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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L
管理番号 1290465
審判番号 不服2013-11520  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-19 
確定日 2014-08-07 
事件の表示 特願2010-184139「音声伝送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月 1日出願公開、特開2012- 42732〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯と本願発明
本願は、平成22年8月19日の出願であって、原審において平成25年3月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月19日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年7月31日付けで当審より審尋がなされ、同年10月3日付けで回答書が提出され、平成26年3月28日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年6月2日付けで手続補正がされたものである。

特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成26年6月2日付けで手続補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換するAD変換装置、複数の音声処理装置、および処理されたデジタル信号を任意のアナログ音声信号に変換して出力するDA変換装置を、ルーターを介して接続し、
前記AD変換装置、複数の音声処理装置、DA変換装置およびルーター間で授受する信号を、各装置およびルーター間の全てにおいて常に32Bit浮動小数点フォーマットとしたことを特徴とする音声伝送システム。」

第2 引用発明
A 当審の拒絶理由に引用された特表2005-530379号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信に関する。
【背景技術】
【0002】
以下では、所謂ダイレクトストリームデジタル(Direct Stream Digital:以下、DSDという。)オーディオデータのコンテキストを用いて、データ通信における問題を具体的に説明する。しかしながら、本発明は、例えばマルチビットオーディオデータ又はビデオデータ等の他の種類の同期された(clocked)データにも適用できる。
【0003】
DSDは、スーパーオーディオCD(Super Audio CD)と呼ばれる民生用ディスクフォーマットに用いられる高分解能の1ビットオーディオコーディング方式である。DSD信号は、DCから100kHzまでの周波数応答を実現し、オーディオ帯域に亘って120dB以上のダイナミックレンジを有することができる。」(7頁)

ロ.「【0034】
本発明に基づくDSD相互接続の実施例を図3に示す。この構成400においては、単一のケーブル405を用いて、マルチチャンネルA/D及びD/A変換器410をDSDマルチチャンネルレコーダ420に接続している。ケーブル405は、カテゴリ5シールドなしツイストペアケーブルである。このケーブル405は、4対の信号線を有し、これらのうちの2対が、イーサネット物理層技術を用いて符号化されたオーディオデータの送信及び受信に用いられ、残る2対が、リンクを介してDSDサンプリングクロックを双方向に伝送するために用いられる(下記の表1参照)。クロック信号及びオーディオデータは、2つの信号間の干渉がクロック信号の品質を劣化させる可能性を減らすように規定されている。クロック信号は、受信機の位相同期ループ(phase locked loop:以下、PLLという。)を同期させるために用いられ、また、A/D変換器及びD/A変換器のサンプリングクロックとしても用いることができる。サンプリングクロックにジッタが生じると、ジッタは再生アナログオーディオ出力信号における歪みとして現れるので、サンプリングクロックの如何なるジッタも望ましくない。オーディオ信号は、生来的にデジタル信号であり、したがって、クロック信号に比べて劣化に対してロバストである。イーサネットのようなパケットデータ伝送システムは、DSDオーディオデータを伝送することができる。この特定の実施例では、高速イーサネット(100BASE-TX)の物理層を用いて、32個のDSDチャンネルを単一のリンクで伝送することができる100Mbit/秒のチャンネルビットレートを実現している。他の実施例として、100Mbit/秒のリンクを用いて、24個のDSDチャンネルを単一のリンクを介して伝送してもよい。
【0035】
イーサネットは、非同期データリンクであり、したがって、64Fsオーディオクロック信号を高い完全性(high-integrity)を保って伝送するには、本質的に適していない。このため、オーディオサンプリングクロックをカテゴリ5UTPケーブルの独立した信号対として伝送している。
【0036】
図3に示す1本のケーブルでの接続は、基本的に、2つのオーディオ機器を直接接続するポイントツーポイントリンクである。この接続は、入出力接続を逆にするよう配線された特別な「クロスオーバ」のカテゴリ5ケーブルを用いている。例えばオフィスネットワーク等に用いられている従来のクロスオーバケーブルは、本発明の実施例においてオーディオサンプリングクロックの伝送に用いてる2対の信号線接続を逆にしないので、ここでは特注のクロスオーバケーブルが必要である。例えば図4に示す本発明の他の実施例においては、DSD設備における複数の個々の機器間でより複雑な相互接続を行うこともできる。図4に示すシステムは、スター構成のDSDルータ430と、マルチチャンネルA/D及びD/A変換器440と、DSDミキサ450と、DSDマルチチャンネルレコーダ460とを備える。中央のDSDルータ430には、3つのポイントツーポイントリンク445、455、465が接続されている。図3に示す実施例とは異なり、このスター構成では、3つの各接続に対して、標準のカテゴリ5ケーブルを用いることができる。これは、1つの機器の信号出力が他の機器の信号入力に接続されるように、DSDルータ430の内部においてポート接続が逆にされているためである。」(13?14頁)

上記引用例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記イ.の【0001】における「本発明は、データ通信に関する。」との記載、上記ロ.の【0036】における「図4に示すシステムは、スター構成のDSDルータ430と、マルチチャンネルA/D及びD/A変換器440と、DSDミキサ450と、DSDマルチチャンネルレコーダ460とを備える。中央のDSDルータ430には、3つのポイントツーポイントリンク445、455、465が接続されている。」との記載、及び図4によれば、データ通信システムは、マルチチャンネルA/D及びD/A変換器(440)、およびDSDミキサ(450)を、DSDルータ(430)を介して接続している。

したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「マルチチャンネルA/D及びD/A変換器(440)、およびDSDミキサ(450)を、DSDルータ(430)を介して接続するデータ通信システム。」

B 当審の拒絶理由に引用された特開平10-336037号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

ハ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オーディオ信号を伝送するためのオーディオ信号符号化装置に関し、特に浮動小数点型A/D変換器で量子化を行なうことにより、低遅延かつ低ビットレートで信号を伝送するものである。」(2頁1欄)

ニ.「【0009】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、従来の固定小数点型A/D変換器に代わりに浮動小数点型A/D変換器で量子化を行なうようにしたものであり、固定小数点フォーマットに比べて低いビットレートで同等以上の音質を伝送できるという作用を有する。」(2頁2欄)

ホ.「【0014】(第1の実施の形態)図1は第1の実施の形態におけるオーディオ信号符号化装置の構成を示すものであり、図1において浮動小数点型A/D変換装置101は、入力されたアナログオーディオ信号を浮動小数点フォーマットで量子化するものである。伝送路102は、量子化された信号を伝送する経路である。浮動小数点型D/A変換装置103は浮動小数点フォーマットで量子化された信号をアナログオーディオ信号に変換するものである。」(2頁2欄)

上記引用例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ホ.の【0014】における「図1は第1の実施の形態におけるオーディオ信号符号化装置の構成を示すものであり、図1において浮動小数点型A/D変換装置101は、入力されたアナログオーディオ信号を浮動小数点フォーマットで量子化するものである。伝送路102は、量子化された信号を伝送する経路である。浮動小数点型D/A変換装置103は浮動小数点フォーマットで量子化された信号をアナログオーディオ信号に変換するものである。」との記載、及び図1によれば、オーディオ信号符号化装置は、浮動小数点型A/D変換装置(101)から、アナログオーディオ信号を浮動小数点フォーマットで量子化し、浮動小数点フォーマットで量子化された信号を浮動小数点型D/A変換装置(103)へ伝送している。ここで、上記ニ.の【0009】における「従来の固定小数点型A/D変換器に代わりに浮動小数点型A/D変換器で量子化を行なうようにしたものであり、固定小数点フォーマットに比べて低いビットレートで同等以上の音質を伝送できるという作用を有する。」との記載によれば、オーディオ信号符号化装置は、オーディオ信号を固定小数点フォーマットに比べて低いビットレートで同等以上の音質を伝送できるものである。すなわち、オーディオ信号符号化装置は、オーディオ信号を優れた音質で伝送するために、A/D変換装置からD/A変換装置ヘ伝送する信号を浮動小数点フォーマットとしているということができる。

したがって、上記引用例2には以下の発明(以下、「技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「オーディオ信号を優れた音質で伝送するために、A/D変換装置からD/A変換装置ヘ伝送する信号を浮動小数点フォーマットとする技術。」

C 当審の拒絶理由に引用された特開2005-56426号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

ヘ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、デジタルメディアデータを処理する分野に関する。更に具体的には、本発明は、複数の処理モジュール間でメディアデータを伝達するための方法、及びメディアデータを処理するためのデジタル処理装置に関する。」(3頁)

ト.「【0011】
特に図2の図面を参照すると、参照番号30は、一般に、本発明の別の実施形態によるデジタル処理装置を示す。装置30は装置10に類似しており、従って、他に指示しない限り同じ参照番号は、同じ又は類似の構成要素を示すのに使用される。
【0012】
装置30は、本明細書で既に説明されたモジュールとほぼ類似する、DSPモジュール12、遅延モジュール14、サンプルレートコンバータ(SRC)モジュール16、フィルタモジュール18、及びミキサモジュール20を含む。更に、装置30は、オーディオメモリ転送モジュール32及びデジタルオーディオ入出力(I/O)モジュール34を含む。オーディオメモリ転送モジュール32は、例えばコンピュータ装置(例えばパーソナルコンピュータ、すなわちPC)のバスの一部を形成することができるインターフェイス・モジュール38とバス36により通信する。1つの実施形態において、インターフェイス・モジュール38は、ブリッジ40と、該ブリッジ40を従来のPCバス44に接続する2つのPCI-Xバスインターフェイス42とを含む。デジタルI/Oモジュール34は、デジタルオーディオ入力を受け取り、デジタルオーディオ出力を出力装置に供給することができる。装置10の場合と同様に、装置30は、モジュール12、34、32及び14-20を直列に相互接続するデータ経路22を含む。
【0013】
装置30のデータ経路22は、オーディオデータ経路又はオーディオバス46の例示的な形態であるメディアデータ経路と、パラメータバス48の例示的な形態である処理制御経路とを含む。1つの実施形態において、オーディオバス46とパラメータバス48の両方は、種々の処理モジュール12-20、32、34間でデータが時分割多重化方式で通信されるリング構成で配置される。種々のモジュールがオーディオバス46に沿って位置付けられると、オーディオデータは、中央ハブ(例えばDSP)を通したデータ転送を必要とすること無く、モジュール間で転送することができる。幾つかの実施形態において、装置30は、インターフェイス・モジュール38及びオーディオメモリ転送モジュール32を介して外部コンピュータを処理モジュール12-20にインターフェイスする転送バス50を含む。」(4?5頁)

チ.「【0023】
本発明の1つの実施形態において、オーディオバス46を介して伝達されるオーディオデータは、32ビットのIEEE浮動小数点フォーマット(単精度)である。従って固定小数点フォーマット(例えば固定少数点オーディオ)で動作するデータ経路22に配置されたどのようなモジュールも、浮動小数点フォーマットへの変換及び浮動小数点フォーマットからの変換を実行することが必要となる可能性がある。固定小数点フォーマットが-1から+1の範囲内にあると定義される場合、固定小数点フォーマットのどのようなハードウェア変換もこの範囲外にある浮動少数点値を飽和させることになる。従って、ミキサモジュール20を用いて、変換が-1から+1の範囲内にあるように固定小数点変換を実行する任意の処理モジュールにおいて、データ経路22上に位置するどのようなデジタルデータをも位取りすることができる。例えば、本発明の1つの実施形態において、サンプルレート・コンバータ・モジュール16及びデジタルオーディオI/Oモジュール34は、固定小数点フォーマットでデータを処理することができ、次いでミキサモジュール20が位取りを要求することができる。」(8頁)

また、当審の拒絶理由に引用された特開2006-162774号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

リ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、音声の復号化に用いられる信号処理装置に関する。特に、オーディオ符号化方式AAC+SBR方式のデコード処理において、従来より少ないメモリ量でデコード処理を実現する信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル信号処理技術の発達に伴い、様々な音声符号化方式が開発されている。AAC+SBRと呼ばれる符号化方式もその一つである。AAC+SBRとは、これまで既に符号化方式として存在していたAAC方式に帯域拡張技術(SBR : Spectral Band Replication)を適用したもので、非常に少ない情報量で広帯域な再生が可能となっている(たとえば、ISO/IEC14496-3)。
【0003】
AAC+SBRの国際標準規格書によれば、入力音声データや内部処理用の係数を浮動小数点型(32ビット)で扱うことが述べられており、そのことによって多大のメモリを必要としている。以下、図面を参照しながら、SBRの処理が多大のメモリを必要とする理由を説明する。」(3頁)

上記周知例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記チ.の【0023】における「オーディオバス46を介して伝達されるオーディオデータは、32ビットのIEEE浮動小数点フォーマット(単精度)である。」との記載、及び上記周知例1の図2によれば、オーディオデータは、32ビットのIEEE浮動小数点フォーマットである。また、上記周知例2の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記リ.の【0003】における「AAC+SBRの国際標準規格書によれば、入力音声データや内部処理用の係数を浮動小数点型(32ビット)で扱う」との記載によれば、入力音声データは、浮動小数点型(32ビット)である。

したがって、上記周知例1及び上記周知例2には、以下の発明(以下、「周知技術」という。)が記載されているものと認められる。

「浮動小数点フォーマットとして、32ビット浮動小数点フォーマットを用いること。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「マルチチャンネルA/D及びD/A変換器(440)」と、本願発明の「入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換するA/D変換装置、および処理されたデジタル信号を任意のアナログ音声信号に変換して出力するD/A変換装置」とは、「マルチチャンネルA/D変換器」が、入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換する機能を有すること、また、「マルチチャンネルD/A変換器」が、デジタル信号をアナログ音声信号に変換して出力する機能を有することは技術常識であるから、後述する相違点を除いて、「入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換するA/D変換およびデジタル信号を任意のアナログ音声信号に変換して出力するD/A変換装置」という点で一致する。
b.引用発明の「DSDミキサ(450)」は、上記引用例1の上記イ.の【0003】における「DSDは、スーパーオーディオCD(Super Audio CD)と呼ばれる民生用ディスクフォーマットに用いられる高分解能の1ビットオーディオコーディング方式である。」との記載、また、ミキサが、二つのオーディオ信号を混合する回路であるという技術常識を考慮すると、「音声処理装置」に含まれる。
c.引用発明の「DSDルータ(430)」は、「ルータ」の一種である。
d.引用発明の「データ通信システム」は、オーディオ(音声)信号を伝送しているから、「音声伝送システム」ということができる。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換するAD変換およびデジタル信号を任意のアナログ音声信号に変換して出力するDA変換装置、および音声処理装置を、ルーターを介して接続する音声伝送システム。」

<相違点1>
「入力されたアナログ音声信号をデジタル信号に変換するAD変換およびデジタル信号を任意のアナログ音声信号に変換して出力するDA変換装置」に関し、
本願発明は、AD変換装置及びDA変換装置が別体であり、また、DA変換装置の入力について、「処理された」デジタル信号であるのに対し、引用発明は、A/D及びD/A変換器(440)が一体であり、また、DA変換器の入力について、「処理された」デジタル信号であるか不明な点。

<相違点2>
「音声処理装置」に関し、
本願発明は、「複数の」ものであるのに対し、引用発明は、当該「複数の」との特定がない点。

<相違点3>
「AD変換装置、音声処理装置、DA変換装置およびルーター」間で授受する信号の態様に関し、
本願発明は、「前記AD変換装置、複数の音声処理装置、DA変換装置およびルーター間で授受する信号を、各装置およびルーター間の全てにおいて常に32Bit浮動小数点フォーマットとした」のに対し、引用発明は、その様な特定がない点。

第4 判断
そこで、まず、上記相違点1及び3について検討する。
上記技術事項は、「オーディオ信号を優れた音質で伝送するために、A/D変換装置からD/A変換装置ヘ伝送する信号を浮動小数点フォーマットとする技術。」である。そして、引用発明の「マルチチャンネルA/D及びD/A変換器(440)、およびDSDミキサ(450)を、DSDルータ(430)を介して接続するデータ通信システム。」は、マルチチャンネルA/D変換器(440)から、DSDルータ(430)を介して、DSDミキサ(450)へ、さらに、DSDミキサ(450)から、DSDルータ(430)を介して、マルチチャンネルD/A変換器(440)へオーディオ信号を伝送する場合に着目すると、マルチチャンネルA/D変換器(440)から、マルチチャンネルD/A変換器(440)へ至るオーディオ信号を優れた音質で伝送することが好ましいことは明らかである。
そうすると、上記技術事項に接した当業者であれば、引用発明に上記技術事項を採用して、AD変換装置及びDA変換装置を別体とし、「前記AD変換装置、音声処理装置、DA変換装置およびルーター間で授受する信号を、各装置およびルーター間の全てにおいて常に浮動小数点フォーマットとする」ことは容易になし得ることである。その際、上記のように「浮動小数点フォーマットとして、32ビット浮動小数点フォーマットを用いること。」は、周知技術であるから、「32Bit浮動小数点フォーマットとする」こと、また、DA変換器(DA変換装置)の入力は、DSDミキサ(450)(音声処理装置)を経由するから、「処理された」デジタル信号なることは自然である。

次に、上記相違点2について検討する。
上記周知例1の上記ト.の【0012】における「装置30は、・・・DSPモジュール12、遅延モジュール14、サンプルレートコンバータ(SRC)モジュール16、フィルタモジュール18、及びミキサモジュール20を含む。」との記載、及び図2によれば、音声伝送システムにおいて、音声処理装置を複数用いることは普通に行われていることである。
そうすると、当業者であれば、「音声処理装置」について、本願発明のように、「複数の」ものとすることに格別な困難性はない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、上記技術事項及び上記周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記技術事項及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2014-06-09 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-24 
出願番号 特願2010-184139(P2010-184139)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊地 陽一浜岸 広明  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 井上 信一
萩原 義則
発明の名称 音声伝送システム  
代理人 木内 光春  

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