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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1289905
審判番号 不服2013-23194  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-27 
確定日 2014-07-18 
事件の表示 特願2009-102930「積層型圧電アクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日出願公開、特開2010-258025〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成21年4月21日の出願であって、平成25年6月10日付けで拒絶理由が通知され、同年8月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月20日に拒絶査定がされ、これに対し、同年11月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正書が提出され、平成26年1月14日に審尋がされ、これに対し同年3月14日に回答書が提出されたものである。

第2 平成25年11月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年11月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成25年11月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、同年8月6日付けの手続補正後の特許請求の範囲の請求項1である
「【請求項1】
複数の圧電セラミックス層と内部電極層とを交互に積層して一体化した積層体の側面に露出した前記内部電極層を電気的に接続する外部電極を形成した積層型圧電セラミックス素子を金属ケースに封入した積層型圧電アクチュエータであって、前記金属ケース内の中央部に、前記積層型圧電セラミックス素子を固定し、前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電セラミックス素子の側壁との間に湿度低減部材を備え、前記湿度低減部材は、シート状、板状あるいは棒状の吸湿剤であることを特徴とする積層型圧電アクチュエータ。」
を、
「【請求項1】
複数の圧電セラミックス層と内部電極層とを交互に積層して一体化した積層体の側面に露出した前記内部電極層を電気的に接続する外部電極を形成した積層型圧電セラミックス素子を金属ケースに封入した積層型圧電アクチュエータであって、前記金属ケース内の中央部に、前記積層型圧電セラミックス素子を固定し、前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電セラミックス素子の側壁との間に、前記内壁と前記側壁から離して配置された湿度低減部材を備え、前記湿度低減部材は、シート状、板状あるいは棒状の吸湿剤であることを特徴とする積層型圧電アクチュエータ。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)目的要件・新規事項
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)である「湿度低減部材」を「前記内壁と前記側壁から離して配置された湿度低減部材」と限定するものであって、その補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、また、上記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(2)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

ア 刊行物及び刊行物に記載された事項
(ア)刊行物
特開平4-349675号公報
(平成25年6月10日付けの拒絶理由における引用文献1である。以下、同様に「引用文献1」という。)

(イ)引用文献1に記載された事項
1a 「【請求項1】 電気機械変換材料からなる薄板と導電材料からなる内部電極とを各々複数枚交互に積層して積層体を形成し、この積層体の側面に前記内部電極と一層おきに接続すべき一対の外部電極を設けてなる積層型圧電素子を、乾燥剤を封入した金属製の密閉容器に収納したことを特徴とする圧電アクチュエータ。」
1b 「【0007】
【表1】(省略)
まずチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電薄板をドクターブレード法にて形成した後、上記の内部電極をスクリーン印刷により形成し、これらの複数枚を積層焼結し積層体を形成した。これにより得られた積層型圧電素子の側面の一面に、少なくとも側面の面積よりも小さくかつ露出した各層の内部電極の全ての層に接触するようにガラス絶縁膜(以下、絶縁膜と記す。)を形成した。
次にダイシングマシンにより絶縁膜上部より内部電極が絶縁膜上に一層おきに露出するよう溝を入れた。一方その面に直交する側面にも同様にガラス絶縁膜を形成した後、先に溝入れを行わなかった層にダイシングマシンにより溝を入れた。これにより絶縁膜を形成した直交面上で内部電極がそれぞれ交互に絶縁膜上に露出する構造とした。次にその溝の上に外部電極をスクリーン印刷により形成した。そして両側面の外部電極にリード線(非銀系心材、すずメッキ)をハンダ(非銀系)で接続した。
以上の工程により得られた積層型圧電素子は断面5mm×5mm、長さ10mm、積層枚数90枚となった。この積層型圧電素子の側面に一様に粉体コーティングで樹脂を被覆した。このようにして製作された積層型圧電素子1に図1に示す端子部材5を接着剤にて取付けた後に前記リード線2を端子部材の内部端子9にハンダにて接続し、管7の内部に挿入後、端子部材5を管7に接着する。この際に、端子部材5にはテーパーが設けてあるため、端子部材5と管7の位置決めは容易に行える。管7の材料には、その熱膨張係数が積層型圧電素子1に近いものが理想的であるため本実施例では、ニッケル鋼(Ni:42%)を用い表面に防錆の為にニッケルメッキを施した。また管7は図のごとく円筒形のものであるため積層型圧電素子1の周囲部に空間が出来る。その空間部に乾燥材8を充填後、積層型圧電素子の変位を管7の外部に効率よく伝えるべくダイアフラム6を管7のもう一方の端部より積層型圧電素子1の端部に接着した後に、管7に固定密封する。尚、本発明では乾燥剤にシリカゲルを用い、接着にはエポキシ系の樹脂を用いたが、他の乾燥剤および接着剤でも同様の効果が得られることは明らかである。なお、端子部材5およびダイアフラム6には金属部材、本発明ではステンレスを用いたがアルミ等の金属でも適用できる。このようにしてできあがった圧電アクチュエータを温度40℃、湿度90?95%RH雰囲気中にて、耐久性試験を行った。以下、その結果について説明する。最初に本発明の優位性を示すために積層型圧電素子に下表の条件を設定した。」
1c 「【0009】
【表3】(省略)
まず条件○1において、内部電極に銀系導電材料を使ったものは非銀系よりもやや絶縁抵抗が低くなっている。次に条件○2と比較した場合、明らかに金属管に封入したものの方が自然放置の場合よりもその値は大きくなっている。また条件○1の時よりも非銀系の優位性が顕著に現れている。さらに条件○3と○2を比較すると明らかに乾燥剤を充填した効果が示されている。以上の結果から銀系材料、非銀系材料いずれの場合も高湿度雰囲気中ではその絶縁抵抗の初期値は低下しており、明らかに素子の側面に付着した水分の影響であることが分かる。また、管内に封入した場合でも乾燥剤を充填したものの方が絶縁抵抗が大きくなっている。これは管に封入する際に管内に残った水分の影響であると思われる。即ち、絶縁抵抗の初期値を向上させ、より信頼度の高い素子を供給するためには、管内に乾燥剤を封入することが適しており、同時にこれは本発明の優位性を実証している。次に上記の資料にそれぞれ150VDCの電圧を連続印加し、1000時間の耐久性試験を行った。その際の絶縁抵抗の劣化の時間依存性を測定した。その結果を図2から図4に示す。図2は、アクチュエータNo.1の特性を示したものである。内外部ともに電極材料に銀を用いているので、自然放置したものは試験開始後すぐに劣化が始まり約100時間程度で完全短絡してしまった。なお、このアクチュエータを試験後とりだし充分乾燥した上で再度絶縁抵抗を測定したが、短絡したままであった。これに比べて缶に封入したものはその劣化は著しく少ない。しかし乾燥剤を充填していないものは緩やかに劣化していることが分かる。図3は、アクチュエータNo.2の絶縁抵抗の劣化特性を示したものである。電極材料に銀-パラジウム合金を用いているため、純粋な銀を用いたものよりもマイグレーションが発生しにくくなっている。
自然放置のもので約200時間後に短絡した。試験後とりだし前記同様に充分乾燥後絶縁抵抗を測定したが短絡したままであった。缶に封入したものは、前記と同様の傾向を示し、その内乾燥剤を充填していないものは明らかに劣化していることが分かる。図4は、アクチュエータNo.3の特性である。電極材料に非銀系材料を用いているので極めて劣化の度合いが小さい。しかし自然放置したものは図のように絶縁抵抗値が大きく揺らぎながら緩やかに劣化している。このアクチュエータも試験後とりだし充分乾燥した後に絶縁抵抗を測定した結果、2.0×1010Ωとなりほぼもとの状態に戻った。したがって、この素子の劣化は電極金属のマイグレーション等の劣化ではなく水分の付着による絶縁劣化であることが分かる。この他管に封入した場合には、非銀系材を用いたアクチュエータは非常に安定した特性を示している。
尚、本実施例ではアクチュエータNo.1?3の劣化特性のみ示しているが他のアクチュエータについても同様、金属管に封入し乾燥剤を充填したものは極めて安定した特性を示した。以上の結果、圧電アクチュエータの高信頼性を得るには、積層型圧電素子を金属管内部に封入し、かつ乾燥剤を充填すればよいことが明らかになった。次に本発明の他の実施例について説明する。図5は別の実施例の断面図である。この実施例が前述の実施例と異なる点は積層型圧電素子を蓋部材4にて密封し、金属管の側面をベローズ状に加工し、積層型圧電素子の変位がベローズを介して外部に伝えられる点である。組立方法は前述のものと同様であるが管がベローズ状になり管内の隙間が小さくなった分だけ乾燥材の充填が困難になるので本実施例は乾燥剤に粉末状の五酸化リンを用いた。このようにしてできあがった圧電アクチュエータを前述の実施例と同一の条件で試験を行ったがほぼ同様の結果が得られ、不具合は生じなかった。なお、上述した実施例では金属管内に充填する乾燥材8にシリカゲル、五酸化リンを用いた例を述べたが、他に過塩素酸マグネシウム、活性アルミナ、塩化カルシウム等の乾燥剤を用いても同様に実施可能である。(審決注:○の中に数字が入った記号は、審決起案システムの機能の規定外であるので「○数字」で示した。)
【0010】
【発明の効果】以上説明したように本発明は乾燥剤を充填した金属管内に積層型圧電素子を密閉して封入するため外部からの水分の侵入を防ぎ、かつ管内の湿度も低下させることが可能となるため、圧電アクチュエータの絶縁信頼性を大きく向上させる効果がある。」

イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1は、「電気機械変換材料からなる薄板と導電材料からなる内部電極とを各々複数枚交互に積層して積層体を形成し、この積層体の側面に前記内部電極と一層おきに接続すべき一対の外部電極を設けてなる積層型圧電素子を、乾燥剤を封入した金属製の密閉容器に収納したことを特徴とする圧電アクチュエータ。」(摘示1a)と記載されている。そして、「管7は図のごとく円筒形のものであるため積層型圧電素子1の周囲部に空間が出来る」(摘示1b)こと及び「実施例では金属管内に充填する乾燥材8にシリカゲル、五酸化リンを用いた例を述べたが、他に過塩素酸マグネシウム、活性アルミナ、塩化カルシウム等の乾燥剤を用いても同様に実施可能である」(摘示1c)ことが記載されている。
そうすると、引用文献1には、
「電気機械変換材料からなる薄板と導電材料からなる内部電極とを各々複数枚交互に積層して積層体を形成し、この積層体の側面に前記内部電極と一層おきに接続すべき一対の外部電極を設けてなる積層型圧電素子を、シリカゲル、五酸化リン、過塩素酸マグネシウム、活性アルミナ、塩化カルシウム等の乾燥剤を封入した金属製の密閉容器に積層型圧電素子1の周囲部に空間が出来るように収納したことを特徴とする圧電アクチュエータ。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

ウ 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における、「電気機械変換材料からなる薄板と導電材料からなる内部電極とを各々複数枚交互に積層して積層体を形成し、この積層体の側面に前記内部電極と一層おきに接続すべき一対の外部電極を設けてなる積層型圧電素子」は、「電気機械変換材料」が「チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする」(摘示1b)から「圧電セラミックス」であることは明らかで、本件補正発明における「複数の圧電セラミックス層と内部電極層とを交互に積層して一体化した積層体の側面に露出した前記内部電極層を電気的に接続する外部電極を形成した積層型圧電セラミックス素子」に相当する。
また、引用発明における「金属製の密閉容器に積層型圧電素子1の周囲部に空間が出来るように収納した」ことは、本件補正発明における「前記金属ケース内の中央部に、前記積層型圧電セラミックス素子を固定し」たことに相当する。
そして、引用発明における「シリカゲル、五酸化リン、過塩素酸マグネシウム、活性アルミナ、塩化カルシウム等の乾燥剤を封入した」ことは、本件補正発明における「湿度低減部材を備え」ることに相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「複数の圧電セラミックス層と内部電極層とを交互に積層して一体化した積層体の側面に露出した前記内部電極層を電気的に接続する外部電極を形成した積層型圧電セラミックス素子を金属ケースに封入した積層型圧電アクチュエータであって、前記金属ケース内の中央部に、前記積層型圧電セラミックス素子を固定し、湿度低減部材を備えることを特徴とする積層型圧電アクチュエータ。」
の点において一致し、以下の点Aにおいて相違すると認められる。

A 湿度低減部材に関して、本件補正発明は、「前記内壁と前記側壁から離して配置され」、「シート状、板状あるいは棒状の吸湿剤であ」るのに対して、引用発明は、「シリカゲル、五酸化リン、過塩素酸マグネシウム、活性アルミナ、塩化カルシウム等の乾燥剤を封入した」点(以下、「相違点A」という。)

エ 相違点についての判断
(ア)相違点Aについて
引用発明における「乾燥剤を封入」することの技術的意義は引用文献1における摘示1cの「図5は別の実施例の断面図である。この実施例が前述の実施例と異なる点は積層型圧電素子を蓋部材4にて密封し、金属管の側面をベローズ状に加工し、積層型圧電素子の変位がベローズを介して外部に伝えられる点である。組立方法は前述のものと同様であるが管がベローズ状になり管内の隙間が小さくなった分だけ乾燥材の充填が困難になるので本実施例は乾燥剤に粉末状の五酸化リンを用いた。」である。一方、本件補正発明の「シート状、板状あるいは棒状の吸湿剤」が「前記内壁と前記側壁から離して配置された」ことの技術的意義は、「【0023】
ところが、グローブボックス内の湿度を1%以下にするには、高価な水分除去装置が必要であった。また、部材の出し入れ時に持ち込む水分、部材に吸着した水分を除去することは非常に困難であった。従って金属ケース内部に1?5%程度の湿度が残留してしまい、金属ケースを溶接加工して積層型圧電セラミックス素子を金属ケース内に封止したとしても、高湿度環境下で絶縁抵抗の劣化が発生してしまうという問題があった。
【0024】
そこで本発明が解決しようとする課題は、安価な構成で製造が容易な信頼性の高い積層型圧電アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、複数の圧電セラミックス層と内部電極層とを交互に積層して一体化した積層体の側面に露出した前記内部電極層を電気的に接続する外部電極を形成した積層型圧電セラミックス素子を金属ケースに封入した積層型圧電セラミックアクチュエータであって、前記金属ケース内の中央部に、前記積層型圧電セラミックス素子を固定し、前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電セラミックス素子の側壁との間に湿度低減部材を備えたことを特徴とする積層型圧電アクチュエータである。
【0026】
前記湿度低減部材は、シート状、板状あるいは棒状の吸湿剤であり、前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電セラミックス素子の側壁との間に配置されたことを特徴とする上記の積層型圧電アクチュエータである。
【0027】
前記湿度低減部材は、ビーズ状吸湿剤であり、前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電
セラミックス素子の側壁との間に充填されたことを特徴とする上記の積層型圧電アクチュエータである。
【0028】
前記湿度低減部材は、吸湿剤が収容された通気性を有する包装体であり、前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電セラミックス素子の側壁との間に配置されたことを特徴とする上記の積層型圧電アクチュエータである。
【0029】
前記湿度低減部材は、吸湿剤層であり、前記金属ケースの内壁に配置されたことを特徴とする上記の積層型圧電アクチュエータである。
【0030】
前記吸湿剤層は、吸湿剤粉末と有機溶剤、バインダを混合した吸湿剤ペーストを熱硬化させたことを特徴とする上記の積層型圧電アクチュエータである。」(本件当初明細書)というものである。
例えば、「振動波モータ」に関する特開平10-164872号公報(平成25年6月10日付けの拒絶理由における引用文献2である。以下、同様に「引用文献2」という。)には、「【請求項1】 電気-機械エネルギー変換素子と弾性体とからなる振動体と、前記振動体と接触させて配置される回転体と、前記回転体を前記振動体に加圧接触させる加圧機構と、前記弾性体あるいは前記回転体のいずれかに接合された合成樹脂の摩擦材を有し、それらを収容する略密閉状態のハウジングとを備え、前記電気-機械エネルギー変換素子を交番信号で駆動し、前記振動体に振動波を励振することにより、前記回転子を回転させる振動波モータにおいて、前記略密閉状態のハウジングの内部に薄板状のシリカゲル系の乾燥剤を配したことを特徴とする振動波モータ。」、「【0002】
【従来の技術】従来この種の進行波型振動波モータは、特公平1-17354号公報等で公知のように、圧電体を一例とした電気エネルギーを機械的運動に変換する電気-機械エネルギー変換素子の伸縮を利用して、弾性体に進行性振動波を発生させ、この進行性振動波によって弾性体に加圧接触した回転体を回転させている。
【0003】また、この種の振動波モータにおいては、弾性体と回転子との間に湿気が入り込み、両者間に吸着力が作用するなどして、弾性体と回転体との間の摩擦力が大きくなり、回転体が所定通りに回転できなくなることがあると実開平3-1693号公報で報告されている。」及び「【0015】また、乾燥剤の形態が薄板状態に形成されているので、粒状や袋状と違って、ハウジング内部への固定が容易であり、粒状の場合のような、脱落粒子が摩擦接触面や軸受に混入して性能を劣化させるということがないので、信頼性が高い。」と記載されている。
さらに、「振動波モータ」に関する特開2000-116161号公報(平成26年1月14日付けの審尋における引用文献3である。以下、同様に「引用文献3」という。)には、「【請求項1】 電気-機械エネルギー変換素子への交番信号の印加により駆動波を弾性体に形成する振動体と、前記弾性体の駆動面に加圧部材を介して加圧接触し、該駆動波により回転駆動される回転体とにより構成される駆動機構と、前記駆動機構を収容する略密閉状態のハウジングとを備えた振動波モータにおいて、
前記加圧手段に薄板状の乾燥剤を設けたことを特徴とする振動波モータ。
【請求項2】 前記薄板状の乾燥剤は、シリカゲル系、マグネシウム化合物系であることを特徴とする請求項1記載の振動波モータ。
【請求項3】 前記薄板状の乾燥剤は、シリカゲル系、マグネシウム化合物系をパルプそしてポリエチレン、ナイロン等の熱可塑性樹脂と混練成形したもので混練比によって調湿機能を付与したことを特徴とする請求項1または2記載の振動波モータ。
【請求項4】 前記薄板状の乾燥剤は、同心円弧状の1あるいは複数本の溝が設けられたことを特徴とする請求項1、2または3記載の振動波モータ。
【請求項5】 前記薄板状の乾燥剤は、放射状の1あるいは複数本の溝が設けられたことを特徴とする請求項1、2または3記載の振動波モータ。」及び「【0032】湿気はフィルムがラミネートされていない側面から本体部19aに吸収されるようになっているが、さらには前述の同心円弧状の溝21、放射状の溝22を設けることによって湿気の吸収特性を向上、調整することができる。」と記載されている。
そうすると、引用文献2に「圧電体を一例とした電気エネルギーを機械的運動に変換する電気-機械エネルギー変換素子」と称されるこの種の圧電素子においては湿気を防止するため、「略密閉状態のハウジングの内部に薄板状のシリカゲル系の乾燥剤を配したこと」が記載されるように、本件補正発明の「湿度低減部材は、シート状、板状の吸湿剤であること」は、周知手段であると認められ、引用文献2における「乾燥剤の形態が薄板状態に形成されているので、粒状や袋状と違って、ハウジング内部への固定が容易であ」るとの記載及び引用文献3にも記載される「湿気の吸収特性を向上、調整すること」という一般的な技術課題から最適な吸収特性を得るべく、引用発明において「前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電セラミックス素子の側壁との間に、前記内壁と前記側壁から離して配置された湿度低減部材を備え」ることは、当業者であれば適宜なし得る設計事項の特定にすぎないものというべきである。
そして、湿度低減部材に関して、「前記内壁と前記側壁から離して配置され」、「シート状、板状あるいは棒状の吸湿剤であ」ると特定したことにより、本件補正発明が予測し得ない顕著な作用効果を奏するとも認められない。

オ まとめ
以上によれば、本件補正発明は、その出願前に頒布された引用文献1に記載された発明に周知技術を勘案することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立してできるものではない。
よって、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものとはいえない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、その補正前の特許請求の範囲は、平成25年8月6日付けの手続補正により補正されたとおりのものであるところ、その請求項1は、上記「第2」の「1」の項に示したとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

第4 原審において通知した拒絶の理由
拒絶査定における拒絶の理由は、請求項1に係る発明は、引用文献1、すなわち、特開特開平4-349675号公報に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

第5 当審の判断
当審は、上記の拒絶の理由のとおり、本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。

1 刊行物、刊行物に記載された事項及び刊行物に記載された発明
上記の拒絶の理由に引用された「特開平4-349675号公報」は、「第2」の「2」項の「ア」における「引用文献1」である。
引用文献1に記載された事項は、同項の「ア」の(イ)に記載したとおりである。
そして、引用文献1に記載された発明は、同項の「イ」に記載したとおりのもの(以下、同様に「引用発明」という。)である。

2 対比・相違点についての判断
本願発明は、「第2」の「2」項の(1)において示したとおり、本件補正発明における「前記内壁と前記側壁から離して配置された湿度低減部材」との発明特定事項が「湿度低減部材」となったものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点は、
「複数の圧電セラミックス層と内部電極層とを交互に積層して一体化した積層体の側面に露出した前記内部電極層を電気的に接続する外部電極を形成した積層型圧電セラミックス素子を金属ケースに封入した積層型圧電アクチュエータであって、前記金属ケース内の中央部に、前記積層型圧電セラミックス素子を固定し、前記金属ケースの内壁と前記積層型圧電セラミックス素子の側壁との間に、湿度低減部材を備え、ることを特徴とする積層型圧電アクチュエータ。」
となり、相違点は次のとおりとなる。
A’湿度低減部材に関して、本件補正発明は、「シート状、板状あるいは棒状の吸湿剤であ」るのに対して、引用発明は、「シリカゲル、五酸化リン、過塩素酸マグネシウム、活性アルミナ、塩化カルシウム等の乾燥剤を封入した」点(以下、「相違点A’」という。)

この相違点A’は、「第2」の「2」の項(2)ウに示した、本件補正発明と引用発明との相違点Aに含まれるものである。
そうすると、この相違点A’についても、同項(2)エ(ア)に記載したのと同様の判断ができる。

3 まとめ
したがって、本願発明は、その出願前頒布された引用文献1に記載された発明に周知技術を勘案することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-09 
結審通知日 2014-05-14 
審決日 2014-06-02 
出願番号 特願2009-102930(P2009-102930)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子  
特許庁審判長 小野田 誠
特許庁審判官 西脇 博志
松本 貢
発明の名称 積層型圧電アクチュエータ  
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