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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1290551 |
審判番号 | 不服2013-5836 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-01 |
確定日 | 2014-08-04 |
事件の表示 | 特願2011-209996「X線診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月16日出願公開、特開2012- 30089〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成16年11月1日に出願した特願2004-317645号の一部を平成23年9月26日に新たな特許出願としたものであって,平成24年4月23日付けで拒絶理由が通知され,これに対して,同年6月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,同年12月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成25年4月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。 なお,本願の出願日は,特許法第44条第2項の規定により,平成16年11月1日に出願されたものとみなす。(以下,平成16年11月1日を「出願遡及日」という。) 第2 平成25年4月1日付けの手続補正書についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年4月1日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「被検体に対してX線の照射を行なうX線発生部と、 前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、 前記X線発生部と前記X線検出部を対向して保持するCアームと、 このCアームを前記被検体の体軸と略平行な軸を回動中心軸として、前記被検体の周囲に設定された所定の回動経路を少なくとも3回回動する回動手段と、 前記被検体の心拍情報と前記Cアームの回動位置情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相においてX線照射を制御する照射制御手段と、 前記照射制御手段の制御によってX線の照射と検出を行なうことにより投影データを生成する投影データ生成手段と、 生成された前記投影データを再構成処理してボリュームデータを生成する再構成処理手段と、を備え、 前記照射制御手段は、前記心拍情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相における前記少なくとも3回の回動によるX線照射位置の一部が重なり合うように制御することを特徴とするX線診断装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の,平成24年6月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「被検体に対してX線の照射を行なうX線発生部と、 前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、 前記X線発生部と前記X線検出部を対向して保持するCアームと、 このCアームを前記被検体の体軸と略平行な軸を回動中心軸として、前記被検体の周囲に設定された所定の回動経路を少なくとも3回回動する回動手段と、 前記被検体の心拍情報と前記Cアームの回動位置情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相においてX線照射を制御する照射制御手段と、 前記照射制御手段の制御によってX線の照射と検出を行なうことにより投影データを生成する投影データ生成手段と、 生成された前記投影データを再構成処理してボリュームデータを生成する再構成処理手段と、を備え、 前記照射制御手段は、前記被検体の所定心拍時相における前記少なくとも3回の回動によるX線照射位置の一部が重なり合うように制御することを特徴とするX線診断装置。」 (3)補正事項について 本件補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記照射制御手段は、前記被検体の所定心拍時相における前記少なくとも3回の回動によるX線照射位置の一部が重なり合うように制御すること」における「制御」が,「前記心拍情報に基づいて」行われるという限定を付加するものであって,平成18年法律第55号附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2 独立特許要件違反についての検討 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3 引用文献及びその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由で引用された,出願遡及日の前である平成13年5月15日に頒布された刊行物である,特開2001-128961号公報(以下,「引用例1」という。)には,次のことが記載されている。また,後に引用例に記載された発明の認定に直接的に利用する箇所に,当審が下線を付した。 ア 「【0014】図1に示すX線装置1は、X線管2と、二次元X線検出器3、例えば、画像増倍管とを有し、これらX線管及びX線検出器は、z軸について患者5の周りで回転可能となるように配置されるようCアーム4上に取り付けられ、これらX線管及びX線検出器はこのCアームに垂直に延在する軸の周りで傾けられ得る。X線装置1及びX線検出器3を用いた捕捉されたデータの処理は、制御及び算術ユニット6によって制御される。心電図記録装置8に接続された電極7は、患者の心電図を記録するために患者5の胸の上に置かれる。患者5の呼吸運動は腹部用ベルト9を用いて測定され、この腹部用ベルト9は、呼吸運動によってゆがめられ得、呼吸運動信号を形成するために呼吸運動測定装置10に接続される。心電図及び呼吸運動信号は、X線装置1の制御及びデータ捕捉中に直接的に考慮されるように心電図記録装置8及び呼吸運動測定装置10によって夫々制御及び算術ユニット6にオンラインで送られる。」 イ 「【0016】図2は、線A-A’について取られた断面図である。同図は、半円の弓形上に置かれ対応する投影データセットを捕捉するようにX線管2によって連続的に占有されるX線位置p_(0)乃至p_(16)を象徴的に示す。心臓の所望の表示、例えば、冠状脈管の個々の横断面画像又は画像が形成され得る三次元画像データセットを得るためには、示される各X線位置p_(0)乃至p_(16)において対応する投影データセットを捕捉することが必要であり、示されるX線位置の数は簡略化のため少なく選択される。」 ウ 「【0017】心臓11が投影データセットの捕捉中に固有運動を実施することを考慮するために、本発明の一実施例では、図3に示すような心電図Hが投影データセットの捕捉と同時に運動信号として測定される。個々の瞬時t_(0)、t_(1)、……、t_(16)は、心電図Hの下に示されるタイムベース上に記され、X線管はこれらの瞬時にX線位置p_(0)、p_(1)、……、p_(16)に置かれ、これらのX線位置において対応する投影データセットD_(0)、D_(1)、……、D_(16)が捕捉される。図3に明確に示すように、毎回2つの投影データセット(D0、D1;D4、D5…)が動きが小さいフェーズH1(弛緩フェーズ)で捕捉され、毎回2つの他の投影データセット(D_(2)、D_(3);D_(6)、D_(7)…)が動きが大きいフェーズH_(2)(収縮フェーズ)で捕捉される。心臓の画像をアーチファクトの無い高い質のものに確実にするためには、動きが大きいフェーズH_(2)中に捕捉された投影データセット(D_(2)、D_(3);D_(6)、D_(7)…)が三次元画像データセットの捕捉のために使用され得ない。しかしながら、残留する、使用可能な投影データセット(D_(0)、D_(1);D_(4)、D_(5)…)は、十分な質の三次元データセットの再構成には十分でない。従って、全てのX線位置p_(0)乃至p_(16)は、対応するX線周期中、数回連続的に占有され、各X線周期、図4を参照して説明するように心周期内で異なる瞬時に始まる。」 エ 「【0018】第1のX線周期R_(1)(図4の第3のタイムベースを参照)の間、まずX線位置p_(0)乃至p_(16)が連続的に占有され、動きが小さいフェーズH_(1)中に捕捉された投影データセットD_(0)、D_(1)、D_(4)、D_(5)……、D_(16)だけが使用可能である。第1のX線周期R_(1)は、動きが小さいフェーズH_(1)の始まりにおける瞬時t_(0)で始まる。時間隔、例えば、X線装置が再び元の位置に移動するのに必要な時間の後、第2のX線周期R_(2)が動きが大きいフェーズH_(2)の始まりに略対応する瞬時t’_(0)で始まる。瞬時t’_(2)におけるX線位置p_(2)では、X線管は再び動きが小さいフェーズH_(1)におかれ、この瞬時に捕捉された(第1のX線周期R_(1)中に捕捉されないか捕捉されても使用できない)投影データセットD_(2)は、三次元画像データセットを形成するように使用され得る。同様のことが第2のX線周期R2中に捕捉された更なる投影データセットD_(3)、D_(6)、D_(7)、D_(10)…、にも考えられ、このときこれらの投影データセットは、全て動きが小さいフェーズH_(1)中に捕捉される。個々のX線周期の始まりにおけるこのような制御は、全てのX線位置において動きが小さいフェーズH_(1)中に捕捉され三次元画像データセットを得るのに適切である投影データセットD_(0)乃至D_(16)が2つのX線周期後に利用可能となることを確実にする。 オ 「【0019】個々のX線周期R_(1)及びR_(2)中における投影データセットの捕捉は、対応する投影データセットD_(0)乃至D_(16)がX線源によって占有される各X線位置p_(0)乃至p_(16)で捕捉されるようにして実施され得、このとき動きが小さいフェーズH_(1)中に捕捉された投影データセット(第1のX線周期では、D_(0)、D_(1)、D_(4)、D_(5)…、第2のX線周期ではD_(2)、D_(3)、D_(6)、D_(7)…)だけが使用される。しかしながら、選択的なバージョンでは、全てのX線位置p_(0)乃至p_(16)は連続的に横切られるにもかかわらず投影データセットが動きが小さいフェーズH_(1)においてだけ捕捉されるよう配置されてもよい。つまり、例えば、第1のX線周期において位置p_(2)及びp_(3)は動きが大きいフェーズH_(2)でX線管によって占有されるが、例えば、X線管がこれらのX線位置においてオフにされたままであるため、このフェーズ中に投影データセットは捕捉されない。図4の最も下のタイムベースより、本発明の本実施例ではX線管が動きが小さいフェーズH_(1)中にだけオンにされ、動きが大きいフェーズH_(2)中はオフにされていることが分かる。このようなX線管のオン及びオフの切換は、心電図Hに基づいて制御される。これは、動きが大きいフェーズH_(2)中に患者が不必要にX線に曝されないといった利点を提供する。」 カ 「【0020】図4を参照して説明される本発明による方法のバージョンでは、全ての必要な投影データセットD_(0)乃至D_(16)は、2つのX線周期内で捕捉され得る。しかしながら、これは必ずしもそうでなくてもよく、動きが小さいフェーズH_(1)の持続時間対動きが大きいフェーズH_(2)の持続時間との比に依存して多数のX線周期が要求されてもよい。例えば、動きが小さいフェーズH_(1)は非常に短く、高い運動フェーズH_(2)が非常に長いとき、2つの以上のX線周期が確実に要求される。」 キ 図1 ク 図2 ケ 図4 コ 上記キに摘記した図1から,「X線管2」と「二次元X線検出器3」とが対向して「Cアーム4」に保持される様子が読み取れる。 そして,上記キ及び技術常識から,「X線管2」が「患者5」に対してX線の照射を行うこと,「二次元X線検出器3」が「患者5」を透過したX線を検出することは明らかである。 サ 上記アの「z軸」は,上記キに摘記した図1を参照するに,「患者5」の体軸方向と平行な軸である。 このことと,上記アに摘記した「X線管及びX線検出器は、z軸について患者5の周りで回転可能となるように配置されるようCアーム4上に取り付けられ」という事項からみて,引用例1に記載された「X線装置1」が「X線管2と、二次元X線検出器3」とを保持する「Cアーム4」を「患者5」の体軸方向と平行な軸を回動中心軸として「患者5」の周囲に設定された所定の回動経路で回動させる手段を備えることは自明である。 シ 上記オに摘記した 「X線管が動きが小さいフェーズH_(1)中にだけオンにされ、動きが大きいフェーズH_(2)中はオフにされていることが分かる。このようなX線管のオン及びオフの切換は、心電図Hに基づいて制御される。」 という事項からみて,引用例1に記載された「X線装置1」が,「患者5」の「心電図H」に基づいて,「患者5」の「心電図H」における「フェーズH_(1)」に「X線管」をオンに制御する手段を備えることは明らかである。 ス 上記ウに「X線管はこれらの瞬時にX線位置p_(0)、p_(1)、……、p_(16)に置かれ、これらのX線位置において対応する投影データセットD_(0)、D_(1)、……、D_(16)が捕捉される」ことを摘記したが,その各「投影データ」がX線の照射と検出を行うことにより生成されること,そして,その生成のための手段があることは,技術常識から明らかである。 セ 上記エに摘記した「三次元画像データセットを得るのに適切である投影データセットD_(0)乃至D_(16)」という事項から,引用例1に記載された「X線装置1」が,「投影データセットD_(0)、D_(1)、……、D_(16)」を再構成処理して「三次元画像データセット」を生成する手段を有することは明らかである。 ソ 上記エに摘記した「投影データセットD_(0)乃至D_(16)が2つのX線周期後に利用可能となる」こと,そして上記カに摘記した「動きが小さいフェーズH_(1)は非常に短く、高い運動フェーズH2が非常に長いとき、2つの以上のX線周期が確実に要求される」ことから,上記アに摘記した「回転」は,2回以上行われる。 タ 上記ケに摘記した図4から,1回目の「X線周期」であるR_(1)の期間に得る投影データD_(0),D_(1),D_(4),D_(5),・・を得る位置P_(0),P_(1),P_(4),P_(5),・・と,2回目の「X線周期」であるR_(2)の期間に得る投影データD_(2),D_(3),D_(6),D_(7),・・を得る位置P_(2),P_(3),P_(6),P_(7),・・との間に,重なりがない様子が読み取れる。 チ してみれば,引用例1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「患者5に対してX線の照射を行うX線管2と, 前記患者5を透過したX線を検出する二次元X線検出器3と, 前記X線管2と前記二次元X線検出器3とを対向して保持するCアーム4と, このCアーム4を前記患者5の体軸と平行な軸を回動中心軸として,前記患者5の周囲に設定された所定の回動経路を2回以上回動する回動手段と, 前記患者5の心電図Hに基づいて,前記患者5の前記心電図HにおけるフェーズH_(1)に前記X線管2をオンに制御する手段と, X線の照射と検出を行うことにより,X線位置p_(0),p_(1),……,p_(16)において対応する投影データセットD_(0),D_(1),……,D_(16)を生成する手段と, 生成された投影データセットを再構成処理して三次元画像データセットを生成する手段と, 前記X線管2をオンに制御する手段は,前記心電図Hに基づいて,前記フェーズH_(1)における前記2回以上の回動によるX線位置を重ねることなく制御するX線装置1。」 (2)原査定の拒絶の理由で引用された,出願遡及日の前である平成15年2月25日に頒布された刊行物である,特開2003-52688号公報(以下,「引用例2」という。)には,次のことが記載されている。なお,この引用例2においては,関連する技術的事項に当審が下線を付与した。 ア 「【0002】 【従来の技術】図6から図8は、心臓の周期的運動中のある期間のX線CT画像を生成する従来方法の説明図である。図6に示すように、X線CT画像を生成するに必要なビュー範囲(#0ビュー?#Mビュー)を、一つの部分ビュー範囲のデータ収集に要する時間が十分短いとみなせるようなサイズの第1部分ビュー範囲J1から第4部分ビュー範囲J4に分割する。なお、説明の都合上、分割数N=4としている。 【0003】次に、図7に示すように、R波のτa後からτeの期間に第1部分ビュー範囲J1のデータを収集し、次のR波のτa後からτeの期間に第2部分ビュー範囲J2のデータを収集し、次のR波のτa後からτeの期間に第3部分ビュー範囲J3のデータを収集し、次のR波のτa後からτeの期間に第4部分ビュー範囲J4のデータを収集する。なお、心臓の運動周期をTとする。 【0004】そして、図8に示すように、第1部分ビュー範囲J1から第4部分ビュー範囲J4のデータを集めて、X線CT画像を生成するに必要なビュー範囲(#0ビュー?#Mビュー)のデータとし、そのデータを基にX線CT画像を生成する。」 イ 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】上記従来のX線CT画像生成方法では、第2部分データ範囲J2に隣接する第1部分データ範囲J1のデータと第1部分データ範囲J1に隣接する第2部分データ範囲J2のデータとが、少なくとも(T-τe)だけ時間的に離れている。第2部分データ範囲J2と第3部分データ範囲J3の隣接するデータでも同様であり、また、第3部分データ範囲J3と第4部分データ範囲J4の隣接するデータでも同様である。しかし、このような大きな時間的不連続性があると、それが原因となってストリークアーチファクト(streak artifact)などのアーチファクトを生じさせる問題点がある。そこで、本発明の目的は、異なる部分データ範囲が隣接する部分でデータに大きな時間的不連続性が生じることを抑制できるようにした画像生成方法およびX線CT装置を提供することにある。」 ウ 「【0020】図2から図4は、心臓の周期的運動中のある期間のX線CT画像を生成する画像生成方法の第1の実施形態の説明図である。図2に示すように、X線CT画像を生成するに必要なビュー範囲(#0ビュー?#Mビュー)を、一つの部分ビュー範囲のデータ収集に要する時間が十分短いとみなせるようなサイズの第1部分ビュー範囲S1から第4部分ビュー範囲S4に分割する。このとき、隣接する部分データ範囲が一部重複するように部分データ範囲を従来(図6参照)よりも拡張する。なお、説明の都合上、分割数N=4としている。」 エ 「【0023】次に、図4の(a)に示すように第1部分ビュー範囲S1から第4部分ビュー範囲S4のデータを集め、重複するデータが存在する領域では図4の(b)に示すような線形荷重を用いて荷重平均演算により、重複するデータを図4の(c)に示すような1つのデータS12,S23,S34にそれぞれまとめる。そして、図4の(c)に示すように、第1部分ビュー範囲S1から第4部分ビュー範囲S4で重複しないデータおよびまとめたデータS12,S23,S34を集めて、X線CT画像を生成するに必要なビュー範囲(#0ビュー?#Mビュー)のデータとし、そのデータを基にX線CT画像を生成する。」 オ 図2 カ 図3 キ 図6 4 対比・判断 (1)対比 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「X線管2」は,「X線装置1」の一部に属し,X線を発生する機能を有することから,これは本件補正発明の「X線発生部」に相当する。同様に,引用発明1の「二次元X線検出器3」は,本件補正発明の「X線検出部」に相当する。 また,引用発明1の「患者5」は,患者というからには何らの疾患が疑われるか,疾患を有すると考えられ,その「患者5」について「X線装置1」により画像を生成される。したがって,その「X線装置1」が診断に利用されることは技術常識から明らかであるから,引用発明1の「X線装置1」は本件補正発明の「X線診断装置」に相当する。 そして,引用発明1の「患者5」は,その診断の対象であるから,検査を被る体を有する。したがって,引用発明1の「患者5」は,本件補正発明の「被検体」に相当する。 よって,引用発明1の「患者5に対してX線の照射を行うX線管2」,「前記患者5を透過したX線を検出する二次元X線検出器3」,「前記X線管2と前記二次元X線検出器3とを対向して保持するCアーム4」は,それぞれ本件補正発明の「被検体に対してX線の照射を行なうX線発生部」,「前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部」,「前記X線発生部と前記X線検出部を対向して保持するCアーム」に相当する。 イ 引用発明1の「このCアーム4を前記患者5の体軸と平行な軸を回動中心軸として,前記患者5の周囲に設定された所定の回動経路を2回以上回動する回動手段」と本件補正発明の「このCアームを前記被検体の体軸と略平行な軸を回動中心軸として、前記被検体の周囲に設定された所定の回動経路を少なくとも3回回動する回動手段」は,「このCアームを前記被検体の体軸と略平行な軸を回動中心軸として、前記被検体の周囲に設定された所定の回動経路を2回以上回動する回動手段」である点で共通する。 ウ 引用発明1の「心電図H」,「フェーズH_(1)」は,それぞれ本件補正発明の「心拍情報」,「所定心拍時相」に相当する。 また,引用発明1において「X線管2をオンに制御する」ことは,X線を照射する制御を行うということである。 したがって,引用発明1の「前記患者5の心電図Hに基づいて,前記患者5の前記心電図HにおけるフェーズH_(1)に前記X線管2をオンに制御する手段」と,本件補正発明の「前記被検体の心拍情報と前記Cアームの回動位置情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相においてX線照射を制御する照射制御手段」とは,「前記被検体の心拍情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相においてX線照射を制御する照射制御手段」である限りにおいて共通する。 エ 引用発明1の「X線の照射と検出を行うことにより,X線位置p_(0),p_(1),……,p_(16)において対応する投影データセットD_(0),D_(1),……,D_(16)を生成する手段」は,本件補正発明の「前記照射制御手段の制御によってX線の照射と検出を行なうことにより投影データを生成する投影データ生成手段」に相当する。 オ 引用発明1の「三次元画像データセット」は,本件補正発明の「ボリュームデータ」に相当する。 したがって,引用発明1の「生成された投影データセットを再構成処理して三次元画像データセットを生成する手段」は,本件補正発明の「生成された前記投影データを再構成処理してボリュームデータを生成する再構成処理手段」に相当する。 カ 引用発明1の「前記X線管2をオンに制御する手段は,前記心電図Hに基づいて,前記フェーズH_(1)における前記2回以上の回動によるX線位置を重ねることなく制御する」ことと,本件補正発明の「前記照射制御手段は、前記心拍情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相における前記少なくとも3回の回動によるX線照射位置の一部が重なり合うように制御する」こととは,「前記照射制御手段は、前記心拍情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相における前記2回以上の回動によるX線照射位置の相互関係について制御する」点において共通する。 キ 上記ア?カを総合すれば,本件補正発明と引用発明1との一致点,相違点は次の通りである。 【一致点】 「被検体に対してX線の照射を行なうX線発生部と、 前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、 前記X線発生部と前記X線検出部を対向して保持するCアームと、 このCアームを前記被検体の体軸と略平行な軸を回動中心軸として、前記被検体の周囲に設定された所定の回動経路を2回以上回動する回動手段と、 前記被検体の心拍情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相においてX線照射を制御する照射制御手段と、 前記照射制御手段の制御によってX線の照射と検出を行なうことにより投影データを生成する投影データ生成手段と、 生成された前記投影データを再構成処理してボリュームデータを生成する再構成処理手段と、を備え、 前記照射制御手段は、前記心拍情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相における前記2回以上の回動によるX線照射位置の相互関係について制御することを特徴とするX線診断装置。」 【相違点1】 本件補正発明においては,「回動手段」が「Cアームを」回動させる回数が「少なくとも3回」であるのに対し,引用発明1においては,それが「2回以上」である点。 【相違点2】 本件補正発明の「照射制御手段」は「心拍情報」及び「Cアームの回動位置情報」に「基づいて」「X線照射を制御する」ものである。 これに対し,引用発明1の「X線管2をオンに制御する手段」は,「心電図Hに基づいて」「X線管2をオンに制御する」ものである点。 【相違点3】 本件補正発明の照射制御手段が,複数回の「回動によるX線照射位置の一部が重なり合う」ように制御されるのに対し,引用発明1にはそのように制御されていない点。 (2)相違点に対する判断 ア 【相違点1】について 引用発明1において,上記3(1)カには, 「必要な投影データセットD_(0)乃至D_(16)は、2つのX線周期内で捕捉され得る。しかしながら、これは必ずしもそうでなくてもよく、動きが小さいフェーズH_(1)の持続時間対動きが大きいフェーズH_(2)の持続時間との比に依存して多数のX線周期が要求されてもよい。例えば、動きが小さいフェーズH_(1)は非常に短く、高い運動フェーズH_(2)が非常に長いとき、2つの以上のX線周期が確実に要求される。」 と記載されていることから,1つの画像を取得するにあたって,3回以上回動させることが想定されているといえる。 その「動きが小さい」といえる「フェーズH_(1)」の長さは,「患者5」の心拍状態,及び動きによるアーチファクトに対する許容度に応じて決まるものである。 したがって,「動きが小さい」といえる「フェーズH_(1)」を短くすることにより,例えば3回以上の回動を必要とする状況も生じ得たことである。 よって,引用発明1において,回動手段がCアーム4を少なくとも3回回動させることにより,上記相違点1に係る本件補正発明の構成のようにすることは,当業者が適宜なし得たことである。 イ 【相違点2】について 引用発明1のようにCアームを回転させながら投影データを得るとき,引用発明1の「X線位置p_(0),p_(1),……,p_(16)」のように,必要な投影データを得る位置のみでX線を照射することは,例えば,特開平8-336520号公報段落【0028】に記載されているように周知技術である。 そして,引用発明1においては,上記3(1)オに摘記したとおり,「X線管のオン及びオフの切換は,心電図Hに基づいて制御され,X線管は動きが小さいフェーズH_(1)中にだけオンにされ,動きが大きいフェーズH_(2)中はオフにされ,これは,動きが大きいフェーズH_(2)中に患者が不必要にX線に曝されないといった利点を提供」するものである。 よって,引用発明1において,患者に不必要なX線を照射しないために,「動きが小さいフェーズH_(1)中」において,上記周知技術にしたがって,投影データを得る「X線位置p_(0),p_(1),……,p_(16)」のみで,すなわち,「Cアームの回動位置情報」に基づいてX線を照射することにより,上記相違点2に係る本件補正発明の構成のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 【相違点3】について 引用発明1において,アーム4を2回回動させることにより,X線位置p_(0),p_(1),……,p_(16)において対応する投影データセットD_(0),D_(1),……,D_(16)を生成するとき,上記3(1)ケに摘記した図4に示されているように,捕捉される投影データセットのうち,X線位置が連続するD_(1)とD_(2)とは,時間的には不連続である。 そうした,X線位置は連続するが時間的には不連続なデータをセットとして再構成処理するとアーチファクトが生じるため,そのアーチファクトを抑制するための技術が上記引用例2に記載されている。 この引用例2に記載されているのは, X線CT画像を生成するために必要なビュー範囲である#0ビュー?#Mビューを,心臓の周期的運動中のある期間に,上記3(2)キに摘記した図6に示されたようにJ1?J4の部分ビュー範囲に分割して収集すると, 例えばJ1とJ2が隣接する部分における時間的不連続性に起因してストリークアーチファクトが生じるため, 上記3(2)オに摘記した図2に示されたように部分ビュー範囲S1とS2が隣接する部分で重複してデータ収集し, 重複するデータを荷重平均して#0ビュー?#Mビューのデータとし,このデータを基にX線CT画像を生成することによりストリークアーチファクトの発生を抑制する という技術である。 この引用例2における#0ビュー?#Mビューの各「ビュー」が,X線の照射方向ごとの投影データであり,「X線CT画像」が,#0ビュー?#Mビューのデータから引用発明1と同様の演算で画像を再構成することは,技術常識から明らかである。 上記のとおり,引用発明1における投影データセットには,X線位置は連続しても時間的には不連続な箇所を含むため,引用例2の図6に示された#0ビュー?#Mビューのデータと同様に,再構成処理によりストリークアーチファクトを生じ得る。したがって,引用例2に記載された技術が,引用発明1においても有効なことは,当業者には明らかである。 また,引用発明1と引用例2に記載された技術は,いずれも心電同期によるX線断層撮影という関連性の高い技術に関するものである。 よって,引用発明1において,隣接するデータ間に時間的不連続性があることにより生じるアーチファクトを抑制するため,引用例2に記載された技術を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。 ウ 相違点1?3を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する効果は,引用発明1,上記周知技術及び引用例2に記載された技術の奏する効果から予測可能な程度であって格別なものではない。 (3)小括 したがって,本件補正発明は,引用発明1,上記周知技術及び引用例2に記載された技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 まとめ 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されることになるので,本願の請求項1乃至9に係る発明は,平成24年6月26日に提出された手続補正書の特許請求の範囲1乃至9に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)次のとおりのものである。 「被検体に対してX線の照射を行なうX線発生部と、 前記被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、 前記X線発生部と前記X線検出部を対向して保持するCアームと、 このCアームを前記被検体の体軸と略平行な軸を回動中心軸として、前記被検体の周囲に設定された所定の回動経路を少なくとも3回回動する回動手段と、 前記被検体の心拍情報と前記Cアームの回動位置情報に基づいて、前記被検体の所定心拍時相においてX線照射を制御する照射制御手段と、 前記照射制御手段の制御によってX線の照射と検出を行なうことにより投影データを生成する投影データ生成手段と、 生成された前記投影データを再構成処理してボリュームデータを生成する再構成処理手段と、を備え、 前記照射制御手段は、前記被検体の所定心拍時相における前記少なくとも3回の回動によるX線照射位置の一部が重なり合うように制御することを特徴とするX線診断装置。」 2 引用文献及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された文献である上記引用例1,2の記載は,上記第2[理由]3に記載したとおりである。 3 対比・判断 上記第2[理由]1「(3)補正事項について」に記載したとおり,本願補正発明は,本願発明にさらに限定事項を追加したものであるから,本願発明は,本件補正発明から限定事項を省いた発明といえる。その本件補正発明が,上記第2[理由]3,4に記載したとおり,引用発明1,上記周知技術及び引用例2に記載された技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるからである以上,本願発明も同様の理由により,引用発明1,上記周知技術及び引用例2に記載された技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり,審決する。 |
審理終結日 | 2014-05-30 |
結審通知日 | 2014-06-13 |
審決日 | 2014-06-24 |
出願番号 | 特願2011-209996(P2011-209996) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小田倉 直人 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
右▲高▼ 孝幸 藤田 年彦 |
発明の名称 | X線診断装置 |
代理人 | 藤原 康高 |
代理人 | 藤原 康高 |