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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1290317
審判番号 不服2013-10901  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-11 
確定日 2014-07-31 
事件の表示 特願2009-269021「裏当装置および溶接方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 6月 9日出願公開、特開2011-110582〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成21年11月26日の出願であって、平成24年2月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年4月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月14日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し、同年11月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成24年11月20日付け手続補正書による補正については平成25年3月6日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成25年9月9日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、回答書の提出がされなかったものである。

【2】平成25年6月11日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年6月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。
「被溶接鋼板同士を接続するための片面溶接装置で使用され、裏当フラックスを用いて溶接を行う裏当装置であって、
被溶接鋼板の溶接開先部以上かつ最小限度の長さの裏当部材を有し、
前記裏当部材が、前記溶接開先部に沿って配置され前記裏当フラックスを載置する裏当銅板と、前記裏当銅板を溶接開先部方向に摺動可能に支持する支持フレームとからなり、前記裏当銅板は、所定長さを有する銅板片を連結部材により複数連結したものであり、
前記連結部材は、隣り合う前記銅板片の位置で当該銅板片を載置する連結金具と、前記連結金具と載置された銅板片とを予め形成されている貫通穴に挿通して連結する連結ピンとを備え、前記連結金具は、その下面に、前記支持フレームに沿って摺動可能な凸部を形成し、
前記支持フレームが、前記裏当銅板の長手方向に沿って、当該裏当銅板の裏面側に配置された複数のレールと、前記溶接開先部の全長に亘って形成され、前記レールの長手方向の全部を支持する長尺板からなる支持板とを備えることを特徴とする裏当装置。」

上記補正は、本願の請求項1に係る発明の、「レールを支持する長尺板からなる支持板」について、「レールの長手方向の全部を支持する」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて、以下検討する。

[2]引用刊行物

原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前に頒布された、特開2006-51529号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)
「本発明は、片面溶接に使用される長尺物である裏当部(以下、裏当ユニットという)及びこれを支持する台部とで構成される裏当装置を一体成形品として搬送することにより、据え付け現場での組立及び据え付け期間を短縮することができる裏当装置及びその搬送方法に関する。」(段落【0001】)

(イ)
「片面溶接に使用される裏当ユニットは、例えば裏当銅板とその接続部品、裏当銅板受け、断熱シート、エアホース、裏当フレーム(ユニットフレーム)等で構成されており、組み上げ状態は、例えば24m程度の長さを有する細長い構造物である。裏当ユニットは、通常昇降フレーム及び長手方向に多数配置された昇降用駆動装置を介して車輪を有する台部に搭載されている。」(段落【0003】)

(ウ)
「図13乃至図18は、このような裏当ユニットを台部に搭載した従来の裏当装置を示す説明図であり、図13はその平面図、図14は図13の一部切欠側面図、図15は図14のC-C線矢視方向断面図、図16は図13の裏当銅板の拡大平面図、図17は図16の側面図、図18は図17のD-D線矢視方向断面図である。
図13及び図14において、この裏当装置はFCB方式の裏当装置であり、中心部に裏当銅板101がその長さ方向に沿って多数1列に配列された裏当ユニット105と、これを支持する昇降フレーム108とから主として構成されている。図16及び図17において、裏当銅板101は銅板継手130及び銅板継手ピン131によって夫々連結されている。また、このように配列された裏当銅板101はローラチェイン112によって裏当装置の長さ方向に引っ張られるように支持されている。
図18において、裏当銅板101の表面に裏当フラックスが散布されて裏当フラックス層が形成されている。」(段落【0005】?【0007】)

(エ)
「図15において、裏当ユニット105には裏当銅板101と、この裏当銅板101を支持する裏当銅板受け102とが設けられており、裏当銅板受け102の下方には断熱シート103を介してエアホース104が配置されている。断熱シート103は裏当銅板102からエアホース104への熱移動を防止している。
裏当銅板101、裏当銅板受け102、断熱シート103、エアホース104等を有する裏当ユニット105はユニットフレーム106上に載置されており、このユニットフレーム106は1対の車輪107を介して水平方向に移動可能に昇降フレーム108上に載置されている。これによってユニットフレーム106は昇降フレーム108と相対的に水平方向に移動可能となっている。昇降フレーム108は昇降装置109を介して図示省略した台部に搭載されている。なお、図15において、裏当ユニット105の右半分は、エアホース104に加圧空気を供給して裏当銅板101及びこれに支持された裏当フラックス層(図示省略)を上昇させた状態を示すものである。」(段落【0008】?【0009】)

(オ)
「図19は裏当装置を有する片面溶接装置を示す正面図である。図19において、裏当装置は被溶接材である仮止めされた複数の鋼板125の下方に配置される。裏当装置は裏当ユニット105とこれが搭載された台部115とで構成されている。」(【0011】)

(カ)
「このような構成の従来の片面溶接装置は次のように動作する。即ち、駆動装置122によって駆動されたパネル移動ローラ121は鋼板125の溶接線を裏当ユニット105の裏当銅板101の上部まで移送する。溶接線を裏当銅板101の上部まで移動させた後、裏当ユニット105のエアホース104に加圧空気を供給して裏当銅板101に載置された裏当フラックス層(図示省略)を前記溶接線の裏面に当接するように配置する。
溶接線の裏面に裏当フラックス層を配置した後、自動溶接機128をガーダー本体126及び溶接ガイドフレーム127を用いて溶接線の上方まで移動させ、ワイヤリール129から供給される溶接ワイヤを使用して上方から溶接線に沿って片面自動溶接を施す。
ところで、上記従来技術における裏当ユニット105及び台部115は共に複数の部材を組み立てたものであり、搬送に耐え得る強度を有するものではなかった。即ち、裏当ユニット105の裏当銅板101はその長さ方向に沿って例えば60個並べて連結したものであり、裏当銅板101を支持する裏当銅板受け102はその長さ方向に沿って、例えば6つに分割された構成部材が組み立てられたものである。更に、断熱シート103は一体ものであるが、エアホース104は2本の構成部材が連結されたものであり、ユニットフレーム106はその長さ方向に沿って3つに分割された構成部材が組み立てられたものである。従って、裏当ユニット105としての強度は小さく、一体物として搬送することは不可能であった。」(段落【0016】?【0018】)

(キ)
「本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、搬送時に一体物として搬送することができ、搬送先での組み立て及び据え付け期間を短縮することができる裏当装置及びその搬送方法を提供することを目的とする。」(段落【0030】)

(ク)
図15及び図18には、裏当銅板101の裏面にはそれぞれ突出部が形成されており、当該突出部と摺接する平行なレール状の部材が裏当銅板受け102上に設けられていることが見て取れる。

(ケ)
図16及び図17には、裏当銅板101の隣り合う銅板片の位置で当該銅板片を載置する連結継手130と、前記連結継手130と載置された銅板片とを予め形成されている貫通穴に挿通して連結する銅板継手ピン131とを有していることが見て取れる。

上記記載事項(ア)?(カ)、認定事項(ク)?(ケ)及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、上記刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「鋼板同士を接続するための片面溶接装置で使用され、裏当フラックスを用いて溶接を行う裏当ユニット105であって、
鋼板の溶接線に対応する長さの裏当銅板101及び裏当銅板受け102を有し、
前記裏当銅板101及び裏当銅板受け102が、前記溶接線に沿って配置され前記裏当フラックスを載置する裏当銅板101と、前記裏当銅板101を溶接線方向に摺動可能に支持する裏当銅板受け102とからなり、前記裏当銅板101は、所定長さを有する銅板片を銅板継手130及び銅板継手ピン131により複数連結したものであり、
前記銅板継手130及び銅板継手ピン131は、隣り合う前記銅板片の位置で当該銅板片を連接する連結継手130と、前記連結継手130と連接された銅板片とを予め形成されている貫通穴に挿通して連結する銅板継手ピン131とを備え、前記裏当銅板101は、その下面に、前記裏当銅板受け102に沿って摺動可能な突出部を形成し、
前記裏当銅板受け102が、前記裏当銅板101の長手方向に沿って、当該裏当銅板101の裏面側に配置された複数の平行なレール状の部材と、前記溶接線の全長に亘って形成され、前記平行なレール状の部材を支持する裏当銅板受け102本体とを備える裏当ユニット105。」(以下「引用発明」という。)

[3]対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、引用発明の「鋼板」、「裏当ユニット105」、「溶接線」、「裏当銅板101及び裏当銅板受け102」、「裏当銅板101」、「裏当銅板受け102」、「銅板継手130及び銅板継手ピン131」、「連結継手130」、「銅板継手ピン131」、「突出部」、「平行なレール状の部材」、「裏当銅板受け102本体」は、それぞれ、本願補正発明の「被溶接鋼板」、「裏当装置」、「溶接開先部」、「裏当部材」、「裏当銅板」、「支持フレーム」、「連結部材」、「連結金具」、「連結ピン」、「凸部」、「レール」、「支持板」に相当する。
また、引用発明の「鋼板の溶接線に対応する長さの裏当銅板101及び裏当銅板受け102を有し、」と本願補正発明の「被溶接鋼板の溶接開先部以上かつ最小限度の長さの裏当部材を有し、」は、「被溶接鋼板の溶接開先部に対応する長さの裏当部材を有し、」である点で共通している。
さらに、引用発明の「銅板片を連接する連結継手130」と本願補正発明の「銅板片を載置する連結金具」は、「銅板片を連接する連結金具」である点で共通している。
また、引用発明の「裏当銅板101は、その下面に、・・・摺動可能な突出部を形成し、」と、本願補正発明の「連結金具は、その下面に、・・・摺動可能な凸部を形成し、」は、「連結金具を含む裏当銅板は、その下面に、・・・摺動可能な凸部を形成し、」で共通している。

そうすると、両者は、
「被溶接鋼板同士を接続するための片面溶接装置で使用され、裏当フラックスを用いて溶接を行う裏当装置であって、
被溶接鋼板の溶接開先部に対応する長さの裏当部材を有し、
前記裏当部材が、前記溶接開先部に沿って配置され前記裏当フラックスを載置する裏当銅板と、前記裏当銅板を溶接開先部方向に摺動可能に支持する支持フレームとからなり、前記裏当銅板は、所定長さを有する銅板片を連結部材により複数連結したものであり、
前記連結部材は、隣り合う前記銅板片の位置で当該銅板片を連接する連結金具と、前記連結金具と連接された銅板片とを予め形成されている貫通穴に挿通して連結する連結ピンとを備え、前記連結金具を含む裏当銅板は、その下面に、前記支持フレームに沿って摺動可能な凸部を形成し、
前記支持フレームが、前記裏当銅板の長手方向に沿って、当該裏当銅板の裏面側に配置された複数のレールと、前記溶接開先部の全長に亘って形成され、前記レールを支持する支持板とを備える裏当装置。」
の点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点1〉
裏当部材について、本願補正発明が「被溶接鋼板の溶接開先部以上かつ最小限度の長さ」の裏当部材であるのに対し、引用発明ではその点が不明である点。

〈相違点2〉
連結金具について、本願補正発明が「銅板片を載置し、下面に摺動可能な凸部を形成する」ものであるのに対し、引用発明ではその点が不明である点。

〈相違点3〉
支持板について、本願補正発明が「レールの長手方向の全部を支持する長尺板からなる支持板」であるのに対し、引用発明ではその点が不明である点。

[4]判断
(1)相違点1について
「裏当部材」とは、一般に、溶接開先部の裏面に裏当フラックスを供給するものである。そして、溶接開先部の全長に亘って裏当フラックスを供給するためには、少なくとも「裏当部材」の長さは溶接開先部の全長と等しくなければならず、また溶接開先部に確実に裏当フラックスを供給するためには、「裏当部材」の長さは溶接開先部の全長より必要最小限余裕を持たせて設定する必要がある。
してみると、「裏当部材」について、「被溶接鋼板の溶接開先部以上かつ最小限度の長さ」を持たせることは、当業者ならば容易に想到し得るものであり、相違点1に係る技術的事項に格別の顕著性はない。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前に頒布された、実願昭54-144125号(実開昭56-60590号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、「溶接裏当て装置」に関するものとして、受台9(本願補正発明の「連結金具」に相当)の下部の両側に両スライド棒8(本願補正発明の「レール」に相当)に外側から当接する当接片10(本願補正発明の「凸部」に相当)が一体に形成され、受台9の間に裏当て銅板11(本願補正発明の「裏当銅板」に相当)が架設され、各裏当て銅板11の端部が受台9において載置されねじ止めされているものが記載されている(明細書2頁下から1行?3頁4行、図1?4参照)。
してみると、引用発明において、連結金具(「銅板継手130」)を、隣り合う銅板片の位置で銅板片を載置するように構成し、さらに連結金具の下面に摺動可能な凸部を形成することは、刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るものであり、相違点2に係る技術的事項に格別の顕著性はない。

(3)相違点3について
刊行物1には、従来技術の説明として「裏当銅板101を支持する裏当銅板受け102はその長さ方向に沿って、例えば6つに分割された構成部材が組み立てられたものである。・・・従って、裏当ユニット105としての強度は小さく、一体物として搬送することは不可能であった。」(上記記載事項(カ))との記載があり、従来技術としての支持板(「裏当銅板受け102本体」)がレール(平行なレール状の部材)の長手方向の全部を支持する長尺板ではなく、分割されたものであって、裏当装置(「裏当ユニット105」)としての強度が小さく、一体物として搬送できなかったことが記載されている。
そして、刊行物1において、上記記載事項(キ)には「本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、搬送時に一体物として搬送することができ、搬送先での組み立て及び据え付け期間を短縮することができる裏当装置及びその搬送方法を提供することを目的とする。」との記載があり、また上記記載事項(ア)には「本発明は、片面溶接に使用される長尺物である裏当部(以下、裏当ユニットという)及びこれを支持する台部とで構成される裏当装置を一体成形品として搬送することにより、据え付け現場での組立及び据え付け期間を短縮することができる裏当装置及びその搬送方法に関する。」との記載があり、これを総合的に捉えると、支持板(「裏当銅板受け102本体」)を含めた裏当装置全体を一体成形品として構成することについて示唆されているということができる。
また、刊行物2には「長尺の素板の上面に、複数個の立設された可撓板を長手方向に等間隔かつ平行に固着し、前記各可撓板の上面に前記長手方向に互いに平行の2個のスライド棒を載置し、前記両スライド棒の上面に、被溶接板の裏当て板を支持する複数個の受台を等間隔に架設するとともに、前記受台の下部の両側に前記両スライド棒に外側から当接する当接片を一体に形成し、・・・」(明細書1頁5?12行「実用新案登録請求の範囲」)との記載がある。これによれば、長尺の素板(本願補正発明の「支持板」に相当)と、当該素板に間接的に支持されている平行で2個の長尺のスライド棒(本願補正発明の「レール」に相当)があり、少なくとも、「素板」及び「スライド棒」は「裏当て装置」を構成するものであるから、上記(1)で検討したように、溶接開先部の全長に亘って形成される必要があり、特に「スライド棒」は2個であることから、一体型の長尺物が溶接開先部の全長に亘って設けられているものと解することができる。そうすると、本願補正発明の「支持板」に相当する長尺の「素板」も一体型の長尺物であり、溶接開先部の全長に亘って設けられていることが十分に想定される。
さらに、支持板を一体型とすることについての効果を検討すると、分割したものと比べ、一体型としたものの方が裏当銅板の長手方向の全部が支持されるので、水平状態が維持されやすく、裏当フラックスの溶接開先部裏面への密着状態が良好となることは、十分に想定される範囲のものであり、格別の顕著性はない。そして、支持板について、搬送の便の観点から分割型を選択するか、水平状態維持の観点から一体型の長尺物を選択するかは、必要性に応じて適宜選択し得る技術的事項に過ぎない。
してみると、引用発明において、支持板(「裏当銅板受け102本体」)を、溶接開先部の全長に亘って形成され、レール(「平行なレール状の部材」)の長手方向の全部を支持する長尺板からなるように構成することは、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて容易になし得るものであり、相違点3に係る技術的事項に格別の顕著性はない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
[1]本願発明
平成25年6月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月9日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「被溶接鋼板同士を接続するための片面溶接装置で使用され、裏当フラックスを用いて溶接を行う裏当装置であって、
被溶接鋼板の溶接開先部以上かつ最小限度の長さの裏当部材を有し、
前記裏当部材が、前記溶接開先部に沿って配置され前記裏当フラックスを載置する裏当銅板と、前記裏当銅板を溶接開先部方向に摺動可能に支持する支持フレームとからなり、前記裏当銅板は、所定長さを有する銅板片を連結部材により複数連結したものであり、
前記連結部材は、隣り合う前記銅板片の位置で当該銅板片を載置する連結金具と、前記連結金具と載置された銅板片とを予め形成されている貫通穴に挿通して連結する連結ピンとを備え、前記連結金具は、その下面に、前記支持フレームに沿って摺動可能な凸部を形成し、
前記支持フレームが、前記裏当銅板の長手方向に沿って、当該裏当銅板の裏面側に配置された複数のレールと、前記溶接開先部の全長に亘って形成され、前記レールを支持する長尺板からなる支持板とを備えることを特徴とする裏当装置。」

[2]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1の記載事項は、前記【2】[2]に記載したとおりである。

[3]対比・判断
本願発明は、前記【2】で検討した本願補正発明の「レールの長手方向の全部を支持する長尺板からなる支持板」について、レールの「長手方向の全部」を支持するという限定をなくすものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記【2】[4]に記載したとおり、引用発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物1に記載された事項及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-02 
結審通知日 2014-06-03 
審決日 2014-06-16 
出願番号 特願2009-269021(P2009-269021)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 公一  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 石川 好文
栗田 雅弘
発明の名称 裏当装置および溶接方法  
復代理人 富田 哲雄  
復代理人 多田 悦夫  
代理人 磯野 道造  

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