有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤
【技術分野】
【0001】
本発明はインターロイキン-6(IL-6)アンタゴニストを有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
IL-6はB 細胞刺激因子2 (BSF2)あるいはインターフェロンβ2 とも呼称されたサイトカインである。IL-6は、B リンパ球系細胞の活性化に関与する分化因子として発見され(Hirano, T. et al., Nature (1986) 324, 73-76 )、その後、種々の細胞の機能に影響を及ぼす多機能サイトカインであることが明らかになった(Akira, S. et al., Adv. in Immunology (1993) 54, 1-78)。IL-6は、T リンパ球系細胞の成熟化を誘導することが報告されている(Lotz, M. et al., J. Exp. Med. (1988)167, 1253-1258)。
【0003】
IL-6は、細胞上で二種の蛋白質を介してその生物学的活性を伝達する。一つは、IL-6が結合する分子量約80kDのリガンド結合性蛋白質のIL-6受容体である (Taga, T. et al., J. Exp. Med. (1987) 166, 967-981, Yamasaki, K. et al., Science (1987) 241, 825-828)。IL-6受容体は、細胞膜を貫通して細胞膜上に発現する膜結合型の他に、主にその細胞外領域からなる可溶性IL-6受容体としても存在する。
【0004】
もう一つは、非リガンド結合性のシグナル伝達に係わる分子量約130kD の膜蛋白質gp130 である。IL-6とIL-6受容体はIL-6/IL-6受容体複合体を形成し、次いでgp130 と結合することにより、IL-6の生物学的活性が細胞内に伝達される(Taga, T. et al., Cell (1989) 58, 573-581) 。
【0005】
IL-6アンタゴニストは、IL-6の生物学的活性の伝達を阻害する物質である。これまでに、IL-6に対する抗体(抗IL-6抗体)、IL-6受容体に対する抗体(抗IL-6受容体抗体)、gp130 に対する抗体(抗gp130 抗体)、IL-6改変体、IL-6又はIL-6受容体部分ペプチド等が知られている。
【0006】
抗IL-6受容体抗体に関しては、いくつかの報告がある(Novick, D. et al., Hybridoma (1991) 10, 137-146 、Huang, Y. W. et al., Hybridoma (1993) 12, 621-630 、国際特許出願公開番号WO 95-09873 、フランス特許出願公開番号FR 2694767、米国特許番号US 521628 )。その一つであるマウス抗体PM-1(Hirata, Y. et al., J. Immunol. (1989) 143, 2900-2906)の相捕性決定領域(CDR; complementarity determining region )をヒト抗体へ移植することにより得られたヒト型化PM-1抗体が知られている(国際特許出願公開番号WO 92-19759 )。
【0007】
慢性関節リウマチ(RA)や変形性関節症(OA)による関節軟骨破壊は、種々の因子の複合作用により、1)軟骨細胞死、2)軟骨細胞外マトリックス(Extracellular Matrix, ECM)分解亢進、3)軟骨ECM産生低下、が生じることにより進行する。近年、ECMの分解亢進を行う蛋白分解酵素の中でMMPが特に注目されている。
【0008】
MMPは好中球エラスターゼ、カテプシンGとともに重要なECM分解酵素であり、MMP遺伝子ファミリーとしては現在までに約20種類の分子種が報告されている。これらのMMPはコラゲナーゼ群(MMP-1,MMP-8,MMP-13)、ゼラチナーゼ群(MMP-2,MMP-9)、ストロムライシン群(MMP-3,MMP-10)、膜型MMP群(MMP-14,MMP-15,MMP-16,MMP-17)、その他のMMP(MMP-7,MMP-11,MMP-12,MMP-19,MMP-20など)などに分類される。ここでストロムライシン群(MMP-3,MMP-10)はプロテオグリカン、III 型、IV型、IX型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどを分解し、MMPの中でも最も広い基質特異性を持つ。
【0009】
RA患者の関節液中には、高値のMMP-1,2,3,8,9が存在し、またRA関節滑膜細胞や、非パンヌス部の関節軟骨組織ではMMP-1,2,3,9,MT1-MMPの発現が認められている。これらのデータから特にRAにおける関節軟骨破壊にはMMPによるECM分解が重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、これとは対照的にRA滑膜はMMPの標的組織とはならないことも知られている。
【0010】
また、ほとんどのOA関節軟骨はMMP-3陽性を示すこと、OA関節軟骨組織を培養し分泌されたMMP-3活性は正常軟骨群より有意に高値であることなどの事実よりOAにおける軟骨破壊にもMMP-3が重要な役割をしているものと考えられている。また、MMP-3は若年性関節リウマチ、成人型スチル病などでも重要な役割を果たしていると考えられており、MMP-3の作用の抑制によりこれらの疾患の症状が改善されるものと考えられる。
【0011】
MMP-3はそれ自身が軟骨プロテオグリカン(アグリカン)を分解することは多くの報告により広く知られており、アグリカンコア蛋白の分解活性はMMPの中でもMMP-3が最も強いとされている。さらに、MMPは潜在型MMPとして存在し、プロペプチドの切断により活性型MMPに変換されることが知られているが、活性型MMP-3は潜在型のMMP-1,7,8,9を完全なレベルにまで活性化するという働きを有することからも注目されている。MMP-3はRAとOA関節組織で発現されるが、その産生量はRAの方がOAより高値であり、多関節発症のRAでは血中レベルのMMP-3値の上昇はOAとの鑑別に有用であることが知られている。すなわち血清中MMP-3のレベルはRA滑膜炎の指標となる。
【0012】
MMP-3の発現は、IL-1、TNF-α、EGF、bFGFなどで誘導され、レチノイン酸、グルココルチコイド、TGF-βなどで抑制されることが知られているがIL-6との関連については何ら報告されていない。
【0013】
抗IL-6受容体抗体などのIL-6アンタゴニストは滑膜細胞の異常な増殖を抑制することによりリウマチの症状を改善することが報告されている(WO96/11020)が、IL-6アンタゴニスト特に抗IL-6受容体抗体がリウマチ患者において軟骨破壊の主要な酵素であるMMP-3の血中濃度を低下させることは知られていなかった。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤、さらには、該低下剤および/または、該抑制剤の効果の検出・評価・判定方法およびそれに使用される試薬を提供しようとするものである。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。
【0015】
発明者は、抗IL-6受容体抗体などのIL-6アンタゴニストがMMP-3、MMP-1、およびTissue Inhibitor of Metalloproteinases-1(TIMP-1)、特にMMP-3の血中濃度を低下させることを見出し本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、(1)IL-6アンタゴニストを有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。
本発明はまた、(2)IL-6受容体に対する抗体を有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。
【0017】
本発明はまた、(3)IL-6受容体に対するモノクローナル抗体を有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。
本発明はまた、(4)ヒトIL-6受容体に対するモノクローナル抗体を有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。ヒトIL-6受容体に対するモノクローナル抗体は、好ましくはPM-1抗体である。
【0018】
本発明はまた、(5)マウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体を有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。マウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体は、好ましくはMR16-1抗体である。
【0019】
本発明はまた、(6)IL-6受容体に対する組換え型抗体を有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。IL-6受容体に対する組換え型抗体は、好ましくはヒト抗体定常領域(C 領域)を有する。
【0020】
本発明はまた、(7)IL-6受容体に対するキメラ抗体又はヒト型化抗体を有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。
本発明はまた、(8)ヒト型化PM-1抗体を有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤を提供する。
本発明はまた、インターロイキン-6(IL-6)アンタゴニストを有効成分として含有する変形性関節症治療剤を提供する。
【0021】
本発明はまた、MMP-3 、MMP-1 及びTIMP-1から成る群から選ばれたものの、特にMMP-3の体内濃度、例えば血中濃度などの投与後の経時での低下を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの軟骨破壊抑制効果(例えば治療効果など)につき、その検出・評価・判定のいずれかを行う方法、及びそれに使用される試薬を提供する。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、8名のリウマチ患者における、ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中MMP-1の経時変化を示すグラフである。
【図2】図2は、8名のリウマチ患者における、ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中MMP-3の経時変化を示すグラフである。
【図3】図3は、8名のリウマチ患者における、ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中TIMP-1の経時変化を示すグラフである。
【0023】
【図4】図4は、5名のCD患者における、ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中MMP-1の経時変化を示すグラフである。
【図5】図5は、5名のCD患者における、ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中MMP-3の経時変化を示すグラフである。
【図6】図6は、5名のCD患者における、ヒト型化IL-6受容体抗体を投与した後の、血中TIMP-1の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明で使用されるIL-6アンタゴニストは、血中MMP-3濃度低下効果および/または軟骨破壊抑制効果を示すものであれば、その由来、種類および形状を問わない。
IL-6アンタゴニストは、IL-6によるシグナル伝達を遮断し、IL-6の生物学的活性を阻害する物質である。IL-6アンタゴニストは、好ましくはIL-6、IL-6受容体及びgp130 のいずれかの結合に対する阻害作用を有する物質である。IL-6アンタゴニストとしては、例えば抗IL-6抗体、抗IL-6受容体抗体、抗gp130 抗体、IL-6改変体、可溶性IL-6受容体改変体あるいはIL-6又はIL-6受容体の部分ペプチドおよび、これらと同様の活性を示す低分子物質が挙げられる。
【0025】
本発明で使用される抗IL-6抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL-6抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はIL-6と結合することにより、IL-6のIL-6受容体への結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
【0026】
このような抗体としては、MH166 (Matsuda, T. et al., Eur. J. Immunol. (1988) 18, 951-956) やSK2 抗体(Sato, K. et al., 第21回 日本免疫学会総会、学術記録(1991) 21, 166)等が挙げられる。
【0027】
抗IL-6抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL-6を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0028】
具体的には、抗IL-6抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL-6は、Eur. J. Biochem (1987) 168, 543-550 、J. Immunol. (1988) 140, 1534-1541 、あるいはAgr. Biol. Chem. (1990) 54, 2685-2688 に開示されたIL-6遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
【0029】
IL-6の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL-6蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL-6蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL-6蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
【0030】
本発明で使用される抗IL-6受容体抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗IL-6受容体抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はIL-6受容体と結合することにより、IL-6のIL-6受容体への結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
【0031】
このような抗体としては、MR16-1抗体(Tamura, T. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90, 11924-11928)、PM-1抗体 (Hirata, Y. et al., J. Immunol. (1989) 143, 2900-2906) AUK12-20抗体、AUK64-7 抗体あるいはAUK146-15 抗体(国際特許出願公開番号WO 92-19759)などが挙げられる。これらのうちで、特に好ましい抗体としてPM-1抗体が挙げられる。
【0032】
なお、PM-1抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、PM-1として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成2 年7 月10日に、FERM BP-2998としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。また、 MR16-1 抗体産生ハイブリドーマ細胞株は、Rat-mouse hybridoma MR16-1として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成9 年3 月13日に、FERM BP-5875としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0033】
抗IL-6受容体モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、IL-6受容体を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0034】
具体的には、抗IL-6受容体抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるヒトIL-6受容体は、欧州特許出願公開番号EP 325474 に、マウスIL-6受容体は日本特許出願公開番号特開平3-155795に開示されたIL-6受容体遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
【0035】
IL-6受容体蛋白質は、細胞膜上に発現しているものと細胞膜より離脱しているもの(可溶性IL-6受容体)(Yasukawa, K. et al., J. Biochem. (1990) 108, 673-676)との二種類がある。可溶性IL-6受容体抗体は細胞膜に結合しているIL-6受容体の実質的に細胞外領域から構成されており、細胞膜貫通領域あるいは細胞膜貫通領域と細胞内領域が欠損している点で膜結合型IL-6受容体と異なっている。IL-6受容体蛋白質は、本発明で用いられる抗IL-6受容体抗体の作製の感作抗原として使用されうる限り、いずれのIL-6受容体を使用してもよい。
【0036】
IL-6受容体の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のIL-6受容体蛋白質を公知の方法で精製し、この精製IL-6受容体蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、IL-6受容体を発現している細胞やIL-6受容体蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
【0037】
ヒトIL-6受容体をコードするcDNAを含むプラスミドpIBIBSF2R を含有する大腸菌(E.coli)は、平成元年(1989年)1 月9 日付で工業技術院生命工学工業技術研究所に、HB101-pIBIBSF2R として、受託番号FERM BP-2232としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0038】
本発明で使用される抗gp130 抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗gp130 抗体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はgp130 と結合することにより、IL-6/IL-6受容体複合体のgp130 への結合を阻害してIL-6の生物学的活性の細胞内への伝達を遮断する。
【0039】
このような抗体としては、AM64抗体(特開平3-219894)、4B11抗体および2H4 抗体(US 5571513)B-S12 抗体およびB-P8抗体(特開平8-291199)などが挙げられる。
抗gp130 モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、gp130 を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0040】
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原として使用されるgp130 は、欧州特許出願公開番号EP 411946 に開示されたgp130 遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
【0041】
gp130 の遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中又は、培養上清中から目的のgp130 蛋白質を公知の方法で精製し、この精製gp130 受容体蛋白質を感作抗原として用いればよい。また、gp130 を発現している細胞やgp130 蛋白質と他の蛋白質との融合蛋白質を感作抗原として用いてもよい。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
【0042】
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS (Phosphate-Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4-21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
【0043】
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0044】
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3X63Ag8.653(Kearney, J. F. et al. J. Immnol. (1979) 123, 1548-1550)、P3X63Ag8U.1 (Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-7) 、NS-1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976) 6, 511-519 )、MPC-11(Margulies. D. H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270 )、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods (1980) 35, 1-21 )、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature (1979) 277, 131-133 )等が適宜使用される。
【0045】
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C. 、Methods Enzymol. (1981) 73, 3-46)等に準じて行うことができる。
【0046】
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG )、センダイウィルス(HVJ )等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0047】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1-10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM 培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできる。
【0048】
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG 溶液、例えば、平均分子量1000-6000 程度のPEG 溶液を通常、30-60 %(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
【0049】
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT 培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT 培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日?数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行われる。
【0050】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原蛋白質又は抗原発現細胞で感作し、感作B リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、所望の抗原又は抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878 参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原又は抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93/12227 、WO 92/03918 、WO 94/02602 、WO 94/25585 、WO 96/34096 、WO 96/33735 参照)。
【0051】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
【0052】
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0053】
例えば、抗IL-6受容体抗体産生ハイブリドーマの作製は、特開平3-139293に開示された方法により行うことができる。工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成2 年7 月10日に、FERM BP-2998としてブタペスト条約に基づき国際寄託されたPM-1抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウスの腹腔内に注入して腹水を得、この腹水からPM-1抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば、10%ウシ胎児血清、5 %BM-Condimed H1(Boehringer Mannheim 製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM 培地(GIBCO-BRL 製)、PFHM-II 培地(GIBCO-BRL 製)等で培養し、その培養上清からPM-1抗体を精製する方法で行うことができる。
【0054】
本発明には、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Borrebaeck C. A. K. and Larrick J. W. THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990参照)。
【0055】
具体的には、目的とする抗体を産生する細胞、例えばハイブリドーマから、抗体の可変(V )領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. et al., Anal. Biochem. (1987)162, 156-159)等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia 製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
【0056】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V 領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit 等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5’-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびPCR を用いた5’-RACE 法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 8998-9002;Belyavsky, A. et al., Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919-2932 )を使用することができる。得られたPCR 産物から目的とするDNA 断片を精製し、ベクターDNA と連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNA の塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
【0057】
目的とする抗体のV 領域をコードするDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C 領域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0058】
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0059】
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
例えば、キメラPM-1抗体のL 鎖およびH 鎖のV 領域をコードするDNA を含むプラスミドは、各々pPM-k3およびpPM-h1と命名され、このプラスミドを有する大腸菌は、National Collections of Industrial and Marine Bacteria Limitedに、1991年2 月11日に、各々NCIMB 40366 及びNCIMB40362としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0060】
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR )をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
【0061】
具体的には、マウス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク領域(FR; framework region)を連結するように設計したDNA 配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR 法により合成する。得られたDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
【0062】
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
【0063】
キメラ抗体、ヒト型化抗体には、ヒト抗体C 領域が使用される。ヒト抗体C 領域としては、 Cγが挙げられ、例えば、 Cγ1 、 Cγ2 、 Cγ3 又は Cγ4 を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体C 領域を修飾してもよい。
【0064】
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC 領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域およびC 領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
【0065】
本発明に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化PM-1抗体が挙げられる(国際特許出願公開番号WO 92-19759 参照)。
【0066】
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3’側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
【0067】
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40)等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1 α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Mulligan, R. C. et al., Nature (1979) 277, 108-114) 、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Mizushima, S. and Nagata, S. Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322 )に従えば容易に実施することができる。
【0068】
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Ward, E. S. et al., Nature (1989) 341, 544-546;Ward, E. S. et al. FASEB J. (1992) 6, 2422-2427 )、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Better, M. et al. Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
【0069】
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-4383) を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
【0070】
複製起源としては、SV 40 、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV )等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0071】
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0072】
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、又は真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えば、CHO 、COS 、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney) 、HeLa、Veroなど、(2) 両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、sf9 、sf21、Tn5 などが知られている。植物細胞としては、ニコチアナ・タバクム (Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces )属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス属(Aspergillus )属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。
【0073】
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
【0074】
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivo にて抗体を産生してもよい。
【0075】
一方、in vivo の産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系などがある。
【0076】
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシなどを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
【0077】
これらの動物又は植物に抗体遺伝子を導入し、動物又は植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
【0078】
また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol. (1994) 24, 131-138)。
【0079】
上述のようにin vitro又はin vivo の産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H 鎖)又は軽鎖(L 鎖)をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523 参照)。
本発明で使用される抗体は、本発明に好適に使用され得るかぎり、抗体の断片やその修飾物であってよい。例えば、抗体の断片としては、Fab 、F(ab’)2 、Fv又はH 鎖とL 鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
【0080】
具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、又は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496 、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology (1989) 178, 476-496 、Lamoyi, E., Methods in Enzymology (1989) 121, 652-663 、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology (1989) 121, 663-669、Bird, R. E. et al., TIBTECH (1991) 9, 132-137 参照)。
【0081】
scFvは、抗体のH 鎖V 領域とL 鎖V 領域を連結することにより得られる。このscFvにおいて、H 鎖V 領域とL 鎖V 領域はリンカー、好ましくは、ペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-5883)。scFvにおけるH 鎖V 領域およびL 鎖V 領域は、上記抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V 領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12-19 残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
【0082】
scFvをコードするDNA は、前記抗体のH 鎖又は、H 鎖V 領域をコードするDNA 、およびL 鎖又は、L 鎖V 領域をコードするDNA を鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA 部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR 法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA およびその両端を各々H 鎖、L 鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
【0083】
また、一旦scFvをコードするDNA が作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
【0084】
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
【0085】
抗体の修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG )等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0086】
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティークロマトグラフィーにより行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、プロテインA カラム、プロテインG カラムが挙げられる。プロテインA カラムに用いる担体として、例えば、Hyper D 、POROS 、Sepharose F.F.等が挙げられる。その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。
【0087】
例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、本発明で使用される抗体を分離、精製することができる。クロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらのクロマトグラフィーはHPLC(High performance liquid chromatography)に適用し得る。また、逆相HPLC(reverse phase HPLC)を用いてもよい。
【0088】
上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定又はELISA 等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、PBS(-)で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定し、1 mg/ml を1.35 OD として算出する。また、ELISA による場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6 )で 1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO製) 100μl を96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化する。ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体又は抗体を含むサンプル、あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL製)100μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションする。
【0089】
洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (BIO SOURCE製) 100μl を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
【0090】
本発明で使用されるIL-6改変体は、IL-6受容体との結合活性を有し、且つIL-6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL-6改変体はIL-6受容体に対しIL-6と競合的に結合するが、IL-6の生物学的活性を伝達しないため、IL-6によるシグナル伝達を遮断する。
IL-6改変体は、IL-6のアミノ酸配列のアミノ酸残基を置換することにより変異を導入して作製される。IL-6改変体のもととなるIL-6はその由来を問わないが、抗原性等を考慮すれば、好ましくはヒトIL-6である。
【0091】
具体的には、IL-6のアミノ酸配列を公知の分子モデリングプログラム、たとえば、WHATIF(Vriend et al., J. Mol. Graphics (1990) 8, 52-56 )を用いてその二次構造を予測し、さらに置換されるアミノ酸残基の全体に及ぼす影響を評価することにより行われる。適切な置換アミノ酸残基を決定した後、ヒトIL-6遺伝子をコードする塩基配列を含むベクターを鋳型として、通常行われるPCR 法によりアミノ酸が置換されるように変異を導入することにより、IL-6改変体をコードする遺伝子が得られる。これを必要に応じて適当な発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じてIL-6改変体を得ることができる。
【0092】
IL-6改変体の具体例としては、Brakenhoff et al., J. Biol. Chem. (1994) 269, 86-93 、及びSavino et al., EMBO J. (1994) 13, 1357-1367 、WO 96-18648 、WO96-17869に開示されている。
【0093】
本発明で使用されるIL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドは、各々IL-6受容体あるいはIL-6との結合活性を有し、且つIL-6の生物学的活性を伝達しない物質である。即ち、IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドはIL-6受容体又はIL-6に結合し、これらを捕捉することによりIL-6のIL-6受容体への結合を特異的に阻害する。その結果、IL-6の生物学的活性を伝達しないため、IL-6によるシグナル伝達を遮断する。
【0094】
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドは、IL-6又はIL-6受容体のアミノ酸配列においてIL-6とIL-6受容体との結合に係わる領域の一部又は全部のアミノ酸配列からなるペプチドである。このようなペプチドは、通常10?80、好ましくは20?50、より好ましくは20?40個のアミノ酸残基からなる。
【0095】
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドは、IL-6又はIL-6受容体のアミノ酸配列において、IL-6とIL-6受容体との結合に係わる領域を特定し、その一部又は全部のアミノ酸配列を通常知られる方法、例えば遺伝子工学的手法又はペプチド合成法により作製することができる。
【0096】
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドを遺伝子工学的手法により作製するには、所望のペプチドをコードするDNA 配列を発現ベクターに組み込み、前記組換え型抗体の発現、産生及び精製方法に準じて得ることができる。
【0097】
IL-6部分ペプチド又はIL-6受容体部分ペプチドをペプチド合成法により作製するには、ペプチド合成において通常用いられている方法、例えば固相合成法又は液相合成法を用いることができる。
【0098】
具体的には、続医薬品の開発第14巻ペプチド合成 監修矢島治明廣川書店1991年に記載の方法に準じて行えばよい。固相合成法としては、例えば有機溶媒に不溶性である支持体に合成しようとするペプチドのC 末端に対応するアミノ酸を結合させ、α- アミノ基及び側鎖官能基を適切な保護基で保護したアミノ酸をC 末端からN 末端方向の順番に1アミノ酸ずつ縮合させる反応と樹脂上に結合したアミノ酸又はペプチドのα- アミノ基の該保護基を脱離させる反応を交互に繰り返すことにより、ペプチド鎖を伸長させる方法が用いられる。固相ペプチド合成法は、用いられる保護基の種類によりBoc 法とFmoc法に大別される。
【0099】
このようにして目的とするペプチドを合成した後、脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応をする。ペプチド鎖との切断反応には、Boc 法ではフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸を、又Fmoc法ではTFA を通常用いることができる。Boc 法では、例えばフッ化水素中で上記保護ペプチド樹脂をアニソール存在下で処理する。次いで、保護基の脱離と支持体からの切断をしペプチドを回収する。これを凍結乾燥することにより、粗ペプチドが得られる。一方、Fmoc法では、例えばTFA 中で上記と同様の操作で脱保護反応及びペプチド鎖の支持体からの切断反応を行うことができる。
【0100】
得られた粗ペプチドは、HPLCに適用することにより分離、精製することができる。その溶出にあたり、蛋白質の精製に通常用いられる水- アセトニトリル系溶媒を使用して最適条件下で行えばよい。得られたクロマトグラフィーのプロファイルのピークに該当する画分を分取し、これを凍結乾燥する。このようにして精製したペプチド画分について、マススペクトル分析による分子量解析、アミノ酸組成分析、又はアミノ酸配列解析等により同定する。
【0101】
IL-6部分ペプチド及びIL-6受容体部分ペプチドの具体例は、特開平2-188600、特開平7-324097、特開平8-311098及び米国特許公報US 5210075に開示されている。
【0102】
本発明で使用されるIL-6アンタゴニストのIL-6シグナル伝達阻害活性は、通常用いられる方法により評価することができる。具体的には、IL-6依存性ヒト骨髄腫株(S6B45, KPMM2)、ヒトレンネルトTリンパ腫細胞株KT3 、あるいはIL-6依存性細胞MH60.BSF2 を培養し、これにIL-6を添加し、同時にIL-6アンタゴニストを共存させることによりIL-6依存性細胞の ^(3)H-チミジン取込みを測定すればよい。また、IL-6受容体発現細胞であるU266を培養し、 ^(125)I 標識IL-6を添加し、同時にIL-6アンタゴニストを加えることにより、IL-6受容体発現細胞に結合した ^(125)I 標識IL-6を測定する。上記アッセイ系において、IL-6アンタゴニストを存在させる群に加えIL-6アンタゴニストを含まない陰性コントロール群をおき、両者で得られた結果を比較すればIL-6アンタゴニストのIL-6阻害活性を評価することができる。
【0103】
後述の実施例に示されるように、抗IL-6受容体抗体の投与により、リウマチ患者において、MMP-3の血中濃度の低下が認められたことから、抗IL-6受容体抗体等のIL-6アンタゴニストは血中MMP-3濃度低下効果を有し、これにより軟骨破壊抑制作用を有することが示唆された。
【0104】
本発明における治療対象は哺乳動物である。治療対象の哺乳動物は、好ましくはヒトである。
【0105】
本発明の血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤は、経口的にまたは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1 kgあたり0.01 mg から100 mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり 1?1000 mg 、好ましくは 5?50 mg の投与量を選ぶことができる。好ましい投与量、投与方法は、たとえば抗IL-6レセプター抗体の場合には、血中にフリーの抗体が存在する程度の量が有効投与量であり、具体的な例としては、体重1kgあたり1ヶ月(4週間)に0.5mgから40mg、好ましくは1mgから20mgを1回から数回に分けて、例えば2回/週、1回/週、1回/2週、1回/4週などの投与スケジュールで点滴などの静脈内注射、皮下注射などの方法で、投与する方法などである。
【0106】
本発明の血中MMP-3濃度低下剤および軟骨破壊抑制剤は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA )、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
本発明では、抗IL-6受容体抗体などのIL-6アンタゴニストの作用により、MMP-3 、MMP-1 及びTIMP-1から成る群から選ばれたものの体内濃度、例えば血中濃度などが低下することが観察されていることから、こうしたMMP-3 などの血中濃度を指標とすることにより、IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、例えばIL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤あるいは変形性関節症治療剤などの効果(例えば治療効果など)について、それを検出したり、評価したり、及び/又は判定したりする方法や、該方法に使用される試薬が、有用なものであることが理解されよう。
【0108】
MMP-3 、MMP-1 及びTIMP-1について、それらをin vivo 又は in vitro で測定する方法あるいはその測定用の試薬は、当該分野で広く知られており、該公知の方法及び試薬の中から適宜選択して、本発明の目的に使用することができる。
【0109】
検体中のMMP-3 、MMP-1 あるいはTIMP-1測定は、抗MMP 抗体、MMP 阻害剤、MMP ファミリーに対するインヒビター活性を有する化合物(合成化合物を含む)を使用して行うことができるが、好ましくは、例えばMMP-3 に対するモノクローナル抗体などの抗体〔ここで、「抗体」との用語は、広義の意味で使用されるものであってよく、所望の物質に対するモノクローナル抗体の単一のものや各種エピトープに対する特異性を持つ抗体組成物であってよく、また1価抗体または多価抗体並びにポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を含むものであり、さらに天然型(intact)分子並びにそれらのフラグメント及び誘導体も表すものであり、F(ab’)2, Fab’ 及びFab といったフラグメントを包含し、さらに少なくとも二つの抗原又はエピトープ (epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又は、例えば、クワドローム(quadrome), トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などされてこれらの誘導体と考えられるもの、公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用したり、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用したり、DNA 組換え技術を用いて調製される抗体、本明細書で記載し且つ定義する標的抗原物質あるいは標的エピトープに関して中和特性を有したりする抗体又は結合特性を有する抗体を包含していてよい、以下同様〕、MMP-1 に対するモノクローナル抗体などの抗体あるいはTIMP-1に対するモノクローナル抗体などの抗体を使用した免疫学的測定法などにより行うことができる。その他、酵素活性あるいは阻害活性を測定するなどの生化学的な手法を含んだ各種の方法を使用してもよい。
【0110】
免疫学的測定法では、競合型あるいは非競合型結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイのいずれによってもよく、さらに酵素免疫アッセイ、放射免疫アッセイ、蛍光免疫アッセイ、その他、ビオチン-アビジン系、金コロイドなどの金属粒子、発色物質、磁気物質など、当該分野で知られた標識を使用したいずれのアッセイによってもよい。
【0111】
本発明の測定法によれば、例えば、測定すべき物質を酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識抗体試薬と、担体に結合された抗体とを順次反応させたり、同時に反応させたりして行うこともできる。試薬を加える順序は選ばれた担体系の型により異なる。また、感作されたプラスチックなどのビーズあるいはウェルを用いた場合には、酵素などで標識したモノクローナル抗体などの標識抗体試薬を測定すべき物質を含む検体試料と共に最初に適当な試験管中に一緒に入れ、その後該感作されたプラスチックなどのビーズを加えるあるいは該ウェルに入れることにより測定を行うことができる。
【0112】
本発明の測定方法で測定される試料としては、あらゆる形態の溶液やコロイド溶液、非流体試料などが使用しうるが、好ましくは生物由来の試料、例えば胸腺、睾丸、腸、腎臓、脳、乳癌、卵巣癌、結腸・直腸癌、血液、血清、血漿、関節液、脳脊髄液、唾液、羊水、尿、その他の体液、細胞培養液、組織培養液、組織ホモジュネート、生検試料、組織、細胞などが挙げられる。
【0113】
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
MMP-3 測定は、例えば、Matrix, (1990)10, 285-291 、 あるいは特開平4-237499号公報などに記載されている。特に、検体中のMMP-3 を測定するのに適した技術としては、例えば、特開平4-237499号公報などに記載のものが挙げられる。
【0114】
MMP-1 測定は、例えば、Clin.Chim.Acta(1993)219,1-14、あるいはRes.Commun.Mol.Pathol.Pharmacol.(1997)95,115-128などに記載されている。特に、検体中のMMP-1を測定するのに適した技術としては、例えば、Clin.Chim.Acta(1993)219,1-14などに記載のものが挙げられる。
【0115】
TIMP-1測定は、例えば、J.Immunol.Methods(1990)127,103-108、Matrix(1989)9,1-6、あるいは特開昭63-210665号公報などに記載されている。特に、検体中のTIMP-1を測定するのに適した技術としては、例えば、特開昭63-210665号公報などに記載のものが挙げられる。
【0116】
プロテアーゼ活性あるいはインヒビター活性の測定は、通常の測定法に準じて実施することができ、例えば Biochemistry (1993) 32,4330-4337 に示されている方法などを参考にして行うことができる。また、各種標識、緩衝液系その他適当な試薬等を使用したりすることもできる。方法を行うにあたっては、MMPs等をアミノフェニル酢酸水銀などの活性化剤で処理したり、その前駆体あるいは潜在型のものを活性型のものに予め変換しておくこともできる。個々の測定にあたっては、それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、適切な測定系を構築すればよい。
【実施例】
【0117】
以下、実施例、参考例および実験例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
実施例
ヒト型化抗IL-6受容体抗体(ヒト型化PM-1抗体;WO92/19759に記載されている、L鎖バージョンaとH鎖バージョンfから成る)による2ヶ月以上の治療を行ったリウマチ患者8例、並びにMulticentric Castleman’s Disease(CD)の患者5例の患者について、治療に伴うMMP-1,-2,-3,-7,-8および-13並びにTIMP-1および-2の血中濃度の変化について検討した。抗体は生理食塩水100mlに溶解し1mg、10mg、50mgと安全を確認しながら増量し、50mg/body週2回あるいは100mg/body週1回の割合で点滴静注にて使用した。
【0119】
前値、治療開始後2ヶ月、および6ヶ月間治療を継続したリウマチ患者4例およびCD患者2例については6ヶ月目の値も検討した。MMP-1,-2,-3,-7,-8および-13並びにTIMP-1および-2の血中濃度の測定にはELISA kit(富士薬品工業)を用いた。その結果、ヒト型化抗IL-6受容体抗体はリウマチ患者およびキャスルマン病患者においてMMP-1,MMP-3およびTIMP-1の血中濃度を低下させることを示している(図1から図6)。
【0120】
以上より、抗IL-6受容体抗体は、血中MMP-3濃度を低下させ、軟骨破壊抑制剤、変形性関節症治療剤となる可能性が示された。
【0121】
参考例1.ヒト可溶性IL-6受容体の調製
Yamasakiらの方法(Yamasaki, K. et al., Science (1988) 241, 825-828)に従い得られたIL-6受容体をコードするcDNAを含むプラスミドpBSF2R.236を用いて、PCR 法により可溶性IL-6受容体を作成した。プラスミドpBSF2R.236を制限酵素Sph I で消化して、IL-6受容体cDNAを得、これをmp18(Amersham製)に挿入した。IL-6受容体cDNAにストップコドンを導入するようにデザインした合成オリゴプライマーを用いて、インビトロミュータジェネシスシステム(Amersham製)により、PCR 法でIL-6受容体cDNAに変異を導入した。この操作によりストップコドンがアミノ酸345 の位置に導入され、可溶性IL-6受容体をコードするcDNAが得られた。
【0122】
可溶性IL-6受容体cDNAをCHO 細胞で発現するために、プラスミドpSV (Pharmacia製)と連結させ、プラスミドpSVL344 を得た。dhfrのcDNAを含むプラスミドpECEdhfrにHind III-Sal Iで切断した可溶性IL-6受容体cDNAを挿入し、CHO 細胞発現プラスミドpECEdhfr344 を得た。
【0123】
10μg のプラスミドpECEdhfr344 をdhfr-CHO細胞株DXB-11(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4216-4220)へカルシウムフォスフェイト沈降法(Chen, C. et al., Mol. Cell. Biol. (1987) 7, 2745-2751 )により、トランスフェクトした。トランスフェクトしたCHO 細胞を1mM グルタミン、10% 透析FCS 、100U/ml のペニシリンおよび 100μ/ml のストレプトマイシンを含むヌクレオシド不含αMEM 選択培養液で3 週間培養した。
【0124】
選択されたCHO 細胞を限界希釈法でスクリーニングし、単一のCHO 細胞クローンを得た。このCHO 細胞クローンを20nM?200nM の濃度のメトトレキセートで増幅し、ヒト可溶性IL-6受容体産生CHO 細胞株5E27を得た。CHO 細胞株5E27を5%FBS を含むイスコーブ改変ダルベコ培養液(IMDM、Gibco 製)で培養した。培養上清を回収し、培養上清中の可溶性IL-6受容体の濃度をELISA にて測定した。その結果、培養上清中には可溶性IL-6受容体が存在することが確認された。
【0125】
参考例2.抗ヒトIL-6抗体の調製
10μg の組換型IL-6(Hirano, T. et al., Immunol. Lett. (1988) 17, 41 )をフロイント完全アジュバントとともにBALB/cマウスを免疫し、血清中に抗IL-6抗体が検出できるまで一週間毎にこれを続けた。局部のリンパ節から免疫細胞を摘出し、ポリエチレングリコール1500を用いてミエローマ細胞株P3U1と融合させた。ハイブリドーマをHAT 培養液を用いるOiらの方法(Selective Methods in Cellular Immunology, W.H.Freeman and Co., San Francisco, 351, 1980 )に従って選択し、抗ヒトIL-6抗体を産生するハイブリドーマを樹立した。
【0126】
抗ヒトIL-6抗体を産生するハイブリドーマは下記のようにしてIL-6結合アッセイをおこなった。すなわち、柔軟なポリビニル製の96穴マイクロプレート(Dynatech Laboratories, Inc. 製, Alexandria, VA)を0.1Mのcarbonate-hydrogen carbonate緩衝液(pH 9.6)中で 100μl のヤギ抗マウスIg(10μl/ml, Cooper Biomedical, Inc製 Malvern, PA)により4 ℃で一晩コートした。次いで、プレートを 100μl の1%ウシ血清アルブミン(BSA )を含むPBS により室温で2 時間処理した。
【0127】
これをPBSで洗浄した後、100μlのハイブリドーマ培養上清を各穴へ加え、4℃にて一晩インキュベートした。プレートを洗浄して、2000cpm/0.5ng/wellとなるように ^(125)I 標識組換型IL-6を各穴へ添加し、洗浄した後各穴の放射活性をガンマカウンター(Beckman Gamma 9000, Beckman Instruments, Fullerton, CA)で測定した。216 ハイブリドーマクローンのうち32のハイブリドーマクローンがIL-6結合アッセイにより陽性であった。これらのクローンのなかで最終的に安定なMH166.BSF2が得られた。該ハイブリドーマが産生する抗IL-6抗体MH166 はIgG1κ型のサブタイプを有する。
【0128】
ついで、IL-6依存性マウスハイブリドーマクローンMH60.BSF2を用いてMH166 抗体によるハイブリドーマの増殖に関する中和活性を調べた。MH60.BSF2 細胞を1 ×10^(4) /200μl/穴となるように分注し、これにMH166 抗体を含むサンプルを加え、48時間培養し、0.5 μCi/ 穴の ^(3)H チミジン(New England Nuclear, Boston, MA )を加えた後、更に6 時間培養を続けた。細胞をグラスフィルターペーパー上におき、自動ハーベスター(Labo Mash Science Co., Tokyo, Japan )で処理した。コントロールとしてウサギ抗IL-6抗体を用いた。
【0129】
その結果、MH166 抗体はIL-6により誘導されるMH60.BSF2 細胞の ^(3)H チミジンの取込みを容量依存的に阻害した。このことより、MH166 抗体はIL-6の活性を中和することが明らかとなった。
【0130】
参考例3.抗ヒトIL-6受容体抗体の調製
Hirataらの方法(Hirata, Y. et al. J. Immunol. (1989) 143, 2900-2906 )により作成した抗IL-6受容体抗体MT18をCNBrにより活性化させたセファロース4B(Pharmacia Fine Chemicals製, Piscataway, NJ)と添付の処方にしたがって結合させ、IL-6受容体(Yamasaki, K. et al., Science (1988) 241, 825-828)を精製した。ヒトミエローマ細胞株U266を1%ジギトニン(Wako Chemicals製),10mMトリエタノールアミン(pH 7.8)および0.15M NaClを含む1mM p-パラアミノフェニルメタンスルフォニルフルオライドハイドロクロリド(Wako Chemicals製)(ジギトニン緩衝液)で可溶化し、セファロース4Bビーズと結合させたMT18抗体と混合した。その後、ビーズをジギトニン緩衝液で6 回洗浄し、免疫するための部分精製IL-6受容体とした。
【0131】
BALB/cマウスを3 ×10^(9) 個のU266細胞から得た上記部分精製IL-6受容体で10日おきに4 回免疫し、その後常法によりハイブリドーマを作成した。成長陽性穴からのハイブリドーマ培養上清を下記の方法にてIL-6受容体への結合活性を調べた。5 ×10^(7) 個のU266細胞を^(35)S -メチオニン(2.5mCi)で標識し、上記ジギトニン緩衝液で可溶化した。可溶化したU266細胞を0.04ml容量のセファロース4Bビーズと結合させたMT18抗体と混合し、その後、ジギトニン緩衝液で6 回洗浄し、0.25mlのジギトニン緩衝液(pH3.4 )により^(35)S -メチオニン標識IL-6受容体を流出させ、0.025ml の1M Tris (pH 7.4)で中和した。
【0132】
0.05mlのハイブリドーマ培養上清を0.01mlのProtein G セファロース(Phramacia 製)と混合した。洗浄した後、セファロースを上記で調製した0.005ml の^(35)S 標識IL-6受容体溶液とともにインキュベートした。 免疫沈降物質をSDS-PAGEで分析し、IL-6受容体と反応するハイブリドーマ培養上清を調べた。その結果、反応陽性ハイブリドーマクローンPM-1(FERM BP-2998)を樹立した。ハイブリドーマPM-1から産生される抗体は、IgG1κ型のサブタイプを有する。
【0133】
ハイブリドーマPM-1が産生する抗体のヒトIL-6受容体に対するIL-6の結合阻害活性をヒトミエローマ細胞株U266を用いて調べた。ヒト組換型IL-6を大腸菌より調製し(Hirano, T. et al., Immunol. Lett. (1988) 17, 41-45)、ボルトン-ハンター試薬(New England Nuclear, Boston, MA )により ^(125)I標識した(Taga, T. et al., J. Exp. Med. (1987) 166, 967-981 )。
【0134】
4×10^(5) 個のU266細胞を1 時間、70% (v/v )のハイブリドーマPM-1の培養上清および14000cpmの ^(125)I標識IL-6とともに培養した。70μl のサンプルを 400μl のマイクロフュージポリエチレンチューブに 300μl のFCS 上に重層し、遠心の後、細胞上の放射活性を測定した。
その結果、ハイブリドーマPM-1が産生する抗体は、IL-6のIL-6受容体に対する結合を阻害することが明らかとなった。
【0135】
参考例4.抗マウスIL-6受容体抗体の調製
Saito, T. et al., J. Immunol. (1991) 147, 168-173 に記載の方法により、マウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体を調製した。
マウス可溶性IL-6受容体を産生するCHO 細胞を10%FCSを含むIMDM培養液で培養し、その培養上清から抗マウスIL-6受容体抗体RS12(上記Saito, T. et al 参照)をAffigel 10ゲル(Biorad製)に固定したアフィニティーカラムを用いてマウス可溶性IL-6受容体を精製した。
【0136】
得られたマウス可溶性IL-6受容体50μg をフロイント完全アジュバンドと混合し、ウィスターラットの腹部に注射した。2 週間後からはフロイント不完全アジュバンドで追加免疫した。45日目にラット脾臓細胞を採取し、2 ×10^(8) 個を1 ×10^(7) 個のマウスミエローマ細胞P3U1と50% のPEG1500 (Boehringer Mannheim 製)をもちいて常法により細胞融合させた後、HAT 培地にてハイブリドーマをスクリーニングした。
【0137】
ウサギ抗ラットIgG 抗体(Cappel製)をコートしたプレートにハイブリドーマ培養上清を加えた後、マウス可溶性IL-6受容体を反応させた。次いで、ウサギ抗マウスIL-6受容体抗体およびアルカリフォスファターゼ標識ヒツジ抗ウサギIgG によるELISA 法によりマウス可溶性IL-6受容体に対する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。抗体の産生が確認されたハイブリドーマクローンは2 回のサブスクリーニングを行い、単一のハイブリドーマクローンを得た。このクローンをMR16-1と名付けた。
【0138】
このハイブリドーマが産生する抗体のマウスIL-6の情報伝達における中和活性をMH60.BSF2 細胞(Matsuda, T. et al., J. Immunol. (1988) 18, 951-956) を用いた ^(3)H チミジンの取込みで調べた。96ウェルプレートにMH60.BSF2 細胞を1 ×10^(4) 個/200μl/ウェルとなるように調製した。このプレートに10pg/ml のマウスIL-6とMR16-1抗体又はRS12抗体を12.3?1000ng/ml 加えて37℃、5%CO2 で44時間培養した後、 1μCi/ ウェルの ^(3)H チミジンを加えた。4 時間後に ^(3)H チミジンの取込みを測定した。その結果MR16-1抗体はMH60.BSF2 細胞の ^(3)H チミジン取込みを抑制した。
【0139】
したがって、ハイブリドーマMR16-1(FERM BP-5875)が産生する抗体は、IL-6のIL-6受容体に対する結合を阻害することが明らかとなった。
【0140】
発明の効果
本発明により、抗IL-6受容体抗体等のIL-6アンタゴニストが血中MMP-3濃度低下効果を有することが示された。したがって、IL-6アンタゴニストは血中MMP-3濃度低下、軟骨破壊抑制剤および/または変形性関節症治療剤として有用であることが明らかにされた。
【0141】
特許協力条約第13規則の2の寄託された微生物への言及及び寄託機関
寄託機関 名 称:工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1-3
微生物(1)名 称:PM-1
寄託番号:FERM BP-2998
寄託日:1989年7月12日
(2)名 称:Rat-mouse hybridoma MR16-1
寄託番号:FERM BP-5875
寄託日:1997年3月13日
(3)名 称:HB-101-pIBIBSF2R
寄託番号:FERM BP-2232
寄託日:1989年1月9日
【0142】
寄託機関:National Collections of Industrial, Food and Marine Bacteria Limited
あて名:23 St Macher Drive, Aberdeen AB2 IRY, UNITED KINGDOM
(4)名 称:E.coli DH5α pPM-k3
寄託番号:MCIMB 40366
寄託日:1991年2月12日
(5)名 称:E.coli DH5α pPM-h1
寄託番号:MCIMB 40362
寄託日:1991年2月12日
【0143】
開示の要約
1.インターロイキン-6(IL-6)アンタゴニストを有効成分として含有する血中マトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)濃度低下剤。
2.IL-6アンタゴニストがIL-6受容体に対する抗体であることを特徴とする請求項1記載の血中MMP-3濃度低下剤。
【0144】
3.IL-6受容体に対する抗体がIL-6受容体に対するモノクローナル抗体であることを特徴とする第2項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
4.IL-6受容体に対する抗体がヒトIL-6受容体に対するモノクローナル抗体であることを特徴とする第3項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
5.IL-6受容体に対する抗体がマウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体であることを特徴とする第3項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
【0145】
6.IL-6受容体に対する抗体が組換え型抗体であることを特徴とする第2?5項のいずれか1項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
7.ヒトIL-6受容体に対するモノクローナル抗体がPM-1抗体であることを特徴とする第4項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
8.マウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体がMR16-1抗体であることを特徴とする第5項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
【0146】
9.IL-6受容体に対する抗体がIL-6受容体に対するキメラ抗体又はヒト型化抗体であることを特徴とする第2?4項のいずれか1項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
10.IL-6受容体に対するヒト型化抗体がヒト型化PM-1抗体であることを特徴とする第9項に記載の血中MMP-3濃度低下剤。
【0147】
11.インターロイキン-6(IL-6)アンタゴニストを有効成分として含有する軟骨破壊抑制剤。
12.IL-6アンタゴニストがIL-6受容体に対する抗体であることを特徴とする第11項に記載の軟骨破壊抑制剤。
13.IL-6受容体に対する抗体がIL-6受容体に対するモノクローナル抗体であることを特徴とする第12項に記載の軟骨破壊抑制剤。
【0148】
14.IL-6受容体に対する抗体がヒトIL-6受容体に対するモノクローナル抗体であることを特徴とする第13項に記載の軟骨破壊抑制剤。
15.IL-6受容体に対する抗体がマウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体であることを特徴とする第13項に記載の軟骨破壊抑制剤。
16.IL-6受容体に対する抗体が組換え型抗体であることを特徴とする第12?15項のいずれか1項に記載の軟骨破壊抑制剤。
【0149】
17.ヒトIL-6受容体に対するモノクローナル抗体がPM-1抗体であることを特徴とする第14項に記載の軟骨破壊抑制剤。
18.マウスIL-6受容体に対するモノクローナル抗体がMR16-1抗体であることを特徴とする第15項に記載の軟骨破壊抑制剤。
19.IL-6受容体に対する抗体がIL-6受容体に対するキメラ抗体又はヒト型化抗体であることを特徴とする第12?14項のいずれか1項に記載の軟骨破壊抑制剤。
【0150】
20.IL-6受容体に対するヒト型化抗体がヒト型化PM-1抗体であることを特徴とする第19項に記載の軟骨破壊抑制剤。
21.インターロイキン-6(IL-6)アンタゴニストを有効成分として含有する変形性関節症治療剤。
【0151】
22.(1)(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標とし、かつ
(2)(a)IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤、(b)IL-6アンタゴニストを有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(c)IL-6アンタゴニストを有効成分とした変形性関節症治療剤の軟骨破壊抑制効果の検出・評価・判定方法。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。
【0152】
23.(1)IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6アンタゴニストを有効成分とした薬剤の変形性関節症治療での軟骨破壊抑制効果を、薬剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標として検出・評価・判定する(但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。)ために使用することを特徴とする検体中のMMP-3濃度測定用試薬。
24.抗MMP-3抗体を含有することを特徴とする第23項の試薬。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標とし、かつ
(2)(a)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした軟骨破壊抑制剤、または(b)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした変形性関節症治療剤の軟骨破壊抑制効果の検出・評価・判定方法。但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。
【請求項2】
前記軟骨破壊抑制剤がリウマチ治療剤であることを特徴とする請求項1に記載の検出・評価・判定方法。
【請求項3】
抗MMP-3抗体を含有し、(1)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の軟骨破壊抑制作用、または(2)IL-6受容体に対する抗体を有効成分とした薬剤の変形性関節症治療での軟骨破壊抑制効果を、薬剤を投与した後の経時での検体中のMMP-3濃度の低下を指標として検出・評価・判定する(但し、医師が人間に対して手術、治療又は診断する方法を除く。)ために使用することを特徴とする検体中のMMP-3濃度測定用試薬。
【請求項4】
前記軟骨破壊抑制作用がリウマチ治療効果であることを特徴とする請求項3に記載のMMP-3濃度測定用試薬。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2014-04-16 
結審通知日 2014-04-21 
審決日 2014-05-02 
出願番号 特願2010-291073(P2010-291073)
審決分類 P 1 113・ 14- ZAA (G01N)
P 1 113・ 113- ZAA (G01N)
P 1 113・ 121- ZAA (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 田村 明照
特許庁審判官 安藤 倫世
郡山 順
登録日 2012-05-11 
登録番号 特許第4987117号(P4987117)
発明の名称 IL-6アンタゴニストを有効成分として含有する血中MMP-3濃度低下剤  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
代理人 安國 忠彦  
代理人 永島 孝明  
代理人 磯田 志郎  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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