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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1290396
審判番号 不服2013-17839  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-17 
確定日 2014-08-08 
事件の表示 特願2009-109552「電子装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日出願公開、特開2010-258368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年4月28日の出願であって、平成25年3月15日付けで手続補正がなされたが、同年6月18日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年9月17日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に補正がなされ、当審において、同年12月6日付けで審尋を行ったが審判請求人からの回答はなかった。

第2 平成25年9月17日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年9月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項4は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項6を、特許請求の範囲の限定的減縮を目的として下記の通りに補正したものである。
「【請求項4】
ナトリウムを含有するガラス基体の少なくとも一方の主面に有機金属系材料として、DMZ(ジメチルジンク)又はDEZ(ジエチルジンク)を用いたプラズマCVD法によって炭素を含む酸化亜鉛層を電子装置の透明導電性層及びナトリウム拡散防止層として成膜する工程を含んでいることを特徴とする電子装置の製造方法。」

そこで、本件補正後の請求項4に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項4に記載された上記のとおりのものである。(「第2」[理由]「1」参照。)

3 引用刊行物
これに対して、原査定における拒絶の理由で引用した、本願の出願前である平成3年9月10日に頒布された「実願平1-149932号(実開平3-88223号)のマイクロフィルム 」(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(ただし、下線は当審で付した。)
a 記載事項ア
「(イ)産業上の利用分野
本考案は透明導電体及びそれを使用した光電変換装置に関する。」(第1頁第15?17行)
b 記載事項イ
「(へ)実施例
第1図は、第1の考案に係る透明導電体の断面を模式的に示したものである。(1)はガラス等の透明基体、(2)は該基体(1)の一主面に形成された酸化亜鉛(ZnO)の透明導電膜で、該導電膜(2)中には、導電率を低下させるために周期律表第III族又は第IV族元素が数%程度適宜添加されている。(3)は上記ZnOの透明導電膜(2)を覆う金属薄膜で、例えばTi、Ni、Pd、Au、Ag、Pt等からなり、透光性を呈すべく約20?300Åの厚みを備えている。斯る構成の透明導電体は以下のようにして作成された。先ず、厚み1.1mm、基板サイズ100mm×100mmの表面が充分に洗浄され、乾燥されたソーダライムガラスの透明基体(1)を準備する。次いでこの透明基体(1)をスパッタリング装置にセットし、Siが酸化物の形で2ωt%添加された酸化亜鉛をターゲットとして、高周波スパッタ法により膜厚約3000ÅのSiドープのZnOからなる透明導電膜(2)を成膜した。しかる後、同一のスパッタリング装置を利用して装置内の真空状態を維持しつつ、ターゲットを金属、例えばTiに切替え膜厚約50ÅのTi薄膜(3)を重畳した。
このようにして作成された透明導電体について面積抵抗を測定したところ15Ω/sqと、フッ素ドープのSnO_(2)とほぼ同等で、ITOより低抵抗の膜が得られた。また、可視光領域全域において85%以上の透過率が得られ、この抵抗値及び透過率は、ともに光電変換装置、液晶表示装置、a-Siの薄膜トランジスタからなるアクティブマトリックスを備えた液晶表示装置に使用できるものである。この透明導電体に対して、真空中で300℃の加熱処理を施したところ、面積抵抗及び透過率ともに変化がなく、熱的に安定であった。」(第4頁第2行?第5頁第16行)
c 記載事項ウ
「 第1図



d 引用例記載の発明
上記記載事項ア乃至上記記載事項ウからすると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ソーダライムガラスの透明基体(1)をスパッタリング装置にセットし、高周波スパッタ法によりSiドープのZnOからなる透明導電体膜(2)を成膜する光電変換装置の製造方法。」

4 本件補正発明と引用発明の対比
ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ソーダライムガラスの透明基体(1)」及び「光電変換装置」は、本件補正発明の「ナトリウムを含有するガラス基体」及び「電子装置」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「SiドープのZnOからなる透明導電体膜(2)」は、本件補正発明の「酸化亜鉛層」及び「透明導電性層」に相当する。
(2)本件出願の明細書には、「従来アルカリガラス基体上に電子素子が形成される電子装置においては当該電子素子用の透明電極の層がアルカリガラス基体のナトリウム拡散防止層上に設けられるが、本発明者等は、当該透明電極として酸化亜鉛層を用いると、該酸化亜鉛層自体がナトリウム等のアルカリ金属に対して優れた拡散防止層として作用することを新たに見出し、その結果、酸化亜鉛層を用いるだけで、従来のナトリウム拡散防止層を省略できると云う事実を見出し、本発明に至ったものである」(【0009】)と記載されており、この記載からすると、引用発明の「ソーダライムガラスの透明基体(1)」に「成膜」された「SiドープのZnOからなる透明導電体膜(2)」は、本件補正発明の「ナトリウム拡散防止層」として機能するものであるといえる。
そうすると、引用発明の「ソーダライムガラスの透明基体(1)をスパッタリング装置にセットし、高周波スパッタ法によりSiドープのZnOからなる透明導電体膜(2)を成膜する」構成と、本件補正発明の「ナトリウムを含有するガラス基体の少なくとも一方の主面に有機金属系材料として、DMZ(ジメチルジンク)又はDEZ(ジエチルジンク)を用いたプラズマCVD法によって炭素を含む酸化亜鉛層を電子装置の透明導電性層及びナトリウム拡散防止層として成膜する工程を含んでいる」構成とは、「ナトリウムを含有するガラス基体の少なくとも一方の主面に酸化亜鉛層を電子装置の透明導電性層及びナトリウム拡散防止層として成膜する工程を含んでいる」構成で共通する。
(3)引用発明の「光電変換装置の製造方法」は、本件補正発明の「電子装置の製造方法」に相当する。

上記(1)乃至(3)の対比から、本件補正発明と引用発明は、
「ナトリウムを含有するガラス基体の少なくとも一方の主面に酸化亜鉛層を電子装置の透明導電性層及びナトリウム拡散防止層として成膜する工程を含んでいる電子装置の製造方法。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
酸化亜鉛層を成膜する方法が、本件補正発明は、「有機金属系材料として、DMZ(ジメチルジンク)又はDEZ(ジエチルジンク)を用いたプラズマCVD法」であって、酸化亜鉛層が「炭素を含む」のに対し、引用発明は、高周波スパッタ法であって、SiドープのZnOが炭素を含むのか不明である点。

5 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
有機金属系材料として、DMZ(ジメチルジンク)又はDEZ(ジエチルジンク)を用いたプラズマCVD法により、酸化亜鉛層を形成することは、周知技術(国際公開第2008/146575号の[0078]乃至[0081]、特開2009-33184号公報の【0155】、特開2007-165805号公報の【0025】乃至【0030】、特開昭63-303070号公報の第2頁左下欄第11行?右下欄第8行、及び、第3頁右上欄第2行?第4行参照。)である。
一方、有機金属材料を用いたCVD法により形成された膜に炭素が混入することは自明の事項であるから、有機金属系材料を用いたプラズマCVD法により酸化亜鉛を形成すると、その酸化亜鉛は炭素を含むものであるといえる。
そして、プラズマCVD法も高周波スパッタ法も薄膜形成技術として広く知られたものであるから、引用発明のSiドープのZnOの成膜方法として、高周波スパッタ法に代えて、上記周知技術を採用し、DMZ(ジメチルジンク)又はDEZ(ジエチルジンク)を用いたプラズマCVD法により形成して、炭素を含む酸化亜鉛を形成することは、当業者が容易になし得たことである。

上記相違点については上記のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 本件補正についての補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年9月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年3月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6に記載されたとおりの以下のものである。
「【請求項6】
ナトリウムを含有するガラス基体の少なくとも一方の主面に有機金属系材料を用いたプラズマCVD法によって炭素を含む酸化亜鉛層を電子装置の透明導電性層及びナトリウム拡散防止層として成膜する工程を含んでいることを特徴とする電子装置の製造方法。」

2 引用刊行物及び引用発明
原査定における拒絶の理由で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物及びその記載事項、ならびに引用発明は、上記「第2」[理由]「3」に記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比及び判断
本願発明は、本件補正発明から、その構成要素である「プラズマCVD法」に用いる「有機金属系材料」に関し、「DMZ(ジメチルジンク)又はDEZ(ジエチルジンク)」である構成を省いたものである。
ここで、本願発明の発明特定事項を全て含み、上記構成要素を限定した本件補正発明が、上記「第2」[理由]「5」に記載した通り、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-12 
結審通知日 2014-06-18 
審決日 2014-06-26 
出願番号 特願2009-109552(P2009-109552)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 土屋 知久
横林 秀治郎
発明の名称 電子装置及びその製造方法  
代理人 福田 修一  
代理人 池田 憲保  

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