• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10K
管理番号 1290291
審判番号 不服2013-20552  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-23 
確定日 2014-07-30 
事件の表示 特願2008-125352「風鈴及び風鈴型の卓上ベル」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-276408〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成20年5月13日の出願であって、平成25年4月3日付けの拒絶理由通知に対して同年6月27日付けで手続補正がなされたが、同年7月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

1 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴型ベル本体と、前記風鈴型ベル本体の上部に凹形状の花器からなる金属製の共鳴体を一体に有し、卓上に起立可能であることを特徴とする花器型ベル。」

2 引用例、周知例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「Design Studio CRAC Product Wind Vase 2,日本,Design Studio CRAC,2007年 7月 4日(URL内20070704214517参照),検索日2013/04/03,URL,http://web.archive.org/web/20070704214517/http://www.designstudiocrac.com/WindV2.htm」(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。




なお、写真下部に記載された事項を次に再掲する。
「Wind Vase
玄関先を想定して、風を迎え入れる風鈴と、人をもてなす一輪差しを、手葺きガラスの筒で一つにしたもの。吊り下げ用のシリコンで上下に区切り、ガラスの上部には水を蓄え、下の風鈴はガラスらしい澄んだ音を響かせる。
2002/Prototype
制作協力/FRESCO 辻野剛」

(ア)引用例1記載の「風を迎え入れる風鈴」は、風鈴に関する技術常識及び引用例1の写真に示された形状を考慮すると、「下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴」ということができる。

(イ)引用例1記載の「一輪差し」は、上記「ガラスの上部には水を蓄え、下の風鈴は‥‥‥」との記載、及び引用例1の写真に示された、上方が開口する円錐状の形状から、「風鈴の上部に、上方が開口する円錐形状の一輪差しが設けられる」ということができる。

(ウ)引用例1の「風を迎え入れる風鈴と、人をもてなす一輪差しを、手葺きガラスの筒で一つにしたもの。」との記載から、引用例1記載の「風鈴」は、「風鈴と一輪差しをガラスの筒で一つにした風鈴」ということができる。

(エ)引用例1記載の「風を迎え入れる風鈴」は、風鈴に関する技術常識及び引用例1の写真に示された、下方の開口部周縁の形状を考慮すると、「風鈴の開口部周縁は、風鈴の中心軸に垂直の平面上にある」ものということができる。

したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

「下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴と、風鈴の上部に、上方が開口する円錐形状の一輪差しが設けられ、風鈴と一輪差しをガラスの筒で一つにし、風鈴の開口部周縁は、風鈴の中心軸に垂直の平面上にある、風鈴。」


(2)本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「J-Net21中小企業ビジネス支援サイト あなたのビジネスを、公的機関がバックアップ 中小機構」「地域資源活用チャンネル」「デザインを入り口に、産地伝統の技術を盛り上げる」,URL,http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/nintei/ に2008年3月21日にアップデートされた、http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/nintei/nousaku.html」(以下、周知例1という。)には、以下の事項が記載されている。

(「「うちにもできる」が新分野への一大転機に
(中略)1916(大正5) 年創業の株式会社 能作も、茶器や仏具、花器などの受託鋳造を行ってきた。(中略)
しかし現在、デザインに敏感な人の間で話題を呼んでいる同社の商品は“風鈴”。真鍮にメッキを施しただけの材質感、心を震わす新鮮な音色。発売4 年を経過し、人気は上る一方だ。
(中略)展覧会用に作った卓上ベルが有名セレクトショップで扱われることに。しかしそのベルは当初は売れず「店員の方から“これ風鈴にしたら”とアドバイスを頂いて、変更したら一気に」。今までの累計で2万3000個余りを販売。(後略))」









(中略)


(後略)


(3)本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭59-65523号(実開昭60-178899号)のマイクロフィルム(昭和60年11月27日公開)(以下、周知例2という。)には、以下の事項が記載されている。

(a)「3.考案の詳細な説明
本考案は、風鈴兼用卓上鈴置物に関するもので卓上の呼鈴として、または季節により風鈴として用いられる」(1頁9?12行)
(b)「本願物品の材質は音色のよい磁器でよいばかりか、青銅や鉄鋳物などの金属製品であってもよいのはいうまでもないことである。」(3頁1?3行)


3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(A)引用発明の「下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴」は、本願発明の「下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴型ベル本体」と、「下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴型本体」である点で共通する。

(B)引用発明の「風鈴の上部に、上方が開口する円錐形状の一輪差しが設けられ、風鈴と一輪差しをガラスの筒で一つに」することにおいて、「上方が開口する円錐形状の一輪差し」は、「凹形状の花器」ということができる。また、風鈴と一輪差しとは、ガラスの筒で一つにされていることから、ガラスの筒は、風鈴の錘によって発生した風鈴の音の振動が、一輪差しのガラスに伝搬されて共鳴する、共鳴体としての役割を果たすものということができる。したがって、引用発明と本願発明とは、「前記風鈴型本体の上部に凹形状の花器からなる共鳴体を一体に有」する点で共通する。

(C)日常、風鈴を使用しない場合に、これを吊り下げることなく水平面を有する任意の場所に置いておくことは常套手段であり、ここで、引用発明の風鈴は「風鈴の開口部周縁は、風鈴の中心軸に垂直の平面上にある」ものであって、水平面に対して起立可能であるということができるから、引用発明の「風鈴の開口部周縁は、風鈴の中心軸に垂直の平面上にある」ことは、本願発明の「卓上に起立可能である」ことと、「水平面を有する場所に起立可能である」点で共通する。

(D)引用発明の「風鈴」は、「風鈴の上部に、上方が開口する円錐形状の一輪差しが設けられ、風鈴と一輪差しをガラスの筒で一つに」したものであるから、花器型風鈴と捉えることができる。
一方、本願発明の「花器型ベル」も、「下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴型ベル本体と、」「風鈴型ベル本体の上部に凹形状の花器」からなるものであって、風鈴として使用できることは明らかであるから、「花器型風鈴」と捉えることができる。
したがって、引用発明の「風鈴」と、本願発明の「花器型ベル」とは、「花器型風鈴」である点で共通する。

すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「下部が開口し、内側に錘が吊り下げられた風鈴型本体と、前記風鈴型本体の上部に凹形状の花器からなる共鳴体を一体に有し、水平面を有する場所に起立可能である花器型風鈴。」

<相違点>
(ア)共鳴体を一体に有することについて、本願発明が「金属製」であるのに対し、引用発明は「ガラス製」である点。

(イ)花器型風鈴において、本願発明が、「風鈴型ベル」本体を有する、「卓上に」起立可能である「花器型ベル」であるのに対し、引用発明は、「卓上」に起立可能であること、及び、「花器型ベル」であることについて特定がない点。


4 判断
<相違点>(ア)について
一般に、風鈴をガラス製及び金属製とすることはともによく知られた慣用技術であり(金属製の風鈴については、例えば、周知例2(上記2(3)(b))参照。)、また、ガラス製か金属製かによって風鈴の音色、強度等が変わることも技術常識であるから、引用発明において、風鈴の音色、強度等を考慮して、ガラス製の風鈴を金属製とすることは当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願発明の<相違点>(ア)に係る構成のようにすることは格別なことではない。

<相違点>(イ)について
上記(C)に記載したように、日常、風鈴を使用しない場合に、これを吊り下げることなく水平面を有する任意の場所に置いておくことは常套手段である。そして、引用発明の風鈴も起立可能であり、また、「卓上」は生活上ごくありふれた水平面を有する場所であるから、引用発明の風鈴を「卓上」に起立可能におくことは当業者が適宜なし得ることである。
一方、風鈴を人為的に振ることにより音を発生させることは、経験則上適宜なし得ることであるから、卓上に起立可能な風鈴を人為的に振ることにより「ベル」として用いることに格別の困難性を有しない。
したがって、引用発明の「風鈴と一輪差しをガラスの筒で一つにし、風鈴の開口部周縁は、風鈴の中心軸に垂直の平面上にある、風鈴」を「卓上」に起立可能である「花器型ベル」として用いることは当業者が適宜なし得る事項である。
また、風鈴と卓上ベルを兼用することは周知な事項でもあるから(例えば、周知例1、周知例2(上記2(2)、(3)参照。)、この点からも、引用発明の「風鈴と一輪差しをガラスの筒で一つにし、風鈴の開口部周縁は、風鈴の中心軸に垂直の平面上にある、風鈴」を卓上ベルと兼用し、「卓上」に起立可能である「花器型ベル」として用いることに格別の困難性を有しない。

よって、本願発明の<相違点>(イ)に係る構成のようにすることは格別なことではない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-28 
結審通知日 2014-06-03 
審決日 2014-06-16 
出願番号 特願2008-125352(P2008-125352)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千本 潤介大石 剛  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 井上 信一
酒井 伸芳
発明の名称 風鈴及び風鈴型の卓上ベル  
代理人 大谷 嘉一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ