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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1290310
審判番号 不服2013-1512  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-28 
確定日 2014-07-31 
事件の表示 特願2009-275734「燃費履歴表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月16日出願公開、特開2011-117838〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本件出願」という。)は、平成21年12月3日にされた特許出願である。そして、平成24年9月3日付け手続補正書により明細書及び特許請求の範囲についての補正がされ、同年10月23日付けで拒絶査定がされ、同年同月30日に査定の謄本が送達された。
これに対して、平成25年1月28日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。

第2 本件補正の却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正は、本件補正前(平成24年9月3日付け手続補正書による補正の後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含む。なお、下線は、請求人が付したものであり、補正箇所を示す。

(本件補正前)
「【請求項1】
操作部と表示部とを備えた燃費履歴表示装置であって、
瞬間燃費、および所定の区間毎の区間燃費を算出する演算部と、
前記瞬間燃費、および前記区間燃費を所定数時系列に記憶する記憶部と、
前記記憶部から区間燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定区間毎に遡った前記区間燃費と現時点の瞬間燃費とを前記表示部に表示する制御部と、
を有することを特徴とする燃費履歴表示装置。」

(本件補正後)
「【請求項1】
操作部と表示部とを備えた燃費履歴表示装置であって、
瞬間燃費、および所定の区間毎の区間燃費を算出する演算部と、
前記瞬間燃費、および前記区間燃費を所定数時系列に記憶する記憶部と、
前記記憶部から前記区間燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定区間毎に遡った前記区間燃費と現時点の瞬間燃費とを前記表示部に表示する制御部と、を備え、
前記制御部は、
予め設定された区間距離情報を前記演算部へ出力し、前記演算部によって計算され、前記区間距離情報を単位に前記記憶部に時系列に蓄積された前記瞬間燃費を参照し、前記演算部によって計算され出力される前記区間毎の平均燃費から現時点の瞬間燃費を基準に前記区間距離情報を時系列に遡った前記区間毎の平均燃費を含む前記表示情報を生成して前記表示部に表示する、ことを特徴とする燃費履歴表示装置。」

本件補正のうち、請求項1についての補正は、「制御部」が「予め設定された区間距離情報を前記演算部へ出力し、前記演算部によって計算され、前記区間距離情報を単位に前記記憶部に時系列に蓄積された前記瞬間燃費を参照し、前記演算部によって計算され出力される前記区間毎の平均燃費から現時点の瞬間燃費を基準に前記区間距離情報を時系列に遡った前記区間毎の平均燃費を含む前記表示情報を生成して前記表示部に表示する」旨の限定を付加するものである。
したがって、本件補正のうち、請求項1についての補正は、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
この場合、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
しかし、以下に述べるとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2.刊行物に記載された事項
以下に掲げる刊行物1から3までは、いずれも、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である。また、刊行物1及び2は、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である。

刊行物1:特開2002-225593号公報
刊行物2:特開2008-180576号公報
刊行物3:特開2007-256158号公報

(1)刊行物1
ア.刊行物1の記載
刊行物1には、以下の記載がある。

(ア)段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の燃費を経時変化として表示する燃費表示装置及び車両状態表示装置に関する。」

(イ)段落0012から0018まで
「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0013】図1は、一実施形態に係る燃費表示装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。なお、本実施形態の燃費表示装置は、燃料を消費する動力機関を搭載するガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車の他、エンジンの他にバッテリ駆動のモータを搭載するハイブリッド車等に採用される。
【0014】走行距離センサ10は、車輪回転数などから走行距離を検出するセンサであり、常時走行距離を検出している。また、燃料消費センサ12は、エンジンにおける燃料消費量を燃料供給量などから検出する。
【0015】走行距離センサ10と、燃料消費センサ12の出力は、処理部14に供給され、この処理部14において燃費が算出される。この燃費は、走行距離(km)/燃料消費量(L)で算出される。
【0016】この処理部14においては、4つの燃費を算出する。まず、イグニッションスイッチのオン(IG-ON)の後、1分毎の平均燃費を算出し、この平均燃費を過去30分間分、平均燃費記憶部16に記憶する。…(略)…
【0017】このようにして、処理部14は、平均燃費記憶部16、表示色記憶部16aの記憶内容から、過去30分間の平均燃費を1分毎に認識し、また今回のトリップのデータか否かも認識することができる。
【0018】また、処理部14は、各瞬間において、走行距離センサ10および燃料消費センサ12から供給される検出値に応じてその瞬間の燃費を瞬間燃費記憶部18に記憶する。」

(ウ)段落0021から0024まで
「【0021】そして、処理部14には、表示部24が接続されており、この表示部24に燃費についての表示が行われる。また、処理部14には入力部26も接続されており、この入力部26により上述の通算燃費を計算するためのリセット入力などがなされる。この入力部26は、表示部24の前面に形成されたタッチパネルなどを含むことが好適である。また、表示部24は、例えばカラーの液晶表示装置であり、燃費の表示の他、ナビゲーションのための画面や、各種診断についてダイアグ(診断)表示や、エアコンディショナーなどの操作についての画面などにも利用されることが好適である。
【0022】…(略)…
【0023】図2には、燃費表示画面の例が示されている。このように、現時点から前30分間の1分毎の平均燃費が棒グラフで示されている。…(略)…
【0024】また、瞬間燃費は、独立した棒グラフで示され、逐次その瞬間の燃費が表示される。この棒グラフも緑色に設定されている。」

イ.刊行物1に記載された発明(引用発明)
(ア)刊行物1には、車両の燃費を経時変化として表示する燃費表示装置が記載されている(上記ア.(ア))。

(イ)燃費表示装置は、1分毎の平均燃費と瞬間燃費とを算出する処理部14と、処理部14が算出した1分毎の平均燃費を過去30分間分記憶する平均燃費記憶部16と、瞬間燃費を記憶する瞬間燃費記憶部18とを備える(上記ア.(イ)及び図1)。

(ウ)燃費表示装置は、さらに、燃費についての表示を行う表示部24と、タッチパネルなどの入力部26とを備える(上記ア.(ウ)及び図1)。

(エ)表示部24には、現時点から前30分間の1分毎の平均燃費が棒グラフで示され、また、瞬間燃費が別の棒グラフで示される(上記ア.(ウ)及び図2)。

(オ)以上のことを踏まえて、上記ア.(ア)から(ウ)までの記載と、図1及び2に示された事項とを総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「タッチパネルなどの入力部26と、燃費についての表示を行う表示部24とを備えた燃費表示装置であって、
瞬間燃費と1分毎の平均燃費とを算出する処理部14と、
瞬間燃費を記憶する瞬間燃費記憶部18と、
1分毎の平均燃費を過去30分間分記憶する平均燃費記憶部16と、を備え、
表示部24には、現時点から前30分間の1分毎の平均燃費が棒グラフで、瞬間燃費が別の棒グラフで、それぞれ示される、燃費表示装置。」

(2)刊行物2
ア.刊行物2の記載
刊行物2には、以下の記載がある。

(ア)段落0001
「【0001】
本発明は、車両の燃料コストを表示する燃費表示装置およびナビゲーション装置に関する。」

(イ)段落0006
「【0006】
図1は、本発明の実施形態によるナビゲーション装置1を示す。このナビゲーション装置1は、単位距離あたり、または単位時間あたりに消費した燃料の燃料代を表示する。…(略)…」

(ウ)段落0018
「【0018】
図2(a)に示すように、燃費表示画面23aには、平均燃料消費率が表示されるのではなく、車両が1kmを走行するのに消費した燃料の燃料代(13円)が表示される。そして、所定の時期(たとえば、累計燃料代の値をリセットしたとき)から消費した燃料の累計燃料代(1350円)が表示される。また、入力装置18を操作して、燃費表示モードを距離モードから時間モードに変更すると、図2(b)に示すように、車両が1分間に走行するのに消費した燃料の燃料代(9円)が表示される。」

(エ)段落0032から0034まで
「【0032】
以上の本発明の実施の形態によるナビゲーション装置1は次のような作用効果を奏する。
(1)車両の燃費(車両が1kmまたは1分間走行するときに消費する燃料消費量)を金額として表示するので、燃費効率の悪い運転が金銭の無駄遣いであることが明確に認識できる。したがって、ユーザは燃費効率のよい運転を心がけるようになる。
【0033】…(略)…
【0034】
以上の実施の形態を次のように変形することができる。
(1)金額として表示する車両の燃費は、車両が所定距離または所定時間走行するときに消費する燃料の燃料代であれば、車両が1kmまたは1分間走行するときに消費する燃料の燃料代に限定されない。たとえば、車両が100mまたは30秒間走行するときに消費する燃料の燃料代でもよい。」

(オ)段落0040及び0041
「【0040】
(6)車両が1kmを走行するのに消費した燃料の燃料代を車両の走行距離に対する履歴情報として表示してもよい。すなわち、図6(a)に示すように、縦軸に車両が1kmを走行するのに消費した燃料の燃料代、横軸に燃料代を算出したときの走行距離からの経過距離が表示された燃費履歴表示画面24aが表示されるようにしてもよい。あるいは、車両が1分間に走行するのに消費した燃料の燃料代を経過時間に対する履歴情報として表示モニタ16に表示してもよい。すなわち、図6(b)に示すように、縦軸に車両が1分間に走行するのに消費した燃料の燃料代、横軸に燃料代を算出したときの時間からの経過時間が表示された燃費履歴表示画面24bが表示されるようにしてもよい。図6(a)や図6(b)の表示方式を採用することにより、車両の走行中に消費した燃料代の動向が認識でき便利である。
【0041】
(7)車両が所定時間または所定距離走行している間に消費した燃料の燃料代を表示する燃費表示装置であれば、ナビゲーション装置1に限定されない。」

イ.刊行物2に記載された技術事項
上記ア.(ア)から(オ)までの記載と、図2及び6に示された事項とを総合すると、刊行物2には、以下の技術事項が記載されている。

「車両の燃費を履歴情報として表示する燃費表示装置において、表示すべき車両の燃費を、入力装置の操作により、車両が所定距離走行したときに消費した燃料の量と、車両が所定時間走行したときに消費した燃料の量とのいずれかに変更する。」

(3)刊行物3
ア.刊行物3の記載
刊行物3には、以下の記載がある。

(ア)段落0001
「【0001】
本発明は、移動体に設置される燃費表示装置に関し、より詳細には、移動体の運転者に対し、燃費状態に関する情報を注視させることなく燃費状態を認識させる燃費表示装置に関する。」

(イ)段落0017から0020まで
「【0017】
燃費演算手段100は、車速センサ2から受信した車輪の回転速度に所定の係数(車輪の円周等)を乗じて得られる所定時間(例えば、0.1秒)当りの移動距離と、エンジンコントローラ3から受信した点火時期(周期)および燃料噴射量に関するデータから得られる所定時間(例えば、0.1秒)当りの燃料噴射量とから、瞬間燃費を算出する手段である。
【0018】
ここで、「瞬間燃費」とは、所定の短い時間における燃費をいい、所定の短い時間は、走行状態やアクセルワークに応じて時々刻々と表示値を変化させるのに十分短い時間であることとし、例えば2秒とする。
【0019】
また、燃費演算手段100は、瞬間燃費に基づいて、所定時間の平均燃費、リセット-リセット間平均燃費、給油間平均燃費または始動後平均燃費を算出する。
【0020】
「所定時間の平均燃費」は、30分、1時間といった時間当りの瞬間燃費の平均値、「リセット-リセット間平均燃費」は、リセットボタンを押してから再度リセットボタンを押すまでの期間の瞬間燃費の平均値、「給油間平均燃費」は、給油してから次の給油を行うまでの期間の瞬間燃費の平均値、「始動後平均燃費」は、エンジンを始動させてから現在までの期間の瞬間燃費の平均値であり、それぞれ、タイマ、リセットボタン、給油口のカバー、イグニッションスイッチ等からの信号に基づいて自動的に算出される。」

イ.刊行物3に記載された技術事項
上記ア.(ア)及び(イ)の記載を総合すると、刊行物3には、以下の技術事項が記載されている。

「燃費表示装置において、瞬間燃費に基づいて所定時間の平均燃費を算出する。」

3.対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

(1)引用発明の「タッチパネルなどの入力部26」及び「燃費についての表示を行う表示部24」は、それぞれ本件補正発明の「操作部」及び「表示部」に相当する。

(2)引用発明の「燃費表示装置」は、その「表示部24」に「現時点から前30分間の1分毎の平均燃費が棒グラフで…示される」から、燃費の履歴を表示する装置である。
したがって、引用発明の「燃費表示装置」は、本件補正発明の「燃費履歴表示装置」に相当する。

(3)引用発明の「瞬間燃費」は、本件補正発明の「瞬間燃費」に相当する。

(4)引用発明の「1分毎」と本件補正発明の「所定の区間毎」とは、時間に関するものか距離に関するものかという点で相違するものの、「所定の間隔毎」である点で共通する。
したがって、引用発明の「1分毎の平均燃費」と本件補正発明の「所定の区間毎の区間燃費」とは、「所定の間隔毎の平均燃費」である点で共通する。

(5)引用発明の「瞬間燃費と1分毎の平均燃費とを算出する処理部14」と本件補正発明の「瞬間燃費、および所定の区間毎の区間燃費を算出する演算部」とは、「瞬間燃費、および所定の間隔毎の平均燃費を算出する演算部」である点で共通する。

(6)引用発明の「瞬間燃費を記憶する」ことと、本件補正発明の「前記瞬間燃費…を所定数時系列に記憶する」こととは、「前記瞬間燃費を記憶する」ことである点で共通する。
引用発明の「1分毎の平均燃費を過去30分間分記憶する」ことと、本件補正発明の「前記区間燃費を所定数時系列に記憶する」こととは、「前記平均燃費を所定数時系列に記憶する」ことである点で共通する。
引用発明の「瞬間燃費記憶部18」と「平均燃費記憶部16」とを合わせたものは、本件補正発明の「記憶部」に相当する。
したがって、引用発明の「瞬間燃費と1分毎の平均燃費とを算出する処理部14」と「瞬間燃費を記憶する瞬間燃費記憶部18」とを合わせたものと、本件補正発明の「前記瞬間燃費、および前記区間燃費を所定数時系列に記憶する記憶部」とは、「前記瞬間燃費を記憶し、前記平均燃費を所定数時系列に記憶する記憶部」である点で共通する。

(7)引用発明の「表示部24」に「現時点から前30分間の1分毎の平均燃費が棒グラフで…示される」ことと、本件補正発明の「前記記憶部から前記区間燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定区間毎に遡った前記区間燃費…を前記表示部に表示する」こととは、「前記記憶部から前記平均燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定間隔毎に遡った前記平均燃費を前記表示部に表示する」ことである点で共通する。
引用発明の「表示部24」に「瞬間燃費が別の棒グラフで…示される」ことは、本件補正発明の「現時点の瞬間燃費…を前記表示部に表示する」ことに相当する。
引用発明は、その「表示部24」に表示を行うための制御部を備えていることが明らかである。
したがって、引用発明の「表示部24」に「現時点から前30分間の1分毎の平均燃費が棒グラフで、瞬間燃費が別の棒グラフで、それぞれ示される」ことと、本件補正発明の「前記記憶部から前記区間燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定区間毎に遡った前記区間燃費と現時点の瞬間燃費とを前記表示部に表示する制御部」とは、「前記記憶部から前記平均燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定間隔毎に遡った前記平均燃費と現時点の瞬間燃費とを前記表示部に表示する制御部」である点で共通する。

(8)以上のことをまとめると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「操作部と表示部とを備えた燃費履歴表示装置であって、
瞬間燃費、および所定の間隔毎の平均燃費を算出する演算部と、
前記瞬間燃費を記憶し、前記平均燃費を所定数時系列に記憶する記憶部と、
前記記憶部から前記平均燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定間隔毎に遡った前記平均燃費と現時点の瞬間燃費とを前記表示部に表示する制御部と、を備える燃費履歴表示装置。」

(相違点1)
本件補正発明では、「所定の間隔毎の平均燃費」が「所定の区間毎の区間燃費」であるのに対し、引用発明では、「所定の間隔毎の平均燃費」が「1分毎の平均燃費」である点。

(相違点2)
本件補正発明では、「瞬間燃費」が「所定数時系列に」記憶されており、「制御部」が「予め設定された区間距離情報を前記演算部へ出力し、前記演算部によって計算され、前記区間距離情報を単位に前記記憶部に時系列に蓄積された前記瞬間燃費を参照し、前記演算部によって計算され出力される前記区間毎の平均燃費から現時点の瞬間燃費を基準に前記区間距離情報を時系列に遡った前記区間毎の平均燃費を含む前記表示情報を生成」するのに対し、引用発明では、そのようになっていない点。

4.判断
(1)相違点1について
引用発明は、上記3.(2)で述べたとおり、燃費の履歴を表示する装置であるから、引用発明と刊行物2に記載された技術事項とは、車両の燃費の履歴を表示する装置に関するものである点で共通する。また、引用発明の「1分毎の平均燃費」は、刊行物2に記載された技術事項の「車両が所定時間走行したときに消費した燃料の量」に相当する。
そうすると、引用発明の「1分毎の平均燃費」を「車両が所定距離走行したときに消費した燃料の量」(これは、本件補正発明の「所定の区間毎の区間燃費」に相当する。)に変更することは、刊行物2に記載された技術事項を適用することにより、当業者が容易に行い得ることである。
その結果、相違点1に係る構成が得られることは、明らかである。

(2)相違点2について
刊行物2に記載された技術事項を引用発明に適用するに際し、「車両が所定距離走行したときに消費した燃料の量」を算出する具体的な方法を選択することは、当業者が適宜行い得る設計事項である。
刊行物3に記載された技術事項(上記2.(3)イ.)として示したように、燃費表示装置においては、十分短い時間における瞬間燃費に基づいて所定時間の平均燃費を算出することが知られている。このことからすれば、刊行物2に記載された技術事項を引用発明に適用するに際し、所定時間ではなく所定距離の平均燃費を、十分短い距離における瞬間燃費に基づいて算出することも、当業者が適宜選択し得る事項の範囲内にあると認められる。瞬間燃費に基づく算出のために、瞬間燃費を所定数時系列に記憶し、それらを参照する必要があることは、当業者にとって自明である。
相違点2にかかる構成は、刊行物2に記載された技術事項を引用発明に適用してなる燃費表示装置において、「車両が所定距離走行したときに消費した燃料の量」を算出する具体的な方法として、瞬間燃費に基づく算出を選択したことの結果にすぎない。

(3)判断のまとめ
本件補正発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)と刊行物2に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願に係る発明について
1.本件出願に係る発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1から4までのそれぞれに係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1から4までのそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものである。特に、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
操作部と表示部とを備えた燃費履歴表示装置であって、
瞬間燃費、および所定の区間毎の区間燃費を算出する演算部と、
前記瞬間燃費、および前記区間燃費を所定数時系列に記憶する記憶部と、
前記記憶部から区間燃費を所定数だけ順次読み出して表示情報を生成して現時点を基準に所定区間毎に遡った前記区間燃費と現時点の瞬間燃費とを前記表示部に表示する制御部と、
を有することを特徴とする燃費履歴表示装置。」

2.原査定の拒絶の理由
本件発明に対する原査定の拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

「本件発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1及び2のそれぞれに記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2002-225593号公報(前掲)
刊行物2:特開2008-180576号公報(前掲)」

3.刊行物に記載された事項
刊行物1に記載された発明(引用発明)は、上記「第2」2.(1)イ.(オ)に記載したとおりであり、刊行物2に記載された技術事項は、上記「第2」2.(2)イ.に記載したとおりである。

4.対比
本件発明は、本件補正発明から、「制御部」が「予め設定された区間距離情報を前記演算部へ出力し、前記演算部によって計算され、前記区間距離情報を単位に前記記憶部に時系列に蓄積された前記瞬間燃費を参照し、前記演算部によって計算され出力される前記区間毎の平均燃費から現時点の瞬間燃費を基準に前記区間距離情報を時系列に遡った前記区間毎の平均燃費を含む前記表示情報を生成して前記表示部に表示する」旨の限定を省いたものである。
このことを踏まえて、本件発明と引用発明とを対比すると、両者は、上記「第2」3.(8)に記載した「一致点」で一致し、以下の点で相違する。

(相違点3)
本件発明では、「所定の間隔毎の平均燃費」が「所定の区間毎の区間燃費」であるのに対し、引用発明では、「所定の間隔毎の平均燃費」が「1分毎の平均燃費」である点。

(相違点4)
本件発明では、「瞬間燃費」が「所定数時系列に」記憶されているのに対し、引用発明では、そのようになっていない点。

5.判断
(1)相違点3について
相違点3は、本件補正発明と引用発明とを対比したときの相違点1(上記「第2」3.(8))と同じであるから、相違点3についての判断は、相違点1について上記「第2」4.(1)で述べたとおりである。

(2)相違点4について
本件発明では、「現時点の瞬間燃費…を前記表示部に表示する」とされていることを除けば、「所定数時系列に」記憶した「瞬間燃費」を何に用いるのかが何も特定されていない。そうすると、「瞬間燃費」が「所定数時系列に」記憶されている点には、何の技術的意義も認めることができない。したがって、この点は、当業者が適宜行い得る設計事項にすぎない。
また、発明の詳細な説明の記載(段落0026)を参酌すると、「瞬間燃費」を「所定数時系列に」記憶するのは、「瞬間燃費」を用いて「所定の区間毎の区間燃費」を算出するためであると解釈することもできるが、その場合、相違点4は、本件補正発明と引用発明とを対比したときの相違点2(上記「第2」3.(8))と実質的に同じことになる。そうすると、相違点4に係る構成は、相違点2について上記「第2」4.(2)で述べたとおり、刊行物2に記載された技術事項を引用発明に適用してなる燃費表示装置において、「車両が所定距離走行したときに消費した燃料の量」を算出する具体的な方法として、瞬間燃費に基づく算出を選択したことの結果にすぎない。

(3)判断のまとめ
本件発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)と刊行物2に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
本件発明は、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-14 
結審通知日 2014-05-27 
審決日 2014-06-09 
出願番号 特願2009-275734(P2009-275734)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01F)
P 1 8・ 575- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 小林 紀史
樋口 信宏
発明の名称 燃費履歴表示装置  
代理人 下田 容一郎  
代理人 住吉 勝彦  
代理人 瀧澤 匡則  
代理人 下田 憲雅  
代理人 野崎 俊剛  

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