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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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判定2014600025 | 審決 | 特許 |
判定2014600021 | 審決 | 特許 |
判定2014600006 | 審決 | 特許 |
判定2014600057 | 審決 | 特許 |
判定2014600047 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B30B |
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管理番号 | 1290574 |
判定請求番号 | 判定2014-600009 |
総通号数 | 177 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2014-09-26 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2014-03-13 |
確定日 | 2014-07-31 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4860684号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「サーボシリンダ」は、特許第4860684号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1.請求の趣旨と手続の経緯 判定請求人の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す「サーボシリンダ」は、特許第4860684号の請求項1に係る特許発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 また、本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。 平成14年 8月 2日 原出願(特願2002-225546号)出 願 平成20年12月26日 原出願の一部を特願2008-332749 号として本件特許に係る特許出願 平成22年 6月21日 補正書提出 平成23年 5月12日 拒絶理由(起案日) 平成23年 7月15日 意見書及び補正書提出 平成23年 9月30日 特許査定(起案日) 平成23年11月11日 特許登録 平成26年 3月13日 本件判定請求 平成26年 5月 2日 答弁書(被請求人) 第2.本件特許発明 特許第4860684号の請求項1に係る特許発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、請求人が上記判定を求める請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)につき、その構成を構成要件毎に符合を付して分説すると、次のとおりである。(以下、「構成要件A」等という。) 「A 正又は逆回転する駆動軸を有する電動駆動手段と、 B 前記駆動軸の正又は逆回転を後記ボールネジ軸に伝達する減速伝達手 段と、 C 位置固定で正又は逆回転するボールネジ軸と、 D 該ボールネジ軸に螺合して前記正又は逆回転に従って前進又は後退す る押圧ロッドと、 E 押圧ロッドに加わる負荷を検出する荷重検出手段と F を備えたサーボプレスにおいて、 G 押圧ロッドは、組立部品の圧入又は引抜を担うロッド本体とボールネ ジ軸に螺合する螺合部とを直列に一体にし、 H 減速伝達手段から前方に延びる出力軸と前記螺合部に螺合して後方に 延びるボールネジ軸とを連結し、 I 荷重検出手段は、前記出力軸又はボールネジ軸に嵌着した円筒状の変 位部材の側面に歪みゲージを接着し、 J 前記変位部材の前縁部を装置本体に固定し、 K 前記変位部材の後縁部を前記出力軸に設けた後押圧部と前記ボールネ ジ軸に設けた前押圧部とにより挟持して構成した L ことを特徴とするサーボプレス。」 第3.イ号物件 平成26年3月13日付け判定請求書、イ号図面及びその説明書によれば、本件イ号物件の構成は、本件特許発明の構成要件に対応させ分説、記載すると、次のとおりである。 「a 正又は逆回転する駆動軸(5’)を有する電動駆動手段と、 b 駆動軸(5’)の正又は逆回転をボールネジ(1’)に伝達する減速 伝達手段(3’)と、 c 位置固定で正又は逆回転するボールネジ(1’)と、 d ボールネジ(1’)に螺合して正又は逆回転に従って前進又は後退す る押圧ロッド(4’)と、 e 押圧ロッド(4’)に加わる負荷を検出する荷重検出手段と、 f を備えたサーボシリンダにおいて、 g 押圧ロッド(4’)は、組立部品の圧入又は引抜を担うピストンロッ ド(14’)とボールネジ(1’)に螺合する螺合部(15’)とを 直列に一体にし、 h 減速伝達手段(3’)から前方に延びる出力軸(16’)と螺合部( 15’)に螺合して後方に延びるボールネジ(1’)とを一体にし、 i 後嵌合部材(30’)、スラストベアリング(20’)、前嵌合部材 (31’)及び後側装置本体(13a’)で組合せ体(17’)を構 成し、組合せ体(17’)を構成するスラストベアリング(20’) がボールネジ(1’)に嵌着し、荷重検出手段は、組合せ体(17’ )を構成する後側装置本体(13a’)の側面に歪みゲージ(22’ )を接着し、 j 組合せ体(17’)を構成する後側装置本体(13a’)の前縁部を 前側装置本体(13b’)に固定し、 k 組合せ体(17’)を構成するスラストベアリング(20’)の中央 軌道盤(33’)の突出部(33a’)を出力軸(16’)に設けた 後押圧部材(18’)とボールネジ(1’)に設けた前押圧部材(1 9’)とにより挟持して構成した l サーボシリンダ。」 そして、上記イ号図面及びその説明書に加え、証拠方法として、請求人からは以下の書証が提出されている。 (1) 甲第1号証 特許第4860684号公報 (2) 甲第2号証 本件特許の登録原簿謄本 (3) 甲第3号証 特開平7-164253号公報 (4) 甲第4号証 被請求人が販売するサーボシリンダのラインナップ を示したインターネットサイト写し (URL:http://www.sinto.co.jp/product/mechatronics/ servo_cylinder/lineup/index.html) (5) 甲第5号証 被請求人が販売するサーボシリンダの仕組みを示し たインターネットサイト写し (URL:http://www.sinto.co.jp/product/mechatronics/ servo_cylinder/shikumi/index.html) (6) 甲第6号証 披請求人が販売するサーボシリンダの使用例を示し たインターネットサイト写し (URL:http://www.sinto.co.jp/product/mechatronics/ project/index.html) (7) 甲第7号証 広辞苑第6版 2541頁 (8) 甲第8号証 平成23年5月17日付け拒絶理由通知書 (9) 甲第9号証 本件特許の平成23年7月15日付手続補正書 (10)甲第10号証 本件特許の平成23年7月15日付意見書 第4.対比・判断 1.構成要件Aの充足性について イ号物件の「駆動軸(5’)」及び「電動駆動手段」は、本件特許発明の「駆動軸」及び「電動駆動手段」にそれぞれ対応するから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Aを充足する。 2.構成要件B及びCの充足性について イ号物件の「ボールネジ(1’)」及び「減速伝達手段(3’)」は、本件特許発明の「ボールネジ軸」及び「減速伝達手段」にそれぞれ対応するから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件B及びCを充足する。 3.構成要件Dの充足性について 上記2.のとおり、イ号物件の「ボールネジ(1’)」は、本件特許発明の「ボールネジ軸」に対応する。そして、イ号物件の「押圧ロッド(4’)」は、本件特許発明の「押圧ロッド」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Dを充足する。 4.構成要件Eの充足性について 上記3.のとおり、イ号物件の「押圧ロッド(4’)」は、本件特許発明の「押圧ロッド」に対応する。そして、イ号物件の「荷重検出手段」は、本件特許発明の「荷重検出手段」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Eを充足する。 5.構成要件F及びLの充足性について 甲第6号証には、被請求人のホームページにおいて、「新東のコントロール技術をキーとして、多彩な先進機能を組み合わせ、材料・工法・プロセスに応じた最適な駆動源やプレス装置をご提案しています。」との文言があり、そして当該文言の下に、左下記載の「サーボシリンダ」の写真から放射状に6本の矢印が延び、そのうち、3本が、「精密・複合プレス」、「真空プレス」、「汎用プレス」の写真をそれぞれ貫くように、記載されていることからすれば、イ号物件の「サーボシリンダ」は、駆動源として「プレス」に組み合わせて用いられるものでもあるといえるから、イ号物件の「サーボシリンダ」は、本件特許発明の「サーボプレス」に対応する。イ号物件は、本件特許発明の構成要件F及びLを充足する。 6.構成要件Gについて 上記2.及び3.のとおり、イ号物件の「押圧ロッド(4’)」及び「ボールネジ(1’)」は、それぞれ本件特許発明の「押圧ロッド」及び「ボールネジ軸」に対応する。そして、イ号物件の「ピストンロッド(14’)」及び「螺合部(15’)」は、本件特許発明の「ロッド本体」と「螺合部」に対応するから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Gを充足する。 7.構成要件Hについて 構成要件Hの、「減速伝達手段から前方に延びる出力軸」と「螺合部に螺合して後方に延びるボールネジ軸」とは、両者が「連結」されることにより、「駆動軸」の「正又は逆回転」を「減速伝達手段」を介して「ボールネジ軸」へ伝達することができるものである。 一方、イ号物件の「出力軸(16’)」は、「減速伝達手段(3’)」から前方に延び、「ボールネジ(1’)」は、「螺合部(15’)」に螺合して、後方に延びて、そして「出力軸(16’)」と「ボールネジ(1’)」は、「一体」にされるから、イ号物件においても、「駆動軸(5’)」の「正又は逆回転」が、「減速伝達手段(3’)」を介して「ボールネジ(1’)」伝達されるから、「一体」にされた「出力軸(16’)」と「減速伝達手段(3’)」は、「連結」されたものである、と言い換えることができる。 したがって、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Hを充足する。 8.構成要件IないしKの充足性について 本件特許明細書(甲第1号証)には、「変位部材」について以下のとおり記載されている。 「ロッド本体14の圧入に際しては、螺合部15に対して相対的に後方へ移動するボールネジ軸1に設けた前押圧部19が変位部材17の後縁部を後方へ押圧し、前記変位部材17の側面に接着した歪みゲージ22に歪みを生起し、押圧荷重を検出する。ロッド本体14の引抜に際しては、螺合部15に対して相対的に前方へ移動したボールネジ軸1に連結している出力軸16に設けた後押圧部18が変位部材17の後縁部を前方へ押圧し、前記変位部材17の側面に接着した歪みゲージ22に歪みを生起し、引抜荷重に検出する。」(段落【0020】) また、本件特許発明に係る出願の審査において、本件判定請求人は、平成23年7月15日付け意見書(甲第10号証)において、「変位部材」について以下のとおり述べている。 「後押圧部及び前押圧部の変位の追随させる後縁部や歪みゲージに歪みを生起させる側面が装置本体に固定されることは不合理なので、残る下縁部が装置本体に固定されることになります。」(2ページ11ないし13行) そうすると、本件特許発明が「歪みゲージ」を接着した「変位部材」は、「歪みゲージ」を接着する箇所よりも前方の「前縁部」を「装置本体」に固定し、「歪みゲージ」の接着箇所や、接着箇所の後方を、「装置本体」に固定しないものである。そして、当該構成により、「ロッド本体」の圧入あるいは引抜により生じる「後縁部」の変位を、「装置本体」を介することなく「歪みゲージ」に伝えられるようにし、「前縁部」と「後縁部」との間に相対的な変位を発生させて、「変位部材の側面」に接着された「歪みゲージ」に「歪み」を生起し、引抜荷重を検出するものである。 一方、イ号物件の「歪みゲージ(22’)」が接着されたものは、「後側装置本体(13a’)」の側面であるから、「歪みゲージ(22’)」の前方はもとより「歪みゲージ(22’)」の接着箇所及び後方も、「後側装置本体(13a’)」に固定されたものであり、イ号物件には本件特許発明の「変位部材」に対応するものはない。 よって、イ号物件は、構成要件IないしKを充足しない。 なお、請求人は、本件請求書において本件特許発明の構成要件Iとイ号物件の構成iとを対比して、本件特許発明の「変位部材」について、 「構成iのとおり、イ号物件では、後嵌合部材(30’)、スラストベアリング(20’)、前嵌合部材(31’)及び後側装置本体(13a’)で組合せ体(17’)を構成している。・・・組合せ体(17’)は、ボールネジ(1’)の移動と一体になって変位する部材、すなわち位置が変わる部材ということができる。 そうすると、組合せ体(17’)は、本件特許発明の変位部材(17)に該当する。」(20ページ8ないし14行) と主張している。 しかし、本件特許発明の「変位部材」は、上記のとおり、「前端部」が「装置本体」に固定される一方、他の部分が「装置本体」に固定されないことで、「ロッド本体」の圧入あるいは引抜により生じる「後縁部」の変位を、「装置本体」を介することなく「歪みゲージ」に伝えられるものであるのに対し、イ号物件の「組み合わせ体(17’)」は、「後側装置本体(13a’)」も包含するものであるから、上記請求人の主張は採用できない。 第5.均等論の適用について 上記第4.8で述べたとおり、イ号物件は、「変位部材」に対応するものはないから、構成要件IないしKを文言上充足しない。しかし、請求人は、本件請求書24ページ21行ないし30ページ17行で、イ号物件の構成i及びkと本件構成要件IおよびKにおける「変位部材」について、均等を主張しているので、以下検討する。 均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するための条件は、最高裁平成10年2月24日、平成6年(オ)第1083号判決にて、以下のとおり判示されている。 「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく、2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、3)上記のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、上記対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属する。」(以下、上記判示事項の要件である「1)」等を、「第1要件」等という。)。 1.第1要件について 第1要件を検討するにあたり、上記判例における「特許発明の本質的部分」については明細書の特許請求の範囲に記載された構成のうち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分を意味するものと解すべきである。(参考:知的財産高等裁判所平成23年3月28日、平成22年(ネ)10014号判決) これを、上記第4.8.で検討した「変位部材」についてみるに、本件特許明細書(甲第1号証)の段落【0008】には、従来技術との対比で本件特許発明の課題について以下のとおり、記載されている。 「サーボプレスを利用する圧入又は引抜装置は、装置名称からも明らかなように部品の引抜にも用いるが、従来の同種装置では押圧ロッド前端に荷重検知センサ(例えば歪みゲージ)を取り付けていたため、圧入に際する荷重検知は可能なものの、引抜に際する荷重(押圧ロッドに対する負荷)を検知することができなかった。こうした引抜時の荷重検知の不可に加え、押圧ロッド前端に荷重検知センサを取り付けた場合、前記荷重検知センサから延びる通信線が邪魔となり、総じて、サーボプレスを利用する圧入又は引抜装置を適用できる範囲を制限する問題をもたらしていた。」(段落【0008】) そして、上記課題を、本件特許発明は、明細書段落【0020】に記載の以下のように解決するものである。 「ロッド本体14の圧入に際しては、螺合部15に対して相対的に後方へ移動するボールネジ軸1に設けた前押圧部19が変位部材17の後縁部を後方へ押圧し、前記変位部材17の側面に接着した歪みゲージ22に歪みを生起し、押圧荷重を検出する。ロッド本体14の引抜に際しては、螺合部15に対して相対的に前方へ移動したボールネジ軸1に連結している出力軸16に設けた後押圧部18が変位部材17の後縁部を前方へ押圧し、前記変位部材17の側面に接着した歪みゲージ22に歪みを生起し、引抜荷重に検出する。また、本例のように荷重検知手段を押圧ロッドの進退とは無関係に配置できるため、歪みゲージ22から延びる信号線(図示略)は動かず、例えば装置本体13に添わせて邪魔にならないようにすることができる。このように、本発明のサーボプレスは、圧入時のみならず、組立部品の引抜時も荷重検知できる利点を有し、かつ信号線を邪魔にならないように処理できる利点がある。」(段落【0020】) そうすると、本件特許発明は、従来は「押圧ロッド前端」に取り付けていた荷重検知センサ(例えば歪みゲージ)を、上記構成要件IないしKの「変位部材」を設けてその側面に取り付けるようにした点で、従来技術と相違する新規なものであって、このことにより、「圧入時のみならず、組立部品の引抜時も荷重検知できる」(甲第1号証、段落【0020】)、及び、「荷重検知手段を押圧ロッドの進退とは無関係に配置できるため、歪みゲージ22から延びる信号線(図示略)は動かず、例えば装置本体13に添わせて邪魔にならないようにすることができる。」(甲第1号証、段落【0020】)との作用効果を奏することで、本件特許発明の上記課題を解決できるのであるから、構成要件IないしKの「変位部材」は、本件特許発明の本質的部分ではないとはいえない。 したがって、本件特許発明は特許請求の範囲に記載された構成中にイ号物件と異なる部分があり、かつ、その異なる部分が本件特許発明の本質的部分でないとはいえないから、上記第1要件を満たしていない。 2.第2要件について 本件特許発明の「荷重検出手段」は、構成要件IないしKにおける「歪みゲージ」が接着される「変位部材」を「装置本体」とは別に設けるものであるから、「変位部材」のみの形状や材質等を工夫することで、荷重検出能力を向上させることできるものであるといえる。一方、イ号物件は、「変位部材」に対応するものとして、「後嵌合部材(30’)」、「スラストベアリング(20’)」、「前嵌合部材(31’)」及び「後側装置本体(13a’)」から構成された「組合せ体(17’)」を有し、「歪みゲージ」は、「後側装置本体(13a’)」に接着されるものであるから、「歪みゲージ」に作用する力は、「組み合わせ体(17’)」を構成する各部材の形状や材質、そして各部材相互の関係等に影響され、かつ各部材の形状や材質等を決定するにあたっては、荷重検出能力以外にも、例えば、「後側装置本体(13a)’)」であれば、「装置本体」としての強度も考慮する必要があるものと解される。したがって、イ号物件においては、本件特許発明の「変位部材」のような単一部材の形状や材質等を決定することで、荷重検出能力を向上させることができるとの作用効果を奏するものであるとはいえない。 また、上記第4.8.で検討したように、本件特許発明が「歪みゲージ」を接着した「変位部材」は、「歪みゲージ」を接着する箇所よりも前方の「 前縁部」を「装置本体」に固定し、「歪みゲージ」の接着箇所や、接着箇所の後方を、「装置本体」に固定しないものである。そして、当該構成により、「ロッド本体」の圧入あるいは引抜により生じる「後縁部」の変位を、「装置本体」を介することなく「歪みゲージ」に伝えられるようにし、「前縁部」と「後縁部」との間に相対的な変位を発生させて、「変位部材の側面」に接着された「歪みゲージ」に「歪み」を生起し、引抜荷重を検出するものである。そうすると、本件特許発明の「歪みゲージ」により「荷重検出」を可能とするためには、「歪みゲージ」の「前縁部」が固定された箇所よりも前方であるかに限らず、いずれかの箇所において「装置本体」が他の部材に固定すれば足りるものである。 一方、イ号物件の「歪みゲージ(22’)」が接着されたものは、「後側装置本体(13a’)」の側面であるから、「歪みゲージ(22’)」の前方はもとより「歪みゲージ(22’)」の接着箇所及び後方も、「後側装置本体(13a’)」に固定されたものであるから、「後側装置本体(13’)」を、「歪みゲージ(22’)」が接着された箇所よりも前方で他の部材に対して固定しないと、「押圧ロッド(4’)」に加わる負荷による「歪みゲージ(22’)」の前端と後端間の変位は生じず、荷重を検出することができないと解される。 そうすると、本件特許発明の「変位部材」を用いた「荷重検出手段」により奏する上記作用効果は、イ号物件の「荷重検出手段」によって得られるとはいえないから、両者を置き換えることによって、同一の作用効果を奏するものとはいえない。 したがって、本件特許発明は特許請求の範囲に記載された構成中にイ号物件と異なる部分があり、かつ、その異なる部分を置き換えることにより、同一の作用効果を奏するとはいえないから、上記第2要件を満たしていない。 3. 第3要件について 本件特許発明の「変位部材」を用いた「荷重検出手段」を、イ号物件の「装置本体」を含む「荷重検出手段」に置き換えることについて、本件明細書に記載・示唆はなく、上記2.で検討したように両者の作用効果は異なるものであって、単なる設計的事項とすることはできないから、容易に想到できるものではない。 したがって、本件特許発明は特許請求の範囲に記載された構成中にイ号物件と異なる部分があり、かつ、その異なる部分を置き換えることに、当業者が、容易に想到することができたとはいえないから、上記第3要件を満たしていない。 4.小結 以上のとおり、上記第1ないし3要件に、該当しないから、上記第4及び5要件を検討するまでもなく、イ号物件は、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、本件特許発明の技術範囲に属するとすることはできない。 第6.むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2014-07-23 |
出願番号 | 特願2008-332749(P2008-332749) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(B30B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福島 和幸、川村 健一 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 久保 克彦 |
登録日 | 2011-11-11 |
登録番号 | 特許第4860684号(P4860684) |
発明の名称 | サーボプレス |
代理人 | 森 寿夫 |
代理人 | 大森 鉄平 |
代理人 | 木村 厚 |
代理人 | 小飛山 悟史 |
代理人 | 森 廣三郎 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 城戸 博兒 |