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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E01D
管理番号 1289973
審判番号 不服2012-18300  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-19 
確定日 2014-07-17 
事件の表示 特願2008-317459「橋脚用排水管および橋脚用排水管の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月24日出願公開、特開2010-138645〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年12月12日の出願であって,平成24年6月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月19日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされた。
その後,平成25年4月26日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年6月28日付けで回答書が提出されたものである。


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年9月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容・目的
平成24年9月19日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,補正前(平成23年9月20日付けの手続補正書参照。)の請求項1を,以下のように補正することを含むものである。
「橋脚に沿って取付けられるFRP製の橋脚用排水管であって、
前記橋脚に対向する位置に設けられる平板状の裏面部と、
この裏面部の両端部に両側が接続された断面略円弧状の正面部とを備え、
前記裏面部と前記正面部とで区切られた空間から流路が構成され、
前記裏面部の前記流路側に非透水性であるとともに独立気泡構造を有する長尺状の膨張吸収材が前記裏面部の一部が露出した状態で両面テープにより固定され、
橋脚用排水管の内壁面積に対する前記膨張吸収材の取付面積の割合は、4?20%となるように配設する
ことを特徴とする橋脚用排水管。」

上記補正は,補正前の請求項1に記載された請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「橋脚用排水管」について,「FRP製の」という事項を付加して限定し,「膨張吸収材」について,取り付ける場所を「前記正面部と前記裏面部との少なくともいずれか一方」から「前記裏面部」に限定するとともに,「取付面積の割合」を「前記正面部又は前記裏面部のいずれか一方に取り付ける場合は4?20%、前記正面部および前記裏面部両面の両方に取り付ける場合は8?40%」から「4?20%」に限定したものであり,かつ補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,少なくとも,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たしているか,について以下に検討する。

2.独立特許要件違反(特許法第29条第2項違反)
2-1.引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2007-205126号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付与。)
(1a)「【請求項1】
橋脚に沿って取り付けられる橋脚用排水管であって、
前記橋脚に固定された橋脚用金具と互いに係合する排水管用金具が固定される裏面部と、この裏面部の両端部に両側が接続された断面略円弧状の正面部と、この正面部の両端に連続して形成され前記排水管用金具及び前記橋脚用金具を覆う延出部とを備えたことを特徴とする橋脚用排水管。
【請求項2】
請求項1の記載した橋脚用排水管において、
前記裏面部、前記正面部及び前記延出部はガラス繊維強化プラスチック又は硬質塩化ビニルから一体形成されていることを特徴とする橋脚用排水管。」

(1b)「【0008】
本発明では、正面部が断面円弧状に形成されているので、正面あるいは斜めから見た場合に正面部に角部を目視できないから外観が良好となる。そして、裏面部に設けられた排水管用金具と橋脚に設けられた橋脚用金具とは延出部で覆われているため、これらの金具が正面あるいは斜めから排水管を目視した場合に露出しないから、この点からも外観が良好となる。
【0009】
ここで、本発明では、前記裏面部、前記正面部及び前記延出部はガラス繊維強化プラスチック又は硬質塩化ビニルにより一体形成されている構成が好ましい。
この構成の発明では、押出成形等の成形方法によって橋脚用排水管が容易に形成されることになる。しかも、ガラス繊維強化プラスチック又は硬質塩化ビニルから成形されることで、橋脚用排水管が軽量かつ大きな強度を得ることができる。」

(1c)「【0012】
図3及び図4には橋脚排水管5の詳細な構造が示されている。
図3は橋脚用排水管5の水平断面図、図4は橋脚用排水管5を橋脚2に取り付ける状態を示す分解斜視図である。
図3において、橋脚用排水管5は、橋脚2の壁面に対向配置される断面略直線状の裏面部51と、この裏面部51の両側縁部に両端部が接続された正面部52と、この正面部52の両端にそれぞれ連続して形成された延出部53とを備え、これらの裏面部51、正面部52及び延出部53はガラス繊維強化プラスチック(FRP)から押出成形、その他の成形手段によって一体形成されている。裏面部51、正面部52及び延出部53はそれぞれ厚み寸法が略等しい。ここで、正面部52の断面形状は略円弧状であればよく、例えば、半円状でもよい。
裏面部51と正面部52との間に形成される空間は雨水を流通させる空間である。延出部53は正面部52に対して略直交している。
・・・」

これら記載事項(1a)ないし(1c)から,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「橋脚に沿って取付けられる橋脚用排水管であって,
前記橋脚に固定された橋脚用金具と互いに係合する排水管用金具が固定され,前記橋脚の壁面に対向配置される断面略直線状の裏面部と,この裏面部の両端部に両端が接続された断面略円弧状の正面部と,この正面部の両端に連続して形成され前記排水管用金具及び前記橋脚用金具を覆う延出部とを備え,
前記裏面部,前記正面部及び前記延出部はガラス繊維強化プラスチック(FRP)から一体形成されており,
前記裏面部と前記正面部との間に形成される空間は雨水を流通させる空間である,
橋脚用排水管。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

2-2.補正発明と刊行物1記載の発明との対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「ガラス繊維強化プラスチック(FRP)から一体形成され」が補正発明の「FRP製の」に相当しており,以下同様に,
「橋脚の壁面に対向配置される」ことが「橋脚に対向する位置に設けられる」ことに,
「断面略直線状」が「平板状」に,
「裏面部と前記正面部との間に形成される空間は雨水を流通させる空間である」が「裏面部と前記正面部とで区切られた空間から流路が構成され」に,それぞれ相当する。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
「橋脚に沿って取付けられるFRP製の橋脚用排水管であって,
前記橋脚に対向する位置に設けられる平板状の裏面部と,
この裏面部の両端部に両側が接続された断面略円弧状の正面部とを備え,
前記裏面部と前記正面部とで区切られた空間から流路が構成される
橋脚用排水管。」

そして,以下の点で相違している。
補正発明は,裏面部の前記流路側に非透水性であるとともに独立気泡構造を有する長尺状の膨張吸収材が前記裏面部の一部が露出した状態で両面テープにより固定され,橋脚用排水管の内壁面積に対する前記膨張吸収材の取付面積の割合は、4?20%となるように配設するのに対し,
刊行物1記載の発明は,そのようになっていない点。

2-3.判断
寒冷地における凍結破壊を防ぐため,排水管の流路側に非透水性であるとともに独立気泡構造を有する長尺状の膨張吸収材を排水管の一部が露出した状態で設けることは,周知技術(原査定の拒絶の理由に提示された,特開昭64-6450号公報(特に,2頁右上欄7行?左下欄5行,3頁左上欄1?5行,4頁左下欄15行?右下欄9行,第10,11図参照。),特開2003-254629号公報(特に,段落【0008】?【0010】,【0022】,図6参照。),特開平10-292578号公報(段落【0013】?【0022】,図1,図2等参照。)にすぎない。
さらに,上記特開平10-292578号公報の段落【0022】に,「棒状の弾性体は筒状樋本体の内壁面の凹溝に収納されているので、筒状樋本体の内部の断面積は一定であり、雨水に落ち葉等が混入してきても、落ち葉等は筒状樋本体の内周面と棒状の弾性体との間に詰まることがなく、雨水排水機能が損なわれない。」と記載されているように,膨張吸収材の取付面積の割合を少なくして排水機能が損なわれないようにすることは,排水管において普通に考慮することにすぎず,かつ,補正発明における「4?20%」という割合も,本件明細書の段落【0016】に「内壁面全体を覆ってしまうと流路断面積が小さくなってしまい、橋脚用排水管としての機能が損なわれるからである。」と記載されているように、臨界的意義があるとはいえない。
また,両面テープにより固定することは,当業者が適宜採用し得る固着手段の一態様に過ぎず,裏面部に配設することも,排水管の断面のうちの一つを適宜選択したことに過ぎない。
そしてこれらを考慮すると,上記周知技術を参照し,寒冷地における凍結破壊を防ぐため,刊行物1記載の発明の橋脚用排水管に,膨張吸収材を上記相違点に係る本件補正発明の構成のように配設することは,当業者が容易に想到し得ることである。
そして,補正発明の作用効果も,刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測しうる程度のことである。

なお,平成24年9月19日付け審判請求書の平成24年10月31日付け手続補正書(方式)の「3.(4)(4-5)」において,請求人が主張する補正発明の特有の効果について検討する。
まず,「本願発明1は、平板状の裏面部の流路側に膨張吸収材を固定する場合に比べて、固定し易く、取り付け作業性が優れます。」と主張しているが,広く平面状の場所が作業しやすいことは,当業者ならば当然思い付く程度のことであって,格別のものとは認められない。

同じく,「本願発明1の橋脚用排水管においては、裏面部が橋脚に対向する位置に設けられており、排水は、正面部の流路側を通過します。・・・(略)・・・
そのため、膨張吸収材が正面部の流路側に配置されていると、排水が繰り返し流れることで剥がれ易くなります。しかしながら、本願発明1は、平板状の裏面部の流路側に膨張吸収材が配置されており、橋脚用排水管の流路を排水が流れても膨張吸収材が浸水する頻度が低いため、膨張吸収材が剥がれ難く、膨張吸収材の貼り直し等のメンテナンスの頻度を低減することができます。
なお、凍結する場合も同様の理由で、まず正面部の流路側から排水が凍結し、最終的に裏面部の流路側が凍結すると考えられることから、膨張吸収材を初めに凍結する正面部の流路側に配置すると、膨張を吸収する前に膨張吸収材の周りの排水が凍結してしまい効果が半減します。それに対し、裏面部の流路側に膨張吸収材を配置することで膨張吸収材の効果が充分に発揮されます。」との主張もある。しかしながら,排水が排水管のどこを通過するかは,排水の流量や流速,さらには排水管の長さや屈曲方向等によって変化し,単に排水管の断面形状から一律に決まるものではない。したがって,排水が主に正面部を通過することを前提とした当該効果についても認めることはできない。

さらに,「<凍結・融解繰り返し実験>」の結果も記載されている。
該実験結果をみると、膨張吸収材を,固定していない比較実験例1が3サイクル後に亀裂が生じたのに対して,橋脚用排水管の裏面部に固定した実験例1と,正面部に固定した参考例1とは,15サイクル後でも亀裂が起きておらず,裏面部と正面部の端部の両側に固定した比較実験例2でも13サイクル後でようやく亀裂が生じていることからみて,膨張吸収材を裏面部に配設することが,その他の場所に配設することと比較して顕著な効果があるとは認められない。

したがって,補正発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.補正の却下の決定のむすび
以上より,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たしていないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
1.本願発明
平成24年9月19日付けの手続補正は以上のとおり却下され,平成23年12月20日付けの手続補正は,原審において平成24年6月11日付けで却下されているので,本願の請求項1ないし3に係る発明は,平成23年9月20日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるところ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「橋脚に沿って取付けられる橋脚用排水管であって、
前記橋脚に対向する位置に設けられる平板状の裏面部と、
この裏面部の両端部に両側が接続された断面略円弧状の正面部とを備え、
前記裏面部と前記正面部とで区切られた空間から流路が構成され、
前記正面部と前記裏面部との少なくともいずれか一方の前記流路側に非透水性であるとともに独立気泡構造を有する長尺状の膨張吸収材が前記正面部および前記裏面部の一部が露出した状態で両面テープにより固定され、
橋脚用排水管の内壁面積に対する前記膨張吸収材の取付面積の割合は、前記正面部又は前記裏面部のいずれか一方に取り付ける場合は4?20%、前記正面部および前記裏面部両面の両方に取り付ける場合は8?40%となるように配設する
ことを特徴とする橋脚用排水管。」

2.引用刊行物
(1)刊行物1
本願出願前に頒布された,上記刊行物1には,「第2 2.2-1.(1)」に記載したとおりの発明が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した補正発明から,橋脚用排水管が「FRP製」という限定特定事項及び,「膨張吸収材」についての限定特定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2 2.2-3.」に記載したとおり,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-01 
結審通知日 2014-05-13 
審決日 2014-06-04 
出願番号 特願2008-317459(P2008-317459)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E01D)
P 1 8・ 121- Z (E01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳元 八大  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 高橋 三成
住田 秀弘
発明の名称 橋脚用排水管および橋脚用排水管の製造方法  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
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