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審決分類 |
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W |
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管理番号 | 1290959 |
審判番号 | 不服2012-19374 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-10-03 |
確定日 | 2014-08-14 |
事件の表示 | 特願2010-272518「基地局、及び、端末機」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日出願公開、特開2011- 61863〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、2001年3月27日を出願日とする特願2001-090040号の一部を2010年12月7日に新たな特許出願とした出願であって、平成23年1月6日付けで手続補正がなされ、平成24年4月6日付けで拒絶理由が通知され、平成24年6月11日付けで手続補正がなされ、平成24年6月29日付けで拒絶査定がなされ、平成24年10月3日に拒絶査定不服審判が請求され、平成25年9月12日付けで当審が拒絶理由を通知し、平成25年11月18日付けで手続補正がなされ、平成26年2月27日付けで当審が最後の拒絶理由を通知し、平成26年4月28日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成26年4月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成26年4月28日付けの手続補正を却下する。 [理由] 2-1.本件補正の目的 平成26年4月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「端末機に対する下り通信リソースを当該端末機からの情報に基づいて割当てるとともに、基地局側が定めた変調方式を含む当該下り通信リソースの割当て情報を前記端末機へ送信することを特徴とする基地局。」(以下「本件補正発明」という) と補正され、特許請求の範囲の請求項2は、 「基地局から送信され、基地局側が定めた変調方式を含む下り通信リソースの割当て情報に従って、前記基地局からの信号を受信することを特徴とする端末機。」 と補正された。 本件補正は、「当該下り通信リソースの割当て情報」として「変調方式も含む」を明細書の記載にあわせて「変調方式を含む」とすることを含むものであるから、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。 また本件補正は、発明を特定するために必要な事項である「変調方式」として「基地局側が定めた変調方式」に限定することを含むものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2-2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成26年2月27日付で通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、本願のもとの出願日前の平成11年2月12日に頒布された特開平11-41310号公報(以下「引用例」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 2-3.引用発明 引用例には、 「【0022】通信を開始するに当たっては、まずリンク確立を行なうが、そのためにタイムスロット0(TS0)が専用に割り当てられている。PHS移動局などのスレーブ装置が通信を開始しようとすると、まず上り伝送フレームのTS0を使用して、変調方法QPSKで通信要求と変調方法変更要求を送出する。PHS基地局などのマスタ装置はそれを受信し、空いているタイムスロット番号「TS2」と変調方法「16QAM」を、下り伝送フレームのTS0を用いて通知する。変調方法として16QAMを使用することが決定された場合、以降はTS2を用いて16QAMでの通信が行なわれる。スレーブ装置は、リンク確立フェーズから通信フェーズに移行するときに、変調回路および復調回路を16QAMの回路に切り替える。マスタ装置は、タイムスロットごとに変調回路および復調回路を切り替える。」 「【0025】なお、上記の第1の実施の形態では、高速サービス時の変調方法を16QAMとしたが、さらに多値の64QAMや256QAMなどの変調方法でも良い。また、変調方法の数を3以上にしてもよい。高速通信が必要ない場合は、変調方法の指定を省略するか、リンク確立フェーズと同じ変調方法を指定すればよい。 【0026】また、本発明は、上り伝送フレームと下り伝送フレームの一方のみが複数タイムスロットの伝送フレームであっても適用できる。上り伝送フレームか下り伝送フレームの一方のみを高速変調することもできる。」 の記載があるから、 「PHS移動局などのスレーブ装置が通信を開始しようとすると、まず上り伝送フレームのTS0を使用して、変調方法QPSKで通信要求と変調方法変更要求を送出し、 PHS基地局などのマスタ装置はそれを受信し、空いているタイムスロット番号「TS2」と変調方法「16QAM」を、下り伝送フレームのTS0を用いて通知し、 スレーブ装置は、リンク確立フェーズから通信フェーズに移行するときに、変調回路および復調回路を16QAMの回路に切り替え、 マスタ装置は、タイムスロットごとに変調回路および復調回路を切り替え、 高速サービス時の変調方法を16QAMとしたが、高速通信が必要ない場合は、変調方法の指定を省略するか、リンク確立フェーズと同じ変調方法を指定すればよく、 上り伝送フレームか下り伝送フレームの一方のみを高速変調することもできる。」 の発明が引用例に記載されている。(以下「引用発明」という) 2-4.本件補正発明と引用発明の対比 引用発明の「スレーブ装置」は「PHS移動局など」であるから、本件補正発明の「端末機」に、 引用発明の「マスタ装置」は「PHS基地局など」であるから、本件補正発明の「基地局」に、 それぞれ相当する。 本願明細書に、 「【0034】 また、通信速度(データレート)は、変調方式や誤り訂正方式を変えることにより変化させることができる。すなわち、変調方式により1シンボルに何ビットの情報が付加されるかが変わることから、変調方式を変えると帯域幅を変えることなくデジタル信号の伝送速度を変えることができる。具体的には、変調方式を、1シンボルあたり2ビット(1シンボルが4値を取り得る)の情報を伝送できるQPSK(4相位相変調方式)と、1シンボルあたり3ビット(1シンボルが8値を取り得る)の情報を伝送できる8PSK(8相位相変調方式)と、1シンボルあたり4ビット(1シンボルが16値を取り得る)の情報を伝送できる16QAM(4相振幅位相変調方式)とに切り替えることにより、1シンボルに含まれる情報量(ビット数)を変化させ、通信速度を変化させる。」 とあるように、本件補正発明の「変調方式」は「QPSK」、「8PSK」や「16QAM」を一例としている一方、引用発明の「変調方法」も「16QAM」を一例としているから、引用発明の「変調方法」は、本件補正発明の「変調方式」に想到する。 引用発明は、スレーブ装置が上り伝送フレームを使用して「通信要求と変調方法変更要求」を送出し、マスタ装置が「それ」を受信して空いているタイムスロット番号と変調方法を下り伝送フレームを用いて通知している。 ここで、「それ」はスレーブ装置が送出した「通信要求と変調方法変更要求」を示すから、マスタ装置が、スレーブ装置からの「通信要求と変調方法変更要求」を受信することにより「空いているタイムスロット番号と変調方法」をスレーブ装置へ送信している。 また、「通信要求と変調方法変更要求」は「情報」であり、「スレーブ装置」が「端末機」に相当するから、引用発明の「スレーブ装置」からの「通信要求と変調方法変更要求」は、本件補正発明の「端末機からの情報」に相当する。 さらに、本願明細書に、 「【0032】 基地局30では、移動機20から送信されてきた、移動機20の受信信号強度とファイル転送進行状況とにより、基地局30と通信中の移動機20毎に、その移動機に割り当てる通信リソース(通信資源)を定め、基地局30は移動機20に対して通信リソース(通信割当時間、若しくは、通信速度を左右する変調方式、又は、誤り訂正方式)を通知する。」 とあるように、本件補正発明の「通信リソース」とは、「通信割当時間」「通信速度を左右する変調方式」「誤り訂正方式」を含むと認められるので、引用発明の「開いているタイムスロット番号と変調方法」は、本件補正発明の「変調方式を含む通信リソース」に相当する。 上記によれば、引用発明は、「端末機からの情報」により「変調方式を含む通信リソースの割当て」をスレーブ装置へ送信しているといえる。 引用発明のマスタ装置が行う「変調方法」の通知に際し、「高速通信が必要無い場合は、変調方法の指定を省略するか、リンク確立フェーズと同じ変調方法を指定すればよい」のであるから、スレーブ装置から受信した変調方法変更要求に基づいて、マスタ装置が、高速通信が必要と判断した場合には「16QAM」を通知し、高速通信が必要無いと判断した場合は「リンク確立フェーズと同じ変調方法」を通知していると解される。これは、引用発明において、マスタ装置が「16QAM」か「リンク確立フェーズと同じ変調方法」かを定めて通知しているといえる。 引用発明のマスタ装置は、「変調回路及び復調回路」を16QAMの回路に切り替えるから、スレーブ装置に通知する「通信リソース」は、マスタ装置の変調回路を使用する下り通信リソースと復調回路を使用する上り通信リソースの両方である。 すなわち、引用発明の「通信リソース」は「上り及び下り通信リソース」であるから、本件補正発明の「下り通信リソース」とは、「通信資源」である点で同じである。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、 「端末機に対する通信資源を当該端末機からの情報に基づいて割当てるとともに、基地局側が定めた変調方式も含む当該通信資源の割当て情報を前記端末機へ送信することを特徴とする基地局。」 で一致し、下記の点で相違する。 相違点 通信資源について、引用発明は「上り及び下り」通信リソースであるが、本件補正発明では「下り」通信リソースである点。 2-5.当審の判断 相違点について、 引用発明は「上り伝送フレームか下り伝送フレームの一方のみを高速変調することもできる。」から、資源割当てを「下り」のリソース割当てとすることは、容易に想到しうることである。 2-6.まとめ したがって、本件補正発明は引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 3-1.本願発明 平成26年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成25年11月18日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「端末機に対する下り通信リソースを当該端末機からの情報に基づいて割当てるとともに、変調方式も含む当該下り通信リソースの割当て情報を前記端末機へ送信することを特徴とする基地局。」 3-2.引用例記載の発明 引用発明は、「2-3.引用例」に記載したとおりである。 3-3.本願発明と引用発明の対比及び判断 本願発明は、実質的に、前記2.で検討した本件補正発明から「基地局側が定めた変調方式」の限定事項である「基地局側が定めた」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記2-4.に記載したとおり、引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-13 |
結審通知日 | 2014-06-17 |
審決日 | 2014-07-01 |
出願番号 | 特願2010-272518(P2010-272518) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
WZ
(H04W)
P 1 8・ 573- WZ (H04W) P 1 8・ 121- WZ (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阿部 圭子 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 吉田 隆之 |
発明の名称 | 基地局、及び、端末機 |
代理人 | 後藤 政喜 |
代理人 | 藤井 正弘 |