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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1291335
審判番号 不服2013-9913  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-29 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2008-535479「細長い食品の移し換え装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日国際公開、WO2007/043880、平成21年 6月18日国内公表、特表2009-523106〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明
本願は、2006年9月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年10月14日 オランダ国)を国際出願日とする出願であって、平成20年3月31日に国内書面が提出され、平成24年1月24日付けで拒絶理由が通知され、平成24年7月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年1月21日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成25年5月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、その後、当審における平成25年9月10日付けの書面による審尋に対して、平成26年2月17日に回答書が提出されたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年5月29日付け手続補正書により請求項の削除を目的として補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
- 一並びの細長い食品を支持するための保持面を備えるキャリアと、
- 少なくとも部分的に前記キャリアの上方に位置しており、かつ、前記キャリアから、少なくとも1つの細長い食品を押しやるための少なくとも1つの接触面を有している、変位可能な移し換え手段とを備えてなり、
前記移し換え手段の前記少なくとも1つの接触面は、旋回変位可能であり、かつ、前記接触面の旋回の回転軸は、移し換えられる前記一並びの細長い食品の保持面に平行である、細長い食品の移し換え装置のデバイスであって、
前記キャリアの断面上における保持面は、前記回転軸と直交する円弧状部を有し、
前記接触面と前記保持面との間の距離が前記保持面の前記円弧状部の位置において一定に保つように、前記円弧状部を有する前記保持面の仮想軸は移し換え手段の回転軸と一致し、
前記接触面は、前記回転軸に対して、半径方向に突き出ていることを特徴とするデバイス。 」


第2 引用文献に記載された発明
(1-1)本願の優先日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された仏国特許出願公開第2535579号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:なお、アクサンテギュ等のフランス語表記特有のアクセント記号は省略する。『』内は、当審日本語仮訳を示す。)

ア.「La presente invention concerne un dispositif pour augmenter la longueur des morceaux de pate panifiable, dans le but de mettre a la disposition des fabricants de pain une disposition originale de moyens mecaniques combines, au moyen de laquelle on reussit a donner a la pate a pain une forme de barre notablement plus longue que celle que l'on obtient a la sortie de la chambre de prefermentation.
・・・(中略)・・・
Les avantages obtenus grace a l'invention decrite dans ce qui precede consistent en l'obtention d'une considerable augmentation de la longueur des morceaux de pate a pain preformes en cylindres, pour leur application a certains produits de boulangerie.」(明細書第1ページ第1行ないし第2ページ第25行)

『 本発明は、組み合わされた機械的手段のオリジナルの配置をパン製造業者の配置に設置する目的で、パン生地片の長さを増加させるための装置に関する、その配置を用いてパン生地に前発酵室の出口で得るものより著しく長い棒状形を提供することに成功する。
この観点で、提案された装置は、前発酵室から出て来る予め円筒形に形成されたパン生地片を提供する装置、連続一列に配列された円筒形を受容するコンベヤーおよび予め円筒形に形成されたパン片をコンベヤーからパンが最終的に所望の長さに形成される伝統的な成形機に垂直に移動させる移動装置を組み合わせて含むことを特徴とする。移動装置は好ましくは、コンベヤー上に位置する生地片が通過すると好ましくは光電管によって作動する可動へらで構成される。
本発明のその他の特徴および利点は、以下に実施例を伴う明細書を読むことでおよび添付図を参照することでより良く理解されるだろう:
-図1は、本発明の対象の装置の平面概略図である。
-図2は、リニアコンベヤーから成形機へ向かう円筒形のパン生地片の移動装置の遠近図である。
図では、円筒形に形成されたパン生地片2が前発酵室1から出て、コンベヤー3に沿って配列されることが分かる。
当該コンベヤー3および予め形成された円筒形の受容領域の反対側にあるその末端領域に駆動要素4を含む移動装置が位置する、その軸上に、当該軸の各回転で予め形成されたパン生地片2の少し下方に位置する成形機5への移動を確保するへら7が備えられている。
コンベヤー上の予め形成された生地片2の移動と同じ高さに、へら7が図2の2つの矢印が示すような1周回転を行うようにモーター4の作動を引き起こすことを担当する光電管が配置される。
当然、光電管からその指令が与えられるときに軸の回転を1周に制御および制限するマイクロスイッチおよびタイマー要素が駆動装置に用意された。これらの要素は伝統的な型であるので、その構成および作動は本明細書には記載されない。
前記に記載された本発明のおかげで得られる利点は、パン製造業のいくつかの製品への応用のための、予め円筒形に形成されたパン生地片の長さの著しい増加の獲得にある。』

(1-2)ここで、上記(1-1)ア.及び図面から、次のことが分かる。

カ.上記ア.並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、コンベヤーは、連続一列に配列された円筒状のパン生地片を支持するためのコンベヤー上面を備えていることが分かる。

キ.上記ア.並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、回転可能な軸上に備えられたへらが、少なくとも部分的にコンベヤーの上方に位置しており、かつ、コンベヤーから、少なくとも1つの円筒状のパン生地片を押しやるための少なくとも1つのへらを有していることが分かる。

ク.上記ア.並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、軸上に備えられたへらの少なくとも1つのへらは、回転可能であり、かつ、へらの回転の軸は、移動される連続一列に配列された円筒状のパン生地片のコンベヤー上面に平行である、円筒状のパン生地片の移動装置のデバイスであることが分かる。

ケ.上記ア.並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、へらは、軸に対して、半径方向に突き出ていることが分かる。

(1-3)上記(1-1)及び(1-2)より、引用文献1には、次の発明が記載されている。

「- 連続一列に配列された円筒状のパン生地片を支持するためのコンベヤー上面を備えるコンベヤーと、
- 少なくとも部分的に前記コンベヤーの上方に位置しており、かつ、前記コンベヤーから、少なくとも1つの円筒状のパン生地片を押しやるための少なくとも1つのへらを有している、回転可能な軸上に備えられたへらとを備えてなり、
前記軸上に備えられたへらの前記少なくとも1つのへらは、回転可能であり、かつ、前記へらの回転の軸は、移動される前記連続一列に配列された円筒状のパン生地片のコンベヤー上面に平行である、円筒状のパン生地片の移動装置のデバイスであって、
前記へらは、前記軸に対して、半径方向に突き出ているデバイス。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

(2-1)本願の優先日前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-197745号(実開昭61-113729号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

サ.「〔利用される産業分野〕
この考案はベルト式、キヤタピラ式、ローラ式、円盤式若くは振動式などのコンベヤーによつて順次搬送されてくる被搬送物を任意にそのまゝコンベヤー上を搬送させるか或はコンベヤー外に進路を変更させるときに利用されるものである。
〔従来技術〕
従来この種の進路変更手段としては第5図にみられるように、搬送方向に対し直角方向にスイングする板、第6図のように等角間隔に搬送方向と平行な板をもつ回転板によつてコンベヤーによつて送られてくる被搬送物の側面を叩打するようにして、コンベヤー外に進路を変更する装置を本件出願人会社は先に開発した。
このような先行技術のものも、進路を変更させる効果は充分であるが、被搬送物が農作物や、果実など叩打すると傷が付き易いものや、脆弱物においては、この叩打時の衝撃により破損乃至損傷するおそれがある。」(第2ページ第8行ないし第3ページ第6行)

(2-2)ここで、上記(2-1)サ.及び図面から、次のことが分かる。

タ.上記サ.並びに第5図及び第6図の記載から、コンベヤーの断面上におけるコンベヤー上面は、回転軸と直交する略円弧状部を有していることが分かる。

チ.上記サ.並びに第5図及び第6図の記載から、搬送方向と平行な板とコンベヤー上面との間の距離がコンベヤー上面の略円弧状部の位置において略一定に保つように、略円弧状部を有するコンベヤー上面の仮想軸は進路変更手段の回転軸と概ね一致していることが分かる。

(2-3)上記(2-1)及び(2-2)より、引用文献2には、次の発明が記載されている。

「コンベヤーから、少なくとも1つの農作物等を押しやるための少なくとも1つの搬送方向と平行な板をもつ回転板を有している、回転可能な進路変更手段を備え、進路変更手段の少なくとも1つの搬送方向と平行な板は、回転可能であり、かつ、搬送方向と平行な板の回転の回転軸は、進路を変更する農作物コンベヤー上面に平行である、農作物等の進路変更装置のデバイスであって、コンベヤーの断面上におけるコンベヤー上面は、回転軸と直交する略円弧状部を有し、搬送方向と平行な板とコンベヤー上面との間の距離がコンベヤー上面の略円弧状部の位置において略一定に保つように、略円弧状部を有するコンベヤー上面の仮想軸は進路変更手段の回転軸と概ね一致し、搬送方向と平行な板は、回転軸に対して、半径方向に突き出ている進路変更装置。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)


第3 対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「連続一列に配列された円筒状のパン生地片」は、その構造及び機能又は技術的意義からみて、本願発明における「一並びの細長い食品」に相当し、以下同様に、「コンベヤー上面」は「保持面」に、「コンベヤー」は「キャリア」に、「円筒状のパン生地片」は「細長い食品」に、「へら」は「接触面」に、「回転可能」は「変位可能」及び「旋回変位可能」に、「軸上に備えられたへら」は「移し換え手段」に、「回転」は「旋回」に、「軸」は「回転軸」に、「移動される」は「移し換えられる」に、「移動装置」は「移し換え装置」に、それぞれ相当する。
したがって、本願発明と引用文献1記載の発明された発明は、
「- 一並びの細長い食品を支持するための保持面を備えるキャリアと、
- 少なくとも部分的にキャリアの上方に位置しており、かつ、キャリアから、少なくとも1つの細長い食品を押しやるための少なくとも1つの接触面を有している、変位可能な移し換え手段とを備えてなり、
移し換え手段の少なくとも1つの接触面は、旋回変位可能であり、かつ、接触面の旋回の回転軸は、移し換えられる一並びの細長い食品の保持面に平行である、細長い食品の移し換え装置のデバイスであって、
接触面は、回転軸に対して、半径方向に突き出ているデバイス。」である点で一致し、次の点において相違する。

〈相違点〉
本願発明においては、「キャリアの断面上における保持面は、回転軸と直交する円弧状部を有し、接触面と保持面との間の距離が保持面の円弧状部の位置において一定に保つように、円弧状部を有する保持面の仮想軸は移し換え手段の回転軸と一致し」ているのに対して、引用文献1記載の発明においては、そのような構成が特定されていない点(以下、「相違点」という。)。


第4 判断
上記相違点について検討する。
本願発明と引用文献2記載の発明を対比すると、引用文献2記載の発明における「コンベヤー」は、その構成及び機能又は技術的意義からみて、本願発明の「キャリア」に相当し、以下同様に、「コンベヤー上面」は「保持面」に、「回転軸」は「回転軸」に、「搬送方向と平行な板」は「接触面」に、「進路変更手段」は「移し換え手段」に、それぞれ相当するので、引用文献2記載の発明を本願発明の用語で表現すると、「キャリアの断面上における保持面は、回転軸と直交する略円弧状部を有し、接触面と保持面との間の距離が保持面の略円弧状部の位置において略一定に保つように、略円弧状部を有する保持面の仮想軸は移し換え手段の回転軸と概ね一致させる技術。」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)となる。
ここで、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術は、共にコンベヤーの搬送面上の食品等をコンベヤー外に移動させる装置に関する技術という点で共通し、また、コンベヤー断面上における上面に円弧状部を有するように設計することは、コンベヤーの技術分野において周知技術(例えば、特開平6-329294号公報の段落【0024】及び図6、特開2002-120914号公報の段落【0002】ないし【0005】並びに図7及び図8等参照。以下、「周知技術」という。)であるので、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の技術を適用し、その適用の際に、周知技術を考慮して、キャリアの断面上における保持面は、回転軸と直交する円弧状部を有し、接触面と保持面との間の距離が保持面の円弧状部の位置において一定に保つように、円弧状部を有する保持面の仮想軸は移し換え手段の回転軸と一致させるように設計することは、通常の創作能力の発揮の範囲内であり、当業者が容易になし得ることである。
してみると、引用文献1に記載された発明に、上記引用文献2記載の技術及び周知技術を適用及び考慮して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者にとって容易になしうることである。
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。


第5 むすび
したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-31 
結審通知日 2014-04-01 
審決日 2014-04-14 
出願番号 特願2008-535479(P2008-535479)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日下部 由泰  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 金澤 俊郎
加藤 友也
発明の名称 細長い食品の移し換え装置および方法  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  

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