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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1291191
審判番号 不服2011-11626  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-01 
確定日 2014-08-21 
事件の表示 特願2001-544313「ヒストン脱アセチル化酵素-8のタンパク質、核酸およびその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月14日国際公開、WO01/42437、平成15年 5月13日国内公表、特表2003-516144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年12月8日(パリ条約による優先権主張 1999年12月8日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項6に係る発明は、平成23年6月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項6】配列番号:1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む、組換えポリペプチド。」

2.先願明細書の記載事項
原査定の拒絶理由に先願1として引用された、特願2000-565903号(国際公開第00/10583号)の出願(以下、「先願」という。)は、本願優先日前の1999年8月18日を国際出願日とする国際出願であって、本願優先日後の2000年3月2日に国際公開され、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出されたものであり、その国際出願日における国際出願の明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。下線は合議体による。)。

ア.「1.(i)配列番号2の全長にわたって配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも以下の同一性:
(a)70%の同一性;
(b)80%の同一性;
(c)90%の同一性;もしくは
(d)95%の同一性;
を有する群より選択されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド、または
(iii)配列番号2のアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチド
からなる群より選択される単離されたポリペプチド。」(請求項1)

イ.「ヒストンアセチラーゼは、2つの別個の修飾事象:ヒストンアセチラーゼ(HAT)により触媒されるアセチル化とヒストンデアセチラーゼ(HD)により触媒される脱アセチル化をもたらす。」(第1頁第24行?第26行)

ウ.「第一の態様において、本発明はHD4ポリペプチドに関する。このようなペプチドには、配列番号2の全長にわたって配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性、好ましくは少なくとも80%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、さらに好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97?99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドが含まれる。このようなポリペプチドには、配列番号2のアミノ酸配列を含むものが含まれる。」(第2頁第15行?第20行)

エ.「本発明のポリペプチドは任意の適当な方法で製造することができる。このようなポリペプチドには、単離された天然のポリペプチド、組換え的に製造されたポリペプチド、合成的に製造されたポリペプチド、またはこれらの方法の組合せにより製造されたポリペプチドが含まれる。」(第3頁第21行?第23行)

オ.「本発明の組換えポリペプチドは、当業界で周知の方法を用いて、発現系を含む遺伝的に操作された宿主細胞から製造することができる。」(第6頁第30行?第31行)

カ.「

」(配列表、配列番号2)

よって、上記ア.?カ.の記載によれば、先願明細書には、「配列番号2のアミノ酸配列を含む、組換えポリペプチド。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願明細書には、「配列番号:1に記載のヌクレオチド配列」について、「 図1(配列番号:1)に記載の」(出願当初の請求項1?3)、「図1は、HDAC8と呼ばれるcDNAクローンの完全なヌクレオチド配列を示す。その配列(配列番号:1)により、HDACのRPD3クラス(I)との相同性を有するタンパク質(配列番号2)産物を推定する。翻訳開始因子および終結因子のコドンは、下線した。」(段落【0020】)と記載されており、そして、図1には、HDAC8のcDNAクローンのヌクレオチド配列と該ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列が記載されているが、本願明細書には配列表は記載されておらず、図1以外に「配列番号:1」に相当するヌクレオチド配列は記載されていない。
一方、平成14年6月10日付け物件提出書により、「配列表に関するコードデータを記録したフレキシブルディスク」が提出されているが、国際予備審査報告の第I欄3.の記載によれば、提出された配列表のデータは、国際出願日には提出されておらず、その後に、国際調査機関に提出されたものと認められる。そして、国際調査機関における手続きについて規定したPCT規則13の3.1の(e)には、「出願時における国際出願に含まれていない配列リストは、(a)又は(b)の規定に基づく求めに応じて又はその他の理由により提出されたか否かを問わず、国際出願の一部を構成しない。」と規定されており、国際調査機関に提出されていたからといって、それが出願の一部となるものでもないことは、PCT規則の規定からも明らかである。また、特許法施行規則第27条の5第2項の規定により翻訳文提出時に提出された磁気ディスクに記録した事項については、明細書に記載した事項とみなさないことが、同条第6項に規定されている。
よって、本願の明細書及び図面の記載から、本願発明の「配列番号:1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列」は、結局のところ、「図1に記載のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列」、すなわち、「図1に記載のアミノ酸配列」を意味するものと解して、以下検討を行う。
そこで、本願の図1に記載のアミノ酸配列と先願の配列番号2のアミノ酸配列とを対比すると、本願の図1に記載のアミノ酸配列と先願の配列番号2のアミノ酸配列は、いずれも377アミノ酸からなるアミノ酸配列であり、本願の図1に記載のアミノ酸配列と先願の配列番号2のアミノ酸配列とは、1?377番目のアミノ酸配列が完全に一致している。
したがって、本願発明と先願発明とを対比すると、両者は、「1?377番目のアミノ酸配列が同一であるアミノ酸配列を含む、組換えポリペプチド」である点で一致し、相違はない。

4.本願及び先願の出願人・発明者について
本願の出願時における出願人は、アクシス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドであり、そして、発明者は、ジョゼフ・バギーである。
一方、先願の出願人は、スミスクライン ビーチャム コーポレーションであり、そして、発明者は、フー,アーディング、 ズー,ユアン、ズー,シュエジュンである。
よって、両出願の出願人及び発明者は同一でない。

5.審判請求人の主張
審判請求人は、平成23年7月13日付け手続補正書により補正された審判請求書において、本願の配列番号2のアミノ酸配列(配列番号1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列)と先願の配列番号2のアミノ酸配列とを比較すると、223位のアミノ酸が本願ではトリプトファン(Trp)であるのに対し、先願ではアルギニン(Arg)であり、本願の配列番号2のアミノ酸配列(配列番号1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列)を有するタンパク質と先願の配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質とでは、1アミノ酸において異なり、かかる1アミノ酸置換が保存的アミノ酸置換ではなく、性質の異なるアミノ酸による置換であることから、全体としてのタンパク質の機能ないし性質は異なるものとなる蓋然性が高いので、本願の配列番号2のアミノ酸配列(配列番号1のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列)を有するタンパク質は、先願に記載のタンパク質と同一でも実質的に同一でもない旨主張している。
しかしながら、審判請求人が主張する「223位のアミノ酸が本願ではトリプトファン(Trp)である」アミノ酸配列は、平成14年6月10日付け物件提出書により提出された配列表のデータに基づくものと思われるが、上記3.で述べたように、提出された配列表のデータは、国際出願日には提出されておらず、「国際出願の一部を構成しない」ものであり、また、磁気ディスクに記録した事項については、明細書に記載した事項とはみなされないので、審判請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項6に係る発明は、上記先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の請求項6に係る発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第184条の13により読み替えて適用される同法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-25 
結審通知日 2014-03-26 
審決日 2014-04-10 
出願番号 特願2001-544313(P2001-544313)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名和 大輔  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 植原 克典
高堀 栄二
発明の名称 ヒストン脱アセチル化酵素-8のタンパク質、核酸およびその使用方法  
代理人 清原 義博  

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