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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1290971
審判番号 不服2013-16564  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-27 
確定日 2014-08-14 
事件の表示 特願2010-237827「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月 3日出願公開,特開2011- 22615〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年9月16日に出願した特願2005-270966号(優先権主張平成16年11月18日)の一部を平成22年10月22日に新たな特許出願としたものであって,平成25年2月4日付けで拒絶理由が通知され,同年4月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年5月21日付けで拒絶査定がなされたところ,同年8月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
なお,審判請求人は,当審における平成25年11月8日付け審尋に対して,平成26年1月14日に回答書を提出している。

第2 補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年8月27日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

〔理由〕
1 補正の内容
平成25年8月27日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は,平成25年4月12日提出の手続補正書による手続補正によって補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲及び明細書について補正しようとするもので,そのうち,請求項1の補正については次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
(1)本件補正前の請求項1
「車載型の液晶表示装置であって,
光源と,液晶パネルとを備え,前記光源と,前記液晶パネルとの間には,視野角制御シートが設けられ,
前記視野角制御シートは,断面形状が台形の複数のレンズ部が水平方向に延び,所定の間隔で上下方向に配列されるとともに,隣り合う前記レンズ部間の楔形部に光吸収性を有する材料が充填され,前記楔形部は観察者側に先端を有するとともに前記光源側に底面を有し,前記レンズ部と平行に延び,上下方向に配列され,前記楔形部の斜面部分が出光面の法線となす角度をθとしたとき,θが3°≦θ≦15°の範囲であることを特徴とする液晶表示装置。」

(2)本件補正後の請求項1
「車載型の液晶表示装置であって,
光源と,液晶パネルとを備え,前記光源と,前記液晶パネルとの間には,視野角制御シートが設けられ,
前記視野角制御シートは,断面形状が台形の複数のレンズ部が水平方向に延び,所定の間隔で上下方向に配列されるとともに,隣り合う前記レンズ部間の楔形部に前記レンズ部より屈折率が低い透明樹脂である透明低屈折率樹脂が充填され,ここに光吸収性を有する黒色粒子が添加され,前記レンズ部と前記透明低屈折率樹脂とが界面を形成しており,前記楔形部は観察者側に先端を有するとともに前記光源側に底面を有し,前記レンズ部と平行に延び,上下方向に配列され,前記楔形部の斜面部分が出光面の法線となす角度をθとしたとき,θが3°≦θ≦15°の範囲であることを特徴とする液晶表示装置。」

2 新規事項の追加及び補正の目的について
本件補正により請求項1に付加された,「楔形部に」「充填され」る「光吸収性を有する材料」が,「光吸収性を有する黒色粒子が添加」された「レンズ部より屈折率が低い透明樹脂である透明低屈折率樹脂」である点は,本願の願書に最初に添付した明細書(以下,願書に最初に添付された明細書を「当初明細書」といい,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面をあわせて「当初明細書等」という。)の【0027】ないし【0031】に記載されており,本件補正により請求項1に付加された「レンズ部と透明低屈折率樹脂とが界面を形成して」いる点は,本願の当初明細書の【0027】ないし【0031】の記載から自明な事項であるから,本件補正は,本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされた補正であって,平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
また,本件補正後の請求項1に係る前記補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「光吸収性を有する材料」について,「光吸収性を有する黒色粒子が添加」された「レンズ部より屈折率が低い透明樹脂である透明低屈折率樹脂」であることを限定するとともに,本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「レンズ部」及び「楔形部」について,両者の界面が「レンズ部」と「透明低屈折率樹脂」により形成されることを限定するものであって,本件補正の前後で当該請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であると認められるから,改正前特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)について,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 独立特許要件について
(1)本願補正発明
本願補正発明は,本件補正後の特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,前記1(2)に示したとおりのものと認める。

(2)引用例
ア 特開2004-12918号公報(以下「引用例1」という。)は,原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された,本願の優先権主張の日(以下「本願優先日」という)前に頒布された刊行物であって,当該引用例1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,光源からの光の向きをそろえる光線方向制御シート,視認性向上シート,光源装置及びディスプレイに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来,この種の光線方向制御シートとしては,シートにストライプ状に光吸収部と光透過部を形成したスリットや,シートの内部にそのシートに垂直に光吸収部を形成したルーバーが用いられてきた。
・・・(中略)・・・
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
・・・(中略)・・・
【0010】
このように,従来の技術では,ルーバーシート20は,法線方向及びその付近の方向に進む光以外の光,つまり,制御しようとする方向に進まない光を吸収することにより,法線方向に近い方向に制御していたために,入光する光のうち数分の1程度しか利用できず,入光する光の多くを損失してしまうという問題点があった。
【0011】
本発明の課題は,光の損失を抑えつつ,光の進行方向を制御することができる光線方向制御シート,視認性向上シート,光源装置及びディスプレイを提供することである。」

(イ)「【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために,請求項1の発明は,光透過部と,前記光透過部の入光面から入光した光の一部を,その出光面から出光させるように反射させる反射部とを備え,前記反射部は,前記入光面での入光角度よりも,前記出光面の出光角度が小さくなるように反射させることを特徴とする光線方向制御シートである。
・・・(中略)・・・
【0014】
請求項3の発明は,請求項1又は請求項2に記載された光線方向制御シートにおいて,前記反射部は,その反射面が,前記入光面の法線に対して5?15°の角度をなす斜面,又は,接線が5?15°の角度をなす曲面であることを特徴とする光線方向制御シートである。
・・・(中略)・・・
【0021】
請求項10の発明は,請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の光線方向制御シートと,前記光線方向制御シートの入光側に配置した光源と,を備えることを特徴とする光源装置である。
・・・(中略)・・・
【0026】
請求項15の発明は,請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の光源方向制御シート,請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の視認性向上シート,又は,請求項10から請求項14までのいずれか1項に記載の光源装置のいずれかを含むディスプレイである。」

(ウ)「【0027】
【発明の実施の形態】
以下,図面などを参照しながら,本発明の実施の形態をあげて,さらに詳しく説明する。
(光線方向制御シートの第1実施形態)
図1?図3は,本発明による光線方向制御シートの第1実施形態を示す図である。
第1実施形態の光線方向制御シート10は,光透過部11と,光透過部11の入光面13から入光した光の一部を,その出光面14から出光させるように反射させる反射部15とを備えている。この反射部15は,入光面13での入光角度よりも,出光面14の出光角度が小さくなるように反射させるようにしたものである。
【0028】
この光線方向制御シート10は,入光側の一部が透明な入光面13であり,他の部分が光を透過しない遮光部16となっている。そして,この光線方向制御シート10は,その内部に設けられた反射部15によって,入光面13から入光した光の一部を出光側に反射する。この実施形態では,反射部15は,出光側に向かって開いていくように傾いた斜面となっている。
具体的には,反射部15は,出光面14からの光の出光角度が-40度?+40度となるように反射することが好ましい。このとき,反射部15は,その反射面が,入光面の法線に対して5?15°の角度をなしていることが望ましい。
【0029】
ここで,本実施形態の光線方向制御シート10は,光透過部11を構成する材質が,透明な樹脂であればよく,アクリル,ポリカーボネート,エポキシ,ウレタンアクリレート,ポリエステル等が好ましい用いられる。
【0030】
反射部15は,反射率の高い金属であればよく,例えば,アルミニウムであれば蒸着によって形成すればよく,銀であれば銀鏡反応を用いればよい。
【0031】
また,反射部15は,光透過部11より低屈折な樹脂を用いてもよい。これは,反射面に対して,光が50°程度以上の大きな入光角度で入光するので,光透過部11の樹脂と,反射部15の樹脂の屈折率の差がある程度大きく,臨界角を60°程度以上に大きくすれば,全反射により反射するからである。
例えば,光透過部11の屈折率が1.57の場合には,反射部15として,屈折率=1.34の樹脂を用いれば,臨界角=59.3°となり,この角度以上で入光する光は,全反射するので光線方向制御シート10では,すべて反射する。低屈折率樹脂としては,フッ素系樹脂等を用いることができる。
【0032】
また,遮光部16としては,カーボンブラック等を含む黒色インク等を用いることができる。
【0033】
図2は,第1実施形態による光線方向制御シートに入光した光線の光路を示す図である。
まず,光路a,bは,光線方向制御シート10の法線方向に近い角度,つまり,入光角が小さい角度で入光する光であって,光透過部11の中を進行して,出光面14から出光する。
【0034】
光路c,dは,光路bよりも入光角が大きくなる光であって,反射部15によって反射したのちに,出光面14から出光する。これらの場合には,まず,入光面13で屈折し,入光角よりも屈折角の方が小さくなる。また,反射部15は,出光面14の方に開くように傾いているので,反射部15に入射する光の法線方向に対する角度よりも,反射光の法線方向に対する角度の方が小さくなる。したがって,この光が出光面14で屈折して出光するときの出光角は,入光面13での入光角よりも小さくなる。
このように,本実施形態による光線方向制御シート10では,入光した光の拡がりよりも,出光する光の拡がりを狭くすることができる。
【0035】
図3は,第1実施形態による光線方向制御シートの具体的な形状を詳細に示した図である。
光線方向制御シート10は,入光側の入光面13の幅L1と,遮光部16の幅L2との比率を,L1:L2=1:1.88,入光面13の幅L1とシート10の厚みTとの比率を,L1:T=1:5.33,光透過部11の屈折率を1.57とすると,図3に示すように,入光面13の中心に入光する光において,光路bを通る光は,入光角が24.1°で,屈折角が15.1°となり,出光面14からの出光角が24.1°になる。
【0036】
これより大きな角度で入光する光は,光路c,dを通るが,もし,光路cとして,入光角を40°とすると,屈折角が24.2°で,出光面14への入光角が4.2°となり,出光面14からの出光角が6.6°である。
また,光路dとして,入光角を90°とすると,入光面13の屈折角は39.6°で,出光面14への入光角が19.6°となり,出光面14からの出光角が31.8°である。
【0037】
このように,本実施形態では,入光面13に入光した光は,-30°?+30°の範囲に出光する。この実施形態の場合に,入光側の面積のうち,入光面13のしめる割合は,1/2.88=0.347であり,従来の技術で説明した30/180=1/6=0.166よりも0.347/0.166=2.09倍の光が利用できることになる。
【0038】
本実施形態では,反射部15がシート10の法線となす角は,10°であるがこの角度が小さくなり過ぎると,反射部15に入射する光と,反射部15で反射した光のシート10の法線とのなす角の差が少なくなり,つまり,反射しても光線のシート10の法線に対しての向きが変化しないので,光の向きを制御できなくなる。
また,この角度が大きくなると,反射部15に入射せずに,出光面14に入射する光の最大入光角(出光面13に対する)が大きくなり,また,そのような光の割合も大きくなるので,出光する光の出光角の範囲が広がってしまい,光の向きを制御できなくなる。
従って,出光する光の角度をシート10の法線方向からある範囲の角度にするには,反射部14のシート10の法線方向に対する角度は,5?15°の範囲に実用的であり,10°程度がより好ましい。」

(エ)「【0042】
(光源装置の第1実施形態)
図7は,本発明による光線方向制御シートを用いた光源装置の第1実施形態を示す図である。
第1実施形態の光源装置30は,第4実施形態の光線方向制御シート10-4と,この光線方向制御シート10-4の入光側に配置された蛍光灯,EL(エレクトリック ルミネッセンス)等の光源31を備えたものであり,向きのそろった光を出光することが可能となる。
【0043】
このとき,光源31側にも反射層32を設けると,入光面13から入光する光が増え,さらに効率が良くなる。
この光源装置30は,光の向きがそろっているので,液晶表示装置の光源装置に用いると,液晶表示装置を透過する光の割合が高く,トータルの光の利用効率を上げることができるという利点がある。」

(オ)「【0048】
(視認性向上シートの第1実施形態)
図11は、本発明による視認性向上シートの第1実施形態を示す図、図12は、本発明の実施形態による光線方向制御シートの入光面の端部に入光した光の光路を示す図である。
・・・(中略)・・・
【0051】
・・・(中略)・・・
そこで、第1実施形態の視認性向上シート40は、光線方向制御シート10の出光側に、従来の技術(図16参照)で説明した光線方向制御シート20を配置したものである。
・・・(中略)・・・
【0055】
視認性向上シート40は、光線方向制御シート10において、その反射部15が金属のようにどの方向からきた光も反射してしまうものよりも、屈折率の異なる界面とし、その裏に遮光部15があるような構造、又は、低屈折率層の中に光を吸収する粒子があるような構造が好ましい。
この理由は、上記のようにすれば、臨界角以上の特定の光は反射するが、それ以外の光は吸収するので、画像光は反射し、外光は吸収することができ、遮光部15もコントラストの向上に寄与することができるからである。」

(カ)「【0059】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく,種々の変形や変更が可能であって,それらも本発明の均等の範囲内である。
・・・(中略)・・・
【0061】
(3)図1,図4,図5,図11,図13,図14,図15のシートの場合にも,図7?図10のような光源と組み合わせることによって,光源装置を作製することができ,また,それを用いたディスプレイを作製することもできる。」

(キ)「【0062】
【実施例】
以下,具体的な実施例をあげて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
図14は,本発明による光線方向制御シートの実施例を示す図である。
この光線方向制御シート10-5は,ベースフィルム(PETフィルム,厚み100μm,屈折率1.58)51の上に,光透過部11を,この台形状(入光側の幅L1=50μm,出光側の幅L3=144μm,斜面の角度θ=10°)の逆形状の金型(ロール状)を用いて,このロールとベースフィルム51の間に,UV硬化樹脂を充填しながら,圧着させたのちに,UV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させることにより形成した(硬化後の屈折率=1.57)。
・・・(中略)・・・
【0064】
(実施例2)
図15は,本発明による視認性向上シートの実施例を示す図である。
この視認性向上シート40-3は,ベースフィルム(PETフィルム,厚み120μm,屈折率1.58)52の片面に,実施例1と同様の形状を,同様の方法で形成した。
【0065】
次に,硬化後の屈折率が1.34になるようなUV硬化樹脂の中に,平均粒径5μmの黒色ビーズを混ぜたものを,谷部に充填し硬化させ,遮光部16を形成した。
さらに,シート52の反対面に対して,幅L4=5μmで,深さT3=370μmの溝を有する形状を,その形状の逆形状を用いて,溝の位置と初めに形成した形状の谷部の位置があうようにして形成した。
最後に,この溝に黒色インキを充填し硬化させて,光吸収部22を形成した。このようにし,視認性向上シート40-3を作製した。
この視認性向上シート40-3を,液晶ディスプレイの表面に配置したところ,屋外光の下でもコントラストの高い画像が視認できた。」

(ク)「【0066】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば,入光した光のうち,制御しようとする方向(シートの法線方向)に進まない光を吸収するのではなく,それ以外の方向に進む光を,反射させて制御しようとする方向に進ませることにより,光の損失を抑えながら,光の進む方向をそろえる制御を行うことができる。」

(ケ)図1及び図7は,次のとおりである。
【図1】

【図7】

a 図1の記載から,光線方向制御シート10が,2つの反射部15と遮光部16により囲まれた部分と,光透過部11とが交互に配列されて構成されたものであること,光透過部11の断面形状が台形であること,及び,2つの反射部15と遮光部16により囲まれた部分の断面形状が,出光面14側に先端を有するとともに入光面13側に底面を有する二等辺三角形であることを見て取れる。
b 図7は,光線方向制御シートを用いた光源装置の第1実施形態を示す図であるが,上記(エ)の説明を参酌すれば,光線方向制御シート10-4の下方に蛍光灯,EL(エレクトリック ルミネッセンス)等の光源31が配置されていることが見て取れる。

イ 前記ア(ア)ないし(ケ)からみて,引用例1には,図1に示された光線方向制御シート10と図7に示された光源31とを組み合わせて作成した光源装置を用いたディスプレイの発明が記載されていると認められるところ(特に前記ア(カ)の【0061】及び(エ)の【0042】を参照。),その具体的な構成は次のとおりである。
「光源装置を有する液晶表示装置であって,
前記光源装置が,光線方向制御シート10と,蛍光灯,EL(エレクトリック ルミネッセンス)等の光源31であって,前記光線方向制御シート10の入光側に配置された光源31とを備え,
前記光線方向制御シート10が,光透過部11と,当該光透過部11の入光面13から入光した光の一部をその出光面14から出光させるように反射させる反射部15とを備え,
前記反射部15の反射面が光線方向制御シート10の法線に対して5?15°の角度をなしており,
前記光線方向制御シート10の入光側の一部が透明な入光面13であり,他の部分が光を透過しない遮光部16となっており,
前記光線方向制御シート10は,2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分と,前記光透過部11とが交互に配列されて構成されたものであり,
前記光透過部11の断面形状は台形であり,
前記2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分の断面形状は,出光面14側に先端を有するとともに入光面13側に底辺を有する二等辺三角形であり,
前記反射部15は,前記光透過部11より低屈折なフッ素系樹脂等の低屈折率樹脂を用いて形成され,前記遮光部16は,カーボンブラック等を含む黒色インクを用いて形成された,
液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。)


(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「液晶表示装置」,「光源31」,「光線方向制御シート10」,「光透過部11」,「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」及び「反射部15」は,本願補正発明の「液晶表示装置」,「光源」,「視野角制御シート」,「レンズ部」,「楔形部」及び「楔形部の斜面部分」にそれぞれ相当する。

イ 液晶表示装置において光源装置の出光側に液晶パネルが設けられることは技術常識であるから,「液晶表示装置」である引用発明が液晶パネルを有しており,当該液晶パネルが「光線方向制御シート10」の出光面14側に設けられていることは明らかである。
したがって,本願補正発明と引用発明は,「光源と,液晶パネルとを備え,前記光源と,前記液晶パネルとの間には,視野角制御シートが設けられ」る点で一致する。

ウ 引用発明の「光線方向制御シート10」は,断面形状が台形である「光透過部11」と,断面形状が出光面14側に先端を有するとともに入光面13側に底辺を有する二等辺三角形である「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」とが交互に配列されたものであるから,断面形状が台形の複数の「光透過部11」が第1の方向に延び,所定の間隔で前記第1の方向と直交する第2の方向に配列され,「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」が出光面14側すなわち観察者側に先端を有するとともに入光面13側すなわち「光源31」側に底面を有し,前記「光透過部11」と平行に延び,前記第2の方向に配列されたものといえる。
したがって,本願補正発明の「視野角制御シート」と引用発明の「光線方向制御シート10」とは,「断面形状が台形の複数のレンズ部が第1の方向に延び,所定の間隔で前記第1の方向と直交する第2の方向に配列されるとともに,楔形部が観察者側に先端を有するとともに光源側に底面を有し,前記レンズ部と平行に延び,前記第2の方向に配列される」点で一致する。

エ 引用例1の【0055】の「光線方向制御シート10において,その反射部15が金属のようにどの方向からきた光も反射してしまうものよりも,屈折率の異なる界面とし,その裏に遮光部15があるような構造,又は,低屈折率層の中に光を吸収する粒子があるような構造が好ましい。」(前記ア(オ)を参照。)及び【0065】の「UV硬化樹脂の中に,平均粒径5μmの黒色ビーズを混ぜたものを,谷部に充填し硬化させ,遮光部16を形成した。」(前記ア(キ)を参照。)という記載等を踏まえれば,引用発明の「反射部15」が「光透過部11より低屈折なフッ素系樹脂等の低屈折率樹脂を用いて形成され」,「遮光部16」が「カーボンブラック等を含む黒色インクを用いて形成され」るとは,「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」に,光吸収性の黒色ビーズを混ぜた,光透過部11より低屈折な透明樹脂を充填し硬化させることによって形成することであることが明らかである。
そして,引用発明の「光線方向制御シート10」は,「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」と,「光透過部11」とが交互に配列されて構成されたものであり,「反射部15」及び「遮光部16」は,前記のとおり,「光透過部11」より低屈折な透明樹脂の中に黒色ビーズを混ぜたものを,「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」に充填し硬化させて形成されたものであるから,引用発明の「光線方向制御シート10」は,隣り合う「光透過部11」間の「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」に「光透過部11」より屈折率が低い「透明低屈折率樹脂」が充填され,ここに光吸収性を有する「黒色粒子」が添加され,前記「光透過部11」と前記「透明低屈折率樹脂」とが界面を形成しているといえる。
したがって,本願補正発明の「視野角制御シート」と引用発明の「光線方向制御シート1」は,「隣り合う前記レンズ部間の楔形部に前記レンズ部より屈折率が低い透明樹脂である透明低屈折率樹脂が充填され,ここに光吸収性を有する黒色粒子が添加され,前記レンズ部と前記透明低屈折率樹脂とが界面を形成して」いる点で一致する。(なお,仮に,引用発明の「反射部15」が「光透過部11より低屈折なフッ素系樹脂等の低屈折率樹脂を用いて形成され」,「遮光部16」が「カーボンブラック等を含む黒色インクを用いて形成され」るとは,「2つの反射部15及び遮光部16により囲まれた部分」に,光吸収性の黒色ビーズを混ぜた,光透過部11より低屈折な透明樹脂を充填し硬化させることによって形成することではないと解し,引用発明が「隣り合う前記レンズ部間の楔形部に前記レンズ部より屈折率が低い透明樹脂である透明低屈折率樹脂が充填され,ここに光吸収性を有する黒色粒子が添加され,前記レンズ部と前記透明低屈折率樹脂とが界面を形成して」いない点で,本願補正発明と相違するとした場合であっても,引用発明において,当該相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは,引用例1の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たことであるから,当該相違点が,進歩性の有無についての結論に影響を及ぼすことはない。)

オ 引用発明の「反射部15」の反射面は,光線方向制御シート10の法線に対して5?15°の角度をなしているから,出光面の法線となす角度θが「3°≦θ≦15°の範囲」である本願補正発明の「楔形部の斜面部分」と,「出光面の法線となす角度をθとしたとき,θが5°≦θ≦15°の範囲である」点で一致する。

カ 前記アないしオから,本願補正発明と引用発明とは,
「液晶表示装置であって,
光源と,液晶パネルとを備え,前記光源と,前記液晶パネルとの間には,視野角制御シートが設けられ,
前記視野角制御シートは,断面形状が台形の複数のレンズ部が一方向に延び,所定の間隔で前記一方向と直交する方向に配列されるとともに,隣り合う前記レンズ部間の楔形部に前記レンズ部より屈折率が低い透明樹脂である透明低屈折率樹脂が充填され,ここに光吸収性を有する黒色粒子が添加され,前記レンズ部と前記透明低屈折率樹脂とが界面を形成しており,前記楔形部は観察者側に先端を有するとともに前記光源側に底面を有し,前記レンズ部と平行に延び,前記一方向と直交する方向に配列され,前記楔形部の斜面部分が出光面の法線となす角度をθとしたとき,θが5°≦θ≦15°の範囲であることを特徴とする液晶表示装置。」である点で一致し,次の点で相違している。

相違点:
本願補正発明が車載型の液晶表示装置であり,「視野角制御シート」における「レンズ部」及び「楔形部」が延びる方向が水平方向で,その配列方向が左右方向である(以下,本願明細書での呼称に倣って,「横ストライプ」という。)のに対して,引用発明の液晶表示装置の用途は特定されておらず,また,「光線方向制御シート10」が「横ストライプ」であることも特定されていない点。

(4)判断
前記相違点について検討する。
ア 引用発明は,光の損失を抑えつつ,光の進行方向を制御することを目的とした発明であり,特定用途の装置に限定されるものでないことは明らかであって,如何なる用途の「液晶表示装置」として用いるのかは,当業者が適宜決定する設計上の事項でしかなく,かつ,車載型の液晶表示装置は周知のものであるから,引用発明を「車載型の液晶表示装置」とすることは当業者が適宜なし得たことである。
また,引用発明の「光線方向制御シート10」は,光源31から入光する光を「第1の方向」に集光する光学的機能を果たすものであるところ,当該「第1の方向」をどのような方向に設定するのかは,想定される使用環境等を考慮して,当業者が適宜決定する設計上の事項でしかないから,「第1の方向」として上下方向を選択して「光線方向制御シート10」を横ストライプとすることもまた,当業者が適宜なし得たことである。

イ 例えば,特開平10-142592号公報(【0002】,【0015】ないし【0019】,図2ないし図4等を参照。),特開2004-245918号公報(【0002】ないし【0005】,【0024】ないし【0027】,図2,図3等を参照。)等からみて,相違点に係る本願補正発明の特定事項を具備する液晶表示装置は本願優先日前周知であったと認められ,横ストライプの光線方向制御フィルムを液晶パネルと光源との間に設けた車載型の液晶表示装置として引用発明を構成することが本願優先日前に困難であったとすることもできない。

ウ したがって,引用発明において,相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは,当業者が容易になし得たことである。

エ また,本願補正発明の奏する効果は,引用例1の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

オ 以上のとおりであるから,本願補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本願補正発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するから,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年4月12日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,前記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として示したとおりのものと認める。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項及び引用発明については,前記第2〔理由〕3(2)ア及びイのとおりである。

3 対比・判断
前記第2〔理由〕2で述べたとおり,本願補正発明は,本願発明を特定するために必要な事項についての限定を付加したものに相当する。
そして,本願発明の構成要件をすべて含みさらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2〔理由〕3で述べたとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-10 
結審通知日 2014-06-17 
審決日 2014-06-30 
出願番号 特願2010-237827(P2010-237827)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 博之  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 山本 典輝  

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