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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65G
管理番号 1290195
審判番号 不服2014-631  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-01-14 
確定日 2014-08-22 
事件の表示 特願2009-238190「搬送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日出願公開、特開2011- 84364、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月15日の出願であって、平成24年5月8日付けで拒絶理由通知がされ、平成24年7月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成25年2月22日付けで再度拒絶理由通知がされ、平成25年4月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年10月8日付けで拒絶査定がされ、平成26年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成25年4月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成24年7月2日に提出された手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「 【請求項1】
上部が対象物を搬送する方向に沿うようにして無端回転し、上部に載置された対象物を搬送する搬送体と、搬送される対象物を両側から係止する一対の係止体とを備え、搬送体には、棒状に形成された複数の対象物がその長手方向を搬送方向に沿うようにして載置される搬送装置において、
各係止体は、搬送体の上方に配置されると共に、側部で対象物を係止すべく、側部が対象物を搬送する方向に沿うように搬送体が無端回転する方向と直交する方向で無端回転し、さらに、搬送体との間から対象物が抜け出るのを防止すべく、当該側部の下端側が搬送体に幅方向両側位置で入り込むように配置されることを特徴とする搬送装置。」


第3 原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1には、上部が対象物を搬送する方向に沿うようにして無端回転し、上部に載置された対象物を搬送するローラコンベア23(搬送体)と、搬送される対象物を両側から係止する一対のサイドベルト(係止体)とを備える搬送装置において、各係止体は、搬送体の上方に上下方向に沿って配置されると共に、側部で対象物を係止すべく、側部が対象物を搬送する方向に沿うように搬送体が無端回転する方向と直交する方向であって、互いに接離可能な方向に無端回転する搬送装置が記載されている(第6頁第10行-素第9頁第17行,第1-4図等を参照)。
引用文献2には、整列コンベア4aを構成する遊転ローラ間10の間に係合して連動回動するための係合ピン11dの突設されたガイド機構11が記載されている。
引用文献3には、複数の幅寄せブロック2により被被搬送物が係止されることが記載されている(段落【0010】-【0017】,図1-6等を参照)。
引用文献4には、規制手段3,10が記載されている(段落【0021】-【0041】,図1-4等を参照)。
そして、引用文献1-4に記載の発明を組み合わせることは、当業者が容易になし得たことである。その他発明特定事項については、引用文献1-4に記載され、又は、顕著な効果を奏するものとは認められず、引用文献1-4に記載された発明から当業者が容易になし得た事項の範疇にとどまるものである。

引 用 文 献 等 一 覧
1.実願昭60-143638号(実開昭62-052104号)のマイクロフィルム
2.特開平04-032410号公報
3.特開2001-204368号公報
4.特開2001-310816号公報


第4 当審の判断
1.引用文献に記載された発明
(1-1)本願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-143638号(実開昭62-52104号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「本考案は、上記の点に鑑み例えばねぎのように両端の太さの異なる細長い被包装物を腰折れなく包装できる装置を提供することを目的とするものである。」(第3ページ第20行ないし第4ページ第3行)

イ.「本考案の実施例を第1図ないし第4図に基づき説明する。
・・・(中略)・・・
本考案が従来品と異なる特徴を備えるのは供給コンベア(14)の構造にある。すなわち、該供給コンベヤはフレーム(20)にチエンホイル(21)(22)を介してローラコンベヤベルト(23)を支持すると共に、該ローラコンベヤベルトに多数のアタツチメント(24)(24)・・・を一定の間隔で設けて形成している。より詳しくは第3図及び第4図に示すように、両側のチエンホイル(21)(21)、(22)(22)の周りにそれぞれ張設した1対のエンドレス状のチエン(25)(25)間に多数のローラ(26)(26)・・・を回転自在に支持すると共に、各ローラ(26)・・・の間に一定間隔でアタッチメント(24)を設けてコンベヤベルトを形成する。
・・・(中略)・・・。」(第6ページ第10行ないし第8ページ第7行)
ウ.「前記供給コンベヤ(14)は後端のホイル(21)に加えられる動力によつて一定速度でもつて連続的に回転(第1図で時計回り)し、・・・(中略)・・・また前記分配コンベヤ(30)の下側には供給コンベヤの軌道に沿つて第2図に示す如く1対のサイドベルト(40)(40)を設けている。両サイドベルトは前端の内巾を大きくして青果物を受け入れやすくし、後端の内巾を小さくして青果物の横幅を狭めるように前方へ運搬するようにしている。・・・(中略)・・・。」(第8ページ第8行ないし第9ページ第17行)

(1-2)ここで、上記(1-1)ア.ないしウ.及び図面から、次のことが分かる。

エ.上記ア.ないしウ.並びに第1図ないし第4図の記載から、供給コンベヤ(14)は、ねぎ等の細長い青果物を運搬するものであることが分かる。

オ.上記ア.ないしウ.並びに第1図ないし第4図の記載から、供給コンベヤ(14)は、上部が青果物を運搬する方向に沿うようにして、両側のチエンホイル(21)(21)、(22)(22)の周りにそれぞれ張設した1対のエンドレス状のチエン(25)(25)間に多数のローラ(26)(26)・・・を回転自在に支持し、上部に載置された青果物を運搬するローラコンベアベルト(23)と、運搬される青果物の横幅を狭める一対のサイドベルト(40)(40)とを備え、ローラコンベアベルト(23)には、細長い青果物がその長手方向を運搬方向に沿うようにして載置されていることが分かる。

カ.上記ア.ないしウ.並びに第1図ないし第4図の記載から、各サイドベルト(40)(40)は、ローラコンベアベルト(23)の上方に配置されると共に、サイドベルトで青果物の横幅を狭めるべく、サイドベルトが青果物を運搬する方向に沿うようにローラコンベアベルト(23)が回転する方向と直交する方向で回転していることが分かる。

キ.上記ア.ないしウ.並びに第1図ないし第4図の記載から、「ローラコンベアベルト(23)」及び「各サイドベルト(40)(40)」は、それぞれ無端回転していることが分かる。

(1-3)上記(1-1)及び(1-2)より、引用文献1には、次の発明が記載されている。

「上部が青果物を運搬する方向に沿うようにして無端回転し、上部に載置された青果物を運搬するローラコンベアベルト(23)と、運搬される青果物の横幅を狭める一対のサイドベルト(40)(40)とを備え、ローラコンベアベルト(23)には、細長い青果物がその長手方向を運搬方向に沿うようにして載置される供給コンベヤ(14)において、
各サイドベルト(40)(40)は、ローラコンベアベルト(23)の上方に配置されると共に、サイドベルトで青果物の横幅を狭めるべく、サイドベルトが青果物を運搬する方向に沿うようにローラコンベアベルト(23)が無端回転する方向と直交する方向で無端回転している供給コンベヤ(14)。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

(2-1)本願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-32410号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ク.「〔産業上の利用分野〕
本発明は、人参、大根等の作物を搬出するための装置に関し、詳しくは、無端回動帯外周面に所定ピッチ毎に係止突起を突設した搬送コンベアを、作物貯留部の底部に沿って作物を係止搬送する底部搬送経路と、これに連なって前記各係止突起に一個づつ作物を載置した状態で上方に持上げ搬送する持上げ搬送経路とを有する状態で配設してある作物搬出装置に関する。」(第1ページ左下欄第17行ないし同ページ右下欄第5行)

ケ.「前記整列搬送部(4)は、搬出装置(3)から供給された横向き姿勢の長物野菜(a)を横向き姿勢のままで搬送する整列コンベア(4a)を備え、その終端部分には、整列コンベア(4a)の終端部から落下供給される横向き姿勢の長物野菜(a)を縦向き姿勢に変更する流下案内部(8)を設けてある、第4図及び第5図に示すように、整列コンベア(4a)は、左右一対の無端チェーン(9),(9)に亘って所定ピッチ毎に遊転ローラ(10)を並列架設して構成してあり、この整列コンベア(4a)の一側部には、載置作物を幅方向一定領域内に寄せ集めるガイド機構(11)を備えである。このガイド機構(11)は縦軸芯を有する一対のプーリ(lla),(llb)を幅方向に傾斜させて配置し、これらに亘って無端ベルト(l1c)を張設し、このベルト(l1c)に前記各遊転ローラ(10)間に係合して、連動回動するための係合ピン(l1d)を突設してある。」(第2ページ左下欄第2行ないし同ページ同欄第19行)

(2-2)ここで、上記(2-1)ク.及びケ.並びに図面から、次のことが分かる。

コ.上記ク.及びケ.並びに第4図及び第5図の記載から、引用文献2に記載された発明は、人参、大根等の作物を搬出するための作物搬送装置であることが分かる。

サ.上記ク.及びケ.並びに第4図及び第5図の記載から、ガイド機構(l1)は、整列コンベア(4a)と連動回動するために、無端ベルト(l1c)に突設した係合ピン(l1d)が整列コンベア(4a)に幅方向片側位置で係合するように配置されていることが分かる。

(2-3)上記(2-1)及び(2-2)より、引用文献2には、次の発明が記載されている。

「ガイド機構(l1)は、整列コンベア(4a)と連動回動するために、無端ベルト(l1c)に突設した係合ピン(l1d)が整列コンベア(4a)に幅方向片側位置で係合するように配置された作物搬送装置。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

(3-1)本願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-204368号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の発明が記載されている。

「複数の幅寄せブロック2により被被搬送物が係止される麺幅寄せ装置。」(以下、「引用文献3記載の発明」という。)

(4-1)本願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-310816号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の発明が記載されている。

「部品を後端規制部材との間で位置決めする物品の位置決め方法及びその装置。」(以下、「引用文献4記載の発明」という。)

2.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「青果物」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本願発明における「対象物」に相当し、以下同様に、「運搬」は「搬送」に、「ローラコンベアベルト(23)」は「搬送体」に、「横幅を狭める」は「両側から係止する」に、「サイドベルト(40)(40)」は「係止体」に、「細長い青果物」は「棒状に形成された対象物」に、「供給コンベヤ(14)」は「搬送装置」に、「サイドベルト」は「側部」にそれぞれ相当する。
したがって、本願発明と引用文献1記載の発明は、
「上部が対象物を搬送する方向に沿うようにして無端回転し、上部に載置された対象物を搬送する搬送体と、搬送される対象物を両側から係止する一対の係止体とを備え、搬送体には、棒状に形成された対象物がその長手方向を搬送方向に沿うようにして載置される搬送装置において、
各係止体は、搬送体の上方に配置されると共に、側部で対象物を係止すべく、側部が対象物を搬送する方向に沿うように搬送体が無端回転する方向と直交する方向で無端回転する搬送装置。」 である点で一致し、次の点において相違する。

〈相違点〉
「対象物」に関して、本願発明においては、複数であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、複数か否か不明である点(以下、「相違点1」という。)。

「係止体」に関して、本願発明においては、「搬送体との間から対象物が抜け出るのを防止すべく、当該側部の下端側が搬送体に幅方向両側位置で入り込むように配置される」のに対して、引用文献1記載の発明においては、そのような構成を有さない点(以下、「相違点2」という。)。

3.判断
上記相違点1及び2について検討する。
・相違点1について
引用文献1記載の発明において、対象物(青果物)を複数とすることを妨げる特段の事情もなく、また、引用文献1に記載された搬送装置は、対象物(青果物)が複数である場合も機能するものと考えられる。
してみると、引用文献1記載の発明において、対象物(青果物)を複数とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

・相違点2について
本願発明と引用文献2記載の発明を対比すると、引用文献2記載の発明における「ガイド機構(l1)」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明の「係止体」に、以下同様に、「整列コンベア(4a)」は「搬送体」に、「無端ベルト(l1c)に突設した係合ピン(l1d)」は「当該側部の下端側」に、「係合する」は「入り込む」に、それぞれ相当するので、引用文献2記載の発明を本願発明の用語で表現すると、「係止体は、搬送体と連動回動するために、当該側部の下端側が搬送体に幅方向片側位置で入り込むように配置される技術。」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)ということができる。
ここで、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項と引用文献2記載の技術を対比すると、「係止体は、当該側部の下端側が搬送体に幅方向片側位置で入り込むように配置される」点は一致するが、「搬送体との間から対象物が抜け出るのを防止すべく」という点、及び「幅方向両側位置」という点については相違する。
そして、係止体と搬送体との間から対象物が抜け出るのを防止するために、「当該側部の下端側が搬送体に幅方向両側位置で入り込むように配置」した本願発明に対して、係止体を搬送体と連動回動させるために、「当該側部の下端側が搬送体に幅方向片側位置で入り込むように配置」した引用文献2記載の技術とでは、その目的が異なり、目的が異なることに関連して、本願発明においては「幅方向両側位置」に対して、引用文献2記載の技術においては「幅方向片側位置」というように、その配置位置も異なる。その結果、「対象物が抜け出るのを防止する」効果があるとはいえないので、相違点2に係る本願発明の発明特定事項については、引用文献2記載の発明から容易に発明することができたとはいえない。
なお、相違点2に係る本願発明の発明特定事項については、他の引用文献3及び4記載の発明から導き出すことはできないし、周知技術ともいえない。
そして、本願発明は、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を有することにより引用文献1ないし4記載の発明の効果とは異なる効果(本願明細書の段落【0011】参照。)を奏するものである。
してみると、本願発明は、当業者が引用文献1ないし4記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。


4.本願の請求項2ないし4に係る発明について
本願の請求項2ないし4に係る発明は、本願発明の発明特定事項を全て有していることから、本願発明と同様に、引用文献1ないし4記載の発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1ないし4記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-08-05 
出願番号 特願2009-238190(P2009-238190)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日下部 由泰  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
林 茂樹
発明の名称 搬送装置  
代理人 北田 明  
代理人 藤本 昇  

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