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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J |
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管理番号 | 1289900 |
審判番号 | 不服2013-1810 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-31 |
確定日 | 2014-07-18 |
事件の表示 | 特願2006- 55554「イオン注入イオン源、システム、および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月27日出願公開、特開2006-196465〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年12月13日を国際出願日とする特願2001-543753号(パリ条約による優先権主張1999年12月13日、米国、2000年11月30日、米国)(以下「原出願」という。)の一部を平成18年3月1日に新たな特許出願としたものであって、平成23年1月6日及び平成24年4月17日に手続補正がなされたが、同年9月26付けで上記平成24年4月17日付けの手続補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、平成25年1月31日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、同年5月8日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年11月11日に回答書が提出された。 第2 平成25年1月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年1月31日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項に記載された発明 平成25年1月31日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として、以下のように補正された。 「イオン注入装置と共に用いるためのイオン源であって、該イオン源は、デカボランなどのクラスターイオンをイオン化するためのイオン源であり、 該イオン源は、 複数の側壁を定義するイオン化チャンバであって、該複数の側壁のうちの1つの少なくとも一部は、アパーチャプレートを定義し、かつ、イオンビームが該イオン化チャンバから抽出されることを可能にするイオン抽出アパーチャを含み、該アパーチャプレートは、 少なくとも1つの導電面を含む、イオン化チャンバと、 直接的な電子衝撃により内部のガスをイオン化する該イオン化チャンバの内部と流体伝達する電子源であって、該イオン化チャンバの外部に位置する電子源と、 該イオン化チャンバの該内部と流体伝達する供給ガス源と、 該少なくとも1つの導電面に電気的に結合されたバイアス電圧源と を備えている、イオン源。」(以下「補正発明」という。) そこで、上記補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平3-257748号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)第2頁左上欄7行?右下欄5行 「第1図に示すように、イオン源1の上部には、各辺の長さが例えば数センチ程度の矩形容器状に形成された電子発生室2が設けられている。この電子発生室2は、導電性高融点材料例えばモリブデンから構成されており、その一側面に設けられた開口を閉塞する如く、高融点(例えば融点1200℃以上)の絶縁性材料例えばSiN_(4)、BN等からなる絶縁板3が設けられている。そして、この絶縁板3に、導電性高融点材料例えばタングステンからなるU字状のフィラメント4がその両端を支持されて、電子発生室2内に突出する如く設けられている。 また、この電子発生室2の上部には、プラズマを生起させ電子を発生させるための放電用ガス、例えばアルゴン(Ar)ガスを導入するための放電用ガス導入口5が設けられている。一方、電子発生室2の下部には、電子発生室2内で発生させたプラズマ中から電子を引き出すための円孔6が設けられている。」 (2)第2頁右下欄6行?18行 「さらに、上記電子発生室2の下部には、円孔6に連続して隘路7を形成する如く板状の絶縁性部材8が設けられており、この絶縁性部材8の下部には、複数の透孔9を有する電子引き出し電極10が設けられている。 上記電子引き出し電極10の下部には、絶縁性部材11を介してイオン生成室12が接続されている。このイオン生成室12は、導電性高融点材料、例えばモリブデンから容器状に形成されており、その内部は、直径および高さが共に数センチ程度の円筒形状とされている。また、イオン生成室12の底部には、絶縁性部材13を介して底板14が固定されている。」 (3)第2頁右下欄19行?第3頁左上欄4行 「さらに、イオン生成室12の側面には、所望のイオンを生成するための原料ガス例えばBF_(3)等をこのイオン生成室12内に導入するための原料ガス導入口15が設けられており、この原料ガス導入口15に対向する位置にイオン引き出し用スリット16が設けられている。」 (4)第3頁左上欄5行?11行 「さらに、この実施例では、イオン生成室12内にインナー筒17が設けられている。このインナー筒17は、プラズマの作用(スパッタリング、エッチング等)を受け難い材質、例えばセラミックス等から構成されており、イオン生成室12内の金属面を覆い、プラズマから保護するよう構成されている。」 (5)第3頁左上欄12行?左下欄2行 「上記構成の電子ビーム励起イオン源を用いてこの実施例では次のようにして所望のイオンを生成する。 すなわち、図示しない磁場生成手段により、図示矢印Bzの如く電子引き出し方向に対して電子をガイドするための磁場を印加する。そして、フィラメント4に交流電圧Vfを印加し、通電加熱するとともに、このフィラメント4に対して、抵抗Rを介して電子発生室2に放電電圧Vdを印加し、電子引き出し電極10に放電電圧Vdを印加し、電子引き出し電極10とイオン生成室12との間に加速電圧Vaを印加する。 そして、放電用ガス導入口5から電子発生室2内に、放電用ガス例えばアルゴンガスを所定流量例えば0.05SCCM以上で導入し、放電電圧Vdにより放電を生じさせ、プラズマを発生させる。すると、このプラズマ中の電子は、加速電圧Vaにより、円孔6、隘路7、電子引き出し電極10の透孔9を通過してイオン生成室12内に引き出される。 一方、イオン生成室12内には、原料ガス導入口15から予め所定の原料ガスを所定流量例えば0.15SCCM以上で導入し、所定の原料ガス雰囲気としておく。 したがって、イオン生成室12内に流入した電子は、加速電界により加速され、原料ガス分子と衝突し、濃いプラズマを発生させる。そして、図示しないイオン引き出し電極により、イオン引き出し用スリット16から、このプラズマ中のイオンを引き出し、例えば所望のイオンビームとして半導体ウエハ等へ照射する。」 (6)「第1図 」 これらの記載事項含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「上部には矩形容器状に形成された電子発生室(2)が設けられており、 電子発生室の下部には、電子発生室内で発生させたプラズマ中から電子を引き出すための円孔(6)が設けられ、さらに上記電子発生室の下部には、円孔に連続して隘路(7)を形成する如く板状の絶縁性部材(8)が設けられ、この絶縁性部材の下部には、複数の透孔(9)を有する電子引き出し電極(10)が設けられており、 上記電子引き出し電極の下部には、絶縁性部材(11)を介してイオン生成室(12)が接続されており、 イオン生成室は導電性高融点材料から円筒形状の容器状に形成され、側面に原料ガス導入口(15)が設けられており、この原料ガス導入口に対向する位置にイオン引き出し用スリット(16)が設けられている構成の電子ビーム励起イオン源であって、 電子発生室に放電電圧(Vd)を印加し、放電電圧により放電を生じさせ、プラズマを発生させ、このプラズマ中の電子は、電子引き出し電極とイオン生成室との間に印加された加速電圧(Va)により、円孔、隘路、電子引き出し電極の透孔を通過してイオン生成室内に引き出され、イオン生成室内に流入した電子は、加速電界により加速され、原料ガス分子と衝突しプラズマを発生させイオン引き出し電極により、イオン引き出し用スリットから、このプラズマ中のイオンを引き出し、所望のイオンビームとして半導体ウエハ等へ照射する、 電子ビーム励起イオン源。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 補正発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「所望のイオンビームとして半導体ウエハ等へ照射する、電子ビーム励起イオン源」及びイオン生成室の「原料ガス導入口に対向する位置にイオン引き出し用スリット」を有する部分は、それぞれ、補正発明の「イオン注入装置と共に用いるためのイオン源」及び「アパーチャプレートを定義する複数の側壁のうちの1つの少なくとも一部」に相当する。 (2)引用発明の「円筒形状の容器状に形成されたイオン生成室」と補正発明の「複数の側壁を定義するイオン化チャンバ」は、ともに「イオン化チャンバ」である点で共通する。 (3)引用発明のイオン生成室のイオン引き出し用スリットは、補正発明の「イオンビームが該イオン化チャンバから抽出されることを可能にするイオン抽出アパーチャ」に相当する。 補正発明の「アパーチャプレート」に相当する引用発明の「イオン引き出し用スリット」を有する部分は、導電性高融点材料から形成されているから、少なくとも1つの導電面を含む。 (4)引用発明の「電子発生室」は補正発明の「電子源」に相当し、電子発生室とイオン生成室間には隘路を形成する板状の絶縁性部材と複数の透孔が存在するから、電子発生室がイオン生成室の外部に位置し、しかもイオン生成室と流体伝達することは明らかである。 引用発明は、イオン生成室内に流入した電子が加速電界により加速され、原料ガス分子と衝突しプラズマを発生させることによりイオンを生成するから、直接的な電子衝撃により内部のガスをイオン化するものである。 (5)引用発明の「原料ガス導入口」は、補正発明の「供給ガス源」に相当する。 また、引用発明は「イオン引き出し電極」を有するから、補正発明の「バイアス電圧源」に相当する構成を有する。 してみると両者は、 「イオン注入装置と共に用いるためのイオン源であって、 該イオン源は、 イオン化チャンバであって、該複数の側壁のうちの1つの少なくとも一部は、アパーチャプレートを定義し、かつ、イオンビームが該イオン化チャンバから抽出されることを可能にするイオン抽出アパーチャを含み、該アパーチャプレートは、 少なくとも1つの導電面を含む、イオン化チャンバと、 直接的な電子衝撃により内部のガスをイオン化する該イオン化チャンバの内部と流体伝達する電子源であって、該イオン化チャンバの外部に位置する電子源と、 該イオン化チャンバの該内部と流体伝達する供給ガス源と、 該少なくとも1つの導電面に電気的に結合されたバイアス電圧源と を備えている、イオン源。」 の点で一致し、次の各点で相違している。 (相違点1) イオン化チャンバが、補正発明では「複数の側壁を定義する」ものであるのに対して、引用発明では「円筒形状の容器状」である点。 (相違点2) 補正発明が「デカボランなどのクラスターイオンをイオン化するためのイオン源」であるのに対して、引用発明が何をイオン化するためのイオン源であるか不明な点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 (相違点1) イオン注入装置のイオン源のイオン化チャンバを複数の側壁を有する構造のものとすることは、周知技術である。 引用発明のイオン化チャンバとして円筒形状のものに代えて、当該周知の構造のものとすることに、格別の技術的困難性も阻害要因もない。 してみると、引用発明に当該周知技術を用いることにより、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 (相違点2) イオン注入装置のイオン源として、デカボランなどのクラスターイオンを用いることは、本願の優先日時点における周知技術である(特開平1-225117号公報、特開平10-163123号公報参照)。 してみると、引用発明をデカボランなどのクラスターイオンをイオン化するためのイオン源として用いることは、当業者が容易になしうる事項である。 そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び周知技術に基いて当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、請求人が上記回答書(「第1 手続の経緯」参照)に添付した補正案の内容を参酌しても、例えば本願明細書の段落【0117】?【0118】に記載されたような構成が特定されているわけではなく、上記判断に変わりはない。 5.小括 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 平成25年1月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年1月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「イオン注入装置と共に用いるためのイオン源であって、 該イオン源は、 複数の側壁を定義するイオン化チャンバであって、該複数の側壁のうちの1つの少なくとも一部は、アパーチャプレートを定義し、かつ、イオンビームが該イオン化チャンバから抽出されることを可能にするイオン抽出アパーチャを含み、該アパーチャプレートは、 少なくとも1つの導電面を含む、イオン化チャンバと、 内部のガスをイオン化する該イオン化チャンバの内部と流体伝達する電子源であって、 該イオン化チャンバの外部に位置する電子源と、 該イオン化チャンバの該内部と流体伝達する供給ガス源と、 該少なくとも1つの導電面に電気的に結合されたバイアス電圧源と を備えている、イオン源。」 1.引用刊行物 原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。 2.対比 本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、少なくとも「該イオン源は、デカボランなどのクラスターイオンをイオン化するためのイオン源であり」という事項を削除することにより拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-02-18 |
結審通知日 | 2014-02-19 |
審決日 | 2014-03-10 |
出願番号 | 特願2006-55554(P2006-55554) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長井 真一 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
田部 元史 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | イオン注入イオン源、システム、および方法 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 石川 大輔 |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 飯田 貴敏 |