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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1290961 |
審判番号 | 不服2013-5876 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-02 |
確定日 | 2014-08-14 |
事件の表示 | 特願2010-151626「銅柱バンプ上の金属間化合物の接合のための方法と構造」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日出願公開,特開2011- 29636〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,平成22年7月2日(パリ条約による優先権主張:2009年7月2日,アメリカ合衆国,2010年6月29日,アメリカ合衆国)の出願であって,平成24年2月2日付けで拒絶の理由が通知され,同年5月18日に意見書と誤訳訂正書が提出され,同年11月28日付けで拒絶査定がなされ,平成25年4月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され,同年8月28日付けで審尋を行い,同年12月18日に回答書が提出されたものである。 2 本願発明 平成25年4月2日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は,審判請求人が審判請求書の請求の理由の欄において,「新請求項1につきましては前回補正の請求項1に請求項2,4に記載された事項を併合したものです。一方,新請求項2につきましては,前回補正の請求項7に前回補正の請求項9に記載された事項を併合したものです。」と主張するように,補正後の請求項1は,補正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4に相当し,補正後の請求項2は,補正前の請求項7を引用する請求項9に相当するものといえる。 そうすると,本件補正は,補正前の請求項1-3,請求項5-8,及び請求項10を削除して,補正前の請求項4及び9を,補正後の請求項1及び2としたものであると整理することができるから,本件補正は,特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とした補正であるといえる。 そして,本件補正が,特許法第17条の2第3項及び第4項に違反することがないことは明らかである。 したがって,この補正は適法なものといえるから,本願の請求項1-2に係る発明は,平成25年4月2日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1-2に係る発明(以下「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,次のとおりのものである。 「【請求項1】 銅含有柱層を形成するステップ, 前記銅含有柱層上に拡散バリア層を堆積するステップ,及び 前記拡散バリア層上に金属間化合物(IMC)を形成するステップを含み, 前記金属間化合物の形成は, 前記拡散バリア層上に銅含有キャップ層を堆積するステップ, 前記銅含有キャップ層上にはんだ層を堆積するステップ,及び 前記金属間化合物を形成するために前記銅含有キャップ層と前記はんだ層を熱処理するステップを含み, 前記金属間化合物を形成する熱処理は,最大の厚さが7μmを有する銅-ニッケル-スズで作られる,柱構造を形成する方法。 【請求項2】 銅含有柱層, 前記銅含有柱層上の拡散バリア層, 前記拡散バリア層上の金属間化合物(IMC),及び 前記金属間化合物上のはんだ層を含み, 前記金属間化合物は,最大の厚さが7μmを有する銅-ニッケル-スズを含む柱構造。」 3 引用例とその記載事項,及び,引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である下記の引用例1-2には,図面とともに以下の事項が記載されている。(なお,下線は,当合議体において付したものである。以下同じ。) ・引用例1:特開2000-216185号公報 (1a)「【請求項1】 半導体ウエハの電極端子形成面に,一端側が各電極端子に接続された配線パターンが絶縁層を介して形成され,該各配線パターンの他端側に柱状電極が形成され,該各柱状電極の頂部端面が露出して樹脂封止された柱状電極付き半導体ウエハにおいて, 前記柱状電極の頂部端面にはんだめっき被膜が形成されていることを特徴とする柱状電極付き半導体ウエハ。 ・・・<途中省略>・・・ 【請求項3】 はんだめっき被膜の下地層としてニッケルめっき被膜が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の柱状電極付き半導体ウエハ。 ・・・<途中省略>・・・ 【請求項7】 半導体ウエハの電極端子形成面を電極端子を露出して絶縁層により被覆し,前記電極端子及び絶縁層の表面に導体層を形成した後,導体層の表面にレジストパターンを形成して前記導体層をめっき給電層として銅めっきを施すことにより一端側が各電極端子に接続する配線パターンを形成し, 前記レジストパターンを除去した後,半導体ウエハの電極端子形成面にレジストを塗布し,配線パターンの他端側の柱状電極を形成する部位のレジストに,底面に配線パターンの他端側が露出する開口穴を形成し, 前記導体層をめっき給電層として前記開口穴内に銅めっきを施して,前記配線パターンの他端側に柱状電極を形成した後, 該柱状電極の頂部端面にはんだめっき被膜を形成し, 前記レジストを除去して,表面に露出する前記導体層を除去した後,前記はんだめっき被膜の表面が露出するように半導体ウエハの電極端子形成面側を樹脂封止することを特徴とする柱状電極付き半導体ウエハの製造方法。」 (1b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は半導体ウエハを用いてチップサイズパッケージを製造する際に使用する柱状電極付き半導体ウエハ及びその製造方法並びに半導体装置及びその製造方法に関する。」 (1c)「【0013】 【発明の実施の形態】以下,本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る柱状電極付き半導体ウエハは半導体ウエハを用いてチップサイズパッケージを作製する際に使用する柱状電極付き半導体ウエハであり,従来の柱状電極付き半導体ウエハと比較して柱状電極の構成を除いては変わらない。したがって,以下では,本発明で特徴的な柱状電極の構成について説明する。なお,以下の説明で従来の柱状電極付き半導体ウエハと同一の部位については同一の番号を付している。 【0014】前述したように,柱状電極付半導体ウエハは半導体ウエハ10の電極端子形成面に電気的絶縁層を介して一端側で電極端子12に電気的に接続する配線パターン22を形成し,配線パターン22の他端側に柱状電極24を立設し,半導体ウエハ10の電極端子形成面側を柱状電極24の頂部端面を露出して樹脂28によって封止したものである。図1に示すように,樹脂28は隣接するすべての柱状電極24の間を充填する。 【0015】図2は柱状電極付きウエハの柱状電極24の近傍部分を拡大して示す断面図である。本実施形態の柱状電極付き半導体ウエハは柱状電極24の基体部(導体部)が銅めっき部40であり,柱状に形成された銅めっき部40の頂部端面にめっき被膜としてニッケルめっき被膜42,パラジウムめっき被膜44,はんだめっき被膜46をこの順に設けたことを特徴とする。 【0016】前述したように,柱状電極24の頂部端面にめっき被膜を設けることは従来も行われている。すなわち,はんだ接合性を良好にするめっき被膜として,はんだ拡散防止用のニッケルめっき被膜を設け,ニッケルめっき被膜の上にはんだ濡れ性を良好にするパラジウムめっき被膜を設けることがなされている。 【0017】本実施形態では柱状電極24の頂部端面にニッケルめっき被膜42,パラジウムめっき被膜44,はんだめっき被膜46を設けるが,これらのめっき被膜の構成として特徴的な点は,最外層に比較的厚くはんだめっき被膜46を設けることと,はんだめっき被膜46とその下地(下地層)のパラジウムめっき被膜44との界面の高さ位置を樹脂28の外表面の高さ位置よりも低位置にしたことにある。図2でhは,はんだめっき被膜46とパラジウムめっき被膜44の界面の高さ位置が樹脂28の外表面の高さ位置よりもhだけ低位置(封止樹脂内)にあることを示す。 【0018】前述したように,ニッケルめっき被膜42ははんだの拡散防止を目的とし,パラジウムめっき被膜44ははんだの濡れ性を向上させることを目的とするものであり,はんだめっき被膜46は実装用の端子の濡れ性を向上させ,はんだボール等の実装用の端子を強固に接合することを目的とする。図3は柱状電極24にはんだボール50を接合した状態を示す。はんだリフローにより,はんだめっき被膜46のはんだ,およびパラジウムめっき被膜44のパラジウムは溶融したはんだ中に拡散し,はんだボール50はニッケルめっき被膜42に接合することになる。」 (1d)「【0026】図5は柱状電極付き半導体ウエハに形成する柱状電極24の他の構成例を示す。本実施形態では柱状電極24に設けるめっき被膜をニッケルめっき被膜42とはんだめっき被膜46としたものである。めっき被膜がニッケルめっき被膜42とはんだめっき被膜46によることから,製造工程が簡素であり製造コストが安くなるという利点がある。本実施形態でニッケルめっき被膜42とはんだめっき被膜46の厚さはともに3μmである。はんだめっき被膜46とニッケルめっき被膜42の界面の高さ位置を樹脂28の外表面の高さ位置よりも低位置にすることは上記各実施形態と同様である。」 (1e)「【0031】以上説明したように,本発明に係る柱状電極付き半導体ウエハの製造方法は,従来の柱状電極付き半導体ウエハの製造方法で柱状電極の頂部端面に形成するめっき被膜のめっき構成を変え,めっき厚を調節するだけで良いから,従来方法がそのまま適用できるという利点がある。なお,柱状電極24にはんだめっき被膜46を形成する際に使用するはんだは,Sn-Pb等の鉛を含有するタイプのもの,Sn-Ag等の鉛を含有しないタイプのもののどちらも使用可能である。」 (1f)図3は,柱状電極にはんだボールを接合した状態を示す断面図であって,上記摘記(1a)-(1e)の記載を参酌すれば,同図から, 柱状に形成された銅メッキ部40, 前記柱状に形成された銅メッキ部40の頂部端面にめっき被膜として設けられたニッケルめっき被膜42,及び 前記ニッケルめっき被膜42上のはんだボール50を含む, 柱状電極にはんだボールを接合した状態の柱構造。 を,見て取ることができる。 引用発明 引用例1の上記摘記(1a)-(1f)を総合勘案すれば,引用例1には,引用例1の図3に記載された,柱状電極にはんだボールを接合した状態の柱構造に関する,「柱構造を形成する方法」及び「柱構造」に係る下記の発明(以下「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 ・引用発明1 「配線パターンの他端側に柱状電極を立設するステップであって,前記柱状電極の基体部(導体部)が銅めっき部であるステップ, 前記柱状に形成された銅めっき部の頂部端面にめっき被膜としてニッケルめっき被膜,パラジウムめっき被膜,はんだめっき被膜をこの順に設けるステップ, はんだリフローにより,はんだめっき被膜のはんだ,およびパラジウムめっき被膜のパラジウムは溶融したはんだ中に拡散し,はんだボールがニッケルめっき被膜に接合するステップを含み, 前記ニッケルめっき被膜は,はんだの拡散防止を目的としたものであり, 前記柱状電極にはんだめっき被膜を形成する際に使用するはんだは,Sn-Pb等の鉛を含有するタイプのもの,Sn-Ag等の鉛を含有しないタイプのもののどちらも使用可能である, 柱状電極にはんだボールを接合した状態の柱構造を形成する方法。」 ・引用発明2 「柱状に形成された銅メッキ部, 前記柱状に形成された銅メッキ部の頂部端面にめっき被膜として設けられたニッケルめっき被膜,及び 前記ニッケルめっき被膜上のはんだボールを含み, 前記ニッケルめっき被膜は,はんだの拡散防止を目的としたものであり, 前記柱状電極にはんだめっき被膜を形成する際に使用するはんだは,Sn-Pb等の鉛を含有するタイプのもの,Sn-Ag等の鉛を含有しないタイプのもののどちらも使用可能である, 柱状電極にはんだボールを接合した状態の柱構造。」 ・引用例2:特開2002-280417号公報 (2a)「【請求項17】配線層上に,少なくとも,第1の金属を含む接着層を介して合金ハンダからなるハンダバンプを形成する半導体装置の製造方法において, 前記接着層上に第2の金属からなる金属層を形成し,前記ハンダバンプを形成するに際し,前記金属層の全てを前記合金ハンダに一旦溶融した後,冷却することにより,前記第2の金属と前記合金ハンダの主となる金属とを含む金属間化合物を,前記接着層と前記ハンダバンプとの界面に析出させることを特徴とする半導体装置の製造方法。」 (2b)「【請求項29】前記接着層が,スパッタリングにより形成したニッケル,ニッケル合金,銅又は銅合金のいずれか一の単層膜又は複数の積層膜からなることを特徴とする請求項15乃至28のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。 ・・・<途中省略>・・・ 【請求項32】前記金属層が,スパッタリング,無電解メッキ又は電解メッキのいずれか一又は複数の方法により形成した銅薄膜を含むことを特徴とする請求項15乃至31のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。 ・・・<途中省略>・・・ 【請求項36】前記合金ハンダの主となる金属が錫であることを特徴とする請求項15乃至35のいずれか一に記載の半導体装置の製造方法。」 (2c)「【請求項45】接着層とはんだバンプとの間に金属間化合物を形成していることを特徴とするはんだバンプ。」 (2d)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,半導体装置及びその製造方法並びに半導体製造装置に関し,特に,鉛フリーハンダバンプで接合された電極構造を有する半導体装置及びその製造方法並びに該半導体装置の製造に用いる半導体製造装置に関する。」 (2e)「【0002】 【従来の技術】半導体装置の高機能,高密度化に伴い,多ピン化した半導体チップをハンダバンプでパッケージ用基板に接合する半導体パッケージや,ボール・グリッド・アレイ(BGA)型の外部端子を有する半導体パッケージが増加してきた。この種の半導体チップの電極では,組立時の熱履歴や,半導体パッケージの実装時にかかる熱履歴,また使用環境下における高温状態や温度変化により,接合部界面は金属間の反応によってその構成が変化し,信頼性上の不具合を発生することがあり,これらの問題に対し,信頼性を保つことが可能な金属組成となるように各材料を選択することが重要な要素の一つとなる。 【0003】この目的のために,通常は錫および鉛により構成されたハンダをバンプとして使用する場合,図5に示すように,接着層5にニッケルや銅を使用し,その膜厚を5μm以上に厚く形成した層を介して接合する。そして,ニッケル層を介した場合,ハンダ中の錫とニッケルが反応して金属間化合物層11を形成して接合される。また,銅層を介して接合する場合,界面は錫と銅の金属間化合物層11を形成して接合される。 【0004】銅と錫との反応性はニッケルと錫の場合より高いが,どちらの場合においても接合時の溶融状態において,また接合後の温度環境下においても拡散反応は進み,ハンダを構成する錫が接着層5であるニッケルや銅層を侵食していき,その結果,接合界面では錫が消費されて鉛の濃度が高い部分が形成されたり,錫の拡散によるカーケンダルボイドなどが発生し,強度低下を招くという問題がある。この問題を解消するために,現在では,銅やニッケル層を厚く形成する方法,もしくは,ハンダ中の錫を減量した鉛リッチな高融点ハンダを使用している。 【0005】しかしながら,近年,環境問題から鉛フリーハンダを使用する動きがあり,錫を主成分としたハンダを使用する必要が生じている。この錫を主成分としたハンダでは,銅やニッケル層を接着層5として使用した場合,上述の課題が顕著になり,信頼性上の問題がある。」 (2f)「【0045】[実施の形態1]まず,本発明の第1の実施形態に係る半導体装置及びその製造方法について,図1乃至図3を参照して以下に詳述する。図1は,本発明の第1の実施形態に係る半導体装置のバンプ構造を示す断面図である。また,図2及び図3は,ハンダバンプを形成する前の電極構造を示す断面図であり,図2はハンダをハンダボールとして供給する場合を示し,図3はハンダペーストとして供給する場合を示している。 【0046】図2に示すように,半導体チップ1の配線2上には,配線2を構成する金属との密着を得る密着層4と,ハンダと反応し合金化する接着層5と,ハンダと合金化する接着層5とは異なる金属により薄く形成されたハンダ合金化層8とにより電極が形成され,この電極上に錫を主成分とし,鉛を含まない2元又は3元合金のハンダボール9が供給される。 【0047】この状態でハンダボール9を加熱溶融すると,ハンダ合金化層8はすべてハンダ中の錫と反応し,一旦,錫中へ固溶する。それと同時にハンダ中の錫は接着層5を固溶する。ハンダ中の錫への固溶する総量は溶融する温度により決定されるため,この状態で冷却を開始すると接合界面に金属間化合物層を形成するが,本実施形態の場合,錫中へ固溶しているハンダ合金化層8を構成する金属と接着層を構成する金属の両方が同時に接合界面で金属間化合物を析出するため,金属間化合物の複合層である複合ハンダ合金層6が形成される。 【0048】ここで重要なことは,ハンダ合金化層8は,錫系2元又は3元合金ハンダボール9の錫に対して溶解しうるだけの量であり,且つ,冷却時に析出するように考慮してその膜厚を決定する必要があり,溶解する量が少ない場合には,冷却時に析出せずに錫中へ固溶したままハンダバンプ7が凝固するため,このような金属間化合物の複合層は形成されない。 【0049】図1は,このようにして得られたハンダバンプ7の断面図を示しているが,一旦,金属間化合物の複合層として複合ハンダ合金層6が形成されると,金属間化合物の融点は高いため,組立時にかかるハンダ溶融温度以上の熱履歴においても接合界面での接着層5の溶解現象が起きることなく,さらに溶融温度以下の熱履歴による拡散現象も,金属間化合物の複合層が結晶粒界に配置されるため抑制されるという効果を奏する。 【0050】より具体的に説明するために,鉛フリーハンダバンプとして,錫系2元合金ハンダボール9に96.5重量%錫/3.5重量%銀の共晶ハンダを使用する場合の代表的な金属組成を用いて説明する。 【0051】半導体チップ1の配線2は,通常,アルミニウムもしくはアルミニウム合金で形成されている。密着層4はチタン,チタン/タングステン合金等,接着層5はニッケル/バナジウム合金等,ハンダ合金化層8は銅等を順次スパッタリングにより形成し,電極が形成される。ここで,ハンダ合金化層8である銅の膜厚は,ハンダボール9中に含まれる錫の比率に対し,溶解時にすべて固溶し,且つ冷却凝固時に金属間化合物として界面に析出することができる量,すなわち過飽和な量が望ましい。但し,銅の供給量が過剰になりすぎると,形成されたハンダバンプ7の表面が凹凸の激しい不均一な形状になることや,溶融時のぬれ性が悪化し,ボイドが発生する恐れがあるため注意を要する。」 (2g)「【0072】 【実施例】上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく,本発明の実施例について図面を参照して具体的に説明する。 【0073】[実施例1]本発明の第1の実施形態で示した半導体装置の具体的な製造方法について,図2を参照して説明する。まず,半導体チップ1上に形成されたアルミニウム合金の配線2上に,密着層4としてチタンおよびチタン/タングステン合金を順次スパッタリングする。この上に,接着層5としてニッケル/バナジウム合金を1?5μm程度の厚さでスパッタリングにより形成し,さらにハンダ合金化層8として,銅をスパッタリングより形成する。このときの銅の膜厚としては,順次スパッタリングにより形成された電極の直径が略120μmで,錫と銀の共晶合金からなるハンダボールの直径が略150μmである場合,略0.8μmが最も適する。 【0074】こうして形成された電極に錫96.5重量%/銀3.5重量%の共晶ハンダボール9をフラックスとともに供給し,共晶ハンダボールの融点である221℃以上の温度で加熱し,ハンダボール9を溶解する。ハンダボール9はハンダ合金化層8の銅を一旦すべて溶解し,冷却とともにハンダは半球形状となり,界面にニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合したハンダ合金層6を形成し,接合を完了する。 【0075】こうして形成されたハンダバンプの断面を分析すると,図1に示すように,界面には上述のニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した複合ハンダ合金層6を形成しており,ハンダ中には銅がほとんどの存在しないことを確認している。 【0076】このハンダバンプ7は,界面に形成したニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した複合ハンダ合金層6の存在より,この後にハンダ溶融温度以上に加熱履歴を加えても,接着層5であるニッケルの溶解や拡散によって著しく信頼性を低下させる反応層の形成を抑制するという効果を示す。 【0077】この効果と,複合ハンダ合金層6の存在形態について説明する。これら複合ハンダ合金層6は,ニッケル/錫の金属間化合物層及び銅/錫の金属間化合物が,各々その粒界に対して互いに拡散経路を遮断するように存在する形態により拡散が抑制される場合と,もう一つの形態として,ニッケルと銅の固溶体に対して錫が金属間化合物を形成し,3元系の金属間化合物として存在する場合があり,この3元系の金属間化合物として存在する場合においても,拡散するための経路が複合して存在するニッケル,銅により遮断されるため相互拡散が抑制される。 【0078】ここで,ハンダ合金化層8は略0.8μmが最適としたが,その効果は膜厚0.6μmから1.2μmの間においても充分に発揮される。また,密着層4,接着層5の膜厚は,半導体装置の製造上の都合により適宜変更されても問題ない。」 (2h)「【0092】[実施例5]次に,本発明の第5の実施例に係る半導体装置について説明する。なお,本実施例は,非接触型加熱源を備えたリフロー装置を用いた半導体装置の製造方法について記載するものである。 【0093】本実施例の半導体チップは,Al電極上に密着層を介してスパッタリングによりニッケル/バナジウムの接着層5を厚さ約1μm形成し,さらに上層に濡れ性改善層17の銅をスパッタリングにより約0.4μm形成する。電極の大きさは第4の実施例と同じく直径約120μmである。ハンダは,組成が錫96.5重量%/銀3.5%の2元共晶,直径が150μmのボールをボール搭載法にて半導体チップ1の電極上に供給した。 【0094】半導体チップをリフロー装置のステージ19上に設置した後の減圧,窒素ガス流量は第4の実施例と同じである。本実施例では,リフローエリア18上方に非接触型加熱源22(赤外線ヒータ)を設けた装置を使用し,加熱は加熱プレート20と非接触型加熱源22の双方を用いて行った。加熱プレート20の温度は285℃に設定し,加熱プレート20から冷却プレート21へ切り換えるタイミングは第4の実施例と同じく融点の220℃を超えてから約75秒後とした。非接触型加熱源22は,ステージ19表面温度がハンダの融点より5℃低い215℃でOFFにした。この場合,最高温度は262±2℃,融点以上の時間は84±2秒,冷却速度は約4℃/秒であった。なお,冷却速度は約2℃/秒以上であればよいのは,前記した第4の実施例と同様である。 【0095】以上の製造方法でバンプ形成したバンプ付き半導体チップのバンプ断面を観察,元素分析を行ったところ,接着層5/ハンダバンプ7界面には前記した第4の実施例と同じく,錫,銅,ニッケルで構成される金属間化合物層が約0.8μmの厚さで形成されていた。」 4 本願発明1の進歩性についての検討 (1)本願発明1と引用発明1との対比 ア 引用発明1の「配線パターンの他端側に柱状電極を立設するステップであって,前記柱状電極の基体部(導体部)が銅めっき部であるステップ」は,本願発明1の「銅含有柱層を形成するステップ」に相当する。 イ 引用発明1の「ニッケルめっき被膜」は,「はんだの拡散防止を目的としたものである」から,本願発明1の「拡散バリア層」に相当する。 ウ 引用発明1では,柱状電極にはんだめっき被膜を形成する際に使用するはんだは,Sn-Pb等の鉛を含有するタイプのもの,Sn-Ag等の鉛を含有しないタイプのもののどちらも使用可能であるとされているから,引用発明1のはんだは,Snを含有するものであると理解することが自然である。 そして,このようなSnを含有するはんだを用いて,引用発明1の「はんだリフローにより,はんだめっき被膜のはんだ,およびパラジウムめっき被膜のパラジウムは溶融したはんだ中に拡散し,はんだボールがニッケルめっき被膜に接合するステップ」を行った場合に,前記はんだリフローの熱処理によって,前記Snと前記ニッケルめっき被膜に含まれるNiとが反応して金属間化合物を形成することは,技術常識に照らして,当業者が直ちに理解することである。 すなわち,引用発明1の「はんだリフロー」は,前記ニッケルめっき被膜上に,金属間化合物を形成する工程であるということができ,また,熱処理であるといえるから,本願発明1と引用発明1は,「前記拡散バリア層上に金属間化合物(IMC)を形成するステップを含」む点,及び,前記金属間化合物の形成するための「熱処理するステップを含」む点で一致するといえる。 エ してみれば,本願発明1と引用発明1との一致点と相違点は,次のとおりといえる。 <一致点> 「銅含有柱層を形成するステップ, 前記銅含有柱層上に拡散バリア層を堆積するステップ,及び 前記拡散バリア層上に金属間化合物(IMC)を形成するステップを含み, 前記金属間化合物の形成は, 熱処理するステップを含む, 柱構造を形成する方法。」 <相違点> ・相違点1 本願発明1において,金属間化合物の形成が,「前記拡散バリア層上に銅含有キャップ層を堆積するステップ,前記銅含有キャップ層上にはんだ層を堆積するステップ,及び前記金属間化合物を形成するために前記銅含有キャップ層と前記はんだ層を熱処理するステップを含」む工程によってなされるのに対して,引用発明1では,このような特定がされていない点。 ・相違点2 本願発明1において,「前記金属間化合物を形成する熱処理は」,「銅-ニッケル-スズで作られる」のに対して,引用発明1では,このような特定がされていない点。 ・相違点3 本願発明1では,前記金属間化合物を形成する熱処理は,「最大の厚さが7μmを有する」銅-ニッケル-スズで作られると特定されているのに対して,引用発明1では,厚さが特定がされていない点。 (2)相違点についての判断 ・相違点1について ア 引用例2の上記摘記(2e)には,錫および鉛により構成されたハンダをバンプとして使用してニッケルを介して接合した場合に,ハンダ中の錫と前記ニッケルが反応して金属間化合物層を形成するので,接合時の溶融状態において,また接合後の温度環境下においても拡散反応が進み,ハンダを構成する錫が,前記ニッケルを侵食していき,その結果,接合界面では錫が消費されて鉛の濃度が高い部分が形成されたり,錫の拡散によるカーケンダルボイドなどが発生し,強度低下を招くという問題,及び,環境問題から鉛フリーハンダを使用した場合の,上述の課題が顕著になり,信頼性上の問題がおこるという,従来の技術における課題が開示されている。 イ そして,引用例2の上記摘記(2g)には,ニッケル/バナジウム合金を1?5μm程度の厚さで形成するステップ,前記ニッケル/バナジウム合金上に銅を略0.8μmの膜厚で形成するステップ,前記銅上に錫96.5重量%/銀3.5重量%の共晶ハンダボールをフラックスとともに供給し,加熱して,前記ハンダボールを溶解するステップ,及び,前記ハンダボールは前記銅を一旦すべて溶解し,冷却とともにハンダは半球形状となり,界面にニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層を形成して接合を完了するステップを含む方法を用いてハンダバンプを形成することで,界面にニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した複合ハンダ合金層が形成され,この複合ハンダ合金層の存在より,この後にハンダ溶融温度以上に加熱履歴を加えても,ニッケルの溶解や拡散によって著しく信頼性を低下させる反応層の形成が抑制されるという,上記アに記載した課題を解決するための手段が開示されている。 ウ ところで,引用発明1の柱状電極にはんだボールを接合した状態の柱構造の,はんだボールとニッケルめっき被膜とが接合する界面と,引用例2の上記摘記(2e)に記載された従来技術の,ニッケル層とハンダバンプとの接合界面とを比較すると,いずれも,ニッケルの層の上に,錫を含有するはんだ層を設けた後にはんだリフローを行って,前記ニッケルの層と前記はんだの層とが接合する界面を形成した構造を有する点で一致すると認められる。 エ そうすると,引用発明1のはんだボールとニッケルめっき被膜とが接合する界面と,引用例2の従来の技術におけるニッケル層とハンダバンプとの接合界面とは,同様の構造を有するのであるから,引用発明1においても,引用例2の従来の技術と同様に,上記アに記載された,接合時の溶融状態において,また接合後の温度環境下において拡散反応が進み,ハンダを構成する錫が,前記ニッケルを侵食していき,その結果,接合界面では錫が消費されて鉛の濃度が高い部分が形成されたり,錫の拡散によるカーケンダルボイドなどが発生し,強度低下を招く等の不都合な現象が生じる懸念があり得るであろうことは,引用発明1と引用例2に接した当業者であれば直ちに思い至るものといえる。 オ してみれば,引用発明1の前記懸念を解消する為に,引用発明1に,引用例2に記載された前記課題を解決するための手段を適用すること,すなわち,引用発明1に,引用例2の上記摘記(2g)に記載された,上記イで検討した手段を適用して,引用発明1の「ニッケルめっき被膜,パラジウムめっき被膜」と,「はんだめっき被膜」との間に,0.8μm程度の膜厚の銅からなる層を形成して,その後に,「はんだリフロー」を行い,前記銅を一旦すべて溶解し,冷却とともに,界面にニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層を形成して接合を完了することで,前記界面にニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した複合ハンダ合金層を形成して,この複合ハンダ合金層の存在より,この後にハンダ溶融温度以上に加熱履歴を加えても,ニッケルの溶解や拡散によって著しく信頼性が低下することを防ぐようにすることは,当業者が容易に想到し得たことといえる。そして,前記「0.8μm程度の膜厚の銅からなる層」は,本願発明1の「銅含有キャップ層」に相当するから,引用発明1において,上記相違点1について本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。また,このような構成としたことによる効果は,当業者が予測する範囲内のものである。 ・相違点2について ア 本願の明細書には,以下の記載がある。 (本a)「【0014】薄膜の銅キャップ層112は,限定された銅のソースを提供してはんだ層(例えばスズ)114と反応させ,拡散バリア層(例えばニッケル)110とも反応させる。銅キャップ層112は,リフローはんだ付けの後,約0.1μm?1.5μmの厚さを有して制御可能な金属間化合物{例えば(Cu,Ni)_(x)Sn_(y)}を形成することができる。リフローはんだ付けは,はんだペースト(粉状はんだとフラックスの粘着性混合物)がそれらの実装パッドに成分を一時的に保持し,その後,接合部をはんだ付けするためにそのアセンブリ(assembly)が注意深く加熱されるように用いられるプロセスである。前記アセンブリは,赤外線ランプによって加熱されるか,または注意深く制御されたオーブン(oven)を通過させることによって,またはホットエアーペンシル(hot air pencil)ではんだ付けされることができる。 【0015】リフロー後,金属間化合物層116が,銅キャップ層112,拡散バリア層110(例えばニッケル)と,はんだ層114(例えばスズ)の間に形成される。例えば,ニッケル拡散バリア層110とスズはんだ層114と併せて,銅-ニッケル-スズの金属間化合物層の厚さは,0.1μm?1.5μmの銅キャップ層で7μmより小さく制御されることができる。銅-ニッケル-スズ金属間化合物層は,良好な界面接着を提供する。銅(例えばニッケル-スズまたはニッケル-スズ-銀)がなければ,金属間化合物(例えば針状のNi_(3)Sn_(4))は,接合性を失い,界面(例えばニッケル-リン)を剥離する。」 イ そうすると,上記記載に照らして,拡散バリア層上に金属間化合物(IMC)を形成するステップによって形成される金属間化合物については,当該金属間化合物を構成する各金属の組成比が具体的に特定されておらず,また,金属間化合物としての結晶構造も特定されていないことが明らかであり,また,本願明細書のこの他の記載及び図面を精査しても,前記金属間化合物を構成する各金属の組成比,及び,結晶構造を特定する記載を認めることはできない。 ウ すなわち,本願明細書において,例えば,NiとSnとの金属間化合物が,Ni_(3)Sn_(4)等のように,金属間化合物を構成する各金属の組成比を特定した具体的な化合物として記載されているのに対して,拡散バリア層上に金属間化合物(IMC)を形成するステップによって形成される金属間化合物については,前記金属間化合物が,例えば,「限定された銅」と「はんだ層のスズ」と「拡散バリア層のニッケル」で作られることが示されているにすぎない。 エ そして,本願明細書及び図面には,前記金属間化合物を形成する熱処理についても,その熱処理条件等についての特段の記載が無いことから,前記金属間化合物は,通常のリフローはんだ付けの条件において形成されるものであると認められる。 オ そうすると,上記「相違点1について」で検討した,引用例2の上記摘記(2g)に記載された「ニッケル/バナジウム合金を1?5μm程度の厚さで形成するステップ,前記ニッケル/バナジウム合金上に銅を略0.8μmの膜厚で形成するステップ,前記銅上に錫96.5重量%/銀3.5重量%の共晶ハンダボールをフラックスとともに供給し,加熱して,前記ハンダボールを溶解するステップ,及び,前記ハンダボールは前記銅を一旦すべて溶解し,冷却とともにハンダは半球形状となり,界面にニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層を形成して接合を完了する」ことによって形成される「ニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層」と,本願発明1の「銅-ニッケル-スズで作られる」金属間化合物とは,銅とニッケルとスズという同一の材料の組合せを原材料として,同様の熱処理によって作られものである点で一致するといえる。 カ してみれば,引用例2の「ニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層」は,本願発明1の「銅-ニッケル-スズで作られる」金属間化合物という範疇に含まれる材料であると理解することが自然といえる。 キ そして,上記「相違点1について」で検討したように,引用発明1に引用例2に記載された手段を適用すること,すなわち,引用発明1の「ニッケルめっき被膜,パラジウムめっき被膜」と,「はんだめっき被膜」との間に,0.8μm程度の膜厚の銅からなる層を形成して,その後に,「はんだリフロー」を行い,前記銅を一旦すべて溶解し,冷却とともに,界面にニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層を形成して接合を完了することが,当業者が容易になし得たことであると認められ,また,上記カで検討したように,「ニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層」が,本願発明1の「銅-ニッケル-スズで作られる」金属間化合物の範疇に含まれる材料であると認められるのであるから,引用発明1に引用例2に記載された手段を適用した場合における「はんだリフロー」は,「銅-ニッケル-スズで作られる」「金属間化合物を形成する熱処理」に相当するものと認められる。 ク したがって,上記「相違点1について」で検討したように,引用発明1において,上記相違点1について本願発明1の構成とすることが,当業者が容易になし得たことであることから,引用発明1において,上記相違点2について本願発明1の構成とすることも,当業者が容易になし得たことといえる。また,このような構成としたことによる効果は,当業者が予測する範囲内のものである。 ケ なお,仮に,本願発明1の「銅-ニッケル-スズで作られる」金属間化合物が,上記カで認定したように,「ニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層」を含むものでないとしても,引用例2の上記摘記(2g)には,「【0077】この効果と,複合ハンダ合金層6の存在形態について説明する。これら複合ハンダ合金層6は,ニッケル/錫の金属間化合物層及び銅/錫の金属間化合物が,各々その粒界に対して互いに拡散経路を遮断するように存在する形態により拡散が抑制される場合と,もう一つの形態として,ニッケルと銅の固溶体に対して錫が金属間化合物を形成し,3元系の金属間化合物として存在する場合があり,この3元系の金属間化合物として存在する場合においても,拡散するための経路が複合して存在するニッケル,銅により遮断されるため相互拡散が抑制される。」として,「複合ハンダ合金層6」のもう一つの形態として,「ニッケルと銅の固溶体に対して錫が金属間化合物を形成し,3元系の金属間化合物として存在する場合があり,この3元系の金属間化合物として存在する場合」があることが記載されており,また,「この3元系の金属間化合物として存在する場合においても,拡散するための経路が複合して存在するニッケル,銅により遮断されるため相互拡散が抑制される。」ことも示されているのであるから,上記「相違点1について」の上記エにおいて検討した,引用発明1の「接合時の溶融状態において,また接合後の温度環境下においても拡散反応が進み,ハンダを構成する錫が,前記ニッケルを侵食していき」という不都合を解消するために,引用例2の上記相互拡散が抑制されるという効果を奏する「3元系の金属間化合物」を,前記拡散バリア層であるニッケル層上に形成することは,当業者が容易になし得たことである。 したがって,仮に,本願発明1の「銅-ニッケル-スズで作られる」金属間化合物が,上記カで認定したように,「ニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層」を含むものでないとしても,引用発明1において,上記相違点2について本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。 ・相違点3について ア 引用例2の上記摘記(2h)の,「銅をスパッタリングにより約0.4μm形成する。・・・<途中省略>・・・以上の製造方法でバンプ形成したバンプ付き半導体チップのバンプ断面を観察,元素分析を行ったところ,接着層5/ハンダバンプ7界面には前記した第4の実施例と同じく,錫,銅,ニッケルで構成される金属間化合物層が約0.8μmの厚さで形成されていた。」との記載から,銅を約0.4μmの厚さで形成した場合には,錫,銅,ニッケルで構成される金属間化合物層が約0.8μmの厚さで形成されることがわかる。 イ そうすると,上記「相違点1について」で検討したように,引用発明1に引用例2に記載された手段を適用して,「銅を略0.8μmの膜厚で形成」した場合に形成される,錫,銅,ニッケルで構成される金属間化合物層の厚さは,少なくとも本願発明1の「最大の厚さが7μm」の範囲に含まれる程度の厚さを有することになることは明らかといえる。 ウ また,仮に,「銅を略0.8μmの膜厚で形成」した場合に形成される,錫,銅,ニッケルで構成される金属間化合物層の厚さが,「最大の厚さが7μm」の範囲に含まれることが明らかでないとしても,引用例2の上記摘記(2h)に記載された[実施例5]の構成を参酌することで,引用発明1に引用例2に記載された方法を適用した場合の,錫,銅,ニッケルで構成される金属間化合物層の厚さを,本願発明1の「最大の厚さが7μm」の範囲に含まれる「約0.8μmの厚さ」で形成することは当業者が適宜なし得たことである。 エ したがって,引用発明1において,上記相違点3について本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。また,このような構成としたことによる効果は,当業者が予測する範囲内のものである。 (3)小括 以上のとおり,本願発明1は,引用例1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 本願発明2の進歩性についての検討 (1)本願発明2と引用発明2との対比 ア 引用発明2の「柱状に形成された銅メッキ部」及び「はんだボール」は,それぞれ,本願発明2の「銅含有柱層」及び「はんだ層」に相当する。 イ 引用発明2の「ニッケルめっき被膜」は,「はんだの拡散防止を目的としたもの」であるから,本願発明2の「拡散バリア層」に相当する。 ウ 引用発明2では,柱状電極にはんだめっき被膜を形成する際に使用するはんだは,Sn-Pb等の鉛を含有するタイプのもの,Sn-Ag等の鉛を含有しないタイプのもののどちらも使用可能であるとされているから,引用発明2のはんだは,Snを含有するものであると理解することが自然である。 そして,このようなSnを含有するはんだを用いて,ニッケルめっき被膜上にはんだボールを形成した構造を有する引用発明2においては,前記ニッケルめっき被膜と前記Snを含有するはんだボールとの界面に,前記ニッケルめっき被膜に含まれるNiと前記Snとが反応して形成された金属間化合物が存在することは,技術常識に照らして,当業者が直ちに理解することである。 すなわち,本願発明2と引用発明2は,「拡散バリア層上の金属間化合物(IMC)」を含む点で一致する。 エ してみれば,本願発明2と引用発明2との一致点と相違点は,次のとおりといえる。 <一致点> 「銅含有柱層, 前記銅含有柱層上の拡散バリア層, 前記拡散バリア層上の金属間化合物(IMC),及び 前記金属間化合物上のはんだ層を含む柱構造。」 <相違点> ・相違点4 本願発明2において,金属間化合物は,最大の厚さが7μmを有する銅-ニッケル-スズを含むのに対して,引用発明2では,このような特定がされていない点。 (2)相違点についての判断 ・相違点4について 上記「4 本願発明1の進歩性についての検討 (2)相違点についての判断」での検討におけるのと同様の理由により,引用例2に接した当業者であれば,引用発明2のニッケルめっき被膜と,Snを含有するはんだボールとの界面における,接合時の溶融状態,または,接合後の温度環境下の拡散反応による強度低下あるいは信頼性の低下等の不具合の発生を抑制するために,引用例2に記載された,「ニッケル/錫の金属間化合物および,銅/錫の金属間化合物の複合した層」あるいは「ニッケルと銅の固溶体に対して錫が金属間化合物を形成し,3元系の金属間化合物として存在する」形態である,銅-ニッケル-スズを含む金属間化合物を,ニッケルめっき被膜と,Snを含有するはんだボールとの界面に設けることは容易になし得たことである。 そして,引用例2の上記摘記(2h)の「錫,銅,ニッケルで構成される金属間化合物層が約0.8μmの厚さで形成されていた。」等の記載に基づいて,前記金属間化合物を,「最大の厚さが7μm」の範囲に含まれる厚さを有するものとすることも適宜なし得たことである。 したがって,引用発明2において,上記相違点4について本願発明2の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。また,このような構成としたことによる効果は,当業者が予測する範囲内のものである。 (3)小括 以上のとおり,本願発明2は,引用例1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり,本願発明1及び本願発明2は,いずれも引用例1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-13 |
結審通知日 | 2014-03-19 |
審決日 | 2014-04-01 |
出願番号 | 特願2010-151626(P2010-151626) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今井 拓也 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
小野田 誠 加藤 浩一 |
発明の名称 | 銅柱バンプ上の金属間化合物の接合のための方法と構造 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 福田 修一 |