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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F16L 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16L 審判 訂正 2項進歩性 訂正する F16L 審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正する F16L |
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管理番号 | 1289888 |
審判番号 | 訂正2014-390054 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2014-04-09 |
確定日 | 2014-07-07 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第4268811号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4268811号に係る明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第4268811号は、平成15年1月29日の出願であって、その請求項1?3に係る発明は、平成21年2月27日にその特許権の設定登録がなされたものであって、平成26年4月9日に本件訂正審判が請求された。 第2 請求の趣旨及び訂正の内容 本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許第4268811号の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正することを求めることであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。 1.請求項1?2からなる一群の請求項に係る訂正 1-1.訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。 【訂正前】 「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、 前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、 前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、 前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、 前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれていることを特徴とする、差込み式管継手。」 【訂正後】 「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、 前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、 前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、 前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、 前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれていることを特徴とする、差込み式管継手。」 1-2.訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けている」を「前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向されている」に訂正する。 2.請求項3に係る訂正 2-1.訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を次のとおり訂正する。 【訂正前】 「前記抜止めリングは線材からなって前記外筒体の内周の凹部に収容され、前記凹部の内周には、前記管が抜け出し方向に移動したときに前記抜止めリングに縮径方向の力を作用させる外窄まりテーパ状の押圧面が形成されている、請求項1記載の差込み式管継手。」 【訂正後】 「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、 前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、 前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、 前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、 前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれており、 前記抜止めリングは線材からなって前記外筒体の内周の凹部に収容され、前記凹部の内周には、前記管が抜け出し方向に移動したときに前記抜止めリングに縮径方向の力を作用させる外窄まりテーパ状の押圧面が形成されていることを特徴とする、差込み式管継手。」に訂正する。 第3 当審の判断 1.請求項1?2からなる一群の請求項に係る訂正について 1-1.訂正の対象の一群の請求項について (1)訂正事項1について 本件請求項1は独立請求項であり、請求項2は、その請求項1を引用している。 したがって、請求項1を訂正する訂正事項1は、一群の請求項である請求項1?2に係る請求であり、特許法第126条第3項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された訂正事項2は、課題を解決するための手段として、上記訂正事項1の請求項1に対応する事項を記載しているので、一群の請求項1、2に対応する事項を記載している。 そして、願書に添付した明細書の訂正である当該訂正事項2と関係する全ての一群の請求項である、請求項1?2が請求の対象とされている。 したがって、本件請求は、特許法第126条第4項の規定に適合する。 1-2.訂正の目的について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の抜止めリングの食込み歯について、「該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、」との限定を加えるものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、当該訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0005】に記載された「前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けている」を「前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向されている」に訂正するものである。 したがって、当該訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 1-3.新規事項の追加の有無について (1)訂正事項1について 願書に添付した明細書の段落【0014】には、「この抜止めリング3は外筒体6にインサート成形される。このインサート成形に際しては、例えば、予め全体が円筒状にかつ一端部の内周に食込み歯逃がし用のテーパ12を付けた形に樹脂成形したスペーサー13を用意し、このスペーサー13の一端部の端面に抜止めリング3を重ね合わせるとともに、抜止めリング3の外側にリテーナー14を重ね合わせた状態に金型内に保持したうえで、これらを外筒体6の射出成形すると同時に該外筒体6の内周に一体にインサート成形する。」と記載され、【図1】には、食込み歯11が、食込み歯逃がし用のテーパ12と対向されていることが、図示されている。 以上のことから、願書に添付した明細書ないし図面には、「抜止めリングは、外筒体の内部に配備され、内径部に管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、」が記載されているといえる。 したがって、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 上記「1-3.(1)」で述べたとおり、願書に添付した明細書ないし図面には、「抜止めリングは、外筒体の内部に配備され、内径部に管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向されている」が記載されているといえる。 したがって、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 1-4.特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1について 上記「1-2.(1)」で述べたとおり、訂正事項1は、訂正前の抜止めリングの食込み歯に関連して、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向されるように限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、当該訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について 上記「1-2.(2)」で述べたとおり、訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 したがって、当該訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 1-5.独立特許要件について 上記のとおり、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としているので、当該訂正事項1により訂正された訂正後の請求項1、2に係る発明(以下、「訂正発明1」、「訂正発明2」という。)は、特許法第126条7項の規定に適合する必要があり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないから、以下、訂正発明1、訂正発明2について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(独立特許要件)について検討する。 (1)訂正後の発明の認定 訂正発明1は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、 前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、 前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、 前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、 前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれていることを特徴とする、差込み式管継手。」 訂正発明2は、訂正後の特許請求の範囲の請求項2の記載により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項2】 前記抜止めリングが管の挿入により押し開かれながら該管の外周面に食込む弾性を有する食込み歯を設けてあり、前記外筒体が樹脂材で成形されており、この外筒体に前記抜止めリングがインサート成形されている、請求項1記載の差込み式管継手。」 (2)審判請求人が証拠として提示した甲号証 甲第1号証:特開2002-31282号公報 甲第2号証:特開2002-81587号公報 甲第3号証:特開2002-257273号公報 (3)引用文献に記載の事項及び引用文献記載の発明 (3-1) 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である、甲第1号証(以下、「引用文献1」という。)には、図1?13と共に次の事項が記載されている。 (ア)「【0013】図1は、管継手Cの実施の一形態を示す正面断面図、図2はパイプを接続した状態の正面断面図で、これらの図において、符号1は接続対象となる給水、給湯用等のパイプで、例えば、架橋ポリエチレン又はポリブテン等の合成樹脂材から成る。2は継手本体で、その一端側には、パイプ1の端部に挿入される挿入筒部3を有する。」 (イ)「【0014】4はシール部材(Oリング等)で、継手本体2の挿入筒部3の凹周溝7に装着されている。5は締付環体で、バネ鋼等から成り、軸心方向のスリット(切割部)51を有し、挿入筒部3に外嵌されたパイプ1の端部を弾発的な締め付け力で締め付ける。6は拡径片で、高剛性な鋼材から成り、図1に示す初期状態にて、締付環体5の弾発力に抗して、そのスリット51の端部に離脱可能に圧入され、該締付環体5を、パイプ1の挿入が可能な程度に拡径している。 (ウ)「【0015】14は、締付環体5を覆うカバーであり、そのカバー14の基部内周に形成された雌ネジ141 が、継手本体2の挿入筒部3の基部寄りの外周に形成した雄ネジ19に螺合し、かつ、そのカバー14と、挿入筒部3との間に、締付環体5のスリット51から離脱した拡径片6を収納するためのリング状の逃げ用空間16を形成している。また、カバー14は、PA(ポリアミド,ナイロン)又はPES(ポリエーテルサルフォン)又はPC(ポリカーボネート)等の透明樹脂から成るのが好ましく、拡径片6の離脱を、外から(目視で)容易に確認できる。」 (エ)「【0016】8は、カバー14の一端側(端部)に配設された抜け止めリングで、SUS材(例えば、SUS304-CSP(1/2H))等の弾発力を有する高剛性な板金材から成り、その内周側には、周方向に等間隔に切り込み形成されると共にパイプ1の挿入方向A(図1参照)に折り曲げされてパイプ1の外周面に掛止する複数個の歯部12…を有し、カバー14の外周面に形成された雄ネジ9に螺合する袋ナット10によって、着脱自在に締め付け固定されている。なお、袋ナット10は、真鍮等の銅合金や、プラスチック複合材料(例えば、変性PPO(GF30))等から成る。」 (オ)「【0017】具体的に述べると、抜け止めリング8は、次のように形成される。即ち、図3に、抜け止めリング8の形成途中の側面図(A)及び正面断面図(B)を示し、所定の環状体23に、その内周面から径方向に所定の長さの切込部24を、その周方向に所定のピッチ(中心角度)で設けて、周方向に分割された複数個(本実施の形態では18個)の歯部12…を形成し、図4に示すように、その歯部12…を軸心方向に折り曲げて、花弁形状(菊座状)の抜け止めリング8を形成する。」 上記(ア)?(オ)の記載事項、及び、図1?2の開示事項によると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「継手本体2に、Oリング4、抜け止めリング8を備えており、 前記継手本体2は軸心方向一端部に、内側に位置する挿入筒部3と、外側に位置するカバー14及びカバー14の外周面に形成された雄ネジ9に螺合する袋ナット10とを有し、挿入筒部3は継手本体2と一体に形成され、カバー14及び袋ナット10は、継手本体2とは別体に形成されて、挿入筒部3の外周との間にパイプ1差込み間隙を形成するよう継手本体2に結合されており、 前記挿入筒部3の外周には凹周溝7を形成し、この凹周溝7に、前記Oリング4が嵌め込まれており、 前記抜け止めリング8は、前記外側に位置するカバー14及びカバー14の外周面に形成された雄ネジ9に螺合する袋ナット10の内部に配備され、内径部に歯部12を設けている差込み式管継手。」 (3-2) 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である、甲第2号証(以下、「引用文献2」という。)には、図1?15と共に次の事項が記載されている。 (カ)「【0013】 【発明の実施の形態】本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は一実施例の差込み式管継手の半欠截断面図、図2は差込み式管継手に組み込まれるコレットの正面図、図3は図2のコレットの半欠截断面図、図4は差込み式管継手に組み込まれるテ-パ付リングの背面図、図5は図4のテ-パ付リングの半欠截断面図、図6は図1の差込み式管継手への管の差込み始め状態を示す半欠截断面図、図7は管を最も深く差し込んだ状態を示す要部断面図、図8は管を差込み後に抜き出し方向に引っ張った状態の要部断面図、図9は管の差込み完了状態の要部拡大断面図、図10は管を抜き出し可能にした状態の要部断面図、図11はテ-パ付リングの他例を示す背面図、図12は図11のテ-パ付リングの半欠截断面図である。」 (キ)「【0027】上記実施例では、予めテ-パ付リング22を継手本体1内に組み込んであるが、これに代えて、現場で管Pを管差込み間隙12内に差し込むときに始めて、そのテ-パ付リング22を内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位に、テ-パ24が管差込み間隙12の内奥へ向くよう嵌め込み、しかる後、管Pの一端部を管差込み間隙12内に差し込んでテ-パ付リング22を上記のように軸方向内方へ押し込むこともできる。これにおいても、テ-パ付リング22のテ-パ24で弾性シールリング2が内筒体5の外周面に押し付けられるため、管Pの一端部は面取り不要にして弾性シールリング2に突っ掛かることなくスムーズに差し込むことができる。」 (ク)「【0030】上記脱落防止リング30は、図15に示すように、コレット4の中空軸15の後端側の内周に設けた内周溝33に嵌め込み固定することもできる。この場合、脱落防止リング30はこれの内周に複数個の弾性変形自在な係止突起31を所定間隔置きに列設する形に形成している。そして、係止突起31の先端をテ-パ付リング22の後端面22bの外周寄り部位に接当係合させる。これにおいても、係止突起31の先端はテ-パ付リング22の後端面22bの外周寄り部位のみに接当係合させてあり、また係止突起31の先端は管Pの外面に対し撓み自在に擦接するので、管Pの端末部P´でテ-パ付リング22の後端面22bを押しながら差し込むのに何等支障を来すようなことはない。」 上記(カ)?(ク)の記載事項、及び、図1?15の開示事項によると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用文献2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「テーパ付リング22を備えており、前記テーパ付リング22は内径部に前方拡がり状のテーパ24を付けており、このテーパ付リング22が内筒体の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位に、管Pの一端部で押されるまま前端部を管P差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれている差込み式管継手。」 (3-3) 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である、甲第3号証(以下、「引用文献3」という。)には、図1?2と共に次の事項が記載されている。 (ケ)「【0015】本体13の中間部の内周面には、第1雌ねじ部17へ向かうに従い拡径して外方へ傾斜する環状の傾斜面26が形成されている。その傾斜面26より本体13の先端側の内周面には、ロックリング22のベースリング23が当接する受け面27が本体13の軸線と直交するように円環状に形成されている。そして、一対のロックリング22のうち、本体13の基端側に位置するロックリング22は、そのベースリング23が受け面27上に係合されるとともに、両規制片24が傾斜面26との間に間隙を有するように配設されている。」 (4)訂正発明1についての対比・判断 (4-1)一致点、相違点 訂正発明1と引用文献1記載の発明とを対比する。 引用文献1記載の発明の「継手本体2」、「Oリング4」、「抜け止めリング8」、「パイプ1」は、それぞれ、訂正発明1の「継手本体」、「弾性シールリング」、「抜止めリング」、「管」に相当する。 引用文献1記載の発明の「挿入筒部3」、「外側に位置するカバー14及びカバー14の外周面に形成された雄ネジ9に螺合する袋ナット10」、「内側に位置する挿入筒部3と、外側に位置するカバー14及びカバー14の外周面に形成された雄ネジ9に螺合する袋ナット10」は、それぞれ、訂正発明1の「内筒体」、「外筒体」、「内外二重筒体」に相当する。 引用文献1記載の発明の「Oリング4」の「外径」は、図1及び図2から明らかに、パイプ1差込み間隙内に挿入されるパイプ1の外径よりも小さいし、Oリング4のシール機能を考慮すると、該パイプ1の内径よりも大きいのが通常であると認められ、「Oリング4」は弾性を有しているものと認められるので、引用文献1記載の発明の「Oリング4」は、パイプ1(管)差込み間隙内に挿入されるパイプ1(管)の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつものであり、弾性であるので、訂正発明1の「弾性シールリング」に相当する。 引用文献1記載の発明の「抜け止めリング8」は、訂正発明1の「抜止めリング」に相当する。 引用文献1記載の発明の「抜け止めリング8」は、「弾発力を有する高剛性な板金材から成り、その内周側には、周方向に等間隔に切り込み形成されると共にパイプ1の挿入方向A(図1参照)に折り曲げされてパイプ1の外周面に掛止する複数個の歯部12…を有し、」ているので、「歯部12」も「弾発力を有する高剛性な板金材から成り」、引用文献1記載の発明の「歯部12」は、パイプ1(管)の外周面に食い込む拡縮径変形自在な歯部12であると認められるので、訂正発明1の「食込み歯」に相当する。 訂正発明1と引用文献1記載の発明とを対比すると、両者は、次の一致点で一致し相違点で相違する。 (一致点) 「継手本体に、弾性シールリング、抜止めリングを備えており、 前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、 前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ弾性シールリングが嵌め込まれており、 前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けている差込み式管継手。」 <相違点1> 「食込み歯は」、訂正発明1では、「食込み歯逃し用のテーパと対向され」ているのに対して、引用文献1記載の発明では、そのような構成が記載されていない点。 <相違点2> 訂正発明1は、「テーパ付リングを備えており、」「前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが内筒体の外周の弾性シールリングより軸方向外方部位と、外筒体の内周の抜止めリングより軸方向内方部位との間に、管の一端部で押されるまま前端部を管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれている」のに対して、引用文献1記載の発明は、テーパ付リングを備えていない点。 (4-2)相違点についての判断 <相違点2について> まず、相違点2について検討する。 引用文献1の図1及び図2から明らかに、引用文献1記載のものは、パイプ1が差込まれる管差込み間隙内に、拡径片6が存在しているので、引用文献1記載の発明に、引用文献2記載の発明のテーパ付リングを採用すると、テーパ付きリングは、拡径片6が障害となって管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動することができなくなるから、引用文献2記載の発明を、引用文献1記載の発明に適用するのには、阻害要因があると認められる。 また、引用文献2の図15に示される、「脱落防止リング30の内周に」設けられる「複数個の弾性変形自在な係止突起31」は、「係止突起31の先端をテ-パ付リング22の後端面22bの外周寄り部位に接当係合させる」ものであって、食込むものではないから、訂正発明1の「抜止めリングの食込み歯」に相当するとはいえないので、引用文献2には、テーパ付リングが、内筒体の外周の弾性シールリングより軸方向外方部位と、外筒体の内周の抜止めリングより軸方向内方部位との間に、嵌め込まれている構成は認められない。 そして、訂正発明1のテーパ付リングの位置に係る前記構成は、文献1?3のいずれにも記載も示唆もされていなし、自明な事項ともいえないので、上記相違点2の技術事項を想到することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (4-3)独立特許要件 上記のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、訂正発明1は、引用文献1記載の発明、及び、引用文献2ないし3に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当しないから、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。 (5)訂正発明2についての対比・判断 訂正発明1を引用する訂正発明2についても、上記と同様であり、特許法第29条第2項の規定に該当しないから、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものである。 1-6.小括 以上のように、請求項1?2からなる一群の請求項に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第3項乃至第7項の規定に適合する。 2.請求項3に係る訂正について 2-1.訂正の対象の請求項及び訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の独立請求項1を引用する請求項3の記載を、当該請求項1の記載を引用しないものとし、独立請求項である、訂正請求項3として記載するものである。 したがって、訂正事項3は、請求項3に係る請求であり、特許法第126条第3項の規定に適合し、特許法第126条第1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 2-2.新規事項の追加の有無について 訂正事項3は、訂正前の独立請求項1を引用する請求項3の記載を、当該請求項1の記載を引用しないものとし、独立請求項である、訂正請求項3として記載するものである。 したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 2-3.特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について 訂正事項3は、訂正前の独立請求項1を引用する請求項3の記載を、当該請求項1の記載を引用しないものとし、独立請求項である、訂正請求項3として記載するものである。 したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 2-4.小括 以上のように、請求項3に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる事項を目的とし、同条第3項、第5項及び第6項の規定に適合する。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同条第3項乃至第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 差込み式管継手 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、給湯・給水配管などに用いられ、管の一端部をシール状にかつ抜止め状に簡易迅速に差し込み接続できる差込み式管継手に関する。 【0002】 【従来の技術】 この種の差込み式管継手として、継手本体の内部に、差し込まれる管の外周面に密接する弾性シールリングと、管の外周面に食い込む食込み歯を一体に形成したコレットとが組み込まれているものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、継手本体の内部に、差し込まれる管の外周面に密接する弾性シールリング、及びコレットが組み込まれるが、管の外周面に食い込む爪部を有するロックリングはコレットと別体に形成されて組み込まれたものもある(例えば、特許文献2参照。)。 【0003】 【特許文献1】 特開平11-2377号公報 【特許文献2】 特開平11-118081号公報 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかるに、コレットを組み込む上記差込み式管継手では、組立て工数が増え、構造が複雑になり、コスト高にもなる。 本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたもので、コレットレスにすることによって構造が比較的簡単でしかもコストが安価な差込み式管継手を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明の差込み式管継手は、継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備える。前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されている。前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれている。前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向されている。前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれているものである。 【0006】 一つの好適な態様として、本発明による差込み式管継手は、上記抜止めリングは管の挿入により押し開かれながら該管の外周面に食込む弾性を有する食込み歯を設け、上記外筒体は樹脂材で成形し、この外筒体に上記抜止めリングをインサート成形することができる。また、上記抜止めリングは線材からなって上記外筒体の内周の凹部に収容し、上記凹部の内周には、管が抜け出し方向に移動したときに上記抜止めリングに縮径方向の力を作用させる外窄まりテーパ状の押圧面を形成することもできる。 【0007】 上記構成の差込み式管継手によれば、管の一端部を管差込み間隙内に挿入するに伴い、テーパ付リングが管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ押し込まれ、そのテーパ付リングのテーパで弾性シールリングが圧縮されながら内筒体のシールリング溝内に押し込まれるため、予め管の一端部の内周を面取り加工していなくても該管は弾性シールリングに突っ掛かることなくスムーズに挿入される。 【0008】 継手本体の管差込み間隙内に管の一端部を挿入すると、弾性シールリングにて管の内周面と内筒体の外周面との間がシールされ、抜止めリングの食込み歯が管の外周面に食い込む。これにより管が継手本体の管差込み間隙から抜け出るのを防止できる。 【0009】 抜止めリングは外筒体にインサート成形することにより両者を予め一体化してあると、継手本体に対し外筒体を結合すると同時に抜止めリングの組付け状態が得られるため、抜止めリングの煩わしい組付け手数を省略することができる。 【0010】 抜止めリングは線材からなって外筒体の内周の凹部に収容し、凹部の内周には、管が抜け出し方向に移動したときに抜止めリングに縮径方向の力を作用させる外窄まりテーパ状の押圧面を形成しておくと、管が抜き出し方向に引っ張られると、管と共に同一方向に移動する抜止めリングの外周面が外筒体の押圧面と当接することにより抜止めリングが縮径し、この縮径により管の外周面への食込み歯の食込みが増して管の確実な引抜き阻止力が得られる。 【0011】 【発明の実施の形態】 本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は第1実施例の差込み式管継手の半欠截断面図、図2は差込み式管継手に組み込まれる抜止めリングの正面図、図3は図2におけるA?A線断面図、図4は管を最も深く差込んだ状態の半欠截断面図である。 【0012】 (第1実施例) 図1において、差込み式管継手は、継手本体1に、弾性シールリング2、抜止めリング3、及びテーパ付リング4を備える。 【0013】 継手本体1は青銅鋳物等で筒状に形成されており、その軸心方向一端部に内外二重筒体5,6を有する構造としてある。そのうち、内筒体5は継手本体1と一体に形成されるが、外筒体6は、継手本体1とは別体に樹脂成形されて、その一端部内周に、継手本体1の外周に設けた雄ねじ7にねじ込まれる雌ねじ8を設けている。なお、継手本体1の軸心方向他端部の外周には雄ねじ9を切っており、この雄ねじ9には、図示しない雌ねじ付きの水栓やエルボなどがねじ込み接続される。 【0014】 抜止めリング3はステンレス製品であって、図2、図3に示すように、皿形断面の内径部に割り溝10を円周方向に等間隔に入れて弾性を有する拡縮径変形自在な食込み歯11を列設している。この抜止めリング3は外筒体6にインサート成形される。このインサート成形に際しては、例えば、予め全体が円筒状にかつ一端部の内周に食込み歯逃がし用のテーパ12を付けた形に樹脂成形したスペーサー13を用意し、このスペーサー13の一端部の端面に抜止めリング3を重ね合わせるとともに、抜止めリング3の外側にリテーナー14を重ね合わせた状態に金型内に保持したうえで、これらを外筒体6の射出成形すると同時に該外筒体6の内周に一体にインサート成形する。外筒体6およびスペーサー13の樹脂材料には、例えば、PPSU(ポリフェニルサルフォン)、ポリカーボネート、ABS樹脂等、耐熱性に優れる透明な樹脂を用いる。 【0015】 そのインサート成形に際し、スペーサー13を用いることによって食込み歯逃がし用のテーパ12を有する形の外筒体6を簡単な金型構造で容易に射出成形できるが、必ずしもスペーサー13を用いることなく、抜止めリング3を外筒体6にインサート成形することもできる。また、リテーナー14は必ずしも必要ではない。 【0016】 このように抜止めリング3を一体成形した外筒体6はこれの一端部の雌ねじ8を継手本体1の雄ねじ7にねじ込み結合することによって、外筒体6と内筒体5の外周との間に管差込み間隙15が形成される。 【0017】 内筒体5の外周にはシールリング溝16を1本または2本以上(図示例では2本)設け、このシールリング溝16に、管差込み間隙15内に差し込まれるポリブテン管等よりなる樹脂製の管Pの外径よりも小さく、内径よりも大きい外径を持って管Pの内周面に密接するOリング等よりなる弾性シールリング2が嵌め込まれる。この嵌め込みは、外筒体6を継手本体1に結合する前に行うことにより容易に行える。外筒体6は、弾性シールリング2の嵌め込み後に、継手本体1に結合される。 【0018】 テーパ付リング4はナイロン等の樹脂成形品であり、この内径部に前端部から後方に向かって漸次窄まる前方拡がり状のテーパ17を形成している。このテーパ付リング4は内筒体5の外周の弾性シールリング2より軸方向外方部位に位置するよう組み込まれる。 【0019】 次に、上記構成の差込み式管継手の使用態様を説明する。現場施工において、先ず、管Pは所要長さに切断される。この切断された管Pの一端部は、図4に示すように、内外筒体5,6間の管差込み間隙15内に挿入されるが、このとき管Pの一端部が抜止めリング3の食込み歯11をテーパ12の方向へ押し開きながら挿入される。この挿入に伴い管Pの一端部でテーパ付リング4が管差込み間隙15の内奥方向へ押し込まれ、テーパ付リング4のテーパ17が内筒体5のシールリング溝16から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝16内に押し込みながら通過する。したがって、予め管Pの一端部の内周を面取り加工していなくても該管Pは弾性シールリング2に突っ掛かることなくスムーズに挿入することができる。 【0020】 管Pが継手本体1内に所定深さにまで挿入されると、管Pの内周面に弾性シールリング2が圧縮状に密接し、この弾性シールリング2により管Pの内周面と内筒体5の外周面との間がシールされるとともに、抜止めリング3の食込み歯11が管Pの外周面に食い込んだ管Pの抜止め状態が得られる。 【0021】 管Pが抜き出し方向に引っ張られると、管Pと共に同一方向に移動する抜止めリング3の内径部が縮径状に弾性変形して、管Pの外周面への食込み歯11の食込みが増すため、管Pの管差込み間隙15からの抜け出しが確実に阻止される。 【0022】 かかる管Pの差込み接続状態から該管Pを継手本体1から取り外すときには、外筒体6の継手本体1の雄ねじ7との締付けを緩めて外筒体6を継手本体1から取り外すことによって管Pを継手本体1から取り外すことができる。 【0023】 (第2実施例) 図5、図6は第2実施例を示す。この実施例では、抜止めリング3およびこの抜止めリング3の外筒体6への取付け方が第1実施例のそれらと相違し、そのほかの構成は第1実施例のものと同様であるため、同一部材、同一要素に同一符合を付してその説明を省略する。抜止めリング3はステンレス等の線材からなるものであって、これの内周に管差込み間隙15内に差し込まれる管Pの外周面に食い込む食込み歯11を設けており、抜止めリング3の円周一部は切離されて抜止めリング3全体が拡縮径変形可能に形成されている。 【0024】 この抜止めリング3は外筒体6の内周に設けた凹部18に収容され、この凹部18内の軸方向外方側の内周面には、抜止めリング3に縮径方向の力を作用させる外窄まりテーパ状の押圧面19が外筒体6の開口端に向かい窄まる形状に形成されている。外筒体6の内周に凹部18を設ける手段としては、外筒体6にこれとは別体のスペーサー20を内嵌し、このスペーサー20の軸方向外方端面と外筒体6の押圧面19との間に凹部18を形成する。または、そのようなスペーサー20を用いることなく、外筒体6の成形と同時に凹部18を形成することもできる。 【0025】 このように構成された差込み式管継手は、第1実施例の場合と同様に、管Pの一端部は、図6に示すように、内外筒体5,6間の管差込み間隙15内に挿入されるが、このとき管Pの一端部が抜止めリング3を押し開きながら挿入される。この挿入に伴い管Pの一端部でテーパ付リング4が管差込み間隙15の内奥方向へ押し込まれ、テーパ付リング4のテーパ17が内筒体5のシールリング溝16から突出している弾性シールリング2の外周部に当接し該リング2を圧縮させてシールリング溝16内に押し込みながら通過する。 【0026】 管Pが継手本体1内に所定深さにまで挿入されると、管Pの内周面に弾性シールリング2が圧縮状に密接し、この弾性シールリング2により管Pの内周面と内筒体5の外周面との間がシールされるとともに、抜止めリング3の食込み歯11が管Pの外周面に食い込んだ管Pの抜止め状態が得られる。 【0027】 管Pが抜き出し方向に引っ張られると、管Pと共に同一方向に移動する抜止めリング3の外周面が外筒体6の押圧面19と当接することにより、抜止めリング3が縮径して、管Pの外周面への食込み歯11の食込みが増す。このように抜止めリング3の外周面が外筒体6の押圧面19と当接するとともに抜止めリング3の食込み歯11が管Pの外周面に食い込むことにより、管Pの管差込み間隙15からの抜け出しがより確実に阻止される状態となる。 かかる管Pの差込み接続状態から外筒体6の継手本体1の雄ねじ7との締付けを緩めることにより継手本体1から外筒体6及び管Pを取り外すことができることは第1実施例の場合と同様である。 【0028】 本発明は、上記継手本体1が図示例のソケットタイプ以外に、エルボあるいはT型等である場合にも同様に適用できる。 【0029】 【発明の効果】 本発明によれば、管の一端部をシール状にかつ抜止め状に簡易迅速に差し込み接続できるうえに、コレットの無い構造にしたためにその構造、組立てが簡単になり、コストも低減されるというものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】第1実施例の差込み式管継手の半欠截断面図である。 【図2】図1の差込み式管継手に組み込まれる抜止めリングの正面図である。 【図3】図2におけるA?A線断面図である。 【図4】管を最も深く差込んだ状態の半欠截断面図である。 【図5】第2実施例を図1に相応して示す差込み式管継手の半欠截断面図である。 【図6】図5の差込み式管継手を図4に相応して示す半欠截断面図である。 【符号の説明】 1 継手本体 2 弾性シールリング 3 抜止めリング 4 テーパ付リング 5 内筒体 6 外筒体 11 食込み歯 15 管差込み間隙 16 シールリング溝 17 テーパ付リングのテーパ 18 凹部 19 押圧面 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、 前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、 前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、 前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、該食込み歯は食込み歯逃がし用のテーパと対向され、 前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれていることを特徴とする、差込み式管継手。 【請求項2】 前記抜止めリングが管の挿入により押し開かれながら該管の外周面に食込む弾性を有する食込み歯を設けてあり、前記外筒体が樹脂材で成形されており、この外筒体に前記抜止めリングがインサート成形されている、請求項1記載の差込み式管継手。 【請求項3】 継手本体に、弾性シールリング、抜止めリング、及びテーパ付リングを備えており、 前記継手本体は軸心方向一端部に内外二重筒体を有し、内筒体は継手本体と一体に形成され、外筒体は、継手本体とは別体に形成されて、内筒体の外周との間に管差込み間隙を形成するよう継手本体に結合されており、 前記内筒体の外周にはシールリング溝を形成し、このシールリング溝に、前記管差込み間隙内に挿入される管の外径よりも小さく、内径よりも大きい外径をもつ前記弾性シールリングが嵌め込まれており、 前記抜止めリングは、前記外筒体の内部に配備され、内径部に前記管の外周面に食い込む拡縮径変形自在な食込み歯を設けており、 前記テーパ付リングは内径部に前方拡がり状のテーパを付けており、このテーパ付リングが前記内筒体の外周の前記弾性シールリングより軸方向外方部位と、前記外筒体の内周の前記抜止めリングより軸方向内方部位との間に、前記管の一端部で押されるまま前端部を前記管差込み間隙の内奥へ向けて軸方向内方へ移動するように嵌め込まれており、 前記抜止めリングは線材からなって前記外筒体の内周の凹部に収容され、前記凹部の内周には、前記管が抜け出し方向に移動したときに前記抜止めリングに縮径方向の力を作用させる外窄まりテーパ状の押圧面が形成されていることを特徴とする、差込み式管継手。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2014-06-27 |
出願番号 | 特願2003-20452(P2003-20452) |
審決分類 |
P
1
41・
121-
Y
(F16L)
P 1 41・ 856- Y (F16L) P 1 41・ 851- Y (F16L) P 1 41・ 857- Y (F16L) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
山口 直 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 大熊 雄治 |
登録日 | 2009-02-27 |
登録番号 | 特許第4268811号(P4268811) |
発明の名称 | 差込み式管継手 |
代理人 | 速見 禎祥 |
代理人 | 岩坪 哲 |
代理人 | 速見 禎祥 |
代理人 | 岩坪 哲 |