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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1290502
審判番号 不服2011-15395  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-15 
確定日 2014-08-06 
事件の表示 特願2003-552012「ハイブリッド通信ネットワークで暗号解読用鍵を用いる装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月19日国際公開,WO03/51072,平成17年 4月28日国内公表,特表2005-512471〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,2002年12月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月7日,2002年1月17日,2002年2月14日,2002年2月19日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成16年7月7日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成17年12月5日付けで審査請求がなされ,平成21年5月13日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成21年11月19日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,平成22年6月22日付けで審査官により最後の拒絶理由が通知され,これに対して平成22年10月19日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成23年3月11日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成23年7月15日付けで審判請求がなされ,平成25年5月1日付けで当審により拒絶理由が通知され,これに対して平成25年8月7日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたものである。

第2.本願発明について
本願の請求項各項に係る発明は,平成25年8月7日付けの手続補正(以下,これを「本件手続補正」という)により補正された特許請求の範囲の請求項(以下,これを「補正後の請求項」という)1?請求項16に記載された,次の引用の記載によって特定されるものである。

「 【請求項1】
第1の移動切換制御局によって制御される第1の基地局を有する第1のセルラー通信システム内で,および第2の移動切換制御局によって制御される第2の基地局を有する第2の別のセルラー通信システム内で,用いられる移動局を有するハイブリッド通信ネットワークにおいて,
前記第2のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる暗号解読鍵を生成することであって,前記暗号解読鍵が,前記第2のセルラー通信システムに対する前記移動局に割り当てられた秘密鍵と前記第2のセルラー通信システムによって発生した乱数とから前記移動局によって生成され,
ここにおいて,前記暗号解読鍵は,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる,
を備える方法。
【請求項2】
前記第1のセルラー通信システムは,前記ハイブリッド通信ネットワークと前記移動局との間でデータを転送するためのチャネルを備え,
前記方法は,前記乱数を前記移動局に対して前記データを転送するためのチャネルを用いて送信することを更に備える,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データを転送するためのチャネルはページングチャネルである,請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の基地局によって送信される信号のパラメータを前記移動局で測定し,
前記第2の基地局によって送信される信号のパラメータを前記移動局で測定し,
前記両パラメータが所定の状態に達したら,信号品質メッセージを前記移動局から前記第1の基地局を介して前記第1の移動切換制御局に対して通信し,
前記第1の移動切換制御局で,チャネル要求メッセージのための情報を前記第2の移動切換制御局に対して生成し,
前記情報を前記第1の移動切換制御局から前記移動局に通信し,
前記移動局で,前記第1の移動切換制御局からの前記情報から,前記第2の移動切換制御局に対するチャネル要求メッセージを生成し,
前記チャネル要求メッセージを前記移動局から前記第2の移動切換制御局に対して通信すること,
をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の移動切換制御局チャネルで,前記移動局に対する前記第2の通信システム中のチャネルを識別する情報を生成することを更に備える,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記移動局と前記第2の基地局との間の通信を,前記識別されたチャネルで確立することを更に備える,請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記移動局と前記第1の基地局との間の通信を中断することを更に備える,請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータは信号強度に対応する,請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のセルラー通信システムはCDMAシステムである,請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のセルラー通信システムはGSMシステムである,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ハイブリッドセルラー通信システム中の基地局と信号を送受信するように操作可能なトランシーバチェインと,
前記ハイブリッドセルラー通信システムによって発生した乱数を受信し,
前記ハイブリッドセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる暗号解読鍵を前記移動局に対して生成するコントローラと,前記暗号解読鍵は,前記ハイブリッドセルラー通信システムに対する前記移動局に割り当てられた秘密鍵と前記受信された乱数とから生成され,ここにおいて,前記暗号解読鍵は,別のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる,
を備える移動局。
【請求項12】
第1の移動切換制御局によって制御される第1の基地局を有する第1のセルラー通信システムと,第2の移動切換制御局によって制御される第2の基地局を有する第2の別のセルラー通信システムとを備えたハイブリッド通信ネットワーク内で使用される移動局であって,
前記第2のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる暗号解読鍵を生成する手段であって,前記暗号解読鍵は,前記第2のセルラー通信システムに対する前記移動局に割り当てられた秘密鍵と前記第2のセルラー通信システムによって発生した乱数とから生成され,
ここにおいて,前記暗号解読鍵は,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる,
を備える移動局。
【請求項13】
データを転送するためのチャネルを用いて前記乱数を受信する手段を更に備える請求項12に記載の移動局。
【請求項14】
前記データを転送するためのチャネルはページングチャネルである,請求項13に記載の移動局。
【請求項15】
前記第1のセルラー通信システムはCDMAシステムである,請求項12に記載の移動局。
【請求項16】
前記第2のセルラー通信システムはGSMシステムである,請求項15に記載の移動局。」

第3.当審拒絶理由
一方,当審による,平成25年5月1日付けの拒絶理由(以下,これを「当審拒絶理由」という)は,概略,次のとおりである。

「本件出願は,明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.36条6項2号について
(1)平成22年10月19日付けの手続補正により補正された請求項(以下,「本願の請求項」という)1に,
「前記移動局が,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を前記暗号解読鍵に基づいて生成すること,ここにおいて,前記暗号解読鍵は,秘密長符号へ固有にマッピングされる」と記載され,同じく,本願の請求項11に,
「(b4)別のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を,前記暗号解読鍵に基づいて生成する,ここにおいて,前記暗号解読鍵は,秘密長符号へ固有にマッピングされる」と記載され,同じく,本願の請求項12に,
「前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を,該秘密鍵と該乱数とから生成された前記暗号解読鍵に基づいて生成する手段と,ここにおいて,前記暗号解読鍵は秘密長符号へ固有にマッピングされる」と記載されているが,
ア.“秘密長符号を,暗号解読鍵に基づいて生成する”とは,どのような処理か?
イ.“暗号解読鍵は秘密長符号へ固有にマッピングされる”とは,どのような処理を表現したものであるか?
上記指摘の本願の請求項1,請求項11,及び,請求項12に記載された内容,並びに,本願の他の請求項に記載された内容を,総合勘案しても,不明である。
ウ.(省略)
よって,本願の請求項1,請求項11,及び,請求項12に係る発明は,明確でない。

(2)本願の請求項2乃至請求項10は,本願の請求項1を直接・間接に引用し,本願の請求項13乃至請求項16は,本願の請求項12を直接・間接に引用しているので,上記(1)で指摘の明確でない構成を内包し,且つ,上記(1)で指摘したとおり,本願の請求項2乃至請求項10,及び,請求項13乃至請求項16に記載の内容を加味しても,上記(1)で指摘の明確でない構成が,明確になるものでもない。
よって,本願の請求項2乃至請求項10,及び,請求項13乃至請求項16に係る発明は,明確でない。

2.36条4項1号について
(1)本願の請求項1に記載の,
「前記移動局が,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を前記暗号解読鍵に基づいて生成すること,ここにおいて,前記暗号解読鍵は,秘密長符号へ固有にマッピングされる」,
同じく,本願の請求項11に記載の,
「(b4)別のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を,前記暗号解読鍵に基づいて生成する,ここにおいて,前記暗号解読鍵は,秘密長符号へ固有にマッピングされる」,
同じく,本願の請求項12に記載の,
「前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を,該秘密鍵と該乱数とから生成された前記暗号解読鍵に基づいて生成する手段と,ここにおいて,前記暗号解読鍵は秘密長符号へ固有にマッピングされる」に関して,
本願明細書の発明の詳細な説明には,

「【0057】
SRESの値もまた,A8として知られているアルゴリズム中で用いられて,64ビットの暗号化鍵又は暗号解読用鍵Kcを計算する。移動局中でSIMによってGSM認証アルゴリズムと暗号化アルゴリズムを用いて生成されたKc鍵は,通常はCDMA CAVEアルゴリズムを用いて生成される秘密長符号マスクの代わりにCDMA物理層に適用される。この64ビットKc鍵は,42ビット秘密長符号に対して固有にマッピングされ,従って,「秘密長符号マスク」の基礎として用いられて,音声プライバシを提供する。この秘密長符号マスクは,CDMAメッセージに伴って送付され,CAVEアルゴリズムに基づいて生成された場合と全く違いがないように解釈される。音声プライバシのためのこの方法を用いると,本システムは,ハイブリッドCDMA/GSMネットワーク内で固有の認証センターと固有のSIMタイプとを保持することが可能である。
【0058】
GSMはフレームレベルで暗号化を実行する。全てのフレームは,フレーム番号と64ビットのKc鍵を用いて暗号化されるが,この鍵は図4を参照して説明したように誘導される。フレーム番号とKcマスクは全てのフレームに適用される。CDMA 1Xシステムでは,暗号化は42ビットの秘密長符号を用いて実行される。図2のハイブリッドシステムでは,Kc鍵を用いて42ビット秘密長符号マスクを誘導するが,マッピングアルゴリズムがKcと秘密長符号間でマッピングする。このマッピングはMSCc中で実行され,次に,MSCcはBSCに対して,どの秘密長符号を用いるべきであるか告げる。」(下線は,当審にて,説明の都合上附加したものである。以下,同じ。)

と記載されるのみである。
ここで,上記引用の段落【0058】の,
「GSMはフレームレベルで暗号化を実行する。全てのフレームは,フレーム番号と64ビットのKc鍵を用いて暗号化される」,
という記載,及び,
「CDMA 1Xシステムでは,暗号化は42ビットの秘密長符号を用いて実行される」,
という記載から,GSMで用いられる暗号鍵は,“鍵長64ビット”であり,CDMA 1Xシステムで用いられる暗号鍵は,“鍵長42ビット”であることが読み取れる。

また,本願明細書の発明の詳細な説明には,更に,

「【0020】
双方のシステムがCDMAベースであり,双方が共にソフトハンドオフを実行可能である状況に対して,この装置が良好に働いている限り,これらシステムのうちの1つ以上がこのようなハンドオフを実行できないシステム間ハンドオフをどのように取り扱うかという問題が残る。例えば,いわゆるGSM基準には,ソフトハンドオフのメカニズムが存在しない。従って,エアインタフェースを用いてCDMAネットワークからGSMネットワークに呼出しをハンドオフする際に問題がある。更に,GSMの認証に必要なデータをCDMA2000メカニズムは伝送することが不可能なため,GSMの認証は実行不可能である。GSMにおける暗号化は,CDMA2000における暗号化とは異なる。」

と明記されている。

そして,暗号,及び,暗号技術の分野において,鍵長Aビットで暗号化したデータは,たとえ,前記鍵長Aビットから,何らかの手法を用いて圧縮された鍵であっても,異なる鍵長である鍵長Bビットの鍵では復号できないことは,当業者にとっては,技術常識である。
例えば,鍵長128ビットのAESで暗号化したデータは,暗号化に用いた128ビット鍵を,なんかの手法で圧縮した64ビット鍵をそのまま用いて復号することはできない。
上記のような暗号化・復号を実現するためには,暗号化・復号に用いるアルゴリズムが,“暗号化は鍵長64ビット,復号は該鍵長64ビットを所定の手法で鍵長42ビットにした鍵を用いて行う”という特殊なアルゴリズムを用いているか,或いは,
“アルゴリズムは従来どおりであるが,GSMの鍵長64ビットの暗号化鍵を,CDMA 1Xで転送するときは,42ビットに圧縮し,相手先移動局で使用時に,元の鍵長に復元する”という手法,即ち,“完全な可逆圧縮・伸張”を用いるかの何れかが想起される。
しかしながら,何れの場合を想起したとしても,上記引用の段落【0057】,及び,【0058】に記載された内容からでは,
“どのような暗号アルゴリズムを用いているか”,或いは,“そのようなマッピングを行うことで,鍵長が異なっても,復号,或いは,認証が可能である”か,全く,不明である。
よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでない。」

第4.当審の判断
1.36条6項2号について
本件手続補正によって,
当審拒絶理由で指摘した,本願の請求項1の,
「前記移動局が,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を前記暗号解読鍵に基づいて生成すること,ここにおいて,前記暗号解読鍵は,秘密長符号へ固有にマッピングされる」という記載,
本願の請求項11の,
「(b4)別のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を,前記暗号解読鍵に基づいて生成する,ここにおいて,前記暗号解読鍵は,秘密長符号へ固有にマッピングされる」という記載,
同じく,本願の請求項12の,
「前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号を,該秘密鍵と該乱数とから生成された前記暗号解読鍵に基づいて生成する手段と,ここにおいて,前記暗号解読鍵は秘密長符号へ固有にマッピングされる」という記載は,
それぞれ,補正後の請求項1の,
「ここにおいて,前記暗号解読鍵は,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる」と言う記載,
補正後の請求項11の,
「ここにおいて,前記暗号解読鍵は,別のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる」という記載,
同じく補正後の請求項12の,
「ここにおいて,前記暗号解読鍵は,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる」という記載に補正された。

上記指摘の補正内容は,当審拒絶理由において指摘した,
「ア.“秘密長符号を,暗号解読鍵に基づいて生成する”とは,どのような処理か?」,
という点を解消するために,本願の請求項1,11,及び,12から,それぞれ,
「秘密長符号を前記暗号解読鍵に基づいて生成する」,
「秘密長符号を,前記暗号解読鍵に基づいて生成する」,
「秘密長符号を,該秘密鍵と該乱数とから生成された前記暗号解読鍵に基づいて生成する」,
という構成を削除し,同じく,当審拒絶理由において指摘した,
「イ.“暗号解読鍵は秘密長符号へ固有にマッピングされる”とは,どのような処理を表現したものであるか?」,
という点を解消するために,「マッピング」の意味を明確にすることを目的とするものであると,一応,解される。
そこで,上記の補正内容によって,当審の特許法36条6項2号に関する拒絶理由が解消したかについて,以下に検討する。
当審拒絶理由における上記に引用した項目ア.において指摘した本願の請求項1,請求項11,及び,請求項12の記載内容は,同じく項目イ.において指摘した記載内容と関連しており,項目ア.において指摘した記載内容を削除することによって,項目イ.に指摘した記載内容がより不明確となっている。
この点を補強することを目的としてか,請求人は,項目イ.において指摘した記載内容の「マッピングする」に対して,「固有のコードに変換されて」という“限定”,或いは,“説明”を附加することで,項目イ.に指摘した記載内容を明確にしようとしているが,補正後の請求項1?請求項16には,該「固有のコードに変換され」が,どのような変換であり,該「固有のコードに変換され」をどのように実現するかについては一切記載されておらず,結果として,
“暗号解読鍵が,秘密帳符号にマッピングされる”,
という処理が,どのような処理であるか依然として不明である。
そこで,上記指摘の点が,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容を参酌することで明確になるかについて,以下に検討する。

上記指摘の,補正後の請求項1,請求項11,及び,請求項12に記載された「マッピング」に関して,本願明細書の発明の詳細な説明には,当審拒絶理由においても引用した段落【0057】に,
「この64ビットKc鍵は,42ビット秘密長符号に対して固有にマッピングされ,従って,「秘密長符号マスク」の基礎として用いられて,音声プライバシを提供する」,
同じく段落【0058】に,
「フレーム番号と64ビットのKc鍵を用いて暗号化されるが,この鍵は図4を参照して説明したように誘導される。フレーム番号とKcマスクは全てのフレームに適用される。CDMA 1Xシステムでは,暗号化は42ビットの秘密長符号を用いて実行される。図2のハイブリッドシステムでは,Kc鍵を用いて42ビット秘密長符号マスクを誘導するが,マッピングアルゴリズムがKcと秘密長符号間でマッピングする」,
という記載が存在するのみであり,
段落【0057】の記載からは,
“64ビットKc鍵が,42ビット秘密長符号に対して固有にマッピングされる”,
ということが,また,段落【0058】の記載からは,
“64ビットKc鍵を用いて42ビット秘密長符号マスクを誘導するが,マッピングアルゴリズムが64ビットKc鍵と42ビット秘密長符号間でマッピングする”,
ことが読み取れるのみであり,「64ビットKc鍵」と,「42ビット秘密長符号」との間で,どのような「マッピング」処理が行われているか,上記引用の段落【0057】,及び,段落【0058】に記載された内容を参酌しても,依然として不明である。
そして,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面には,上記引用の段落以外に「マッピング」に関して言及されていないので,本願明細書の発明の詳細な説明に記載された内容,及び,図面を加味しても,
“暗号解読鍵が,秘密帳符号にマッピングされる”,
という処理が,どのような処理であるか依然として不明である。

そして,補正後の請求項2?請求項10は,補正後の請求項1を直接・間接に引用し,補正後の請求項13?請求項16は,補正後の請求項12を直接・間接に引用しているので,補正後の請求項1,及び,請求項12に記載された上記指摘の明確ない構成を内包し,上記指摘のとおり,補正後の請求項1?請求項10,及び,補正後の請求項13?請求項16に記載された内容を加味しても,上記指摘の明確でない構成が明確になるものではない。
よって,補正後の請求項1?請求項16に係る発明は,依然として明確でない。

2.36条4項1号について
上記1.において検討した,補正後の請求項1に記載された,
「ここにおいて,前記暗号解読鍵は,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる」,
補正後の請求項11に記載された,
「ここにおいて,前記暗号解読鍵は,別のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる」,
同じく補正後の請求項12に記載された,
「ここにおいて,前記暗号解読鍵は,前記第1のセルラー通信システム内での通信中に前記移動局によって用いられる秘密長符号に固有にコード変換されてマッピングされる」,
に関して,本願明細書の発明の詳細な説明には,当審拒絶理由にも引用したとおり,

「【0057】
SRESの値もまた,A8として知られているアルゴリズム中で用いられて,64ビットの暗号化鍵又は暗号解読用鍵Kcを計算する。移動局中でSIMによってGSM認証アルゴリズムと暗号化アルゴリズムを用いて生成されたKc鍵は,通常はCDMA CAVEアルゴリズムを用いて生成される秘密長符号マスクの代わりにCDMA物理層に適用される。この64ビットKc鍵は,42ビット秘密長符号に対して固有に(コード変換されて)マッピングされ,従って,「(42ビットの)秘密長符号マスク」の基礎として用いられて,音声プライバシを提供する。この秘密長符号マスクは,CDMAメッセージに伴って送付され,CAVEアルゴリズムに基づいて生成された場合と全く違いがないように解釈される。音声プライバシのためのこの方法を用いると,本システムは,ハイブリッドCDMA/GSMネットワーク内で固有の認証センターと固有のSIMタイプとを保持することが可能である。
【0058】
GSMはフレームレベルで暗号化を実行する。全てのフレームは,フレーム番号と64ビットのKc鍵を用いて暗号化されるが,この鍵は図4を参照して説明したように誘導される。フレーム番号とKcマスクは全てのフレームに適用される。CDMA 1Xシステムでは,暗号化は42ビットの秘密長符号を用いて実行される。図2のハイブリッドシステムでは,(64ビットの)Kc鍵を用いて(コード変換された)42ビット秘密長符号マスクを誘導するが,マッピングアルゴリズムが(64ビットの)Kcと(42ビットの)秘密長符号間でマッピングする。このマッピングはMSCc中で実行され,次に,MSCcはBSCに対して,どの秘密長符号を用いるべきであるか告げる。」(下線は,当審にて,審決において説明の都合上附加したものである。以下,同じ。)

と記載されるのみである。
ここで,当審拒絶理由でも指摘したとおり,上記引用の段落【0058】の,
「GSMはフレームレベルで暗号化を実行する。全てのフレームは,フレーム番号と64ビットのKc鍵を用いて暗号化される」,
という記載,及び,
「CDMA 1Xシステムでは,暗号化は42ビットの秘密長符号を用いて実行される」,
という記載から,GSMで用いられる暗号鍵は,“鍵長64ビット”であり,CDMA 1Xシステムで用いられる暗号鍵は,“鍵長42ビット”であることが読み取れる。

また,本願明細書の発明の詳細な説明には,更に,

「【0020】
双方のシステムがCDMAベースであり,双方が共にソフトハンドオフを実行可能である状況に対して,この装置が良好に働いている限り,これらシステムのうちの1つ以上がこのようなハンドオフを実行できないシステム間ハンドオフをどのように取り扱うかという問題が残る。例えば,いわゆるGSM基準には,ソフトハンドオフのメカニズムが存在しない。従って,エアインタフェースを用いてCDMAネットワークからGSMネットワークに呼出しをハンドオフする際に問題がある。更に,GSMの認証に必要なデータをCDMA2000メカニズムは伝送することが不可能なため,GSMの認証は実行不可能である。GSMにおける暗号化は,CDMA2000における暗号化とは異なる。」

と明記されている。
そして,同じく,当審拒絶理由において指摘したとおり,暗号,及び,暗号技術の分野において,鍵長Aビットで暗号化したデータは,たとえ,前記鍵長Aビットから,何らかの手法を用いて圧縮された鍵であっても,異なる鍵長である鍵長Bビットの鍵では復号できないことは,当業者にとっては,技術常識であり,例えば,鍵長128ビットのAESで暗号化したデータは,暗号化に用いた128ビット鍵を,なんかの手法で圧縮した64ビット鍵をそのまま用いて復号することはできない。
上記のような暗号化・復号を実現するためには,暗号化・復号に用いるアルゴリズムが,“暗号化は鍵長64ビット,復号は該鍵長64ビットを所定の手法で鍵長42ビットにした鍵を用いて行う”という特殊なアルゴリズムを用いているか,或いは,“アルゴリズムは従来どおりであるが,GSMの鍵長64ビットの暗号化鍵を,CDMA 1Xで転送するときは,42ビットに圧縮し,相手先移動局で使用時に,元の鍵長に復元する”という手法,即ち,“完全な可逆圧縮・伸張”を用いるかの何れかが想起されが,何れの場合を想起したとしても,上記引用の段落【0057】,及び,【0058】に記載された内容からでは,
“どのようなマッピングを行うことで,鍵長が異なっても,復号,或いは,認証が可能であるマッピングを実現している”のか,全く,不明である。
よって,本件手続補正後においても,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでない。

なお,審判請求人は,平成25年8月7日付けの意見書(以下,これを「意見書」という)において,上記で指摘の「マッピング」に関して,

(1)「3-1-1.理由1(1)(ア)について ・・・・(中略)・・・・
[意見]
(1)最初に,「マッピング」の意味を明確にします。
文献1(下記※1)には,「マッピング」の意味が次のとおり説明されています。
「一般に,メモリマッピングマップを作ることをいう。また,マッビン具には数学的に「写像する」という意味もあり,このことから,「コード変換や,アドレス変換などもマッピングと考えることができる。」と説明されています。
※1(文献1:英和コンピユータ用語大辞典 第3版,2001,1.26,日外アソシエーツ株式会社発行)
よって,本願請求項1の「マッピング」の意味は,コード変換のようです。」

(2)「3-1-2.理由1(1)(イ)について ・・・・(中略)・・・・
[意見]
マッピングの意味は,上記文献1を参照してください。
さらに,固有の意味は,文献2(下記※2)に,「固有は,〈1〉天然に有すること,
〈2〉その物だけにあること。特有。」と説明されています。
※2(文献2:広辞苑,第四版,株式会社 岩波書店,1994年9月12日発行)
上記補正は,これら文献の説明に基づいていており,上記補正により,理由1(1)(イ)は,解消されたと確信いたします。」

(3)「3-2-1.理由2(1)について [分析]
審査官殿は,拒絶理由通知の理由2(1)で,補正前の請求項1,11及び12中の「秘密長符号を,暗号解読鍵に基づいて生成する」の処理内容を明確にすることを求められました。
審査官殿は,本願発明の該処理内容の1つとして,「“…復号は該鍵長64ビットを所定の手法で鍵長42ビットにした鍵を用いて行う”という特殊なアルゴリズムを用いている」(仮定1)を仮定しました。
さらに,審査官殿は,「アルゴリズムは従来どおりであるが,GSMの鍵長64ビットの暗号化鍵を,CDMA 1Xで転送するときは,42ビットに圧縮し,相手先移動局で使用時に,元の鍵長に復元する”という手法,即ち,“完全な可逆圧縮・伸張”を用いる」(仮定2)を仮定しました。
出願人は,上記仮定1に対して,以下のとおり反駁いたします。
[意見]
「マッピング」の意味は,上記文献1を参照してください。
本願請求項1の「マッピング」の意味は,コード変換のようです。
したがって,審査官殿が指摘した明細書の段落[0057]及び[0058]の記載をより明確にするために,これら記載中に( )内に説明を付記しました。
該付記された段落[0057]及び[0058]の記載は,上記「3-1-1.」を参照してください。
よって,その意味が明確化された段落[0057]及び[0058]の説明から,理由2(1)は解消したと確信いたします。」

と主張すると共に,「マッピング」,「コード変換」,「固有」の意味を説明するための補助として上記で引用した意見書の記載にあるとおり,2つの文献,
文献1:英和コンピユータ用語大辞典 第3版,2001,1.26,日外アソシエーツ株式会社発行,
文献2:広辞苑,第四版,株式会社 岩波書店,1994年9月12日発行,
の該当する箇所の複写を添付している。
確かに,文献1には,「mapping」という項目に,「マッピング」について,
“一般に,・・・またマッピングには数学的な「写像する」という意味もあり,このことから,コード変換(code conversion)や,アドレス変換(adress conversion)などもマッピングと考えることができる.”
という記載が存在し,文献2には,「固有」という項目に,上記引用の意見書の記載に引用された説明が記載されている。
しかしながら,単に,“「マッピング」が,「コード変換」と考えることができる”という程度では,本願における「マッピング」が,審判請求人の主張する「コード変換」が,どのようなものであるか不明であることの解消にならないことは明らかであり,さらに,「固有」の一般的な意味を提示しただけでは,本願における「暗号解読鍵」の,ビット長の異なる「秘密長符号」への「固有にコード変換されてマッピングされる」処理における「固有」が,どのような対応関係を示しているかの説明にならないことも明らかである。
よって,意見書における,審判請求人の上記引用の主張は採用できない。
なお,「コード変換」は,本願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲,及び,図面の何れにも記載されておらず,また,審判請求人の意見書における上記引用の主張,並びに,意見書の添付された文献1,文献2の記載内容を加味しても,本願の構成において,該「コード変換」を附加することが当業者にとって自明であるとは認め難いので,本件手続補正は,新規事項の追加を行うものあるとの疑義があるが,新規事項の可能性がある「コード変換」を有する構成を検討しても,当審拒絶理由を解消するものではない。

第5.むすび
したがって,本願は,特許法第36条第4項第1号,及び,同第6項第2号に規定された要件に違反する。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-20 
結審通知日 2014-01-21 
審決日 2014-03-26 
出願番号 特願2003-552012(P2003-552012)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04L)
P 1 8・ 536- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新田 亮  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 石井 茂和
仲間 晃
発明の名称 ハイブリッド通信ネットワークで暗号解読用鍵を用いる装置及び方法  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 竹内 将訓  
代理人 井関 守三  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 高倉 成男  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  
代理人 村松 貞男  
代理人 福原 淑弘  
代理人 堀内 美保子  
代理人 白根 俊郎  
代理人 峰 隆司  
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