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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N
管理番号 1290536
審判番号 不服2010-23804  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-22 
確定日 2014-08-05 
事件の表示 特願2003-587958「リュードコッカス・エリトロポリスからのADH」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 6日国際公開、WO03/91423、平成17年 8月11日国内公表、特表2005-523702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年(2003年)4月1日(優先権主張 2002年4月26日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成22年6月18日付けで拒絶査定され、同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求され、平成25年8月16日付けで拒絶理由が通知されたところ、平成26年2月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成26年2月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1、2及び6に係る発明は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、単離された核酸が、a)配列番号1の配列を有する核酸であることを特徴とする、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項2】
a)請求項1に記載の核酸によってコードされるポリペプチド、
b)配列番号2による配列を有するポリペプチド、
の群から選択されたポリペプチド。」(以下、「本願発明2」という。)
「【請求項6】
PCRによって請求項1に記載の核酸を製造するためのプライマー。」(以下、「本願発明6」という。)

第3 引用例の記載事項
1.当審における拒絶理由通知において引用文献cとして引用された、本願優先日前に頒布された刊行物であるApplied Microbiology and Biotechnology, 1999, Vol.52, pp.386-392には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

(ア)「キラルなアルコールの生成に有効な生体触媒であるフェニルアセトアルデヒドレダクターゼ(PAR)をコードする遺伝子をスチレン資化性コリネバクテリウム属ST-10株のゲノムDNAからクローニングした。この遺伝子は、385アミノ酸残基に相当する1,158ヌクレオチドからなるORFを含んだ。サブユニットの分子量は40,299と計算され、これは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により決定されたものと一致した。この酵素は組換え大腸菌において実用に十分に発現し、三段階のカラムクロマトグラフィーで単一に精製された。・・・したがって、この酵素は、特定の広い基質特異性を有する亜鉛含有長鎖アルコールデヒドロゲナーゼの新しいメンバーであると考えられた。」(要約)

(イ)「

図1 par遺伝子の核酸配列及び推定アミノ酸配列及びフランキング領域。」(389頁図1)

(ウ)「核酸配列アクセッション番号
本稿で報告された核酸配列は、アクセッション番号AB020760として、DDBJ、EMBL及びGenBankデータベースから利用可能である。」(388頁左欄下から4行?末行)

2.当審における拒絶理由通知において引用文献fとして引用された、本願優先日前に頒布された刊行物であるAdvances in Biochemical Engineering/Biotechnology, 1997, Vol.58, pp.145-184 には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。)。

「2.3.1 ロドコッカス・エリトロポリスDSM43297由来の(S)-アルコールデヒドロゲナーゼ
ロドコッカス・エリトロポリスDSM43297由来のS-ADHはエナンチオマー的に純粋なアルコールを製造するために重要な触媒である。」(162頁下18行?下16行)

第4 特許法第29条第1項第3号
1.対比
本願発明2は、ポリペプチドが選択肢で記載されているところ、選択肢b)を選択した場合に係る発明(以下、「本願発明2’」という。)について検討する。

上記「第3 1.」の記載事項からみて、引用文献cには、下記の発明が記載されていると認められる。
「コリネバクテリウム属ST-10株由来のアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド」(以下、「引用発明c」という。)

本願発明2’と引用発明cを対比する。
ここで、本願発明2’のポリペプチドは、本願明細書の実施例2及び3の記載によれば、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドである。
そうすると、両者は、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドである点で一致し、下記の点で一見相違する。

相違点ア:本願発明2’は、配列番号2による配列を有するものであるのに対し、引用発明cには、そのようなアミノ酸配列は特定されておらず、引用文献cには、引用発明cのアミノ酸配列として、本願の配列番号2のアミノ酸配列と82%同一性を有するものが記載されている点。

2.判断
引用文献cに記載された塩基配列(記載事項(イ)参照)は、本願優先日前の1999年11月17日に、アクセッション番号AB020760のバージョン2として、データベースに登録され(Corynebacterium sp. ST-10 gene for Phenylacetaldehyde reductase,complete cds.,[online],1999年11月17日,National Center for Biotechnology Info,Accession No.AB020760,Version AB020760.2,2013年8月7日検索,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/4630800?sat=24=60590参照)、この塩基配列は、本願優先日後の2004年12月25日にバージョン3に訂正された(Rhodococcus sp. ST-10 par gene for Phenylacetaldehyde reductase,complete cds.,[online],2004年12月23日,National Center for Biotechnology Info,Accession No.AB020760,Version AB020760.3,2013年8月7日検索,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/56790189?sat=34&satkey=2218020)。そして、訂正された塩基配列がコードするアミノ酸配列である「MKAIQYTRIGAEPELTEIPKPEPGPGEVLLEVTAAGVCHSDDFIMSLPEEQYTYGLPLTLGHEGAGKVAAVGEGVEGLDIGTNVVVYGPWGCGNCWHCSQGLENYCSRAQELGINPPGLGAPGALAEFMIVDSPRHLVPIGDLDPVKTVPLTDAGLTPYHAIKRSLPKLRGGSYAVVIGTGGLGHVAIQLLRHLSAATVIALDVSADKLELATKVGAHEVVLSDKDAAENVRKITGSQGAALVLDFVGYQPTIDTAMAVAGVGSDVTIVGIGDGQAHAKVGFFQSPYEASVTVPYWGARNELIELIDLAHAGIFDIAVETFSLDNGAEAYRRLAAGTLSGRAVVVPGL」(上記バージョン3の「translation」参照。)は、本願の配列番号2と100%同一である。
そうすると、本願発明2’の配列番号2による配列を有するポリペプチドは、引用文献cに製造することができ、かつ、使用することができるように記載されていた(記載事項(ア)参照)引用発明cに係るポリペプチドと化学物質自体として同一である。

3.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成26年2月4日付け意見書において、引用文献cの図1に記載される配列は、この学術文献の著者らが実際にクローニングを行い配列決定により確認された研究結果としての配列であって、そのときにクローニングされた菌株の配列が実際にそのような変異を有していた可能性もあるから、データベースが訂正されたとしても、それに合わせて引用文献cで確認された配列までも遡って変わる根拠はなく、引用文献cの配列決定された菌株の配列までも誤っていたなどとは結論付けられないこと、誤った配列を主たる配列として完成された学術文献であるのならば、引用文献cは、そもそも新規性進歩性の判断の引用文献としての適格性を欠くものであること、優先日前に登録されていたコリネバクテリウム属の菌株と訂正に際しての菌株とが全く同じものであった確証もないことを理由に、相違点アに影響が及ぼされるものではない旨主張する。

しかしながら、上記判断において、引用発明として認定したのは、引用文献cの図1に記載されたアミノ酸配列ではなく、コリネバクテリウム属ST-10株由来のアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチド自体である。そのポリペプチドに関する配列情報が訂正されたとしても、引用発明であるポリペプチド自体が化学物質として変更されることにはならない。また、引用文献cには、当該ポリペプチドが技術的事項として製造することができ、かつ、使用することができるように記載されているのであるから、たとえ、引用文献cに記載された配列情報が一部誤りを含むものであったとしても、引用発明としての適格性を欠いている理由にはならない。
また、請求人は、配列の訂正前後の菌株が同一であったとはいえないことを主張するが、通常、塩基配列の登録者は、塩基配列以外に、菌株等の由来生物名を記載して遺伝子データベースに登録し、その配列に誤りがある場合は、登録者自身が登録した塩基配列を訂正するのであるから(GenBankにおける提出要件、[online]、インターネット、及び、DDBJにおける塩基配列の登録、[online]、インターネット、参照)、訂正前後の菌株の同一性は担保されていると考えるのが妥当である。

4.小括
以上検討したところによれば、本願発明2’は、引用文献1に記載された発明であり、本願発明2’をその選択肢として包含する本願発明2も同様であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第5 特許法第29条第2項
1.本願発明1について
ア.対比
上記「第3 1.」の記載事項からみて、引用文献cには、下記の発明が記載されていると認められる。
「コリネバクテリウム属ST-10株由来のアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸」(以下、「引用発明c’」という。)

本願発明1と引用発明c’を対比する。
ここで、引用文献cに記載のコリネバクテリウム属ST-10株は、ロドコッカス属ST-10株に改称された(上記アクセッション番号AB020760のバージョン2及び3の「source」参照)。
また、本願発明1の核酸は、本願明細書の実施例1?3及び段落【0055】の記載によれば、ロドコッカス・エリトロポリスDM43297菌株由来のアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするものである。

そうすると、両者は、ロドコッカス属に属する菌株由来のアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点イ:本願発明1は、配列番号1の塩基配列を有する核酸であるのに対し、引用発明c’には、そのような塩基配列は特定されておらず、引用文献cには、引用発明c’の塩基配列として、本願の配列番号1と99%同一性を有するものが記載されている点。

イ.判断
本願発明1は、ロドコッカス・エリトロポリスDM43297菌株由来のものであるが、引用発明cは、ロドコッカス属ST-10株由来のものであって、上記相違点イは、由来となる菌株の相違に起因するものである。
引用文献fには、ロドコッカス・エリトロポリスDM43297は、アルコールデヒドロゲナーゼを産生していることが記載されている。
当業者であれば、引用発明c’と同じロドコッカス属に属する菌株である、ロドコッカス・エリトロポリスDM43297由来のアルコールデヒドロゲナーゼをコードする核酸を取得することは、容易に想起することであって、その際、引用文献cに記載された塩基配列に基づいてプライマーを作製して、ロドコッカス・エリトロポリスDM43297由来のアルコールデヒドロゲナーゼをコードする核酸をクローニングすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、そのようにして、本願発明1の「配列番号1の塩基配列を有する核酸」は取得できるものである。

本願明細書において、本願発明1がコードするアルコールデヒドロゲナーゼは、複数の基質に反応性を有すること(段落【0139】及び表7)、熱安定性を有すること(表5及び図4)、高いエナンチオ選択性を有すること(表8)が示されている。
ところで、本願の配列番号1の塩基配列は、配列番号2のアミノ酸配列をコードするものであるから、本願発明1に係る核酸によってコードされるポリペプチドは、本願発明2であるところ、上記「第4」で述べたように、本願発明2は、結局、引用発明cに係るポリペプチドと同一なのであるから、上記の本願明細書において確認されたアルコールデヒドロゲナーゼの性質は、引用発明cに係るアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドが本質的に有している性質を単に明らかにしたにすぎないものである。したがって、本願発明1に係る核酸の進歩性を認めるに足るものとして、評価することはできない。

ウ.小括
以上検討したところによれば、、本願発明1は、引用文献c及びfに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.本願発明6について
ア.対比
本願発明6は、「PCRによって請求項1に記載の核酸を製造するためのプライマー。」というものである。
ここで、引用する請求項1を読み込むと、本願発明6は、「PCRによって、配列番号1の配列を有する核酸であることを特徴とする、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を製造するためのプライマー。」となる。

本願発明6と引用発明c’を対比する。
両者は、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸に関連する発明である点で共通し、下記の点で相違する。
相違点ウ:本願発明6は、PCRによって、配列番号1の配列を有する核酸であることを特徴とする、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を製造するためのプライマーであるのに対し、引用発明c’には、そのようなプライマーは記載されていない点

イ.判断
ここで、本願発明6は、「PCRによって、配列番号1の配列を有する核酸であることを特徴とする、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を製造するため」という用途限定のみで特定された「プライマー」に係る発明であるところ、この用途に特に適した塩基配列からなる構造を有するプライマーを意味すると解することができる。すなわち、「PCRによって、配列番号1の配列を有する核酸であることを特徴とする、アルコールデヒドロゲナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を製造する」のに適した構造を有するプライマーを意味すると解することができる。

そして、あるポリペプチドをコードする核酸が取得されたときに、当該核酸の部分配列からなる断片を、当該核酸をPCRで増幅するためのプライマーとすることは、例を挙げるまでもなく本願優先日前における周知技術であることを考慮すれば、引用文献cの図1に記載された塩基配列に基づいて、その部分配列からなるプライマーを作製することは、当業者が容易になし得ることである。そのようにして作製されたプライマーは、引用文献cに記載された塩基配列と99%同一である本願の配列番号1の塩基配列を有する核酸をPCRによって製造するのに適した構造を有するものであるといえる。
そして、本願明細書の記載をみても、本願発明6が従来技術からは予期できない格別な効果を奏するものとも認められない。

ウ.小括
以上検討したところによれば、本願発明6は、引用文献cに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本願の請求項1及び6に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、 その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-03 
結審通知日 2014-03-10 
審決日 2014-03-24 
出願番号 特願2003-587958(P2003-587958)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C12N)
P 1 8・ 121- WZ (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊達 利奈  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 冨永 みどり
田中 晴絵
発明の名称 リュードコッカス・エリトロポリスからのADH  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 星 公弘  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  
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