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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1291057
審判番号 不服2011-18555  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-26 
確定日 2014-08-18 
事件の表示 特願2001-514089「細胞状膜を有する少なくとも2種の融合相手の選択的電気融合方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月 8日国際公開、WO01/09297、平成15年 2月18日国内公表、特表2003-506033〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12(2000)年7月13日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年7月30日 スウェーデン)とする出願であって、平成22年12月24日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたが、平成23年4月25日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。

2.平成23年8月26日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年8月26日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、補正前の請求項1は、
「細胞状膜を有する少なくとも2種の融合相手の選択的電気融合装置の使用方法において、
(A)融合相手を互いに接触させ;
(B)融合を得るのに充分な強度であると共に融合相手に高度に集中した電場を加え、前記微小電極を顕微鏡、1つのマイクロポジショナーおよび/または定位用具の使用により位置決めする
ことを特徴とする選択的電気融合装置の使用方法。」から、
「哺乳動物細胞と融合相手の選択的電気融合インビトロ方法において、
(A)哺乳動物細胞と融合相手を互いに接触させ;
(B)融合を得るのに充分な強度であると共に哺乳動物細胞と融合相手に高度に集中した電場を加え、前記微小電極を顕微鏡、1つのマイクロポジショナーおよび/または定位用具の使用により位置決めする
ことを特徴とする選択的電気融合インビトロ方法。」へと補正された。
上記補正により、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、「細胞状膜を有する少なくとも2種の融合相手」を「哺乳動物細胞と融合相手」と変更したが、この補正は、融合相手の片方についての「細胞状膜を有する」という限定をはずすものであるから、特許請求の範囲を拡張するものである。
また、「選択的電気融合装置の使用方法」を「選択的電気融合インビトロ方法」とする補正は、特許請求の範囲を変更するものである。
よって、この補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正、又は明瞭でない記載の釈明の何れかを目的とするものでもないので、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(2)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成23年8月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?30に記載された発明は、平成22年12月24日付手続補正書の特許請求の範囲1?30に記載のとおりのものであり、そのうち請求項1及び29には、以下のとおり記載されている。

「【請求項1】細胞状膜を有する少なくとも2種の融合相手の選択的電気融合装置の使用方法において、
(A)融合相手を互いに接触させ;
(B)融合を得るのに充分な強度であると共に融合相手に高度に集中した電場を加え、前記微小電極を顕微鏡、1つのマイクロポジショナーおよび/または定位用具の使用により位置決めする
ことを特徴とする選択的電気融合装置の使用方法。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項29】腫瘍の処置における請求項1?22のいずれか一項に記載の方法。」(以下、「本願発明29」という。)

4.特許法第29条第1項第3号
(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された本願優先日前の1999年3月19日に頒布された刊行物であるScience(1999)Vol.283,p.1892-1895(以下、「引用例」という。)には、
(i)「対照的に、2個の選択小胞間の電気融合は、試薬の正確な量を混合するために用いることができる。光学トラップは、2個の選択された小胞を、融合のために整列させるために使用された。2層膜の可逆的誘電崩壊により引き起こされる融合は、一対の炭素繊維超微小電極(1-5μm先端直径)を横切って形成される、短く強く高度に配向された電場の適用によって成された。」(第1893頁右欄第9行?第18行)、
(ii)「図1.実験装置の模式図 マイクロマニピュレーター(MM)によって制御される2つの炭素繊維電極(直径5μm)が、電気穿孔及び電気融合に使用された。」(第1892頁図1説明文第1行?第8行)、と記載され、第1894頁の図5のEとGは、2つのリン脂質小胞の電気融合の前(E)と後(G)の像であり、Eには、電気融合前には2個のベシクルが接触している様子が示されている。

そうすると、引用例には、「2つのリン脂質小胞を選択的に電気融合させる装置の使用方法において、リン脂質小胞を互いに接触させ、微小電極をマイクロマニピュレーターによって制御して、融合を得るために短く強く高度に配向された電場を加えることを特徴とする方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)対比・判断
本願明細書の段落【0015】には、「細胞状膜を有する前記少なくとも2種の融合相手は好ましくは細胞もしくはサブ細胞寸法の構造体である。 ・・・(途中省略)・・・すなわち、融合相手は互いに独立して単一細胞、リポソーム、蛋白リポソーム、合成小胞、植物プロトプラスト、卵細胞、精子もしくは精細胞および徐核卵細胞とすることができる。」と記載されており、引用発明の「2つのリン脂質小胞」は、本願発明1の「細胞状膜を有する少なくとも2種の融合相手」に他ならない。
そこで、 本願発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「微小電極をマイクロマニピュレーターによって制御する」ことは、本願発明1の「微小電極を1つのマイクロポジショナーの使用により位置決めする」ことに相当するから、両者は、「細胞状膜を有する少なくとも2種の融合相手の選択的電気融合装置の使用方法において、融合相手を互いに接触させ;融合を得るのに充分な強度であると共に融合相手に高度に集中した電場を加え、前記微小電極を1つのマイクロポジショナーの使用により位置決めすることを特徴とする選択的電気融合装置の使用方法」である点で一致し、両者に相違点は見出せない。
したがって、本願発明1は、引用発明と同一であり、本願優先日前に頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

5.特許法第29条第1項柱書
本願発明29は、腫瘍の処置における請求項1?22のいずれか一項に記載の選択的電気融合装置の使用方法に係るものである。
そして、「腫瘍の処置のための使用方法」に、ヒトを治療する方法が包含されることは明らかであるから、本願発明29は、「産業上利用することができる発明」に該当せず、本願発明29は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない。

6.むすび
以上のように、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本願請求項29に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり結審する。
 
審理終結日 2014-03-24 
結審通知日 2014-03-26 
審決日 2014-04-08 
出願番号 特願2001-514089(P2001-514089)
審決分類 P 1 8・ 14- Z (C12N)
P 1 8・ 57- Z (C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 幸田 俊希  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 冨永 みどり
▲高▼ 美葉子
発明の名称 細胞状膜を有する少なくとも2種の融合相手の選択的電気融合方法  
代理人 浜田 治雄  

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