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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1291094 |
審判番号 | 不服2012-9523 |
総通号数 | 178 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-23 |
確定日 | 2014-08-22 |
事件の表示 | 特願2008-323894「錠剤の被膜形成方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年7月1日出願公開,特開2010-143870〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成20年12月19日の出願であって,平成24年1月4日付けの拒絶理由通知書に対して,その指定期間内である同月31日付けで手続補正がなされたが,同年4月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 2.平成24年5月23日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年5月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 平成24年5月23日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)は特許請求の範囲の記載を補正するものであって,その内容は補正前の請求項1の記載(すなわち,平成24年1月31日付け手続補正書の請求項1の記載)である 「【請求項1】 撹拌容器に錠剤群を供給する投入工程と, 混合動作中の撹拌容器に前記錠剤群の量に応じたコーティング剤を供給する被覆工程と, 被覆工程を経た錠剤群の湿気を取る乾燥工程からなり, 前記被覆工程は,泡状のコーティング剤を混合動作中の撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に供給するものであって,撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し,一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する錠剤の被膜形成方法。」を, 「【請求項1】 撹拌容器に錠剤群を供給する投入工程と, 混合動作中の撹拌容器に前記錠剤群の量に応じたコーティング剤を供給する被覆工程と, 被覆工程を経た錠剤群の湿気を取る乾燥工程からなり, 前記被覆工程は,泡状のコーティング剤を混合動作中の撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に前記錠剤群の表面へ供給するものであって,撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し,一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する錠剤の被膜形成方法。」と補正するものである。 すなわち,該補正は,請求項1における発明を特定するために必要な事項である「滞留する様に供給するものであって」を「滞留する様に前記錠剤群の表面へ供給するものであって」と限定するものであって,特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。 (2)独立特許要件について 上記のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであるので,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満足するか否か,すなわち,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (2-1)補正後の請求項1に係る発明 「【請求項1】 撹拌容器に錠剤群を供給する投入工程と, 混合動作中の撹拌容器に前記錠剤群の量に応じたコーティング剤を供給する被覆工程と, 被覆工程を経た錠剤群の湿気を取る乾燥工程からなり, 前記被覆工程は,泡状のコーティング剤を混合動作中の撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に前記錠剤群の表面へ供給するものであって,撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し,一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する錠剤の被膜形成方法。」(以下,「補正発明」という。) (2-2)刊行物及びその記載事項 この出願の日前に頒布されたことが明らかな刊行物である特表2005-505547号公報(原審での引用文献1;以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がされている。 (1a) 「【請求項1】 固体粒子を被覆する方法であって,次の工程すなわち a)気体をi)ポリマーおよびii)液体希釈剤を含む流体組成物と接触させて泡沫を生成させ,そして b)生成された泡沫を固体粒子と接触させかつ該粒子を掻き混ぜて,これらの固体粒子上に被膜を与える 工程を含む方法。」 (1b) 「【背景技術】 【0002】 被膜は,一般に,製薬形態のような固体粒子に,成分を大気から保護するために,不快な味および臭いを遮蔽するために,飲み込むのを楽にするために,着色および印刷を与えるだけでなく外観を改善するために施用される。 【0003】 メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが,製薬形態用の被覆材料として長年用いられている。米国特許第3,431,138号明細書は,これらの被膜が粘着性で,凹凸があり,また被覆後に広範な磨き仕上げを必要とすることを開示する。これらの問題を解決するために,この米国特許明細書は,50から60重量パーセントのエタノール,35から45重量パーセントのクロロホルムおよび2から5重量パーセントの低粘度メチルセルロースを含む被覆用組成物を示唆する。該米国特許明細書の発行以来,被覆技術は進歩しており,そして高品質被膜がクロロホルムの使用なしに得られ得る。今日では,メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースは水または水とアルコールの混合物中に溶解され,そして掻き混ぜられている一群の製薬形態上に噴霧される。かかる噴霧技法は,明確に定められた加工パラメーターおよび全く複雑な装置を必要とする精巧な方法である。更に,メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースの溶液の粘度は,それらが依然として噴霧可能であるのに十分に低くなければならない。 【0004】 米国特許第3,607,364号明細書は,被覆媒質を十分に霧状にするために必要とされる高圧のような,製薬固体形態の噴霧被覆の不利な点を詳細に論考する。これらの問題を解決するために,米国特許第3,607,364号明細書は,製薬固体形態を被覆する方法において,発泡された粘稠な糖媒質を固体表面に施用し,次いでこの被覆媒質を固体形態表面に押しつけて泡沫を破壊しかつ固体形態表面上に被覆媒質の凹凸のない被覆層を生成させる方法を開示する。残念なことに,それらの実施例は,この方法が多くの作業および時間を必要とすることを示している。上品質の被覆タブレットを得るために,15から20層の被覆層が必要とされた。 【0005】 米国特許第4,965,089号明細書は,カプレットをゼラチンで被覆するための方法および装置に関する。液状ゼラチン組成物を丸剤に施用する2つの主要な方法がある。第1の方法は,丸剤またはタブレットを浸漬過程中保持することである。残念なことに,長い加工時間および製品のバラツキの難点がある効率の悪い浸漬法をもたらすために,全く精巧で高価な装置が必要である。第2の方法は,丸剤をタンブル(「混転」)しながら被覆剤を丸剤上に噴霧することである。 【0006】 先行技術方法の欠陥に鑑みて,本発明の目的は,固体粒子を被覆する新規な方法を提供することである。」 (1c) 「【0009】 有用なポリマーの他の例は,エチレンイミン,アクリル酸もしくはその塩のような不飽和酸,アクリルアミドのような不飽和アミド,ビニルアルコールのようなビニルポリマー,ビニルアセテートのようなビニルエステル,ビニルピロリドン,ビニルオキサゾリドン,ビニルメチルオキサゾリドン,エチレンスルホン酸,ビニルアミン,ビニルピリジン,アルキルグリコール,ポリエチレンオキシドのようなポリアルキレンオキシドまたはオキシエチレンアルキルエーテルのホモまたはコポリマーである。 【0010】 好ましいポリマーは,セルロースエステルまたはセルロースエーテルである。好ましいセルロースエステルは,カルボキシメチルセルロースのようなカルボキシ-C_(1)?C_(3)アルキルセルロース,またはカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースのようなカルボキシ-C_(1)?C_(3)アルキルヒドロキシ-C_(1)?C_(3)アルキルセルロースである。好ましくは,セルロースエーテルは,メチルセルロースのようなC_(1)?C_(3)アルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはエチルヒドロキシエチルセルロースのようなC_(1)?C_(3)アルキルヒドロキシ-C_(1-3)アルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシ-C_(1-3)アルキルセルロース;ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースのような混合ヒドロキシ-C_(1)?C_(3)アルキルセルロース;またはアルコキシ基が直鎖状もしくは分枝状でかつ2から8個の炭素原子を含有するところの,アルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースである。」 (1d) 「【0020】 生成された泡沫は,不連続気相好ましくは空気相と,少なくともポリマーおよび結合液体を含む連続流体相好ましくは水性相とを含む。一般に,気泡のラメラまたは流体膜は,ポリマーの存在に因り粘稠である。流体膜がセルロースエーテルのような親水性ポリマーを含む場合,水は,気泡のラメラ中に保留される。ラメラからの液体の排液は,最小にされ,減少されまたは防がれる。かかる泡沫は,当該技術において「非排液性泡沫」と称される。工程a)において生成された泡沫は,一般に約1マイクロメートルから約2,000マイクロメートル好ましくは約5マイクロメートルから約1,000マイクロメートル一層好ましくは約10マイクロメートルから約300マイクロメートルの範囲の平均気泡直径を有する。泡沫直径の測定は一般に泡沫の動的性質に鑑みてあまり正確でない,ということが理解されるべきである。驚くべきほど高い泡沫品質が,特に泡沫を生成させるために用いられる流体組成物中のポリマーi)がセルロースエーテルである場合達成され得る,ということが見出された。泡沫品質FQは,大気圧および25℃においてパーセントにて与えられ,そして次のように定義される。すなわち, FQ=[気体の容積/(気体の容積+流体の容積)]×100。 【0021】 泡沫品質は,大気圧および25℃にて所与容積の流体から生成される泡沫容積を測定することにより測定され得る。本発明の方法の工程a)において,一般に52から99.9パーセント好ましくは65から99.9パーセント一層好ましくは85から99パーセントの泡沫品質を有する泡沫が生成される。かかる高い泡沫品質は,「非排液性泡沫」について驚きである。」 (1e) 「【0023】 本発明の方法の工程b)において,工程a)において生成された泡沫が固体粒子と接触されかつ該粒子は掻き混ぜられて,これらの固体粒子上に被膜を与える。固体粒子は,好ましくは0.01から100mm一層好ましくは0.1から30mm最も好ましくは1から25mmの平均直径を有する。本発明の方法は,薬物を含有する固体粒子を被覆するために特に有用であり,しかしてこれは,固体製薬形態について,好ましくはタブレット,顆粒,ペレット,カプレット,カプセル,ロゼンジ,坐剤,膣坐剤および植込み型投薬形態を意味する。固体粒子は,製薬賦形剤たとえばラクトース,リン酸二カルシウム,微結晶性セルロース,糖,無機物,セルロース粉末,崩壊剤,結合剤,滑沢剤,着色剤,香味料またはそれらの組合わせのような公知成分を含み得る。 【0024】 泡沫と固体粒子の間の重量比は,一般に1:20から1:0.002好ましくは1:10から1:0.01一層好ましくは1:5から1:0.1である。これらの比率は,固体の平均粒子サイズに応じて当業者により変動され得る。泡沫と固体粒子は,上記のポリマーi)の量が固体粒子の重量を基準として好ましくは0.01から20一層好ましくは0.05から15最も好ましくは0.075から10パーセントになるような比率にて接触される。 【0025】 固体粒子は,被覆工程b)において,混転され,泡沫に浸漬されまたはそうでなければ移動されるように,掻き混ぜられる。粒子の掻き混ぜは,粒子と泡沫との接触の前,中または後に開始され得る。しかしながら,粒子の掻き混ぜは,好ましくは,泡沫が粒子に添加される前に開始されそして泡沫の添加中続行される。一層好ましくは,工程b)において,泡沫は,連続的に掻き混ぜられている固体粒子に添加される。 【0026】 工程b)は,公知の被覆装置にて,たとえばタンブラー,多孔側板ベント式コーティングパン,ウルスターカラム挿入型流動床装置,低剪断ブレンダーまたは任意の構成の連続被覆装置にて行われ得る。好ましくは,泡沫は,掻き混ぜられている固体粒子に連続的にまたは半連続的に添加される。泡沫は,端部が固体粒子の一群に接近してまたは該一群中に置かれる単純管により,固体粒子に添加され得る。」 (1f) 「【0027】 本発明の方法によれば,固体粒子上の一定厚さの驚くべきほど平滑な被膜が達成される。通常5層までの被覆層,たいていの場合わずか3層までの被覆層,典型的にはそれどころか1から2層の被覆層が,一定の厚さおよび良好な光沢度を有する光沢のある平滑な被膜を与えるのに十分である。更に,単純管のような単純装置が,泡沫を固体粒子に施用するために用いられ得る。固体粒子上に液体の微細液滴を吹き付けるために通常用いられるところの,メンテナンス集約型の高価で複雑な霧状化装置は必要でない。 【0028】 更に,本発明の方法は,被覆装置における混転または他の運動のような機械的応力に感受性である固体粒子について特に有用である。泡沫は被覆工程b)中固体粒子に対して緩衝効果を有し,そして従って被覆工程中固体粒子の損傷を減少するのを助ける。 【0029】 更に,本発明の方法は非常に融通がきき,先行技術の噴霧または霧状化技法を用いての被覆方法ほど多数のプロセスパラメーターにより制限されない。たとえば,本発明の方法は,香味料,油または着色剤のような非水性および混合水性/非水性被覆剤を固体粒子に施用するために有用である。更に,施用被覆剤の粘度に対する制限はない。公知の噴霧技法とは対照的に,高粘性被覆剤が,本発明の方法により固体粒子に施用され得る。更に,本発明の方法において,微細な固体粒子さえ発泡された被覆用組成物中に含められ得,そして噴霧ノズルを閉塞する危険なしに,被覆されるべき粒子に施用され得る。更に,本発明の方法は,先行技術の噴霧または霧状化技法の場合より多様な粒子形状を凹凸なく被覆するために有用である。更に,不混和性着色剤の配合物を含む発泡組成物の施用により,多色被膜が達成され得る。」 (1g) 「【実施例】 【0031】 実施例1 A)被覆されるべきタブレットの製造 偽薬タブレットを,FMC Corporationから商標Avicel PH102下で商業的に入手できる微結晶性セルロース20重量パーセント,DMV International Pharma and Foremost Farms USAから名称FFL-316下で商業的に入手できるファストフローラクトース79.5重量パーセントおよびステアリン酸マグネシウム0.5重量パーセントから製造する。この組成物を圧縮して,0.5インチ(13mm)の直径の標準?凹状タブレットにする。 … 【0034】 C)タブレットの被覆 工程B)において生成された泡沫を,工程A)において製造されたタブレットに,Hi-Coater(米国アイオワ州マリアンのVector Corporation)にて施用する。泡沫はタブレットに,凹凸のない被膜が達成されるまで混転しながら施用される。光沢のある均一な被膜が,おおよそ1パーセントの重量増加でもって達成される。 【0035】 実施例2 偽薬タブレットを,実施例1の工程A)においてように製造する。水95重量パーセント中の粉末組成物5重量パーセントの水性分散体を作製する。該粉末組成物はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み,そしてColorcon(米国ペンシルベニア州ウェストポイント)製の商標Opadry Pink(YS-1-1232)下で商業的に入手できる。この水溶液から,実施例1の工程B)およびC)においてのように,泡沫を作製しそしてタブレットに施用する。光沢のある均一な被膜が,おおよそ0.75パーセントの重量増加でもって達成される。」 (2-3)刊行物1に記載の発明 刊行物1には,その請求項1の記載(上記摘示(1a))から見て,次の発明が記載されているものといえる。 「固体粒子を被覆する方法であって,次の工程すなわち a)気体をi)ポリマーおよびii)液体希釈剤を含む流体組成物と接触させて泡沫を生成させ,そして b)生成された泡沫を固体粒子と接触させかつ該粒子を掻き混ぜて,これらの固体粒子上に被膜を与える 工程を含む方法。」(以下,「引用発明」という。) (2-4)対比 ア 最初に,以後の対比及び検討の前提として,引用発明に関する技術意義について確認しておく。 刊行物1には,引用発明の背景技術に関する記載として,上で摘示した【0002】?【0006】(摘示(1b))の記載がなされているが,殊に該刊行物1に記載の効果との関連において,大要次のことが記載されているものである。 (i)先行技術の問題点として,例えば, 「メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを水または水とアルコールの混合物中に溶解し,そして掻き混ぜられている一群の製薬形態上に噴霧する方法は,明確に定められた加工パラメーターおよび全く複雑な装置を必要とする精巧な方法である」(【0003】)ことや, 「被覆媒質を十分に霧状にするために必要とされる高圧のような,製薬固体形態の噴霧被覆の不利な点を解決するために,製薬固体形態を被覆する方法において,発泡された粘稠な糖媒質を固体表面に施用し,次いでこの被覆媒質を固体形態表面に押しつけて泡沫を破壊しかつ固体形態表面上に被覆媒質の凹凸のない被覆層を生成させる方法は,多くの作業および時間を必要とするもので,上品質の被覆タブレットを得るために,15から20層の被覆層が必要とされる」(【0004】) ことなどを踏まえて,引用発明はなされたものと理解される。 (ii)要するに,掻き混ぜられている製剤上にコーティング溶液を噴霧する方法に伴う,パラメーター設定の困難さや複雑な装置を必要とすることを回避し,更には,発泡された粘稠な糖媒質を固体表面に施用し,次いでこの被覆媒質を固体形態表面に押しつけて泡沫を破壊して固体形態表面上に被覆媒質の凹凸のない被覆層を生成させる方法に伴う,多くの作業や時間を軽減化するために,引用発明,すなわち, 「ポリマーと液体希釈剤を含むコーティング溶液(流体組成物)を気体と接触させて生成させた泡沫を,固体粒子と接触させかつ掻き混ぜることにより固体粒子上に被膜を形成させる方法」 を発明したものと理解される。 (iii)そして,その結果として,【0027】?【0029】に記載の効果,すなわち,例えば, 「固体粒子上の一定厚さの驚くべきほど平滑な被膜が達成される。通常5層までの被覆層,たいていの場合わずか3層までの被覆層,典型的にはそれどころか1から2層の被覆層が,一定の厚さおよび良好な光沢度を有する光沢のある平滑な被膜を与えるのに十分である。」(摘示(1f)の【0027】) といった,従来方法の1つである,発泡された粘稠な糖媒質を使用する方法に対する効果や, 「単純管のような単純装置が,泡沫を固体粒子に施用するために用いられ得る。固体粒子上に液体の微細液滴を吹き付けるために通常用いられるところの,メンテナンス集約型の高価で複雑な霧状化装置は必要でない。」(摘示(1f)の【0027】)及び 「本発明の方法は非常に融通がきき,先行技術の噴霧または霧状化技法を用いての被覆方法ほど多数のプロセスパラメーターにより制限されない。」(摘示(1f)の【0029】) などの,別の従来方法である,製薬固体形態を噴霧被覆する方法に対する効果を示すことが記載されているものである。 イ 以上の事項を踏まえて,以下,引用発明と補正発明を対比する。 引用発明における「固体粒子」は,例えば,刊行物1の実施例1では, 「0.5インチ(13mm)の直径の標準?凹状タブレット」(摘示(1g)の【0031】) が使用されていることから,補正発明でいう「錠剤」に相当するし,また,引用発明の「ポリマー」は,刊行物1で例示されている成分(摘示(1c))及びその使用形態から見ても,この分野で一般に『コーティング』に使用されているものと理解され,引用発明では,該ポリマーを,a)工程で気体及び液体希釈剤とともに『泡沫』とした後に上記固体粒子と接触させていることから,該『泡沫』は,補正発明の「泡状のコーティング剤」に相当する。 したがって,両発明は,被覆工程において,泡状のコーティング剤を錠剤に接触させて被膜を形成させる点で,基本的に共通するものである。 さらに,刊行物1の【0026】には 「…泡沫は,端部が固体粒子の一群に接近してまたは該一群中に置かれる単純管により,固体粒子に添加され得る。」(摘示(1e)) といった表現が見られることから,引用発明では,固体粒子を『群』として取り扱うことが理解され,更に,泡沫が添加されるところについては,「接近して」又は「群中と」という二通りが示されているが,何れであったとしても泡沫を「固体粒子の一群へ添加する」ものであるといえることには相違ないものである。そして,同【0025】には, 「…粒子の掻き混ぜは,好ましくは,泡沫が粒子に添加される前に開始され…」(摘示(1e)) とも記載されていることから,補正発明の「混合動作中の撹拌容器に…コーティング剤を供給する被覆工程」という点でも,また同様に「被覆工程は,泡状のコーティング剤を混合動作中の…前記錠剤群…へ供給するもの」という点でも,引用発明は補正発明と一致するものである。なお,当然のことながら,粒子の掻き混ぜが泡沫の添加前に開始されることの前提として,泡沫が添加される(被覆工程の)前段階で固体粒子群が撹拌容器に投入されていることは明らかである。 以上のことから,補正発明と引用発明とは, 「撹拌容器に錠剤群を供給する投入工程と, 混合動作中の撹拌容器にコーティング剤を供給する被覆工程と, 前記被覆工程は,泡状のコーティング剤を混合動作中の前記錠剤群へ供給するものである錠剤の被膜形成方法。」 の点で一致し,次の点で相違している。 [相違点1] コーティング剤を供給する被覆工程において,補正発明が「前記錠剤群の量に応じた(コーティング剤を供給する)」としているのに対し,引用発明では,この点について格別明記していないこと。 [相違点2] 補正発明が「被覆工程を経た錠剤群の湿気を取る乾燥工程からなり」としているのに対し,引用発明では,このような乾燥工程がないこと。 [相違点3] 泡状のコーティング剤を混合動作中の前記錠剤群へ供給する被覆工程において,補正発明では, 「撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に前記錠剤群の表面へ供給するものであって,撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し,一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する」と特定されているのに対して,引用発明ではそのような記載がないこと。 (2-5)検討 上記相違点について,以下順次検討する。 ア [相違点1]について 刊行物1には,固体粒子の被覆工程である工程b)において,泡沫と固体粒子の間の重量比に関して,その【0024】に, 「泡沫と固体粒子は,上記のポリマーi)の量が固体粒子の重量を基準として…パーセントになるような比率にて接触される。」(摘示(1e)) と記載されており,ここでいう『接触』とは,被覆工程における,泡沫と固体粒子との「接触」を意味するものであるから,刊行物1【0024】の上記記載は,被覆工程では,被覆装置中の固体粒子の量に応じた量の泡沫が添加されることを意味するものといえる。 したがって,引用発明において,刊行物1の上記記載に基づいて,「固体粒子(錠剤群)の量に応じた泡沫(コーティング剤)を供給する」ことは,当業者が容易になし得ることである。 イ [相違点2]について 一般に,被覆工程を経た錠剤は,湿気を除くために必要に応じて乾燥工程を設けることは周知技術というべきものである。 したがって,引用発明において,被膜形成後に,乾燥工程を設けることは当業者が適宜なし得ることに過ぎない。 ウ [相違点3]について 補正発明では,泡状のコーティング剤を混合動作中の前記錠剤群へ供給する被覆工程において,(a.?c.及び下線は当審で付した) 「a.撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に前記錠剤群の表面へ供給するものであって, b.撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し, c.一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する」 と特定するものであるが,以下に示すとおり,これらの事項は,何れも引用発明にも該当することといえるか,また,当業者が適宜なし得たといえるものである。以下,a?cに従って順次説示する。 ウ-1 「a.撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に前記錠剤群の表面へ供給するものであって」について検討する。 (i)刊行物1には,例えば, 「好ましくは固体粒子を掻き混ぜながら泡沫を添加する」旨の記載(摘示(1e)の【0026】) があることから,通常は開口部を有する撹拌容器が使用されるものと解されるし,さらに, 「泡沫は,端部が固体粒子の一群に接近してまたは該一群中に置かれる単純管により,固体粒子に添加され得る。」 との記載もなされており,ここに示された一方の態様である,「固体粒子の一群に接近して」泡沫を添加することは,すなわち,「固体粒子の一群の表面に」泡沫を添加することと差異はないと解されるので,引用発明において,泡状のコーティング剤を「撹拌容器の内部開口部に…前記錠剤群の表面へ供給する」ことは当業者が容易になし得ることといえる。 (ii)また,「ムース状」に関しては,本願明細書に, 「コーティング剤が形成する泡状の状態は,ムース状が望ましく,コーティング剤の素材に応じて,短時間に水滴が発生しない性状の泡となる様な…」(【0019】) と記載されていて,かかる記載からは,「短時間に水滴が発生しない性状の泡」といったことを意味しているものと解しうるものであるが,引用発明に係る泡沫も,刊行物1の【0020】に, 「流体膜がセルロースエーテルのような親水性ポリマーを含む場合,水は,気泡のラメラ中に保留される。ラメラからの液体の排液は,最小にされ,減少されまたは防がれる。かかる泡沫は,当該技術において『非排液性泡沫』と称される。」(摘示(1d)) との記載があり,ここにおける『水は,気泡のラメラ中に保留される』及び『非排液性(泡沫)』といった表現から,引用発明に係る泡沫は,短時間で水滴が発生するような性状ではないと解されるので,本願発明で「ムース状」と特定していることによっては,引用発明と差異があるものとはいえない。 (iii)更に,「(ムース状で)滞留する様に」に関しては,やはり,刊行物1【0020】の 「気泡のラメラまたは流体膜は,ポリマーの存在に因り粘稠である。」(摘示(1d)) との記載から,引用発明の泡沫も,一定時間泡の状態を維持しているものと解される上,同【0028】にも, 「泡沫は被覆工程b)中固体粒子に対して緩衝効果を有し,そして従って被覆工程中固体粒子の損傷を減少するのを助ける。」(摘示(1f)) との記載があり,このような緩衝作用を有することは,やはり一定時間泡の状態を維持しているものと解すべきといえる。 したがって,「撹拌容器…にムース状で滞留する様に…供給する」ことは,引用発明においてもそのような状況になっているといえるので,補正発明においてかかる特定事項があることによっては,引用発明と差異があるとはいえない。 (iv)以上のことから,引用発明において,泡状のコーティング剤を撹拌容器に供給する際に,「撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に前記錠剤群の表面へ供給する」ことは,当業者が容易になし得ることである。 (v)なお,請求人は,この点に関して,審判請求書において,刊行物1の 「固体粒子は,被覆工程b)において,混転され,泡沫に浸漬されまたはそうでなければ移動されるように,掻き混ぜられる。」(摘示(1e)の【0025】) なる記載における『浸漬』に関して, 「そもそも『浸漬』とは,例えば,広辞苑によれば,『水がしみとおること』『ひたすこと』とあり,社会通念上,液状媒体に浸すことを想起させる…」ことを前提としつつ, 「本願発明における『泡状のコーティング剤を混合動作中の撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様』が,『浸漬』なる言葉で表現される引用文献1(審決注;刊行物1のこと)に記載の手法において想定されていると解するには,本願発明の作用効果(0009乃至0011)に照らして無理があると言わざるを得ない。」と主張している。 しかしながら,上記(2-4)アで記載したように,刊行物1では,そもそも従来法である液状のコーティング溶液を噴霧する方法の欠点を解消するためになされたものである上,固体粒子を被覆する工程b)においては,工程a)でコーティング素材を含む流体組成物から生成した『泡沫』を添加する旨一貫して記載しており,しかも,上記(ii)に記載したように該『泡沫』は一定時間泡の状態を維持していると解される。 したがって,刊行物1【0025】の「固体粒子は,被覆工程b)において,混転され,泡沫に浸漬されまたはそうでなければ移動されるように,掻き混ぜられる。」(摘示(1e))における『(固体粒子は)泡沫に浸漬され』との記載の解釈にあたり,「固体粒子が液状のコーティング剤の中に沈んでいる」といった,被覆工程におけるコーティング剤が,あたかも「液状である」ことを前提とする解釈は,刊行物1の記載全体を正しく理解していないものといわざるを得ない。 刊行物1においては,そもそも,被覆工程ではコーティング剤を泡沫の形態で添加するのであり,その泡沫は,一定時間泡の状態を維持するものであって,更に,工程a)での泡沫生成前の流体組成物の容積と比較して非常に大きくなると解せられる(例えば刊行物1の【0020】?【0021】(摘示(1d))におけるFQに関する記載の中の「一層好ましくは85?99パーセント」なる記載に基づくと,「FQ85」とは,その定義式から[85(気体の容積)/100(気体の容積+流体の容積)]を意味することになるので,泡沫の容積と流体の容積との比は,[泡沫の容積(=気体の容積+流体の容積)=100]/[流体の容積(100-気体の容積85)=15]=約6.7倍となり,同様に「FQ99」は,[泡沫の容積=100]/[流体の容積=1]=100倍となる)ことから,刊行物1【0025】の上記記載は,そのような嵩高い泡沫の中に固体粒子が沈み込んだ状態(逆にいうと,固体粒子の上を泡沫が覆っている状態)を表現しているものと解すべきである(刊行物1は国際公開第03/020247の明細書の翻訳文として提出された書面に基づいて発行されたものであるが,あくまで参考ながら,該国際公開の『泡沫に浸漬され』に対応する箇所の原文をみると「…dipped through the foam…」となっている。また,原査定における「『泡沫』の液面」といった表現は,液状の『コーティング液』を使用するかの如き誤解を生ずる余地があることから,より正確には「『泡沫』の泡面」と表現されるべきであったともいえるが,原査定の理由が,刊行物1の被覆工程において液状の『コーティング液』を使用すると解釈したことに基づくものではないことは原査定の記載全体から明らかなことである。)。 このように,上記請求人の主張は,そもそも刊行物1の記載を正解しないことに基づくものであるが,そればかりでなく,請求人が主張する効果についても,例えば,以下に述べるように,何れも刊行物1の記載からみて格別のものとすることができない。 すなわち,例えば,本願明細書の【0009】における「液状のコーティング剤とは比較にならない広い空間に広がり,撹拌容器の内部に存在する数多くの錠剤に対して無駄なく接触することができる。」というのは,上でも引用した刊行物1の【0020】?【0021】(摘示(1d))におけるFQに関する記載などで示されているといえる。 また本願明細書の【0010】における「コーティングの付着量が…従来の手法と比べて均一なものとなる。」については,刊行物1の【0027】(摘示(1f))に「従来技術の被覆よりも均一である」旨の記載があるほか,【0034】?【0035】(摘示(1g))においても,均一な被膜となることが示されている。 更に,明細書【0010】における「無駄なコーティング剤が付着しないので,…単位量のコーティングに要する時間も短縮できる。」といった事項や,或いは,審判請求書における「速やかに乾燥した薄膜の多層構造化が促され,良質な被膜が得られるという効果」(審判請求書「3.(1)」の第6段落)に関しては,刊行物1では,【背景技術】で記載した「15から20層の被覆層が必要とされる」(摘示(1b)の【0004】)といった従来法を踏まえて,「本発明の方法によれば,固体粒子上の一定厚さの驚くべきほど平滑な被膜が達成される。通常5層までの被覆層,たいていの場合わずか3層までの被覆層,典型的にはそれどころか1から2層の被覆層が,一定の厚さおよび良好な光沢度を有する光沢のある平滑な被膜を与えるのに十分である。」(摘示(1f)の【0027】)という効果について記載していると解されることから,刊行物1において,従来法と比較して効率的なコーティングが可能ということも,また,品質の高い多層構造の被膜が得られるということも,既に示されている事項であるといえる。 以上のように,要するに本願明細書(【0009】?【0011】)に記載された効果や審判請求書で主張する効果は何れも刊行物1の記載からみて格別のものとすることができないものである。 よって,上記請求人の主張は採用できない。 ウ-2 次に,「b.撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し」について検討する。 上記ウ-1(iii)で記載したように,引用発明の泡沫も「滞留する」といえるし,また,刊行物1【0023】の, 「本発明の方法の工程b)において,工程a)において生成された泡沫が固体粒子と接触されかつ該粒子は掻き混ぜられて,これらの固体粒子上に被膜を与える。」(摘示(1e))との記載によれば,泡沫は固体粒子と接触して被膜を形成するので,泡沫は固体粒子と接触し錠剤に付着することに伴って徐々に消散するといえるし,更に,固体粒子は掻き混ぜられること(すなわち撹拌)によって泡沫との接触も繰り返されることになるから,これらの事項を言い換えると,「撹拌が進むに従って…泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し」ということになる。 したがって,「撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し」との特定事項があるにことよっては,補正発明が引用発明と差異があるものとすることができない。 ウ-3 最後に,「c.一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する」について検討する。 (i)刊行物1の「泡沫は,掻き混ぜられている固体粒子に連続的にまたは半連続的に添加される」(摘示(1e)の【0026】)との記載から,引用発明では,泡沫は少なくとも間欠的に添加される態様も含まれると解されるので,補正発明でいう「1回又は複数回投入」なる特定事項とは,具体的な態様を想定すると区別し得ない態様もあるといえる。 (ii)更に,該刊行物1では,実施例1において「泡沫はタブレットに,凹凸のない被膜が達成されるまで混転しながら施用される。」(摘示(1g)の【0034】)と記載されていることから,被膜の形成状況を確認しながら泡沫は随時添加され,所望の被膜の形成が確認されその必要がなくなったら添加を止めるものと解される。 ところで,引用発明における泡沫は, 「泡沫が固体粒子と接触されかつ該粒子は掻き混ぜられて,これらの固体粒子上に被膜を与える」(摘示(1e)の【0023】)ものであり,また, 「ラメラからの液体の排液は,最小にされ,減少されまたは防がれる」(摘示(1d)の【0020】)とも記載されていて,ここでいうラメラとは泡沫の液膜と同義と解せられることから,泡沫が錠剤の被膜を形成して消散したあとには実質的に排液等が生じていないものといえる。そして,泡沫が未だ残存している状態では被膜の形成状況の確認は困難であり,泡沫が消失した時点で行われることはごく自然のことであるから,添加された泡沫の全てが固体粒子上の被膜となって消散して,撹拌容器内には被覆された固体粒子のみが存在することになっている時点で,被膜の形成状況も確認されるものと解される。そこでその時点での被膜が所望の状態であることが確認された場合は,その時点で終了することになる。 そうすると,例えば,刊行物1の実施例と同様な方法を実施した場合には,実質的に「投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する」ことは行われているといえるものである。 (iii)したがって,引用発明において,「一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する」ことは,刊行物1の記載に基づいて当業者が適宜なし得るこというべきものである。 エ 上記ア?ウで記載したように,[相違点1]?[相違点3]に関する特定事項の差異によっては,補正発明は当業者が容易にはなし得なかったとされるものではないし,また本願明細書の記載を見ても,補正発明によって格別予想外の効果が奏されたものとすることができない。 (2-6)小括 以上のとおり,本件補正発明は,刊行物1の記載に基づいて当業者が容易に発明することができたといえるので,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。 よって,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものとはいえないから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 上記記載のとおり,平成24年5月23日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成24年1月31日付け手続補正書の請求項1に記載されたとおりの,以下のものである。 「【請求項1】 撹拌容器に錠剤群を供給する投入工程と, 混合動作中の撹拌容器に前記錠剤群の量に応じたコーティング剤を供給する被覆工程と, 被覆工程を経た錠剤群の湿気を取る乾燥工程からなり, 前記被覆工程は,泡状のコーティング剤を混合動作中の撹拌容器の内部開口部にムース状で滞留する様に供給するものであって,撹拌が進むに従って滞留する泡状のコーティング剤が錠剤群に付着して徐々に縮小し,一回又は複数回投入された泡状のコーティング剤が消失することを以って終了する錠剤の被膜形成方法。」(以下,「本願発明」という。) (2)引用刊行物 原審でも引用された上記刊行物1の記載事項は,上記2.(2)(2-2)で記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は,前記2.(2)(2-1)の補正発明における,「前記錠剤群の表面へ」という泡状のコーティング剤を撹拌容器に供給する際の位置についての限定を削除したものに相当する。 そうすると,本願発明と比較して,泡状のコーティング剤を撹拌容器に供給する際の位置についてさらに限定が付された補正発明が,前記2.(2)に記載したとおり,刊行物1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとされるのであるから,本願発明も同様な理由により,刊行物1の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,この出願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-06-19 |
結審通知日 | 2014-06-24 |
審決日 | 2014-07-08 |
出願番号 | 特願2008-323894(P2008-323894) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 裕美子 |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
関 美祝 冨永 保 |
発明の名称 | 錠剤の被膜形成方法及び装置 |
代理人 | 宮田 信道 |