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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1291343
審判番号 不服2013-14082  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-22 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2009-42590「工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受、工作機械の主軸装置、及び、工作機械」拒絶査定不服審判事件〔平成22年6月17日出願公開、特開2010-133550〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年2月25日(優先権主張平成20年10月29日)の出願であって、平成25年4月18日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年4月23日)、これに対し、同年7月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成25年7月22日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年7月22日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成24年11月8日付け手続補正書)の請求項1に、

「【請求項1】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置される複数の転動体と、
を有し、回転軸をハウジングに対して回転自在に支持する工作機械の主軸装置用軸受であって、
前記外輪と前記転動体との接触点近傍において、前記外輪の内周面近傍に設けられたセンサ位置決め部に温度センサが配置されており、
前記温度センサは、前記外輪の内周面に前記温度センサが突出しないように、前記センサ位置決め部に配置されることを特徴とする工作機械の主軸装置用軸受。」
とあったものを、

「【請求項1】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置される複数の転動体と、
を有し、回転軸をハウジングに対して回転自在に支持する工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受であって、
前記外輪と前記転動体との接触点近傍において、前記外輪のカウンタボア側の内周面であって前記外輪軌道面ではない箇所に設けられたセンサ位置決め部に温度センサが配置されており、
前記温度センサは、前記外輪の内周面に前記温度センサが突出しないように、前記センサ位置決め部に配置されることを特徴とする工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受。」
と補正(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)することを含むものである。

上記補正は、発明を特定するために必要な事項である「軸受」について「アンギュラ玉軸受」と限定し、同「前記外輪の内周面近傍」を「前記外輪のカウンタボア側の内周面であって前記外輪軌道面ではない箇所」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開2008-2591号公報(以下「刊行物1」という。)には、「軸受装置」に関して、図面(特に、図1参照。)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、例えば旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、研削盤、ホーニング盤、超仕上盤、ラップ盤等で代表される、高速で摺動、回転する工作機械の主軸支持部等に組み込まれる工作機械主軸に用られると好適な軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記に挙げたような工作機械のスピンドルには、主軸支持用に通常転がり軸受が組み込まれており、一般にアンギュラ玉軸受や円筒ころ軸受等が組み合わされて使用されている。ここで、工作機械の加工精度や生産性は、主軸の回転速度に依存するところが大きく、生産性を高めるためには主軸の回転速度の高速化を図らなければならない。しかし、転がり軸受を高速回転下で使用すると、軸受の発熱が顕著に増大したり、遠心力により転動体と内外輪との間の接触面圧が増大したりするため、スピンドルの使用条件は著しく悪化し、結果として、摩耗や焼付き等に代表される軸受損傷の可能性が高まる。また、高速回転により発熱も大きくなることから、工作機械の熱変形が起こる可能性もあり、加工精度ヘの影響もある。
【0003】
このような致命的な不具合を軸受に発生させないため、また工作機械全体の熱変形による加工精度の低下をさけるためにも、高速回転下においては適切な潤滑方式を選択して主軸支持用転がり軸受における発熱を極力抑えなければならない。これに対し、高速回転する工作機械の主軸支持用転がり軸受の潤滑には、潤滑油供給に伴う冷却効果が得られることから、オイルエア潤滑法、ノズルジェット潤滑法、アンダーレース潤滑法が採用されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003-278773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1に見られるように、潤滑油量に着目している従来技術はあるものの、実際の軸受の温度に着目し、適宜適量の潤滑油を供給することを目的としているものはない。上述したような従来技術では、運転中の軸受の温度を直接測定して潤滑油を適宜適量の供給することは難しい。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、必要な量の潤滑油を供給することにより信頼性を向上させた軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の軸受装置は、外輪と、内輪と、両輪間に配置された転動体とを有する転がり軸受と、前記転がり軸受の内部の温度を測定する温度センサと、潤滑ユニットとを有する軸受装置において、
前記潤滑ユニットは、前記温度センサが検出した温度に応じた量の潤滑油を前記転がり軸受に供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記潤滑ユニットは、前記温度センサが検出した温度に応じた量の潤滑油を前記転がり軸受に供給するので、前記転がり軸受の内部の温度を直接且つ精度良く測定することにより、転がり軸受に適宜適量の潤滑油を供給し、これにより高速回転条件下においても十分に長寿命を確保できる軸受装置を提供することができる。
【0008】
前記温度センサは、基板の表面に塗布したレジストに、マスクを用いて微細パターンを露光現像し、更にスパッタリングにより金属被膜を微細パターン上に付着させた後に、残留レジストを除去することで形成されていると好ましい。このような温度センサであると、極めて薄く製作できるため大きな取り付けスペースを必要としないので、前記軸受装置の内部において、任意の場所に取り付けることができ、本来測定したい部位の温度を精度良く測定することができる。
【0009】
前記軸受装置は、工作機械用主軸に用いられると好ましい。」

イ 「【0010】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に用いる転がり軸受の軸線方向断面図である。転がり軸受(アンギュラ玉軸受)16は外輪16aと、内輪16bと、両輪16a,16b間に配置された転動体としての玉16cと、玉16cを周方向に等間隔に保持する保持器16dとを有する。外輪16aは、その内周において、軌道面16eを有する。内輪16bは、その外周において、軌道面16fを有する。玉16cは、窒化珪素や炭化珪素等のセラミック製とすることもできる。
【0011】
外輪16aの軌道面16e以外の内周面に、温度センサTSが接着剤で取り付けられている。温度センサTSからの配線は、外輪16aの内周面から端面を介して外部に引き出されるようになっている。なお図1において、温度センサTSの厚さは誇張して示されている。」

ウ「【0017】
外側ハウジング20は、内側ハウジング18の外周を包囲する外筒28、29と、外筒29の端面に固着された後蓋32とから構成されている。転がり軸受16は、2個づつ組となってスピンドル軸14の前側と後側とをそれぞれに分担して支承するように、軸方向に所定間隔をおいて配置されており、各転がり軸受16の外輪外径面は内側ハウジング18の内周面に緊密嵌合して固定され、最前部の転がり軸受16の外輪は外輪押さえ34に当接して回転不可に係止され、最後部の転がり軸受16の外輪は外輪押さえ36を介して外筒28にバネ38により軸方向に弾性付勢されつつ、回転不可に係止されている。また、各転がり軸受16の内輪内径面は、スピンドル軸14の外周面に嵌合により固定され、前側・後側のぞれぞれで、各転がり軸受16の間に、転がり軸受16を軸方向に固定するための間座40が設けられている。」

エ 「【0024】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、温度センサTSは、点線で示すように外輪16aの軌道面16e(箇所A)や、保持器16d(箇所B)や、内輪16b(箇所C)に配置しても良い。組み込む場所はこれらに限定することはなく、転がり軸受16のいかなる場所にでも組み込むことができる。(以下略)」

オ 図1には、温度センサTSが外輪16aのカウンタボア側の内周面であって軌道面16eではない箇所に配置されることが示されている。

カ また、図1には、上記エの「例えば、温度センサTSは、点線で示すように外輪16aの軌道面16e(箇所A)や、保持器16d(箇所B)や、内輪16b(箇所C)に配置しても良い。」との記載とあわせみると、温度センサTSを外輪16aの軌道面16eに設けられた凹状の箇所Aに配置することが示されている。そして、外輪16aの軌道面16eは玉16cの転動路であるから、温度センサTSを前記箇所Aに配置したとき、温度センサTSが軌道面16eに突出しないように設けることは技術的に明らかである。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「外周面に軌道面16fを有する内輪16bと、
内周面に軌道面16eを有する外輪16aと、
前記軌道面16fと前記軌道面16eとの間に配置される複数の玉16cと、
を有し、スピンドル軸14を内側ハウジング18及び外側ハウジング20に対して回転自在に支持する工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受16であって、
前記外輪16aのカウンタボア側の内周面であって前記軌道面16eではない箇所に温度センサTSが配置される工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受16。」

(2)また、本願の優先権主張の日前に頒布された特開2007-138974公報(以下「刊行物2」という。)には、「温度センサ付転がり軸受」に関して、図面(特に、図5参照。)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0007】
(省略)この様な事情に鑑み、転がり軸受にICタグと温度センサとを組み込んだセンサユニットを設置し、この転がり軸受の温度を容易に検出可能な構造が、例えば特許文献2に記載されている。図5は、この特許文献2に記載された構造を示している。
【0008】
図5に示す転がり軸受1aは、外輪5aの側面の一部に、温度センサを組み込んだセンサユニット18を固定している。このセンサユニット18は、ICタグと、温度センサと、電源回路とを同一基板上に配置して成る。又、このうちのICタグは、メモリと、中央処理装置と、送受信回路と、別の電源回路とから成るICチップと、アンテナとを備える。尚、ICタグの電源として、上記基板上に設置した電源回路を使用する場合には、上記別の電源回路は省略する場合もある。この様に構成されるセンサユニット18は、温度センサにより上記外輪5aの温度を検出し、この検出信号が上記ICタグにより出力される。そして、この出力された信号を読み取り器(リーダ)で読み取る事により、上記外輪5aの温度を測定する。尚、センサユニット18の詳しい構造及び作用に就いては、上記特許文献2に詳しく記載されており、又、本発明の要旨ではない為、説明を省略する。
【0009】
上記特許文献2に記載された構造の場合、転がり軸受1aで生じる温度上昇を、外輪5aの側面に固定したセンサユニット18により検出している。この為、この温度から、上記転がり軸受1aの異常発生時期が予測可能である。但し、この転がり軸受1aの温度上昇は、各玉6の転動面と内輪軌道2或は外輪軌道4との転がり接触部の摩擦により生じる場合が多い。従って、この転がり接触部で温度が上昇してから、上記外輪5a全体の温度が上昇する。この為、上記特許文献2に記載された構造の様に、この外輪5aの側面に設置したセンサユニット18により転がり軸受1aの温度上昇を検知する場合、上記転がり接触部で温度が上昇してから、このセンサユニット18によりこの温度上昇が検出されるまでに、多少なりとも時間が掛かる(タイムラグが生じる)と考えられる。
【0010】
又、上記センサユニット18が固定されている上記外輪5aの側面或は外周面は、他の部材に嵌合される等、この外輪5aと比べて熱容量が大きい部分と接触する場合がある。従って、上記転がり接触部が温度上昇しても、上記外輪5aの側面はそれ程温度が上昇しない場合がある。又、この外輪5aの側面或は外周面が接触する部分の温度も、大きく影響すると考えられる。例えば、上記外輪5aの側面或は外周面が接触する部分の温度が、上記転がり軸受1aの転がり接触部の温度上昇とは別の原因で上昇した場合、上記センサユニット18の温度センサが、この温度上昇の影響を受ける可能性がある。この為、上記特許文献2に記載された構造の場合、上記転がり軸受1aの温度上昇を迅速且つ正確に検出できない場合があり、この場合、転がり軸受の異常発生時期を正確に予測する事はできない。上記特許文献2には、センサユニット18を、保持器7の一部や、シールリング10の一部に設置する構造も記載されているが、この場合にも、やはり、転がり軸受1aの温度上昇を検出するまでに時間が掛かると共に、迅速且つ正確な温度検出が難しいと考えられる。
【0011】
【特許文献1】・・・
【特許文献2】特開2005-32256号公報」

イ 図5には、センサユニット18を外輪5aの側面に設けられた凹状の箇所に配置することが示されている。また、上記アの「外輪5aの側面の一部に、温度センサを組み込んだセンサユニット18を固定している。」との記載(段落【0008】)及び同「上記センサユニット18が固定されている上記外輪5aの側面或は外周面は、他の部材に嵌合される等、この外輪5aと比べて熱容量が大きい部分と接触する場合がある。」(段落【0010】)との記載とあわせみると、図5は、センサユニット18を前記凹状の箇所に配置するにあたって、センサユニット18が側面に突出しないように設けることが示されている。

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「軌道面16f」は前者の「内輪軌道面」に相当し、以下同様に、「内輪16b」は「内輪」に、「軌道面16e」は「外輪軌道面」に、「外輪16a」は「外輪」に、「玉16c」は「転動体」に、「スピンドル軸14」は「回転軸」に、「内側ハウジング18及び外側ハウジング20」は「ハウジング」に、「温度センサTS」は「温度センサ」に、「主軸装置用アンギュラ玉軸受16」は「主軸装置用アンギュラ玉軸受」にそれぞれ相当する。

また、本願補正発明の「前記外輪と前記転動体との接触点近傍」に関する、本願明細書の「本実施形態の工作機械の主軸装置用軸受60によれば、・・・温度センサ52を外輪61と玉63との接触点p近傍に配置することができ、冷却油の影響を抑えた温度測定が可能で、温度検知のレスポンスが良好となる。」(段落【0029】)との記載及び「(第2実施形態)図6は、本発明の第2実施形態に係る工作機械の主軸装置用軸受を示す。なお、第2?第5実施形態では、温度センサの取り付け構造が第1実施形態のものと異なるのみである。」(段落【0031】)との記載並びに図3及び図6の図示内容を踏まえると、引用発明において外輪16aと玉16cとの接触点が外輪16aの軌道面16e上にあるから、引用発明の「前記外輪16aのカウンタボア側の内周面であって前記軌道面16eではない箇所」は本願補正発明の「前記外輪と前記転動体との接触点近傍において、前記外輪のカウンタボア側の内周面であって前記外輪軌道面ではない箇所」に相当する。

したがって、両者は、
「外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に配置される複数の転動体と、
を有し、回転軸をハウジングに対して回転自在に支持する工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受であって、
前記外輪と前記転動体との接触点近傍において、前記外輪のカウンタボア側の内周面であって前記外輪軌道面ではない箇所に温度センサが配置される工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願補正発明では、外輪のカウンタボア側の内周面であって外輪軌道面ではない箇所「に設けられたセンサ位置決め部」に温度センサが配置されており、「前記温度センサは、前記外輪の内周面に前記温度センサが突出しないように、前記センサ位置決め部に配置され」るのに対し、
引用発明では、前記外輪16aのカウンタボア側の内周面であって前記軌道面16eではない箇所に温度センサTSが配置される点。

4 当審の判断
そこで、相違点を検討する。
刊行物1には、温度センサTSを外輪16aの軌道面16eに設けられた凹状の箇所Aに当該温度センサTSが軌道面16eに突出しないように配置することが示されている(前記「2」の「(1)」の「カ」)。

また、刊行物2には、センサユニット18を外輪5aの側面に設けられた凹状の箇所に当該センサユニット18が側面に突出しないように配置することが示されている(前記「2」の「(2)」の「イ」)。

刊行物1及び2に示唆された事項からみて、本願の優先権主張の日前に、温度センサを外輪の面に設けられた凹状の箇所に当該温度センサが当該外輪の面に突出しないように配置することは、周知の技術事項である。ここで、「凹状の箇所」は本願補正発明の「センサ位置決め部」に相当する。

そして、刊行物1の温度センサTSは「極めて薄く製作できるため大きな取り付けスペースを必要としないので、前記軸受装置の内部において、任意の場所に取り付けることができ」る(段落【0008】)ものであるから、刊行物1の温度センサTSと前記周知の技術事項とは、温度センサを外輪のいずれかの面に設ける点で共通する。

そうすると、刊行物1の温度センサTSに前記周知の技術事項を適用することは、当業者が容易に着想し得たことである。

その際、刊行物1の温度センサTSは「本来測定したい部位の温度を精度良く測定する」(段落【0008】)ものであるところ、転がり軸受における温度上昇は、転動体の転動面と外輪軌道との転がり接触部の摩擦により生じるとの技術常識(例えば、刊行物2の段落【0009】参照。)に照らせば、刊行物1の前記箇所Aのように、転がり接触点を含む軌道面16eに前記周知の技術事項を適用して凹状の箇所を設けることも可能であるが、この場合には、軌道面16eが玉63の転動路となることから、高い加工精度が要請されるという技術的課題が生じることは、当業者にとって自明なことである。

そうしてみると、刊行物1の温度センサTSに前記周知の技術事項を適用するにあたって、前記技術的課題を踏まえて、引用発明の「前記外輪16aのカウンタボア側の内周面であって前記軌道面16eではない箇所」が、玉63の転動路ではなく、しかも、転がり接触部の近傍にあることに着目して、引用発明において、当該箇所に「センサ位置決め部」を設け、「前記温度センサは、前記外輪の内周面に前記温度センサが突出しないように、前記センサ位置決め部に配置され」るようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明及び前記周知の技術事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、平成26年2月18日付け回答書において、補正案を示しているが、刊行物1に記載された「玉16cを周方向に等間隔に保持する保持器16d」(段落【0010】)を外輪案内とすることに格別の困難性はないから、当該補正案は採用できない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年11月8日付けの手続補正書の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1及び2、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明における前記「第2〔理由〕1」で示した各限定を省いたものである。

そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕3及び4」に記載したとおり、引用発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-17 
結審通知日 2014-06-24 
審決日 2014-07-11 
出願番号 特願2009-42590(P2009-42590)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 冨岡 和人
小関 峰夫
発明の名称 工作機械の主軸装置用アンギュラ玉軸受、工作機械の主軸装置、及び、工作機械  
代理人 本多 弘徳  
代理人 濱田 百合子  

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