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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1289960
審判番号 不服2011-13319  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-22 
確定日 2014-07-14 
事件の表示 特願2000-609051「線維筋痛症及び関連症状の治療におけるフルピルチン」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月12日国際公開、WO00/59487、平成14年12月 3日国内公表、特表2002-541097〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [第1]手続の経緯
本願は,2000年4月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1999年4月7日 米国,2000年3月24日 米国)を国際出願日とする出願であって,拒絶理由通知に応答して平成23年1月24日付けで手続補正がなされたが,同年2月25日付けで拒絶査定がなされたところ,同年6月22日に拒絶査定不服審判が請求された。その後,当審において平成25年10月1日付けで拒絶理由が通知されたところ,同年12月27日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたものである。

[第2]本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は,平成25年12月27日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ,そのうち請求項1に係る発明は,次のとおりのものである(以下単に「本願発明」ということがある。)。
『 線維筋痛症の患者における筋骨格痛であって、その痛みがアヘン剤または非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)によって軽減されない場合における上記筋骨格痛を低減させるまたは除去するための、フルピルチンを含む薬剤。 』

[第3]当審の拒絶理由
一方,当審が平成25年10月1日付けで通知した拒絶理由通知書における拒絶の理由のうち,【1】(1)(1-1)?(1-2)の特許法第29条第2項違反に関するものの概要は,本願の各請求項に係る発明は刊行物Aに記載された発明及び要すれば周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである,というものである。

[第4]当審の判断

1 刊行物の記載
上の平成25年10月1日付け拒絶理由通知書で引用された,本願優先日前に頒布されたことが明らかな上記刊行物A:FORTSCHRITTE DER MEDIZIN, (1991) 109(6) P.68-70 には、次の事項が記載されている。[原文が独語(要約部は独語・英語の併記)のため訳文にて記す。下線は当審による。]

a1.標題
『 慢性筋筋膜性疼痛症状におけるフルピルチン 』

a2.68頁 要約部下段(英文要約箇所)
『 要約:慢性筋筋膜疼痛の処置におけるフルピルチン
その分子構造、作用機序ならびに作用及び副作用プロファイルに関し、フルピルチンは画期的な薬剤である。それは一方でアセチルサリチル酸又はNSAID[当審注.当該「NSAID」に対応する独文要約中の語は「nichtsteroidalen Antirheumatika」(独文要約左欄8?9行)、即ち「非ステロイド抗リューマチ薬(NSAR)」(後のa4参照)である。]と、そして他方でオピオイドと、明確に区別され得る。臨床観察及び動物実験はこれまでに筋肉弛緩作用の証拠を提供してきた。この知見に基づいて、オープンなプロスペクティブ臨床研究が慢性筋筋膜疼痛患者を伴う50人の患者において実施された。これら患者のうち35人(70%)において、毎日300-400mgの範囲内、個別に600mg、の毎日の用量の結果、痛みの決定的な改善がもたらされた。17人の患者が副作用、即ち眠気、めまい、まれに嘔吐症状、を発症した。3人の患者では、副作用は用量が減らされると消失したが、鎮痛効果は維持された。これまでに得られたデータに基づき、フルピルチンは疼痛処置のための新たな可能性を示すもののように思われる。』

a3.68頁左欄1行?27行
『 フルピルチン^(*)は新規な化学構造の鎮痛薬である[1,5]。・・・
・・・・・・
図1:フルピルチンの分子構造。
抗侵害受容作用は脊髄性及び上脊髄性の攻撃を通じて起こる[2,4,12,14]が、エンドルフィン-エンケファリン系を通じては起こらない: 当該物質はオピエート受容体に対する親和性を全く有さないかほんの少ししか有さない[14]。・・・』

a4.68頁中段下から4行?69頁左欄24行
『 症例
開胸術後症候群
H.B.は、1921年生まれであり、・・・1981年に2回の右側開胸術を受けた。その後・・・を伴う、著しく疼痛性の開胸術後症候群を発症した。・・・
慢性胃炎ならびに胃からの出血を伴う再発性消化性潰瘍のため酸性鎮痛剤又は非ステロイド抗リューマチ薬(NSAR)[当審注.前の下線部に対応する原文中の記載は「nichtsteroidalen Antirheumatika(NSAR)」である。]による治療の可能性は制限された。・・・。1986年現在、今や4年以上にわたり普及したフルピルチンによる処置がなされた。カプセル剤(100mg)は3時間にわたり90%の疼痛軽減をもたらし、・・・』

a5.69頁左欄26行?60行、右欄1行?31行
『 プロスペクティブ研究
目的及び患者
・・・様々な原因による慢性筋筋膜疼痛患者におけるプロスペクティブなオープン調査がなされた。・・・
3ヶ月から40年の持続性疼痛の既往歴を伴う50人の慢性疼痛患者が、300から400mg、時に600mgの用量で処置された(表1)。主な問題症例であったのは、従来の鎮痛剤の欠如した有効性又は許容し得ない副作用のため投薬を断たれた例であった。
「慢性緊張性頭痛」の診断は・・・
「外傷後頭痛」患者・・・
背部痛患者の群は・・・(表4)・・・
原発性中枢神経損傷・・・(表2)・・・
・・・・・・
「全身性筋腱障害」(=線維筋痛症)[当審注.下線部に対応する原文中の記載:「,,generalisierte Tendomyopathie”(=Fibromyalgie)」]の診断は、ミュラーらによる疾患の記述[11]にちなみ米国リューマチ学会の基準[18]にしたがってなされた。』

a6.69頁中欄 表3[当審注.罫線略]
『 表3.慢性疼痛におけるフルピルチン効果

疼痛症候群 効果
pos. neg. 痛みの低減[%]

緊張性頭痛 4 1 40- 90
外傷後頭痛 6 1 40- 90
脊椎原性背部痛 10 6 50-100
原発性神経原性疼痛 6 1 30- 60
全身性筋腱障害 6 4 20- 70
その他 3 2 50-100

合計 35 15 』

a7.69頁右欄32行?70頁左欄9行
『 痛み軽減の程度
処置結果は表3から明らかである。患者は明白な痛みの軽減を示し、成功裏の処置はパーセンテージの疼痛軽減として記録された。
慢性緊張性頭痛ならびに外傷後頭痛の患者・・・表4・・・
周知のように非常に処置が困難で大部分が難治性の全身性筋腱障害患者の群では,驚くほどではないが特異的問題の点で重要な結果が現れた。20から最大70%の軽減が少なくとも6人の患者で生じた。 』

a8.70頁中欄3行?右欄28行
『 特徴的プロファイル
動物実験調査、臨床研究及び観察が明らかに示したのは、当該物質が作用-/副作用プロファイルにおいて、一方でアセチルサリチル酸又はNSARと[3参照]、そして他方でオピオイドと[6参照]、明白に区別されるということである:フルピルチンはさして目を引くほどの消炎作用を有さない;それはプロスタグランジン合成阻害の原因とならない。この炎症による疼痛への処置上の不利な点は胃腸への適合性(NSAR胃疾患、胃及び十二指腸潰瘍)について反対に重要な利点となる。・・・・・・
癌腫の痛みならびに他の慢性疼痛症候群の処置において収縮刺激性のオピオイド成分、特に強作用物質であるブプレノルフィンやモルフィン、は頻繁に便秘を発症させる[6]。この副作用はフルピルチンではみられなかった。・・・
・・・・・・

濫用の可能性の兆候はない
・・・・・・
・・・。1990年代には濫用の症例は麻薬界において知られていなかった。Hermannらによる長期間の研究では[7]耐性の問題も示されなかった;・・・。』

2 対比・判断

(1) 刊行物Aには、様々な原因による慢性筋筋膜疼痛及び関連症状を有する50人の患者群に対し、フルピルチンを投与することで疼痛の軽減効果がみられたことが記載されており(a1,a2、a5?a7)、これらを含む刊行物Aの記載からみて、刊行物Aには、
慢性筋筋膜疼痛症の患者における疼痛を軽減するためのフルピルチンを含む薬剤
の発明(以下、引用発明ということがある。)が記載されているものと認める。

本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「疼痛」は「慢性筋筋膜疼痛」、即ち筋骨格系を構成する骨格筋或いは筋膜を含む部位の疼痛症状を呈するものであるから本願発明の「筋骨格痛」に相当し、また、引用発明の「軽減する」は本願発明の「低減させるまたは除去する」に相当することを踏まえると,両者は
患者における筋骨格痛を低減させるまたは除去するための、フルピルチンを含む薬剤
の点で共通している一方、
患者における筋骨格痛が,本願発明では「線維筋痛症の患者における」筋骨格痛であって「アヘン剤または非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)によって軽減されない場合における」筋骨格痛であるのに対し,引用発明では「慢性筋筋膜疼痛症の患者における」筋骨格痛であり、また「アヘン剤または非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)によって軽減されない場合における」筋骨格痛であるとの特段の限定はない
という点(以下、単に「相違点」ということがある。)で、本願発明と相違する。

(2) 以下、この相違点について検討する。
(i) 刊行物Aには、様々な原因による慢性筋筋膜疼痛症の50人の患者群が、慢性的な緊張性頭痛、外傷後頭痛、脊椎原性背部痛等を伴う患者の他「全身性筋腱障害」を伴う患者も含んでいたことが記載されている(a5,a6)と共に、当該「全身性筋腱障害」が「(=線維筋痛症)」、即ち、線維筋痛症と同義であること、も記載されている(a5)。そして、かかる「全身性筋腱障害」即ち「線維筋痛症」における慢性疼痛に対しても、フルピルチンの投与により軽減効果がみられたことが、そのことを示すデータ結果と共に記載されているのである(a6,a7)。
そうすると、引用発明における「慢性筋筋膜疼痛症」の中には「『全身性筋腱障害』(=線維筋痛症)」、即ち、本願発明の「線維筋痛症」と区別し得ない症状が現実に含まれているものと解される。
或いは、仮に、刊行物Aの「(慢性)筋筋膜疼痛症」が本願発明の「線維筋痛症」とは疾患として厳密には異なるものであったとしても、上述のとおり、刊行物Aでは、治療対象である慢性筋筋膜疼痛症に含まれる症例として「『全身性筋腱障害』(=線維筋痛症)」と具体的に記載されている(a5,a6)以上、かかる記載事項を含む刊行物Aをみた当業者であれば、同刊行物Aでは、「全身性筋腱障害」即ち「線維筋痛症」が、「慢性筋筋膜疼痛症」と実質的に重複する疾患であるか、仮にそうでないとしても、少なくとも「慢性筋筋膜疼痛症」と関連する類似の疼痛症状を呈する疾患として記載されている、と解することができるものである。
してみれば、引用発明の慢性筋筋膜疼痛症患者の筋骨格痛として、或いは慢性筋筋膜疼痛症患者の筋骨格痛にかえて、特に線維筋痛症と診断される患者の筋骨格痛を適用対象とすることは、刊行物A中に実質的に記載された範囲の事項であるか、少なくとも当業者にとり容易になし得たことである。

(ii) そして、刊行物Aには、上記50名の慢性筋筋膜疼痛症患者群に関し、主な問題症例が、従来の鎮痛剤が有効でないか副作用が生じる例であったことも記載されている(a5)から、引用発明における主な患者の痛みは、従来の鎮痛剤によっては軽減されない場合の筋骨格痛であることが示唆されているといえる。さらに、そのような従来の鎮痛剤としてアヘン剤や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は周知のものであり、また、刊行物Aには、フルピルチンが作用機序、作用・副作用プロファイルに関し非ステロイド系抗リューマチ薬(NSAR)、即ちNSAID[NSARがNSAIDに相当することは、刊行物A中で「NSAID」と「非ステロイド系抗リューマチ薬(NSAR)」が同義語として用いられていると解される(a2)ことから、明らかである。]、或いはオピエート、即ちアヘン剤、等と明確に区別され得るものであること(a2?a3)や、フルピルチンがプロスタグランジン合成阻害の原因とならずNSAIDにより生じ得る慢性胃炎或いは消化器官潰瘍等の副作用が生じないこと(a4,a8)、オピエート投与による便秘の副作用や濫用・禁断症状等を起こさしめないことも記載されている(a8)。
してみれば、上記(i)での検討結果に基づき、引用発明における適用対象患者を線維筋痛症の患者とするに際し、併せて、当該線維筋痛症患者として,特に上記アヘン剤又はNSAIDといった周知の従来の鎮痛剤によっては軽減されない場合の筋骨格痛を呈する患者を適用対象とすることは、刊行物Aの記載から当業者にとり容易に想到し得たことといえる。そして、そうすることで、フルピルチンの上記アヘン剤やNSAIDと異なる作用機序等により当該筋骨格痛が軽減され得、副作用等もより少ない、という効果も、上の摘記a2?a8を含む刊行物Aの記載から当業者にとり予測し得た範囲内の事項に過ぎない。

(iii) したがって、本願発明は、引用発明、或いは引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求人の主張について
(i) 請求人は、平成25年12月27日付け意見書(以下単に意見書という。)において、
・参考資料1に記載のとおり、全身性筋腱障害及び筋筋膜痛症候群はしばしば線維筋痛症と混同されるものの、いずれも線維筋痛症とは別異のものである(第2A.(ロ)、(ハ))、
・本願発明者による参考資料2:Psychosomatics, (Aug.2000) 41 p.371-372 で報告されている治療例からみて、本願発明が『・・・線維筋痛症の・・・アヘン剤または・・・(NSAID)によって軽減されない場合における上記筋骨格痛を低減させるまたは除去するといった格別な効果を奏する・・・』(第2A.(ヘ))、
としつつ、本願発明が進歩性を有する旨主張する。

(ii) しかしながら、刊行物Aには、「全身性筋腱障害」(=線維筋痛症)の診断が米国リューマチ学会の基準に基づいて行われたことが記載されている(a5)ところ、そもそも本願明細書においても『・・・線維筋痛症の診断及び分類に関する厳密な基準は、特に米国リューマチ協会』(The American College of Rheumatology)により確立されている。・・・」(【0007】)とされており、ここでいう「米国リューマチ協会」が刊行物Aの上記米国リューマチ学会と同一の学術組織と認められることを踏まえると、本願発明の「線維筋痛症」と引用発明の「全身性筋腱障害」、即ち「線維筋痛症」、とは、同じ学術組織による共通の基準に基づいた診断に係るものである。そうすると、両「線維筋痛症」は、文言上のみならず実質的にも同じ疾患と解されるものであって、請求人が主張するような別異の疾患であると解することはできない。
また、請求人が審査係属時の平成23年1月24日付け意見書中『Wikipedia:筋筋膜性疼痛症候群には、 ・・・』の段落において指摘するような『・・・線維筋痛症の診断基準の一つに圧痛点が11カ所以上に見られる事という基準がある。一方で、筋筋膜性疼痛症候群の診断基準は圧痛点が1か所以上に見られる事という基準であり、筋筋膜性疼痛症候群の全身症状が線維筋痛症であると考えられている。・・・』という違いがあるとしても、刊行物Aにおける「『全身性筋腱障害』(=線維筋痛症)」もまた、筋筋膜性疼痛で症状が全身にわたる場合の疼痛性疾患と解されるものであり、この点からみても、刊行物Aの上記「全身性筋腱障害」、即ち「線維筋痛症」、は本願の「線維筋痛症」と同じ疾患と解されるものであって、請求人がいうような別異の疾患であると解することはむしろ困難である。

なお、
(ア) 当審拒絶理由通知書において引用した、本願優先日前に頒布された以下の刊行物: 高久・井村監修,福島雅典編「メルク マニュアル 第16版」 (1997年6月11日 日本語版 第5刷) (有)メディカル ブック サービス 1320?1321頁 には、『線維筋痛(FIBROMYALGIA)』(1320頁11行標題) について記述されているところ、当該標題「線維筋痛(FIBROMYALGIA)」についてその直後に『(筋筋膜痛症候群;線維筋肉炎)』(同頁12行。下線は当審による。) と記載されており、当該「線維筋痛」に関し『 筋肉,・・・周囲の軟部組織構造の,鋭い痛み,圧痛,・・・によって特徴づけられる・・・原発性で全身的な場合,他の関連疾患あるいは基礎疾患に不随する場合,または限局性で酷使や・・・に関連がある場合などがある。』(1320頁14?16行。下線は当審による。)、 『・・・。男性は、・・・限局性の線維筋痛を罹患しやすい。・・・』(1320頁32?33行。下線は当審による。) とも記載されているところ、これらの記載からみて、本願優先日前、「線維筋痛」(本願発明の「線維筋痛症」と同じ疾患を意味するものと解される)が、「筋筋膜痛症候群」(引用発明A2の慢性筋筋膜疼痛症を含む疾患群と解される)と重複する疾患であるか、仮に、例えば全身性であるか限局性であるかに基づいて互いに区別され得るとしても、少なくとも筋筋膜痛症候群と共通又は非常に類似する疼痛症状を呈する疾患と理解される場合があることは、当業者にとり周知であったものといえる。
(イ) また、参考資料2では、当審による拒絶理由通知中で指摘したように、症例4の患者Ms.B.において『Case 4. Ms.B. is ・・・with at least 5 years of ・・・, diffuse myofascial pain consistent with a fibromyalgia diagnosis, ・・・Flupirtine・・・was added ・・・Ms. B. experienced substantial and gratifying relief from her myofacial pain.・・・』(2頁3?10行。下線は当審による。)、即ち、患者Ms.B.が線維筋痛症の診断と一致する症状であるびまん性の筋筋膜疼痛を有しており,フルピルチンの投与により当該患者が当該筋筋膜疼痛から開放されたことを以て,フルピルチンが線維筋痛症の疼痛の処置に有効であったことが記載されている。
そして、これら(ア)、(イ)の事項は上の2.(2)の判断と矛盾するものでなく、むしろこれら(ア)、(イ)によれば、線維筋痛症と筋筋膜疼痛については、互いに同じ症状であるか、少なくとも類似の疼痛症状を示すものと解され得ることはあっても、本願発明の「線維筋痛症」の患者における筋骨格痛と、刊行物Aの「全身性筋腱障害(=線維筋痛症)」もしくはそれを含む「慢性筋筋膜疼痛症」の患者における筋骨格痛とが、明らかに別異の疼痛症状であるとはむしろ解し得ないが、この点について請求人は何ら合理的な反論をしているわけでもない。

また、そもそも、参考資料1が「・・・本願発明の発明者が、線維筋痛症及び全身性腱筋痛症の語義あるいは定義の変遷についてまとめた・・・資料である・・・」(意見書第2A.(ハ))としても、その内容の如何にかかわらず、本願発明の「線維筋痛症の患者における筋骨格痛」が引用発明の慢性筋筋膜疼痛症の患者における筋骨格痛に含まれるか或いは刊行物Aから容易想到である旨の、上の2.(2)の判断に影響を及ぼすものではない。
さらに、刊行物Aの患者の疼痛が参考資料2の患者におけるようなアヘン剤又はNSAIDによっては軽減されない場合のものであっても、フルピルチンにより低減又は除去され得るものであることが、刊行物Aの記載に基づき予期し得た範囲であることも、2.(2)で既に述べたとおりである。

よって、参考資料1、2の記載事項の当否にかかわらず、請求人の主張は採用できない。

(iii) また、請求人は意見書中で、合議体において本願発明の特許性について疑義が残る場合はさらなる補正の用意があるので、面接等で合議体からさらに補正の示唆等が与えられることを希求する旨述べてもいる(「第3 むすび」)。
しかしながら、請求人は具体的な補正案を提示しているわけではないし、また、そもそも特許法では拒絶理由の通知に際し補正できる期間を定めているところ、本件については当審が通知した拒絶理由に対し当該期間内において既に補正がなされているのであるから、特段の事情もなく上記期間後にそれ以上の補正の機会を与えることは、同法の想定するところではない。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は,刊行物Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について論及するまでもなく,この特許出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-17 
結審通知日 2014-02-18 
審決日 2014-03-03 
出願番号 特願2000-609051(P2000-609051)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬下 浩一  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 大久保 元浩
増山 淳子
発明の名称 線維筋痛症及び関連症状の治療におけるフルピルチン  
代理人 長沼 暉夫  
代理人 浅村 肇  
代理人 池田 幸弘  
代理人 浅村 皓  

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