• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1290156
審判番号 不服2011-7860  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-14 
確定日 2014-07-22 
事件の表示 特願2007-528807「交流発電機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日国際公開、WO2006/024578、平成20年 4月10日国内公表、特表2008-511276〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2005年7月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年8月27日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成22年12月15日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成22年12月17日)、これに対し、平成23年4月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審より平成24年2月27日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成24年3月7日)、これに対し、平成24年9月6日付で意見書及び手続補正書が提出され、当審より平成25年3月15日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成25年3月19日)、これに対し、平成25年9月19日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
平成25年9月19日付手続補正によって特許請求の範囲は、以下のように補正された。
「【請求項1】
交流発電機はステータを有し、ステータ歯に複数の相巻線から成る交流巻線が巻き回されており、各相巻線はステータ歯のあいだに存在する溝内に位置し、各相巻線は溝当たり複数のワイヤを有する、
車両の搭載電源網負荷へ給電するために、所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する交流発電機において、
前記第1の出力電圧値が14Vのとき、溝当たりの導体数zは、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、
シングルスロット巻線では、三角結線で5≦z≦10,二重三角結線で5≦z≦10,星形結線で2≦z≦8,二重星形結線で2≦z≦8に選定されており、
ダブルスロット巻線では、三角結線で3≦z≦6,二重三角結線で3≦z≦6,星形結線で1≦z≦5,二重星形結線で1≦z≦5に選定されている
ことを特徴とする交流発電機。
【請求項2】
交流発電機はステータを有し、ステータ歯に複数の相巻線から成る交流巻線が巻き回されており、各相巻線はステータ歯のあいだに存在する溝内に位置し、各相巻線は溝当たり複数のワイヤを有する、
車両の搭載電源網負荷へ給電するために、所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する交流発電機において、
前記第1の出力電圧値が28Vのとき、溝当たりの導体数zは、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、
シングルスロット巻線では、三角結線で7≦z≦17,二重三角結線で7≦z≦17,星形結線で4≦z≦10,二重星形結線で4≦z≦10に選定されており、
ダブルスロット巻線では、三角結線で4≦z≦9,二重三角結線で4≦z≦9,星形結線で2≦z≦6,二重星形結線で2≦z≦6に選定されている
ことを特徴とする交流発電機。
【請求項3】
極数nについて10≦n≦18が相当する、ここで、nは偶数であり、n=10,12,14,16,18である、請求項1または2記載の交流発電機。
【請求項4】
車両の搭載電源網負荷へ給電するために、所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する、請求項1または2記載の交流発電機(1)を備えた車両の搭載電源網において、
第1の搭載電源網負荷(8)および第2の搭載電源網負荷(4)を有しており、前記第1の搭載電源網負荷は前記交流発電機(1)と前記第1の搭載電源網負荷(8)とのあいだに配置された直列レギュレータ(5)を介して前記第1の出力電圧値に相当する第1の定格電圧を給電され、前記第2の搭載電源網負荷は直接に前記交流発電機(1)から前記第1の出力電圧値よりも大きい前記第2の出力電圧値に相当する第2の定格電圧を給電される
ことを特徴とする車両の搭載電源網。
【請求項5】
前記交流発電機(1)の前記直列レギュレータ(5)に、前記第2の出力電圧値を形成するための制御信号を供給する制御ユニット(3)が設けられている、請求項4記載の搭載電源網。
【請求項6】
前記制御ユニット(3)および前記直列レギュレータ(5)は一体のユニットを形成する、請求項5記載の搭載電源網。
【請求項7】
車両の搭載電源網負荷へ給電するために、所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する、請求項1または2記載の交流発電機(1)を備えた、車両の搭載電源網において、
第1の搭載電源網負荷(14)および第2の搭載電源網負荷(12)を有しており、前記交流発電機(1)と前記第1の搭載電源網負荷(14)および前記第2の搭載電源網負荷(12)とのあいだにスイッチング装置(9)が接続されており、前記第1の搭載電源網負荷(14)への前記第1の出力電圧値に相当する第1の定格電圧の給電と、前記第1の出力電圧値よりも大きい、前記第2の搭載電源網負荷(12)への第2の出力電圧値に相当する第2の定格電圧の給電とが切り換えられる
ことを特徴とする車両の搭載電源網。
【請求項8】
前記スイッチング装置(9)に切換信号を供給する制御ユニット(3)が設けられている、請求項7記載の搭載電源網。」


3.拒絶の理由I
平成25年3月15日付で通知した当審の拒絶の理由Iの概要は以下のとおりである。
『I この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、ワイヤ数、導体数との訳語があるが、各々どの様なことを意味するのか定義が明確でなく不明(ワイヤ数とは、図4の各々のスロットに6本のワイヤが挿入されており、この状態をワイヤ数6というのか否か不明。導体数とは、図3bにおいて導体数は各相1であり、図3eにおいて導体数は各相2であるのか否か不明。これ以外の定義であれば、定義を開示した図面を作成して明確に説明されたい。)である。
更に、特許請求の範囲には、「所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値とを出力する交流発電機」とあるが、第1の出力電圧値、第2の出力電圧値は、各々瞬時出力できればよいのか否か不明(例えば、請求項1において、第1の出力電圧値は14Vである。仮に当該交流発電機の定常時の出力が100Vであれば、発電機起動時は0Vから電圧が徐々に上昇して14Vを経由して100Vになり、発電機停止時には100Vから電圧が徐々に低下して14Vを経由して0Vになる。このように電圧が瞬間的ではあっても14Vになれば良いのか否か。)であり、仮に、安定的に即ち定常出力として第1の出力電圧値、第2の出力電圧値を出力するのであれば、本願の交流発電機は車両用を前提としており、通常交流発電機の回転子は直接又はプーリ・ベルトを介してエンジンに接続されているから、回転子の回転数を交流発電機の出力電圧のために変化させることはできず、審判請求人からのFAXに基づけば回転子は永久磁石形も可であるから、回転子に流れる界磁電流を調整することもできないにも関わらず、どの様にして安定的な出力電圧を取り出すことができるのか原理が不明であり、しかも出力電圧値は2種類(第1の出力電圧値、第2の出力電圧値)であるが、どの様に交流発電機を動作させて2種類の出力電圧値を取り出すのか原理が不明(例えば図3bのコイル配置で、回転子を回転させるのみで何故2種類の電圧が取り出せるのか不明。原理を開示した図面を作成して明確に説明されたい。)である。
更に、図1、図2において、レギュレータ2とあるが、どの様な機能を有して、どの様にして発電機を駆動制御するのか何ら開示が無く不明である。
更に、請求項1において、「シングルスロット巻線では、三角結線で5≦z≦10,二重三角結線で5≦z≦10,星形結線で2≦z≦8,二重星形結線で2≦z≦8に選定されており、ダブルスロット巻線では、三角結線で3≦z≦6,二重三角結線で3≦z≦6,星形結線で1≦z≦5,二重星形結線で1≦z≦5に選定されている」とあるが、明細書にワイヤ数に応じて巻線配置(巻線配置とは、先に示した特開平6-141497号公報図4のステータコイルのように、各相巻線をスロットにどのように配置したかを意味する)を変えるとの記載及びワイヤ数に応じて制御方法を変えるとの記載は無い(なおワイヤ数に応じて交流発電機の巻線配置・制御方法を変えることは技術常識ではない)から、ワイヤ数が異なっても同じ巻線配置・制御方法の場合ファラデーの法則から考えて、シングルスロット巻線三角結線ではz=10のときz=5の2倍の電圧が発生し、シングルスロット巻線星形結線ではz=8のときz=2の4倍の電圧が発生し、ダブルスロット巻線星形結線ではz=5のときz=1の5倍の電圧が発生することとなるが、何故如何なるワイヤ数でも第1の出力電圧値を14Vとすることができるのか不明である。請求項2も同様である。
更に、請求項1において、「各相巻線は溝当たり複数のワイヤを有する」とあるが、ダブルスロット巻線星形結線、二重星形結線はz=1が含まれ、記載が矛盾するため構成が不明である。
更に、請求項3において、nが奇数の場合どの様な巻線配置にするのか不明である。
更に、請求項4において、そもそも交流発電機がどの様にして第1の出力電圧値、第2の出力電圧値を得ているのか不明であり、仮に交流発電機が第1の出力電圧値、第2の出力電圧値を出力できるのであれば、何故直列レギュレータが必要であるのか不明であり、請求項4に記載された発明はどの実施例に対応するのか不明である。
更に、請求項7において、単にスイッチング装置によって給電を切り換えるのみで何故第1の出力電圧値、第2の出力電圧値を得ることができるのか不明(そもそも交流発電機がどの様にして第1の出力電圧値、第2の出力電圧値を得ているのか不明である)である。』


4.拒絶の理由Iについての当審の判断
(1)特許請求の範囲及び明細書には、導体数、ワイヤ数とあるが、巻線のどの様な状態のことを意味するのか定義が明確でなく不明である。【0032】には、導体数とは別にワイヤ数との単語があり、ワイヤ数と導体数は異なるものと判断できるが、両者がどの様な定義でどの様に異なるのか図面を参照しても不明である。
仮に、電気回路における各相巻線を構成するコイルの数を導体数、各相の各導体を構成するワイヤの数をワイヤ数(通常、導体数は相当たりの分岐の数を意味する。例えば、図3aの三角結線において、導体数は1、図4のように各相の導体が6本のワイヤで構成されるのであれば溝当たりのワイヤ数が6。同様に、図3cの二重三角結線において、導体数2、図4のようであれば溝当たりのワイヤ数6。)と解釈すれば、三角結線、星形結線の導体数zは常に1であり、二重三角結線、二重星形結線の導体数zは常に2であるから、請求項1、2に記載のような範囲の導体数を取り得ることはできず、したがって、導体数、ワイヤ数の意味が不明である。なお、請求人は、平成25年9月19日付意見書で、『図3eに示されている結線状態では、整流器回路の各ブリッジ分岐(それぞれ中点タップを有する2つのダイオードから成る分岐)が1つずつ導体を含み、2つずつのブリッジ分岐が同相で接続されます。したがって、図3eの結線状態では、相数は3で相当たりの導体数は2です。』と、相当たりの導体数については、上述のとおりの数を主張しているから、上述の理由で導体数、ワイヤ数の意味が不明というほかはない。
仮に、電気回路における各相巻線を構成するコイルが1つの溝の中に存在する数(相数)を導体数、各溝のワイヤの数をワイヤ数(例えば、図3aの三角結線において、平成25年1月25日付FAXのようにコイルが配置されれば、シングルスロットでもダブルスロットでも溝当たりの導体数1、図4のように各溝の導体が6本のワイヤで構成されるのであれば溝当たりのワイヤ数が6。図3cの二重三角結線において、1つの溝には二重のうちの1つの三角結線のコイルのみが配置されるからシングルスロットでもダブルスロットでも溝当たりの導体数1、図4のように各溝の導体が6本のワイヤで構成されるのであれば溝当たりのワイヤ数が6。)と解釈すれば、溝当たりの導体数zは常に1であるから、請求項1、2に記載のような範囲の導体数を取り得ることはできず、したがって、導体数、ワイヤ数の意味が不明である。
仮に、図4のように各溝の導体が6本のワイヤで構成されるのであれば溝当たりのワイヤ数が6、その際溝当たりの導体数が1、2、3、6の何れか(平成25年9月19日付意見書『図4では、それぞれの溝に6本のワイヤが収容されており、これは、図4の状態が「ワイヤ数6」であることを意味します。ご注意いただきたいのは、並列になっているワイヤの数に応じて、溝当たりの導体数1または2または3または6がありうることです。』参照)であると解釈すれば、シングルスロット星形結線で例えば溝当たりの導体数が2(14V)の場合、このように接続すれば星形が並列接続されるから(一重の)星形結線ではなくなり、請求項1、2に記載のような範囲の導体数を取り得ることはできなくなるため、溝当たりの導体数の意味が不明であり、ひいてはワイヤ数の意味が不明である。同様に、他の導体数の場合もワイヤを並列接続すれば、多重星形結線となり星形結線ではなくなるため、溝当たりの導体数の意味が不明であり、ひいてはワイヤ数の意味が不明である。
仮に、溝当たりの導体数が溝当たりのワイヤ数の誤記であるならば、溝の中のワイヤの数のみで決定されるから、請求項1、2に記載のような範囲の導体数(ワイヤ数)を取り得ることはできるが、本来の導体数はどの様な定義であってワイヤ数とどの様に異なるのか不明である。

(2)特許請求の範囲には、「所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する交流発電機」とあるが、所定の第1または第2の出力電圧値は各々安定的に出力される値か瞬間的に出力される値か判然とせず不明である。
請求項1には、「前記第1の出力電圧値が14Vのとき」とあり、第1の出力電圧値が安定した電圧値である14Vを出力することを課題としている(【0002】、【0008】等も参照)が、本願の交流発電機は車両用を前提としており(【0001】)、通常交流発電機の回転子は直接又はプーリ・ベルトを介してエンジンに接続されているから、回転子の回転数を交流発電機の出力電圧のために変化させることはできず、又、平成24年12月21日付FAXに基づけば回転子は永久磁石形も可であるから、回転子に流れる界磁電流を調整することもできないにも関わらず、どの様にして安定的な出力電圧を取り出すことができるのか原理が不明であり、解決しようとする課題をどの様に解決するのか不明であり、ひいては発明の構成が不明である。なお、請求人は、平成25年9月19日付意見書において、『つまり、2つの電圧レベルは、外部励磁型ジェネレータで励磁電流に相応に調整されるか、または、永久励磁型ジェネレータでローサイドスイッチに相応に駆動されることにより、調整されるのです。』と主張するが、当該記載内容が仮に従前より公知であったとしても、そもそも願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には当該記載は無く、現在の、明細書、特許請求の範囲及び図面にもそのような記載は無いから、請求人の上記主張は採用できない。請求項2も同様である。
特許請求の範囲には、「所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する交流発電機」とあるが、当該記載に基づけば本願の交流発電機は、第1の出力電圧値未満の電圧、第2の出力電圧値を超えた電圧は出力しないこととなるが、交流発電機で回転子回転数及び回転子界磁を何ら制御することなく、何故第1の出力電圧値未満の電圧、第2の出力電圧値を超えた電圧を出力しないのか不明である。請求項2も同様である。

(3)図1、図2において、レギュレータ2とあるが、どの様な機能を有して、どの様にして発電機を駆動制御するのか不明である。レギュレータ2は、発電機の出力線(図1において発電機1より上下方向に延びている)には接続されておらず、且つ、制御部3から信号を受けているから、回転子の制御に関するものと考えられるが、発電機の回転子界磁は巻線を用いるものだけではなく永久磁石のものも含むから、回転子巻線に流れる電流を制御してはいないこととなり、結果としてレギュレータ2の機能・制御方法が不明である。なお、請求人は、平成25年9月19日付意見書において、『本願のレギュレータ(2)は、外部励磁型ジェネレータの励磁電流を調整するための公知のジェネレータ制御回路に相当します。この制御回路の機能も当業者には以前から公知です(上掲のUS4041369をご参照ください)。』と主張するが、本願の発電機は永久磁石界磁のものも含むから、上述の理由により、請求人の上記主張は採用できない。

(4)請求項1には、「シングルスロット巻線では、三角結線で5≦z≦10,二重三角結線で5≦z≦10,星形結線で2≦z≦8,二重星形結線で2≦z≦8に選定されており、ダブルスロット巻線では、三角結線で3≦z≦6,二重三角結線で3≦z≦6,星形結線で1≦z≦5,二重星形結線で1≦z≦5に選定されている」とある。明細書には、導体数に応じて巻線配置や制御方法を変えるとの記載は無いから、導体数が変わっても同じ巻線配置や制御方法を採用できるものである。
仮に、請求人主張(平成25年9月19日付意見書参照)のように、「溝に収容されているワイヤは直列または並列のどちらにも接続できます。直列に接続されたワイヤの和が溝当たりの導体数であり、並列分岐の和が並列ワイヤ数です。よって、溝当たりのワイヤ数=並列ワイヤ数×溝当たりの導体数という関係式が成り立ちます。」(なお、この様な記載は当初明細書等には無い。)と導体数を解釈すれば、溝当たりのワイヤ数に制限はないから、ダブルスロット星形結線において各溝にワイヤが5本ある場合、当該ワイヤを1回巻して5並列であっても、当該ワイヤを5回巻して並列無し(1並列)であっても、第1の出力電圧値が14Vとなるが、ファラデーの法則から考えて、ワイヤを5回巻した場合はワイヤを1回巻して5並列の場合の5倍の電圧が発生するが、何故両者とも14Vを発生するのか不明である。多の結線も同様であり、請求項2も同様である。
仮に、溝当たりの導体数が溝当たりのワイヤ数の誤記であるとすると、ワイヤをどの様に接続しても、それとは無関係に出力電圧は溝当たりのワイヤの数に依存することとなり、ファラデーの法則を無視することとなり、何故14Vを発生するのか不明である。請求項2も同様である。
更に、請求項1と請求項2は、第1の電圧値が異なるとともに、溝当たりの導体数の範囲が異なっているが、その他の条件は異なってはいない。請求項1と請求項2では、「シングルスロット巻線では、三角結線で7≦z≦10,二重三角結線で7≦z≦10,星形結線で4≦z≦8,二重星形結線で4≦z≦8、ダブルスロット巻線では、三角結線で4≦z≦6,二重三角結線で4≦z≦6,星形結線で2≦z≦5,二重星形結線で2≦z≦5」が重なっているが、巻線配置も制御方法も異ならないにも拘わらず、何故両者は同じ導体数で、第1の出力電圧として14Vと28Vを出力できるのか不明である。

(5)請求項4記載の発明は図1に対応するものと考えられる。請求項4記載の発明は、発電機が第1の出力電圧値を発電できなくても、第1の出力電圧値より大きく第2の出力電圧値未満であればレギュレータで降圧して第1の搭載電源網負荷に第1の出力電圧を供給でき、発電機が14Vを出力する必要が無い。また、発電機が14Vを出力すると、レギュレータによって降圧(レギュレータを構成する素子自体のインピ-ダンス分で降圧する)して、第1の搭載電源網負荷に第1の出力電圧を供給できなくなる。そうすると、車両用交流発電機において14Vの定格電圧を供給するという課題(【0008】参照)が解決できないこととなり、課題をどの様に解決するのか不明であり、ひいては発明の構成が不明である。
更に、交流発電機が何故第1の出力電圧値未満の電圧、第2の出力電圧値を超えた電圧を出力しないのか不明であるため、負荷に何故第1の出力電圧の電圧、第2の出力電圧値の電圧を供給できるのか不明である。

(6)請求項7記載の発明は図2に対応するものと考えられる。請求項7記載の発明は、「所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する」としながら、第1の搭載電源網負荷および第2の搭載電源網負荷への切替はスイッチング装置で行っているから、交流発電機の出力が直接各負荷に供給されており、「第1の搭載電源網負荷への第1の出力電圧値に相当する第1の定格電圧の給電と、第1の出力電圧値よりも大きい、第2の搭載電源網負荷への第2の出力電圧値に相当する第2の定格電圧の給電とが切り換えられる」とあるように、負荷に供給されるのは、第1及び第2の出力電圧値のみであるから、交流発電機がどの様にして安定的に第1及び第2の出力電圧値を出力するのか不明であり、又、第1の出力電圧値と第2の出力電圧値との間の電圧を出力した場合、スイッチング装置はどの様に接続するのか不明である。
更に、交流発電機が何故第1の出力電圧値未満の電圧、第2の出力電圧値を超えた電圧を出力しないのか不明であるため、負荷に何故第1の出力電圧の電圧、第2の出力電圧値の電圧を供給できるのか不明である。

したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-8に記載された事項を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、又、請求項1-8に記載された事項は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、又、請求項1-8に記載された事項は、発明の詳細な説明を参照しても構成が不明であって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


5.むすび
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。


6.拒絶の理由IIIについての当審の判断
上記のとおり、本願は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないが、仮に、上記各要件を満たしているとして、次に、本願の発明の進歩性について検討する。

(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記した平成25年9月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。なお、「溝当たりの導体数z」は、平成25年9月19日付意見書の記載「溝に収容されているワイヤは直列または並列のどちらにも接続できます。直列に接続されたワイヤの和が溝当たりの導体数であり、並列分岐の和が並列ワイヤ数です。」に基づいて、「直列に接続されたワイヤの和」として検討する。


(2)引用例
これに対して、当審の拒絶の理由で引用された、特開2003-134767号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

a「固定子鉄心に巻装された多相巻線と、
前記多相巻線の各端子に接続されて、前記多相巻線に誘起される交流電圧を整流する全波整流器と、
前記多相巻線の各端子と、前記全波整流器の正極あるいは負極との間に接続された複数の第1のコンデンサと、
を備えることを特徴とする交流発電機。」(【請求項1】)

b「車両に搭載される交流発電機では、低回転でなるべく高い電圧を発生できることが重要であり、そのために磁束を増すための磁気回路の改良や、巻線回数を増やすなど、これまで様々な技術改良努力がなされてきた。特に、磁気回路を改良する改良は、現在も不断の課題として取り組まれている。また、巻線回数を増やす改良は、抵抗値やインダクタンスが増すために低速回転でも巻線量を増やして電圧を高めた割には出力が出ず、しかも、高速回転での出力が低下するという致命的な問題があった。」(【0002】)

c「〔第1の実施形態〕図1は、第1の実施形態の車両用交流発電機の結線図である。図1に示すように、本実施形態の車両用交流発電機は、電機子(図示せず)に含まれる多相巻線としての三相巻線1、回転子(図示せず)に含まれる界磁巻線2、三相全波整流器3、電圧制御装置4、コンデンサ51、52、53を含んで構成されている。
三相全波整流器3は、正極が出力端子(+B)に接続されているとともに、負極が接地されている。この三相全波整流器3は、カソード側が正極に共通に接続されているとともにアノード側が個別に三相巻線1のX、Y、Z相の各端子に接続されている3個の正ダイオード31、32、33と、アノード側が負極に共通に接続されているとともにカソード側が個別に三相巻線1のX、Y、Z相の各端子に接続されている3個の負ダイオード34、35、36とを備える。
また、コンデンサ51は、三相巻線1のX相の端子と三相全波整流器3の正極との間に、すなわち正ダイオード31と並列に接続されている。コンデンサ52は、三相巻線1のY相の端子と三相全波整流器3の正極との間に、すなわち正ダイオード32と並列に接続されている。コンデンサ53は、三相巻線1のZ相の端子と三相全波整流器3の正極との間に、すなわち正ダイオード33と並列に接続されている。
また、上述した三相巻線1の各相は、例えばコンデンサ51、52、53を設けない場合に定格回転数で14Vの電圧を発生するために8ターン(巻線回数「8」)必要であるものとすると、本実施形態ではその半分の4ターンに設定されている。また、コンデンサ51、52、53は、800μFの容量を有するものとする。なお、このような大容量の場合には電解コンデンサが用いられるが、車両用交流発電機はリップル成分が多いため、高リップル用の電解コンデンサを用いることが望ましい。」(【0014】-【0017】)

上記記載及び図面に基づけば、交流発電機は車両用であって電機子に含まれる多相巻線としての三相巻線を有しているから、ステータを有し、ステータ歯に三相の相巻線から成る交流巻線が巻き回されており、各相巻線はステータ歯のあいだに存在する溝内に位置し、各相巻線は溝当たり複数の巻線を有している。
上記記載及び図面に基づけば、交流発電機は車両用であるから、ある値の電圧を車両の搭載電源網負荷へ給電するために出力している。
上記記載及び図面に基づけば、各相の巻線回数は、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存している。

上記記載事項からみて、引用例には、
「交流発電機はステータを有し、ステータ歯に三相の相巻線から成る交流巻線が巻き回されており、各相巻線はステータ歯のあいだに存在する溝内に位置し、各相巻線は溝当たり複数の巻線を有する、
車両の搭載電源網負荷へ給電するために、ある値の電圧を出力する交流発電機において、
定格回転数における出力電圧値が14Vのとき、各相の巻線回数は、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、
星形結線で4または8に選定されている
交流発電機。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。


(3)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「三相の相巻線」、「巻線」は、それぞれ本願発明の「複数の相巻線」、「ワイヤ」に相当する。

引用発明の「車両の搭載電源網負荷へ給電するために、ある値の電圧を出力する交流発電機」と、本願発明の「車両の搭載電源網負荷へ給電するために、所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する交流発電機」は、「車両の搭載電源網負荷へ給電するために、ある値の電圧を出力する交流発電機」との概念で共通する。
引用発明の「定格回転数における出力電圧値が14Vのとき、各相の巻線回数は、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、星形結線で4または8に選定されている」と、本願発明の「前記第1の出力電圧値が14Vのとき、溝当たりの導体数zは、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、シングルスロット巻線では、三角結線で5≦z≦10,二重三角結線で5≦z≦10,星形結線で2≦z≦8,二重星形結線で2≦z≦8に選定されており、ダブルスロット巻線では、三角結線で3≦z≦6,二重三角結線で3≦z≦6,星形結線で1≦z≦5,二重星形結線で1≦z≦5に選定されている」は、「出力電圧値が14Vのとき、所定の導体数は、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、シングルスロット巻線では、星形結線で所定の数に選定されている」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「交流発電機はステータを有し、ステータ歯に複数の相巻線から成る交流巻線が巻き回されており、各相巻線はステータ歯のあいだに存在する溝内に位置し、各相巻線は溝当たり複数のワイヤを有する、
車両の搭載電源網負荷へ給電するために、ある値の電圧を出力する交流発電機において、
出力電圧値が14Vのとき、所定の導体数は、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、シングルスロット巻線では、星形結線で所定の数に選定されている
交流発電機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明は、所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力する交流発電機であるのに対し、引用発明は、ある値の電圧を出力する交流発電機であって、出力電圧値の範囲の特定がない点。
〔相違点2〕
本願発明は、第1の出力電圧値が14Vのとき、溝当たりの導体数zは、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、シングルスロット巻線では、三角結線で5≦z≦10,二重三角結線で5≦z≦10,星形結線で2≦z≦8,二重星形結線で2≦z≦8に選定されており、ダブルスロット巻線では、三角結線で3≦z≦6,二重三角結線で3≦z≦6,星形結線で1≦z≦5,二重星形結線で1≦z≦5に選定されているのに対し、引用発明は、定格回転数における出力電圧値が14Vのとき、各相の巻線回数は、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、星形結線で4または8に選定されている点。


(4)判断
相違点1について
引用発明は、定格回転数で車両用交流発電機の一般的な出力電圧値である14Vを発生するように構成されており、定格回転数時の14Vは安定的に取り出したい電圧であるから、定格回転数ではないときには、14V以外の電圧を出力することが示唆されている。また、車両用交流発電機において、所定の第1の出力電圧値と該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値を出力することは周知の事項(必要があれば特開平11-196599号公報【0003】、【0004】等参照)であって、所定の第1の出力電圧値を出力している際に、第2の出力電圧値を出力しようとすれば、電圧を所定の第1の出力電圧値から連続的に第2の出力電圧値まで上昇させることとなる。
そうであれば、引用発明において、定格電圧である所定の第1の出力電圧値14Vに加えて、上記周知の事項のように14Vより大きい電圧である第2の出力電圧値を出力できるようにして、所定の第1の出力電圧値と、該第1の出力電圧値に基づいて該第1の出力電圧値より大きく調整される第2の出力電圧値との間の電圧を出力するようにすることは、当業者が容易に考えられることと認められる。

相違点2について
本願発明の交流巻線の各相巻線の結線形態である「シングルスロット巻線では、三角結線で5≦z≦10,二重三角結線で5≦z≦10,星形結線で2≦z≦8,二重星形結線で2≦z≦8に選定されており、ダブルスロット巻線では、三角結線で3≦z≦6,二重三角結線で3≦z≦6,星形結線で1≦z≦5,二重星形結線で1≦z≦5」は、1つの交流発電機は1つの結線形態しか取り得ないから、シングルスロット巻線又はダブルスロット巻線の、溝当たりの導体数のうち何れか1つの溝当たりの導体数となればよい。
引用発明のような三相発電機において、各相巻線は三相出力を得るためには120°ずつずれて配置される。また、シングルスロット巻線又はダブルスロット巻線の結線形態は、交流発電機において一般的な結線形態(必要があれば、当審の拒絶の理由で挙げた、特開平4-8149号公報、特開平11-164506号公報等参照。)である。
そうすると、引用発明において、シングルスロット巻線又はダブルスロット巻線を採用することは、引用例に記載されているに等しいか、又は、引用発明において当業者であれば適宜選択し得る程度のことであり、したがって、各相の巻線回数は、各相のワイヤ数に等しくなる。
そうであれば、引用発明において、各相の巻線回数が、星形結線で4または8であることは、溝当たりの導体数zが、交流巻線の各相巻線の結線形態に依存して、シングルスロット巻線で、星形結線で4または8であることとなり、本願発明の「シングルスロット巻線では、星形結線で2≦z≦8」の条件を満たすこととなるから、相違点2は、引用例に記載されているに等しいか、又は、引用発明において当業者であれば適宜選択し得る程度のことと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


(5)むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-20 
結審通知日 2014-02-24 
審決日 2014-03-10 
出願番号 特願2007-528807(P2007-528807)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H02K)
P 1 8・ 536- WZ (H02K)
P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 泰典  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 槙原 進
田村 嘉章
発明の名称 交流発電機  
代理人 二宮 浩康  
代理人 久野 琢也  
代理人 高橋 佳大  
代理人 星 公弘  
代理人 篠 良一  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ