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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01N
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01N
管理番号 1291194
審判番号 不服2012-24562  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-11 
確定日 2014-08-21 
事件の表示 特願2008-557083「芝生広葉多年生雑草の防除方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月14日国際公開、WO2008/096675〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年2月1日〔優先権主張 平成19年2月6日(JP)日本国〕を国際出願日とする出願であって、
平成24年2月20日付けの拒絶理由通知に対し、平成24年4月23日付けで意見書及び手続補正書並びに手続補足書の提出がなされ、
平成24年9月7日付けの拒絶査定に対し、平成24年12月11日付けで審判請求がなされ、
平成25年11月19日付けの拒絶理由通知に対し、平成26年1月22日付けで意見書及び手続補正書並びに手続補足書の提出がなされ、
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知(最後)に対し、平成26年4月23日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされたものである。

第2 平成26年4月23日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成26年4月23日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.補正の内容
平成26年4月23日付け手続補正(以下、「第3回目の手続補正」という。)は、
補正前の請求項1における「芝生用広葉多年生雑草防除剤を、芝生において、土壌又は茎葉に施用する芝生広葉多年生雑草の防除方法であって、
前記芝生用広葉多年生雑草防除剤が、式(1)
【化1】

(式中、Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1?10のアルキル基、炭素数3?7のシクロアルキル基で置換された炭素数1?3のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよい炭素数7?9のアラルキル基を表し、X_(1)はハロゲン原子又は炭素数1?3のアルキル基を表し、
X_(2)は水素原子又はハロゲン原子を表し、
Y_(1)、Y_(2)はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。)
で示される1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体を有効成分として含有するものであり、
前記広葉多年生雑草が、スギナ、メドハギ、シロツメクサ、カタバミ、ツボスミレ、チドメグサ、オオバコ、ハルジオン、ジシバリ、タンポポ及びヨモギからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする芝生広葉多年生雑草の防除方法。」 を、
補正後の請求項1における「芝生用広葉多年生雑草防除剤を、芝生において、土壌又は茎葉に施用する芝生広葉多年生雑草の防除方法であって、
前記芝生用広葉多年生雑草防除剤が、1-[4-クロロ-3-[(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)メチル]フェニル]-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシアミドを有効成分として含有するものであり、
前記広葉多年生雑草が、スギナ、メドハギ、シロツメクサ、カタバミ、ツボスミレ、チドメグサ、オオバコ、ハルジオン、ジシバリ、タンポポ及びヨモギからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする芝生広葉多年生雑草の防除方法。」
に改める補正を含むものである。

2.補正の適否
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された「前記芝生用広葉多年生雑草防除剤が、式(1)…で示される1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体を有効成分として含有する」を、補正後の請求項1に記載された「前記芝生用広葉多年生雑草防除剤が、1-[4-クロロ-3-[(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)メチル]フェニル]-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシアミドを有効成分として含有する」に改めるものであって、有効成分の種類を、補正前の式(1)で示される広範なカルボン酸アミド誘導体から、補正後の特定の誘導体(慣用名:フルポキサム)に限定的に減縮しているものと認められるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

3.進歩性について
(1)引用刊行物及びその記載事項
ア.刊行物1:植調 Vol.40,No.10(2006),p397-406
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書において引用された本願優先日前に頒布された上記刊行物1には、次の記載がある。

摘記1a:第397頁(第2頁)
「平成18年度春夏作芝関係除草剤・生育調節剤試験成績概要
財団法人 日本植物調節剤研究協会
平成18年度春夏作芝関係除草剤・生育調節剤試験成績検討会は、平成18年11月29日(水)に東京ガーデンパレスにおいて開催された。この検討会には、試験場関係者16名、委託関係者54名ほか、計82名の参集を得て、除草剤24薬剤(185点)、生育調節剤3薬剤(23点)について、試験成績の報告と検討が行われた。その判定結果及び使用基準については、次の判定表に示す通りである。
平成18年度春夏作芝関係除草剤・生育調節剤試験供試薬剤および判定一覧」

摘記1b:第399?403頁(第23?27頁)


…13.…コウライシバ…[一年生雑草、スギナ]…土壌処理
…18.…コウライシバ…[広葉雑草、スギナ]…茎葉処理
…21.…[(バミューダグラス)一年生雑草、多年生広葉雑草、ヒメクグ]…0.025?0.05g…茎葉処理」

イ.刊行物2:植調 Vol.37,No.10(2003),p331-335
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書において引用された本願優先日前に頒布された上記刊行物2には、次の記載がある。

摘記2a:第331?334頁(第24?27頁)
「平成15年度春夏作芝関係除草剤・生育調節剤試験供試薬剤および判定一覧
A.除草剤
…4.…コウライシバ…[一年生広葉雑草、クローバー、スギナ]…茎葉処理
…6.…コウライシバ…[一年生広葉雑草、チドメグサ]…茎葉処理
…11.DH-024…コウライシバ…[一年生雑草]…土壌処理」

ウ.刊行物3:特開昭63-313779号公報
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書において引用された本願優先日前に頒布された上記刊行物3には、次の記載がある。

摘記3a:第2頁右下欄第11?17行
「本発明は、イネ科の雑草及び広葉植物、特に広葉植物に対して優れた除草作用を示し、一方イネ、コムギ、トウモロコシ等の作物に対して薬害を示さない選択的除草活性を有する1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体及び該化合物を有効成分とする除草剤を提供することを目的とする。」

摘記3b:第3頁右上欄第7行?第12頁右下欄第5表
「本発明に係る一般式(I)で示される化合物及びその理化学的性質を例示すると表1のとおりである。…
13 -CH_(2)CF_(2)CF_(3) 4-Cl H H H …
化合物No.…ホタルイ ヘラオモダカ…ウリカワ ミズガヤツリ 水稲 …
13 5 5 5 5 - 」

エ.刊行物4:特開昭62-138404号公報
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書において引用された本願優先日前に頒布された上記刊行物4には、次の記載がある。

摘記4a:第2頁左上欄第9行?右上欄第3行
「日本芝はゴルフ場、公園、路傍、一般家庭の庭等いたるところで栽培され、美観の保持、防災、リクリエーションの場としてますます重要性が増してきている。…、しかしながら、侵入する雑草種は多く、それぞれ生理生態を異にするため、根絶の難かしい多年生雑草が優先する芝生地が多くなつてきている。最近、広汎に侵入している雑草はホワイトクローバー、セイヨウタンポポ、ギシギシ、カタバミ、オオバコ等の広葉多年草とヒメクグ、ハマグク、スギナ等、カヤツリグサ科、トクサ科の多年草である。」

オ.刊行物5:特表2005-527507号公報
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書において引用された本願優先日前に頒布された上記刊行物5には、次の記載がある。

摘記5a:請求項1
「有効量の成分(A)、(B)および(C)からなる組合せ除草剤であって、…(C)はある種の単子葉作物において有害な単子葉および/または双子葉植物に対して選択的に作用する1種またはそれ以上の除草剤を示し、当該除草剤は…(C13)フルポキサム…からなる化合物群より選択される、上記組合せ除草剤。」

摘記5b:段落0070
「双子葉の雑草種の場合、作用範囲は…多年生雑草の場合はヒルガオ(Convolvulus)、シルシウム(Cirsium)、ルメックス(Rumex)およびヨモギ(Artemisia)まで及ぶ。」

カ.刊行物6:雑草研究・別号、講演会講演要旨(31),p34-35(1992年4月)
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書において引用された本願優先日前に頒布された上記刊行物6には、次の記載がある。

摘記6a:第34?35頁
「フルポキサム…は、呉羽化学において見出された広葉雑草に優れた活性を示す新規トリアゾールアミド系化合物である。本剤はMONSANTO社と共同で欧州麦類用除草剤として開発中であるが、ここではその基礎的除草活性について報告する。…
結果および考察
1.発生前及び生育始期処理で広葉雑草全般に対し発芽阻害、あるいは茎葉部のえ死が認められ、特に冬雑草に高い効果が見いだされた。しかしイネ科雑草は本剤に抵抗性が高かった(Table1)。また茎葉処理においてイネ科作物に対する薬害は軽微であったが、大豆、綿には薬害が強く現われた(Table2)。小麦に対しては発芽前から生育始期処理において高薬量でも薬害が軽微であった(Table3)。
2.麦作広葉雑草、ヤエムグラ、スミレ属に対しては、各処理時期において125g/ha以上で高い活性が認められた。カミツレに対しては発芽前処理で効果が高いが、生育期処理では効果が甘くなる傾向が認められた(Table3)。…
3.水稲移植3日後、およびタイヌビエ2葉期処理においてタイヌビエ、コナギを除く一年生広葉雑草に高い活性が認められた。しかしタイヌビエ2葉期のコナギ、多年生雑草に対する効果は劣った(Table4)。また、葉令の進んだヒエに対する効果はやや甘かった(Fig.2)。


キ.刊行物7:欧州特許公開第612475号
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書において引用された本願優先日前に頒布された上記刊行物7(出願人;MONSANTO EUROPE S.A.)には、和訳にして、次の記載がある。

摘記7a:第5頁45行?第7頁第1表
「実施例1 Xが塩素であり、X2が水素であり、Y_(1)及びY_(2)が水素であり、そしてRが-CF_(2)CF_(3)である上記に定義された式(I)のトリアゾール化合物を以後化合物Aと呼称し、活性成分を約42重量%で含む懸濁剤(SC)として調製した。…処理した種類及び噴霧時の各々の真の葉期は次のとおりである。
TRZAW-冬小麦(winter wheat)
STEME-コハコベ(Stellaria media)
LAMPU-ヒメオドリコソウ(Lamium purpureum)
MATCH-カモミール(Matricaria chamomilla)
GERMO-ヤワゲフウロ(Geranium molle)
BRSNW-冬油菜(Winter oilseed rape)
VERPE-オオイヌノフグリ(Veronica persica)

表1 用量 TRZAW LAMPU VERPE GERMO …
ai g/ha 14日後 14 14 14 …
A 250 0.0 40.0 50.0 20.0 」

摘記7b:請求項1
「式Iのトリアゾール化合物:

式中、Rは、非置換又は1?19個のフッ素原子で置換された1?10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、非置換又は1?19個のフッ素原子で置換された3?10個の炭素原子を有する分枝アルキル基、3?10個の炭素原子を有する環式アルキル基、3?7個の脂環式構造を有する置換された1?3個の炭素原子を有するアルキル基、7?9個の炭素原子を有するフェニル基又はアラルキル基であり、X^(1)はハロゲン又は1?3個の炭素原子を有するアルキル基であり、X^(2)は水素、ハロゲン又は1?3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Y^(1)は水素又はフッ素であり、そして、Y^(2)は水素又はフッ素であり、そして、ジヒドロキシベンゾニトリル型の除草剤から選ばれる共除草剤を少なくとも含む組み合わせ。」

(2)刊行物1に記載された発明
摘記1bの『A.除草剤 7.DH-024顆粒水和(薬剤名) フルポキサム(有効成分) 50%(含有率) コウライシバ(作物名) 薬量0.3g<水量200-300mL> 土壌処理(処理方法) 実証試験』という旨の表示からみて、刊行物1には、
『フルポキサム(有効成分)を50%の含有率で含有する除草剤を、コウライシバ(作物名)に0.3g/m^(2)の薬量で土壌処理する実証試験。』についての発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「フルポキサム(有効成分)」は、刊行物7の請求項1の式Iにおいて、X_(1)が4位のハロゲン(塩素原子)、X_(2)、Y_(1)及びY_(2)が水素、Rが5個のフッ素原子で置換された3個の炭素原子を有する直鎖アルキル基(R=-CH_(2)CF_(2)CF_(3))の化合物(本願明細書の段落0004の「フルポキサム(ISO名:furupoxam;…Reg.No.119126-15-7)」との記載を参照。)であって、刊行物3の第4頁の「No.13」で示されるとおりの除草剤化合物(刊行物6のFig.1に示される化合物)であるから、補正発明の「1-[4-クロロ-3-[(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)メチル]フェニル]-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシアミド」の「有効成分」に相当し、
引用発明の「コウライシバ(作物名)」は、本願請求項2の「芝生が…コウライシバ」との記載からみて、補正発明の「芝生」に相当し、
引用発明の「除草剤」は、コウライシバ(作物名)を対象作物とする除草剤であることから、補正発明の『芝生用…雑草防除剤』に相当し、
引用発明の「土壌処理する実証試験」は、芝生における雑草を防除するために薬剤(フルポキサム50%)を施用したことが明らかであるから、補正発明の『芝生において、土壌又は茎葉に施用する芝生…雑草の防除方法』に相当する。
してみると、補正発明と引用発明は
『芝生用雑草防除剤を、芝生において、土壌又は茎葉に施用する芝生雑草の防除方法であって、前記芝生用雑草防除剤が、1-[4-クロロ-3-[(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)メチル]フェニル]-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシアミドを有効成分として含有するものである芝生雑草の防除方法。』に関するものである点において一致し、
(α)防除する雑草の種類が、補正発明は「広葉多年生雑草」であって「スギナ、メドハギ、シロツメクサ、カタバミ、ツボスミレ、チドメグサ、オオバコ、ハルジオン、ジシバリ、タンポポ及びヨモギからなる群より選ばれる少なくとも一種」であるのに対して、引用発明は雑草の種類を特定していない点においてのみ一応相違する。

(4)判断
例えば、摘記1aの「スギナ」との記載、摘記2aの「チドメグサ」との記載、摘記4aの「日本芝はゴルフ場…で栽培され、…広汎に侵入している雑草はホワイトクローバー、セイヨウタンポポ、…カタバミ、オオバコ等の広葉多年草と…スギナ等…トクサ科の多年草である。」との記載にあるように、シロツメクサ(別名:ホワイトクローバー)、タンポポ(別名:セイヨウタンポポ)、カタバミ、オオバコ、チドメグサ等の広葉多年草及びスギナ等の多年草は、芝生用防除剤の防除対象となる雑草として普通に認識されているものであって、引用発明の「フルポキサム(有効成分)を50%の含有率で含有」及び「0.3g/m^(2)の薬量」は本願明細書の実施例における薬量と全く同じである。
してみると、引用発明の土壌処理によって防除される雑草の種類に、スギナ等のシダ植物、シロツメクサ、カタバミ、チドメグサ、オオバコ、タンポポなどの広葉多年生雑草が包含されることは、当業者にとって刊行物1に記載されているに等しい自明事項である。

また、刊行物3には、フルポキサムを含む「1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体」が「特に広葉植物に対して優れた除草作用」を示すことが記載されており(摘記3a)、その試験例3では、その「No.13」で示されるとおりの除草剤化合物(フルポキサム)が、イネ科の有用作物に薬害を発生させない濃度において、ホタルイ、ヘラオモダカ、ウリカワ、ミズガヤツリなどの非常に広範な種類の多年生雑草を有効に除草できることが記載されている(摘記3b)。
刊行物6には、フルポキサムが「広葉雑草に優れた活性」を示す化合物であって、スミレ目スミレ科のフィールドパンジー(Viola arvensis)やキク目キク科のカミツレ(Matricaria chamomilla)やマメ目マメ科のダイズ(Soybean)などの広葉植物に対して薬効を示すことが記載されている(摘記6a)。
刊行物7には、フルポキサム(その請求項1の式IにおいてRが-CH_(2)CF_(2)CF_(3)である場合の化合物)を含む「1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体」を有効成分とする除草剤が記載され(摘記7a)、その実施例1では、当該カルボン酸アミド誘導体(なお、摘記7aの「Rが-CF_(2)CF_(3)」との記載は、摘記6aを参酌すると「Rが-CH_(2)CF_(2)CF_(3)」の誤記と認める。)が、フウロソウ目フウロソウ科のヤワゲフウロ(Geranium molle)やシソ目オオバコ科のオオイヌノフグリ(Veronica persica)などの広葉雑草に対して薬効を示すことが記載されている(摘記7a)。
刊行物5には、双子葉植物に対して選択的に作用する除草剤としてフルポキサムが例示され(摘記5a)、双子葉の雑草種の例として、ナス目ヒルガオ科のセイヨウヒルガオ属(Convolvulus)、キク目キク科のアザミ属(Cirsium)、タデ目タデ科のスイバ属(Rumex)、及びキク目キク科のヨモギ属(Artemisia)が例示されている(摘記5b)。
してみると、刊行物3において『特に広葉植物に対して優れた除草作用を示し、イネ科の作物に対して薬害を示さない選択的除草活性を有する』とされ、刊行物6において『広葉雑草全般に対し発芽阻害、あるいは茎葉部のえ死が認められ、特に冬雑草に高い効果が見いだされ、イネ科作物に対する薬害は軽微であった』とされる『1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体を有効成分とする除草剤』が、本願の『メドハギ、シロツメクサ、カタバミ、ツボスミレ、チドメグサ、オオバコ、ハルジオン、ジシバリ、タンポポ及びヨモギ』を含む広葉雑草(双子葉植物網に属する被子植物の雑草)全般に対して除草効果を示し得ることは刊行物3及び6に記載されている。
そして、仮に刊行物3や刊行物6の『広葉雑草全般に対して優れた除草作用を示す』という記載に基づいて特定種類の雑草に対する除草効果を一般化し得ないとしても、刊行物6では、広葉植物の中でもスミレ目スミレ科やキク目キク科やマメ目マメ科の広葉植物に対して除草効果があることが実験的に確認されており、刊行物7では、シソ目オオバコ科の広葉植物に対して除草効果があることが実験的に確認されており、刊行物5では、ヨモギ属の広葉多年生雑草に対するフルポキサムの使用が記載されているので、刊行物5?7の具体的な実験データや記載を参酌すれば、マメ目マメ科のメドハギ及びシロツメクサ、スミレ目スミレ科のツボスミレ、シソ目オオバコ科のオオバコ、並びにキク目キク科のハルジオン、ジシバリ、タンポポ及びヨモギのような広葉雑草に対して除草効果を示し得ることは、当業者にとって容易に類推可能なことでしかない。また、本願のフウロソウ目カタバミ科のカタバミについては、刊行物7のフウロソウ目フウロソウ科のヤワゲフウロの実験データに基づいて、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
したがって、引用発明の雑草の種類に、メドハギ、シロツメクサ、カタバミ、ツボスミレ、オオバコ、ハルジオン、ジシバリ、タンポポ及びヨモギ等の広葉多年生雑草が包含されることは、当業者にとって刊行物1に記載されているに等しい自明事項であって、当業者が刊行物3及び5?7に記載された実験データ又は示唆に基づいて容易に想到し得る事項にすぎない。

そして、補正発明の効果について検討するに、本願明細書の発明の詳細な説明には、対象作物が「コウライシバ」以外のバミューダグラスやフェスク等であっても、対象雑草が『カタバミ、ツボスミレ、オオバコ』以外のスギナ(シダ植物門トクサ網トクサ目トクサ科の雑草)やチドメグサ(被子植物門双子葉植物網セリ目ウコギ科の雑草)であっても、芝生に薬害を発生させずに雑草を防除できるという効果があることについての具体的な裏付けが記載されていないので、補正発明の全ての範囲に格別予想外の顕著な効果があるとは認められない。また、対象作物が「コウライシバ」であり、対象雑草が広葉雑草(例えば、スミレ目の「ツボスミレ」やシソ目の「オオバコ」やフウロソウ目の「カタバミ」など)である場合の効果については、刊行物1並びに刊行物3及び6?7に記載されたフルポキサムの殺草効果についての実験データに基づいて、当業者が容易に予測可能な効果でしかない。

(5)進歩性のまとめ
したがって、補正発明は、刊行物1?7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

4.サポート要件について
(1)はじめに
補正後の請求項1の記載が『発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か』を検討する。

(2)補正発明の解決しようとする課題
本願明細書の段落0007の「本発明は、…既存の芝生用除草剤では防除が困難な雑草、及び/又は既存の除草剤に抵抗性を有する雑草に対しても高い除草効果を有し、かつ、芝草類に対して安全性を示す芝生用広葉多年生雑草防除剤、及びこの防除剤を土壌又は茎葉に施用する芝生広葉多年生雑草の防除方法を提供することを課題とする。」との記載からみて、補正発明の解決しようとする課題は『防除が困難な雑草及び/又は既存の除草剤に抵抗性を有する雑草に対して高い除草効果を有し、芝草類に対して安全性を示す芝生広葉多年生雑草の防除方法の提供』にあるものと認められる。

(3)対象雑草の範囲について
本願明細書の段落0073?0083には、防除剤試験例1として「ツボスミレ」の防除効果、防除剤試験例2?4として「オオバコ」の防除効果、防除剤試験例5として「カタバミ」の除草効果が確認されている。
しかしながら、まず『補正発明が発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か』について検討するに、本願明細書の発明の詳細な説明の記載のみ(スミレ目スミレ科のツボスミレ、シソ目オオバコ科のオオバコ、フウロソウ目カタバミ科のカタバミの3種類の試験例の記載)によっては、マメ目マメ科のメドハギ及びシロツメクサ、セリ目ウコギ科のチドメグサ、並びに、キク目キク科のハルジオン、ジシバリ、タンポポ及びヨモギのような広葉植物の除草効果、ましてやトクサ目トクサ科のスギナのようなシダ植物の除草効果までをも一般化できない。
次に『その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし補正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か』について検討するに、上記刊行物3及び6?7の記載からみて『フルポキサムが多年生雑草及び広葉雑草全般に対して優れた除草作用を示すこと』が、本願優先日前の技術水準において知られているが、スギナはシダ植物門トクサ網トクサ目トクサ科のシダ植物であることから、広葉雑草全般における除草効果によってはスギナのようなシダ植物の除草効果までをも一般化できない。
したがって、対象雑草の選択肢に「スギナ」を含む補正後の請求項1の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願優先日前の技術常識を参酌しても、補正発明の『防除が困難な雑草及び/又は既存の除草剤に抵抗性を有する雑草に対して高い除草効果を有する防除方法の提供』という課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

(4)対象作物の範囲について
本願明細書の段落0073?0083の防除剤試験例1?5では、対象作物が「コウライシバ」である場合の薬害に対する安全性が確認されている。
しかしながら、上記刊行物3の第11頁右下欄の第4表には、フルポキサム(No.13)のイネ科の植物に対する殺草効果が、イネ科コムギ属の小麦で無害(-)、イネ科トウモロコシ属のトウモロコシで中害(+)、イネ科メヒシバ属のメヒシバで91?100%の殺草効果(5)となっているところ、フルポキサムを含む「1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体」は、刊行物3及び6に記載されるように、広葉植物全般に対しては必ず除草効果を発揮するのに対して、イネ科(及びカヤツリグサ科)の単子葉植物に対しては除草活性が高いものと低いものとが併存していることが知られているので、イネ科植物については実際に試験で確認しなければ除草活性を一般化することができない。
してみると、イネ科シバ属のコウライシバで安全性が本願明細書の発明の詳細な説明(及び刊行物1)において確認されても、イネ科ギョウギシバ属のバミューダグラスやイネ科ウシノケグサ属のフェスクなどのイネ科の植物においても安全性が期待できるとはいえず、平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書における『コウライシバについて施用した事例以外にまで発明を一般化することができない』という旨の記載不備は依然として解消していないものと認められる。
したがって、対象作物の選択肢に「フェスク」等を含む請求項2の内容を包含する補正後の請求項1の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願優先日前の技術常識を参酌しても、補正発明の『芝草類に対して安全性を示す芝生広葉多年生雑草の防除方法の提供』という課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

(5)サポート要件のまとめ
したがって、補正後の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載した範囲のものであるとは認められないので、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

5.補正の却下の決定のまとめ
以上総括するに、上記請求項1についての補正は、独立特許要件違反があるという点において特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
このため、その余のことを検討するまでもなく、第3回目の手続補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記〔補正の却下の決定の結論〕のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
第3回目の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?2に係る発明は、平成26年1月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

2.平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書の拒絶の理由
平成26年3月5日付けの拒絶理由通知書には、その理由2として「この出願の請求項1?2に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?9に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」との理由と、その理由3として「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。」との理由が示されている。
そして、その理由2の「下記の刊行物1?9」のうちの刊行物1?7及びその記載事項は前記『第2 3.(1)』で示したとおりである。
また、その理由3の「下記の点」は『仮に刊行物3及び6?7に記載された技術常識に照らしても、本願所定の課題が解決できるか否か明らかでないとするならば、本願明細書の発明の詳細な説明に実施例レベルで記載された具体例(コウライシバについて特定の葉令の雑草を所定の有効成分の所定の薬量で施用した事例)以外にまで発明を一般化することができないこととなる。してみると、本願請求項1及びその従属項の記載は、実施例レベルに限定されていないので、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。したがって、本願請求項1及び2の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載した範囲のものではないので、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。』というものである。

3.進歩性について
本願請求項1に係る発明は、前記『第2 3.進歩性について』の項で検討した補正発明の有効成分である「1-[4-クロロ-3-[(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)メチル]フェニル]-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシアミド」を「式(1)…で示される1,5-ジフェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸アミド誘導体」にまで拡張したものであって、補正発明を包含するものである。
したがって、前記『第2 3.(3)?(5)』において検討したのと同様な理由により、本願請求項1に係る発明は、刊行物1?7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものである。

4.サポート要件について
本願請求項1の記載は、前記『第2 4.サポート要件について』の項で検討した「補正後の請求項1」の範囲を包含するものである。
したがって、前記『第2 4.(1)?(5)』において検討したのと同様な理由により、対象雑草の選択肢に「スギナ」を含み、対象作物の範囲に「フェスク」等を含む本願請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められないので、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本願は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであり、また、本願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-18 
結審通知日 2014-06-24 
審決日 2014-07-07 
出願番号 特願2008-557083(P2008-557083)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A01N)
P 1 8・ 537- WZ (A01N)
P 1 8・ 572- WZ (A01N)
P 1 8・ 121- WZ (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 芳隆杉江 渉  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 唐木 以知良
木村 敏康
発明の名称 芝生広葉多年生雑草の防除方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
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