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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1290470
審判番号 不服2013-16444  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-26 
確定日 2014-08-07 
事件の表示 特願2009-297555「エピタキシャル膜および発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月14日出願公開、特開2011-138896〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成21年12月28日の出願であって、平成25年5月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲の補正がなされたものである(以下、この平成25年8月26日になされた補正を「本件補正」という。)。

2 本件補正についての却下の決定
(1)結論
本件補正を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲につき、
「【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されたIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)とを備え、
厚みのばらつきが6%以内である、エピタキシャル膜。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層とを備え、
前記第1および第2導電型クラッド層の少なくとも一方がIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)であり、
厚みのばらつきが6%以内である、エピタキシャル膜。
【請求項3】
前記厚みのばらつきが2%以内である、請求項1または2に記載のエピタキシャル膜。
【請求項4】
請求項2に記載のエピタキシャル膜と、
前記エピタキシャル膜に形成された電極とを備えた、発光素子。」
を、
「【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層とを備え、
前記第1および第2導電型クラッド層の少なくとも一方がIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)であり、
前記第1導電型クラッド層の厚みのばらつきが5.6%以内であり、
前記基板は窒化ガリウム基板である、エピタキシャル膜。
【請求項2】
前記第1導電型クラッド層の前記厚みのばらつきが1.7%以内である、請求項1に記載のエピタキシャル膜。
【請求項3】
請求項1に記載のエピタキシャル膜と、
前記エピタキシャル膜に形成された電極とを備えた、発光素子。」
に補正する内容を含むものである。

イ 補正の適否についての判断
上記アの補正内容は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2を補正して補正後の請求項1とするものであるところ、補正前の請求項1及び請求項2において「厚みのばらつきが6%以内である」のは、「In_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)」であると解される(本願明細書においても、例えば、【0010】に「本発明者は、鋭意研究の結果、InAlGaN層の厚みのばらつきが6%以内の場合に、歩留まりを向上できることを見い出した。」と記載されるところである。)。
しかるに、補正後の請求項1においては、「第1導電型クラッド層の厚みのばらつきが5.6%以内」とされるところ、同請求項において、「前記第1および第2導電型クラッド層の少なくとも一方がIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)であり」とされるとおり、「第1導電型クラッド層」は、「In_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)」に限定されるものではなく、「In_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)」は、「厚みのばらつき」が限定されないものと認められる。
すなわち、「In_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)」が、補正前の請求項2においては、「厚みのばらつきが6%以内である」ものに限定されていたのに対し、補正後の請求項1においては、厚みのばらつきが限定されないものになっている。
してみると、この点において、本件補正は、特許請求の範囲を拡張するものというべきであるから、本件補正は、特許請求の範囲を減縮するものとは認められず、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものとはいえない。
また、上記アの補正内容が、同条第5項第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものともいえない。

ウ 補正却下の決定のむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記2(2)アに補正前の請求項2として示した、次のとおりのものである。

「基板と、
前記基板上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層とを備え、
前記第1および第2導電型クラッド層の少なくとも一方がIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)であり、
厚みのばらつきが6%以内である、エピタキシャル膜。」

(2)引用文献の記載内容
ア 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-4244号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Nを含むIII-V族化合物からなる発光素子に関するものである。」

「【0010】(実施の形態1)まず最初に図4に示すように有機溶媒による洗浄及び前処理を施されたn型SiC(0001)基板1を炭素製の基板ホルダ27上に置き、有機金属気相エピタキシャル成長装置内に装填する。
【0011】次に成長装置内を圧力70Torrの水素で満たし、水素雰囲気中でn型SiC(0001)基板1を炭素製の基板ホルダ27ごとヒータ34で1090℃まで加熱し、表面に付着している吸着ガスや酸化物、水分子等を取り除く。その後n型SiC(0001)基板1の温度を1000℃まで下げ、トリメチルアルミニウム、アンモニア、シランのガス供給ラインのバルブ29、31、33を開け、トリメチルアルミニウム5.5sccm、アンモニア2.5l/min、シラン12.5sccmを流し、n型AlNバッファ層2を300Å積層する。
【0012】n型AlNバッファ層2を積層した後、n型SiC(0001)基板1の温度を730℃まで下げ、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、アンモニア、シランのガス供給ラインのバルブ28、29、30、31、33を開け、トリメチルガリウム0.27sccm、トリメチルアルミニウム8.7sccm、トリメチルインジウム2.7sccm、アンモニア5.0l/min、シラン12.5sccmを流し、層厚1.5μmのn型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層3を積層する。
【0013】n型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)N3を積層した後、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム及びシランのガス供給ライン29、30、33を閉じ、トリメチルガリウム、アンモニアのガス供給ラインのバルブ28、31を開け、トリメチルガリウム2.7sccm、アンモニア2.5l/minを流し、アンドープGaN光ガイド層4を1000Å積層する。
【0014】アンドープGaN光ガイド層4を積層した後、n型SiC(0002)基板1の温度を680℃まで下げ、トリメチルガリウム、トリメチルインジウムのガス供給ラインのバルブ28、30を開け、トリメチルガリウム2.7sccm、トリメチルインジウム27sccm、アンモニア10l/minを流し、アンドープGa_(0.8)In_(0.2)N活性層5を100Å積層する。
【0015】アンドープGa_(0.8)In_(0.2)N活性層5を100Å積層した後、n型SiC(0001)基板1の温度を1030℃まで上げ、トリメチルインジウムのガス供給ライン30を閉じ、トリメチルガリウム、アンモニアのガス供給ラインのバルブ28、31を開け、トリメチルガリウム2.7sccm、アンモニア2.5l/minを流し、アンドープGaN光ガイド層6を1000Å積層する。
【0016】アンドープGaN光ガイド層6を1000Å積層した後、n型SiC(0001)基板1の温度を730℃まで上げ、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、アンモニア、シクロペンタジエニルマグネシウムのガス供給ラインのバルブ28、29、30、31、32を開け、トリメチルガリウム2.7sccm、トリメチルアルミニウム8.7sccm、アンモニア2.5l/min、シクロペンタジエニルマグネシウム5.0sccmを流し、p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7を1.0μm積層する。
【0017】p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7を積層した後、トリメチルアルミニウムおよびトリメチルインジウムのガス供給ラインのバルブ29、30を閉じ、n型SiC(0001)基板1の温度を1030℃まで上げ、トリメチルガリウム、アンモニアおよびシクロペンタジエニルマグネシウムのガス供給ラインのバルブ28、31、32を開け、トリメチルガリウム2.7sccm、アンモニア5.0l/min、シクロペンタジエニルマグネシウム5.0sccmを流し、p型GaNコンタクト層8を1000Å積層する。
【0018】その後、水素のガス供給ラインのバルブのみを開け、圧力70Torrの水素雰囲気中でSiC(0001)基板1の温度を700℃に設定し、1時間アニールを行い、p型のドーパントであるマグネシウムを活性化する。アニール終了後、SiC(0001)基板1の温度を室温まで戻し、SiC(0001)基板1を有機金属気相エピタキシャル成長装置の外へ取り出す。」

イ 上記アによれば、引用文献には、有機金属気相エピタキシャル成長装置内で、n型SiC(0001)基板1上に、n型AlNバッファ層2、アンドープGaN光ガイド層4、n型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層3、アンドープGa_(0.8)In_(0.2)N活性層5、p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7、p型GaNコンタクト層8を積層することが記載されているものと認められ、引用文献には、そのように積層された積層体が記載されているものということができる。

ウ すなわち、引用文献には、
「有機金属気相エピタキシャル成長装置内で積層された積層体であって、n型SiC(0001)基板1上に、n型AlNバッファ層2、アンドープGaN光ガイド層4、n型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層3、アンドープGa_(0.8)In_(0.2)N活性層5、p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7、p型GaNコンタクト層8が積層された積層体。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「n型SiC(0001)基板1」、「n型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層3」、「アンドープGa_(0.8)In_(0.2)N活性層5」及び「p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7」がそれぞれ、本願発明の「基板」、「第1導電型クラッド層」、「活性層」及び「第2導電型クラッド層」に相当するところであり、引用発明の「n型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層3」及び「p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7」は、「In_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)」であるから、引用発明は、本願発明の「前記第1および第2導電型クラッド層の少なくとも一方がIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)であ(る)」との構成を備える。

イ 本願発明の「エピタキシャル膜」は、「基板と、前記基板上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層とを備え」るものとされるところ、上記アでの検討に照らして、引用発明の「積層体」は、「基板と、前記基板上に形成された第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成された活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層とを備え」るものであるから、本願発明の「エピタキシャル膜」に相当する。

ウ 以上によれば、両者は、
「基板と、
前記基板上に形成された第1導電型クラッド層と、
前記第1導電型クラッド層上に形成された活性層と、
前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層とを備え、
前記第1および第2導電型クラッド層の少なくとも一方がIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)である、
エピタキシャル膜。」である点で一致する。

エ そして、本願発明では、「前記第1および第2導電型クラッド層の少なくとも一方がIn_(x)Al_(y)Ga_((1-x-y))N層(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)であり、厚みのばらつきが6%以内である」と特定されているのに対し、引用発明の「n型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層3」又は「p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7」は、厚みのばらつきが6%以内であるか不明である点で相違する。

(4)判断
ア 例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2006-80374号公報における【0023】の「AlGaN層厚の基板面内でのばらつきも数%以内に抑えることができる」、【0042】の「窒化物半導体層の組成と膜厚とが基板内で均一化されているので、光学特性のばらつきが低減し、歩留まりが向上した」、【0076】の「膜厚のばらつきは1%以内である」及び「第1のn型AlGaN層の膜厚が基板面内で均一化している」の記載、同じく、特開2009-130043号公報における【0008】の「成膜される膜の厚さを均一にしつつ成膜効率を向上することのできるMOCVD装置を提供する」、【0009】の「膜の厚さを均一にすることのできるMOCVD装置を提供する」の記載、また、特開2003-234076号公報における【要約】の「エピタキシャル成長層の膜厚を均一なものとして課題を解決する」の記載、特開2009-32785号公報における【要約】の「膜厚の均一性を向上し得る気相成長装置」との記載にみられるように、一般的にエピタキシャル膜の厚みのばらつきは小さいのが望ましいとされるものであることに照らせば、引用発明においても、「n型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層3」や「p型Al_(0.19)Ga_(0.77)In_(0.04)Nクラッド層7」の厚みのばらつきが大きいものを許容しないようにすることは、当業者が適宜考慮し得ることというべきである。そして、ばらつきの上限をどの程度とするかは、当業者が設計上適宜決定すべき事項であるところ、本願発明のごとく、6%以内と特定することに格別の困難性は認められず、6%以内と特定することに格別の臨界的な意義も認められない。

イ 請求人は、審判請求の理由において、引用文献のいずれにおいても、InAlGaN層の厚みのばらつきと歩留まりとの関係についての検討はなされていない旨主張する。
しかし、上記アのとおり、一般的にエピタキシャル膜の厚みのばらつきは小さいのが望ましいとされるものであり、特開2006-80374号公報には、歩留まりの向上についても言及されていることに照らせば、本願発明のごとく、InAlGaN層について、厚みのばらつきを小さくすることによる歩留まりの向上を確認したとしても、当業者にとって予測困難な程の格別顕著な効果とはいいがたいし、本願明細書の記載をみるに、6%以内(5.6%以内についても同様である。)との特定は、歩留まりに関する所定の条件を満たすか否かという観点で適宜定められたものというほかなく、かかる特定に格別の臨界的な意義も認められないことは上記のとおりであるから、請求人の上記主張をもって、上記アの判断が左右されるものではない。

4 むすび
以上の検討によれば、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-03 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-23 
出願番号 特願2009-297555(P2009-297555)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 一石  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 星野 浩一
服部 秀男
発明の名称 エピタキシャル膜および発光素子  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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