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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1290088
審判番号 不服2013-16150  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-21 
確定日 2014-07-24 
事件の表示 特願2008-240601「光結合素子およびこれを備えた光モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月23日出願公開、特開2009-163212〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年9月19日(優先権主張平成19年12月12日)の出願であって、平成24年6月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月20日に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたが、平成25年5月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたものである(以下、この平成25年8月21日になされた補正を「本件補正」という。)。

2 本件補正についての却下の決定
(1)結論
本件補正を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲につき、補正前の
「【請求項1】
光の発光または受光を行う光電変換素子が形成された光電変換装置と、マルチモード方式の光ファイバとが取り付け可能とされ、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを光学的に結合可能とされた光結合素子であって、
前記光電変換装置の取り付けの際に前記光電変換素子に臨む光結合素子本体の第1の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第1のレンズ面と、
前記光ファイバの取り付けの際に前記光ファイバの端面に臨む前記光結合素子本体の第2の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第2のレンズ面と、
前記第1の面に形成され、前記光電変換装置の取り付けの際における前記光電変換装置の位置決めを行うための光結合素子側光電変換装置位置決め構造と、
前記第2の面に形成され、前記光ファイバの取り付けの際における前記光ファイバの位置決めを行うための光結合素子側ファイバ位置決め構造
とを備え、
前記光電変換装置として、前記光電変換装置の位置決めのために前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造に嵌合される光電変換装置側光電変換装置位置決め構造を備えたものが取り付けられるように形成され、
前記光ファイバとして、前記光ファイバの位置決めのために前記光結合素子側ファイバ位置決め構造に嵌合されるファイバ側ファイバ位置決め構造を備えたものが取り付けられるように形成され、
前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造が凸部である場合には、前記光結合素子側ファイバ位置決め構造が凹部であり、前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造が凹部である場合には、前記光結合素子側ファイバ位置決め構造が凸部であることによって、前記光結合素子本体の外観が、前記第1の面と前記第2の面との間で互いに異ならされていること
を特徴とする光結合素子。
【請求項2】
前記光電変換装置として、前記光電変換素子が複数形成されたものが取り付けられるように形成され、
前記光ファイバが、前記複数の光電変換素子に対応するように複数本取り付けられるように形成され、
前記第1のレンズ面および前記第2のレンズ面が、前記複数の光電変換素子および前記複数本の光ファイバに対応するようにそれぞれ複数形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の光結合素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光結合素子と、
この光結合素子に対応する光の発光または受光を行う光電変換素子が形成された光電変換装置と
を備えたことを特徴とする光モジュール。」

「【請求項1】
光の発光または受光を行う光電変換素子が形成された光電変換装置と、マルチモード方式の光ファイバとが取り付け可能とされ、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを光学的に結合可能とされた光結合素子であって、
前記光電変換装置の取り付けの際に前記光電変換素子に臨む光結合素子本体の第1の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第1のレンズ面と、
前記光ファイバの取り付けの際に前記光ファイバの端面に臨む前記光結合素子本体の第2の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第2のレンズ面と、
前記第1の面に形成され、前記光電変換装置の取り付けの際における前記光電変換装置の位置決めを行うための光結合素子側光電変換装置位置決め構造(凹部または凸部)と、
前記第2の面に形成され、前記光ファイバの取り付けの際における前記光ファイバの位置決めを行うための光結合素子側ファイバ位置決め構造(凸部または凹部)
とを備え、
前記光電変換装置として、前記光電変換装置の位置決めのために前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造(凹部または凸部)に嵌合される光電変換装置側光電変換装置位置決め構造(凸部または凹部)を備えたものが取り付けられるように形成され、
前記光ファイバとして、前記光ファイバの位置決めのために前記光結合素子側ファイバ位置決め構造(凸部または凹部)に嵌合されるファイバ側ファイバ位置決め構造(凹部または凸部)を備えたものが取り付けられるように形成されており、
更に、下式(1)および(2)を満たすように形成されている
1.2≦β≦1.4 (1)
d_(1)+d_(2)+d_(3)+d_(4)+d_(5)≦W (2)
(但し、(1)式におけるβは、前記光結合素子における前記光電変換装置側の開口数NA_(1)と前記光結合素子における前記光ファイバ側の開口数NA_(2)との比NA_(1)/NA_(2)である。
(2)式におけるd_(1)は、前記光電変換装置側レーザ位置決め構造(凹部または凸部)についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記光電変換素子における光の出射方向に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(2)は、前記光結合素子側レーザ位置決め構造(凹部または凸部)についての理想形状(設計形状)からの変形量であって、前記第1レンズ面における光軸に直交する方向への変形量(形状公差)である。
(2)式におけるd_(3)は、前記第1レンズ面についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記第1レンズ面における前記光軸に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(4)は、前記光電変換装置の前記光電変換素子についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記光電変換素子における光の出射方向に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(5)は、前記光結合素子側レーザ位置決め構造(凹部または凸部)についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記第1レンズ面における前記光軸に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるWは、取り付け位置余裕幅である。)
ことを特徴とする光結合素子。
【請求項2】
光の発光または受光を行う光電変換素子が形成された光電変換装置と、マルチモード方式の光ファイバとが取り付け可能とされ、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを光学的に結合可能とされた光結合素子であって、 前記光電変換装置の取り付けの際に前記光電変換素子に臨む光結合素子本体の第1の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第1のレンズ面と、
前記光ファイバの取り付けの際に前記光ファイバの端面に臨む前記光結合素子本体の第2の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第2のレンズ面と、
前記第1の面に形成され、前記光電変換装置の取り付けの際における前記光電変換装置の位置決めを行うための光結合素子側光電変換装置位置決め構造(凹部または凸部)と、
前記第2の面に形成され、前記光ファイバの取り付けの際における前記光ファイバの位置決めを行うための光結合素子側ファイバ位置決め構造(凸部または凹部)
とを備え、
前記光電変換装置として、前記光電変換装置の位置決めのために前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造(凹部または凸部)に嵌合される光電変換装置側光電変換装置位置決め構造(凸部または凹部)を備えたものが取り付けられるように形成され、
前記光ファイバとして、前記光ファイバの位置決めのために前記光結合素子側ファイバ位置決め構造(凸部または凹部)に嵌合されるファイバ側ファイバ位置決め構造(凹部または凸部)を備えたものが取り付けられるように形成されており、
更に、下式(1)および(3)を満たすように形成されている
1.2≦β≦1.4 (1)
d_(2)+d_(5)≦2W (3)
(但し、(1)式におけるβは、前記光結合素子における前記光電変換装置側の開口数NA_(1)と前記光結合素子における前記光ファイバ側の開口数NA_(2)との比NA_(1)/NA_(2)である。
(3)式におけるd_(2)は、前記光結合素子側レーザ位置決め構造(凹部または凸部)についての理想形状(設計形状)からの変形量であって、前記第1レンズ面における光軸に直交する方向への変形量(形状公差)である。
(3)式におけるd5は、前記光結合素子側レーザ位置決め構造(凹部または凸部)についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記第1レンズ面における前記光軸に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(3)式におけるWは、取り付け位置余裕幅である。)
ことを特徴とする光結合素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光結合素子と、
この光結合素子に対応する光の発光または受光を行う光電変換素子が形成された光電変換装置と
を備えたことを特徴とする光モジュール。」
に補正する内容を含むものである。

イ 補正の適否についての判断
(ア)本件補正後の請求項2は、補正前の請求項2に記載した発明特定事項を限定したものとは認められない。
したがって、当該補正内容は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。

(イ)本件補正後の請求項1の
「更に、下式(1)および(2)を満たすように形成されている
1.2≦β≦1.4 (1)
d_(1)+d_(2)+d_(3)+d_(4)+d_(5)≦W (2)
(但し、…である。)」との事項は、補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定したものとは認められない。
したがって、当該補正内容は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。

(ウ)本件補正前の請求項1には、位置決め構造に関して、「前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造が凸部である場合には、前記光結合素子側ファイバ位置決め構造が凹部であり、前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造が凹部である場合には、前記光結合素子側ファイバ位置決め構造が凸部であることによって、前記光結合素子本体の外観が、前記第1の面と前記第2の面との間で互いに異ならされていること」との特定事項が記載されるところ、補正後の請求項1においては、同特定事項が削除されるとともに、それぞれの位置決め構造に関して、「(凹部または凸部)」または「(凸部または凹部)」とのかっこ書による記載が付記されているものと認められる。
そして、かかる補正内容は、補正前の発明特定事項を限定するものではなく、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。

(エ)また、上記の各補正内容が、同条第5項第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものともいえない。

(オ)請求人は、平成26年1月8日提出の回答書において、「前記第1の面に係る構造の(凹部または凸部)と、前記第2の面に係る構造の(凸部または凹部)」の凹部と凸部との記載順位を逆にすることにより、前置補正においても、請求項1、2の補正前の発明特定事項である「光結合素子本体の外観が、前記第1の面と前記第2の面との間で互いに異ならされている」を担保している旨主張するが、上記(ウ)及び(エ)の判断を左右するものではない。なお、かっこ書で付記された事項は、例示とも解されるところであり、発明を特定する事項とは直ちには認められない。

ウ 小括
したがって、上記アの補正内容を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)付言
なお、以下に検討するとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許を受けることができないものであるから、本件補正を認める余地はない。

ア 検討対象とする本願補正発明
上記(2)イ(オ)の請求人の主張を考慮して、光結合素子側光電変換装置位置決め構造を凹部、光結合素子側ファイバ位置決め構造を凸部とした場合、本件補正後の請求項1に係る発明は、
「光の発光または受光を行う光電変換素子が形成された光電変換装置と、マルチモード方式の光ファイバとが取り付け可能とされ、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを光学的に結合可能とされた光結合素子であって、
前記光電変換装置の取り付けの際に前記光電変換素子に臨む光結合素子本体の第1の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第1のレンズ面と、
前記光ファイバの取り付けの際に前記光ファイバの端面に臨む前記光結合素子本体の第2の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第2のレンズ面と、
前記第1の面に形成され、前記光電変換装置の取り付けの際における前記光電変換装置の位置決めを行うための光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部と、
前記第2の面に形成され、前記光ファイバの取り付けの際における前記光ファイバの位置決めを行うための光結合素子側ファイバ位置決め構造である凸部
とを備え、
前記光電変換装置として、前記光電変換装置の位置決めのために前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部に嵌合される光電変換装置側光電変換装置位置決め構造である凸部を備えたものが取り付けられるように形成され、
前記光ファイバとして、前記光ファイバの位置決めのために前記光結合素子側ファイバ位置決め構造である凸部に嵌合されるファイバ側ファイバ位置決め構造である凹部を備えたものが取り付けられるように形成されており、
更に、下式(1)および(2)を満たすように形成されている
1.2≦β≦1.4 (1)
d_(1)+d_(2)+d_(3)+d_(4)+d_(5)≦W (2)
(但し、(1)式におけるβは、前記光結合素子における前記光電変換装置側の開口数NA_(1)と前記光結合素子における前記光ファイバ側の開口数NA_(2)との比NA_(1)/NA_(2)である。
(2)式におけるd_(1)は、前記光電変換装置側光電変換装置位置決め構造である凸部についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記光電変換素子における光の出射方向に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(2)は、前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部についての理想形状(設計形状)からの変形量であって、前記第1レンズ面における光軸に直交する方向への変形量(形状公差)である。
(2)式におけるd_(3)は、前記第1レンズ面についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記第1レンズ面における前記光軸に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(4)は、前記光電変換装置の前記光電変換素子についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記光電変換素子における光の出射方向に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(5)は、前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記第1レンズ面における前記光軸に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるWは、取り付け位置余裕幅である。)
ことを特徴とする光結合素子。」(以下「本願補正発明」という。)
となる。
なお、補正後の請求項1には、「前記光電変換装置側レーザ位置決め構造」あるいは「前記光結合素子側レーザ位置決め構造」との記載があるが、これより前に「光電変換装置側レーザ位置決め構造」とか「光結合素子側レーザ位置決め構造」の記載はなく、これより前に記載されているのは「光電変換装置側光電変換装置位置決め構造」及び「光結合素子側光電変換装置位置決め構造」であるので、上記のとおりとした。

イ 引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2005-31556号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、光伝送路間の光結合に用いられる光路変換型光結合素子に関する。」

(イ)「【0039】
図12は本発明の光路変換型光結合素子11を用いて光コネクタ30Aと回路基板34上の受光素子35とを接続した状態を示す斜視図、図13はその分解斜視図である。光コネクタ30Aは、ガイド孔32に挿通させたガイドピン33を光路変換型光結合素子11の第1接続部12のガイド孔18に挿入することにより、光路変換型光結合素子11と接続されており、ガイドピン33により光コネクタ30Aの各光ファイバ31の光軸と第1接続部12のコリメートレンズ16の光軸とが一致させられている。よって、光コネクタ30Aの光ファイバ31と光路変換型光結合素子11のコリメートレンズ16との調芯を簡易に行うことができる。また、光コネクタ30Aと光路変換型光結合素子11とが接続された状態では、第1接続部12のスペーサ17が光コネクタ30Aの端面に当接することにより、光ファイバ31の端面がコリメートレンズ16の焦点位置に位置させられている。
【0040】
図13に示すように、回路基板34の上面には、フォトダイオード等の受光素子35がコリメートレンズ20と同じピッチで配列されている。また、回路基板34には、光路変換型光結合素子11の下面におけるコリメートレンズ20に対するガイド孔22の位置関係と同じになるようにして、受光素子35に対して位置決め孔36が開口されている。よって、光路変換型光結合素子11を回路基板34の上においてスペーサ21を回路基板34の表面に当接させ、第2接続部13のガイド孔22に挿通させたガイドピン33を回路基板34の位置決め孔36に嵌合させることにより、光路変換型光結合素子11のコリメートレンズ20と回路基板34上の受光素子35との位置決めを簡易に行うことができる。さらに、スペーサ21によって受光素子35がコリメートレンズ20のほぼ焦点位置に位置させられている。
【0041】
なお、回路基板34に位置決め孔36をあける代わりに、回路基板34に光路変換型光結合素子11のガイド孔22と嵌合する突起を設けておいてもよい。
【0042】
図14は光路変換型光結合素子11を介して直角に接続された光コネクタ30Aと受光素子35の作用説明図である。この光路変換型光結合素子11にあっては、スペーサ17の厚みがコリメートレンズ16の焦点距離にほぼ等しくなっており、光ファイバ31のコア端面がコリメートレンズ16のほぼ焦点に位置しているので、光コネクタ30Aに保持されている光ファイバ31のコア端面から光(光信号)Lが出射されると、当該光Lは、コリメートレンズ16を通過することによって平行光に変換され、水平方向に進んで平行光のままで全反射面23に対して45°の角度で入射する。全反射面23に入射した平行光は、全反射面23によって下向きに全反射され、コリメートレンズ20に入射する。スペーサ21の厚みがコリメートレンズ20の焦点距離にほぼ等しくなっており、受光素子35がコリメートレンズ16のほぼ焦点に位置しているので、コリメートレンズ20に入射した平行光は、コリメートレンズ20によって集光され、集光された光Lが受光素子35に受光される。
【0043】
図示しないが、同様にして、回路基板34の上に実装した発光素子から出射された光信号を、光路変換型光結合素子11を介して前面側の光コネクタ30Aの光ファイバ31に入射させることもできる。すなわち、この光路変換型光結合素子11は双方向で光コネクタ30Aの光ファイバ31と光コネクタ30Bの光ファイバ31を結合させることができる。また、回路基板34には、発光素子と受光素子を同時に実装していてもよい。
【0044】
このような使用形態においても、光路変換型光結合素子11の前面15と下面19にそれぞれコリメートレンズ16、20を設けることにより、光ファイバ31との軸ずれ感度が減少するので、調芯作業が簡単になる。また、光コネクタ30A、30Bどうしを結合する場合と同様に、光の結合効率を高効率化することができる。さらに、本発明の光路変換型光結合素子11を用いれば、回路基板34に対して横に倒れた姿勢で光コネクタ30Aを接続することができるので、接続部分の低背化を図ることができる。」

ウ 引用発明
上記イによれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。

「前面15と下面19にそれぞれコリメートレンズ16、コリメートレンズ20が設けられ、光コネクタ30Aと回路基板34上の受光素子35とを接続する光路変換型光結合素子11であって、
光コネクタ30Aは、ガイド孔32に挿通させたガイドピン33を光路変換型光結合素子11の第1接続部12のガイド孔18に挿入することにより、光路変換型光結合素子11と接続されており、ガイドピン33により光コネクタ30Aの各光ファイバ31の光軸と第1接続部12のコリメートレンズ16の光軸とが一致させられており、
回路基板34の上面には、フォトダイオード等の受光素子35がコリメートレンズ20と同じピッチで配列され、回路基板34には、光路変換型光結合素子11の下面におけるコリメートレンズ20に対するガイド孔22の位置関係と同じになるようにして、受光素子35に対して位置決め孔36が開口され、光路変換型光結合素子11を回路基板34の上においてスペーサ21を回路基板34の表面に当接させ、第2接続部13のガイド孔22に挿通させたガイドピン33を回路基板34の位置決め孔36に嵌合させることにより、光路変換型光結合素子11のコリメートレンズ20と回路基板34上の受光素子35との位置決めを簡易に行うことができ、
ここで、回路基板34に位置決め孔36をあける代わりに、回路基板34に光路変換型光結合素子11のガイド孔22と嵌合する突起を設けておいてもよく、
光コネクタ30Aに保持されている光ファイバ31のコア端面から光(光信号)Lが出射されると、当該光Lは、コリメートレンズ16を通過することによって平行光に変換され、水平方向に進んで平行光のままで全反射面23に対して45°の角度で入射し、全反射面23によって下向きに全反射され、コリメートレンズ20に入射し、集光された光Lが受光素子35に受光される
光路変換型光結合素子11。」(以下「引用発明」という。)

エ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「受光素子35」、「回路基板34」、「光ファイバ31」、「光ファイバ31のコア端面」、「下面19」、「コリメートレンズ20」、「前面15」、「コリメートレンズ16」、「ガイド孔22」、「ガイド孔18」、「(位置決め孔36の代わりに回路基板34に設けられた)光路変換型光結合素子11のガイド孔22と嵌合する突起」、「ガイド孔32」及び「光路変換型光結合素子11」は、それぞれ、本願補正発明の「光の発光または受光を行う光電変換素子」、「光電変換装置」、「光ファイバ」、「光ファイバの端面」、「第1の面」、「第1のレンズ面」、「第2の面」、「第2のレンズ面」、「光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部」、「光結合素子側ファイバ位置決め構造」、「光電変換装置側光電変換装置位置決め構造である凸部」、「ファイバ側ファイバ位置決め構造」及び「光結合素子」に相当する。

(イ)してみると、両者は、
「光の発光または受光を行う光電変換素子が形成された光電変換装置と、光ファイバとが取り付け可能とされ、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを光学的に結合可能とされた光結合素子であって、
前記光電変換装置の取り付けの際に前記光電変換素子に臨む光結合素子本体の第1の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第1のレンズ面と、
前記光ファイバの取り付けの際に前記光ファイバの端面に臨む前記光結合素子本体の第2の面に形成され、前記光電変換素子と前記光ファイバの端面とを結ぶ光路を形成するための第2のレンズ面と、
前記第1の面に形成され、前記光電変換装置の取り付けの際における前記光電変換装置の位置決めを行うための光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部と、
前記第2の面に形成され、前記光ファイバの取り付けの際における前記光ファイバの位置決めを行うための光結合素子側ファイバ位置決め構造
とを備え、
前記光電変換装置として、前記光電変換装置の位置決めのために前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部に嵌合される光電変換装置側光電変換装置位置決め構造である凸部を備えたものが取り付けられるように形成され、
前記光ファイバとして、前記光ファイバの位置決めのためにファイバ側ファイバ位置決め構造である凹部を備えたものが取り付けられるように形成されている
光結合素子。」
である点で一致し、aないしcの点で相違するものと認められる。

a 本願補正発明では、「光ファイバ」が「マルチモード方式」とされているのに対し、引用発明では、「光ファイバ31」が「マルチモード方式」であるか不明な点(以下「相違点1」という。)。

b 本願補正発明では、「光結合素子側ファイバ位置決め構造」が「凸部」であり、当該凸部がファイバ側ファイバ位置決め構造である凹部に嵌合されるようになっているのに対し、引用発明では、光結合素子側ファイバ位置決め構造が「ガイド孔18」であり、ガイドピン33を用いてガイド孔32に挿通させることにより位置決めを行うものである点(以下「相違点2」という。)。

c 本願補正発明は、「下式(1)および(2)を満たすように形成されている
1.2≦β≦1.4 (1)
d_(1)+d_(2)+d_(3)+d_(4)+d_(5)≦W (2)
(但し、(1)式におけるβは、前記光結合素子における前記光電変換装置側の開口数NA_(1)と前記光結合素子における前記光ファイバ側の開口数NA_(2)との比NA_(1)/NA_(2)である。
(2)式におけるd_(1)は、前記光電変換装置側光電変換装置位置決め構造である凸部についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記光電変換素子における光の出射方向に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(2)は、前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部についての理想形状(設計形状)からの変形量であって、前記第1レンズ面における光軸に直交する方向への変形量(形状公差)である。
(2)式におけるd_(3)は、前記第1レンズ面についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記第1レンズ面における前記光軸に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(4)は、前記光電変換装置の前記光電変換素子についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記光電変換素子における光の出射方向に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるd_(5)は、前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造である凹部についての理想形成位置(設計位置)からの変位量であって、前記第1レンズ面における前記光軸に直交する方向への変位量(位置公差)である。
(2)式におけるWは、取り付け位置余裕幅である。)」とされているのに対し、引用発明は、このようなものであるか不明な点(以下「相違点3」という。)。

オ 判断
(ア)相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-174671号公報(段落【0013】参照)、特開2006-215576号公報(段落【0046】参照)にみられるように、光モジュールにおいてマルチモードファイバを用いることは、本願優先日当時において周知の技術であり、引用発明の「光ファイバ31」を「マルチモード方式」のものとすることに格別の困難性は認められない。

(イ)相違点2について
原査定に引用された.特開平2004-279439号公報(図6において光コネクタフェルール8の位置決め用ガイド孔8aが凸部5に嵌合している)、特開昭55-100514号公報(図1、2において、光ファイバ支持部材7に設けられた結合用ピン8が基板の穴3に嵌合している)、特開平6-138344号公報(図6及び図11におけるガイド突起部2とガイド穴4により、図1、2に示されるように雄型プラグ1aと雌型プラグ1bとが一体に嵌合される)にみられるように、光ファイバを他の光学素子に位置決めする構造として、ガイドピンによるもののほか、凸部と凹部の嵌合により位置決めする構造が本願優先日当時において周知であるから、引用発明において、ガイドピンを用いる位置決め構造に代えて、ガイド孔32に嵌合する凸部を光路変換型光結合素子11の前面15に設けるようにして、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

(ウ)相違点3について
式(1)は、光電変換装置と光ファイバの結合ロスが少なくなるように、光電変換装置の仕様(受光素子の開口数や発光素子の光放射角度等)及び光ファイバの仕様(開口数等)に応じて適宜定めるべき設計事項というべきものであり、引用発明の「コリメートレンズ16」及び「コリメートレンズ20」における開口数の関係を式(1)で規定する範囲内のものとすることに格別の困難性は認められない。
また、式(2)は、光結合素子と光電変換装置の結合ロスを所定のものにとどめるために、各位置決め構造等が設計上満たすべき当然の事項にすぎない(結合ロスを所定のものにとどめるには、公差による光結合素子と光電変換装置の位置ずれが許容範囲内になければならないことは明らかである。)。

(エ)本願補正発明の奏する効果について
本願補正発明が奏する効果が、引用発明及び周知技術から当業者が予測困難なほどの格別顕著なものとは認められない。

カ 小括
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成24年8月20日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記2(2)アに補正前の請求項1として示したとおりである。

(2)判断
上記2(3)で検討の対象とした本願補正発明は、本願発明の「前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造が凸部である場合には、前記光結合素子側ファイバ位置決め構造が凹部であり、前記光結合素子側光電変換装置位置決め構造が凹部である場合には、前記光結合素子側ファイバ位置決め構造が凸部であることによって、前記光結合素子本体の外観が、前記第1の面と前記第2の面との間で互いに異ならされていること」との特定事項を備えるものと認められる。
してみると、本願発明は、本願補正発明において式(1)及び(2)に関する特定事項を除いたもの、すなわち相違点3に係る特定事項を除いたものに相当するから、前記2(3)ア及びイでの検討と同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4 むすび
上記のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-26 
結審通知日 2014-05-27 
審決日 2014-06-09 
出願番号 特願2008-240601(P2008-240601)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大石 敏弘岡田 吉美大森 伸一  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 近藤 幸浩
服部 秀男
発明の名称 光結合素子およびこれを備えた光モジュール  
代理人 玉利 房枝  
代理人 伊藤 高英  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 畑中 芳実  
代理人 大倉 奈緒子  

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