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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01B
管理番号 1290484
審判番号 不服2013-20296  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-18 
確定日 2014-08-07 
事件の表示 特願2008- 20730「絶縁電線及びワイヤーハーネス」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月13日出願公開,特開2009-181850〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年1月31日の出願であって,平成25年2月13日付けで拒絶の理由が通知され,これに対して,同年4月15日に手続補正がされ,同年5月24日付けで拒絶の理由(最後)が通知され,これに対して,同年7月3日に手続補正がされたが,同年7月24日付けで同年7月3日になされた手続補正が却下されるとともに,同日付けで拒絶査定がされ,それに対して同年10月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日に手続補正がされ,その後同年12月10日付けで審尋がされ,これに対して,平成26年2月4日に回答がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成25年10月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成25年10月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1?2を,補正後の特許請求の範囲の請求項1?2と補正するものであって,補正前後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】
導体が絶縁体に被覆され,電線外径が1.1mm未満である絶縁電線において,前記絶縁体の厚さが,0.25mm以下であり,前記絶縁体の材料が,ハロゲン元素を含有せず,前記絶縁体の材料の破断伸びが10%以上であり,前記絶縁体の材料の曲げ弾性率が2.0GPa超であることを特徴とする絶縁電線。但し,前記絶縁体の材料は,ポリサルホンを除く。
【請求項2】
請求項1記載の絶縁電線を用いたことを特徴とするワイヤーハーネス。」

(2)補正後
「【請求項1】
導体が絶縁体に被覆され,電線外径が1.1mm未満である絶縁電線において,前記絶縁体の厚さが,0.25mm以下であり,前記絶縁体の材料が,ハロゲン元素を含有せず,前記絶縁体の材料の破断伸びが10%以上であり,前記絶縁体の材料の曲げ弾性率が2.0GPa超であることを特徴とする絶縁電線。但し,前記絶縁体の材料は,ポリサルホン,ポリエーテルイミド及びポリカーボネートを除く。
【請求項2】
請求項1記載の絶縁電線を用いたことを特徴とするワイヤーハーネス。」

2 補正事項の整理
本件補正のうち,特許請求の範囲についての補正事項を整理すると,以下のとおりである。

[補正事項]
補正前の請求項1の「絶縁体の材料は,ポリサルホンを除く。」を,補正後の請求項1の「絶縁体の材料は,ポリサルホン,ポリエーテルイミド及びポリカーボネートを除く。」と補正すること。

3 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について
(1)補正の目的の適否
補正前の請求項1の「絶縁電線」の「絶縁体の材料」の選択の範囲として「ポリサルホンを除く。」としたものを,補正後の請求項1において,「ポリサルホン,ポリエーテルイミド及びポリカーボネートを除く。」と補正するもので,絶縁体の材料の選択の範囲から「ポリエーテルイミド及びポリカーボネート」を更に除くものであるから,「絶縁体の材料」の選択の範囲を技術的に限定するものであり,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たすものである。

(2)新規事項の追加の有無
また,当該補正事項が,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。
したがって,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3)小括
したがって,本件補正は特許法第17条の2第3項,第4項及び第5項に規定する要件を満たすものである。

そして,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する補正を含むものであるから,本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,以下において更に検討する。
4 独立特許要件について
(1)補正発明
本件補正による補正後の請求項1?2に係る発明は,本件補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?2に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,補正後の請求項1に記載されている事項により特定されるものであり,再掲すると以下のとおりのものである。

「【請求項1】
導体が絶縁体に被覆され,電線外径が1.1mm未満である絶縁電線において,前記絶縁体の厚さが,0.25mm以下であり,前記絶縁体の材料が,ハロゲン元素を含有せず,前記絶縁体の材料の破断伸びが10%以上であり,前記絶縁体の材料の曲げ弾性率が2.0GPa超であることを特徴とする絶縁電線。但し,前記絶縁体の材料は,ポリサルホン,ポリエーテルイミド及びポリカーボネートを除く。」

(2)引用例1の記載及び引用例1に記載された発明
ア 本願の出願前に日本国内において頒布された特開昭59-163709号公報(以下「引用例1」という。)には,「マグネツトワイヤー」(発明の名称)に関して,以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。以下同様)。

(ア) 「〔実施例1〕
ポリエチレンテレフタレート樹脂(東洋紡社製以下PETと略す)を押出機を用いて押出温度300℃で導体予熱を行なわず参考例で製造した電線上に押出被覆した。PET押出被覆の絶縁皮膜厚は25μmであつた。この押出線の特性を表1に示す。
〔比較例1〕 PET樹脂を押出機を用いて押出温度300℃,導体予熱温度200℃で0.7mmφの軟銅線上に押出被覆した。絶縁被覆厚は28μmであった。この押出線の特性を表1に示す。
表1 PET系押出線の特性

(公報3ページ右上欄14行?左下欄最下行)

(イ) 表1から比較例1は絶縁被覆が一層であることが分かる。

以上総合し,引用例1の比較例1を引用例1に記載された発明とすると,以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「軟銅線上にポリエチレンテレフタレート樹脂を押出被覆し,仕上り径が0.758mmである押出線において,絶縁被覆厚が,0.028mmであることを特徴とする絶縁被覆された軟銅線。」

(3)対比・判断
以下に,補正発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1の「仕上り径」は,導体径と絶縁被覆厚(比較例1の場合上膜厚)を加えたものであるから,引用発明1の「仕上り径」は,補正発明の「電線外径」に相当する。そして,その「電線外径」について,引用発明1は「0.758mm」であり,補正発明は「1.1mm未満」であるから,引用発明1の電線外径の値は,補正発明の電線外径の値の範囲に含まれる。

イ 「絶縁体の厚さ」については,引用発明1の絶縁被覆厚は「0.028mm」であり,補正発明は「0.25mm以下」であるので,引用発明1の絶縁体の厚さは,補正発明の絶縁体の厚さの範囲に含まれる。

ウ ポリエチレンテレフタレート樹脂は,エチレングリコールとテレフタル酸を縮重合したハロゲン元素含まない樹脂であることは,当業者にとって明らかであるから,引用発明1のポリエチレンテレフタレート樹脂が,補正発明の「ハロゲン元素を含有しない」「絶縁体の材料」に相当する。

エ また,文献1:本間精一,プラスチックポケットブック,全面改訂版,株式会社 工業調査会,2003年3月15日発行の124?125ページの表8.1 プラスチックの性能表(その6)?(その7)を参照すると,ポリエチレンテレフタレートが,(7)破断伸びが30-300[%]であること,(13)曲げ弾性率が2420-3100[MPa]という性質を有していることが看取でき,引用発明1のポリエチレンテレフタレート樹脂が,「破断伸びが10%以上であり」,「曲げ弾性率が2.0GPa超」の特性を有していることが分かる。


オ ウ,エから引用発明1の「ポリエチレンテレフタレート樹脂」は,補正発明の「ハロゲン元素を含有せず,」「破断伸びが10%以上であり,」「曲げ弾性率が2.0GPa超である」「絶縁体の材料」に相当する。

カ 引用発明1の「絶縁被覆された軟銅線」は,絶縁被覆された電線であることは明らかであるから,補正発明の「絶縁電線」に相当する。

(一致点)
したがって,引用発明1と,補正発明とは,
「導体が絶縁体に被覆され,電線外径が1.1mm未満である絶縁電線において,前記絶縁体の厚さが,0.25mm以下であり,前記絶縁体の材料が,ハロゲン元素を含有せず,前記絶縁体の材料の破断伸びが10%以上であり,前記絶縁体の材料の曲げ弾性率が2.0GPa超であることを特徴とする絶縁電線。但し,前記絶縁体の材料は,ポリサルホン,ポリエーテルイミド及びポリカーボネートを除く。」
の点すべてで一致し,相違する点はない。

したがって,補正発明は,引用例1に記載された発明である。

(4)判断についてのまとめ
以上検討したとおり,補正発明は,引用例1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正は,補正後の特許請求の範囲により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。

5 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?2に係る発明は,平成25年4月15日に補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は再掲すると,請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
導体が絶縁体に被覆され,電線外径が1.1mm未満である絶縁電線において,前記絶縁体の厚さが,0.25mm以下であり,前記絶縁体の材料が,ハロゲン元素を含有せず,前記絶縁体の材料の破断伸びが10%以上であり,前記絶縁体の材料の曲げ弾性率が2.0GPa超であることを特徴とする絶縁電線。但し,前記絶縁体の材料は,ポリサルホンを除く。」

第4 引用例2の記載及び引用例2に記載された発明
ア 本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定おいて引用されたた特開平2-284306号公報(以下「引用例2」という。)には,「自動車用薄肉低圧電線」(発明の名称)に関して,以下の記載がある。

(ア) 「2.特許請求の範囲
1.導体上にメルトインデックス5?12のポリエーテルイミドを主体とする樹脂組成物を被覆厚が200μm以下となるように押出形成してなることを特徴とする自動車用薄肉低圧電線。」(公報第1ページ左下欄3行?8行)

(イ) 「[従来の技術]
近年,自動車ワイヤハーネス等に使用する低圧電線には,高密度実装を行うため,軽量であること及び配線スペースをとらないことが要求されており,このため被覆厚を薄くすることが要望されている。」(公報第1ページ左下欄13行?18行)

(ウ) 「[実施例]
次に,本発明を実施例及び比較例を用いて説明する。評価に用いた電線は,0.3mm^(2)の軟銅撚線導体上に表の熱可塑性樹脂を被覆厚100?200μmとなるように押出被覆したものである。」(公報第2ページ左上欄17行?同ページ右上欄2行)

(エ) 公報第2ページの表を参照すると,実施例2は,ポリエーテルイミドを被覆厚100μmとなるように押出被覆したものであることが看取できる。
以上総合すると,引用例2には,以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「0.3mm^(2)の軟銅撚線導体上にポリエーテルイミドを主体とする樹脂組成物を被覆厚が100μmとなるように押出形成してなることを特徴とする自動車用薄肉低圧電線。」

第5 対比・判断
以下に,本願発明と引用発明2とを対比する。

ア 引用発明2の「自動車用薄肉低圧電線」は,絶縁体である樹脂組成物が被覆されていることから,本願発明の「絶縁電線」に相当する。

イ 引用発明2の軟銅撚線導体は断面積が「0.3mm^(2)」であることから,計算すると直径は,0.618mm程度であることが分かる。そして,樹脂組成物の被覆厚が100μmであるから,被覆された電線の外径は,0.818mm程度となることが分かる。

ウ そして,電線の外径について,引用発明2の0.818mm程度という値は,本願発明の「1.1mm未満」の範囲に含まれているから,引用発明2の「0.3mm^(2)の軟銅撚線導体上に」「樹脂組成物を」「形成してなることを特徴とする自動車用薄肉低圧電線」は,本願発明の「電線外径が1.1mm未満である絶縁電線」に相当する。なお,仮に,引用発明2が撚線であることから,多少電線の外径が大きくなることがあるとしても,これは設計上の微差であり,実質的に電線の外径が「1.1mm未満」に相当すると認められる。

エ 「絶縁体の厚さ」については,引用発明2は「100μm」,すなわち0.2mm以下であり,本願発明が「0.25mm以下」であるので,引用発明1の絶縁体の厚さは,本願発明の絶縁体の厚さの範囲に含まれていることが分かる。したがって,引用発明2の「樹脂組成物を被覆厚が100μmと」することは,本願発明の「絶縁体の厚さが,0.25mm以下」とすることに相当する。

オ 引用発明2の「ポリエーテルイミド」は,ハロゲン元素含まない樹脂であることは,当業者にとって明らかであるから,引用発明2の「ポリエーテルイミドを主体とする樹脂組成物」は,本願発明の「ハロゲン元素を含有しない」「絶縁体の材料」に相当している。

カ また,文献1:本間精一,プラスチックポケットブック,全面改訂版,株式会社 工業調査会,2003年3月15日発行の126ページの表8.1プラスチックの性能表(その8)を参照すると,ポリエーテルイミドが,(7)破断伸びが60[%]であること,(13)曲げ弾性率が3310-2413[MPa]という性質を有していることが看取でき,引用発明2のポリエーテルイミド樹脂が,本願発明の「破断伸びが10%以上であり」,「曲げ弾性率が2.0GPa超」の絶縁体の材料に相当していることが分かる。



キ オ,カから引用発明2の「ポリエーテルイミド樹脂」は,本願発明の「ハロゲン元素を含有せず,」「破断伸びが10%以上であり,」「曲げ弾性率が2.0GPa超である」「絶縁体の材料」に相当する。

ク また,引用発明2の「ポリエーテルイミド」が,本願発明で除かれている絶縁体の材料である「ポリサルホン」でないことは,当業者にとって明らかである。

(一致点)
したがって,引用発明2と,本願発明とは
「導体が絶縁体に被覆され,電線外径が1.1mm未満である絶縁電線において,前記絶縁体の厚さが,0.25mm以下であり,前記絶縁体の材料が,ハロゲン元素を含有せず,前記絶縁体の材料の破断伸びが10%以上であり,前記絶縁体の材料の曲げ弾性率が2.0GPa超であることを特徴とする絶縁電線。但し,前記絶縁体の材料は,ポリサルホン除く。」
の点すべてで一致し,相違点はない。

したがって,本願発明は,引用例2に記載された発明であり,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

[進歩性について]
ケ また,仮に引用発明2において,軟銅撚線導体の直径を上記イにおいて検討したように特定することができなかった場合について検討する。

コ 日本電線工業会規格のJCS1222(2003年)によれば、公称断面積が「0.3mm^(2) 」である軟銅撚線導体としては、素線径0.08mmのときは、撚線の外径は、約0.7mmであり、また、素線径0.18mmのときは,撚線の外径は、約0.7mmであるものが規定されている。

サ そうすると、断面積が「0.3mm^(2) 」である軟銅撚線導体として、外径が約0.7mmであるものは周知であったといえ、また、これらの導体に被覆厚100μmの樹脂組成物を被覆すれば、被覆された電線の外径は、それぞれ約0.9mmとなることも分かる。

シ 以上から、引用発明2の軟銅撚線導体として,これら周知の軟銅撚線導体を用い,その上に被覆厚が100μmの樹脂組成物を形成して電線外径が1.1mm未満である絶縁電線とすることは当業者が適宜なし得たことといえる。

ス したがって,本願発明は,周知技術を勘案し,引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当し,また,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-06 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-23 
出願番号 特願2008-20730(P2008-20730)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 達人  
特許庁審判長 小野田 誠
特許庁審判官 西脇 博志
加藤 浩一
発明の名称 絶縁電線及びワイヤーハーネス  
代理人 上野 登  
代理人 上野 登  
代理人 上野 登  
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