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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1290526
審判番号 不服2013-11532  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-06-19 
確定日 2014-08-06 
事件の表示 特願2009-553122「ハイブリッドビデオ符号化のための量子化」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日国際公開、WO2008/110535、平成22年 6月17日国内公表、特表2010-521113〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 経緯
本件出願は2008年3月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年3月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、 平成24年1月16日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対し、平成24年6月22日付けで手続補正がなされたが、平成25年2月5日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件は、上記拒絶査定を不服として平成25年6月19日付けで請求された拒絶査定不服審判である。

2 本願発明
本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、平成24年6月22日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。

[請求項1に係る発明]
ハイブリッド符号化を用いたビデオ信号符号化の方法であって、
予測誤差信号を定めるために、ブロックベース動き補償予測により時間的冗長性を削減する工程と、
前記予測誤差信号が複数のサブブロックを含むとともに、前記予測誤差信号のサンプル又は前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化サンプル又は量子化係数を表す量子化値を求める工程と、
前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程と、
サブブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程と、
計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程と、
より高い方の効率を選択する工程と、
さらに処理を続けるために、計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記サブブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程と、を含み、
前記予測誤差信号は、複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロックを複数有し、サブブロックのサンプル又はサブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行い、
1つのマクロブロックのすべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率を計算する工程と、
前記マクロブロックのすべてのサンプル又は係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程と、
より高い方の効率を選択する工程と、
前記マクロブロックの選択された効率に依存して、前記マクロブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程と、をさらに含む、方法。

上記請求項1に係る発明は「量子化」の対象として「予測誤差信号のサンプル」又は「予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数」を特定しており、この特定によって請求項1に係る発明は「予測誤差信号のサンプル」を量子化する発明と「予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数」を量子化する発明とを含む発明となっていると認められる。このうち「予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数」を量子化する発明を本願発明として次のとおり認定する。

[本願発明](請求項1に係る発明のうち「予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数」を量子化する発明)
ハイブリッド符号化を用いたビデオ信号符号化の方法であって、
予測誤差信号を定めるために、ブロックベース動き補償予測により時間的冗長性を削減する工程と、
前記予測誤差信号が複数のサブブロックを含むとともに、前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化係数を表す量子化値を求める工程と、
前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程と、
サブブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程と、
計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程と、
より高い方の効率を選択する工程と、
さらに処理を続けるために、計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記サブブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程と、を含み、
前記予測誤差信号は、複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロックを複数有し、サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行い、
1つのマクロブロックのすべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率を計算する工程と、
前記マクロブロックのすべての係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程と、
より高い方の効率を選択する工程と、
前記マクロブロックの選択された効率に依存して、前記マクロブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程と、をさらに含む、方法。

3 刊行物
特表平10-502791号公報(以下、刊行物1という)には、図面と共に次の記載がある。

(刊行物1の記載)
「【発明の詳細な説明】
映画像符号化装置および方法
〔発明の技術の分野〕
本発明は、画素ブロックを係数に変換する画像変換器(2)、符号化した画像のビットレートRおよび歪みDを符号化パラメータ(rk)により決めて前記係数を符号化する符号化手段(3,4)、一連の符号化パラメータ値から乗数λの適用値に対して和D+λRが最小となる符号化パラメータ値を選択する手段(3)ならびにλの値を計算する手段(6)を備えて映画像を符号化する装置に関するものである。本発明は、映画像符号化方法に関するものでもある。
〔発明の背景〕
冒頭に述べた種類の装置は、ラムチャンドラン-ベッテルリ共著「完全なJPEG/MPEG復号器両立性を備えたレート・歪み最良急速閾値化」IEEE会報画像処理編、第3巻、第5号、1994年9月に開示されている。この論文は、MPEG符号化器の画質を改善する方法を開示している。画像符号化の技術分野で一般に知られているように、MPEGは、係数群を得るための画像変換器およびその係数群をほぼ正確な量子化レベルに画像化する量子化器を備えた符号化器を規定している。その量子化レベルは符号化パラメータを構成する。従来技術の方法によれば、量子化した係数群を閾値化することにより、すなわち、ビットレート対歪みの感覚でその方がよければ、慣用の量子化レベルより寧ろ量子化レベル零を選択することにより、画質が改善される。
従来技術の方法は、図1を参照して簡単に要約される。図1においいて、参照番号100は、量子化ステップサイズ△の領域に対するレート-歪み曲線(以下ではRD曲線と略す)を表わす。閾値化することにより、伝送される非零係数が少なくなるのであるから、ビットレートは低下し、歪みは増大する。図1において、曲線101は、ステップサイズ△1で量子化された係数群について閾値化動作が行なわれた場合のRD曲線を表わす。曲線102は、より大きいステップサイズ△2で量子化された係数群について閾値化動作が行なわれた場合のRD曲線を表わす。曲線101および102は、以下では閾値化曲線と呼ぶ。これらの曲線は、“ラグランジェ乗数”λの種々の値に対する“ラグランジェ原価”として知られているものの最小値を決定することによって得られる。ラグランジェ原価は、
L(b,λ)=D(b)+λ・R(b)
と決められている。この表現において、bは符号化すべき一連の係数値を表わす。D(b)およびR(b)は、それぞれ、これらの係数群を符号化する際の歪みおよびビットレートである。ラグランジェ乗数λは、零より大きいか、零に等しい自然数である。各λに対し、L(b,λ)が最小となる係数群の組bを得る閾値化動作が見出される。この組bに適用する歪みD(b)およびビットレートR(b)は、閾値化曲線bの点をなしている。開始点(λ=0)は、つねに、曲線100上にある。λが増大するに従い、歪みは増大し、ビットレートは低下する。図1から明らかなように、所定のビットレートR1は、(i)ステップサイズ△2で係数群を量子化して量子化した係数のすべてを伝送すること、および、(ii)より小さいステップサイズ△1で係数群を量子化して量子化した係数群を閾値化することによって達成される。選択(ii)の方が、歪みが少ないので有利である。
図示の曲線101および102は、存在し得る多数の閾値化曲線のうちの2本のみである。図に103で示すその包絡線は、所定の画像に対する最良の曲線をなしており、完全に曲線100の下側に位置している。換言すれば、任意所望のビットレートで閾値化を行なっても、その結果として、閾値化を行なわない場合より歪みが小さいステップサイズ△およびラグランジェ乗数λが得られる。しかしながら、符号化器の最良動作点を決めるこの方法は、計算の観点からすれば極めて集約的であり、λの多数の値に対して最良の組の係数群を求める繰返し手続きである。
〔本発明の目的および要約〕
本発明の目的は、厄介の少ない方法で最良動作点を決める符号化器を提供することにある。
したがって、本発明による装置は、前記計算手段が、前記係数の振幅分布を測定する手段、複数の符号化パラメータ値に対する前記振幅分布からビットレートRおよび歪みDを評価して評価結果のRD曲線を得る手段ならびに当該RD曲線の選択した点におけるλ=-dD/dRを計算する手段を備えたことを特徴とする。
本発明は、所望のビットレートに対して求めたラグランジェ乗数λは、RD曲線の微係数の負値に等しい、という認識に基づくとともに、RD曲線の少なくとも良好な近似は、各空間周波数に対する係数振幅の分布から引出し得る、という事実を利用したものである。かかる振幅分布は、符号化すべき画像の統計的予備解析によって容易に測定することができる。例えば、振幅分布は、各空間周波数について、当該空間周波数を表わす係数が同一振幅をとる場合の回数を係数することによって得ることができる。
本発明による装置の一実施例においては、ビットレートRを評価する手段(602)が、所定振幅を符号化すべきビット数の、振幅分布によって規定される当該振幅を係数がとる場合の発生回数との積を全空間周波数について累積的に加算するのに適応している。あるいは、ビットレートRを評価する手段が、ビットレートRを表わすエントロピーを振幅分布から計算するのに適応している。」(5頁1行?7頁15行)

「図2は、本発明により映像信号を符号化するための装置を示す。この装置は、遅延器1、画像変換器2、量子化器3、可変長符号化回路4、ビットレート制御回路5およびλ計算器6を備えている。本発明の重要な面は、映像信号はMPEG標準に従って符号化し得る、ということである。この目的のために、この実施例における画像変換器2、可変長符号化回路4およびビットレート制御回路5は、一般に周知のMPEG符号化器の対応した要素と同一である。したがって、これらについては詳述しない。簡単のために、図2にはフレーム内符号化に必要な要素のみを示す。本発明は、フレーム間符号化にも適用可能である。したがって、まず、適用画像を動き補正予測画像から差引き、その後に得られた残余の画像を符号化する。
画像変換器2においては、適用画像をブロック順次に画像変換に従わさせる。この実施例では、分離余弦波変換(DCT)を用いる。しかしながら、任意の適切な周波数変換を、副帯域ろ波を含めて用いることができる。DCTは、例えば8×8画素の各画像ブロックを、i=0----63が画像の詳細の増大する大きさの程度を示すようにした8×8係数ciに変換する。
DCT係数ciは、分離量子化レベルで各係数ciを映像化する量子化器3に印加する。」(8頁9?25行)

「上述した量子化過程は、DCT係数のビットレート強制量子化と呼ばれるものであり、各係数に対して最も近似した量子化レベルを符号化して伝送する慣用のMPEG符号化と比較してかなりの画質改善が得られる。
画質のさらなる改善は、このようにして得られた係数qiに、引続いて閾値化を受けさせることによって得られる。すでに前述したように、閾値化は、選択した係数を零と見做すことを意味するものと理解される。図10は、この目的で、各非零係数qiに対して実施する動作のフローチャートを示すものである。段階80においては、λの現下の値を与えたこの係数qi≠0についてラグランジェ原価L1を計算する。L1については、Riをqiおよび先行し得る零係数の伝送のためのビット数としたつぎの式が成立つ。
L1=(Ci-qi)2+λ・Ri
段階81においては、零の値をqiに押し付けた場合に対してラグランジェ原価L2を計算する。L2については、ΔRiをqiを零にすることにより節約される(qi=0の符号化は次の非零係数の符号化に含まれている)ビット数としたつぎの式が成立つ。
L2=(Ci-0)2+λ・ΔRi
引続いて、L->L2か否かが段階82で検討され、そのとおりでない場合には、qiが変化しないままとなり、そのとおりである場合には、段階83において、qiが零の値を受ける。その際、引続く非零係数については、この手続きが繰り返される。
図10に示す閾値化アルゴリズムは、係数毎に1回ずつ、その係数を零のままにし、もしくは、零にするのが有利か否かを決定する。これは、前述した論文「完全なJPEG/MPEG復号器両立性を備えたレート・歪み最良急速閾値化」に記載の、可能な閾値化の選択をすべて計算して最も有利なものを選択するアルゴリズムよりかなり簡単で計算が集約的ではない。しからざる場合にも、記載された閾値化の形態によりかなりの画質改善が得られる。ビットレート強制量子化と閾値化との組合わせが画質をかなり改善することが特に判っている。
ある画像ブロックのラグランジェ原価と全係数が零の値を有する画像ブロックのそれとを比較することにより、さらなる改善さえ得られる。実際には、全係数が零の値を有する画像ブロックは、伝送する必要がなく、符号化ブロック・パターンと呼ぶMPEGにより、パラメータ内でかかる空ブロックを示せば十分である。明らかに、符号化ブロック・パターンの符号化に含まれるビット数は、ラグランジェ原価L=D+λRのλR項中で考慮されている。
留意すべきこととして、量子化レベル以外の符号化パラメータは制御することができる。就中、λの計算値は、最良動きベクトルの選択、フィールド間もしくはフレーム間符号化モードの選択、多数の予測モード(前方、後方)からその一つの選択等にも用いることができる。
要約すれば、MPEG符号化映像信号の画質は、慣用の量子化の後に選択した係数を変更する、例えば零にすることにより、かなり改善することができる。この変更は、乗数λの所定値に対してDを歪みとし、Rをビットレートとした原価D+λRが最小となるようにする。」(16頁26行?18頁10行)
(刊行物1の記載、以上)

以上の記載によると、刊行物1には「映画像符号化方法」が記載されている。

刊行物1の「映画像符号化方法」は、画素ブロックを係数に変換する画像変換器2(DCT)、量子化器3(Q)、可変長符号化回路4(VLC)等を用いた装置(5頁4?9行、8頁9?18行、図2)によって、「映像信号はMPEG標準に従って符号化」(8頁11?12行)するものであり、この装置を示した図2について「簡単のために、図2にはフレーム内符号化に必要な要素のみを示す。本発明は、フレーム間符号化にも適用可能である。したがって、まず、適用画像を動き補正予測画像から差引き、その後に得られた残余の画像を符号化する。」(8頁15?18行)とされるから、
刊行物1には「映画像符号化方法」として、「フレーム間符号化にも適用可能であ」って、「適用画像を動き補正予測画像から差引き、その後に得られた残余の画像を」、画素ブロックを係数に変換する画像変換器2(DCT)、量子化器3(Q)、可変長符号化回路4(VLC)等を用いてMPEG標準に従って符号化する方法が記載されていると認められる。

「上述した量子化過程は、DCT係数のビットレート強制量子化と呼ばれるものであり、各係数に対して最も近似した量子化レベルを符号化して伝送する慣用のMPEG符号化と比較してかなりの画質改善が得られる。」(16頁26?28行)とあり、
刊行物1の「映画像符号化方法」の量子化過程では、「DCT係数のビットレート強制量子化と呼ばれる」量子化を行うと認められる。

「画質のさらなる改善は、このようにして得られた係数qiに、引続いて閾値化を受けさせることによって得られる。すでに前述したように、閾値化は、選択した係数を零と見做すことを意味するものと理解される。」(17頁1?3行)とあり、
「このようにして得られた係数qi」は、量子化過程で得られた係数であると認められるから、
刊行物1の「映画像符号化方法」は、「画質のさらなる改善は、」量子化過程で「得られた係数qiに、引続いて閾値化を受けさせることによって得られ」、「閾値化は、選択した係数を零と見做すことを意味する」ものであると認められる。

「図10は、この目的で、各非零係数qiに対して実施する動作のフローチャートを示すものである。段階80においては、λの現下の値を与えたこの係数qi≠0についてラグランジェ原価L1を計算する。L1については、Riをqiおよび先行し得る零係数の伝送のためのビット数としたつぎの式が成立つ。
L1=(Ci-qi)2+λ・Ri
段階81においては、零の値をqiに押し付けた場合に対してラグランジェ原価L2を計算する。L2については、ΔRiをqiを零にすることにより節約される(qi=0の符号化は次の非零係数の符号化に含まれている)ビット数としたつぎの式が成立つ。
L2=(Ci-0)2+λ・ΔRi
引続いて、L->L2か否かが段階82で検討され、そのとおりでない場合には、qiが変化しないままとなり、そのとおりである場合には、段階83において、qiが零の値を受ける。その際、引続く非零係数については、この手続きが繰り返される。
図10に示す閾値化アルゴリズムは、係数毎に1回ずつ、その係数を零のままにし、もしくは、零にするのが有利か否かを決定する。」(17頁3?19行)とあり、
刊行物1の「映画像符号化方法」では、その閾値化について
「係数毎に1回ずつ、その係数をそのまま(「零のまま」との記載は、「そのまま」の誤記と認める。「有利か否か」は「qiが変化しないまま」と「qiが零の値を受ける」とのいずれかが有利かをいうものと認められるところ、「零のままにし」と「(もしくは、)零にする」のいずれもが「qiが零の値を受ける」をいう表現となっており、「qiが変化しないまま」に対応する表現がなされていないことから、このように誤記と認定した。)にし、もしくは、零にするのが有利か否かを決定する。」ものであって、
「Riをqiおよび先行し得る零係数の伝送のためのビット数とした」「ラグランジェ原価」「L1=(Ci-qi)2+λ・Ri」を計算し、
「ΔRiをqiを零にすることにより節約されるビット数とした」「ラグランジェ原価」「L2=(Ci-0)2+λ・ΔRi」を計算し、
「L1>L2か否かが」(「L->L2」は「L1>L2」の誤記と認める。)「検討され」、
「そのとおりでない場合には、qiが変化しないままとなり、そのとおりである場合には、」「qiが零の値を受ける。」ものであり、
「その際、引続く非零係数については、この手続きが繰り返される」ものであると認められる。

「ある画像ブロックのラグランジェ原価と全係数が零の値を有する画像ブロックのそれとを比較することにより、さらなる改善さえ得られる。実際には、全係数が零の値を有する画像ブロックは、伝送する必要がなく、符号化ブロック・パターンと呼ぶMPEGにより、パラメータ内でかかる空ブロックを示せば十分である。明らかに、符号化ブロック・パターンの符号化に含まれるビット数は、ラグランジェ原価L=D+λRのλR項中で考慮されている。
留意すべきこととして、量子化レベル以外の符号化パラメータは制御することができる。就中、λの計算値は、最良動きベクトルの選択、フィールド間もしくはフレーム間符号化モードの選択、多数の予測モード(前方、後方)からその一つの選択等にも用いることができる。
要約すれば、MPEG符号化映像信号の画質は、慣用の量子化の後に選択した係数を変更する、例えば零にすることにより、かなり改善することができる。この変更は、乗数λの所定値に対してDを歪みとし、Rをビットレートとした原価D+λRが最小となるようにする。」(17頁25行?18頁10行)とあり、
刊行物1の「映画像符号化方法」では、
「さらなる改善さえ得られる」ために、「ある画像ブロックのラグランジェ原価と全係数が零の値を有する画像ブロックのそれとを比較する」ものであり、
「MPEG符号化映像信号の画質は、慣用の量子化の後に選択した係数を変更する、例えば零にすることにより、かなり改善することができ」、「この変更は、乗数λの所定値に対してDを歪みとし、Rをビットレートとした原価D+λRが最小となるようにする。」と「要約」されるものであると認められる。

このような刊行物1記載の「映画像符号化方法」を刊行物1発明として次のように認定する。

[刊行物1発明]
「映画像符号化方法」であって、
「フレーム間符号化にも適用可能であ」って、「適用画像を動き補正予測画像から差引き、その後に得られた残余の画像を」、画素ブロックを係数に変換する画像変換器2(DCT)、量子化器3(Q)、可変長符号化回路4(VLC)等を用いてMPEG標準に従って符号化するものであって、
量子化過程では、「DCT係数のビットレート強制量子化と呼ばれる」量子化を行うものであり、
「画質のさらなる改善は」量子化過程で「得られた係数qiに、引続いて閾値化を受けさせることによって得られ」、「閾値化は、選択した係数を零と見做すことを意味する」ものであり、
その閾値化は、
「係数毎に1回ずつ、その係数をそのままにし、もしくは、零にするのが有利か否かを決定する。」ものであって、
「Riをqiおよび先行し得る零係数の伝送のためのビット数とした」「ラグランジェ原価」「L1=(Ci-qi)2+λ・Ri」を計算し、
「ΔRiをqiを零にすることにより節約されるビット数とした」「ラグランジェ原価」「L2=(Ci-0)2+λ・ΔRi」を計算し、
「L1>L2か否かが」「検討され」、
「そのとおりでない場合には、qiが変化しないままとなり、そのとおりである場合には、」「qiが零の値を受ける。」ものであり、
「その際、引続く非零係数については、この手続きが繰り返される」ものであり、
「さらなる改善さえ得られる」ために、「ある画像ブロックのラグランジェ原価と全係数が零の値を有する画像ブロックのそれとを比較する」ものであり、
「MPEG符号化映像信号の画質は、慣用の量子化の後に選択した係数を変更する、例えば零にすることにより、かなり改善することができ」、「この変更は、乗数λの所定値に対してDを歪みとし、Rをビットレートとした原価D+λRが最小となるようにする。」と「要約」されるものである、
「映画像符号化方法」。

4 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)「ハイブリッド符号化を用いたビデオ信号符号化の方法」

「ハイブリッド符号化」は、一般に、動き補償とDCTの2つの技術を組み合わせるものをいい、実際には、更に、量子化とエントロピー符号化を組み合わせるものであると認められるところ、本願発明における「ハイブリッド符号化」は、それが背景技術として説明される(段落【0002】)ことから、本願発明においても「ハイブリッド符号化」は、上記一般的な意味で用いられているものと認められる。
刊行物1発明は、「フレーム間符号化にも適用可能であって、適用画像を動き補正予測画像から差引き、その後に得られた残余の画像を」符号化するから、動き補償の技術を用いているといえる。また、符号化には「画素ブロックを係数に変換する画像変換器2(DCT)」を用いている。したがって、刊行物1発明は、動き補償の技術とDCTとを組み合わせているといえ、動き補償とDCTの2つの技術を組み合わせる上記一般にいう「ハイブリッド符号化」といい得る符号化方法といえる。
また、刊行物1発明の「映画像符号化方法」で符号化されるのは映画像の信号であって、ビデオ信号ということができる。
よって、本願発明と刊行物1発明とは「ハイブリッド符号化を用いたビデオ信号符号化の方法」である点で一致する。

(2)「予測誤差信号を定めるために、ブロックベース動き補償予測により時間的冗長性を削減する工程」

刊行物1発明は、
「画素ブロックを係数に変換する画像変換器2(DCT)、量子化器3(Q)、可変長符号化回路4(VLC)等を用いてMPEG標準に従って符号化」しており、
刊行物1発明で用いられる「フレーム間符号化にも適用可能であって、適用画像を動き補正予測画像から差引き、その後に得られた残余の画像を」符号化する技術は動き補償の技術といえ、「予測誤差信号を定めるために、」「動き補償予測により時間的冗長性を削減する工程」といい得るとともに、「画素ブロックを係数に変換する」していて、「MPEG標準に従って」、ブロックベースでその動き補償を行っていると認められる。
よって、本願発明と刊行物1発明とは「予測誤差信号を定めるために、ブロックベース動き補償予測により時間的冗長性を削減する工程」を含む点で一致する。

(3)量子化から量子化値の保存又はゼロとするまでの工程
ア 本願発明
(ア)全体構成
本願発明はブロックについて「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し、量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、サブブロック段階、マクロブロック段階で繰り返す発明であると認められる。
この繰り返しは、本願発明において
サブブロック段階においては、
「前記予測誤差信号が複数のサブブロックを含むとともに、前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化係数を表す量子化値を求める工程と、
前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程と、
サブブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程と、
計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程と、
より高い方の効率を選択する工程と、
さらに処理を続けるために、計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記サブブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程」
と特定され、
マクロブロック段階においては、
「前記予測誤差信号は、複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロックを複数有し、サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行い、
1つのマクロブロックのすべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率を計算する工程と、
前記マクロブロックのすべての係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程と、
より高い方の効率を選択する工程と、
前記マクロブロックの選択された効率に依存して、前記マクロブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程」
と特定されている。

(イ)「量子化工程」
「量子化工程」は、
サブブロック段階においては、
「前記予測誤差信号が複数のサブブロックを含むとともに、前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化係数を表す量子化値を求める工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「前記予測誤差信号は、複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロックを複数有し、サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行い、」
である。
このマクロブロック段階での「量子化工程」は、サブブロックとマクロブロックとの関係を「複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロック」とした前提の下で、
サブブロック段階における「量子化工程」を「サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化」として「行い」、それを「効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行い」としてサブブロック段階の工程を行った結果の量子化値(サブブロック毎に保持もしくはゼロとされたもの)を、マクロブロック段階での量子化値として用いるものと認められる。

(ウ)「量子化効率計算工程」
「量子化効率計算工程」は、
サブブロック段階においては、
「前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「1つのマクロブロックのすべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率を計算する工程」
である。

(エ)「ゼロ効率計算工程」
「ゼロ効率計算工程」は、
サブブロック段階においては、
「サブブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「前記マクロブロックのすべての係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程」
である。

(オ)「比較・選択工程」
「比較・選択工程」は、
サブブロック段階においては、
「計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程」と「より高い方の効率を選択する工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「より高い方の効率を選択する工程」
である。
マクロブロック段階においては「比較」という工程を特定していないが、「より高い方の効率を選択」するために「比較」という工程を普通に想定した発明であると認められる。

(カ)「比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」
「比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」は、
サブブロック段階においては、
「さらに処理を続けるために、計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記サブブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程」
である。
このサブブロック段階において「さらに処理を続けるために、」と特定するのは、マクロブロック段階の「量子化工程」において、このサブブロック段階における「比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」の結果の量子化値をマクロブロック段階での量子化値として用い、マクロブロック段階が「さらに」続くことをいう特定であると認められる。
マクロブロック段階においては、
「前記マクロブロックの選択された効率に依存して、前記マクロブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程」
である。

(キ)「さらに含む」
本願発明が末尾で「さらに(含む)」と特定するのは、サブブロック段階の工程がマクロブロック段階の工程で用いられ、サブブロック段階に対してマクロブロック段階が「さらに」存在することを特定するものと認められる。

イ 対比(量子化から量子化値の保存又はゼロとするまでの工程)
(ア)全体構成
本願発明は、発明の全体構成として、上記したように、ブロックについて「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し、量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、サブブロック段階、マクロブロック段階で繰り返す発明であると認められる。
そして、本願発明の「量子化効率」「ゼロ効率」とは、一般に、歪みと情報量とが相反する関係にあり、良い画質(歪みの少ない)画像を少ない情報量(レート)で伝送しようとするビデオ伝送を前提として、画質(歪み)と情報量とを考慮して最適を測るための指標であって、歪みとレートからなるコスト「式Cj=Dj+L*Rj」(明細書【0024】)が例示される指標であると認められる。

これに対し、刊行物1発明は、
「量子化過程で得られた係数qiに、引続いて閾値化を受けさせ」、その閾値化は、
「係数毎に1回ずつ、その係数をそのままにし、もしくは、零にするのが有利か否かを決定する。」ものであって、
「Riをqiおよび先行し得る零係数の伝送のためのビット数とした」「ラグランジェ原価」「L1=(Ci-qi)2+λ・Ri」を計算し、
「ΔRiをqiを零にすることにより節約されるビット数とした」「ラグランジェ原価」「L2=(Ci-0)2+λ・ΔRi」を計算し、
「L1>L2か否かが」「検討され」、
「そのとおりでない場合には、qiが変化しないままとなり、そのとおりである場合には、」「qiが零の値を受ける。」ものであり、
「その際、引続く非零係数については、この手続きが繰り返される」ものであり、
「さらなる改善さえ得られる」ために、「ある画像ブロックのラグランジェ原価と全係数が零の値を有する画像ブロックのそれとを比較する」ものである。
ここで、計算されるL1、L2は、刊行物1発明で「「乗数λの所定値に対してDを歪みとし、Rをビットレートとした原価D+λRが最小となるようにする。」と「要約」され」る「原価D+λR」に当たるものと認められ、上記したように、歪みと情報量(レート)とが相反する関係にあるビデオの伝送において歪みDとビットレート(情報量)を考慮して最適を測る指標であるといえ、L1、L2は本願発明の例示と同様の項を有する式で計算されるから、本願発明の「量子化効率」「ゼロ効率」に相当するものであると認められる。
刊行物1発明は、その指標L1、L2を計算し、
「L1>L2か否かが」「検討され」、
「そのとおりでない場合には、qiが変化しないままとなり、そのとおりである場合には、」「qiが零の値を受ける。」ものであり、
「その際、引続く非零係数については、この手続きが繰り返される」のであって、この過程は、L1、L2の計算(すなわち、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程)を経て、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程がなされるものということができる。
結局、刊行物1発明は、「係数毎に」、量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を有するといえる。
さらに、刊行物1発明は、「さらなる改善さえ得られる」ために、「ある画像ブロックのラグランジェ原価と全係数が零の値を有する画像ブロックのそれとを比較する」ものであり、上記「係数毎」になされる上記過程が、「画像ブロック」毎になされるものでもあると認められる。
このようであるから、刊行物1発明は、「画像ブロック」毎に、量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を有するといえる。

そうしてみると、本願発明と刊行物1発明とは、全体構成として、ブロック毎に「量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を」含む点で一致するといえる。

もっとも、本願発明は、「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し」、量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、「サブブロック段階、マクロブロック段階で繰り返す」発明であることに対して、刊行物1発明は、「サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定することをせず、単に「ブロック毎に」行うものである点で相違する。

(イ)「量子化工程」
以降、「量子化工程」から「比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」までを、サブブロック段階、マクロブロック段階で上記ブロックに関する相違を除いて共通する処理過程として刊行物1発明と対比するとともに、各段階における上記ブロックに関する相違に基づく相違を調べる。

本願発明の「量子化工程」は、
サブブロック段階においては、
「前記予測誤差信号が複数のサブブロックを含むとともに、前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化係数を表す量子化値を求める工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「前記予測誤差信号は、複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロックを複数有し、サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行い、」
である。

上記したように、刊行物1発明は、本願発明で「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し」、処理過程を「サブブロック段階、マクロブロック段階で繰り返す」ことに関して相違するものの、そのようなブロックに関する相違を除くと、量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を有する点では本願発明と一致するといえる。
本願発明の「量子化工程」は、サブブロック段階、マクロブロック段階で上記のとおり表現振りが異なっているが、ブロックに関して係数を量子化をするという点で、いずれも同様の技術的内容を有するものと認められ、刊行物1発明における処理過程はいずれの表現においても、以下のとおり一致すると認められる。

サブブロック段階に対しては、
「前記予測誤差信号が複数のブロックを含むとともに、前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化係数を表す量子化値を求める工程」で一致し、
マクロブロック段階に対しては、
「前記予測誤差信号は、ブロックを複数有し、ブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対して量子化を行い、」で一致する。

もっとも、上記ブロックに関する相違のため、
サブブロック段階において、
ブロックが、
本願発明では「サブブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」である点で相違し、
マクロブロック段階において、
複数有するブロックが、
本願発明では、「複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、
量子化の対象とする係数が
本願発明では「サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行(い)」った係数であることに対し、
刊行物1発明では「ブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数」である点で相違する。

(ウ)「量子化効率計算工程」
本願発明の「量子化効率計算工程」は、
サブブロック段階においては、
「前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「1つのマクロブロックのすべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率を計算する工程」
である。

刊行物1発明は、全体構成として上記のように対比され、
刊行物1発明の
「「Riをqiおよび先行し得る零係数の伝送のためのビット数とした」「ラグランジェ原価」「L1=(Ci-qi)2+λ・Ri」を計算し、」は、「量子化効率計算工程」といえ、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「1つのブロックを量子化するための量子化効率を計算する工程」
という点で一致する。

もっとも、上記ブロックに関する相違のため、
マクロブロック段階において、
本願発明では、「量子化する」対象が「1つのマクロブロックのすべてのサブブロック」であり、計算するのが「すべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率」であることに対し、
刊行物1発明では、「量子化する」対象が「ブロック」であり、計算するのが「ブロックを量子化するための量子化効率」である点で相違する。

(エ)「ゼロ効率計算工程」
本願発明の「ゼロ効率計算工程」は、
サブブロック段階においては、
「サブブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「前記マクロブロックのすべての係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程」
である。

刊行物1発明は、全体構成として上記のように対比され、
刊行物1発明の
「ΔRiをqiを零にすることにより節約されるビット数とした」「ラグランジェ原価」「L2=(Ci-0)2+λ・ΔRi」を計算し、は、「ゼロ効率計算工程」といえ、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「ブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「ブロックのすべての係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程」
という点で一致する。

もっとも、上記ブロックに関する相違のため、
サブブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「サブブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」である点で相違し、
マクロブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「前記マクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では、「ブロック」である点で相違する。

(オ)「比較・選択工程」
本願発明の「比較・選択工程」は、
サブブロック段階においては、
「計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程」と「より高い方の効率を選択する工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「より高い方の効率を選択する工程」
である。

刊行物1発明は、全体構成として上記のように対比され、
刊行物1発明の
「L1>L2か否かが」「検討され」、
「そのとおりでない場合には、・・・、そのとおりである場合には、」・・・は、「比較・選択工程」といえ、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程」と「より高い方の効率を選択する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「より高い方の効率を選択する工程」
という点で一致する。

(カ)「比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」
本願発明の「比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」は、
サブブロック段階においては、
「さらに処理を続けるために、計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記サブブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程」
である。
マクロブロック段階においては、
「前記マクロブロックの選択された効率に依存して、前記マクロブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程」
である。

刊行物1発明は、全体構成として上記のように対比され、
刊行物1発明の、
「そのとおりでない場合には、qiが変化しないままとなり、そのとおりである場合には、」「qiが零の値を受ける。」は、「比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」といえ、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記ブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「前記ブロックの選択された効率に依存して、前記ブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程」
という点で一致する。

もっとも、上記ブロックに関する相違のため、
サブブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「サブブロック」であり、「さらに処理を続けるために、」なされることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、「さらに処理を続けるために、」なされるものではない点で相違し、
マクロブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「マクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」である点で相違する。

(キ)「さらに含む」
本願発明が末尾で「さらに(含む)」と特定するのは、サブブロック段階の工程がマクロブロック段階の工程で用いられ、サブブロック段階に対してマクロブロック段階が「さらに」存在することを特定するものと認められ、
刊行物1発明は、上記ブロックに関する相違のため、「さらに(含む)」ものではない点で相違する。

(オ)対比まとめ
a 一致
このように、本願発明と刊行物1発明とは、
「ハイブリッド符号化を用いたビデオ信号符号化の方法」であって、
「予測誤差信号を定めるために、ブロックベース動き補償予測により時間的冗長性を削減する工程」と
ブロック毎に「量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を」含む「方法」
である点で一致し、

量子化工程において
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「前記予測誤差信号が複数のブロックを含むとともに、前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化係数を表す量子化値を求める工程」で一致し、
マクロブロック段階に対しては、
「前記予測誤差信号は、ブロックを複数有し、ブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対して量子化を行い、」で一致し、

量子化効率計算工程において
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「1つのブロックを量子化するための量子化効率を計算する工程」
という点で一致し、

ゼロ効率計算工程において、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「ブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「ブロックのすべての係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程」
という点で一致し、

比較・選択工程において、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程」と「より高い方の効率を選択する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「より高い方の効率を選択する工程」
という点で一致し、

比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程において、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記ブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「前記ブロックの選択された効率に依存して、前記ブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程」
という点で一致する。

b 相違
そして、本願発明は、「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し」、量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、「サブブロック段階、マクロブロック段階で繰り返す」発明であることに対して、刊行物1発明は、「サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定することをせず、単に「ブロック毎に」行うものである点で相違することに基づき、

量子化工程において、
サブブロック段階において、
ブロックが、
本願発明では「サブブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」である点で相違し、
マクロブロック段階において、
複数有するブロックが、
本願発明では、「複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、
量子化の対象とする係数が
本願発明では「サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行(い)」った係数であることに対し、
刊行物1発明では「ブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数」である点で相違し、

量子化効率計算工程において、
マクロブロック段階において、
本願発明では、「量子化する」対象が「1つのマクロブロックのすべてのサブブロック」であり、計算するのが「すべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率」であることに対し、
刊行物1発明では、「量子化する」対象が「ブロック」であり、計算するのが「ブロックを量子化するための量子化効率」である点で相違し、

ゼロ効率計算工程において、
サブブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「サブブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」である点で相違し、
マクロブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「前記マクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では、「ブロック」である点で相違し、

比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程において、
サブブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「サブブロック」であり、「さらに処理を続けるために、」なされることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、「さらに処理を続けるために、」なされるものではない点で相違し、
マクロブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「マクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」である点で相違し、

「さらに含む」ことにおいて、
刊行物1発明は、「さらに(含む)」ものではない点で相違する。

5 一致点相違点
以上のとおり対比されるから、本願発明と刊行物1発明との一致点、相違点は次の通りである。

[一致点]
「ハイブリッド符号化を用いたビデオ信号符号化の方法」であって、
「予測誤差信号を定めるために、ブロックベース動き補償予測により時間的冗長性を削減する工程」と
ブロック毎に「量子化工程、量子化効率計算工程、ゼロ効率計算工程、比較・選択工程、比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を」含む「方法」
であり、

量子化工程において
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「前記予測誤差信号が複数のブロックを含むとともに、前記予測誤差信号を周波数領域に変換して得られる係数を量子化して、それぞれ量子化係数を表す量子化値を求める工程」で一致し、
マクロブロック段階に対しては、
「前記予測誤差信号は、ブロックを複数有し、ブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対して量子化を行い、」で一致し、

量子化効率計算工程において
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「前記量子化値に対する効率として、量子化効率を計算する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「1つのブロックを量子化するための量子化効率を計算する工程」
で一致し、

ゼロ効率計算工程において、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「ブロックにおける前記量子化値のすべてをゼロとしたときの量子化の効率として、ゼロ効率を計算する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「ブロックのすべての係数をゼロにしたときの全ゼロ量子化効率を計算する工程」
で一致し、

比較・選択工程において、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「計算した量子化効率を計算したゼロ効率と比較する工程」と「より高い方の効率を選択する工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「より高い方の効率を選択する工程」
で一致し、

比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程において、
本願発明の
サブブロック段階に対しては、
「計算した量子化効率が計算したゼロ効率よりも高い場合には前記量子化値を保持し、それ以外の場合には、前記ブロックの量子化値のすべてをゼロとする工程」、
マクロブロック段階に対しては、
「前記ブロックの選択された効率に依存して、前記ブロックに対応する量子化値を保持するか又はゼロとする工程」
で一致する点。

[相違点]
本願発明は、「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し」、量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、「サブブロック段階、マクロブロック段階で繰り返す」発明であることに対して、刊行物1発明は、「サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定することをせず、単に「ブロック毎に」行うものであることに基づき、

量子化工程において、
サブブロック段階において、
ブロックが、
本願発明では「サブブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、
マクロブロック段階において、
複数有するブロックが、
本願発明では、「複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、
量子化の対象とする係数が
本願発明では「サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行(い)」った係数であることに対し、
刊行物1発明では「ブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数」であり、

量子化効率計算工程において、
マクロブロック段階において、
本願発明では、「量子化する」対象が「1つのマクロブロックのすべてのサブブロック」であり、計算するのが「すべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率」であることに対し、
刊行物1発明では、「量子化する」対象が「ブロック」であり、計算するのが「ブロックを量子化するための量子化効率」であり、

ゼロ効率計算工程において、
サブブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「サブブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、
マクロブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「前記マクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では、「ブロック」であり、

比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程において、
サブブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「サブブロック」であり、「さらに処理を続けるために、」なされることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、「さらに処理を続けるために、」なされるものではなく、
マクロブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「マクロブロック」であることに対し、
刊行物1発明では「ブロック」であり、

「さらに含む」ことにおいて、
刊行物1発明は、「さらに(含む)」ものではない点。

6 判断
(1)刊行物2
「Keng-Pang Lim et al.,Text Description of Joint Model Reference Encoding Methods and ecoding Concealment Methods,Joint Video Team (JVT) of ISO/IEC MPEG and ITU-T VCEG Munich, Germany, Document JVT-K049,ITU-T,2004年 4月」(刊行物2)には、次の記載がある。

(刊行物2の記載)(27頁から28頁にかけて)
2.3.1 Luminance
(2.3.1 輝度)

With the small 4x4 blocks, it may happen that for instance a macroblock has only one nonzero coefficient with |Level| =1.
(4x4小ブロックとともに、それは、例えば、マクロブロックが有する|レベル|=1の唯一の非ゼロ係数を有することが起こり得る。)

This will probably be a very "expensive" coefficient in terms of bit usage and it could have been better to set it to zero.
(これはおそらく、ビット使用の面で非常に "高価な"係数になり、それはゼロに設定することが良いとされ得ます。)

For that reason a procedure to check single coefficients has been used for inter luma blocks.
(そのため、単一の係数をチェックする手順は、インター輝度ブロックのために使用されてきた。)

During the quantisation process, a parameter Single_ctr is accumulated depending on Run and Level according to the following rule:
(量子化プロセスの間に、パラメータSingle_ctrは次のルールに従って、ランとレベルに応じて蓄積されている。)

- If Level = 0 or (|Level| = 1 and Run > 5) nothing is added to Single_ctr.
(- レベルが0、もしくは、レベルの絶対値が1でランが5より大きい場合、Single_ctrに何も加えない。)

- If |Level| > 1, 9 is added to Single_ctr.
(- レベルの絶対値が1より大きい場合、Single_ctrに9を加える。)

- If |Level| = 1 and Run < 6, a value T(Run) is added to Single_ctr. where T(0:5) =(3,2,2,1,1,1)
(- レベルの絶対値が1に等しく、ランが6より小さい場合、Single_ctrにT(ラン)の値を加える。そこではT(0:5)=(3,2,2,1,1,1)である。)

- If the accumulated Single_ctr for a 8x8 block is less than 4, all coefficients of that luma block are set to zero. Similarly, if the accumulated Single_ctr for the whole macroblock is less than 6, all coefficients of that luma macroblock are set to zero.
(- 8x8ブロックのために蓄積されたSingle_ctrが4以下の場合、輝度ブロックのすべての係数はゼロにされる。同様に、マクロブロック全体のために蓄積されたSingle_ctrが6以下の場合、輝度マクロブロックのすべての係数はゼロにされる。)
(刊行物2の記載、以上)

刊行物2の上記記載によると、刊行物2には、
4x4ブロックで「唯一の非ゼロ係数を有することが起こ」ると、「ビット使用の面で非常に "高価な"係数にな」るから、その係数を「ゼロに設定することが良い」との考え方に基づいて、「パラメータSingle_ctr」に基づいて、「8x8ブロックのために蓄積されたSingle_ctrが4以下の場合、輝度ブロックのすべての係数はゼロに」し、「同様に、マクロブロック全体のために蓄積されたSingle_ctrが6以下の場合、輝度マクロブロックのすべての係数はゼロにされる。」発明(以下、「刊行物2発明」ともいう)の記載が認められる。
刊行物2発明において、「パラメータSingle_ctr」は、次のルールにより蓄積されるものである。
- レベルが0、もしくは、レベルの絶対値が1でランが5より大きい場合、Single_ctrに何も加えない。
- レベルの絶対値が1より大きい場合、Single_ctrに9を加える。
- レベルの絶対値が1に等しく、ランが6より小さい場合、Single_ctrにT(ラン)の値を加える。そこではT(0:5)=(3,2,2,1,1,1)である。

(2)判断
刊行物2発明において、マクロブロックは複数の8x8ブロックからなるマクロブロックであり、8x8ブロックはマクロブロックの一部をなす部分のブロックであると認められる。
また、刊行物2発明において、「ビット使用の面で非常に "高価な"係数にな」るというのは、ビット利用の効率(の悪さ)をいうものと認められる。
刊行物2発明では、8x8ブロックにおいて蓄積されたSingle_ctrに基づいて「Single_ctrが4以下の場合、輝度ブロックのすべての係数はゼロに」し、これは、逆に、刊行物2発明が、Single_ctrが4より大きいときは8x8ブロックの係数はゼロにされずにそのまま用いられることをいうものと認められる。「Single_ctrが4以下の場合、輝度ブロックのすべての係数はゼロに」した場合は、係数をそのまま残すより効率が良く、逆に、Single_ctrが4より大きいときは8x8ブロックの係数はゼロにされずにそのまま用いられる場合は、すべての係数をゼロにするより効率が良いと考えているものと認められる。これは、マクロブロックにおいても同じ考え方であると認められる。
このようであるから、刊行物2発明における「パラメータSingle_ctr」は、効率を測る指標であると理解される。
このように理解されるから、刊行物2発明は、8x8ブロックで「係数をそのまま残す」か「すべての係数をゼロにする」かを効率を測る指標に基づいて選択し、マクロブロックでも同様の選択をする発明として理解でき、刊行物2発明は、効率を測る指標に基づいておこなう「係数をそのまま残す」か「すべての係数をゼロにする」かの選択を、ブロック段階で行い、同様にマクロブロック段階でも行うことを示唆するものと認められる。

本願発明と刊行物1発明との上記相違点に関して、刊行物1発明における単に「ブロック毎に」行う「量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」は、効率に基づいて「量子化値の保存又はゼロとする」を選択するものといえるから、刊行物2発明における「「係数をそのまま残す」か「すべての係数をゼロにする」かを効率を測る指標に基づいて選択」することに対応する技術であると認められる。
そして、刊行物2発明が上記のように、効率を測る指標に基づいておこなう「係数をそのまま残す」か「すべての係数をゼロにする」かの選択を、ブロック段階で行い、同様にマクロブロック段階でも行うことを示唆するといえるから、その示唆に基づき、刊行物1発明において、単に「ブロック毎に」行う「量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程」を、複数のブロックからなるマクロブロックにおいても行うようにして、「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し」、量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、「サブブロック段階、マクロブロック段階で」行うようにしようとすることは当業者が容易に想到することといえる。
そして、刊行物1発明において、量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、「サブブロック段階、マクロブロック段階で」行うようにしようとすれば、自然と「繰り返す」こととなるということができる。

そして、このように、刊行物1発明において「複数の(前記)サブブロックに細分されるマクロブロック」と2段階にブロックを特定し」、量子化工程から比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程を、「サブブロック段階、マクロブロック段階で繰り返す」ようにする時、各工程において、次のような構成に容易に想到できるといえる。

量子化工程では、
サブブロック段階において、
刊行物1発明の「ブロック」を「サブブロック」とし、
マクロブロック段階において、
刊行物1発明の「ブロック」を「複数の前記サブブロックに細分されるマクロブロック」とし、
刊行物1発明の「ブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数」を「サブブロックの予測誤差信号を周波数領域に変換して得られた係数に対してそれぞれ第1の量子化を行い、効率の計算、効率の選択、及び、量子化値の保持又はこれらをゼロとすることを各サブブロックに対して行(い)」った係数とすること。

量子化効率計算工程では、
マクロブロック段階において、
本願発明では、「量子化する」対象が「1つのマクロブロックのすべてのサブブロック」であり、計算するのが「すべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率」であることに対し、
刊行物1発明の「量子化する」対象を「「1つのマクロブロックのすべてのサブブロック」とし、「すべてのサブブロックを量子化するための全量子化効率」を計算するようにすること。

ゼロ効率計算工程では、
サブブロック段階において、
刊行物1発明の「ブロック」を「サブブロック」とし、
マクロブロック段階において、
刊行物1発明の「ブロック」を「前記マクロブロック」とすること。

比較選択に基づいて量子化値の保存又はゼロとする工程では、
サブブロック段階において、
ブロックが
本願発明では「サブブロック」であり、「さらに処理を続けるために、」なされることに対し、
刊行物1発明の「ブロック」を「サブブロック」とし、「さらに処理を続けるために、」とし、
マクロブロック段階において、
刊行物1発明の「ブロック」を「マクロブロック」とすること。

「さらに含む」ことにおいて、
刊行物1発明を「さらに(含む)」とすること。

このようであるから、本願発明における相違点に係る構成は、刊行物1に記載された発明および刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものということができ、本願発明は、刊行物1に記載された発明および刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明および刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本願発明を含む本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明および刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

6 むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明および刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願は、残る請求項2ないし9に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-12 
結審通知日 2014-03-18 
審決日 2014-03-25 
出願番号 特願2009-553122(P2009-553122)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 高行  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 渡邊 聡
小池 正彦
発明の名称 ハイブリッドビデオ符号化のための量子化  
代理人 内田 潔人  
代理人 内田 潔人  
代理人 加藤 朝道  
代理人 加藤 朝道  

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