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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1290461
審判番号 不服2013-6799  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-12 
確定日 2014-08-07 
事件の表示 特願2008-112911「形状測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日出願公開,特開2009-264840〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
平成20年 4月23日 :特許出願
平成24年10月19日付け:拒絶理由通知(同年同月23日発送)
平成24年12月19日 :意見書
平成24年12月19日 :手続補正書
平成25年 1月 9日付け:拒絶査定(同年同月15日送達)
平成25年 4月12日 :手続補正書(以下「本件補正」という。)
平成25年 4月12日 :審判請求
平成25年 5月 7日 :前置報告
平成26年 1月 8日付け:審尋(同年同月14日発送)
平成26年 3月13日 :回答書

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲は,以下のとおりである。
「【請求項1】
被測定物を挟んで対向配置される少なくとも2台の駆動機構付き測定機と,
前記2台の測定機のそれぞれを制御する2台の制御装置と,
前記2台の制御装置のそれぞれに接続される少なくとも2台の操作コントローラと,
を備える形状測定装置であって,
前記2台の制御装置を連携可能なように相互に接続する連携手段を備え,
前記操作コントローラは,前記測定機の手動操作を実行可能に構成され,
前記操作コントローラは,切替ボタンを有し,前記切替ボタンを切り替えることによって操作対象となる測定機を選択可能に構成され,
前記操作コントローラの手動操作モードにおいて,一つの操作コントローラの前記切替ボタンの切り替えにより,当該操作コントローラが接続された制御装置を介して当該操作コントローラが接続された制御装置によって制御される測定機の操作と,当該コントローラが接続された制御装置に前記連携手段を介して接続された他の制御装置によって制御される測定機の操作とを切り替える
ことを特徴とする形状測定装置。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
被測定物を挟んで対向配置される少なくとも2台の駆動機構付き測定機と,
前記2台の測定機のそれぞれを制御する2台の制御装置と,
前記2台の制御装置のそれぞれに接続される少なくとも2台の操作コントローラと,
を備える形状測定装置であって,
前記2台の制御装置を連携可能なように相互に接続する連携手段を備え,
前記操作コントローラは,前記測定機の手動操作を実行可能に構成され,
前記操作コントローラは,切替ボタンを有し,前記切替ボタンを切り替えることによって操作対象となる測定機を選択可能に構成され,
前記2台の制御装置が共に手動操作モードである場合,一つの操作コントローラの前記切替ボタンの切り替えにより,当該操作コントローラが接続された制御装置を介して当該操作コントローラが接続された制御装置によって制御される測定機の操作と,当該コントローラが接続された制御装置に前記連携手段を介して接続された他の制御装置によって制御される測定機の操作とを切り替え,
いずれかの前記制御装置が自動測定モードである場合,前記自動測定モードが優先されて前記測定機の操作の切り替えは行われない
ことを特徴とする形状測定装置。」

(3) 検討
本件補正は,本件補正前の特許請求の範囲に係る発明(以下「本願発明」という。)における測定器の操作の切り替えに関して,「前記2台の制御装置が共に手動操作モードである場合」には測定器の操作を切り替え,「いずれかの前記制御装置が自動測定モードである場合,前記自動測定モードが優先されて前記測定機の操作の切り替えは行われない」と限定して減縮する補正であるから,本件補正は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲に係る発明(以下「本件補正後発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。

2 独立特許要件
(1) 本件補正後発明
本件補正後発明は,本件補正後の明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,前記「1」の「(2)」に記載のとおりである。
【図2】


(2) 引用例に記載の事項
本件特許出願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-347256号公報(発明の名称:「形状測定装置」,出願人:「株式会社ミツトヨ」,出願日:平成5年6月8日,公開日:平成6年12月20日,以下「引用例」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,2台以上の駆動機構付き測定機を共通の測定範囲を持つように対向配置して構成される形状測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車のような大きな被測定物の形状を高速に測定する三次元形状測定装置として,2台の三次元測定機を被測定物を挟んで対向配置して,これら2台の測定機により同時測定を行うデュアル形式の測定装置がある。この場合,2台の測定機で被測定物の両側から形状測定を行うため,測定漏れがないようにするためには,これらの測定機は共通の測定範囲を持つように対向配置することが必要になる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のようなデュアル形式の測定装置では,二つの測定機が共に測定できる領域を持つため,互いに干渉(衝突)する可能性がある。従って互いの位置をチェックしながら,測定機破壊等を防止することが必要になる。本発明はこのような点に鑑み,干渉防止機能を持たせたデュアル形式の形状測定装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明に係る形状測定装置は,共通の測定範囲を持つように対向配置された少なくとも2台の駆動機構付き測定機と,これらの測定機にそれぞれ接続されて互いの使用領域情報を送受信して干渉チェックを行い,干渉しない場合に相手方の許可を得てから測定機移動指令を出す制御手段とを有することを特徴としている。」

イ 「【0006】
【実施例】以下,図面を参照して,本発明の実施例を説明する。図1は,本発明の一実施例よるデュアル形式の三次元形状測定装置のシステム構成である。2台の三次元測定機CMM1,CMM2は図示のように対向配置される。三次元測定機CMM1は,スピンドル1_(1) とその先端に取り付けられた測定子2_(1) ,これらを駆動する駆動装置3_(1) ,及び測定のための移動制御を行う制御装置4_(1) を有する。他方の三次元測定機CMM2も同様に,スピンドル1_(2) とその先端に取り付けられた測定子2_(2) ,これらを駆動する駆動装置3_(2) ,及び測定のための移動制御を行う制御装置4_(2) を有する。
【0007】各三次元測定機CMM1,CMM2は,それぞれ図1に示すようにX,Y,Zの三軸方向の測定が可能であり,コンピュータ制御を利用した自動測定機能(以下,CNC機能という)と,ジョイスティック操作による手動測定機能(以下,JS機能という)を有するものとする。」
【図1】


ウ 「【0008】これら2台の測定機CMM1,CMM2の測定範囲は例えば,次のように設定されている。
CMM1
X=0?5000mm
Y=0?1700mm
Z=0?1500mm
CMM2
X=0?5000mm
Y=1300?3000mm
Z=0?1500mm
【0009】以上のように設定された測定範囲を例えば,X-Y平面について図示すれば,図2のようになる。Y軸測定範囲は,共通の測定範囲即ち干渉領域として1300?1700mmを含み,システム全体としては,0?3000mmが測定可能となっている。制御装置4_(1) ,4_(2) は,それぞれの測定機CMM1,CMM2の位置制御を行うと共に,互いの使用領域を相手方と送受信して干渉チェックを行い,干渉のない状態で測定機制御を行う。この干渉防止制御の基本は,測定子を含む使用領域を相手方に送り,相手方からの許可があったときに移動(即ち測定)を行うというものである。」
【図2】


エ 「【0011】制御装置4_(1) ,4_(2) による制御動作のフローは,制御装置4_(1) を主体にして示せば,図4のようになる。三次元測定機CMM1の制御装置4_(1) は,図3に矢印で示す移動(測定)が指示されると(S_(11)),まず最初に図3に示したように測定すべき範囲である使用領域Bが計算される(S_(12))。次にこの使用領域Bが,相手方の測定機CMM2が既に確保している使用領域(これは相手方の測定機CMM2から既に送信され,測定機CMM1側で受信している)と干渉しないかどうかのチェックがなされる(S_(13))。
【0012】干渉している場合には,相手方の測定機CMM2が干渉しない位置まで移動するのを待つ。即ち,測定機CMM2では次の使用領域Cを確保してこれを送信するから(S_(21)),測定機CMM1ではこれを受信して(S_(14)),その領域Cの使用許可を送信した後(S_(15)),使用領域BとCの間の干渉チェックが行われる(S_(13))。干渉が解消されるまで同様の動作が繰り返される。
【0013】干渉がないと判断されると,測定機CMM1では使用領域Bを確保してこれを測定機CMM2側に送信する(S_(16))。測定機CMM2側ではこの測定機CMM1での使用領域Bの確保を受信すると(S_(23)),測定機CMM1に対して使用許可を送信する(S_(24))。測定機CMM1側ではこの使用許可を受信して(S_(17)),初めて移動(測定)の実行指令が出される。」
【図4】


オ 「【0017】以上のようにこの実施例によれば,2台の測定機が互いに使用領域を確認しあって,相手方の許可があった場合にのみ移動指令が出されるように2台の測定機が制御されるから,使用者は2台の測定機の干渉を考えることなく使用することができ,2台の測定機の衝突を自動的に回避して効率的な測定を行うことができる。」

カ 「【0018】次に,自動測定ではなく,ジョイスティック操作によるJS測定の制御を説明する。システム構成は先の実施例と同様であるが,図では省略している手動操作のためのジョイスティックが用いられる。JS測定の場合も,図6に示すように単位使用領域Aは,CNC測定の場合と同様に測定子の長さを考慮した直方体である。但しJS測定の場合は,CNC測定の場合と異なり次の移動位置は明確にならない。従って使用領域の算出は,ある定められた一定時間Ts毎に行うものとする。またこれにより設定される使用領域は,図6にB,Cとして例示したように,安全を見込んで時間Tsの2倍の時間内にJS操作で移動できる最大長Lを現在位置での使用領域に各軸について加えた直方体とする。」
【図6】


キ 「【0019】このようにして設定される各測定機の使用領域について,CNC測定の場合と同様に互いに送受信して干渉チェックが行われ,干渉がない場合に領域確保の送信,領域使用の許可の受信を待って移動指令が出される。干渉している場合には,前回確保した使用領域がJS移動許可領域として処理される。」

ク 「【0021】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば,2台の測定機を用いた形状測定装置において,各測定機に接続される制御手段に,互いに使用領域情報を送受信する機能,送受信情報をもとに干渉チェックを行う機能を持たせて,干渉しない場合に使用利領域を確保してこれに対して相手方の許可があった場合に初めて移動指令を出すという制御を行うことにより,干渉を防止して効率的な測定を行うことができる。」

(3) 引用発明
引用例には,ジョイスティックが各制御装置に1台ずつ(合計2台)設けられている旨の明記はないが,JS測定時の干渉チェックの使用領域が,双方の測定子が同時に移動し得ることを前提に設定されていることを考慮すると,引用例記載のジョイスティックが,各制御装置に1台ずつ接続されていることは明らかである。

そうしてみると,引用例には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 対向配置された2台の三次元測定機CMM1及びCMM2,
三次元測定機CMM1は,測定のための移動制御を行う制御装置4_(1) を有し,三次元測定機CMM2も測定のための移動制御を行う制御装置4_(2) を有し,
三次元測定器CMM1及びCMM2にそれぞれ接続される,2台の手動操作のためのジョイスティック,
を備えるデュアル形式の三次元形状測定装置であって,
制御装置4_(1) ,4_(2) は,互いの使用領域を相手方と送受信して干渉チェックを行い,干渉のない状態で測定機制御を行う,
デュアル形式の三次元形状測定装置。」

(4) 対比
ア 測定器
引用発明は,「対向配置された2台の三次元測定機CMM1及びCMM2」の構成を具備し,また,引用例において「デュアル形式の三次元形状測定装置」は,「2台の三次元測定機を被測定物を挟んで対向配置して,これら2台の測定機により同時測定を行う」ものを指す(段落【0002】)。
そうしてみると,引用発明の「2台の三次元測定器CMM1及びCMM2」は,本件補正後発明の「被測定物を挟んで対向配置される少なくとも2台の駆動機構付き測定機」に相当する。

イ 制御装置
引用発明は,「三次元測定機CMM1は,測定のための移動制御を行う制御装置4_(1) を有し,三次元測定機CMM2も測定のための移動制御を行う制御装置4_(2) を有し,」の構成を具備するから,引用発明の「制御装置4_(1) 」及び「制御装置4_(2) 」は,本件補正後発明の「前記2台の測定機のそれぞれを制御する2台の制御装置」に相当する。

ウ 操作コントローラ
引用発明は,「三次元測定器CMM1及びCMM2にそれぞれ接続される,2台の手動操作のためのジョイスティック」の構成を具備するから,引用発明の2台の「ジョイスティック」は,本件補正後発明の「前記2台の制御装置のそれぞれに接続される少なくとも2台の操作コントローラ」に相当し,また,引用発明の「ジョイスティック」は,本件補正後発明の「前記操作コントローラは,前記測定機の手動操作を実行可能に構成され」の要件を満たす。

エ 連携手段
引用発明は,「制御装置4_(1) ,4_(2) は,互いの使用領域を相手方と送受信して干渉チェックを行い,干渉のない状態で測定機制御を行う」の構成を具備する。また,「連携」は,通常,「同じ目的を持つ者が互いに連絡をとり,協力し合って物事を行うこと。」(広辞苑)を意味するところ,本件出願の明細書の段落【0012】及び【0013】にも同趣旨の記載がある。
そうしてみると,引用発明の制御装置は,本件補正後発明の「前記2台の制御装置を連携可能なように相互に接続する連携手段」の構成を具備するといえる。

オ 形状測定装置
以上の対比結果,並びに,本件補正後発明及び引用発明の全体構成からみて,引用発明の「デュアル形式の三次元形状測定装置」は,本件補正後発明の「形状測定装置」に相当する。

そうしてみると,本件補正後発明と引用発明の一致点及び(一応の)相違点は,以下のとおりとなる。

(一致点)
「 被測定物を挟んで対向配置される少なくとも2台の駆動機構付き測定機と,
前記2台の測定機のそれぞれを制御する2台の制御装置と,
前記2台の制御装置のそれぞれに接続される少なくとも2台の操作コントローラと,
を備える形状測定装置であって,
前記2台の制御装置を連携可能なように相互に接続する連携手段を備え,
前記操作コントローラは,前記測定機の手動操作を実行可能に構成された,
形状測定装置。」

(相違点)
操作コントローラに関して,本件補正後発明は,「前記操作コントローラは,切替ボタンを有し,前記切替ボタンを切り替えることによって操作対象となる測定機を選択可能に構成され,前記2台の制御装置が共に手動操作モードである場合,一つの操作コントローラの前記切替ボタンの切り替えにより,当該操作コントローラが接続された制御装置を介して当該操作コントローラが接続された制御装置によって制御される測定機の操作と,当該コントローラが接続された制御装置に前記連携手段を介して接続された他の制御装置によって制御される測定機の操作とを切り替え,いずれかの前記制御装置が自動測定モードである場合,前記自動測定モードが優先されて前記測定機の操作の切り替えは行われない」のに対して,引用発明は,この構成を具備しない点。

(5) 判断
引用発明のデュアル形式の三次元形状測定装置は,コンピュータ制御を利用した自動測定機能を具備する,省力化や効率化が求められる機器であるから,操作人員の削減や操作の効率化を目的として,対応して接続される被制御装置だけでなく,他の被制御装置についても操作可能な操作コントローラの周知技術(必要ならば,原審で引用された特開2000-261350号公報(以下「周知例1」という。)の請求項1,特開2005-278106号公報(以下「周知例2」という。)の請求項1を参照。)を採用することは,当業者が容易にできることである。また,制御対象となる被制御機器の切り替えに際し「ボタン」を採用することは,周知例1及び2に記載されているような「リモートコントローラ」における常套手段に過ぎない(必要ならば,原審で引用された実願平1-103790号(実開平3-44579号)のマイクロフィルム(以下「周知例3」という。)の5頁17ないし20行を参照。)。
そうしてみると,引用発明の操作コントローラを「切替ボタンを有し,前記切替ボタンを切り替えることによって操作対象となる測定機を選択可能に構成され」るものとし,「一つの操作コントローラの前記切替ボタンの切り替えにより,当該操作コントローラが接続された制御装置を介して当該操作コントローラが接続された制御装置によって制御される測定機の操作と,当該コントローラが接続された制御装置に前記連携手段を介して接続された他の制御装置によって制御される測定機の操作とを切り替え」る効果を得ることは,当業者が容易にできることである。
また,引用発明の「干渉防止制御の基本は,測定子を含む使用領域を相手方に送り,相手方からの許可があったときに移動(即ち測定)を行う」(段落【0009】)という,相手方の移動・測定を優先させる制御であるから,測定器の少なくとも一方がコンピュータ制御を利用した自動測定中における,手動操作を不許可とすべく「いずれかの前記制御装置が自動測定モードである場合,前記自動測定モードが優先されて前記測定機の操作の切り替えは行われない」ようにし「前記2台の制御装置が共に手動操作モードである場合」のみ「一つの操作コントローラの前記切替ボタンの切り替えにより,当該操作コントローラが接続された制御装置を介して当該操作コントローラが接続された制御装置によって制御される測定機の操作と,当該コントローラが接続された制御装置に前記連携手段を介して接続された他の制御装置によって制御される測定機の操作とを切り替え」るようにして,実行中の測定が妨げられないようにすることは,引用例が示唆する制御の基本の延長線上の事項に過ぎない(なお,測定中に手動操作を無効にする構成が明記された文献として,特表平3-505427号公報の3頁左下欄19行ないし右下欄1行を参照。)。

また,本件補正後発明が奏する効果は,当業者が引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものである。

(6) 回答書について
審判請求人は,回答書において「引用文献2?4には,1つの操作コントローラで複数の機器を制御することができる点が開示されていますが,いずれかの操作対象がそれぞれに接続された制御装置を介して切り替え操作が行われる点と,自動測定モードでの制御という点についての開示も示唆もありません。」と主張しているが,特許請求の範囲には,切り替え操作の信号が制御装置(の連携手段)を介して伝送される旨の記載は存在しない。
(当審注:なお,引用発明は,既に2台の制御装置が移動制御のための情報を送受信する構成を具備するから,切り替え操作の信号の送受信に際しても,この送受信手段を利用するのが自然である。)

(7) 小括
したがって,本件補正後発明は,その出願前に日本国内において頒布された引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

3 補正却下の決定についてのまとめ
本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本件出願の特許請求の範囲に係る発明(本願発明)は,前記「第2」「1」の(1)に記載のとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用例に記載の事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例に記載の事項及び引用発明は,前記「第2」「2」の(2)及び(3)に記載したとおりである。

4 対比及び判断
本願発明は,本件補正後発明における測定器の操作の切り替えに関して,「2台の制御装置が共に手動操作モードである場合」には測定器の操作を切り替え,「いずれかの前記制御装置が自動測定モードである場合,前記自動測定モードが優先されて前記測定機の操作の切り替えは行われない」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに,他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正後発明が,前記「第2」「2」の(4)及び(5)で述べたとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたことを考慮すると,本願発明も同様に,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
また,本願発明が奏する効果は,当業者が引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものである。

第4 まとめ
以上のとおり,本件出願の特許請求の範囲に記載された発明は,その出願前に日本国内において頒布された引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-04 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-25 
出願番号 特願2008-112911(P2008-112911)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
P 1 8・ 575- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北川 創  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 樋口 信宏
武田 知晋
発明の名称 形状測定装置  
代理人 伊丹 勝  

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