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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1291061
審判番号 不服2012-21940  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-06 
確定日 2014-08-18 
事件の表示 特願2008- 40087「異常発生時における解析データ収集制御装置、方法、プログラム及び移動無線通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 9月 3日出願公開、特開2009-199317〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成20年2月21日の出願であって、平成23年1月12日付けで審査請求がなされ、平成24年4月26日付けで拒絶理由通知(同年5月7日発送)がなされ、同年7月4日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年8月3日付けで拒絶査定(同年8月9日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消し、本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求めます。」旨を請求の趣旨として、平成24年11月6日付けで本件審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成24年12月25日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成25年7月22日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年7月25日発送)がなされ、同年9月12日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成24年11月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年11月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成24年11月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成24年7月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6の記載

「 【請求項1】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御装置において、
通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリを有する通信ユニットと、
アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリを有し、起動時にACPU及びCCPU間のインターフェースでCCPUのプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリに転送するアプリケーションユニットと、
前記通信ユニット及び前記アプリケーションユニットで共有され、且つ、前記通信ユニットでの異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する共有揮発性メモリとを備え、
不揮発性メモリを有する前記アプリケーションユニットでは、異常発生からの復帰時に前記共有揮発性メモリから保持された前記通信ユニットでの異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみで前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする、異常発生時における解析データ収集制御装置。
【請求項2】
前記共有揮発性メモリに保持される異常発生の履歴情報のデータフォーマットには異常発生の履歴情報の保持時に有効フラグを立てる書き込みを行い、起動処理時に有効フラグの確認後に前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリへの書き込みを行うことを特徴とする、請求項1に記載の異常発生時における解析データ収集制御装置。
【請求項3】
前記通信ユニットの揮発性メモリと、前記アプリケーションユニットでワークエリアとして使用される揮発性メモリを前記共有揮発性メモリに統合し、ACPUとCCPU間のデータの送受信は前記共有揮発性メモリを介して行うことを特徴とする、請求項1に記載の異常発生時における解析データ収集制御装置。
【請求項4】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御方法において、
アプリケーションユニット側でアプリケーション部分の制御を行うACPU及び通信ユニット側で通信部分の制御を行うCCPUの制御を行う双方のプログラムをアプリケーションユニット側で保持し、且つ、異常発生の履歴のあるデバックデータを保存する不揮発性メモリから起動時にCCPUのプログラムを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介して不揮発性メモリから通信ユニット側の揮発性メモリに転送する工程と、
前記通信ユニット側での異常発生時に前記通信ユニット側及び前記アプリケーションユニット側で共有される共有揮発性メモリに異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する工程と、
異常発生からの復帰時に前記共有揮発性メモリから保持された異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずアプリケーションユニット側のACPUの処理のみで前記アプリケーションユニット側の不揮発性メモリに書き込む工程とを備えることを特徴とする、異常発生時における解析データ収集制御方法。
【請求項5】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御プログラムにおいて、
アプリケーションユニット側でアプリケーション部分の制御を行うACPU及び通信ユニット側で通信部分の制御を行うCCPUの制御を行う双方のプログラムをアプリケーションユニット側で保持し、且つ、異常発生時の履歴のあるデバックデータを保存する不揮発性メモリから起動時にCCPUのプログラムを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介して不揮発性メモリから通信ユニット側の揮発性メモリに転送する手順と、
前記通信ユニット側での異常発生時に前記通信ユニット側及び前記アプリケーションユニット側で共有される共有揮発性メモリに異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する手順と、
異常発生からの復帰時に前記共有揮発性メモリから保持された異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずアプリケーションユニット側のACPUの処理のみで前記アプリケーションユニット側の不揮発性メモリに書き込む手順とを備えることを特徴とする、異常発生時における解析データ収集制御プログラム。
【請求項6】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末において、
通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリを有する通信ユニットと、
アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリを有し、起動時にACPU及びCCPU間のインターフェースでCCPUのプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリに転送するアプリケーションユニットと、
前記通信ユニット及び前記アプリケーションユニットで共有され、且つ、前記通信ユニットでの異常発生時に異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する共有揮発性メモリとを備え、
不揮発性メモリを有する前記アプリケーションユニットでは、異常発生からの復帰時に前記共有揮発性メモリから保持された異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみで前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする、異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御装置において、
通信部分の制御を行うCCPUと、
アプリケーション部分の制御を行うACPUと、
前記ACPUに接続され、前記CCPUと前記ACPUの制御を行うためのプログラムを格納し、且つ、前記CCPU側と前記ACPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリと、
前記ACPUから前記CCPUへ前記CCPUの制御を行うためのプログラムを転送するためのインターフェースと、
前記CCPUと前記ACPUに接続され、前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを一時的に保持する共有揮発性メモリとを備え、
前記CCPU側の異常から復帰処理のためのシステムリセット時には、前記不揮発性メモリから前記ACPUを制御するためのプログラムを読み出して前記ACPUを起動し、さらに、前記CCPUを制御するためのプログラムを読み出して前記インターフェースを介して前記CCPUに転送して前記CCPUを起動し、前記ACPUは前記共有揮発性メモリから前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出して前記不揮発性メモリに保存することを特徴とする解析データ収集制御装置。
【請求項2】
前記共有揮発性メモリに保持される異常発生の履歴情報のデータフォーマットには異常発生の履歴情報の保持時に有効フラグを立てる書き込みを行い、起動処理時に有効フラグの確認後に前記不揮発性メモリへの書き込みを行うことを特徴とする、請求項1に記載の異常発生時における解析データ収集制御装置。
【請求項3】
前記ACPUから転送されて前記通信部分の制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリと、前記アプリケーション部分でワークエリアとして前記ACPUに使用される揮発性メモリを前記共有揮発性メモリに統合することを特徴とする、請求項1に記載の異常発生時における解析データ収集制御装置。
【請求項4】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御方法において、
通信部分の制御をCCPUにより行う工程と、
アプリケーション部分の制御をACPUにより行う工程と、
前記ACPUに接続される不揮発性メモリに対して、前記CCPUと前記ACPUの制御を行うためのプログラムを格納し、且つ、前記CCPU側と前記ACPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する工程と、
前記ACPUから前記CCPUへ前記CCPUの制御を行うためのプログラムをインターフェースを介して転送する工程と、
前記CCPUと前記ACPUに接続される共有揮発性メモリに対して、前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを一時的に保持する工程と、
前記CCPU側の異常から復帰処理のためのシステムリセット時には、前記不揮発性メモリから前記ACPUを制御するためのプログラムを読み出して前記ACPUを起動し、さらに、前記CCPUを制御するためのプログラムを読み出して前記インターフェースを介して前記CCPUに転送して前記CCPUを起動し、前記ACPUは前記共有揮発性メモリから前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出して前記不揮発性メモリに保存する工程とを備えることを特徴とする解析データ収集制御方法。
【請求項5】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御プログラムにおいて、
通信部分の制御をCCPUにより行う手順と、
アプリケーション部分の制御をACPUにより行う手順と、
前記ACPUに接続される不揮発性メモリに対して、前記CCPUと前記ACPUの制御を行うためのプログラムを格納し、且つ、前記CCPU側と前記ACPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する手順と、
前記ACPUから前記CCPUへ前記CCPUの制御を行うためのプログラムをインターフェースを介して転送する手順と、
前記CCPUと前記ACPUに接続される共有揮発性メモリに対して、前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを一時的に保持する手順と、
前記CCPU側の異常から復帰処理のためのシステムリセット時には、前記不揮発性メモリから前記ACPUを制御するためのプログラムを読み出して前記ACPUを起動し、さらに、前記CCPUを制御するためのプログラムを読み出して前記インターフェースを介して前記CCPUに転送して前記CCPUを起動し、前記ACPUは前記共有揮発性メモリから前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出して前記不揮発性メモリに保存する手順とを備えることを特徴とする解析データ収集制御プログラム。
【請求項6】
2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末において、
通信部分の制御を行うCCPUと、
アプリケーション部分の制御を行うACPUと、
前記ACPUに接続され、前記CCPUと前記ACPUの制御を行うためのプログラムを格納し、且つ、前記CCPU側と前記ACPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリと、
前記ACPUから前記CCPUへ前記CCPUの制御を行うためのプログラムを転送するためのインターフェースと、
前記CCPUと前記ACPUに接続され、前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを一時的に保持する共有揮発性メモリとを備え、
前記CCPU側の異常から復帰処理のためのシステムリセット時には、前記不揮発性メモリから前記ACPUを制御するためのプログラムを読み出して前記ACPUを起動し、さらに、前記CCPUを制御するためのプログラムを読み出して前記インターフェースを介して前記CCPUに転送して前記CCPUを起動し、前記ACPUは前記共有揮発性メモリから前記CCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出して前記不揮発性メモリに保存することを特徴とする、異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。なお、下線は、補正箇所を示すものとして、出願人が付与したものである。)

に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

3.補正の目的要件

次に、本件補正が、特許法17条の2第5項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第5項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下、単に「限定的減縮」という。)に限る。)、誤記の訂正、或いは、明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)の何れかを目的としたものであるかについて、以下に検討する。

補正前の請求項1における「解析データ収集制御装置」及び補正前の請求項6における「移動無線通信端末」は、その記載からして、次の発明特定事項(a)及び(b)を備え、(c)の態様を含んでいる。

(a)“通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリを有する通信ユニット”
(b)“アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリを有し、起動時にACPU及びCCPU間のインターフェースでCCPUのプログラムを通信ユニットの揮発性メモリに転送するアプリケーションユニット”
(c)“不揮発性メモリを有するアプリケーションユニットでは、異常発生からの復帰時に共有揮発性メモリから保持された通信ユニットでの異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみで前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込む”態様
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

しかしながら、補正後の請求項1及び請求項6は、その記載からして、それぞれ、「解析データ収集制御装置」及び「移動無線通信端末」が、

(a1)“通信部分の制御を行うCCPU”
(b1)“アプリケーション部分の制御を行うACPU”
(b2)“ACPUに接続され、CCPUとACPUの制御を行うためのプログラムを格納し、且つ、CCPU側とACPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリ”

を備えているものの、上記(a)の含む“CCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリを有する通信ユニット”、上記(b)の含む“ACPU並びに不揮発性メモリを有し、起動時にプログラムを通信ユニットに転送するアプリケーションユニット”を備える構成が含まれていないので、本件補正は、限定的減縮を目的とするものとは認められない。

同様に、補正後の請求項1及び請求項6は、その記載からして、それぞれ、「解析データ収集制御装置」及び「移動無線通信端末」が、

(c1)“ACPUは共有揮発性メモリからCCPU側の異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出して不揮発性メモリに保存する”態様

を含むことは読み取れるが、上記(c)の含む“アプリケーションユニットでは、共有揮発性メモリから保持された通信ユニットでの異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみでアプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込む”態様を含むことまでは読み取れないので、本件補正は、限定的減縮を目的とするものとは認められない。

また、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除、同条同項第3号の誤記の訂正、同条同項第4号の明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)を目的とするものに限られるものではない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

4.むすび

以上のように、本件補正は、上記「3.補正の目的要件」で指摘したとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成24年11月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年7月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末において、
通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリを有する通信ユニットと、
アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリを有し、起動時にACPU及びCCPU間のインターフェースでCCPUのプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリに転送するアプリケーションユニットと、
前記通信ユニット及び前記アプリケーションユニットで共有され、且つ、前記通信ユニットでの異常発生時に異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する共有揮発性メモリとを備え、
不揮発性メモリを有する前記アプリケーションユニットでは、異常発生からの復帰時に前記共有揮発性メモリから保持された異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみで前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする、異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

(1)引用文献1

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年4月26日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である、特開2007-316918号公報(平成19年12月6日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【要約】
【課題】2CPU構成の移動体通信端末において、異常時等におけるデバック効率、不具合解析の向上のための情報を保持する機能を実現する。
【解決手段】通信部分の制御を行うCCPU(Communication CPU)104とアプリケーション部分の制御を行うACPU(Application CPU)108の2つのCPUを備え、異常発生時には、ただちにROM111に情報の書き込みは行わず、異常からの復帰処理においてリセットが発生してもデータが保持されるCCPU内蔵RAM105のメモリ領域に一時的に保持しておき、異常からの復帰の再起動で、ACPUとCCPUがインタフェース(I/F)120を介して互いに情報の送受信が可能となった後に、CCPUの内蔵RAM105に一時保存された情報を、ACPUとCCPU間のインタフェース(I/F)120を介してACPU108側に送信し、ACPU108は、受け取った情報を、ROM111の予め決められたCCPUの情報格納領域に保存を行うように制御する。」

B 「【0001】
本発明は、情報通信装置に関し、特に、障害解析等に適用して好適な移動無線通信端末、方法、プログラムに関する。」

C 「【0030】
図1は、本発明の一実施例の構成を示す図である。図1には、移動無線端末の開発において、ソフトウェアやシステム動作の評価検証の開発者及び評価者の開発、評価効率向上や製品出荷後に不具合・不良が発生し市場より戻り時に不具合の解析を目的としたデバッグ機能を有する2つのCPUでプラットフォームを構成する2CPUアーキテクチャーを採用した移動無線通信端末の基本的な構成が示されている。なお、移動無線通信端末の基本構成は、広く事業者に知られている。通信部分の制御を行うCCPU(Communication CPU)側の通信ユニット100とアプリケーション部分の制御を行うACPU(Application CPU)側のアプリケーションユニット107の2つのCPUでプラットフォームを構成するアーキテクチャーは、一般に、「2CPU構成」と呼ばれる。ACPUとCCPU間はインタフェース(I/F)120(A-C間I/F)を介し互いにデータの送受信が可能である。」

D 「【0031】
通信ユニット100は、アンテナ101、無線部102、ベースバンド部103、RAM106を備えている。ベースバンド部103は、RAM105を内蔵したCCPU104を備えている。」

E 「【0035】
アプリケーションユニット107は、ACPU108、コーデック109、スピーカ113、マイク114、操作部115、表示部116、外部インタフェース117、電気的に書き換え可能なEEPROM等のROM111、RAM112を備えた記憶部110を備えている。
【0036】
本実施例では、CCPU側に通信制御を行うプログラムを記憶する不揮発性のメモリであるROMを持たず、ACPU側のROM111に、CCPU側のプログラム保持し、装置起動時に、ACPU108とCCPU104間のインタフェース(I/F)120を介して、ACPU108側のROM111からCCPU104側の揮発性メモリであるRAM106へ転送する。
【0037】
CCPU104は、RAM106に転送されたプログラムを実行することで、制御を行う。RAM106は、プログラムの格納の他にも、一時的にデータの格納が可能である。
・・・(中略)・・・
【0043】
記憶部110は、ACPU108で実行されるプログラムやデータを記憶し、ACPU108はプログラムに従い前記などの各部の制御を行っているという構成になっている。なお、記憶部110は、電源をOFFしてもデータが保持される不揮発性メモリであるROM111と、電源をOFFするとデータが失われる揮発性メモリであるRAM112で構成される。
【0044】
ROM111は、CCPU104で実行されるプログラムも保持する。また、ROM111は、装置電源OFFでも保持が要求される端末動作に必要な情報や、ユーザーデータ、及び、異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)を格納する。」

F 「【0049】
CCPU104側で異常が発生したとき(ステップS201)、CCPU104で該異常を検出した後に、異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報を、一時的に、CCPU104内蔵のRAM105に保存する(ステップS202)。なお、RAM105に保存する情報のデータフォーマットは、事前に、設計者によって規定しておく必要がある。そのデータフォーマットには、一時的に情報を内蔵RAM105に保存されているデータの有効/無効を示すフラグ(「異常情報格納フラグ」という)を設ける。」

G 「【0051】
異常からの復帰処理のため、システムリセットが行われる(ステップS203)。このリセット時にも、CCPU104の内蔵RAM105のデータは保持される。CCPU104内蔵のRAM105のデータ保持は、バッテリ等からの電源供給が停止されると、破壊され、保持されない。したがってリセット時(ブート処理時)にも、内蔵RAM105には電源が供給され、内蔵RAM105の初期化によるクリアは行われず、リフレッシュも行われ、リセット前のデータが保持される。
・・・(中略)・・・
【0058】
CCPU104は、内蔵RAM105に一時的に格納されている情報を読み出し(ステップS208)、読み出されたデータを、インタフェース(I/F)120を介してACPU108へ送信する(ステップS209)。
【0059】
ACPU108は、CCPU104から送信され、インタフェース(I/F)120を介して受信したデータを、ACPU108側のROM111内の、CCPU104に対応して割り当てられた情報格納領域に、書き込み保存する(ステップS210)。ACPU108は、書き込み保存処理が完了すると、CCPU104に書き込み完了通知を送信する(ステップS210)。」

ここで、上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「2CPU構成の移動体通信端末において、異常時等におけるデバック効率、不具合解析の向上のための情報を保持する機能を実現する」との記載、上記Cの「図1は、本発明の一実施例の構成を示す図・・・図1には・・・不具合の解析を目的としたデバッグ機能を有する2つのCPUでプラットフォームを構成する2CPUアーキテクチャーを採用した移動無線通信端末の基本的な構成が示されている」との記載、上記Bの「本発明は、情報通信装置に関し、特に、障害解析等に適用して好適な移動無線通信端末・・・に関する」との記載からすると、引用文献1には、
“2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常時におけるデバッグや不具合解析のための情報を保持する移動無線通信端末”
が記載されている。

(イ)上記Cの「通信部分の制御を行うCCPU(Communication CPU)側の通信ユニット100」との記載、上記Dの「通信ユニット100は・・・ベースバンド部103、RAM106を備えている」、「ベースバンド部103は、RAM105を内蔵したCCPU104を備えている」との記載、上記Eの「揮発性メモリであるRAM」、「CCPU104は、RAM106に転送されたプログラムを実行することで、制御を行う」との記載からすると、引用文献1の「移動無線通信端末」が、
“通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリであるRAMを有する通信ユニット”
を備える態様が記載されている。

(ウ)上記Cの「アプリケーション部分の制御を行うACPU(Application CPU)側のアプリケーションユニット107」との記載、上記Eの「アプリケーションユニット107は、ACPU108・・・電気的に書き換え可能なEEPROM等のROM111・・・を備えた記憶部110を備えている」、「本実施例では、CCPU側に通信制御を行うプログラムを記憶する不揮発性のメモリであるROMを持たず、ACPU側のROM111に、CCPU側のプログラム保持し、装置起動時に、ACPU108とCCPU104間のインタフェース(I/F)120を介して、ACPU108側のROM111からCCPU104側の揮発性メモリであるRAM106へ転送する」、「記憶部110は、ACPU108で実行されるプログラムやデータを記憶し、ACPU108はプログラムに従い前記などの各部の制御を行っているという構成になっている」、「ROM111は、CCPU104で実行されるプログラムも保持する」、「ROM111は・・・異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)を格納する」との記載からすると、引用文献1の「移動無線通信端末」が、
“アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)を保持する不揮発性メモリであるROMを有し、起動時にACPUとCCPUのインタフェースを介してCCPU側のプログラムを通信ユニットの揮発性メモリであるRAMに転送するアプリケーションユニット”
を備える態様が記載されている。

(エ)上記(イ)における検討内容、上記Fの「CCPU104で該異常を検出した後に、異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報を、一時的に、CCPU104内蔵のRAM105に保存する」との記載からすると、引用文献1の「移動無線通信端末」が、
“通信ユニットで異常を検出した後に、異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報を一時的に保持する揮発性メモリであるCCPU内蔵のRAM”
を備える態様が記載されている。

(オ)上記(エ)における検討内容、上記Gの「異常からの復帰処理のため、システムリセットが行われる・・・CCPU104は、内蔵RAM105に一時的に格納されている情報を読み出し・・・読み出されたデータを、インタフェース(I/F)120を介してACPU108へ送信する・・・ACPU108は、CCPU104から送信され、インタフェース(I/F)120を介して受信したデータを、ACPU108側のROM111内・・・に、書き込み保存する」との記載からすると、引用文献1には、「移動無線通信端末」が、
“通信ユニットのCCPUは、異常からの復帰時に、揮発性メモリであるCCPU内蔵のRAMに一時的に格納されている情報を読み出し、読み出されたデータをアプリケーションユニットのACPUに転送し、ACPUは、受信したデータをACPU側の不揮発性メモリであるROMに書き込む”
態様が記載されている。

以上、(ア)ないし(オ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常時におけるデバッグや不具合解析のための情報を保持する移動無線通信端末において、
通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリであるRAMを有する通信ユニットと、
アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)を保持する不揮発性メモリであるROMを有し、起動時にACPUとCCPUのインタフェースを介してCCPU側のプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリであるRAMに転送するアプリケーションユニットと、
前記通信ユニットで異常を検出した後に、異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報を一時的に保持する揮発性メモリであるCCPU内蔵のRAMとを備え、
前記通信ユニットのCCPUは、異常からの復帰時に、揮発性メモリであるCCPU内蔵のRAMに一時的に格納されている情報を読み出し、読み出されたデータを前記アプリケーションユニットのACPUに転送し、ACPUは、受信したデータをACPU側の不揮発性メモリであるROMに書き込むことを特徴とする移動無線通信端末。」

(2)引用文献2

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年4月26日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である、特開2004-310514号公報(平成16年11月4日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

H 「【請求項1】
2つ以上のCPUを備えた情報処理端末において、
CPUが通常動作時にはその管理下においたメモリに、該CPUが処理する動作を履歴情報として記録する手段と、
CPUの処理に異常が発生した場合、この異常発生を異常が発生していないCPUに通知する手段と、
異常の発生したCPU側が記録していた履歴情報を、異常の発生していないCPU側で読み出し、該読み出した履歴情報を、異常の発生していないCPUが管理するメモリに記録させる手段とを、
備えたことを特徴とする情報処理端末。」

J 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報処理端末および履歴情報保存方法に係り、特に、2つ以上のCPUを備えた情報処理端末における、異常発生時の履歴情報保持を実現するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話などの情報処理端末の多機能化が進み、インターネットやEメール、JAVA(登録商標)などの機能が利用可能となるなど、パソコン等と同様の操作性、高機能が実現されつつあり、日常生活に欠かせないものとなりつつある。」

K 「【0006】
本発明の目的は、異常動作が発生するまでにCPUがどのように動作してきたのか、および、どのような異常が発生したのかを、メモリに履歴情報として時系列的に保存しておき、異常発生のタイミングで、履歴情報を異常とは無関係な個所に設けられた別のメモリに退避させ、履歴情報を安全に保護する仕組みを提供することにある。」

上記HないしKの記載からすると、引用文献2には、以下の技術が記載されているということができる。

“2つ以上のCPUを備えた携帯電話などの情報処理端末において、異常発生時に、異常の発生したCPU側の履歴情報を、異常の発生していないCPUが管理するメモリに記録させる”技術

(3)引用文献3

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年4月26日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である、特開2001-125806号公報(平成13年5月11日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面(特に、図1)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

L 「【0036】ここで、CPU11が暴走しない程度の障害がCPU11に発生した際には、CPU11がリセットパルスを出力しないため、タイマ13aがタイムアウトする。そして、タイマ13aがタイムアウトすると、CPU11に障害を発生したという通知フラグをウォッチドッグタイマ13が共有メモリ30に書き込むとともに、障害の要因を検出するようにCPU11に例外処理信号を出力する。そして、CPU11は、例外処理12に従って障害が発生した発生アドレスやスタックポインタアドレス等の障害要因を検出して、共有メモリ30に書き込む。
【0037】そして、CPU21は共有メモリ30に書き込まれた障害要因及び通知フラグを読み込み、CPU11に障害が発生したことを検出する。そして、CPU21は共有メモリ30から読み込んだ障害要因に基づいて制御プログラムを実行させる。」

(4)引用文献4

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年4月26日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である、特開2007-334403号公報(平成19年12月27日出願公開。以下、「引用文献4」という。)には、図面(特に、図1)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

M 「【要約】
【課題】 CPU上で同種または異種のOSが並列動作する実行環境で、CPU又はOSで障害が発生すると、OS側でメモリダンプの内容を共有メモリ上に退避した後、直ちに障害発生OSの再起動を行なうことにより、障害発生時のシステム再開時間を短縮することを目的とする。
【解決手段】 第1のCPU又は第1のOSにより障害発生が検出されると、第2のOSが障害発生時の第1のCPUのレジスタ情報と、第1のOSのメモリダンプ内容とを共有メモリに書き込み、第2のOSが共有メモリに書き込まれたレジスタ情報とメモリダンプ内容とを二次記憶装置に保存し、レジスタ情報とメモリダンプ内容とが共通メモリに書き込まれると第1のOSが直ちに再起動をする。」

3.本願発明と引用発明との対比

(1)引用発明の「異常時におけるデバッグや不具合解析のための情報」は、異常時の解析を行うためのデータといえるから、本願発明の「異常発生時における解析データ」に相当する。また、引用発明の「移動無線通信端末」も、異常時における情報を収集して保持する等の制御を行うものである。
してみると、引用発明の「2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常時における情報を保持する移動無線通信端末」は、本願発明の「2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末」に相当する。

(2)引用発明の「揮発性メモリであるRAM」は、本願発明の「揮発性メモリ」に相当する。
してみると、引用発明の「通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリであるRAMを有する通信ユニット」は、本願発明の「通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリを有する通信ユニット」に相当する。

(3)引用発明の「不揮発性メモリであるROM」及び「インタフェース」は、それぞれ、本願発明の「不揮発性メモリ」及び「インターフェース」に相当する。また、引用発明の「異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)」と、本願発明の「異常発生の履歴情報であるデバッグデータ」は、“異常を解析するための情報”である点で共通する。
してみると、引用発明の「アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)を保持する不揮発性メモリであるROMを有し、起動時にACPUとCCPUのインタフェースを介してCCPU側のプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリであるRAMに転送するアプリケーションユニット」と、本願発明の「アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する不揮発性メモリを有し、起動時にACPU及びCCPU間のインターフェースでCCPUのプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリに転送するアプリケーションユニット」とは、“アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常を解析するための情報を保持する不揮発性メモリを有し、起動時にACPU及びCCPU間のインターフェースでCCPUのプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリに転送するアプリケーションユニット”である点で共通する。

(4)引用発明の「異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報」は、“異常を解析するための情報”といえるものである。
してみると、引用発明の「前記通信ユニットで異常を検出した後に、異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報を一時的に保持する揮発性メモリであるCCPU内蔵のRAM」と、本願発明の「前記通信ユニット及び前記アプリケーションユニットで共有され、且つ、前記通信ユニットでの異常発生の履歴情報であるデバッグデータを保持する共有揮発性メモリ」とは、“前記通信ユニットでの異常発生時に異常を解析するための情報を保持する揮発性メモリ”を備える点で共通する。

(5)そして、引用発明の「前記通信ユニットのCCPUは、異常からの復帰時に、揮発性メモリであるCCPU内蔵のRAMに一時的に格納されている情報を読み出し、読み出されたデータを前記アプリケーションユニットのACPUに転送し、ACPUは、受信したデータをACPU側の不揮発性メモリであるROMに書き込むこと」と、本願発明の「不揮発性メモリを有する前記アプリケーションユニットでは、異常発生からの復帰時に前記共有揮発性メモリから保持された異常発生の履歴情報であるデバッグデータを読み出してACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみで前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込むこと」とは、“異常発生からの復帰時に、前記揮発性メモリに保持された異常を解析するための情報を読み出して前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込むこと”である点で共通する。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「2つのCPUで構成されるプラットフォームの異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末において、
通信部分の制御を行うCCPU及びCCPUの制御を行うプログラムを保持する揮発性メモリを有する通信ユニットと、
アプリケーション部分の制御を行うACPU並びにACPU及びCCPUの制御を行うプログラム、異常を解析するための情報を保持する不揮発性メモリを有し、起動時にACPU及びCCPU間のインターフェースでCCPUのプログラムを前記通信ユニットの揮発性メモリに転送するアプリケーションユニットと、
前記通信ユニットでの異常発生時に異常を解析するための情報を保持する揮発性メモリとを備え、
異常発生からの復帰時に、前記揮発性メモリに保持された異常を解析するための情報を読み出して前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込むことを特徴とする、異常発生時における解析データ収集制御を行う移動無線通信端末。」

(相違点1)

異常を解析するための情報に関して、本願発明が、「異常発生の履歴情報であるデバッグデータ」であるのに対して、引用発明は、「異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)」あるいは「異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報」である点。

(相違点2)

異常を解析するための情報を保持する揮発性メモリに関して、本願発明が、「前記通信ユニット及び前記アプリケーションユニットで共有され」る「共有揮発性メモリ」であるのに対して、引用発明は、揮発性メモリであるCCPU内蔵のRAMであるが、当該CCPU内蔵のRAMがアプリケーションユニットから共有されるかどうか不明である点。

(相違点3)

異常発生からの復帰時における異常を解析するための情報の制御に関して、本願発明が、「ACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみで前記アプリケーションユニットの不揮発性メモリに書き込む」ものであるのに対して、引用発明は、「前記通信ユニットのCCPU」が「揮発性メモリであるRAMに一時的に格納されている情報を読み出し、読み出されたデータを前記アプリケーションユニットのACPUに転送し、ACPUは、受信したデータをACPU側の不揮発性メモリであるROMに書き込む」ものである点。

4.判断

上記相違点1ないし相違点3について検討する。

(1)相違点1について

異常発生時に、異常を解析するために履歴情報を保持することは、例えば、引用文献2の上記Kにおいても「異常動作が発生するまでにCPUがどのように動作してきたのか、および、どのような異常が発生したのかを、メモリに履歴情報として時系列的に保存しておき、異常発生のタイミングで、履歴情報を異常とは無関係な個所に設けられた別のメモリに退避させ、履歴情報を安全に保護する仕組みを提供する」と記載されるように、情報処理の技術分野における常とう手段である。
そして、引用文献1に「異常時におけるデバッグや不具合解析のための情報を保持する移動無線通信端末」と記載されるように、引用発明における「異常情報(異常発生時のソフトウェアの状態や異常発生要因等)」あるいは「異常発生時の要因やソフトウェアの動作状態やソフトウェアやシステム動作の評価検証に必要な情報」は、異常時におけるデバッグや不具合解析のために必要となる情報である。
してみると、引用発明においても、異常を解析するために必要となる情報として、「異常発生の履歴情報であるデバッグデータ」を使用すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(2)相違点2及び相違点3について

引用文献2(上記H及びJ等参照)に記載されるように、“2つ以上のCPUを備えた携帯電話などの情報処理端末において、異常発生時に、異常の発生したCPU側の履歴情報を、異常の発生していないCPUが管理するメモリに記録させる”技術(すなわち、“異常の発生したCPU側の履歴情報を、当該CPUの外部にあるメモリに記録させる”技術)は、本願出願時において周知技術であった。
また、引用文献3(上記L参照)や引用文献4(上記M参照)に記載されるように、複数のCPUを備えた装置において障害が発生した際に、障害が発生したCPU側の情報を、当該障害が発生したCPUの外部にある共有メモリに保存することも、当該技術分野において、慣用的に行われていた周知技術であった。
そして、共有メモリがCPU間のデータ送受信に好適であることは、当該技術分野における技術常識に他ならない。
してみると、揮発性メモリであるRAMから不揮発性メモリであるROMに異常を解析するための情報を転送する引用発明においても、異常を解析するための情報を一時的に保持する揮発性メモリとして、データ送受信に好適である共有揮発性メモリに保持するように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、上記引用文献3(上記L参照)や引用文献4(上記M参照)には、共有メモリに書き込まれたデータを、障害が発生していない側のCPUが読み出す処理が記載されているが、当該処理が、障害が発生した側のCPUの処理を要することなく障害が発生していない側のCPUの処理のみで実現できることは、当業者に自明である。また、その際に、障害が発生した側の装置のインターフェースを介さずに当該処理を行うことができることも、当業者に自明である。
してみると、引用発明において、異常を解析するための情報を一時的に保持する揮発性メモリとして、データ送受信に好適である共有揮発性メモリに保持するように構成した場合に、当該共有揮発性メモリに格納されている異常を解析するための情報を読み出してACPU側の不揮発性メモリであるROMに書き込む処理を、ACPU及びCCPU間のインターフェースを介さずACPUの処理のみで行うように構成すること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2及び相違点3は格別なものではない。

(3)小括

上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点3は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび

以上のとおり、本願の請求項6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-25 
結審通知日 2014-06-26 
審決日 2014-07-08 
出願番号 特願2008-40087(P2008-40087)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多賀 実  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 田中 秀人
辻本 泰隆
発明の名称 異常発生時における解析データ収集制御装置、方法、プログラム及び移動無線通信端末  
代理人 浅野 雄一郎  

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