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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1291161
審判番号 不服2013-1433  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-25 
確定日 2014-08-20 
事件の表示 特願2011- 83938「順次同期されるネットワークための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月22日出願公開、特開2011-188501〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年7月19日(パリ条約に基づく優先権主張 1999年7月21日 米国)を国際出願日とする国際出願である特願2001-512736号の一部を平成20年7月2日に特願2008-173517号として新たな特許出願とし、さらに、その一部を平成23年4月5日に特願2011-083938号として新たな特許出願としたものであって、平成24年2月15日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成24年8月21日に手続補正がなされ、平成24年9月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年1月25日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。


第2.平成25年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年1月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲(平成24年8月21日付けで補正)の請求項1:
「【請求項1】
親局と子局とを順次接続する時間転送ユニットを使用する通信ネットワークにおいて、親局と子局とのタイミングを同期させる方法、該方法は下記を具備する、
時間転送ユニットにおいて、親局から受信された同期チャネル信号からシステム時間値を決定することと、
伝搬遅延と前記決定されたシステム時間値とを使用して、前記時間転送ユニットにおいて、修正された時間値を発生すること、ここで前記伝搬遅延は、前記親局と前記時間転送ユニットとの間の距離の関数である、
前記修正された時間値を子局に伝達すること、これにより前記子局は親局になる、
そして、該システム時間値を前記決定することは、前記親局からパイロット信号を受信した後、前記親局から受信された同期チャネル信号を復調することを含み、前記方法は更に、前記修正された時間値と整合するパルスを有するパルスストリームを出力することを具備し、ここで各パルスはまた、前記同期チャネル信号上のパイロットロールオーバ点と整合し、ここで、前記修正された時間値を子局に伝達することは、前記子局のクロックを前記パルスストリームに適合するように調整することを具備する、ことを特徴とする方法。」を、

「【請求項1】
親局と子局とを順次接続する時間転送ユニットを使用する通信ネットワークにおいて、親局と子局とのタイミングを同期させる方法であって、前記時間転送ユニットは前記親局から同期チャネル信号およびパイロット信号を受信し、前記子局とは直接的な電気的接続により通信し、該方法は下記を具備する、
前記時間転送ユニットにおいて、親局から受信された同期チャネル信号からシステム時間値を決定することと、
伝搬遅延と前記決定されたシステム時間値とを使用して、前記時間転送ユニットにおいて、修正された時間値を発生すること、ここで前記伝搬遅延は、前記親局と前記時間転送ユニットとの間の距離の関数である、
前記修正された時間値を子局に伝達すること、これにより前記子局は親局になる、
そして、該システム時間値を前記決定することは、前記親局からパイロット信号を受信した後、前記親局から受信された同期チャネル信号を復調することを含み、前記方法は更に、前記修正された時間値と整合するパルスを有するパルスストリームを出力することを具備し、ここで各パルスはまた、前記同期チャネル信号上のパイロットロールオーバ点と整合し、ここで、前記修正された時間値を子局に伝達することは、前記子局のクロックを前記パルスストリームに適合するように調整することを具備する、ことを特徴とする方法。」

と補正することを含むものである。ただし、下線は当審が付加した。

すなわち、本件補正は、請求項1において、

a.発明特定事項である「時間転送ユニット」に対して「前記親局から同期チャネル信号およびパイロット信号を受信し、前記子局とは直接的な電気的接続により通信」するという条件を課している。


2.補正の目的

上記補正事項a.は、発明特定事項である「時間転送ユニット」に対して「前記親局から同期チャネル信号およびパイロット信号を受信し、前記子局とは直接的な電気的接続により通信」するという条件を課すものであるから、特許請求の範囲を限定的に減縮するものである。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。


3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開平10-190562号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。ただし、下線は当審が付加した。

(a)段落番号【0045】-【0046】
「【0045】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係わる移動通信システムにおける基地局の配置図である。
【0046】同図において、システムのサービスエリアは複数の小サービスエリアG1,G2,…に分割されており、これらの小サービスエリアG1,G2,…にはそれぞれ1個の主基地局CS1,CS2,…と多数の従属基地局CS100,CS200,…とが配設されている。このうち主基地局CS1,CS2,…の配設位置は、小サービスエリアG1,G2,…のほぼ中心部分に設定される。」

(b)段落番号【0058】
「【0058】主基地局CS1,CS2,…は、上記フレームタイミング検出・制御回路34において基準フレームタイミングが設定されると、時計・制御回路31により上記基準フレームタイミングに同期したタイミングで制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向け送信する。 」

(c)段落番号【0060】
「【0060】各従属基地局CS100,CS200,…は、送受信部10と、制御部50とを備えている。制御部50は、時計・制御回路51と、クロック同期抽出回路52と、タイミングクロック発生回路53と、フレームタイミング検出・制御回路54とを備えている。 」

(d)段落番号【0063】-【0066】
「【0063】フレームタイミング検出・制御回路54は、制御チャネル信号観測期間の設定機能と自局フレームタイミングの設定機能とを有している。ここで、制御チャネル信号観測期間の設定機能は、時計・制御回路51により計時されている現在時刻が前記主基地局CS1,CS2,…で設定される同期設定開始時刻、つまり午前2時になった後に、他の基地局CSから送信された制御チャネル信号が最初に受信された時点から制御チャネル信号観測期間を開始させる。この制御チャネル信号観測期間の時間長は、例えば図4に示すごとく制御チャネルの送信周期(例えば100ms)よりも十分に長く(例えば制御チャネルの送信周期の数倍?数十倍)設定される。
【0064】自局フレームタイミングの設定機能は、制御チャネル信号観測期間における制御チャネル信号の受信タイミングの基づいて自局のフレームタイミングを生成する。その際、複数の基地局からの制御チャネル信号が受信された場合には、これらの制御チャネル信号の中から1つの制御チャネル信号を選択して、その受信タイミングに基づいて自局のフレームタイミングを設定する。
【0065】タイミングクロック発生回路53は、前記主基地局CS1,CS2,…のタイミングクロック発生回路33と同様に、上記フレームタイミング検出・制御回路54において生成された基準フレームタイミングと、上記クロック同期抽出回路52により抽出されたクロックとに同期して、主基地局の内部動作クロックを発生する。
【0066】さらに時計・制御回路51は、フレームタイミング設定用の制御チャネル信号の送信制御機能を有している。すなわち、この送信制御機能は、上記フレームタイミング検出・制御回路54において自局フレームタイミングが設定されると、その自局フレームタイミングに同期したタイミングでフレームタイミング設定用の制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向け送信する。」

(e)段落番号【0089】
「【0089】次に、基地局間における制御チャネル信号の伝搬遅延や基地局内で生じる回路動作遅延を補正する機能について説明する。図7はこの機能を説明するためのタイミング図である。」

(f)段落番号【0093】
「【0093】ここで、D3,D5は基地局の回路の設計あるいは実測により予め分かる値である。またD2は基地局間の伝搬遅延時間であり、その距離や状態により違った値をとる。」

(g)段落番号【0109】
「【0109】また、多重アクセス方式がTDMA方式以外の、例えばCDMA方式やFDMA方式である場合であっても、上り・下りの伝送にTDD方式を使えば、他の基地局の送信信号が自局の受信信号に影響を及ぼさないようにするためには基地局間のフレーム同期が必要となるので、本発明の適用が有効である。」

なお、刊行物1の段落番号【0057】に「タイミングクロック発生回路33は、・・・・・主基地局の内部動作クロックを発生する。」と記載されており、主基地局の内部動作クロックは、主基地局CS1,CS2,…内のタイミングクロック発生回路33が発生させている。タイミングクロック発生回路53は、従属基地局CS100,CS200,…内の回路であることを考慮すれば、上記摘記事項(d)の段落番号【0065】の「タイミングクロック発生回路53は、・・・・・主基地局の内部動作クロックを発生する。」は、「タイミングクロック発生回路53は、・・・・・従属基地局の内部動作クロックを発生する。」の誤記と認められる。

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「多重アクセス方式がCDMA方式である移動通信システムにおいて、他の基地局の送信信号が自局の受信信号に影響を及ぼさないようにするために、基地局間のフレーム同期をとる方法であって、
小サービスエリアG1,G2,…にはそれぞれ1個の主基地局CS1,CS2,…と多数の従属基地局CS100,CS200,…とが配設されており、
主基地局CS1,CS2,…は、基準フレームタイミングに同期したタイミングで制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向けて送信し、
各従属基地局CS100,CS200,…は、送受信部10と、制御部50とを備えており、制御部50は、時計・制御回路51と、クロック同期抽出回路52と、タイミングクロック発生回路53と、フレームタイミング検出・制御回路54とを備えており、
フレームタイミング検出・制御回路54は、制御チャネル信号観測期間の設定機能と自局フレームタイミングの設定機能とを有しており、該自局フレームタイミングの設定機能は、制御チャネル信号観測期間における制御チャネル信号の受信タイミングに基づいて自局のフレームタイミングを生成し、
タイミングクロック発生回路53は、上記フレームタイミング検出・制御回路54において生成された基準フレームタイミングと、クロック同期抽出回路52により抽出されたクロックとに同期して、従属基地局の内部動作クロックを発生し、
さらに時計・制御回路51は、フレームタイミング設定用の制御チャネル信号の送信制御機能を有しており、すなわち、この送信制御機能は、上記フレームタイミング検出・制御回路54において自局フレームタイミングが設定されると、その自局フレームタイミングに同期したタイミングでフレームタイミング設定用の制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向け送信する機能であり、
また、基地局間における制御チャネル信号の伝搬遅延を補正する機能を備えており、
ここで、基地局間の伝搬遅延時間は、その距離により違った値をとる、
方法。」


4.本願補正発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明の移動通信システムが、通信ネットワークを構成していることは明らかである。引用発明は、主基地局と従属基地局との間のフレーム同期をとる方法であるから、引用発明の主基地局、従属基地局が、それぞれ、本願補正発明の「親局」、「子局」に相当し、本願補正発明と引用発明とは「通信ネットワークにおいて、親局と子局とのタイミングを同期させる方法」である点で一致している。

引用発明のフレームタイミング検出・制御回路54は、制御チャネル信号観測期間における制御チャネル信号の受信タイミングに基づいて自局のフレームタイミングを生成しており、この制御チャネル信号は、主基地局から送信されたものであるから、引用発明の制御チャネル信号、自局のフレームタイミングが、各々、本願補正発明の「親局から受信された同期チャネル信号」、「システム時間値」に相当し、本願補正発明と引用発明とは「親局から受信された同期チャネル信号からシステム時間値を決定する」点で一致している。

引用発明では、基地局間における制御チャネル信号の伝搬遅延を補正する機能を備えており、ここで、基地局間の伝搬遅延時間は、その距離により違った値をとるから、引用発明において伝搬遅延を補正して得られた自局のフレームタイミングが、本願補正発明の「修正された時間値」に相当し、本願補正発明と引用発明とは「伝搬遅延と前記決定されたシステム時間値とを使用して、修正された時間値を発生すること、ここで前記伝搬遅延は、前記親局と」「の間の距離の関数である」である点で一致している。

引用発明の時計・制御回路51は、フレームタイミング検出・制御回路54において自局フレームタイミングが設定されると、その自局フレームタイミングに同期したタイミングでフレームタイミング設定用の制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向け送信する機能を有している。
上記したように、引用発明において、伝搬遅延を補正して得られた自局のフレームタイミングが、本願補正発明の「修正された時間値」に相当する。また「周辺の従属基地局」は、制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向け送信した従属基地局にとって、子局に当たる。したがって、その自局フレームタイミングに同期したタイミングでフレームタイミング設定用の制御チャネル信号を、周辺の従属基地局に向け送信することは、本願補正発明の「前記修正された時間値を子局に伝達すること」に相当する。また、制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向け送信した従属基地局は、周辺の従属基地局にとって、親局に当たる。したがって、本願補正発明と引用発明とは「前記修正された時間値を子局に伝達すること、これにより前記子局は親局になる」点で一致している。

刊行物1の段落番号【0090】に「いま、基地局CSaの制御チャネル信号を基に他の基地局CSbのフレーム同期を確立する場合を考える。基地局CSaの制御チャネル信号の送信タイミングはアンテナ端で見て図7(a)のようになる。この信号が伝搬中に遅延D2を受け、基地局CSbのアンテナ端に図7(b)のタイミングで到達する。この信号は、受信回路14および復調器16などを通ったのちフレームタイミング検出・制御回路54に入力され、ここでフレームタイミングとして図7(c)のタイミングで検出される。」と記載されているから、制御チャネル信号が、フレームタイミング検出・制御回路54に入力される前に復調されていることは明らかである。したがって、本願補正発明と引用発明とは「そして、該システム時間値を前記決定することは、」「前記親局から受信された同期チャネル信号を復調することを含」む点で一致している。

引用発明において、時計・制御回路51は、自局フレームタイミングに同期したタイミングでフレームタイミング設定用の制御チャネル信号を周辺の従属基地局に向け送信する。且つ、上記したように、引用発明において、伝搬遅延を補正して得られた自局のフレームタイミングが、本願補正発明の「修正された時間値」に相当する。したがって、引用発明の自局フレームタイミングに同期したタイミングで周辺の従属基地局に向け送信される、フレームタイミング設定用の制御チャネル信号が、本願補正発明の「前記修正された時間値と整合するパルスを有するパルスストリーム」に相当し、本願補正発明と引用発明とは「前記方法は更に、前記修正された時間値と整合するパルスを有するパルスストリームを出力することを具備」する点で一致している。

引用発明では、フレームタイミング検出・制御回路54が、自局のフレームタイミングを生成し、タイミングクロック発生回路53が、上記フレームタイミング検出・制御回路54において生成された基準フレームタイミングと、クロック同期抽出回路52により抽出されたクロックとに同期して、従属基地局の内部動作クロックを発生する。したがって、「基準フレームタイミング」とは「自局のフレームタイミング」のことであり、この自局のフレームタイミングに同期して、従属基地局の内部動作クロックが生成される。よって、本願補正発明と引用発明とは「前記修正された時間値を子局に伝達することは、前記子局のクロックを前記パルスストリームに適合するように調整することを具備する」点で一致している。

したがって、本願補正発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「通信ネットワークにおいて、親局と子局とのタイミングを同期させる方法であって、該方法は下記を具備する、
親局から受信された同期チャネル信号からシステム時間値を決定することと、
伝搬遅延と前記決定されたシステム時間値とを使用して、修正された時間値を発生すること、ここで前記伝搬遅延は、前記親局との間の距離の関数である、
前記修正された時間値を子局に伝達すること、これにより前記子局は親局になる、
そして、該システム時間値を前記決定することは、前記親局から受信された同期チャネル信号を復調することを含み、
前記方法は更に、前記修正された時間値と整合するパルスを有するパルスストリームを出力することを具備し、
ここで、前記修正された時間値を子局に伝達することは、前記子局のクロックを前記パルスストリームに適合するように調整することを具備する、ことを特徴とする方法。」である点。

[相違点1]
本願補正発明では、「親局と子局とを順次接続する時間転送ユニットを使用」しており、「前記時間転送ユニットは前記親局から同期チャネル信号」「を受信し、前記子局とは直接的な電気的接続により通信し、」「前記時間転送ユニットにおいて、」「システム時間値を決定」し、「前記時間転送ユニットにおいて、修正された時間値を発生」し、「伝搬遅延は、前記親局と前記時間転送ユニットとの間の距離の関数である」のに対して、引用発明では、かかる時間転送ユニットは記載されていない点。

[相違点2]
本願補正発明では、「前記時間転送ユニットは前記親局から」「パイロット信号を受信し、」「システム時間値を前記決定することは、前記親局からパイロット信号を受信した後、前記親局から受信された同期チャネル信号を復調することを含」むのに対して、引用発明では、パイロット信号を受信すること、及び同期チャネル信号を復調する前に、パイロット信号を受信することが記載されていない点。

[相違点3]
本願補正発明では、「パルスストリーム」の「各パルスはまた、前記同期チャネル信号上のパイロットロールオーバ点と整合」するのに対して、引用発明では、パルスストリームの各パルスが、パイロットロールオーバ点と整合することが記載されていない点。


5.相違点についての検討

[相違点1について]
装置において特定の機能を持った部分をユニット化することは、一般的に行われていることであるから、引用発明の従属基地局において、送受信部10と制御部50をユニット化して、従属基地局のその他の部分と同軸ケーブル等の有線で接続するようにすることは、容易に想到できたことである。
このようにすれば、引用発明において、主基地局と従属基地局はユニットによって順次接続され、ユニットは主基地局から制御チャネル信号を受信し、従属基地局とは直接的な電気的接続により通信し、ユニットにおいて、自局のフレームタイミングを決定し、伝搬遅延は、主基地局とユニットとの間の距離の関数となり、相違点1に係る構成が実現されることは明らかである。

[相違点2について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(特開平10-327101号公報)の段落番号【0001】-【0010】には、CDMA無線電話システムの従来技術について記載されており、特に、段落番号【0006】には、次の記載がある。

(h)段落番号【0006】
「順方向リンクとの同期では、局所的に生成された疑似ランダム雑音(PN)シーケンスを、パイロット・チャネル上で基地局によって送信されたPNシーケンスと整合させる。被送信シーケンスは、26-2/3msごとに反復する「短PN(short PN)」シーケンスと、41日ごとに反復する「長PN(long PN) 」シーケンスとを含む。無線電話は、基地局によって用いられるのと同じ短PNシーケンスおよび長PNシーケンスを生成するシーケンス発生器を内蔵する。無線電話は、短PNシーケンスを基地局から受信された短PNシーケンスと整合させるためのサーチャ受信機(searcher receiver) または他の機構を利用する。パイロット・チャネルが獲得されると、無線電話は同期チャネルおよびページング・チャネルを獲得する。そうすると、無線電話はトラヒック・チャネルを正しく復調し、基地局との全二重リンクを確立できる。」

したがって、CDMA無線電話システムにおいて、パイロット・チャネルを獲得した後に、信号の復調を行うことは、周知である。よって、多重アクセス方式がCDMA方式である引用発明において、パイロット信号を受信した後に、主基地局から受信された制御チャネル信号の復調を行うことは、容易に想到できたことである。

[相違点3について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2の段落番号【0017】には、CDMA無線電話システムについて、次の記載がある。

(i)段落番号【0017】
「アナログ・ベースバンド信号はモデム110に与えられ、このモデムはさらに処理するためにデジタル・データのストリームに変換する。モデム110は、一般にレーキ受信機(rake receiver) およびサーチャ受信機(searcher receiver) 含む。サーチャ受信機は、基地局102を含む複数の基地局から無線電話104によって受信されたパイロット信号を検出する。サーチャ受信機は、局所基準タイミングを利用して無線電話104において生成されたシステムPNコードで、相関器を利用してパイロット信号を逆拡散(despread)する。サーチャ受信機は、PNコードを生成するため線形シーケンス発生器(LSG)120などの一つまたはそれ以上のシーケンス発生器を含む。モデム110は、局所的に発生されたPNコードを、受信されたCDMA信号と相関する。モデム110は、無線電話システム100によって送信されたシステム・タイミング・インジケータを検出する。具体的には、モデム110はCDMA信号におけるPNロールオーバ境界を検出し、PNロールオーバ境界の表示をタイミング・コントローラ114に与える。」

したがって、刊行物2のCDMA無線電話システムでは、モデム110は、受信されたCDMA信号におけるPNロールオーバ境界を検出することにより、送信されたシステム・タイミング・インジケータを検出している。
よって、多重アクセス方式がCDMA方式である引用発明において、周辺の従属基地局に向け送信される、フレームタイミング設定用の制御チャネル信号の各パルスを、主基地局から送信された制御チャネル信号上のパイロットロールオーバ点と整合させることにより、相違点3に係る構成とすることは、容易に想到できたことである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、刊行物2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
平成25年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年8月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。

1.刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及び引用発明は、前記「第2.3.」に記載したとおりである。


2.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から補正事項a.の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.5.」に記載したとおり、引用発明、刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、刊行物2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


3.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-20 
結審通知日 2014-03-25 
審決日 2014-04-08 
出願番号 特願2011-83938(P2011-83938)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國分 直樹佐藤 聡史  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 近藤 聡
加藤 恵一
発明の名称 順次同期されるネットワークための方法及び装置  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 中村 誠  
代理人 堀内 美保子  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 佐藤 立志  
代理人 井関 守三  
代理人 白根 俊郎  
代理人 砂川 克  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 竹内 将訓  
代理人 井上 正  

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