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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1290185 |
審判番号 | 不服2013-20395 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-10-21 |
確定日 | 2014-08-12 |
事件の表示 | 特願2008-156809「プリズムシート」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月24日出願公開,特開2009-300870,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成20年6月16日の出願であって,平成24年10月18日付けで拒絶理由が通知され,同年12月20日に意見書及び手続補正書が提出され,平成25年1月17日付けで拒絶理由が通知され,同年3月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年7月19日付けで拒絶査定がなされたところ,同年10月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 なお,請求人は,当審における平成26年1月10日付けの審尋に対して,同年3月6日に回答書を提出している。 第2 補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成25年10月21日提出の手続補正書による手続補正を却下する。 〔理由〕 1 補正の内容 平成25年10月21日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,同年3月18日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲及び明細書について補正しようとするもので,そのうち,請求項1に係る補正については次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。) (1)本件補正前の請求項1 「基材層と,該基材層の一方の面に形成された光拡散層とを有する光拡散フィルムと,該光拡散フィルムの基材層側に,高さ15?75μm,プリズム頂角45?75°,ピッチ10?70μmのプリズム列が形成されたプリズム層を有するプリズムシートであって, 前記光拡散層の表面に,局部山頂間の平均間隔Sが12?20μm,凹凸間ピッチSmが30?50μm,算術平均粗さRaが0.3?1μm,十点平均粗さRzが1.5?4μm,算術平均傾斜角RΔaが5?15°の凹凸が形成され, 前記凹凸は,ブラスト加工により形成された凹凸パターンが転写されたものであり, 前記光拡散フィルムは,下記測定方法Aにより求められる視認限界が,250μmを超え350μm以下であり, 前記光拡散フィルムは,下記測定方法Bにより求められるピーク輝度の相対値が0.4以上であるプリズムシート。 <測定方法A> 縞模様が印刷されたMTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)を面光源装置上に載置し,前記MTF測定用チャートに光拡散フィルムを載置する。この際,基材層側の面が前記MTF測定用チャートに面するように前記光拡散フィルムを載置する。 光源を点灯し,前記光拡散フィルムを通して,目視で前記縞模様を確認する。 前記縞模様のラインピッチを視認できない場合を視認不可とし,視認不可のラインピッチの値が最も大きいものを視認限界とする。 <測定方法B> 半値全幅が17°で,出射光ピーク角度が法線(0°±5°)に位置し,かつ,単一ピーク出射光分布特性を有する指向性面光源装置から発光された光を,光拡散フィルムを透過させた後の面光源装置の中央から法線方向に50cm離した受光部(株式会社トプコン製,商品名:BM-7)で測定した輝度(α)を測定する。 光拡散フィルムに代えて基材層のみを用いて輝度(β)を測定し,下記式により相対ピーク輝度を求める。 相対ピーク輝度=α÷β」 (2)本件補正後の請求項1 「基材層と,該基材層の一方の面に形成された光拡散層とを有する光拡散フィルムと,該光拡散フィルムの基材層側に,高さ15?75μm,プリズム頂角45?75°,ピッチ10?70μmのプリズム列が形成されたプリズム層を有するプリズムシートであって, 前記光拡散層の表面に,局部山頂間の平均間隔Sが12?20μm,凹凸間ピッチSmが30?50μm,算術平均粗さRaが0.3?1μm,十点平均粗さRzが1.5?4μm,算術平均傾斜角RΔaが5?15°の凹凸が形成され, 前記凹凸は,ブラスト加工により形成された凹凸パターンが転写されたものであり, 前記光拡散フィルムは,下記測定方法Aにより求められる視認限界が,250μmを超え357μm以下であり, 前記光拡散フィルムは,下記測定方法Bにより求められるピーク輝度の相対値が0.4以上であるプリズムシート。 <測定方法A> 縞模様が印刷されたMTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)を面光源装置上に載置し,前記MTF測定用チャートに光拡散フィルムを載置する。この際,基材層側の面が前記MTF測定用チャートに面するように前記光拡散フィルムを載置する。 光源を点灯し,前記光拡散フィルムを通して,目視で前記縞模様を確認する。 前記縞模様のラインピッチを視認できない場合を視認不可とし,視認不可のラインピッチの値が最も大きいものを視認限界とする。 <測定方法B> 半値全幅が17°で,出射光ピーク角度が法線(0°±5°)に位置し,かつ,単一ピーク出射光分布特性を有する指向性面光源装置から発光された光を,光拡散フィルムを透過させた後の面光源装置の中央から法線方向に50cm離した受光部(株式会社トプコン製,商品名:BM-7)で測定した輝度(α)を測定する。 光拡散フィルムに代えて基材層のみを用いて輝度(β)を測定し,下記式により相対ピーク輝度を求める。 相対ピーク輝度=α÷β」 2 新規事項の追加について (1)請求項1に係る本件補正について 前記1で記載した請求項1に係る本件補正は,本件補正前の請求項1の発明特定事項である光拡散フィルムの視認限界の数値範囲について,その上限を350μmから357μmに変更しようとするものである。 (2)本願明細書等の記載 ア 本願の願書に最初に添付された(以下「出願当初」という。)明細書及び特許請求の範囲には,光拡散フィルムの視認限界の数値範囲について,次の記載がある。 (ア)「【請求項1】 ・・・(中略)・・・該パターンに対する視認限界が,250μmを超え350μm以下であり, ・・・(中略)・・・光拡散フィルム。」 (イ)「【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の光拡散フィルムは,・・・(中略)・・・該パターンに対する視認限界が,250μmを超え350μm以下であり,・・・(中略)・・・ことを特徴とする。」 (ウ)「【0012】 光拡散フィルム10の視認限界は,250μmを超え350μm以下であり,好ましくは275?350μmである。250μm以下であると,欠陥を隠す能力(隠蔽性)が低く,光拡散フィルム10近傍の欠陥,例えば,プリズムシートのプリズム列表面等の欠陥の視認性を低減することができない。350μmを超えると,輝度が著しく低下する傾向にある。 【0013】 視認限界について,図2,3を用いて説明する。図2は,視認限界を測定するための縞模様パターン20の平面図である。図3は,光拡散フィルム10の視認限界の測定方法を説明するための配置図である。 図2に示す通り,縞模様パターン20は,透光性の部材である透光性シート22に,幅を持った複数の黒色の直線(黒色線)24が等間隔で配置され,縞模様が表されている。黒色線24の幅W1と,その配置間隔であるW2とは等しく,幅W1とW2との和をラインピッチW(μm)とする。視認限界の測定は,例えば,縞模様パターン20として,ラインピッチWの異なる複数種の縞模様が印刷されたMTF測定用チャート(NBS1963A 解像力ターゲットポジ,エドモンド・オプティクス社製)を用いて行う。 【0014】 視認限界の測定方法について,図3を用いて説明する。視認限界の測定は,図3に示すように,光拡散フィルム10の基材層14側の面15と,縞模様パターン20の黒色線24が形成されていない面とが面するように,縞模様パターン20を配置する。そして,縞模様パターン20側に面光源装置26を配置し,面光源装置26から光Aを照射し,光拡散層12の面13側から目視にて縞模様を観察する。 縞模様の観察は,面13側から,ラインピッチWの異なる複数種の縞模様を順次観察する。観察結果は,縞模様の輪郭が鮮明,即ち,黒色線22とその配置間隔とを視認できる場合を視認可能とし,縞模様の輪郭が不鮮明,即ち,黒色線22とその配置間隔とを視認できない場合を視認不可とする。そして,視認不可と判定した縞模様の中で,ラインピッチWの値が最も大きいものをもって視認限界とする。例えば,ラインピッチWが200μmより広い縞模様は「視認可能」であり,ラインピッチWが200μm以下の縞模様は「視認不可」であった場合,視認限界は,視認不可のラインピッチWの値の中の最大値である200μmと判定する。得られた視認限界の値が大きいほど,黒色線24の配置間隔が粗な縞模様の輪郭を不鮮明にできるため,光拡散シート10の隠蔽性が高いことになる。」 (エ)「【0056】 <視認限界の測定> 視認限界の測定は,半値全幅が17°で,出射光ピーク角度が法線(0°±5°)に位置し,かつ,単一ピーク出射光分布特性を有する14.1インチサイズの全反射形プリズムシート(S268YK,三菱レイヨン株式会社製)を使用した指向性面光源装置を用いて行った。面光源装置上に縞模様パターンとして,MTF測定用チャート(NBS1963A 解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)を縞模様が形成されている面を前記面光源装置側として載置し,この上に実施例1?5,比較例1?4で得られた光拡散フィルムをその基材層側の面が,前記MTF測定用チャートに面するように載置した。次いで,光源を点灯し,光拡散フィルムを通して目視で確認し,視認限界を測定した。視認限界は縞模様のラインピッチの値(μm)で表した。」 ・・・(中略)・・・ 【0060】 【表1】 」 イ 前記ア(ア)ないし(ウ)の記載中では光拡散フィルムの視認限界の数値範囲の上限が350μmであることが示されているが,350μm以外の他の上限値については記載も示唆もされていない。 また,前記ア(エ)の【0060】の【表1】に示された実施例1ないし実施例5の視認限界の値は,それぞれ,「263.2」,「277.8」,「256.0」,「256.0」,「333.3」であって,いずれも,350μmという前記(2)アないしウの記載中に示された視認限界の数値範囲の上限と整合している。 以上からすると,出願当初の明細書等には,光拡散フィルムの視認限界の数値範囲について,その上限値が350μmであることが記載されているのみであって,「357μm」という上限値については記載も示唆もされていないといわざるを得ない。 (3)請求人の主張について ア 請求人は,本件補正の根拠について,審判請求書の【請求の理由】の欄の「【本願発明が特許されるべき理由】」「2.補正の根拠の明示」において, 「別途提出の手続補正書に記載した通り,請求項1として,視認限界の上限「350μm」を「357μm」とした。これは,明らかな誤記を訂正するものである。「350μm」が「357μm」の誤記であることを,資料1(メレスグリオ株式会社のカタログの「分解能テストターゲット」),資料2(ソーラボジャパン株式会社のカタログの「テストターゲットとステージ用マイクロメータ」)を参照して説明する。 資料1に示すMTFチャート(NBSテストターゲット)は,5本の黒色線が横に並んだパターンと5本の黒色線が縦に並んだパターンとで,1つのグループが構成されている。各グループにおいて,1つの黒色線と1つのラインピッチとでラインペアを形成しており,1mm当たりのラインペアの数が空間周波数である。なお,資料1のMTFチャートには,空間周波数を1.0,1.1・・・・・10としたグループが形成されている。 資料2の2頁の下段の表には,MTFチャート(NBS1963A)の空間周波数(表中のCycles/mm)とラインピッチ(表中のCycle Size)との関係が記載されている。資料2の2頁の下段の表の通り,NBS1963Aにはラインピッチ「350μm」となる空間周波数はなく,空間周波数2.8においてラインピッチが「357μm」となる。即ち,ラインピッチが350μmであることはあり得ず,補正前の視認限界の上限値「350μm」は,空間周波数2.8のラインピッチ「357μm」の誤記であることが自明である。 上記請求項の補正に伴い,明細書の関連する箇所を補正した(段落0008,0009,0012,0039,0061)。 従って,本補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。」 と主張するとともに,前記記載中の「資料1」としてインターネット<http://www.cvimgkk.com/products/pdf/cvimgkk/cvimgkk24/cvimgkk-24_20.pdf>の印刷物を,「資料2」としてインターネット<http://www.thorlabs.co.jp/NewGroupPage9_PF.cfm?Guide=10&Category_ID=220&ObjectGroup_ID=4338>の印刷物を提出し,さらに,平成26年3月6日提出の回答書の【回答の内容】の欄の「3.本願が特許されてしかるべき理由」「(1)指摘事項Aについて」において, 「審査官殿は,「NBA1963A(そもそも,これも例示されているだけであり,視認限界の上限値を350μmとする際にNBS1963Aが用いられていたかどうかは不明であるが)の空間周波数から,ラインピッチが飛び飛びの値を取り,ラインピッチが350μmであることはあり得無いと言うことは理解し得るにしても,これがもともと空間周波数2.8のもの,すなわちラインピッチが「357μm」であったものを示していたの誤記であることを示す根拠は全くなく,「350μm」は,空間周波数2.8のラインピッチ「357μm」の誤記であることがただちに言えることは無い。」と指摘されました。 しかしながら,本願の出願当初明細書の段落0056に記載されている通り,実施例において,「NBA1963A」を用いた測定方法Aによって視認限界を定めています。即ち,本願発明1における視認限界が,「NBA1963A」を用いた測定方法により定められたことは明らかです。 審判請求書に示した資料1?2の通り,「NBA1963A」における空間周波数2.8の前後の空間周波数は2.5(ラインピッチ400μm)と3.2(ラインピッチ313μm)です。空間周波数2.8以外に,ラインピッチ「357μm」を「350μm」と見誤る要素はありません。 即ち,ラインピッチ「350μm」がラインピッチ「357μm」の誤記であることは明らかです。 従いまして,審判請求時にした補正は,本願の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであり,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではありません。」 と主張している。 要するに,前記請求人の主張は,出願当初明細書に記載された「MTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)」(前記(2)ア(エ)参照)を用いて測定した視認限界の値が「350μm」となることはないから,本件補正前の請求項1や明細書に記載された視認限界の数値範囲の上限値である「350μm」が誤記であり,正しくは「357μm」であることが技術常識から自明であるというものである。 イ そこで,前記アの請求人の主張について検討する。 「資料2」の2ページにおける「NBS1963Aターゲット」と題された欄には,「これらのターゲットでは,5本の垂直線と5本と(審決注:「5本の」の誤記)水平線がペアになっています。これらのペアは1.0サイクル/mmから18.0サイクル/mmまであります。認識できる最小の線(最大のサイクル/mm)がそのイメージングシステム上で認識できる最高の解像度です。下の表は,当社のNBS1963Aターゲットが対応できるサイクル/mmの数値とサイクルサイズ(線幅はサイクルサイズの半分)への変換のリストです。」と記載されるとともに,当該記載の下方には各「Cycles/mm」に対応する「Cycle Size」の値を示す表が掲載されており,当該表は次のとおりである。 資料2の前記表は,ソーラボジャパン株式会社製のNBS1963Aターゲットのサイクルサイズを示すものであって,本願の出願当初明細書に記載された「MTF測定用チャート(NBS1963A 解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)」(前記(2)ア(エ)参照)そのものではないものの,そもそも「NBS1963A」とは,NBS(米国標準局)の規格である1963A解像力パターンのことを指していることが明らかであり,ソーラボジャパン株式会社製の「NBS1963Aターゲット」もエドモンド・オプティクス社製の「NBS1963A」もその名称からみてNBSの規格である前記1963A解像力パターンに準拠したものであることが明らかだから,本願の出願当初明細書に記載された「MTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)」に描かれた複数種の縞模様における各サイクル/mmの値は,資料2の前記表に示された値と同じであると推認できる。 そうすると,資料2の前記表からみて,「MTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)」を用いて測定した視認限界の値は,本願の出願当初明細書に記載された数値範囲である「250μmを超え350μm以下」の近傍では,357μm,313μm,278μm,250μm及び222μmのいずれかの値となり,請求人が指摘するように,350μmという値になることはないといわざるを得ない。 しかしながら,離散的な値しか取り得ない視認限界の数値範囲を定めるに際して,その上限値を,視認限界が取り得る離散的な値のいずれかとしなければならない技術的な理由は見当たらない。 また,そもそも,本願の出願当初明細書の【0013】の「視認限界の測定は,例えば,縞模様パターン20として,ラインピッチWの異なる複数種の縞模様が印刷されたMTF測定用チャート(NBS1963A 解像力ターゲットポジ,エドモンド・オプティクス社製)を用いて行う。」という記載によれば,「MTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)」は視認限界の測定で用いる縞模様パターンの例として記載されているのであって,本願の出願当初明細書には,視認限界の測定で用いる縞模様パターンとして任意のものを採用できることが示唆されていたというべきである。すなわち,出願当初明細書に記載された視認限界の測定においては,350μmというサイクルサイズの縞模様が描かれた縞模様パターンを用いて視認限界を測定することも可能だったのである。そして,視認限界の数値範囲の上限値をある特定の縞模様パターンが取り得る離散的な値のいずれかに設定したとしても,当該値が他の縞模様パターンが取り得る離散的な値のいずれかにならないこともあるのだから,この点からも,視認限界の数値範囲を定めるに際して,その上限値を,「MTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)」を用いて測定した視認限界が取り得る離散的な値のいずれかとしなければならない理由は存在しないというべきである。 さらに,本願の出願当初明細書の【0060】の【表1】(前記(2)ア(エ)参照。)に,比較例を含め,「MTF測定用チャート(NBS1963A,解像力ターゲットポジ,厚さ1.5mm,エドモンド・オプティクス社製)」を用いて視認限界を測定した結果,あり得ないはずの「350μm」という値になったことが示されているわけでもない。 以上によれば,本願の出願当初明細書及び特許請求の範囲に記載された「250μmを超え350μm以下」という視認限界の数値範囲について,その上限値である「350μm」を明らかな誤記とすべき理由は存在しないから,請求人の主張を採用することはできない。 (4)まとめ 前記(2)及び(3)のとおりであるから,請求項1に係る本件補正が,本願の出願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるとすることはできない。 したがって,請求項1に係る本件補正は,本願の出願当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものでなく,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1及び2に係る発明は,平成25年3月18日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。 そして,本願については,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-07-30 |
出願番号 | 特願2008-156809(P2008-156809) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G02B)
P 1 8・ 561- WY (G02B) P 1 8・ 536- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井海田 隆 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
清水 康司 鉄 豊郎 |
発明の名称 | プリズムシート |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 鈴木 三義 |